説明

鋼構造物の防食構造

【課題】多様な形状の鋼構造物に対して簡単な方法で犠牲陽極を形成する。
【解決手段】一部が下地(2)中に埋設される鋼構造物(1)の防食構造であって、前記鋼構造物(1)の埋設部分直上の地際部の外周面に、Zn:2〜20質量%を含有し、Cu濃度が0.1質量%以下に規制され、残部がAlおよび不純物からなるアルミニウム合金で構成された防食用中空材(10)が巻き付けられており、さらにこの防食用中空材(10)と鋼構造物(1)とが導通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌やコンクリート等の下地に設置された鋼構造物の防食構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地面に設置されるガードレール、標識柱、柵等の鋼構造物や、地下埋設されるマンホール等の鋼構造物では、鋼構造物の埋設部分がカソードとなり、露出部分のうちの埋設部分直上の地際部がアノードとなってマクロセル腐食が生じる。かかる鋼構造物のマクロセル腐食に対しては、鋼構造物よりも腐食電位の卑な材料からなる防食具を地際部に取り付け、その防食具を犠牲陽極として犠牲腐食させる方法が知られている。(特許文献1〜6参照)
【0003】
特許文献1においては、鉄筋コンクリート構造物を貫通する地下埋設配管(鉄製)に対し、コンクリート壁面に亜鉛陽極シートを取付け、この亜鉛陽極シートを配管に導通させてマクロセル腐食を防止する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2〜6においては、鋼材製施設体の外周に取り付けるリング形防食具として、亜鉛系、アルミニウム系、マグネシウム系等の金属製で、2個1対の半円形のリング半体が記載されている。2個のリング半体は、施設体の周りに向かい合わせに配置してリング状に組み合わせ、突き合わせ部をネジやピンで締結し、リングの外周からボルトまたは楔を用いて施設体に接続固定される。そして、施設体と分割リングとの間に導電性または吸水性の充填剤を入れてリングと設置面とを確実に接触させ、通電状態を確保している。
【特許文献1】特開平11−209885号公報
【特許文献2】特開2002−227149号公報
【特許文献3】特開2002−226983号公報
【特許文献4】特開2002−226984号公報
【特許文献5】特開2002−226985号公報
【特許文献6】特開2002−226986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した犠牲陽極はいずれも取付けに手間がかかり、特に特許文献2〜6の分割リングは締結に手間のかかるという欠点がある。また、特許文献2〜6の分割リングは、施設体の外周形状に応じてリングを製作しなければならず、汎用性に欠けるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した技術背景に鑑み、多様な形状の鋼構造物に簡単に取付けることができる犠牲陽極を用いた鋼構造物の防食構造、防食方法、および防食具の提供を目的とする。
【0007】
即ち、本発明は下記[1]〜[11]に記載の構成を有する。
【0008】
[1]一部が下地中に埋設される鋼構造物の防食構造であって、
前記鋼構造物の埋設部分直上の地際部の外周面に、Zn:2〜20質量%を含有し、Cu濃度が0.1質量%以下に規制され、残部がAlおよび不純物からなるアルミニウム合金で構成された防食用中空材が巻き付けられており、さらにこの防食用中空材と鋼構造物とが導通していることを特徴とする鋼構造物の防食構造。
【0009】
[2]前記鋼構造物に巻き付けられた防食用中空材の両端が、その防食用中空材よりも腐食電位の貴な材料からなる接続部材を介して接続されている前項1に記載の鋼構造物の防食構造。
【0010】
[3]前記接続部材は、鍔部の両面に防食用中空材の開口端に挿入する挿入部が突設され、かつ前記挿入部が基端側から先端側に向かって断面積が小さくなる錐台形の節が複数個重設されてなる、前項2に記載の鋼構造物の防食構造。
