説明

鉄道車両用ブレーキ装置

【課題】 高速運転を行った場合にブレーキの制動距離が長くなってしまうことを抑制できるとともに、現行の鉄道車両に対して高速運転時の制動距離抑制のための改造も容易に行うことができる鉄道車両用ブレーキ装置を提供する。
【解決手段】 電磁排気弁14はブレーキ信号に基づいてブレーキ管1内の空気圧力を減少させ、電磁給気弁15はユルメ信号に基づいてブレーキ管1に圧縮空気を供給する。制御弁16はブレーキ管1の圧力に応じてブレーキシリンダ7に給気及び排気を行う。非常ブレーキ信号及び常用最大ブレーキ信号は同一の信号線Eを通じて送信される。空気ダメ32に接続されるブレーキ電磁弁31は、非常ブレーキ信号に基づいて非常ブレーキ力を発生させる非常ブレーキ装置を構成するとともに、常用最大ブレーキ信号に基づいて常用最大ブレーキ力を発生させるようブレーキシリンダ7に給気する。非常ブレーキ信号は常用最大ブレーキ信号よりも優先して信号線Eを送信され、ブレーキ電磁弁31がこの非常ブレーキ信号に基づいて非常ブレーキ力を発生させるようにブレーキシリンダ7に給気する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用ブレーキ装置に関し、とくに、自動ブレーキ装置を備えた機関車と、電磁自動ブレーキ装置を備えた客貨車とを混結運用する際に用いられる鉄道車両用ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動ブレーキ装置を備えた機関車と、電磁自動ブレーキ装置を備えた客貨車とを混結運用する際に用いられる鉄道車両用ブレーキ装置が知られている(特許文献1参照)。図2は、特許文献1における第3図に記載された鉄道車両用ブレーキ装置であって、機関車10と客貨車11とが混結運用される場合に用いられている電磁自動ブレーキ装置のブロック図を示したものである。図2に示すように、このブレーキ装置では、電磁排気弁14が、機関車10から発信されて信号線Sを介して送信されるブレーキ作動用の電気指令であるブレーキ信号に基づいてブレーキ管1内の空気圧力を減少させる。そして、制御弁16が、ブレーキ管1内の空気圧力の減少に応じて元空気ダメ管2からブレーキシリンダ7に対して圧縮空気を給気してブレーキ力を発生させる(ブレーキを作動させる)ようになっている。
【0003】
なお、図2に示す鉄道車両用ブレーキ装置では、ブレーキ解除用のユルメ信号に基づいてブレーキ管1に圧縮空気を供給する電磁給気弁15、及び、非常ブレーキ作動用の非常ブレーキ信号に基づいてブレーキシリンダに給気して非常ブレーキ力を発生させる非常ブレーキ装置である電磁弁20も備えられている。また、機関車10側においてブレーキ弁12が操作されることで、ブレーキ管1及びブレーキ制御弁21を介して機関車10側のブレーキシリンダ22が作動されるとともに、電空帰還器13及び信号線(C・R・S・E・G)を介して客貨車11側に所定の電気指令が発信されるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−310128号公報(第2頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電車が高速化されて運転本数が増加する傾向にある状況下で、運行間隔の短くなった電車の間で電磁自動ブレーキ装置の貨車が運行される状況となっている。このため、電車と同様に貨車も高速化することが求められている状況にある。しかしながら、上記特許文献1に記載の鉄道車両用ブレーキ装置では、ブレーキ管1の空気圧力が低下するまでの間はブレーキ力を発生させるブレーキシリンダの圧力(ブレーキ圧)が上昇しないため、応答の遅れが生じることとなっていた。このため、貨車を高速運転すると、ブレーキ制動距離が長くなってしまう虞があるため、高速化を図ることが阻まれているという状況にあった。
【0006】
