鋼材の表面温度測定方法及び表面温度測定装置並びに鋼材の製造方法
【課題】 400℃程度の低温域の鋼材表面温度であっても精度良く測定できる方法等を提供する。
【解決手段】 表面温度測定装置100は、被測温鋼材Mに対向配置された放射温度計1を備え、被測温鋼材表面から放射された熱放射光を放射温度計で検出することにより、被測温鋼材の表面温度を測定する。表面温度測定装置は、被測温鋼材と放射温度計の検出素子との間に、1.00μm未満の波長の光と1.20μmよりも長い波長の光を遮断する光学フィルタを備える。好ましくは、被測温鋼材表面と放射温度計との間にパージ水を噴射するノズル2を備える。
【解決手段】 表面温度測定装置100は、被測温鋼材Mに対向配置された放射温度計1を備え、被測温鋼材表面から放射された熱放射光を放射温度計で検出することにより、被測温鋼材の表面温度を測定する。表面温度測定装置は、被測温鋼材と放射温度計の検出素子との間に、1.00μm未満の波長の光と1.20μmよりも長い波長の光を遮断する光学フィルタを備える。好ましくは、被測温鋼材表面と放射温度計との間にパージ水を噴射するノズル2を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延や連続鋳造など、鋼材の製造工程において、鋼材の表面温度を放射測温によって測定する方法及び装置並びにこの方法によって表面温度を測定する工程を含む鋼材の製造方法に関し、特に、鋼材を冷却する工程における400℃程度の低温域の表面温度を精度良く測定できる表面温度測定方法及び装置並びにこの方法によって表面温度を測定する工程を含む鋼材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材の熱間圧延ラインや熱処理・冷却ラインなどにおいて、搬送中の鋼材の表面温度を放射温度計を用いて測定する際には、被測温鋼材と放射温度計との間に湯気が存在したり、冷却水が飛散してきたり、或いは、被測温鋼材表面が水膜に覆われたり、水没したりすることが甚だしい。このような環境下では、被測温鋼材から放射された熱放射光が、水蒸気、湯気、冷却水等に吸収され或いは散乱されることにより、測温値に誤差が生じたり、測定できない場合が生じたりすることもある。また、このような環境下では、冷却水に含まれる不純物、被測温鋼材から剥離したスケール、工場内に浮遊する粉塵等によって、放射温度計の熱放射を取り込むための光学窓に汚れが生じ、これによって放射測温精度が劣化することもある。従って、このような環境下での放射測温は、不安定であり信頼性に乏しいものである。
【0003】
そこで、上記のような要因によって生じる測温誤差を低減し、安定した放射測温を可能とするべく、従来より、鋼材表面に向けてノズルからパージ用の水を噴出することにより放射温度計と鋼材表面との間に水柱を形成し、当該水柱を介して鋼材から放射される放射エネルギーを検出することにより鋼材表面温度を測定する方法が種々提案されている。
【0004】
より具体的に説明すれば、例えば、放射温度計によって検出する放射エネルギーの内、前記水柱によって吸収される放射エネルギー分を水柱の厚み測定値に基づいて補正演算することにより測温する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載の方法によれば、放射温度計と鋼材表面との間に水柱が形成されるため、水蒸気や飛散水などの外乱水によって生じ得る測温誤差を抑制可能であるという利点を有する。また、水柱を清浄水によって形成することにより、冷却水に含まれる不純物、鋼材から剥離したスケール、工場内に浮遊する粉塵等による光学窓の汚れも抑制可能である。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、放射温度計と鋼材表面との間に水蒸気や飛散水が侵入しないように、ノズルから相当勢いよく水を噴出させることになる。そのため、斯かるパージ水によって鋼材表面が冷却され、当該冷却された部分の表面温度が測定されることになるため、測温値の代表性が損なわれるという問題がある。また、鋼材が部分的に冷却されるので、鋼材に冷却むらが生じて材質が不均一になるという問題もある。
【0007】
斯かる特許文献1に記載の方法における問題点を改善した方法として、被測定物から放射された放射エネルギーに基づいて該被測定物の表面温度を測定する放射温度計と前記被測定物との間に水柱を形成し、該被測定物から放射された放射エネルギーの内、前記水柱が吸収した放射エネルギーの分を補正しながら、前記放射温度計を用いて前記被測定物の表面温度を測定する温度測定方法において、前記水柱を形成するに当たり、該水柱の温度を60℃以上にすることを特徴とする温度測定方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
特許文献2に記載の方法によれば、特許文献1に記載の方法と同様に、放射温度計と被測定物との間に水柱が形成されるため、水柱が形成された部分には水蒸気や飛散水が侵入し難く、これら水蒸気や飛散水による放射エネルギーの吸収や散乱に起因した測温誤差を低減することが可能である。さらに、特許文献2に記載の方法は、水柱の温度を60℃以上にする構成であり、水柱が接触している被測定物表面に沸騰膜が形成され易くなるため、これにより被測定物の表面温度低下を抑制し、測温値の代表性を損なうこともなく、被測定物の冷却むらも低減できるという利点を有する。
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、水柱の温度を60℃以上に上昇させるための加熱装置が必要であり、水を昇温させるためのエネルギーコストが掛かるという問題がある。また、特許文献1に記載の方法にも共通する問題点として、水柱の厚みを測定するための厚み測定装置(例えば、超音波方式)が必要であるため、装置全体の寸法が大きくなり、鋼材の搬送ロール間等の狭いスペースには設置し難いという問題がある。さらに、厚み測定装置をたとえ設置できたとしても、着脱に手間を要するなど保全性を阻害したり、厚み測定装置の故障による測温値の安定性・信頼性の低下が問題となる。
【0010】
そこで、これら特許文献1や2に記載された従来の方法の問題点を解決するため、本発明の発明者らは、特願2004−195914号において、下記の(a)及び(b)の方法を提案した。
(a)被測温鋼材表面から放射された熱放射光を被測温鋼材に対向配置した放射温度計で検出することにより、被測温鋼材の表面温度を測定する方法であって、前記放射温度計で検出される熱放射光の光路が通る領域における光路安定領域と光路不安定領域との界面と前記放射温度計の光軸との交点を基準とした被測温鋼材エッジ部の最小の拡がり角を75°以上に設定することを特徴とする鋼材の表面温度測定方法。
(b)被測温鋼材下面から放射された熱放射光を、被測温鋼材下面に向けてノズルから噴射したパージ水を介して被測温鋼材の下方に対向配置した放射温度計で検出することにより、被測温鋼材の表面温度を測定する方法であって、被測温鋼材のパスラインを位置基準とした前記パージ水の全ヘッドHt(m)が以下の式を満足することを特徴とする鋼材の表面温度測定方法。
−0.36Hg<Ht<0.05
ただし、Hg(m)は、パスラインとノズル先端との離間距離を意味する。
【0011】
また、好ましい構成として、上記(a)又は(b)の方法において、下記の(c)の構成を有する方法を提案した。
(c)前記放射温度計で検出する熱放射光の波長を0.9μm以下とすることを特徴とする鋼材の表面温度測定方法。
【特許文献1】特公平3−69974号公報
【特許文献2】特開平8−295950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特願2004−195914号において提案した方法によれば、外乱水による熱放射光の散乱に起因した測温誤差を抑制したり、測温のためのパージ水(水柱)を昇温させることなく、鋼材表面の冷却による測温誤差を抑制したり、外乱水による熱放射光の吸収に起因した測温誤差を抑制することが可能である。
【0013】
しかしながら、上記特願2004−195914号で提案した方法によって放射測温可能な鋼材表面温度の下限値は600℃程度であり、400℃程度の低温域の表面温度を測定することは困難であるという問題があった。
【0014】
また、測温のためのパージ水(水柱)による熱放射光の吸収の影響を緩和するため、被測温鋼材表面と放射温度計との間にパージ水を噴射するノズルを被測温鋼材に近接させる場合、被測温鋼材のパスラインが変動することによってノズルに被測温鋼材が衝突し易く、これにより操業が阻害されたり、ノズルが破損して温度測定が困難になるといった問題があった。
【0015】
本発明は、斯かる従来技術の問題点を解決するべくなされたものであり、400℃程度の低温域の鋼材表面温度であっても精度良く測定できる表面温度測定方法及び装置並びにこの方法によって表面温度を測定する工程を含む鋼材の製造方法を提供することを第1の課題とする。また、被測温鋼材表面と放射温度計との間にパージ水を噴射するノズルを被測温鋼材に近接して設置することのできる表面温度測定装置を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記第1の課題を解決するべく、本発明の発明者らは、先ず最初に、検出する熱放射光の波長を0.65〜0.83μmとした放射温度計を試作し、その温度特性を評価した。具体的には、放射温度計の温度特性を評価するために一般的に使用される放射熱源(黒体炉、温度バラツキ1℃以下)の温度を前記試作した放射温度計で測定し、その測温値のバラツキ(3σ)を評価した。なお、放射熱源である黒体炉の放射率は1.0とした。図2は、評価結果の一例を示すグラフである。図2に示すように、検出する熱放射光の波長が0.65〜0.83μmである放射温度計の場合、600℃以下では測温値の変動が大きくなり、精度良く温度を測定することができないことが分かった。これは、測定対象が低温になると、放射される熱放射光の長波長成分が増大することが原因であると考えられる。従って、600℃以下の低温域の温度を放射測温するには、検出する熱放射光の波長を0.65〜0.83μmよりも長波長側にシフトする必要のあることが分かった。