【0011】
[4]前記鋼構造物と防食用中空材とが導通手段を介して接続されている前項1〜3のいずれかに記載の鋼構造物の防食構造。
【0012】
[5]前記鋼構造物と前記接続部材とが導通手段を介して接続されている前項2または3に記載の鋼構造物の防食構造。
【0013】
[6]前記防食用中空材と鋼構造物との間に保水部が設けられている前項1〜5のいずれかに記載の鋼構造物の防食構造。
【0014】
[7]前記アルミニウム合金組成において、0.01〜0.5質量%のSnを含有する前項1〜6のいずれかに記載の鋼構造物の防食構造。
【0015】
[8]前記防食用中空材の外径が6〜20mmであり、肉厚が0.3〜2mmである前項1〜7のいずれかに記載の鋼構造物の防食構造。
【0016】
[9]一部が下地中に埋設される鋼構造物の埋設部分直上の地際部の外周面に、Zn:2〜20質量%を含有し、Cu濃度が0.1質量%以下に規制され、残部がAlおよび不純物からなり、前記鋼構造物よりも腐食電位が卑なアルミニウム合金で構成された防食用中空材を曲げながら巻き付け、この防食用中空材と鋼構造物とを導通させることを特徴とする鋼構造物の防食方法。
【0017】
[10]一部が下地中に埋設される鋼構造物の埋設部分直上の地際部の外周面に取付ける防食具であって、Zn:2〜20質量%を含有し、Cu濃度が0.1質量%以下に規制され、残部がAlおよび不純物からなり、前記鋼構造物よりも腐食電位が卑なアルミニウム合金で構成された中空材であることを特徴とする防食具。
【0018】
[11]前項10に記載の防食具の両開口端を連結して該防食具を環状に形成する接続部材であって、
鍔部の両面に前記防食具の開口端に挿入する挿入部が突設され、かつ前記挿入部が基端側から先端側に向かって断面積が小さくなる錐台形の節が複数個重設されてなることを特徴とする防食具用接続部材。
【発明の効果】
【0019】
上記[1]に記載の発明にかかる鋼構造物の防食構造において、防食用中空材が鋼構造物の地際部に巻き付けられて犠牲陽極を形成している。前記防食用中空材は容易に曲げることができるので、多様な形状の鋼構造物に取り付けることができる。また、防食用中空材はアルミニウム合金であるから、亜鉛または亜鉛基合金よりも長期にわたって防食性能が得られる。
【0020】
上記[2]に記載の発明によれば、防食用中空材の端部処理を容易に行える。また、接続部材を介して鋼構造物と防食用中空材を導通させることにより、防食用中空材を安定して犠牲腐食させることができる。
【0021】
上記[3]に記載の発明によれば、防食用中空材の端部処理を容易に行え、かつ抜け止め状態を維持することができる。
【0022】
上記[4][5]に記載の発明によれば、鋼構造物と防食用中空材とを確実に導通させることができる。
【0023】
上記[6]に記載の発明によれば、防食用中空材を安定して犠牲腐食させることができる。
【0024】
上記[7]に記載の発明によれば、防食用中空材の優先腐食が助長される。
【0025】
上記[8]に記載の発明によれば、防食用中空材が曲げやすくかつ長期的な防食性能を確実に得ることができる。
【0026】
上記[9]に記載の発明にかかる鋼構造物の防食方法よれば、多様な形状の鋼構造物に対して犠牲陽極を取付けて上記防食構造を形成し、鋼構造物に長期的な防食性能を与えることができる。
【0027】
上記[10]に記載の発明にかかる防食具は、容易に曲げることができるので、多様な形状の鋼構造物の地際部に巻き付けて犠牲陽極を形成することができる。
【0028】
上記[11]に記載の発明にかかる接続部材によれば、上記[10]に記載の中空の防食具の両開口端を挿入部に挿入することにより、その防食具を環状に容易に連結することができる。また、連結後は節の最大径部が防食具の内壁に食い込んで抜け止め状態となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は本発明の鋼構造物の防食構造の一実施形態を示し、図2Aおよび図2Bは図1の2A−2A線断面図および2B−2B線断面図である。図1において、断面円形の鋼管(1)は、下部がコンクリート(2)中に埋設され、上部は大気中に露出している。前記鋼管(1)およびコンクリート(2)は、本発明における鋼構造物および下地に対応する。