そこで、上述のような状況を解決する観点からは、機関車において、電磁自動ブレーキ方式とは異なる電磁直通ブレーキ方式の常用最大ブレーキ信号を発するように改造するとともに、鉄道車両用ブレーキ装置においては、この常用最大ブレーキ信号に基づいてブレーキシリンダに給気してブレーキ圧を上昇させるブレーキ電磁弁を追加することが考えられる。しかしながら、現状の機関車は、各客貨車に前述のブレーキ信号、ユルメ信号、及び非常ブレーキ信号しか発信できないものが多くなっている。このため、上述のような電磁直通ブレーキ方式の常用最大ブレーキ信号に基づいてブレーキを作動させる構成を追設することは、機関車側の指令用電気容量が不足してしまうことで、機関車側の電源供給装置の取替えが必要となってしまうといった問題がある。従って、高価な改造が必要になってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、高速運転を行った場合にブレーキの制動距離が長くなってしまうことを抑制することができるとともに、現行の鉄道車両に対して高速運転時の制動距離抑制のための改造も容易に行うことができる鉄道車両用ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明は、機関車から発信される自動空気ブレーキ作動用の電気指令であるブレーキ信号に基づいてブレーキ管内の空気圧力を減少させる電磁排気弁と、機関車から発信されるブレーキ解除用の電気指令であるユルメ信号に基づいて前記ブレーキ管に圧縮空気を供給する電磁供給弁と、ブレーキ力を発生させるブレーキシリンダに対し前記ブレーキ管内の空気圧力に応じて給気及び排気を行う制御弁と、機関車から発信される非常ブレーキ作動用の直通空気ブレーキ作動用電気指令である非常ブレーキ信号に基づいて前記ブレーキシリンダに給気して非常ブレーキ力を発生させる非常ブレーキ装置とを備えている鉄道車両用ブレーキ装置に関する。
【0009】
そして、本発明の鉄道車両用ブレーキ装置は、機関車からの前記非常ブレーキ信号を前記非常ブレーキ装置に送信するための信号線であるとともに、機関車からの常用最大ブレーキ作動用の電気指令をも送信するための信号線化とすることで、前記非常ブレーキ装置を構成するブレーキ電磁弁であるとともに、圧縮空気が溜められる空気ダメに接続され、前記非常ブレーキ信号線を介して送信される前記常用最大ブレーキ信号に基づいて前記ブレーキシリンダに給気して非常ブレーキと同等の常用ブレーキ力を発生させることを特徴とする。
【0010】
この構成によると、ブレーキ電磁弁は、非常ブレーキ信号を受信すると非常ブレーキ力を発生させるようにブレーキシリンダに給気する非常ブレーキ装置として作動し、常用最大ブレーキ信号を受信すると常用最大ブレーキ力を発生させるようにブレーキシリンダに給気する。即ち、ブレーキ電磁弁は、非常ブレーキ装置と常用最大ブレーキを発生させる手段とを兼ねることができるように構成されている。また、非常ブレーキ信号と常用最大ブレーキ信号とが同一の(1つの)信号線を用いて送信され、これらの両信号が同時に発信されているときは、非常ブレーキ信号が優先して送信される。このとき、ブレーキ電磁弁は、優先される非常ブレーキ信号に基づいて非常ブレーキ力を発生させるようにブレーキシリンダに給気する。よって、ブレーキ信号、ユルメ信号、非常ブレーキ信号に加えて常用最大ブレーキ信号にも対応した作動を行うことができるため、応答の遅いブレーキ信号に基づくブレーキ作動とは異なり高応答化を図った常用最大ブレーキを作動させることができ、高速運転の際におけるブレーキの制動距離が長くなってしまうことを抑制することができる。そして、ブレーキ電磁弁が非常ブレーキ装置として優先作動するとともに常用最大ブレーキを発生させる手段としても作動するため、高速運転時の際のブレーキの制動距離を短くするための改造も安価に行うことができる。