説明

鍛造用金型

【課題】鍛造素材を形成するために投入される金属材料の量を減らすとともに、金型の作成コストの増加を抑制することができる鍛造用金型を提供する。
【解決手段】切削加工されることにより羽根車となる略円柱状に形成された羽根車素材の鍛造に用いられる鍛造用金型1であって、羽根車素材における吸気側端面および側面を形成する凹部21を有する第1金型2と、羽根車素材における排気側端面を形成する第2金型3と、吸気側端面における羽根車素材の中心軸線Lまわりであって、羽根車の翼間に相当する部分から、凹部21の内側に向かって突出する複数の吸気側突起23,23と、側面における排気側端面の近傍における羽根車の翼間に相当する部分から、凹部21の内側に向かって突出する複数の外周側突起41,41と、が設けられ、吸気側突起23および外周側突起41は、中心軸線Lまわりに相対位置が変更可能とされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に遠心圧縮機における羽根車用鍛造素材の鍛造に用いて好適な鍛造用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、金型で鍛造された遠心圧縮機に用いられる羽根車の素材には、羽根車の翼と翼との間にも素材である金属(以下、「余肉」と表記する。)があるため、羽根車を製作する過程で、翼と翼との間の肉を切削加工するなどの方法により削除されている。
言い換えると、羽根車の鍛造素材には削除される肉が含まれているため、鍛造素材を形成するために投入される金属材料の量が多くなるという欠点があった。
【0003】
上述の欠点を解決するために、羽根車の外周側における翼間の余肉をぬすむこと、言い換えると、鍛造素材に凹部を設けることを可能とする鍛造金型が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−105746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、羽根車における翼の形状(以下、「翼プロファイル」と表記する。)は、羽根車を備える圧縮機の性能や容量等に応じて変わるものであり、数種類の翼プロファイルが存在している。すると、これらの翼プロファイルに共通する余肉部であって、一つの鍛造用金型で形成できるものを見出すことは困難となる。たとえ、共通する余肉部を見出したとしても、各翼プロファイルに対する余肉部と比較して小さいため、余肉のぬすみ量が小さくなり、投入される金属材料量の削減効果が小さくなるという問題があった。
【0006】
その一方で、形状の異なる翼プロファイルごとに専用の鍛造金型を用いる方法では、一つの鍛造金型を用いて複数の翼プロファイルに対応する方法と比較して余肉のぬすみ量を増やすことができ、さらには、余肉のぬすみ形状を最適化することにより、最大の余肉ぬすみ量を得ることができる。
【0007】
しかしながら、上述の方法では、翼プロファイルの種類に応じた数の鍛造用金型が必要となり、鍛造用金型の製作コストが高くなるという問題があった。さらに、鍛造用金型の製作に投じた資金の回収が困難になるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、鍛造素材を形成するために投入される金属材料の量を減らすとともに、金型の作成コストの増加を抑制することができる鍛造用金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の鍛造用金型は、切削加工されることにより羽根車となる略円柱状に形成された羽根車素材の鍛造に用いられる鍛造用金型であって、前記羽根車素材における吸気側端面および側面を形成する凹部を有する第1金型と、前記羽根車素材における排気側端面を形成する第2金型と、前記吸気側端面における前記羽根車素材の中心軸線まわりであって、前記羽根車の翼間に相当する部分から、前記凹部の内側に向かって突出する複数の吸気側突起と、前記側面における前記排気側端面の近傍における前記羽根車の翼間に相当する部分から、前記凹部の内側に向かって突出する複数の外周側突起と、が設けられ、前記吸気側突起および前記外周側突起は、前記中心軸線まわりに相対位置が変更可能とされていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、羽根車素材における吸気側端面、および、側面の排気側端面近傍の余肉をぬすむ凹みを形成することができ、例えば、吸気側端面、または、側面の排気側端面近傍のみに余肉をぬすむ凹みを形成する場合と比較して、羽根車素材を形成するために投入される金属材料の量をへらすことができる。
【0011】