【0030】
前記鋼管(1)の埋設部分直上の地際部の外周面には、犠牲陽極となる断面円形の防食用中空材(10)がコンクリート(2)の表面に接触した状態で巻き付けられ、その両端は接続部材(20)を介して連結されて環状に形成されている。また、前記鋼管(1)と防食用中空材(10)との間には保水部(30)が介在している。前記接続部材(20)は導電性材料からなり、接続部材(30)と鋼管(1)とがリード線(3)を介して接続され、ひいては防食用中空材(10)と鋼管(1)と導通状態に接続されている。
【0031】
前記防食用中空材(10)は、Zn:2〜20質量%を含有し、Cu濃度が0.1質量%以下に規制され、残部がAlおよび不純物からなるアルミニウム合金で構成されている。前記組成のアルミニウム合金は鋼管(1)よりも腐食電位が卑であり、鋼管(1)に対する犠牲陽極を形成している。また、犠牲陽極としてアルミニウム合金を用いることで亜鉛または亜鉛基合金からなる犠牲陽極よりも腐食が遅くなり、長期に渡って防食効果を奏することができる。
【0032】
前記アルミニウム合金組成において、Znは合金の腐食電位を卑にする元素である。Zn濃度が2質量%未満では犠牲腐食させる効果が乏しい。一方、20質量%を超えると早期に腐食して防食用中空材(10)の取り替えサイクルが短くなるため、20質量%以下が好ましい。好ましいZn濃度は3.5質量%以上であり、特に好ましいZn濃度は4〜8質量%である。
【0033】
Cuは腐食を促進する元素であり、早期腐食を防止するためにCu濃度を0.1質量%以下に規制する必要がある。特に好ましいCu濃度は0.05質量%以下である。
【0034】
Snもまた合金の腐食電位を卑とする元素であり、任意に0.01〜0.5質量%の範囲で含有させることにより優先腐食を助長することができる。Sn濃度が0.01質量%未満では優先腐食助長効果が少なく、0.5質量%を超えると早期に腐食しすぎる。特に好ましいSn濃度は0.05〜0.2質量%である。
【0035】
防食用中空材(10)は、中空であることから容易に曲げることができる。このため、直管の中空材を曲げて多様な形状の鋼構造物に巻き付けることができ、多様な形状の鋼構造物に対して犠牲陽極を形成することができる。例えば、図1のような断面円形の単純形状の鋼管(1)に対してはもとより、図3のH型鋼(4)、I型鋼、コの字型構造物等のように外周面に複数の角部を有する複雑形状の鋼構造物に対しても巻き付けて犠牲陽極を形成することができる。また、中空材は簡単に曲げることができるので、取付け時に鋼構造物の外周面に沿わせて曲げながら巻き付けることができる。勿論、鋼構造物の外周形状に合わせて予め中空材を曲げておくこともできる。中空材は同径の中実材よりも曲げやすいので、中実材よりも表面積の大きい犠牲陽極を形成することができる。また、取付けた防食用中空材(10)がある程度腐食すると腐食が鋼構造物に達する前に取り替えられるが、容易に除去できるので取り替え作業も簡単である。
【0036】
前記防食用中空材(10)の寸法は、外径が小さく肉厚が薄いほど曲げやすいが、その反面腐食代が少なくなるので早期に腐食減耗して長期的な防食性能が得にくくなる。かかる観点より、防食用中空材(10)の外径は6〜20mmの範囲が好ましく、肉厚は0.3〜2mmの範囲が好ましい。防食用中空材(1)の特に好ましい外径は6〜16mmであり、特に好ましい肉厚は0.3〜1.5mmである。また、防食用中空材(10)の断面形状は円形である必要はなく、楕円形、角形、その他の形状であっても良い。
【0037】