従って、本発明によると、高速運転を行った場合にブレーキの制動距離が長くなってしまうことを抑制することができるとともに、現行の鉄道車両に対して高速運転時の制動距離抑制のための改造も容易に行うことができる鉄道車両用ブレーキ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。本発明の実施形態に係る鉄道車両用ブレーキ装置は、例えば、自動ブレーキ装置を備えた機関車と、電磁自動ブレーキ装置を備えた客貨車とを混結運用する際に用いられるものであり、本実施形態では、この場合について説明する。なお、本実施形態の鉄道車両用ブレーキ装置は、背景技術でも説明したように、とくに自動ブレーキ装置を備えた機関車と電磁自動ブレーキ装置を備えた貨車とが混結運用される場合に有効であるが、自動ブレーキ装置を備えた機関車と電磁自動ブレーキ装置を備えた客車とが混結運用される場合についても同様に適用することができる。
【0012】
図1は、本実施形態に係る鉄道車両用ブレーキ装置を例示したブロック図である。なお、図1において、図2に示す鉄道車両用ブレーキ装置と同様の機能を有する部分には、同一の符号を付している。図1に示す本実施形態の鉄道車両用ブレーキ装置30は、給排系統35(35a〜35f)、ブレーキ系統36(36a〜36f)、ブレーキシリンダ7(7a、7b)、電磁排気弁14、電磁給気弁15、制御弁16、信号線(S・R・E等)、ブレーキ電磁弁31、空気ダメ32(32a、32b)、圧力調整弁33、応荷重弁34、複式逆止弁37などを備えて構成されている。
【0013】
この鉄道車両用ブレーキ装置30は、例えば、自動ブレーキ装置を備えた図示しない機関車(図2参照)と混結運用される貨車11に配設される。そして、機関車側の図示しないブレーキ弁(図2参照)等が操作されることで、図示しない電空帰還器(図2参照)等と信号線(S・R・E等)とを介して、所定の電気指令である後述の各種信号が送信されるようになっている。なお、信号線(S・R・E等)は、機関車及び貨車11(貨車11は複数であっても単数であってもいずれでもよい)に引き通された引き通し線として構成されており、信号線Sは電磁排気弁14が接続され、信号線Rは電磁給気弁15が接続され、信号線Eはブレーキ電磁弁31が接続されている。
【0014】
給排系統35は、圧縮空気の貯留用のタンクである空気ダメ32(32a、32b)と元空気ダメ管2との間を配管35a〜35cにより接続し、ブレーキ管1と元空気ダメ管2との間を配管35a・35d〜35fにより接続している。そして、配管35dと配管35eとの間には電磁給気弁15が接続され、配管35eには電磁排気弁14が接続されている。
【0015】
ブレーキ系統36は、空気ダメ32aとブレーキシリンダ7(7a、7b)との間を配管36a〜36fにより接続している。そして、配管36aの中途には圧力調整弁33が接続されており、配管36aと配管36bとの間にはブレーキ電磁弁31が接続され、配管36bは複式逆止弁37を介して配管36cに接続されている。また、配管36cに接続する配管36dの一方の端部は、貨車11の重量に応じて作動する応荷重弁34a及び配管36eを介してブレーキシリンダ7aに接続され、配管36dの他方の端部は、応荷重弁34b及び配管36fを介してブレーキシリンダ7bに接続されている。配管36aには、空気ダメ32aと応荷重弁34aとの間を遮断可能な手動弁38が設けられており、この手動弁38は常時開けた状態となっている。なお、ブレーキ系統36の末端のブレーキシリンダ7は、例えば、ブレーキダイヤフラム等として構成されていてもよい。
【0016】
