説明

鉄道貨物列車の揺れ枕又はサイドフレームの、一体型中子の造型方法

本発明は、鉄道貨物列車の揺れ枕又はサイドフレームの、一体型中子の造形方法について開示した。当該方法において鋳型枠(箱)の砂かきとり面において砂をかきとった後、上から下に向けて正確に位置決めされた形状付与上型を採用し、上型に対して微振動又は圧力を加え、形状付与上型を砂かきとり面と接触させた後、続けて下に向け所定量圧下し、局部の平らな砂かきとり面は上記形状付与上型の形状に圧迫され、所要の曲面形状を形成し、最終的に鋳物局部の内部空間全体の断面が一体型の中子を造型する。本発明に係る中子造型方法により得られた一体型中子は表面が滑らかであり、複数の砂中子を組み合わせることにより生じる鋳造バリ、突起を有効的に回避し、鋳物の品質向上、作業強度の減軽を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、鋳造製造における中子造型において、射出成形とは異なる、一体型中子の造型方法に関するものであり、詳しくは、鉄道貨物列車の揺れ枕又はサイドフレームの鋳造における一体型中子の造型方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
揺れ枕又はサイドフレームは、鉄道貨物列車走行部の重要部品である。中国に限らず、世界中の鉄道貨物列車の揺れ枕又はサイドフレームの鋳物製造過程において、鋳物の内部空間を形成する砂中子(鋳型砂を用いて作られる中子)の中子造型方法では、通常、図1、図2に示す通り、層ごと又は部分ごとに造型する方法を採用している。
【0003】
この中子造型方法により、層ごと又は部分ごとに造型された中子を用いて製造された揺れ枕又はサイドフレームには、主に以下の二つの弊害がある。
【0004】
まず、その一つとして、砂中子の変形または縁部分の破損により砂中子の結合部位に制御し難い隙間が生じ、鋳物の内部空間へ注湯して鋳物成形する過程において、図5に示すように、隙間3によってバリが形成されてしまう。特に、揺れ枕又はサイドフレームの重要部位であるA部位、B部位と対応する内部空間において、バリが形成されてしまう。さらに、図6に示すように、鋳物の内部空間にバリが存在することによって、鋳物の凝固成型の過程において、バリと鋳物との結合部位に、ピンホール8及び微細な亀裂7を極めて生じやすい。このようなピンホール8及び亀裂7は鋳物の内部空間に存在するため、通常の製品検査工程においては排除されにくく、製品の品質上、潜在的な危険となる。揺れ枕又はサイドフレームは鉄道貨物列車の走行部の重要部品であり、貨物列車走行中の絶え間ない循環応力の作用下において鋳物内部のピンホール及び亀裂は応力源となり、徐々に拡張していく。これに伴い、製品の寿命は著しく短縮する。深刻な場合、亀裂が徐々に拡張した結果、揺れ枕又はサイドフレームの横方向に断裂を起こし、直接的に鉄道事故を招いてしまう。
【0005】
次に、二つ目の弊害としては、層ごと又は部分ごとに作製された砂中子は、中子を定置した後に鋳型を合わせる前、砂中子の位置固定を強化し、鋳物の肉厚を確保するために、通常は図7に示すように、中子押え9が用いられる。一つの揺れ枕又はサイドフレーム中において、30個あまりの大量な中子押えが使用される。中子押えを使用することによる鋳物性能への影響には、以下の三つが挙げられる。まず、中子押えは鋳物と融合しないことが多く、鋳物の有効な断面面積を減少させて対応部位に局部応力を生じやすい。この応力による弊害は、百万回以上または一千万回以上疲労実験することによって初めて示され、循環応力の作用により亀裂はその起点から徐々に拡張していく。また、中子押えの表面は錆びが生じやすく、スズめっき又は亜鉛めっきは熔鋼との接触時に反応し、注湯過程においてピンホールが生じるなど、成分変移のため鋳物の局部に応力源を形成し、性能に影響を及ぼしてしまう。さらに、使用中において、中子押えの圧迫により落下した上型の鋳型砂10が直接鋳型の内部空間に入ってしまい、図7に示すように、鋳物の内部又は表面上においてサンドホール(sand hole)を生じさせる。この内部空間の表面上にできた砂による傷は処理されにくく、使用時において走行中の潜在的な危険となる。