さらに、吸気側突起および外周側突起の相対位置を、羽根車素材の中心軸線まわりに変更できるため、形成される羽根車における翼プロファイルが異なる場合であっても、一つの鍛造用金型で対応することができる。
【0012】
上記発明においては、前記第1金型と組み合わされることにより、前記第1金型の凹部とともに前記羽根車素材における吸気側端面および側面を形成する内周面を有するとともに、前記第1金型に対して前記中心軸線まわりに相対位置が変更可能な第3金型が設けられ、前記吸気側突起および前記外周側突起の一方が前記第1金型と一体とされ、他方が前記第3金型と一体とされていることが望ましい。
【0013】
本発明によれば、第1金型および第3金型の相対位置を、中心軸線まわりに変更することにより、複数の吸気側突起、および、複数の外周側突起の相対位置を一括して変更することができる。
【0014】
例えば、第3金型と外周側突起とを一体に形成し、第1金型に対して第3金型における中心軸線まわりの相対位置を変更することにより、吸気側突起および外周側突起の中心軸線まわりの相対位置を変更することができる。
【0015】
一方で、第3金型と吸気側突起とを一体に形成し、第1金型に対して第3金型における中心軸線まわりの相対位置を変更する場合には、第3金型と吸気側突起とを一体にする場合と比較して、第3金型を径方向に小型化できるため、鍛造用金型の全体を小型化することができる。
【0016】
さらに、第3金型を交換することにより、吸気側突起および外周側突起の中心軸線まわりの相対位置を変更することもできる。
【0017】
上記発明においては、前記第1金型および前記第3金型との間の隙間のうち、前記凹部および前記内周面と隣接する領域は、前記凹部の開口方向に向かって延びていることが望ましい。
【0018】
本発明によれば、凹部および内周面と隣接する第1金型および第3金型との間の隙間が、凹部の開口方向に向かって延びているため、例えば、隣接する隙間が開口方向以外の方向に延びている場合と比較して、第1金型等から鍛造された羽根車素材を取り外しやすくなる。
【0019】
一般的に、羽根車素材を鍛造した際に、羽根車素材の一部が第1金型および第3金型の隙間に侵入する場合がある。この場合に、第1金型および第3金型の間の隙間が凹部の開口方向に向かって延びていると、羽根車素材の取り外し方向と、隙間が延びる方向とが一致し、第1金型から羽根車素材を取り外しやすくなる。
その一方で、羽根車素材の取り外し方向と、隙間が延びる方向とが交差していると、金型から羽根車素材を取り外す際に、羽根車素材における隙間に侵入した部分が、当該隙間から抜けにくいため、羽根車素材が取り外しにくくなる。
【0020】
上記発明においては、前記第1金型および前記第3金型の一方には、他方に向かって延びる位置決めピンが設けられ、前記第1金型および前記第3金型の一方には、前記位置決めピンが挿通される位置決め穴が設けられていることが望ましい。
【0021】
本発明によれば、位置決めピンおよび位置決め穴を用いて第1金型および第3金型の相対位置を定めることにより、容易に複数の吸気側突起および複数の外周側突起の相対位置を定めることができる。
例えば、形成される羽根車における翼プロファイルの種類に応じて、位置決めピンおよび位置決め穴の組み合わせを予め準備することにより、形成される羽根車における翼プロファイルが異なる場合であっても、一つの鍛造用金型で容易に対応することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の鍛造用金型によれば、吸気側突起および外周側突起を設けるとともに、吸気側突起および外周側突起における中心軸線まわりの相対位置を変更可能とすることにより、鍛造素材を形成するために投入される金属材料の量を減らすとともに、金型の作成コストの増加を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る鍛造用金型の構成を説明する断面図である。
【図2】図1の鍛造用金型で鍛造された羽根車素材の形状を説明する斜視図である。
【図3】図2の羽根車素材から切削加工された羽根車の形状を説明する斜視図である。
【図4】羽根車における翼プロファイルの構成を説明する模式図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る鍛造用金型の構成を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る鍛造用金型ついて図1から図4を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る鍛造用金型の構成を説明する断面図である。