前記接続部材(20)は、プレート状の鍔部(21)の両面に挿入部(22)(22)が突設され、中心に両挿入部(22)(22)および鍔部(21)を貫通する孔を有する筒状部材である。前記挿入部(22)は、基端側から先端側に向かって断面積が小さくなる円錐台形の複数個の節(23)が重設された、所謂タケノコジョイントである。前記節(23)の最大径部(24)の直径は前記防食用中空材(10)の内径よりも僅かに大きく形成されている。このため、防食用中空材(10)の開口端を接続部材(20)の挿入部(22)に差し込むと防食用中空材(10)の内壁が最大径部(24)に接触しながら進んでいくが、抜き方向に進めようとすると最大径部(24)の角部が内壁に食い込んで抜け止め状態となる。かかるタケノコジョイントを用いることにより、中空材(10)の端部処理を容易に行え、かつ抜け止め状態を維持することができる。なお、図示例の接続部材(20)は断面円形の中空材を連結するために挿入部(33)の節(23)形状を円錐台形としたが、節の形状は中空材の断面形状に対応させて楕円錐台形、角錐台形等の種々の錐台形に形成すれば良い。また、図示例の接続部材(10)は中空材であるが、本発明における接続部材は中空材、中実材のどちらであっても良い。
【0038】
また、前記接続部材(20)の材料として防食用中空材(10)よりも腐食電位が貴な材料を用いることが好ましい。その理由は、後述する鋼管(1)と防食用中空材(10)とを導通手段を介して導通させる場合、導通手段を鋼管(1)と接続部材(20)とに接続することにより、鋼管(1)と防食用中空材(10)と導通させることができ、防食用中空材(10)を確実に犠牲腐食させることができからである。上記実施形態において、導通手段であるリード線(3)は鋼管(1)および接続部材(20)の鍔部(21)に溶接されている。前記防食用中空材(10)よりも腐食電位が貴な接続部材(20)の材料として、鋼、ステンレスを例示できる。
【0039】
さらに、1本の防食用中空材(10)で鋼構造物の全周を巻く必要はなく、複数本の中空材を連結しながら全周に巻き付けることもできる。
【0040】
なお、本発明において接続部材の形状は図示例のものに限定されず、さらに巻き付けた防食用中空材(10)の両端を接続部材を介さず直接連結する構造も本発明に含まれる。
【0041】
前記保水部(30)は、コンクリート(2)、鋼管(1)、防食用中空材(10)の隙間に形成され、水を介在させることにより、巻き付けた防食用中空材(10)をコンクリート(2)および鋼管(1)に確実に接触させ、防食用中空材(10)を安定して犠牲腐食させるものである。コンクリート(2)、鋼管(1)、防食用中空材(10)の隙間が小さければ、水の界面張力により隙間に水(雨水等)が保持されるが、保水性のある部材を用いて積極的に水を保持させても良い。この場合、具体的には、発泡合成樹脂や発泡アルミニウム等の発泡金属の気孔に水を担持させたもの、吸水性樹脂に水を含ませたもの、モルタルに水を含ませたもの等を推奨でき、隙間の形状に応じて自在に変形するものが好ましい。鋼管(1)とコンクリート(2)との入隅に曲げた防食用中空材(10)を隙間なく接触させることは困難であるが、保水部(30)を介在させることで実質的に広い面積で確実に接触させるができる。
【0042】
また、鋼構造物(1)と、下地(2)と、防食用中空材(10)との間で囲まれた空間に保水部(30)が保てる高さを直上の地際部といい、保水部(30)が保てれば下地(2)と防食用中空材(10)とは直接接触していなくても良い。
【0043】
前記防食用中空材(10)は鋼管(1)に巻き付けられたことで直接接触し、あるいは保水部(30)の水を介して間接的に接触させたことで電気的に導通状態となり、防食用中空材(10)は犠牲陽極となっている。そして、本実施形態においては、リード線(3)の両端を鋼管(1)および防食用中空材(10)に溶接したことで、その導通状態をさらに確実なものとしている。前記リード線(3)は本発明における導通手段の一例であり、かかる導通手段を用いて接続すれば確実に導通させることができ、また防食用中空材(10)の腐食が進んで変形しても確実に接続状態を維持できる。また、導通手段は防食用中空材(10)に直接接続することもできるが、環状に固定するために接続部材(20)を用いる場合は、接続部材(20)と鋼管(1)とを接続することが好ましい。接続部材(20)は防食用中空材(10)よりも腐食電位が貴な材料で構成されているので、防食用中空材(10)が優先腐食しても導通状態が維持されるからである。なお、前記リード線(3)の接続手段は溶接に限定されず、ネジ止めやかしめ等の任意の手段を採用できる。