【0006】
上記の主な弊害は、通常、鉄道運行中に現れ、鉄道の運行中断などの結果を招き、鉄道運送事業において比較的大きな社会的、経済的損失をもたらす。
【0007】
上記の弊害を避けるためには、一体型中子の造型が求められ、通常、一体型中子の造型では、射出成型機を用いて射出成型を行なっており、射出成型工程には一般的に二分型、又は水平(横向き)方向での型合わせが採用される。しかし、射出成型機は設備自体が複雑かつ高価であるうえに、エネルギー、制御、工具及び装備に対する要求が高く、さらには、砂中子の一部において緊密度の過度な上昇又は緊密度の不均一現象が起こり、鋳物に亀裂を生じやすい。
【0008】
本発明の目的は、従来、中子造型工程において層ごと又は部分ごとに製造されていた複数の砂中子を、ユニット化した中子、すなわち一体型中子を製造する、鉄道貨物列車の揺れ枕又はサイドフレームの、一体型中子の造形方法を提供することにある。
【0009】
〔発明内容〕
本発明の技術構成は、鉄道貨物列車揺れ枕又はサイドフレームの、一体型中子の造形方法であって、以下のステップを含む。
【0010】
A:砂充填工程。具体的には可動部材を一体型鋳型枠(箱)内に定置させた後、鋳型枠(箱)の内部空間に砂を充填すると共に補強された心棒(arbor)などを入れる。充填した砂の高さは、砂かきとり面より適度に高くする。突き固めた又は振動を加えて固めた後、余分な砂をかきとり、鋳型砂の高さと鋳型枠(箱)上部の高さとを一致させる工程である。
【0011】
本発明の技術構成は、以下の工程をさらに含むことを特徴とする。
【0012】
B:上型の圧下及び型合わせ工程。具体的には砂を充填した後、鋳型砂が使用可能な強度である時間内に、上型を、方向誘導作用により鋳型枠(箱)内の鋳型砂に圧下するようにおく。上型に対して微小な振動又は圧力を与え、上型と砂かきとり面とを接触させた後、さらに圧下し、上型の基礎面と鋳型枠(箱)の最上部とを密着させる工程である。なお、上型の内部空間の形状は所要形状の曲線部分、すなわち砂中子の上部の形状である。
【0013】
C:反転及び型はずし工程。具体的には上型の基礎面と鋳型枠(箱)とを密着させた後、砂中子の強度を補強するために、上型と鋳型枠(箱)とがロックされた状態で反転させて、型はずしをする工程である。鋳型枠(箱)は持ち上げられ、残りの可動部材は砂中子を包む。このとき、可動部材はちょうど上型の基礎面上に位置する。
【0014】
D:可動部材を取り外す工程。具体的には可動部材を上型の基礎面に沿ってスライドさせて取り外す工程である。
【0015】
E:砂中子の硬化及び取り出しステップ。具体的には可動部材を取り除いた後、作製した砂中子を上型形状付与部によって支持し、所定の強度値まで硬化した後、塗型作業及び清掃作業をする工程である。
【0016】
なお、工程Bにおいて、上型が圧下する前の鋳型砂の抗圧強度が0.04Mpaより小さく、上型の基礎面と鋳型枠(箱)上面とを密着させた後の鋳型砂の抗圧強度が0.06Mpaより大きい場合に型はずしすることが好ましい。
【0017】
この発明は、以下の効果を奏する。
【0018】
1、複数の砂中子を統合させて一体化した、一体型中子の造形方法によって中子を造型することにより得られた一体型砂中子の表面は滑らかであって、その曲面はスムーズに連結される。この一体型中子を使用して製造された鋳物は、内部空洞が滑らかで境界線がなく、スムーズであり、複数の中子の使用により生じるバリ又は突起などを有利に回避することができる。
【0019】
2、砂中子の品質が優れている。具体的には、砂中子の表面は滑らかであり、対応する寸法の精度が高く、側面において可動部材を大量に使用することにより比較的複雑な砂中子形状を形成でき、品質が保証される。この一体型中子は、層ごとに作製された中子と比較して断面が増加するに伴い、鋼度が増大し、耐変形能力が強くなる。
【0020】
3、工程に必要な操作に有利である。詳しくは工程に必要な部位に正確に冷鉄、心棒、ガス抜き管、クロム−鉄砂などの造型材料を定置することができる。
【0021】