【0017】
次に、本発明の発明者らは、低温域の測定対象から放射された熱放射光を、測定対象と放射温度計との間に形成した水柱を介して検出する場合を想定し、水の分光透過率を調査した。図3は、黒体炉と放射温度計との間に介在させた水柱の厚みを3、11、50、100mmとした場合における、約0.7〜1.9μmの波長帯域における水の分光透過率を示すグラフである。なお、水柱は28℃の水道水を用いて形成した。図3に示すように、前述した0.65〜0.83μmよりも長波長側の波長帯域においては、1.1μm近傍の波長帯域において水の透過率が高くなることが分かった。
【0018】
そこで、本発明の発明者らは、検出する熱放射光の波長を1.1μm近傍の波長を含む1.00〜1.20μmとした放射温度計を試作し、その温度特性を黒体炉を用いて評価した。図4は、評価結果の一例を示すグラフである。図4に示すように、検出する熱放射光の波長が1.00〜1.20μmである放射温度計の場合、測温値のバラツキ(3σ)が3℃になるまでを許容範囲とすると、310℃まで測定可能であることが分かった。
【0019】
さらに、本発明の発明者らは、検出する熱放射光の波長を1.00〜1.20μmとした放射温度計と黒体炉との間に介在させる水柱の厚みを適宜変更すると共に、黒体炉の温度を適宜変更し、水の透過率を調査した。図5は、水の透過率を調査した結果を示すグラフである。図5に示すように、水柱の厚みが厚くなると透過率は低下するものの、20mm程度の厚みであれば、0.2程度の透過率が得られ、水柱を介しても透過率の点では十分に放射測温可能であることが分かった。
【0020】
そこで、本発明の発明者らは、検出する熱放射光の波長を1.00〜1.20μmとした放射温度計と黒体炉との間に介在させる水柱の厚みを20mmとし、その温度特性を評価した。図6は、評価結果の一例を示すグラフである。図6に示すように、検出する熱放射光の波長が1.00〜1.20μmである放射温度計の場合、厚み20mmの水柱を介すると、水柱を介さない場合(図4参照)に比べて測温値のバラツキ(3σ)が大きくなるものの、測温値のバラツキ(3σ)が3℃になるまでを許容範囲とすると、330℃程度までの低温域の測定対象を測温可能であることが分かった。
【0021】
以上のように、本発明の発明者らは、放射温度計で検出する熱放射光の波長を1.00〜1.20μmとすれば、被測温鋼材表面から放射された熱放射光を水柱を介して検出する場合であっても、水柱を介さずに直接検出する場合であっても、400℃程度の低温域の温度を精度良く測定できることを見出し、本発明を完成させたものである。すなわち、本発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載の如く、被測温鋼材表面から放射された熱放射光を被測温鋼材に対向配置した放射温度計で検出することにより、被測温鋼材の表面温度を測定する方法であって、前記放射温度計で検出する熱放射光の波長を1.00μm以上1.20μm以下のみとすることを特徴とする鋼材の表面温度測定方法を提供するものである。
【0022】
斯かる発明によれば、放射温度計で検出する熱放射光の波長を1.00μm以上1.20μm以下のみの長波長とすることにより、400℃程度の低温域であっても精度良く鋼材表面温度を測定することが可能である。
【0023】
なお、本発明の発明者らは、検出する熱放射光の波長を1.00〜1.20μmよりもさらに狭めた1.05〜1.15μmとした放射温度計を試作し、当該放射温度計と黒体炉との間に介在させる水柱の厚みを適宜変更すると共に、黒体炉の温度を適宜変更し、水の透過率を調査した。図7は、水の透過率を調査した結果を示すグラフである。図7に示すように、水柱の厚みが厚くなると透過率は低下するものの、20mm程度の厚みであれば0.4程度の透過率が、50mm程度の厚みであれば0.2程度の透過率が得られ、前述した図5に示す検出する熱放射光の波長を1.00〜1.20μmとした放射温度計の場合と比べて、透過率が2倍程度上昇することが分かった。
【0024】
また、本発明の発明者らは、検出する熱放射光の波長を1.05〜1.15μmとした放射温度計と黒体炉との間に介在させる水柱の厚みを20mm、50mmとし、その温度特性を評価した。図8は、評価結果の一例を示すグラフである。図8に示すように、検出する熱放射光の波長が1.05〜1.15μmである放射温度計の場合、厚み50mmの水柱を介する場合であっても、測温値のバラツキ(3σ)が3℃になるまでを許容範囲とすると、400℃程度までの低温域の測定対象を測温可能であることが分かった。
【0025】
従って、被測温鋼材表面から放射された熱放射光を被測温鋼材表面に向けて噴射したパージ水を介して放射温度計で検出する場合には、パージ水によって形成される水柱の厚みを比較的厚く設定できるという点で、放射温度計で検出する熱放射光の波長は、1.05μm以上1.15μm以下のみとすることが好ましい。
【0026】
好ましくは、特許請求の範囲の請求項2に記載の如く、被測温鋼材表面から放射された熱放射光を被測温鋼材表面に向けて噴射したパージ水を介して前記放射温度計で検出するように構成される。
【0027】
斯かる好ましい構成によれば、被測温鋼材表面に向けて噴射したパージ水によって形成される水柱を介して熱放射光を検出するため、水蒸気や飛散水などの外乱水によって生じ得る測温誤差を抑制可能である。また、放射温度計で検出する熱放射光の波長が、前述のように水の透過率が比較的高い1.1μm近傍の波長を含む1.00μm以上1.20μm以下とされているため、水柱による熱放射光の吸収の影響が少ないという利点を有する。
【0028】
また、前記第1の課題を解決するべく、本発明は、特許請求の範囲の請求項3に記載の如く、被測温鋼材に対向配置された放射温度計を備え、被測温鋼材表面から放射された熱放射光を前記放射温度計で検出することにより、被測温鋼材の表面温度を測定する装置であって、被測温鋼材と前記放射温度計の検出素子との間に、1.00μm未満の波長の光と1.20μmよりも長い波長の光を遮断する光学フィルタを備えることを特徴とする鋼材の表面温度測定装置としても提供される。
【0029】
好ましくは、特許請求の範囲の請求項4に記載の如く、前記鋼材の表面温度測定装置は、被測温鋼材表面と前記放射温度計との間にパージ水を噴射するノズルを備える。
【0030】
ここで、本発明の発明者らは、検出する熱放射光の波長を1.00〜1.20μmとした放射温度計と黒体炉(400℃)との間に介在させる水柱の厚みを20mmから変動させ、その温度特性を評価した。図9は、評価結果の一例を示すグラフである。図9に示すように、水柱の厚みが2mm変動すると3℃の測温誤差(放射率は1.0とした)が生じることになる。従って、高精度に測温するには、水柱の厚みを一定にすることが望ましい。
【0031】
従って、好ましくは、特許請求の範囲の請求項5に記載の如く、前記鋼材の表面温度測定装置は、被測温鋼材と前記ノズルとの離間距離を略一定に保持する手段を備える。
【0032】
斯かる好ましい構成によれば、被測温鋼材と前記ノズルとの離間距離が略一定に保持されるため、パージ水によって形成される水柱の厚みも略一定となり、水柱の厚みの変動に伴う水柱の透過率の変動、ひいては水柱による熱放射光の吸収の測温値に対する影響を緩和することが可能である。なお、被測温鋼材とノズルとの離間距離を略一定に保持する手段としては、例えば、ノズルに付設され、被測温鋼材の表面に常に接触するように前記被測温鋼材表面に向かって押圧される接触ローラを具備する接触ローラ機構を例示することができる。
【0033】
また、前記第1の課題に加えて前記第2の課題をも解決するべく、本発明は、特許請求の範囲の請求項6に記載の如く、前記ノズルが弾性変形可能に構成される。
【0034】
斯かる好ましい構成によれば、仮に被測温鋼材がパスライン変動によってノズルに衝突し、一時的にノズルが変形したとしても、ノズルが弾性変形可能であるため、パスライン変動した被測温鋼材が通過した後、ノズルは元の形状に復帰することになる。従って、操業が阻害されたり、ノズルが破損して温度測定が困難になるといった問題が生じ難く、ノズルを被測温鋼材に近接して設置することが可能である。なお、ノズルを弾性変形可能とするには、例えば、円筒状のゴム部材や圧縮コイルバネでノズルを形成することが考えられる。
【0035】
また、好ましくは、特許請求の範囲の請求項7に記載の如く、前記放射温度計は、前記ノズル内に配置された先端部で被測温鋼材表面から放射された熱放射光を受光して前記検出素子に伝送する光ファイバを備える。
【0036】
斯かる好ましい構成によれば、光ファイバの先端部で受光した熱放射光を当該光ファイバによって放射温度計の検出素子に伝送するため、検出素子を被測温鋼材から離間した位置に配置することができ、検出素子に対する熱放射光の影響を低減することが可能である。また、仮に被測温鋼材がパスライン変動によってノズルに衝突し、一時的にノズルが変形するような場合であっても、当該ノズルの変形に応じて光ファイバも変形可能であるため、破損により温度測定が困難になるという事態が生じ難いという利点を有する。
【0037】
なお、本発明は、特許請求の範囲の請求項8に記載の如く、請求項1又は2に記載の方法によって表面温度を測定する工程を含むことを特徴とする鋼材の製造方法としても提供される。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、放射温度計で検出する熱放射光の波長を1.00μm以上1.20μm以下の長波長とすることにより、400℃程度の低温域であっても精度良く鋼材表面温度を測定することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態について、熱延鋼板製造ラインの冷却帯下部に適用する場合を例に挙げて説明する。