【0044】
さらに、本発明において導通手段は前記リード線(3)に限定されるものではなく、他の導通手段としてとして図4A〜図4Cに示すものを例示できる。なお、これらの接続例は導通手段を接続部材(20)の鍔部(21)に接続したものであるが、同じ方法で防食用中空材(10)に直接接続することもできる。
【0045】
図4Aは、接続部材(20)と鋼管(1)とを直接溶接したものであり、ウエルド部(25)が導通手段となる。図4Bは導電性の帯状体(26)で接続部材(20)を巻き、その両端を重ねて鋼管(1)に溶接またはネジ止め(図示省略)したものである。(27)はウエルド部である。図4Cは、帯状体(28)の一端部を曲げて接続部材の形状に対応する円弧部(28a)を形成し、その円弧部(28a)に接続部材(20)を嵌め込んで接触させ、他端部を鋼管(1)にネジ(28)止めまたは溶接(図示省略)したものである。
【0046】
本発明において、鋼構造物を埋設する下地は限定されず、上記実施形態のコンクリートの他、土壌、アスファルト、樹脂、ゴム等を例示できる。
【実施例】
【0047】
図1に参照されるように、コンクリート(2)に設置された断面円形の鋼管(1)に対し、表1に示す各防食具を巻き付けて防食構造を形成した。
【0048】
前記鋼管(1)は外径115mm、肉厚4.5mmである。
【0049】
〔実施例1〜12、比較例21〜23〕
表1に示すアルミニウム合金組成からなり、表1に示す外径および肉厚の防食用中空材(10)を押出成形した。この直管の防食用中空材(1)を曲げながら鋼管(1)の地際部に巻き付け、その両開口端をタコノコジョイント(20)の挿入部(22)に挿入して環状に形成した。また、鋼管(1)とコンクリート(2)との入隅の隙間は、発泡性合成樹脂に水を含ませた保水部(20)で満たした。さらに、リード線(3)の両端を鋼製タケノコジョイント(20)の鍔部(21)および鋼管(1)の外周面に溶接した。
【0050】
〔比較例24〕
防食具を表1の中実材に変更し、鋼管(1)に沿わせて円形に曲げようとしたが、強度があるために容易に曲げることができなかったため、後述の腐食試験に供することができなかった。
【0051】
上記防食構造について下記の試験を行って評価した。評価結果を表1に併せて示す。
【0052】
〔防食具の曲げ性能〕
各防食具の破断荷重を測定し、破断荷重に基づいて曲げ性能を3段階で相対的に評価した。即ち、破断荷重が小さいほど曲げやすく、巻き付けによる取付けが簡単である。表1において、最も簡単に曲げ得るものが◎であり、以下○、×の順に曲げにくくなる。
【0053】
〔防食性能〕
防食具を取り付けた鋼管(1)を半年間大気中で曝露し、以下の基準で防食性能を評価した。
【0054】
○:防食具のみが腐食し、鋼管は腐食しなかった
×:腐食が鋼管に達した
【0055】
【表1】

【0056】
表1の結果より、各実施例の防食構造は長期的な防食性能を有することを確認した。また、防食用中空材は曲げやすく容易に取り付けることができた。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の鋼構造物の防食構造は、犠牲陽極をアルミニウム合金製中空材を巻き付けて形成したものであるから、多様な形状の鋼構造物の防食に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の鋼構造物の防食構造の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図2A】図1の2A−2A線断面図である。
【図2B】図1の2B−2B線断面図であり、防食用中空材両端の接続部分を示している。