4、緊密度が均一である。具体的には、上型によって砂かきとり面を圧下すると同時に造型することにより砂中子の全体積が圧縮されるため、砂かきとり面に近い上層部の部分、一体型中子は全体の緊密度が均一であり、鋳物の成型に有利である。
【0022】
5、設備が簡易である。型合わせ機(微振動を加えることができる)を採用することにより、上型と鋳型枠(箱)との上から下への型合わせを実現し、容易に中子造型の機械化を実現できる。
【0023】
6、工具又は装備のメンテナンスがしやすい。具体的に、製品の一部変更又は工程調整は、可動部材を調整することによって可能であり、比較的柔軟かつ適応性が強い。
【0024】
7、使用する中子押えの数量を最大限減らし、鋳物の有効な使用断面積を確保できる。また、型合わせにおいて、中子押えを使用することによる中子押えの圧迫により落下した上型の鋳型砂が直接内部空間に入るのを防ぎ、砂によって鋳物の内部又は表面に傷が形成されることを防ぐ。また、中子押え自身の清掃作業を減軽することができる。
【0025】
8、鋳物の内部空間の表面における品質を高め、鋳型砂を取り除く困難さを減軽できる。
【0026】
9、揺れ枕及びサイドフレームの内部空間の寸法精度を高める。砂中子を一体化することによって、製品の内部空洞において相対位置の寸法は変動せず、比較的安定である。そのため、作製される鋳物の肉厚は均一であり、複数の組み合わされた砂中子の使用によって生じる段階的な変化を減少できると共に、製品の使用強度等の性能を保証できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来の中子造型方法により、層ごと又は部分ごとに造型された鉄道貨物列車サイドフレーム中子の模式図である。
【図2】従来の中子造型方法により、層ごと又は部分ごとに造型された鉄道貨物列車サイドフレーム中子の模式図である。
【図3】本発明の造形方法により製造された一体型中子の模式図である。
【図4】本発明の造形方法により製造された一体型中子の模式図である。
【図5】従来の、層ごと又は部分ごとに製造された砂中子の結合部位に存在する隙間の模式図である。
【図6】バリによって、鋳物にピンホール及び微細亀裂が生じている模式図である。
【図7】中子押えの使用により鋳型砂が落下している模式図である。
【図8】本発明の造形方法のフローである。
【0028】
〔発明を実施するための形態〕
以下、図及び実施例により本発明について詳しく説明する。
【0029】
本発明の具体的な実施例は、図8に示すフローの通り、鉄道貨物列車の揺れ枕及びサイドフレームの、一体型中子の造形方法であって、以下の工程を含む。
【0030】
A:砂の充填、具体的には、可動部材14、15を定置した一体型鋳型枠(箱)13の内部空間内に砂を充填すると共に、補強のための心棒(arbor)16等を入れる。充填した砂の高さは砂かきとり面より適度に高くし、突き固めた、又は振動を加えて固めた後、余分な砂をかきとる。このとき、鋳型砂と鋳型枠(箱)上部の高さとを一致させる。
【0031】
B:上型の圧下及び型合わせ、具体的には砂を充填した後、鋳型砂が使用可能な強度である時間内に、上型11を方向誘導作用により、鋳型枠(箱)13内の鋳型砂に圧下するようにおく。上型11に対して微小な振動又は圧力を与え、上型と砂かきとり面とを接触させた後に、続けて圧下し、上型の基礎面12と鋳型枠(箱)13の最上部とを密着させる。上型11の内部空間の形状は所要形状の曲線部分、すなわち砂中子の上部の形状である。上型のAの範囲は所要の形状を付与する曲線部分であり、L0は砂中子の最高部が圧下される距離であり、L1は側面の丸い角を形成するための圧下距離である。
【0032】
C:反転及び型はずし、具体的には上型の基礎面と鋳型枠(箱)とを密着させた後、砂中子の強度を補強するために、上型と鋳型枠(箱)とをロックした状態で180度回転させると共に、使用される他の設備により型はずしをする。鋳型枠(箱)は持ち上げられ、残存した可動部材は砂中子を包む。このとき、可動部材はちょうど上型の基礎面上に位置する。
【0033】
D、可動部材14、15の取り外し、具体的には可動部材14、15を上型の基礎面12に沿ってスライドさせ、可動部材14、15を取り外す。