図2は、図1の鍛造用金型で鍛造された羽根車素材の形状を説明する斜視図である。
本実施形態の鍛造用金型1は、遠心圧縮機の羽根車における鍛造素材である羽根車素材50(図2参照。)を鍛造するものである。
鍛造用金型1には、図1に示すように、下金型(第1金型)2と、上金型(第2金型)3と、第3金型4と、が設けられている。
【0025】
下金型2は、図1に示すように、上金型3および第3金型4とともに、羽根車素材50の鍛造に用いられるものであり、特に、羽根車素材50における吸入側端面51および側面52における吸入側端面51側の領域を形成するものである。
下金型2には、凹部21と、嵌合部22と、が設けられている。
【0026】
凹部21は、図1に示すように、内面が羽根車素材50における吸入側端面51および側面52における吸入側端面51側の領域の形状に形成されたものであり、上金型3に向かって開口するものである。
凹部21における吸入側端面51と対応する内面(図1における下側の内面)には、複数の吸気側突起23が設けられている。
【0027】
吸気側突起23は、羽根車素材50の吸入側端面51における余肉をぬすむ吸気側凹み54を形成する突出部である。
吸気側突起23は、羽根車素材50の中心軸線L、つまり、凹部21の中心軸線まわりに等間隔に配置されるとともに、凹部21の内面から凹部21の開口に向かって(図1の上方向に向かって)、延びる突起である。
【0028】
嵌合部22は、図1に示すように、凹部21の周囲に形成された円環状の凹みであって、第3金型4が嵌合される凹みである。
嵌合部22には、内側壁面24と、位置決め穴25と、が設けられている。
【0029】
内側壁面24は、図1に示すように、嵌合部22における凹部21の開口側、言い換えると、上金型3に向かって(図1の上方向に向かって)延びる壁面であって、径方向の内側の壁面である。さらに、内側壁面24は、嵌合された第3金型4と接触する面でもある。
言い換えると、下金型2における嵌合部22の内周側には、凹部21の開口に向かって突出する環状部26が設けられ、環状部26の径方向外側の側面に内側壁面24が設けられている。
【0030】
位置決め穴25は、図1に示すように、下金型2および第3金型4の中心軸線Lまわりの相対位置を調節するものである。位置決め穴25は嵌合部22の底面に形成された穴であって、第3金型4の位置決めピン42が挿通される穴である。
【0031】
上金型3は、図1に示すように、下金型2および第3金型4とともに、羽根車素材50の鍛造に用いられるものであり、特に、羽根車素材50における排気側端面53を形成するものである。
【0032】
第3金型4は、図1に示すように、上金型3および下金型2とともに、羽根車素材50の鍛造に用いられるものであり、特に、羽根車素材50における側面52の排気側端面53側の領域を形成する外周側金型である。
第3金型4は円環状に形成され、径方向内側の面は、羽根車素材50における側面52の排気側端面53側の領域の形状に形成されたものである。
【0033】
第3金型4には、複数の外周側突起41と、位置決めピン42と、が設けられている。
外周側突起41は、図1に示すように、羽根車素材50の側面52の排気側端面53側の領域における余肉をぬすむ外周側凹み55を形成する突出部である。外周側突起41は、羽根車素材50の中心軸線L、つまり、凹部21の中心軸線まわりに等間隔に配置されるとともに、第3金型4の内周面から中心軸線Lに向かって延びる突起である。
【0034】
さらに、外周側突起41および下金型2には、外周側突起41および下金型2における中心軸線Lまわりの相対位置関係を示す目盛りが設けられている。目盛りは、例えば、外周側突起41および下金型2における上金型3との合わせ面など、外部から視認できる位置に設けられている。
【0035】
位置決めピン42は、図1に示すように、下金型2および第3金型4の中心軸線Lまわりの相対位置を調節するものである。位置決めピン42は第3金型4の底面に設けられた柱状の部材であって、第3金型4の底面から下金型2に向かって(図1の下方向に向かって)延びるものである。さらに、位置決めピン42は、嵌合部22の位置決め穴25に挿通されるものである。
【0036】
位置決めピン42および位置決め穴25は、鍛造される羽根車素材50に係る翼プロファイルの種類に応じて、複数の組み合わせを構成するように設けられている。
【0037】
次に、上記の構成からなる鍛造用金型1における羽根車素材50の鍛造について説明する。
鍛造用金型1を用いて羽根車素材50を鍛造する場合には、最初に、吸気側突起23および外周側突起41における中心軸線Lまわりの相対位置が調節される。
【0038】