【図3】本発明の鋼構造物の防食構造の他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図4A】本発明における導通手段の他の実施形態を示す断面図である。
【図4B】本発明における導通手段のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図4C】本発明における導通手段のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1…鋼管(鋼構造物)
2…コンクリート(下地)
3…リード線(導通手段)
4…H型鋼(鋼構造物)
10…防食用中空材
20…接続部材(タケノコジョイント)
30…保水部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部が下地中に埋設される鋼構造物の防食構造であって、
前記鋼構造物の埋設部分直上の地際部の外周面に、Zn:2〜20質量%を含有し、Cu濃度が0.1質量%以下に規制され、残部がAlおよび不純物からなるアルミニウム合金で構成された防食用中空材が巻き付けられており、さらにこの防食用中空材と鋼構造物とが導通していることを特徴とする鋼構造物の防食構造。
【請求項2】
前記鋼構造物に巻き付けられた防食用中空材の両端が、その防食用中空材よりも腐食電位の貴な材料からなる接続部材を介して接続されている請求項1に記載の鋼構造物の防食構造。
【請求項3】
前記接続部材は、鍔部の両面に前記防食用中空材の開口端に挿入する挿入部が突設され、かつ前記挿入部が基端側から先端側に向かって断面積が小さくなる錐台形の節が複数個重設されてなる、請求項2に記載の鋼構造物の防食構造。
【請求項4】
前記鋼構造物と防食用中空材とが導通手段を介して接続されている請求項1〜3のいずれかに記載の鋼構造物の防食構造。
【請求項5】
前記鋼構造物と前記接続部材とが導通手段を介して接続されている請求項2または3に記載の鋼構造物の防食構造。
【請求項6】
前記防食用中空材と鋼構造物との間に保水部が設けられている請求項1〜5のいずれかに記載の鋼構造物の防食構造。
【請求項7】
前記アルミニウム合金組成において、0.01〜0.5質量%のSnを含有する請求項1〜6のいずれかに記載の鋼構造物の防食構造。
【請求項8】
前記防食用中空材の外径が6〜20mmであり、肉厚が0.3〜2mmである請求項1〜7のいずれかに記載の鋼構造物の防食構造。
【請求項9】
一部が下地中に埋設される鋼構造物の埋設部分直上の地際部の外周面に、Zn:2〜20質量%を含有し、Cu濃度が0.1質量%以下に規制され、残部がAlおよび不純物からなり、前記鋼構造物よりも腐食電位が卑なアルミニウム合金で構成された防食用中空材を曲げながら巻き付け、この防食用中空材と鋼構造物とを導通させることを特徴とする鋼構造物の防食方法。
【請求項10】
一部が下地中に埋設される鋼構造物の埋設部分直上の地際部の外周面に取付ける防食具であって、Zn:2〜20質量%を含有し、Cu濃度が0.1質量%以下に規制され、残部がAlおよび不純物からなり、前記鋼構造物よりも腐食電位が卑なアルミニウム合金で構成された中空材であることを特徴とする防食具。
【請求項11】
請求項10に記載の防食具の両開口端を連結して該防食具を環状に形成する接続部材であって、
鍔部の両面に前記防食具の開口端に挿入する挿入部が突設され、かつ前記挿入部が基端側から先端側に向かって断面積が小さくなる錐台形の節が複数個重設されてなることを特徴とする防食具用接続部材。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公開番号】特開2009−221569(P2009−221569A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69894(P2008−69894)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【出願人】(000230973)日本工営株式会社 (39)
【Fターム(参考)】