【0040】
図1は、本発明の一実施形態に係る表面温度測定装置の概略構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る表面温度測定装置100は、被測温鋼材(本実施形態では鋼板M)に対向配置された放射温度計1を備え、鋼板M表面(本実施形態では下面)から放射された熱放射光を放射温度計1で検出することにより、鋼板Mの表面温度を測定する装置である。また、本実施形態に係る表面温度測定装置100は、鋼板M表面に向けてパージ水を噴射し、厚み20mmの水柱を形成するためのノズル2を備えている。
【0041】
本実施形態に係る放射温度計1は、先端部がノズル2内に配置され、鋼板M表面から放射された熱放射光を受光する光ファイバ11を備えている。本実施形態では、石英系の光ファイバ11を用いているが、少なくとも1.00μm〜1.20μmの波長の光を透過するものである限りにおいて、特にその材質は限定されるものではない。本実施形態に係る光ファイバ11は、コア径が400μmで保護被覆を含めた外径がφ2mmとされており、その先端部が、ノズル2内に設けられたガイド(図示せず)によって、ノズル2の略中心を通るように位置決めされている。そして、鋼板Mに対向する光ファイバ11の先端面と、鋼板Mのパスラインとの離間距離が20mmとなるように(これにより、ノズル2によって形成される水柱の厚みは20mmとなる)位置決めされている。光ファイバー11の先端面は、平坦面となるように加工されている。なお、本実施形態では、光ファイバ11の先端面を平坦面に加工しているが、集光効率を高めるために球面加工を施すことも可能である。ノズル2内に配置された光ファイバ11の先端部以外の部位は、破損を防止するために、ステンレス鋼製のフレキシブルチューブからなる保護カバー111で被覆されている。
【0042】
また、本実施形態に係る放射温度計1は、光ファイバ11の先端部で受光され光ファイバ11内を伝送された熱放射光を検出し、当該検出した熱放射光の光量に応じた温度表示を行う温度表示部12を備えている。温度表示部12は、光検出演算部121と、温度補正部122とを備えている。
【0043】
光検出演算部121は、光ファイバ11によって伝送された熱放射光を光電変換して光量に応じた電流を出力するInGaAsホトダイオード等の検出素子を備え、当該検出素子からの出力電流を増幅した後に、電流電圧変換及びAD変換を施し、水の透過率の補正を行って温度に換算するように構成されている。なお、光ファイバ11の後端部と前記検出素子との間には、1.00μm未満の波長の光と1.20μmよりも長い波長の光を遮断する光学フィルタ(図示せず)を配置しており、これにより、放射温度計1で検出する(検出素子で検出する)熱放射光の波長が1.00μm以上1.20μm以下のみに設定されることになる。また、光検出演算部121における水の透過率の補正(検出した熱放射光量をE、水の透過率をτとした場合、測定対象からの熱放射光量をE/τによって算出すること)(以下、光検出部121における補正を適宜「第1の補正」という)に用いる透過率としては、測定対象温度を500℃とし且つ厚みが20mmである場合について予め測定した透過率0.20を用いた。この透過率を用いた理由は、操業条件より、測定対象である鋼板Mの表面温度の範囲が300〜600℃程度と予想されることから、その略中間値である500℃を測定対象温度とすると共に、前述のようにノズル2によって形成される水柱の厚みが20mmだからである。
【0044】
温度補正部122は、上記のように光検出演算部121で演算された温度に関して、測定対象温度に応じて水の透過率が変化する影響を補正するように構成されている。以下、温度補正部122における水の透過率の補正(以下、温度補正部122における補正を適宜「第2の補正」という)について、より具体的に説明する。
【0045】
図10は、検出する熱放射光の波長を1.00〜1.20μmとした放射温度計と黒体炉との間に介在させる水柱の厚みを適宜変更すると共に、黒体炉の温度を適宜変更し、黒体炉温度毎の水の透過率を調査した結果の一例を示すグラフである。図10に示すように、測定対象である黒体炉の温度が高くなるに従って、何れの水柱の厚みの場合も水の透過率が高くなることが分かる。
【0046】
そして、測定対象温度がどのような温度であったとしても、測定対象温度が520℃の場合の水の透過率を固定して(一律に用いて)補正し黒体炉を測温した場合の測温誤差(放射率は1.0とした)を評価した。図11は、評価結果の一例を示すグラフである。図11に示すように、例えば、水柱の厚みが20mmである場合、測定対象温度が520℃のときの水の透過率0.21を固定して補正することにより、測定対象温度が約300〜700℃の範囲でおよそ10℃の測温誤差を生じることになる。これは、図10に示すように、測定対象温度が高くなるに従って、実際には水の透過率が高くなるため、測定対象温度がどのような温度であったとしても固定の水の透過率を用いて補正したのでは、透過率の変化に伴う測温誤差が生じるからである。
【0047】
上記の測温誤差を低減するには、図11に示すような水の透過率を固定したときの測定対象温度と測温誤差との関係を各水柱の厚み毎に直線近似し、下記の式(1)に従って補正を行えばよい。
T=T1+(T0−T1)×α ・・・ (1)
ここで、上記式(1)において、Tは補正後の測温値(℃)を、T1は測温値(固定した水の透過率を用いて補正した測温値)(℃)を、T0は固定した水の透過率に対応する測定対象温度を、αは近似直線の傾きを意味する。
【0048】
図12は、測定対象温度が約300〜700℃の範囲である場合において、水柱の厚みを20mmとし且つ測定対象温度が550℃のときの水の透過率0.21を固定して補正することにより得られた測温値T1を、上記式(1)に従って更に補正した場合に得られる測温誤差(補正後の測温値Tと真温度との差)を評価した結果の一例を示すグラフである。図12に示すように、式(1)に従って更に補正することにより、測温誤差が1℃程度に低減されることが分かる。
【0049】
以上に説明したように、固定した水の透過率を用いて補正(第1の補正)した測温値を式(1)に従って補正(第2の補正)することにより、測定対象温度に応じて水の透過率が変化する影響を低減することが可能である。
【0050】
そこで、本実施形態に係る温度補正部122は、前述した光検出部121における第1の補正で用いた透過率(測定対象温度を500℃とし且つ厚みが20mmである場合について予め測定した透過率0.20)を固定すると、測定対象温度が400℃の場合には6℃低い測温値T1(すなわち、T1=394℃)が得られることに基づいて、式(1)のαを同定し、以下の式(1)’に従った第2の補正を行うように構成されている。
T=T1+(500−T1)×0.0575 ・・・ (1)’
すなわち、上記式(1)’にT1=394℃を代入すると、T≒400℃となり、補正後の測温値Tは、真の温度である400℃に等しい値となる。
【0051】
図1に示すように、ノズル2は、外部からパージ水を流入することにより、先端部から鋼板M表面に向けてパージ水を噴射するように構成されている。ノズル2の先端部の口径はφ12mmとされ、外部から流入するパージ水の流量は3リットル/分とされており、これにより、パージ水によって形成される水柱は鋼板Mの表面に高圧で衝突することなく接触する程度になり、水柱による鋼板M表面の冷却が抑制される。
【0052】
本実施形態に係るノズル2は、ステンレス鋼製の圧縮コイルバネで形成されている。ノズル2を圧縮コイルバネで形成した理由は、圧縮コイルバネを構成する線材が互いに密にコイル状に巻回されているため、パージ水が線材の隙間から漏れ出すことが少ないと共に、鋼板Mがパスライン変動して衝突したとしても、圧縮コイルバネが弾性変形するためノズル2の破損を防止できるからである。図13は、圧縮コイルバネで形成したノズル2が弾性変形する様子を示す説明図であり、図13(a)は弾性変形した状態を、図13(b)は元の形状に復帰した状態を示す。図13(a)に示すように、鋼板Mがパスライン変動によってノズル2に衝突(図13(a)に示す例では、鋼板Mの先端部に生じた下反り部がノズル2に衝突)し、一時的にノズル2が変形したとしても、ノズル2は弾性変形可能であるため、パスライン変動した鋼板Mが通過した後(鋼板Mの先端部に生じた下反り部が通過した後)には、図13(b)に示すように、ノズル2は元の形状に復帰することになる。なお、必ずしもノズル2の全体を圧縮コイルバネで形成する必要はなく、一部を圧縮コイルバネで形成すれば足りる。
【0053】
本実施形態のようにノズル2を鋼板M表面に近接して設置する場合、上記のようにノズル2を弾性変形可能に構成することが好ましい。ノズル2を弾性変形可能に構成するには、上記のように圧縮コイルバネでノズル2を形成する他、円筒状のゴム部材でノズル2を形成してもよい。斯かるゴム部材としては、必ずしも耐熱性に優れたものを用いる必要はない。これは、パージ水によってゴム部材の内外面が冷却されることになるため、ゴム部材自体が100℃以上の温度にはならないからである。
【0054】
なお、鋼板Mのパスライン変動が大きく、鋼板Mとノズル2との離間距離の変動、ひいては水柱の厚みの変動が大きくなる場合には、測温精度を維持するべく、鋼板Mとノズル2との離間距離を略一定に保持する手段を設けることが好ましい。斯かる手段を設けることにより、パージ水によって形成される水柱の厚みも略一定となり、水柱の厚みの変動に伴う水柱の透過率の変動、ひいては水柱による熱放射光の吸収の測温値に対する影響を緩和することが可能である。なお、鋼板Mとノズル2との離間距離を略一定に保持する手段としては、例えば、図14に示すように、ノズル2に付設され、鋼板M表面に常に接触するように鋼板M表面に向かって押圧される接触ローラ221を具備する接触ローラ機構22を例示することができる。また、図15に示すように、鋼板Mとノズル2との離間距離を測定(ひいては水柱の厚みを測定)する距離計を付設し、当該距離計の測定値によって水柱の透過率を補正する方法を採用することも可能である。