電磁排気弁14は、機関車側のブレーキ弁の所定の操作に伴って機関車から発信されるブレーキ作動用の電気指令であるブレーキ信号に基づいて作動するように信号線Sに電気的に接続されている(即ち、ブレーキ信号は信号線Sを通じて送信される)。そして、この電磁排気弁14は、信号線Sを介して送信されるブレーキ信号を受信すると(ブレーキ信号が入力されると)、励磁されてブレーキ管1内の空気圧力を減少させるように作動する。即ち、電磁排気弁14が励磁されて作動すると、それまで閉じた状態だった電磁排気弁14が開いた状態となって、ブレーキ管1の空気が配管35f・35f及びこの電磁排気弁14を経て排出されることになる。
【0017】
電磁給気弁15は、機関車側のブレーキ弁の所定の操作に伴って機関車から発信されるブレーキ解除用の電気指令であるユルメ信号に基づいて作動するように信号線Rに電気的に接続されている(即ち、ユルメ信号は信号線Rを通じて送信される)。そして、この電磁給気弁15は、信号線Rを介して送信されるユルメ信号を受信すると(ユルメ信号が入力されると)、励磁されてブレーキ管1に圧縮空気を供給するように作動する。即ち、電磁給気弁15が励磁されて作動すると、それまで閉じた状態だった電磁給気弁15が開いた状態となって、元空気ダメ管2が、配管35a・35d・電磁給気弁15・配管35e・35fを介してブレーキ管1と連通した状態となる。これにより、元空気ダメ管2の圧縮空気がブレーキ管1に供給されることになる。
【0018】
制御弁16は、配管39を介して空気ダメ32bに接続されているとともに、大気開放された配管40にも接続されている。また、制御弁16は、配管41、複式逆止弁37、及びブレーキ系統36c〜36fを介してブレーキシリンダ7(7a、7b)に接続され、さらに、配管35fを介してブレーキ管1にも接続されている。なお、配管39には、空気ダメ32bと応荷重弁34bとの間を遮断可能な手動弁42が設けられており、この手動弁42は常時開けた状態となっている。そして、このような接続構成のもと、この制御弁16は、ブレーキ管1内の空気圧力に応じて、ブレーキ力を発生させるブレーキシリンダ7に対して給気及び排気を行うよう作動するように構成されている。
【0019】
まず、機関車からブレーキ信号が発信されると、このブレーキ信号に基づいて電磁排気弁14が作動してブレーキ管1内の空気が排出されてその空気圧力が減少する。このとき、制御弁16は、ブレーキ管1内の空気圧力の減少に応じて配管39と配管41とを連通させるように作動する。これにより、空気ダメ32bからブレーキシリンダ7(7a、7b)への給気が行われてブレーキが作動することになる。一方、機関車からユルメ信号が発信されると、このユルメ信号に基づいて電磁給気弁15が作動してブレーキ管1に圧縮空気が供給される。このとき、制御弁16は、ブレーキ管1内の空気圧力の増加に応じて配管41と配管40とを連通させるように作動する。これにより、ブレーキシリンダ7(7a、7b)の排気が行われてブレーキが解除されることになる。
【0020】
ブレーキ電磁弁31は、前述のように、ブレーキ系統36の途中に設けられており、配管36a及び圧力調整弁33を介して空気ダメ32aに接続されるとともに、配管36b〜36fを介してブレーキシリンダ7(7a、7b)に接続されている。そして、このブレーキ電磁弁31は、機関車側のブレーキ弁などの所定の操作に伴って機関車から発信される非常ブレーキ信号及び常用最大ブレーキ信号のいずれにも基づいて作動するように信号線Eに電気的に接続されている。即ち、信号線Eは、機関車からの非常ブレーキ信号をブレーキ電磁弁31に送信するための信号線であるとともに、機関車からの常用最大ブレーキ信号もブレーキ電磁弁31に送信する信号線を構成している。
【0021】