図3は、図2の羽根車素材から切削加工された羽根車の形状を説明する斜視図である。図4は、羽根車における翼プロファイルの構成を説明する模式図である。
ここで、羽根車素材50を切削加工して形成される羽根車60には、図4に示すように、複数の翼61Aが設けられており、翼61Aの形状であるプロファイルは、羽根車60が用いられる遠心圧縮機に求められる性能や容量等に応じて定められている。
図4には、翼61Aのプロファイルの他に、異なる翼61Bのプロファイルや、翼61Cのプロファイルが示されている。
【0039】
吸気側突起23および外周側突起41における中心軸線Lまわりの相対位置の調整は、羽根車素材50に係る翼のプロファイル、例えば翼61Aのプロファイルに対応して定められる。そのため、吸気側突起23は、翼61Aにおける吸気側の翼間と対応する位置に配置され、外周側突起41は、翼61Aにおける排気側の翼間に対応する位置に配置されることとなる。
【0040】
具体的には、翼61Aのプロファイルに対応する吸気側突起23および外周側突起41の相対位置、および、当該相対位置に対応する第3金型4に設けられた位置決めピン42、および、下金型2に設けられた位置決め穴25の組み合わせが定められている。
この組み合わせに係る位置決め穴25に位置決めピン42を差し込むことにより、下金型2および第3金型4の相対位置が定められ、吸気側突起23および外周側突起41の相対位置が定められる。
【0041】
その一方で、下金型2および第3金型4に設けられた目盛りを用いて、下金型2および第3金型4の相対位置、および、吸気側突起23および外周側突起41の相対位置が確認される。
【0042】
吸気側突起23および外周側突起41が定められると、下金型2における凹部21に羽根車素材50を形成する金属素材が投入され、上金型3および下金型2により、羽根車素材50が鍛造される。
【0043】
金属素材は、上金型3により下金型2に向かって押圧され、凹部21の径方向外側に向かって変形する。このとき、下金型2の環状部26は金属素材によって径方向外側に向かって押圧され、環状部26は第3金型4に押し付けられる。
そのため、環状部26と第3金型4との間には、金属素材が侵入しにくくなる。
【0044】
上金型3および下金型2により羽根車素材50が鍛造されると、下金型2から羽根車素材50が取り外される。具体的には、下金型2の凹部21から、羽根車素材50が開口方向に引っ張り出される。
【0045】
このとき、環状部26と第3金型4との間に金属素材が侵入し、羽根車素材50の一部が環状部26と第3金型4との間に挟まれた状態であっても、羽根車素材50が取り出される方向と、環状部26と第3金型4との間の隙間が延びる方向とが一致するため、容易に羽根車素材50を取り出すことができる。
【0046】
上記の構成によれば、羽根車素材50における吸入側端面51、および、側面52の排気側端面53近傍の余肉をぬすむ吸気側凹み54および外周側凹み55を形成することができ、例えば、吸気側凹み54、および、外周側凹み55の一方のみを形成する場合と比較して、羽根車素材50を形成するために投入される金属材料の量をへらすことができる。
【0047】
さらに、吸気側突起23および外周側突起41の相対位置を、下金型2および第3金型4の相対位置を中心軸線Lまわりに変更することにより、羽根車素材50の中心軸線Lまわりに一括して変更できるため、形成される羽根車60における翼のプロファイルが異なる場合であっても、一つの鍛造用金型1で対応することができる。
【0048】
その一方で、凹部21および第3金型4の内周面と隣接する下金型2および第3金型4の間の隙間が、凹部21の開口方向に向かって延びているため、例えば、隣接する接触面が開口方向以外の方向に延びている場合と比較して、下金型2等から鍛造された羽根車素材50を取り外しやすくなる。
【0049】
つまり、羽根車素材50の取り外し方向と、隙間が延びる方向とが交差していると、下金型2から羽根車素材50を取り外す際に、羽根車素材50における隙間に侵入した部分が、当該隙間から抜けにくいため、羽根車素材50が取り外しにくい。
それに対して、下金型2および第3金型4の隙間が凹部21の開口方向に向かって延びている場合には、羽根車素材50の取り外し方向と、隙間が延びる方向とが一致し、下金型2から羽根車素材を取り外しやすくなる。
【0050】
位置決めピン42および位置決め穴25を用いて下金型2および第3金型4の相対位置を定めることにより、容易に複数の吸気側突起23、および、複数の外周側突起41の相対位置を定めることができる。
例えば、形成される羽根車60における翼のプロファイルの種類に応じて、位置決めピン42および位置決め穴25の組み合わせを予め準備することにより、形成される羽根車60における翼のプロファイルが異なる場合であっても、一つの鍛造用金型1で容易に対応することができる。