【0055】
図16は、以上に説明した本実施形態に係る表面温度測定装置100によって、鋼板M下面の温度を実際に測定した結果の一例を示すグラフである。なお、図16には、同じタイミングで鋼板M上面の温度を従来の放射温度計(検出素子:InGaAs、検出波長:1.0〜1.6μm)で測定した結果(比較的優れた環境条件下での測温結果)も図示している。図16に示すように、鋼板Mの上面及び下面についての測温値の傾向は略一致しており、本実施形態に係る表面温度測定装置100の測温値には一定の信頼性が得られることが分かった。
【0056】
なお、本実施形態では、被測温鋼材としての鋼板Mの下面から放射された熱放射光を鋼板Mに対向配置した放射温度計で検出する構成について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、被測温鋼材としての鋼板Mの上面から放射された熱放射光を鋼板Mに対向配置した放射温度計で検出する構成とすることも無論可能である。また、鋼板Mが鉛直方向に搬送されるような製造ラインにおいて、鋼板M表面から放射された熱放射光を当該鋼板M表面に対向配置した放射温度計で検出する構成とすることも可能である。さらには、鋼管や形鋼などの被測温鋼材側面から放射された熱放射光を当該被測温鋼材側面に対向配置した放射温度計で検出する構成とすることも可能である。
【0057】
以下、本発明に係る表面温度測定装置を熱延鋼板の製造ラインに適用して、熱延鋼板を製造する方法について説明する。
【0058】
図17は、熱延鋼板の製造ラインの概略構成例を示す模式図である。
図17に示すように、熱延鋼板を製造するに際しては、まず加熱炉3でスラブを1000〜1200℃に加熱昇温する。次に、昇温加熱したスラブをその幅を決定すると共に、仕上圧延機6で圧延可能な厚みまで粗圧延機4で圧延し、粗バーと称される中間部材にまで圧延する。次に、必要に応じて、再加熱装置5において、誘導加熱等により粗バーを再加熱する。次に、仕上圧延機6において、粗バーを目標とする熱延鋼板の厚みになるまで圧延する。なお、仕上圧延機6における仕上圧延後の鋼板の温度はおよそ700〜1000℃、厚みは1mm前後〜十数mm程度、板速度は600mpmから1500mpmである。
【0059】
仕上圧延機6による圧延後の鋼板は、第1冷却帯7又は第2冷却帯8において目標温度にまで冷却され、ダウンコイラー9によってコイル状に巻き取られる。或いは、第1冷却帯7、第2冷却帯8及びその中間に位置する非冷却ゾーンを利用して、冷却履歴を制御する場合もある。第1冷却帯7、第2冷却帯8では、冷却水を噴出するミスト冷却又はラミナー冷却と称される多数の冷却用ノズルが配置されており、その内の適当な本数のノズルから水を噴出して鋼板を冷却する。噴出するノズル本数や位置などの冷却条件は、セットアップ学習やダイナミックフィードバックなどを利用して制御される。
【0060】
以上に説明した熱延鋼板の製造ラインにおいて、本発明に係る表面温度測定装置は、例えば、従来測温が困難であった第1冷却帯7又は第2冷却帯8の下面の温度を測定するために用いることができる(図17の適用1)。なお、厚みの薄い鋼板の場合には、下面からの測温値が、おおよそ鋼板の厚み方向の代表温度を示すと考えて問題ない。
【0061】
また、第1冷却帯7又は第2冷却帯8の前後に本発明に係る表面温度測定装置を設置し、従来の温度計の代わりに用いることも可能である(図17の適用2)。従来の温度計は、特にコイルの先端部で湯気の影響により出力値が小さくなることがあるが、本発明に係る表面温度測定装置を適用すれば、コイルの最先端部から測温可能である。
【0062】
また、第1冷却帯7又は第2冷却帯8において、鋼板上方に本発明に係る表面温度測定装置を設置し、測温することも可能である(図17の適用3)。スプレーやラミナー冷却水が鋼板に衝突している領域を除けば、鋼板上面に冷却水が乗っている状態でも当該水乗りを介して測温することが可能である。
【0063】
また、仕上圧延機6の近傍、或いは、仕上圧延機6の各スタンド間に、本発明に係る表面温度測定装置を設置し、測温することも可能である(図17の適用4)。斯かる場所でも、仕上圧延機6の冷却水や、スタンド間スプレーと称される冷却水が外乱水として存在することになるが、外乱水の影響を低減して測温することが可能である。斯かる場所での鋼板温度を測定することにより、重要な管理指標である圧延直後の温度の管理・制御に用いることができる。
【0064】
さらに、搬送ロールの冷却水などが外乱水として存在するような場所に、本発明に係る表面温度測定装置を設置して測温すれば、有用な温度管理を行うことができる(図17の適用5、6)。
【0065】
以上に説明したように、本発明に係る表面温度測定装置は、熱延鋼板の製造ラインにおいて、図17の適用1〜6で示すような箇所に設置することができる。この内、鋼板の品質制御に特に重要であるのは、適用1〜4で示す箇所の温度管理であるため、当該箇所に測温精度の高い本発明に係る表面温度測定装置を設置するのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る表面温度測定装置の概略構成を示す図である。
【図2】図2は、検出する熱放射光の波長を0.65〜0.83μmとした放射温度計の測温値バラツキを評価した結果の一例を示すグラフである。
【図3】図3は、約0.7〜1.9μmの波長帯域における水の分光透過率を調査した結果を示すグラフである。
【図4】図4は、検出する熱放射光の波長を1.00〜1.20μmとした放射温度計の測温値バラツキを評価した結果の一例を示すグラフである。
【図5】図5は、1.00〜1.20μmの波長帯域における水の透過率を調査した結果を示すグラフである。
【図6】図6は、厚み20mmの水柱を介して検出する熱放射光の波長を1.00〜1.20μmとした放射温度計の測温値バラツキを評価した結果の一例を示すグラフである。
【図7】図7は、1.05〜1.15μmの波長帯域における水の透過率を調査した結果を示すグラフである。
【図8】図8は、厚み20mm、50mmの水柱を介して検出する熱放射光の波長を1.05〜1.15μmとした放射温度計の測温値バラツキを評価した結果の一例を示すグラフである。
【図9】図9は、熱放射光の波長を1.00〜1.20μmとした放射温度計と黒体炉(400℃)との間に介在させる水柱の厚みを20mmから変動させた場合に生じる測温誤差を評価した結果の一例を示すグラフである。
【図10】図10は、検出する熱放射光の波長を1.00〜1.20μmとした放射温度計と黒体炉との間に介在させる水柱の厚みを適宜変更すると共に、黒体炉の温度を適宜変更し、水の透過率を調査した結果の一例を示すグラフである。
【図11】図11は、測定対象温度がどのような温度であったとしても、測定対象温度が520℃の場合の水の透過率を固定して(一律に用いて)補正し測温した場合の測温誤差を評価した結果の一例を示すグラフである。
【図12】図12は、測定対象温度が約300〜700℃の範囲である場合において、水柱の厚みを20mmとし且つ測定対象温度が550℃のときの水の透過率0.21を固定して補正することにより得られた測温値を、更に補正した場合に得られる測温誤差を評価した結果の一例を示すグラフである。
【図13】図13は、圧縮コイルバネで形成したノズルが弾性変形する様子を示す説明図であり、図13(a)は弾性変形した状態を、図13(b)は元の形状に復帰した状態を示す。
【図14】図14は、被測温鋼材とノズルとの離間距離を略一定に保持する手段の一例を説明する説明図である。
【図15】図15は、被測温鋼材とノズルとの離間距離を測定する手段の一例を説明する説明図である。
【図16】図16は、本発明の一実施形態に係る表面温度測定装置によって、鋼板下面の温度を実際に測定した結果の一例を示すグラフである。
【図17】図17は、熱延鋼板の製造ラインの概略構成例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0067】
1・・・放射温度計
2・・・ノズル
11・・・光ファイバ
12・・・温度表示部
M・・・被測温鋼材(鋼板)
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延や連続鋳造など、鋼材の製造工程において、鋼材の表面温度を放射測温によって測定する方法及び装置並びにこの方法によって表面温度を測定する工程を含む鋼材の製造方法に関し、特に、鋼材を冷却する工程における400℃程度の低温域の表面温度を精度良く測定できる表面温度測定方法及び装置並びにこの方法によって表面温度を測定する工程を含む鋼材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材の熱間圧延ラインや熱処理・冷却ラインなどにおいて、搬送中の鋼材の表面温度を放射温度計を用いて測定する際には、被測温鋼材と放射温度計との間に湯気が存在したり、冷却水が飛散してきたり、或いは、被測温鋼材表面が水膜に覆われたり、水没したりすることが甚だしい。このような環境下では、被測温鋼材から放射された熱放射光が、水蒸気、湯気、冷却水等に吸収され或いは散乱されることにより、測温値に誤差が生じたり、測定できない場合が生じたりすることもある。また、このような環境下では、冷却水に含まれる不純物、被測温鋼材から剥離したスケール、工場内に浮遊する粉塵等によって、放射温度計の熱放射を取り込むための光学窓に汚れが生じ、これによって放射測温精度が劣化することもある。従って、このような環境下での放射測温は、不安定であり信頼性に乏しいものである。
【0003】
そこで、上記のような要因によって生じる測温誤差を低減し、安定した放射測温を可能とするべく、従来より、鋼材表面に向けてノズルからパージ用の水を噴出することにより放射温度計と鋼材表面との間に水柱を形成し、当該水柱を介して鋼材から放射される放射エネルギーを検出することにより鋼材表面温度を測定する方法が種々提案されている。