なお、非常ブレーキ信号は機関車から発信される非常ブレーキ作動用の電気指令であり、一方、常用最大ブレーキ信号は機関車から発信される常用最大ブレーキ作動用の電気指令であって前述のブレーキ信号とは異なる信号として送信される電気指令である。そして、非常ブレーキ信号は、例えば、機関車側の非常ブレーキボタン等の非常ブレーキ信号発生手段を運転者が操作することで機関車から発信される。また、常用最大ブレーキ信号は、機関車側のブレーキレバー等の常用最大ブレーキ信号発生手段を運転者が操作してブレーキ弁の所定の操作が行われることで機関車から発信される。なお、非常ブレーキ信号発生手段及び常用最大ブレーキ信号発生手段と信号線Eとの間においては、所定のリレー回路が接続されて、機関車から非常ブレーキ信号が発信されたときは、常用最大ブレーキ信号よりも優先してこの非常ブレーキ信号がこの信号線Eを送信されるようになっている。即ち、非常ブレーキ発生手段と常用最大ブレーキ発生手段との同時操作が行われるタイミングが発生した場合は、非常ブレーキ信号が信号線Eから優先して送信されるようになっている。
【0022】
また、ブレーキ電磁弁31は、信号線Eを介して送信される非常ブレーキ信号を受信すると(非常ブレーキ信号が入力されると)、励磁されてブレーキシリンダ7(7a、7b)に空気ダメ32aの圧縮空気を供給するように作動する。即ち、ブレーキ電磁弁31が励磁されて作動すると、それまで閉じた状態だったブレーキ電磁弁31が開いた状態となって、空気ダメ32aが、ブレーキ系統36を介してブレーキシリンダ7と連通した状態となる。これにより、ブレーキシリンダ7が作動して非常ブレーキ力が発生することになる。また、ブレーキ電磁弁31が、信号線Eを介して送信される常用最大ブレーキ信号を受信すると(常用最大ブレーキ信号が入力されると)、励磁されて、上記と同様にブレーキシリンダ7に空気ダメ32aの圧縮空気を供給するように作動する。これにより、ブレーキシリンダ7が作動して常用最大ブレーキ力が発生することになる。このように、ブレーキ電磁弁31は、非常ブレーキ信号に基づいてブレーキシリンダ7に給気して非常ブレーキ力を発生させる非常ブレーキ装置を構成するとともに、常用最大ブレーキ信号に基づいてブレーキシリンダ7に給気して常用最大ブレーキ力を発生させる手段をも構成している。
【0023】
次に、上述した構成を備える鉄道車両用ブレーキ装置30の作動について説明する。まず、機関車からブレーキ信号が発信された場合は、前述したように、電磁排気弁14が作動してブレーキ管1の空気圧力が減少し、これにより、制御弁16が作動してブレーキシリンダ7へと給気されてブレーキシリンダ圧力(ブレーキ圧)が上昇してブレーキ動作が行われる。また、機関車からユルメ信号が発信された場合は、電磁給気弁15が作動してブレーキ管1の空気圧力が増加し、これにより、制御弁16が作動してブレーキシリンダ7から排気されてブレーキ圧が低下してブレーキ動作が解除される。
【0024】
一方、上記のブレーキ信号を発生させる操作とは異なる常用最大ブレーキ信号を発生させる操作が機関車側で行われて、常用最大ブレーキ信号が機関車から発信されると、ブレーキ電磁弁31が作動する。これにより、空気ダメ32aの圧縮空気がブレーキ系統36を通じて速やかにブレーキシリンダ7へと供給され、すぐにブレーキ圧が上昇して常用最大ブレーキ動作が行われる。また、機関車から非常ブレーキ信号が発信された場合も、ブレーキ電磁弁31が作動して、空気ダメ32aからブレーキ系統36を通じてブレーキシリンダ7へと給気され、すぐにブレーキ圧が上昇して非常ブレーキ動作が行われる。そして、機関車から非常ブレーキ信号が発信されたときは、常用最大ブレーキ信号よりも優先してこの非常ブレーキ信号が信号線Eを送信され、ブレーキ電磁弁31がこの優先された非常ブレーキ信号に応じて非常ブレーキ力を発生させるようにブレーキシリンダ7に給気することになる。
【0025】