【0051】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図5を参照して説明する。
本実施形態の鍛造用金型の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、吸入側突起および外周側突起の相対位置の変更方法が異なっている。よって、本実施形態においては、図5を用いて吸入側突起および外周側突起の相対位置の変更方法のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図5は、本実施形態に係る鍛造用金型の構成を説明する断面図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
本実施形態の鍛造用金型101には、図5に示すように、下金型(第1金型)102と、上金型3と、第3金型104と、が設けられている。
【0053】
下金型102は、図5に示すように、上金型3および第3金型104とともに、羽根車素材50の鍛造に用いられるものであり、特に、羽根車素材50における側面52を形成するものである。
下金型102には、凹部121と、嵌合部122と、が設けられている。
【0054】
凹部121は、図5に示すように、内面が羽根車素材50における吸入側端面51および側面52の形状に形成されたものであり、上金型3に向かって開口するものである。
凹部121における羽根車素材50の側面52の排気側端面53側の領域と対応する内面には、複数の外周側突起141が設けられている。
【0055】
外周側突起141は、図5に示すように、羽根車素材50の側面52の排気側端面53側の領域における余肉をぬすむ外周側凹み55を形成する突出部である。外周側突起141は、羽根車素材50の中心軸線L、つまり、凹部121の中心軸線まわりに等間隔に配置されるとともに、凹部121の内周面から中心軸線Lに向かって延びる突起である。
【0056】
嵌合部122は、図5に示すように、凹部121における吸入側端面51と対応する内面(図1における下側の内面)に形成された凹みであって、第3金型104が嵌合される凹みである。
嵌合部122には、内周壁面124と、位置決め穴125と、が設けられている。
【0057】
内周壁面124は、図5に示すように、嵌合部122における凹部121の開口側、言い換えると、上金型3に向かって(図5の上方向に向かって)延びる壁面である。さらに、内周壁面124は、嵌合された第3金型104と接触する面でもある。
【0058】
位置決め穴125は、図5に示すように、下金型102および第3金型104の中心軸線Lまわりの相対位置を調節するものである。位置決め穴125は嵌合部122の底面に形成された穴であって、第3金型104の位置決めピン142が挿通される穴である。
【0059】
なお、本実施形態に係る下金型102は、第1の実施形態に係る下金型2と比較すると、中心軸線Lを中心とした径方向(図5の左右方向)に小型化されている。
つまり、下金型2は、羽根車素材50の鍛造時に第3金型4に働く径方向外側に向う力を受けるために、径方向の寸法を大きくする必要があったのに対して、本実施形態の下金型102では、第3金型104に働く中心軸線L方向に向かう力を受ければよいため、径方向の寸法を小さくすることができる。
【0060】
第3金型104は、図5に示すように、上金型3および下金型102とともに、羽根車素材50の鍛造に用いられるものであり、特に、羽根車素材50における吸入側端面51を形成する吸気側金型である。
第3金型104は円板状に形成され、凹部121の開口側の面(図5の上側の面)は、羽根車素材50における吸入側端面51の形状に形成されるとともに、複数の吸気側突起123と、位置決めピン142と、が設けられている。
【0061】
吸気側突起123は、羽根車素材50の吸入側端面51における余肉をぬすむ吸気側凹み54を形成する突出部である。
吸気側突起123は、羽根車素材50の中心軸線L、つまり、凹部121の中心軸線まわりに等間隔に配置されるとともに、第3金型104の上面から凹部121の開口に向かって(図5の上方向に向かって)、延びる突起である。
【0062】
位置決めピン142は、図5に示すように、下金型102および吸気側突起123の中心軸線Lまわりの相対位置を調節するものである。位置決めピン142は吸気側突起123の底面(図5の下側の面)に設けられた柱状の部材であって、吸気側突起123の底面から下金型102に向かって(図5の下方向に向かって)延びるものである。さらに、位置決めピン142は、嵌合部122の位置決め穴125に挿通されるものである。