【0004】
より具体的に説明すれば、例えば、放射温度計によって検出する放射エネルギーの内、前記水柱によって吸収される放射エネルギー分を水柱の厚み測定値に基づいて補正演算することにより測温する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載の方法によれば、放射温度計と鋼材表面との間に水柱が形成されるため、水蒸気や飛散水などの外乱水によって生じ得る測温誤差を抑制可能であるという利点を有する。また、水柱を清浄水によって形成することにより、冷却水に含まれる不純物、鋼材から剥離したスケール、工場内に浮遊する粉塵等による光学窓の汚れも抑制可能である。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、放射温度計と鋼材表面との間に水蒸気や飛散水が侵入しないように、ノズルから相当勢いよく水を噴出させることになる。そのため、斯かるパージ水によって鋼材表面が冷却され、当該冷却された部分の表面温度が測定されることになるため、測温値の代表性が損なわれるという問題がある。また、鋼材が部分的に冷却されるので、鋼材に冷却むらが生じて材質が不均一になるという問題もある。
【0007】
斯かる特許文献1に記載の方法における問題点を改善した方法として、被測定物から放射された放射エネルギーに基づいて該被測定物の表面温度を測定する放射温度計と前記被測定物との間に水柱を形成し、該被測定物から放射された放射エネルギーの内、前記水柱が吸収した放射エネルギーの分を補正しながら、前記放射温度計を用いて前記被測定物の表面温度を測定する温度測定方法において、前記水柱を形成するに当たり、該水柱の温度を60℃以上にすることを特徴とする温度測定方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
特許文献2に記載の方法によれば、特許文献1に記載の方法と同様に、放射温度計と被測定物との間に水柱が形成されるため、水柱が形成された部分には水蒸気や飛散水が侵入し難く、これら水蒸気や飛散水による放射エネルギーの吸収や散乱に起因した測温誤差を低減することが可能である。さらに、特許文献2に記載の方法は、水柱の温度を60℃以上にする構成であり、水柱が接触している被測定物表面に沸騰膜が形成され易くなるため、これにより被測定物の表面温度低下を抑制し、測温値の代表性を損なうこともなく、被測定物の冷却むらも低減できるという利点を有する。
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、水柱の温度を60℃以上に上昇させるための加熱装置が必要であり、水を昇温させるためのエネルギーコストが掛かるという問題がある。また、特許文献1に記載の方法にも共通する問題点として、水柱の厚みを測定するための厚み測定装置(例えば、超音波方式)が必要であるため、装置全体の寸法が大きくなり、鋼材の搬送ロール間等の狭いスペースには設置し難いという問題がある。さらに、厚み測定装置をたとえ設置できたとしても、着脱に手間を要するなど保全性を阻害したり、厚み測定装置の故障による測温値の安定性・信頼性の低下が問題となる。
【0010】
そこで、これら特許文献1や2に記載された従来の方法の問題点を解決するため、本発明の発明者らは、特願2004−195914号において、下記の(a)及び(b)の方法を提案した。
(a)被測温鋼材表面から放射された熱放射光を被測温鋼材に対向配置した放射温度計で検出することにより、被測温鋼材の表面温度を測定する方法であって、前記放射温度計で検出される熱放射光の光路が通る領域における光路安定領域と光路不安定領域との界面と前記放射温度計の光軸との交点を基準とした被測温鋼材エッジ部の最小の拡がり角を75°以上に設定することを特徴とする鋼材の表面温度測定方法。
(b)被測温鋼材下面から放射された熱放射光を、被測温鋼材下面に向けてノズルから噴射したパージ水を介して被測温鋼材の下方に対向配置した放射温度計で検出することにより、被測温鋼材の表面温度を測定する方法であって、被測温鋼材のパスラインを位置基準とした前記パージ水の全ヘッドHt(m)が以下の式を満足することを特徴とする鋼材の表面温度測定方法。
−0.36Hg<Ht<0.05
ただし、Hg(m)は、パスラインとノズル先端との離間距離を意味する。
【0011】
また、好ましい構成として、上記(a)又は(b)の方法において、下記の(c)の構成を有する方法を提案した。
(c)前記放射温度計で検出する熱放射光の波長を0.9μm以下とすることを特徴とする鋼材の表面温度測定方法。
【特許文献1】特公平3−69974号公報
【特許文献2】特開平8−295950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特願2004−195914号において提案した方法によれば、外乱水による熱放射光の散乱に起因した測温誤差を抑制したり、測温のためのパージ水(水柱)を昇温させることなく、鋼材表面の冷却による測温誤差を抑制したり、外乱水による熱放射光の吸収に起因した測温誤差を抑制することが可能である。
【0013】
しかしながら、上記特願2004−195914号で提案した方法によって放射測温可能な鋼材表面温度の下限値は600℃程度であり、400℃程度の低温域の表面温度を測定することは困難であるという問題があった。
【0014】
また、測温のためのパージ水(水柱)による熱放射光の吸収の影響を緩和するため、被測温鋼材表面と放射温度計との間にパージ水を噴射するノズルを被測温鋼材に近接させる場合、被測温鋼材のパスラインが変動することによってノズルに被測温鋼材が衝突し易く、これにより操業が阻害されたり、ノズルが破損して温度測定が困難になるといった問題があった。
【0015】
本発明は、斯かる従来技術の問題点を解決するべくなされたものであり、400℃程度の低温域の鋼材表面温度であっても精度良く測定できる表面温度測定方法及び装置並びにこの方法によって表面温度を測定する工程を含む鋼材の製造方法を提供することを第1の課題とする。また、被測温鋼材表面と放射温度計との間にパージ水を噴射するノズルを被測温鋼材に近接して設置することのできる表面温度測定装置を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記第1の課題を解決するべく、本発明の発明者らは、先ず最初に、検出する熱放射光の波長を0.65〜0.83μmとした放射温度計を試作し、その温度特性を評価した。具体的には、放射温度計の温度特性を評価するために一般的に使用される放射熱源(黒体炉、温度バラツキ1℃以下)の温度を前記試作した放射温度計で測定し、その測温値のバラツキ(3σ)を評価した。なお、放射熱源である黒体炉の放射率は1.0とした。図2は、評価結果の一例を示すグラフである。図2に示すように、検出する熱放射光の波長が0.65〜0.83μmである放射温度計の場合、600℃以下では測温値の変動が大きくなり、精度良く温度を測定することができないことが分かった。これは、測定対象が低温になると、放射される熱放射光の長波長成分が増大することが原因であると考えられる。従って、600℃以下の低温域の温度を放射測温するには、検出する熱放射光の波長を0.65〜0.83μmよりも長波長側にシフトする必要のあることが分かった。
【0017】
次に、本発明の発明者らは、低温域の測定対象から放射された熱放射光を、測定対象と放射温度計との間に形成した水柱を介して検出する場合を想定し、水の分光透過率を調査した。図3は、黒体炉と放射温度計との間に介在させた水柱の厚みを3、11、50、100mmとした場合における、約0.7〜1.9μmの波長帯域における水の分光透過率を示すグラフである。なお、水柱は28℃の水道水を用いて形成した。図3に示すように、前述した0.65〜0.83μmよりも長波長側の波長帯域においては、1.1μm近傍の波長帯域において水の透過率が高くなることが分かった。
【0018】
そこで、本発明の発明者らは、検出する熱放射光の波長を1.1μm近傍の波長を含む1.00〜1.20μmとした放射温度計を試作し、その温度特性を黒体炉を用いて評価した。図4は、評価結果の一例を示すグラフである。図4に示すように、検出する熱放射光の波長が1.00〜1.20μmである放射温度計の場合、測温値のバラツキ(3σ)が3℃になるまでを許容範囲とすると、310℃まで測定可能であることが分かった。
【0019】
さらに、本発明の発明者らは、検出する熱放射光の波長を1.00〜1.20μmとした放射温度計と黒体炉との間に介在させる水柱の厚みを適宜変更すると共に、黒体炉の温度を適宜変更し、水の透過率を調査した。図5は、水の透過率を調査した結果を示すグラフである。図5に示すように、水柱の厚みが厚くなると透過率は低下するものの、20mm程度の厚みであれば、0.2程度の透過率が得られ、水柱を介しても透過率の点では十分に放射測温可能であることが分かった。
【0020】
そこで、本発明の発明者らは、検出する熱放射光の波長を1.00〜1.20μmとした放射温度計と黒体炉との間に介在させる水柱の厚みを20mmとし、その温度特性を評価した。図6は、評価結果の一例を示すグラフである。図6に示すように、検出する熱放射光の波長が1.00〜1.20μmである放射温度計の場合、厚み20mmの水柱を介すると、水柱を介さない場合(図4参照)に比べて測温値のバラツキ(3σ)が大きくなるものの、測温値のバラツキ(3σ)が3℃になるまでを許容範囲とすると、330℃程度までの低温域の測定対象を測温可能であることが分かった。
【0021】