以上説明したように、鉄道車両用ブレーキ装置30によると、ブレーキ電磁弁31は、非常ブレーキ信号を受信すると非常ブレーキ力を発生させるようにブレーキシリンダ7に給気する非常ブレーキ装置として作動し、常用最大ブレーキ信号を受信すると常用最大ブレーキ力を発生させるようにブレーキシリンダ7に給気する。即ち、ブレーキ電磁弁31は、非常ブレーキ装置と常用最大ブレーキを発生させる手段とを兼ねることができるように構成されている。また、非常ブレーキ信号と常用最大ブレーキ信号とが同一の(1つの)信号線Eを用いて送信され、これらの両信号が同時に発信されているときは、非常ブレーキ信号が優先して送信される。このとき、ブレーキ電磁弁31は、優先される非常ブレーキ信号に基づいて非常ブレーキ力を発生させるようにブレーキシリンダ7に給気する。よって、ブレーキ信号、ユルメ信号、非常ブレーキ信号に加えて常用最大ブレーキ信号にも対応した作動を行うことができるため、応答の遅いブレーキ信号に基づくブレーキ作動とは異なり高応答化を図った常用最大ブレーキを作動させることができ、高速運転の際におけるブレーキの制動距離が長くなってしまうことを抑制することができる。そして、ブレーキ電磁弁31が非常ブレーキ装置として優先作動するとともに常用最大ブレーキを発生させる手段としても作動するため、高速運転時の際のブレーキの制動距離を短くするための改造も安価に行うことができる。従って、本実施形態によると、高速運転を行った場合にブレーキの制動距離が長くなってしまうことを抑制することができるとともに、現行の鉄道車両に対して高速運転時の制動距離抑制のための改造も容易に行うことができる鉄道車両用ブレーキ装置を提供することができる。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る鉄道車両用ブレーキ装置のブロック図を例示したものである。
【図2】背景技術における鉄道車両用ブレーキ装置を説明するブロック図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ブレーキ管
2 元空気ダメ管
7 ブレーキシリンダ
10 機関車
11 貨車
12 ブレーキ弁
14 電磁排気弁
15 電磁給気弁
16 制御弁
30 鉄道車両用ブレーキ装置
31 ブレーキ電磁弁
32 空気ダメ
33 圧力調整弁
34 応荷重弁
35、35a、35b、35c、35d、35e、35f 給排系統
36、36a、36b、36c、36d、36e、36f ブレーキ系統
E 信号線
37 複式逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機関車から発信される自動空気ブレーキ作動用の電気指令であるブレーキ信号に基づいてブレーキ管内の空気圧力を減少させる電磁排気弁と、機関車から発信されるブレーキ解除用の電気指令であるユルメ信号に基づいて前記ブレーキ管に圧縮空気を供給する電磁給気弁と、ブレーキ力を発生させるブレーキシリンダに対し前記ブレーキ管内の空気圧力に応じて給気及び排気を行う制御弁と、機関車から発信される非常ブレーキ作動用の直通空気ブレーキ作動用電気指令である非常ブレーキ信号に基づいて前記ブレーキシリンダに給気して非常ブレーキ力を発生させる非常ブレーキ装置と、を備えている鉄道車両用ブレーキ装置において、
機関車からの前記非常ブレーキ信号を前記非常ブレーキ装置に送信するための信号線であるとともに、機関車からの常用最大ブレーキ作動用の電気指令をも送信するための信号線化とすることで、
前記非常ブレーキ装置を構成するブレーキ電磁弁であるとともに、圧縮空気が溜められる空気ダメに接続され、前記非常ブレーキ信号線を介して送信される前記常用最大ブレーキ信号に基づいて前記ブレーキシリンダに給気して非常ブレーキと同等の常用ブレーキ力を発生させることを特徴とする鉄道車両用ブレーキ装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−88964(P2006−88964A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−279479(P2004−279479)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】