【0034】
E、砂中子の硬化及び取り出し、具体的には工程完了後、造型した砂中子を上型11の形状付与部によって支持し、所定の強度値まで硬化した後、塗型作業及び清掃作業を行なう。最後に、つり具又は同時に使用される他の設備により中子を取り出し、備蓄棚に置く。最後に、形成された一体型の砂中子全体を、図3、4に示す。
【0035】
なお、本実施例における工程Bにおいては、加工しやすいよう、砂中子の硬度に対して限定を加えており、上型が圧下する前の鋳型砂の抗圧強度が0.04Mpaより小さく、上型の基礎面と鋳型枠(箱)上面とを密着させた後の鋳型砂の強度が向上し、鋳型砂の抗圧強度が0.06Mpaより大きい場合に型はずしすることが好ましい。
【符号の説明】
【0036】
1 サイドフレーム鋳物
2 「X」砂中子
3 砂中子における隙間
4 型合わせ面
5 「S」砂中子
6 バリ又は突起
7 微細な亀裂
8 ピンホール
9 中子押え
10 中子押えの圧迫により落下した鋳型砂
11 上型
12 基礎面
13 鋳型枠(箱)
14 可動部材
15 可動部材
16 心棒
17 砂中子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道貨物列車の揺れ枕又はサイドフレームの、一体型中子の造形方法であって、
A:可動部材を所定位置に定置した一体型鋳型枠(箱)の内部空間内に、砂を充填すると共に補強のための心棒を入れ、充填した砂の高さを砂かきとり面より適度に高くし、突き固めた、又は振動を加えて固めた後、余分な砂をかきとると共に、時鋳型砂と鋳型枠(箱)上部との高さを一致させる、砂の充填工程、
B:砂を充填した後、鋳型砂の強度が使用可能である時間内に、上型を、方向誘導作用により鋳型枠(箱)内の鋳型砂に圧下するようにおき、上型に対して微小な振動又は圧力を与え、上型と砂かきとり面とを接触させた後、さらに圧下し、上型の基礎面と鋳型枠(箱)上面とを密着させる、上型の圧下及び型合わせ工程であり、ここで、上型の内部空間の形状は所要形状の曲線部分、すなわち砂中子の上部の形状である、
C:上記上型の基礎面と金型枠(箱)とを密着させた後、砂中子の強度を補強するために、上型と鋳型枠(箱)とをロックした状態で反転させた後、型はずしをし、鋳型枠(箱)を持ち上げ、残存する可動部位が砂中子を包み、このとき可動部位を上型の基礎面上に位置させる、反転及び型はずし工程、
D:可動部位を上型の基礎面に沿ってスライドさせて取り外す、可動部位の取り外し工程、及び
E:可動部位を取り除いた後、造形した砂中子を上型形状付与部によって支持し、所定の強度値まで硬化した後、塗型作業及び清掃作業をする、砂中子の硬化及び取り出し工程、を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道貨物列車の揺れ枕又はサイドフレームの、一体型中子の造形方法であって、
工程Bでは、上型が圧下する前の鋳型砂の抗圧強度が0.04Mpaより小さく、上型の基礎面と鋳型枠(箱)上面とを密着させた後、鋳型砂の抗圧強度が0.06Mpaより大きい場合、型はずしできることを特徴とする方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−524690(P2010−524690A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503340(P2010−503340)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際出願番号】PCT/CN2008/070430
【国際公開番号】WO2008/128451
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(509288138)南車眉山車輌有限公司 (1)
【氏名又は名称原語表記】CSR MEISHAN ROLLING STOCK CO.LTD
【住所又は居所原語表記】DU Ying CSR MEISHAN ROLLING STOCK CO.LTD,Meishan,Sichuan 620032 China
【Fターム(参考)】