以上のように、本発明の発明者らは、放射温度計で検出する熱放射光の波長を1.00〜1.20μmとすれば、被測温鋼材表面から放射された熱放射光を水柱を介して検出する場合であっても、水柱を介さずに直接検出する場合であっても、400℃程度の低温域の温度を精度良く測定できることを見出し、本発明を完成させたものである。すなわち、本発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載の如く、被測温鋼材表面から放射された熱放射光を被測温鋼材に対向配置した放射温度計で検出することにより、被測温鋼材の表面温度を測定する方法であって、前記放射温度計で検出する熱放射光の波長を1.00μm以上1.20μm以下のみとすることを特徴とする鋼材の表面温度測定方法を提供するものである。
【0022】
斯かる発明によれば、放射温度計で検出する熱放射光の波長を1.00μm以上1.20μm以下のみの長波長とすることにより、400℃程度の低温域であっても精度良く鋼材表面温度を測定することが可能である。
【0023】
なお、本発明の発明者らは、検出する熱放射光の波長を1.00〜1.20μmよりもさらに狭めた1.05〜1.15μmとした放射温度計を試作し、当該放射温度計と黒体炉との間に介在させる水柱の厚みを適宜変更すると共に、黒体炉の温度を適宜変更し、水の透過率を調査した。図7は、水の透過率を調査した結果を示すグラフである。図7に示すように、水柱の厚みが厚くなると透過率は低下するものの、20mm程度の厚みであれば0.4程度の透過率が、50mm程度の厚みであれば0.2程度の透過率が得られ、前述した図5に示す検出する熱放射光の波長を1.00〜1.20μmとした放射温度計の場合と比べて、透過率が2倍程度上昇することが分かった。
【0024】
また、本発明の発明者らは、検出する熱放射光の波長を1.05〜1.15μmとした放射温度計と黒体炉との間に介在させる水柱の厚みを20mm、50mmとし、その温度特性を評価した。図8は、評価結果の一例を示すグラフである。図8に示すように、検出する熱放射光の波長が1.05〜1.15μmである放射温度計の場合、厚み50mmの水柱を介する場合であっても、測温値のバラツキ(3σ)が3℃になるまでを許容範囲とすると、400℃程度までの低温域の測定対象を測温可能であることが分かった。
【0025】
従って、被測温鋼材表面から放射された熱放射光を被測温鋼材表面に向けて噴射したパージ水を介して放射温度計で検出する場合には、パージ水によって形成される水柱の厚みを比較的厚く設定できるという点で、放射温度計で検出する熱放射光の波長は、1.05μm以上1.15μm以下のみとすることが好ましい。
【0026】
好ましくは、特許請求の範囲の請求項2に記載の如く、被測温鋼材表面から放射された熱放射光を被測温鋼材表面に向けて噴射したパージ水を介して前記放射温度計で検出するように構成される。
【0027】
斯かる好ましい構成によれば、被測温鋼材表面に向けて噴射したパージ水によって形成される水柱を介して熱放射光を検出するため、水蒸気や飛散水などの外乱水によって生じ得る測温誤差を抑制可能である。また、放射温度計で検出する熱放射光の波長が、前述のように水の透過率が比較的高い1.1μm近傍の波長を含む1.00μm以上1.20μm以下とされているため、水柱による熱放射光の吸収の影響が少ないという利点を有する。
【0028】
また、前記第1の課題を解決するべく、本発明は、特許請求の範囲の請求項3に記載の如く、被測温鋼材に対向配置された放射温度計を備え、被測温鋼材表面から放射された熱放射光を前記放射温度計で検出することにより、被測温鋼材の表面温度を測定する装置であって、被測温鋼材と前記放射温度計の検出素子との間に、1.00μm未満の波長の光と1.20μmよりも長い波長の光を遮断する光学フィルタを備えることを特徴とする鋼材の表面温度測定装置としても提供される。
【0029】
好ましくは、特許請求の範囲の請求項4に記載の如く、前記鋼材の表面温度測定装置は、被測温鋼材表面と前記放射温度計との間にパージ水を噴射するノズルを備える。
【0030】
ここで、本発明の発明者らは、検出する熱放射光の波長を1.00〜1.20μmとした放射温度計と黒体炉(400℃)との間に介在させる水柱の厚みを20mmから変動させ、その温度特性を評価した。図9は、評価結果の一例を示すグラフである。図9に示すように、水柱の厚みが2mm変動すると3℃の測温誤差(放射率は1.0とした)が生じることになる。従って、高精度に測温するには、水柱の厚みを一定にすることが望ましい。
【0031】
従って、好ましくは、特許請求の範囲の請求項5に記載の如く、前記鋼材の表面温度測定装置は、被測温鋼材と前記ノズルとの離間距離を略一定に保持する手段を備える。
【0032】
斯かる好ましい構成によれば、被測温鋼材と前記ノズルとの離間距離が略一定に保持されるため、パージ水によって形成される水柱の厚みも略一定となり、水柱の厚みの変動に伴う水柱の透過率の変動、ひいては水柱による熱放射光の吸収の測温値に対する影響を緩和することが可能である。なお、被測温鋼材とノズルとの離間距離を略一定に保持する手段としては、例えば、ノズルに付設され、被測温鋼材の表面に常に接触するように前記被測温鋼材表面に向かって押圧される接触ローラを具備する接触ローラ機構を例示することができる。
【0033】
また、前記第1の課題に加えて前記第2の課題をも解決するべく、本発明は、特許請求の範囲の請求項6に記載の如く、前記ノズルが弾性変形可能に構成される。
【0034】
斯かる好ましい構成によれば、仮に被測温鋼材がパスライン変動によってノズルに衝突し、一時的にノズルが変形したとしても、ノズルが弾性変形可能であるため、パスライン変動した被測温鋼材が通過した後、ノズルは元の形状に復帰することになる。従って、操業が阻害されたり、ノズルが破損して温度測定が困難になるといった問題が生じ難く、ノズルを被測温鋼材に近接して設置することが可能である。なお、ノズルを弾性変形可能とするには、例えば、円筒状のゴム部材や圧縮コイルバネでノズルを形成することが考えられる。
【0035】
また、好ましくは、特許請求の範囲の請求項7に記載の如く、前記放射温度計は、前記ノズル内に配置された先端部で被測温鋼材表面から放射された熱放射光を受光して前記検出素子に伝送する光ファイバを備える。
【0036】
斯かる好ましい構成によれば、光ファイバの先端部で受光した熱放射光を当該光ファイバによって放射温度計の検出素子に伝送するため、検出素子を被測温鋼材から離間した位置に配置することができ、検出素子に対する熱放射光の影響を低減することが可能である。また、仮に被測温鋼材がパスライン変動によってノズルに衝突し、一時的にノズルが変形するような場合であっても、当該ノズルの変形に応じて光ファイバも変形可能であるため、破損により温度測定が困難になるという事態が生じ難いという利点を有する。
【0037】
なお、本発明は、特許請求の範囲の請求項8に記載の如く、請求項1又は2に記載の方法によって表面温度を測定する工程を含むことを特徴とする鋼材の製造方法としても提供される。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、放射温度計で検出する熱放射光の波長を1.00μm以上1.20μm以下の長波長とすることにより、400℃程度の低温域であっても精度良く鋼材表面温度を測定することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態について、熱延鋼板製造ラインの冷却帯下部に適用する場合を例に挙げて説明する。
【0040】
図1は、本発明の一実施形態に係る表面温度測定装置の概略構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る表面温度測定装置100は、被測温鋼材(本実施形態では鋼板M)に対向配置された放射温度計1を備え、鋼板M表面(本実施形態では下面)から放射された熱放射光を放射温度計1で検出することにより、鋼板Mの表面温度を測定する装置である。また、本実施形態に係る表面温度測定装置100は、鋼板M表面に向けてパージ水を噴射し、厚み20mmの水柱を形成するためのノズル2を備えている。
【0041】
本実施形態に係る放射温度計1は、先端部がノズル2内に配置され、鋼板M表面から放射された熱放射光を受光する光ファイバ11を備えている。本実施形態では、石英系の光ファイバ11を用いているが、少なくとも1.00μm〜1.20μmの波長の光を透過するものである限りにおいて、特にその材質は限定されるものではない。本実施形態に係る光ファイバ11は、コア径が400μmで保護被覆を含めた外径がφ2mmとされており、その先端部が、ノズル2内に設けられたガイド(図示せず)によって、ノズル2の略中心を通るように位置決めされている。そして、鋼板Mに対向する光ファイバ11の先端面と、鋼板Mのパスラインとの離間距離が20mmとなるように(これにより、ノズル2によって形成される水柱の厚みは20mmとなる)位置決めされている。光ファイバー11の先端面は、平坦面となるように加工されている。なお、本実施形態では、光ファイバ11の先端面を平坦面に加工しているが、集光効率を高めるために球面加工を施すことも可能である。ノズル2内に配置された光ファイバ11の先端部以外の部位は、破損を防止するために、ステンレス鋼製のフレキシブルチューブからなる保護カバー111で被覆されている。
【0042】
また、本実施形態に係る放射温度計1は、光ファイバ11の先端部で受光され光ファイバ11内を伝送された熱放射光を検出し、当該検出した熱放射光の光量に応じた温度表示を行う温度表示部12を備えている。温度表示部12は、光検出演算部121と、温度補正部122とを備えている。
【0043】