【0063】
次に、上記の構成からなる鍛造用金型101における羽根車素材50の鍛造について説明する。
鍛造用金型101を用いて羽根車素材50を鍛造する場合には、最初に、吸気側突起23および外周側突起41における中心軸線Lまわりの相対位置が調節される。
【0064】
具体的には、第1の実施形態と同様に、翼61Aのプロファイルに対応する吸気側突起23および外周側突起41の相対位置、および、当該相対位置に対応する第3金型104に設けられた位置決めピン142、および、下金型102に設けられた位置決め穴125の組み合わせが定められている。
この組み合わせに係る位置決め穴125に位置決めピン142を差し込むことにより、下金型102および第3金型104の相対位置が定められ、吸気側突起23および外周側突起41の相対位置が定められる。
【0065】
吸気側突起23および外周側突起41が定められると、下金型2における凹部21に羽根車素材50を形成する金属素材が投入され、上金型3および下金型2により、羽根車素材50が鍛造される。
【0066】
上記の構成によれば、第3金型104と吸気側突起123とを一体に形成し、下金型102に対して第3金型104における中心軸線まわりの相対位置を変更する場合には、第3金型104と吸気側突起123とを一体にする場合と比較して、下金型102を径方向に小型化できる。そのため、鍛造用金型101の全体を小型化するとともに、鍛造用金型101の重量を軽減することができる。
【0067】
なお、上述の第1および第2の実施形態のように、下金型2に対して第3金型4を中心軸線Lまわりに回転させて吸気側突起23および外周側突起41の相対位置を変更する、または、下金型102に対して第3金型104を中心軸線Lまわりに回転させて吸気側突起23および外周側突起41の相対位置を変更してもよいし、第3金型4や、第3金型104を交換することにより、吸気側突起23および外周側突起41の相対位置を変更してもよく、特に限定するものではない。
【符号の説明】
【0068】
1,101 鍛造用金型
2,102 下金型(第1金型)
3 上金型(第2金型)
4,104 第3金型
21,121 凹部
23,123 吸気側突起
25,125 位置決め穴
41,141 外周側突起
42,142 位置決めピン
50 羽根車素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削加工されることにより羽根車となる略円柱状に形成された羽根車素材の鍛造に用いられる鍛造用金型であって、
前記羽根車素材における吸気側端面および側面を形成する凹部を有する第1金型と、
前記羽根車素材における排気側端面を形成する第2金型と、
前記吸気側端面における前記羽根車素材の中心軸線まわりであって、前記羽根車の翼間に相当する部分から、前記凹部の内側に向かって突出する複数の吸気側突起と、
前記側面における前記排気側端面の近傍における前記羽根車の翼間に相当する部分から、前記凹部の内側に向かって突出する複数の外周側突起と、
が設けられ、
前記吸気側突起および前記外周側突起は、前記中心軸線まわりに相対位置が変更可能とされていることを特徴とする鍛造用金型。
【請求項2】
前記第1金型と組み合わされることにより、前記第1金型の凹部とともに前記羽根車素材における吸気側端面および側面を形成する内周面を有するとともに、
前記第1金型に対して前記中心軸線まわりに相対位置が変更可能な第3金型が設けられ、
前記吸気側突起および前記外周側突起の一方が前記第1金型と一体とされ、他方が前記第3金型と一体とされていることを特徴とする請求項1記載の鍛造用金型。
【請求項3】
前記第1金型および前記第3金型との間の隙間のうち、前記凹部および前記内周面と隣接する領域は、前記凹部の開口方向に向かって延びていることを特徴とする請求項2記載の鍛造用金型。
【請求項4】
前記第1金型および前記第3金型の一方には、他方に向かって延びる位置決めピンが設けられ、
前記第1金型および前記第3金型の一方には、前記位置決めピンが挿通される位置決め穴が設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の鍛造用金型。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−62706(P2011−62706A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212977(P2009−212977)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】