光検出演算部121は、光ファイバ11によって伝送された熱放射光を光電変換して光量に応じた電流を出力するInGaAsホトダイオード等の検出素子を備え、当該検出素子からの出力電流を増幅した後に、電流電圧変換及びAD変換を施し、水の透過率の補正を行って温度に換算するように構成されている。なお、光ファイバ11の後端部と前記検出素子との間には、1.00μm未満の波長の光と1.20μmよりも長い波長の光を遮断する光学フィルタ(図示せず)を配置しており、これにより、放射温度計1で検出する(検出素子で検出する)熱放射光の波長が1.00μm以上1.20μm以下のみに設定されることになる。また、光検出演算部121における水の透過率の補正(検出した熱放射光量をE、水の透過率をτとした場合、測定対象からの熱放射光量をE/τによって算出すること)(以下、光検出部121における補正を適宜「第1の補正」という)に用いる透過率としては、測定対象温度を500℃とし且つ厚みが20mmである場合について予め測定した透過率0.20を用いた。この透過率を用いた理由は、操業条件より、測定対象である鋼板Mの表面温度の範囲が300〜600℃程度と予想されることから、その略中間値である500℃を測定対象温度とすると共に、前述のようにノズル2によって形成される水柱の厚みが20mmだからである。
【0044】
温度補正部122は、上記のように光検出演算部121で演算された温度に関して、測定対象温度に応じて水の透過率が変化する影響を補正するように構成されている。以下、温度補正部122における水の透過率の補正(以下、温度補正部122における補正を適宜「第2の補正」という)について、より具体的に説明する。
【0045】
図10は、検出する熱放射光の波長を1.00〜1.20μmとした放射温度計と黒体炉との間に介在させる水柱の厚みを適宜変更すると共に、黒体炉の温度を適宜変更し、黒体炉温度毎の水の透過率を調査した結果の一例を示すグラフである。図10に示すように、測定対象である黒体炉の温度が高くなるに従って、何れの水柱の厚みの場合も水の透過率が高くなることが分かる。
【0046】
そして、測定対象温度がどのような温度であったとしても、測定対象温度が520℃の場合の水の透過率を固定して(一律に用いて)補正し黒体炉を測温した場合の測温誤差(放射率は1.0とした)を評価した。図11は、評価結果の一例を示すグラフである。図11に示すように、例えば、水柱の厚みが20mmである場合、測定対象温度が520℃のときの水の透過率0.21を固定して補正することにより、測定対象温度が約300〜700℃の範囲でおよそ10℃の測温誤差を生じることになる。これは、図10に示すように、測定対象温度が高くなるに従って、実際には水の透過率が高くなるため、測定対象温度がどのような温度であったとしても固定の水の透過率を用いて補正したのでは、透過率の変化に伴う測温誤差が生じるからである。
【0047】
上記の測温誤差を低減するには、図11に示すような水の透過率を固定したときの測定対象温度と測温誤差との関係を各水柱の厚み毎に直線近似し、下記の式(1)に従って補正を行えばよい。
T=T1+(T0−T1)×α ・・・ (1)
ここで、上記式(1)において、Tは補正後の測温値(℃)を、T1は測温値(固定した水の透過率を用いて補正した測温値)(℃)を、T0は固定した水の透過率に対応する測定対象温度を、αは近似直線の傾きを意味する。
【0048】
図12は、測定対象温度が約300〜700℃の範囲である場合において、水柱の厚みを20mmとし且つ測定対象温度が550℃のときの水の透過率0.21を固定して補正することにより得られた測温値T1を、上記式(1)に従って更に補正した場合に得られる測温誤差(補正後の測温値Tと真温度との差)を評価した結果の一例を示すグラフである。図12に示すように、式(1)に従って更に補正することにより、測温誤差が1℃程度に低減されることが分かる。
【0049】
以上に説明したように、固定した水の透過率を用いて補正(第1の補正)した測温値を式(1)に従って補正(第2の補正)することにより、測定対象温度に応じて水の透過率が変化する影響を低減することが可能である。
【0050】
そこで、本実施形態に係る温度補正部122は、前述した光検出部121における第1の補正で用いた透過率(測定対象温度を500℃とし且つ厚みが20mmである場合について予め測定した透過率0.20)を固定すると、測定対象温度が400℃の場合には6℃低い測温値T1(すなわち、T1=394℃)が得られることに基づいて、式(1)のαを同定し、以下の式(1)’に従った第2の補正を行うように構成されている。
T=T1+(500−T1)×0.0575 ・・・ (1)’
すなわち、上記式(1)’にT1=394℃を代入すると、T≒400℃となり、補正後の測温値Tは、真の温度である400℃に等しい値となる。
【0051】
図1に示すように、ノズル2は、外部からパージ水を流入することにより、先端部から鋼板M表面に向けてパージ水を噴射するように構成されている。ノズル2の先端部の口径はφ12mmとされ、外部から流入するパージ水の流量は3リットル/分とされており、これにより、パージ水によって形成される水柱は鋼板Mの表面に高圧で衝突することなく接触する程度になり、水柱による鋼板M表面の冷却が抑制される。
【0052】
本実施形態に係るノズル2は、ステンレス鋼製の圧縮コイルバネで形成されている。ノズル2を圧縮コイルバネで形成した理由は、圧縮コイルバネを構成する線材が互いに密にコイル状に巻回されているため、パージ水が線材の隙間から漏れ出すことが少ないと共に、鋼板Mがパスライン変動して衝突したとしても、圧縮コイルバネが弾性変形するためノズル2の破損を防止できるからである。図13は、圧縮コイルバネで形成したノズル2が弾性変形する様子を示す説明図であり、図13(a)は弾性変形した状態を、図13(b)は元の形状に復帰した状態を示す。図13(a)に示すように、鋼板Mがパスライン変動によってノズル2に衝突(図13(a)に示す例では、鋼板Mの先端部に生じた下反り部がノズル2に衝突)し、一時的にノズル2が変形したとしても、ノズル2は弾性変形可能であるため、パスライン変動した鋼板Mが通過した後(鋼板Mの先端部に生じた下反り部が通過した後)には、図13(b)に示すように、ノズル2は元の形状に復帰することになる。なお、必ずしもノズル2の全体を圧縮コイルバネで形成する必要はなく、一部を圧縮コイルバネで形成すれば足りる。
【0053】
本実施形態のようにノズル2を鋼板M表面に近接して設置する場合、上記のようにノズル2を弾性変形可能に構成することが好ましい。ノズル2を弾性変形可能に構成するには、上記のように圧縮コイルバネでノズル2を形成する他、円筒状のゴム部材でノズル2を形成してもよい。斯かるゴム部材としては、必ずしも耐熱性に優れたものを用いる必要はない。これは、パージ水によってゴム部材の内外面が冷却されることになるため、ゴム部材自体が100℃以上の温度にはならないからである。
【0054】
なお、鋼板Mのパスライン変動が大きく、鋼板Mとノズル2との離間距離の変動、ひいては水柱の厚みの変動が大きくなる場合には、測温精度を維持するべく、鋼板Mとノズル2との離間距離を略一定に保持する手段を設けることが好ましい。斯かる手段を設けることにより、パージ水によって形成される水柱の厚みも略一定となり、水柱の厚みの変動に伴う水柱の透過率の変動、ひいては水柱による熱放射光の吸収の測温値に対する影響を緩和することが可能である。なお、鋼板Mとノズル2との離間距離を略一定に保持する手段としては、例えば、図14に示すように、ノズル2に付設され、鋼板M表面に常に接触するように鋼板M表面に向かって押圧される接触ローラ221を具備する接触ローラ機構22を例示することができる。また、図15に示すように、鋼板Mとノズル2との離間距離を測定(ひいては水柱の厚みを測定)する距離計を付設し、当該距離計の測定値によって水柱の透過率を補正する方法を採用することも可能である。
【0055】
図16は、以上に説明した本実施形態に係る表面温度測定装置100によって、鋼板M下面の温度を実際に測定した結果の一例を示すグラフである。なお、図16には、同じタイミングで鋼板M上面の温度を従来の放射温度計(検出素子:InGaAs、検出波長:1.0〜1.6μm)で測定した結果(比較的優れた環境条件下での測温結果)も図示している。図16に示すように、鋼板Mの上面及び下面についての測温値の傾向は略一致しており、本実施形態に係る表面温度測定装置100の測温値には一定の信頼性が得られることが分かった。
【0056】
なお、本実施形態では、被測温鋼材としての鋼板Mの下面から放射された熱放射光を鋼板Mに対向配置した放射温度計で検出する構成について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、被測温鋼材としての鋼板Mの上面から放射された熱放射光を鋼板Mに対向配置した放射温度計で検出する構成とすることも無論可能である。また、鋼板Mが鉛直方向に搬送されるような製造ラインにおいて、鋼板M表面から放射された熱放射光を当該鋼板M表面に対向配置した放射温度計で検出する構成とすることも可能である。さらには、鋼管や形鋼などの被測温鋼材側面から放射された熱放射光を当該被測温鋼材側面に対向配置した放射温度計で検出する構成とすることも可能である。
【0057】
以下、本発明に係る表面温度測定装置を熱延鋼板の製造ラインに適用して、熱延鋼板を製造する方法について説明する。
【0058】
図17は、熱延鋼板の製造ラインの概略構成例を示す模式図である。
図17に示すように、熱延鋼板を製造するに際しては、まず加熱炉3でスラブを1000〜1200℃に加熱昇温する。次に、昇温加熱したスラブをその幅を決定すると共に、仕上圧延機6で圧延可能な厚みまで粗圧延機4で圧延し、粗バーと称される中間部材にまで圧延する。次に、必要に応じて、再加熱装置5において、誘導加熱等により粗バーを再加熱する。次に、仕上圧延機6において、粗バーを目標とする熱延鋼板の厚みになるまで圧延する。なお、仕上圧延機6における仕上圧延後の鋼板の温度はおよそ700〜1000℃、厚みは1mm前後〜十数mm程度、板速度は600mpmから1500mpmである。
【0059】
仕上圧延機6による圧延後の鋼板は、第1冷却帯7又は第2冷却帯8において目標温度にまで冷却され、ダウンコイラー9によってコイル状に巻き取られる。或いは、第1冷却帯7、第2冷却帯8及びその中間に位置する非冷却ゾーンを利用して、冷却履歴を制御する場合もある。第1冷却帯7、第2冷却帯8では、冷却水を噴出するミスト冷却又はラミナー冷却と称される多数の冷却用ノズルが配置されており、その内の適当な本数のノズルから水を噴出して鋼板を冷却する。噴出するノズル本数や位置などの冷却条件は、セットアップ学習やダイナミックフィードバックなどを利用して制御される。
【0060】
以上に説明した熱延鋼板の製造ラインにおいて、本発明に係る表面温度測定装置は、例えば、従来測温が困難であった第1冷却帯7又は第2冷却帯8の下面の温度を測定するために用いることができる(図17の適用1)。なお、厚みの薄い鋼板の場合には、下面からの測温値が、おおよそ鋼板の厚み方向の代表温度を示すと考えて問題ない。
【0061】
また、第1冷却帯7又は第2冷却帯8の前後に本発明に係る表面温度測定装置を設置し、従来の温度計の代わりに用いることも可能である(図17の適用2)。従来の温度計は、特にコイルの先端部で湯気の影響により出力値が小さくなることがあるが、本発明に係る表面温度測定装置を適用すれば、コイルの最先端部から測温可能である。
【0062】
また、第1冷却帯7又は第2冷却帯8において、鋼板上方に本発明に係る表面温度測定装置を設置し、測温することも可能である(図17の適用3)。スプレーやラミナー冷却水が鋼板に衝突している領域を除けば、鋼板上面に冷却水が乗っている状態でも当該水乗りを介して測温することが可能である。
【0063】
また、仕上圧延機6の近傍、或いは、仕上圧延機6の各スタンド間に、本発明に係る表面温度測定装置を設置し、測温することも可能である(図17の適用4)。斯かる場所でも、仕上圧延機6の冷却水や、スタンド間スプレーと称される冷却水が外乱水として存在することになるが、外乱水の影響を低減して測温することが可能である。斯かる場所での鋼板温度を測定することにより、重要な管理指標である圧延直後の温度の管理・制御に用いることができる。
【0064】
さらに、搬送ロールの冷却水などが外乱水として存在するような場所に、本発明に係る表面温度測定装置を設置して測温すれば、有用な温度管理を行うことができる(図17の適用5、6)。
【0065】
以上に説明したように、本発明に係る表面温度測定装置は、熱延鋼板の製造ラインにおいて、図17の適用1〜6で示すような箇所に設置することができる。この内、鋼板の品質制御に特に重要であるのは、適用1〜4で示す箇所の温度管理であるため、当該箇所に測温精度の高い本発明に係る表面温度測定装置を設置するのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る表面温度測定装置の概略構成を示す図である。
【図2】図2は、検出する熱放射光の波長を0.65〜0.83μmとした放射温度計の測温値バラツキを評価した結果の一例を示すグラフである。
【図3】図3は、約0.7〜1.9μmの波長帯域における水の分光透過率を調査した結果を示すグラフである。
【図4】図4は、検出する熱放射光の波長を1.00〜1.20μmとした放射温度計の測温値バラツキを評価した結果の一例を示すグラフである。
【図5】図5は、1.00〜1.20μmの波長帯域における水の透過率を調査した結果を示すグラフである。
【図6】図6は、厚み20mmの水柱を介して検出する熱放射光の波長を1.00〜1.20μmとした放射温度計の測温値バラツキを評価した結果の一例を示すグラフである。
【図7】図7は、1.05〜1.15μmの波長帯域における水の透過率を調査した結果を示すグラフである。
【図8】図8は、厚み20mm、50mmの水柱を介して検出する熱放射光の波長を1.05〜1.15μmとした放射温度計の測温値バラツキを評価した結果の一例を示すグラフである。
【図9】図9は、熱放射光の波長を1.00〜1.20μmとした放射温度計と黒体炉(400℃)との間に介在させる水柱の厚みを20mmから変動させた場合に生じる測温誤差を評価した結果の一例を示すグラフである。
【図10】図10は、検出する熱放射光の波長を1.00〜1.20μmとした放射温度計と黒体炉との間に介在させる水柱の厚みを適宜変更すると共に、黒体炉の温度を適宜変更し、水の透過率を調査した結果の一例を示すグラフである。
【図11】図11は、測定対象温度がどのような温度であったとしても、測定対象温度が520℃の場合の水の透過率を固定して(一律に用いて)補正し測温した場合の測温誤差を評価した結果の一例を示すグラフである。
【図12】図12は、測定対象温度が約300〜700℃の範囲である場合において、水柱の厚みを20mmとし且つ測定対象温度が550℃のときの水の透過率0.21を固定して補正することにより得られた測温値を、更に補正した場合に得られる測温誤差を評価した結果の一例を示すグラフである。
【図13】図13は、圧縮コイルバネで形成したノズルが弾性変形する様子を示す説明図であり、図13(a)は弾性変形した状態を、図13(b)は元の形状に復帰した状態を示す。
【図14】図14は、被測温鋼材とノズルとの離間距離を略一定に保持する手段の一例を説明する説明図である。
【図15】図15は、被測温鋼材とノズルとの離間距離を測定する手段の一例を説明する説明図である。
【図16】図16は、本発明の一実施形態に係る表面温度測定装置によって、鋼板下面の温度を実際に測定した結果の一例を示すグラフである。
【図17】図17は、熱延鋼板の製造ラインの概略構成例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0067】
1・・・放射温度計
2・・・ノズル
11・・・光ファイバ
12・・・温度表示部
M・・・被測温鋼材(鋼板)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測温鋼材表面から放射された熱放射光を被測温鋼材に対向配置した放射温度計で検出することにより、被測温鋼材の表面温度を測定する方法であって、
前記放射温度計で検出する熱放射光の波長を1.00μm以上1.20μm以下のみとすることを特徴とする鋼材の表面温度測定方法。
【請求項2】
被測温鋼材表面から放射された熱放射光を被測温鋼材表面に向けて噴射したパージ水を介して前記放射温度計で検出することを特徴とする請求項1に記載の鋼材の表面温度測定方法。
【請求項3】
被測温鋼材に対向配置された放射温度計を備え、被測温鋼材表面から放射された熱放射光を前記放射温度計で検出することにより、被測温鋼材の表面温度を測定する装置であって、
被測温鋼材と前記放射温度計の検出素子との間に、1.00μm未満の波長の光と1.20μmよりも長い波長の光を遮断する光学フィルタを備えることを特徴とする鋼材の表面温度測定装置。
【請求項4】
被測温鋼材表面と前記放射温度計との間にパージ水を噴射するノズルを備えることを特徴とする請求項3に記載の鋼材の表面温度測定装置。
【請求項5】
被測温鋼材と前記ノズルとの離間距離を略一定に保持する手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の鋼材の表面温度測定装置。
【請求項6】
前記ノズルが弾性変形可能に構成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の鋼材の表面温度測定装置。
【請求項7】
前記放射温度計は、前記ノズル内に配置された先端部で被測温鋼材表面から放射された熱放射光を受光して前記検出素子に伝送する光ファイバを備えることを特徴とする請求項4から6の何れかに記載の鋼材の表面温度測定装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の方法によって表面温度を測定する工程を含むことを特徴とする鋼材の製造方法。
【請求項1】
被測温鋼材表面から放射された熱放射光を被測温鋼材に対向配置した放射温度計で検出することにより、被測温鋼材の表面温度を測定する方法であって、
前記放射温度計で検出する熱放射光の波長を1.00μm以上1.20μm以下のみとすることを特徴とする鋼材の表面温度測定方法。
【請求項2】
被測温鋼材表面から放射された熱放射光を被測温鋼材表面に向けて噴射したパージ水を介して前記放射温度計で検出することを特徴とする請求項1に記載の鋼材の表面温度測定方法。
【請求項3】
被測温鋼材に対向配置された放射温度計を備え、被測温鋼材表面から放射された熱放射光を前記放射温度計で検出することにより、被測温鋼材の表面温度を測定する装置であって、
被測温鋼材と前記放射温度計の検出素子との間に、1.00μm未満の波長の光と1.20μmよりも長い波長の光を遮断する光学フィルタを備えることを特徴とする鋼材の表面温度測定装置。
【請求項4】
被測温鋼材表面と前記放射温度計との間にパージ水を噴射するノズルを備えることを特徴とする請求項3に記載の鋼材の表面温度測定装置。
【請求項5】
被測温鋼材と前記ノズルとの離間距離を略一定に保持する手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の鋼材の表面温度測定装置。
【請求項6】
前記ノズルが弾性変形可能に構成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の鋼材の表面温度測定装置。
【請求項7】
前記放射温度計は、前記ノズル内に配置された先端部で被測温鋼材表面から放射された熱放射光を受光して前記検出素子に伝送する光ファイバを備えることを特徴とする請求項4から6の何れかに記載の鋼材の表面温度測定装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の方法によって表面温度を測定する工程を含むことを特徴とする鋼材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−17408(P2007−17408A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−202097(P2005−202097)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]