説明

閉鎖膜チューブ容器の製造方法

【課題】 内容物の保存性に優れた閉鎖膜チューブ容器
【解決手段】 内ショルダーの上面に閉鎖膜を被着した円盤部材を、マンドレルヘッド上に載置し、次いでショルダー材を、前記円盤部材上に落下し、該ショルダー材を上金型で押圧してチューブショルダーを成形し、前記閉鎖膜を内ショルダーとチューブショルダーで挟着したことを特徴とする閉鎖膜チューブ容器の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉鎖膜チューブ容器の製造方法に関し、さらに詳しくは内容物の保存性に優れた閉鎖膜チューブ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、閉鎖膜チューブ容器の製造方法としては、図10〜図13に示すような製造方法があった。図10及び図11に示すように、従来の閉鎖膜チューブ容器は、内ショルダー51の上面に閉鎖膜52を被着した円盤部材53を、予め別途成形されたチューブショルダー50の内側に溶着することにより、閉鎖膜52は内ショルダー51とチューブショルダー50で挟着して製造されている。そして、胴部54は、その上端がチューブショルダー50の下端の外周に溶着されている。このようにして成形される閉鎖膜チューブ容器は、閉鎖膜52が蓋部52aを除いて、外側から見えないので外観上美麗であり、又閉鎖膜52がチューブ容器内に剥がれ落ちないという利点がある(特許文献1)。内ショルダー51は、筒部51aと肩部51bとから構成され、又閉鎖膜52は、蓋部52a、筒状の側壁部52b及び傘状の裾部52cから構成されている。
【特許文献1】特公平3−76818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の製造方法においては、以下に示す欠点があった。
(1)図10に示すように、内ショルダー51の下端部内側近傍に接触するチューブ容器内の内容物が、外気によって変色、変質するという欠点があった。これは、図12に示すように、チューブショルダー50と閉鎖膜52の隙間から、外気が閉鎖膜52の皺59の凹凸を伝って内部に進入するためである(矢印X)。又逆に、内容物が閉鎖膜52の皺59の凹凸を伝って、閉鎖膜52のバリア層に浸透するため、閉鎖膜52のバリア層がアルミニウム箔の場合、腐食するという欠点があった(矢印Y)。
(2)さらに、図13に示すように、胴部54のバリア層54dと、閉鎖膜52のバリア層52dの最短距離Lが、1.0〜5mmと大きいため、チューブショルダー50を透過した外気が、この隙間Lからチューブ内に流入して、内容物を変質させるという欠点があった(矢印Z)。
本発明は、このような問題に着目してなされたものであり、外気の透過及び内容物の浸透を防止した、内容物の保存性に優れた閉鎖膜チューブ容器の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するため、請求項1記載の発明の解決手段は、内ショルダーの上面に閉鎖膜を被着した円盤部材を、マンドレルヘッド上に載置し、次いでショルダー材を、前記円盤部材上に落下し、該ショルダー材を上金型で押圧してチューブショルダを成形し、前記閉鎖膜を内ショルダーとチューブショルダーで挟着したことを特徴とする閉鎖膜チューブ容器の製造方法である。環状のショルダー材を上金型で、強く押圧してチューブショルダーを成形するので、溶融した樹脂が金型の押圧力で、閉鎖膜の外周の皺の凹凸内に入り込む。そして、皺の凹凸の周囲を樹脂で埋めることができるので、皺を伝って外気がチューブ容器内に流入するのを防止することができる。又内容物が皺を伝って、バリア層に入り込むのを防止することができる。
【0005】
請求項2記載の発明の解決手段は、マンドレルヘッドの外周面に、積層シートが円筒状に丸めて支持される胴部が、チューブショルダーの下端に溶着される閉鎖膜チューブ容器の製造方法であって、前記胴部のバリア層と、前記閉鎖膜のバリア層の最短距離Sが、0<S≦1.0mmであることを特徴とする閉鎖膜チューブ容器の製造方法である。
【0006】
請求項3記載の発明の解決手段は、バリア層が、アルミニウム箔又はガスバリア性樹脂で構成されることを特徴とする閉鎖膜チューブ容器の製造方法である。
【0007】
請求項4記載の発明の解決手段は、胴部の表面に継ぎ目を有することを特徴とする閉鎖膜チューブ容器の製造方法である。
【0008】
請求項5記載の発明にお解決手段は、胴部の表面に継ぎ目がないことを特徴とする閉鎖膜チューブ容器の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、内容物内への外気の透過及び内容物の閉鎖膜への浸透を防止することができ、内容物の保存性に優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例の一例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1〜図4は、本発明の実施例1を示す図面である。図1は、内ショルダー1の上面に閉鎖膜2を被着した円盤部材3を、マンドレルヘッド4上に載置した製造工程を示したものである。筒部1aと肩部1bから構成された内ショルダー1は、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等で予め成形される。又蓋部2a、筒状の側壁部2b及び傘状の裾部2cから構成された閉鎖膜2は、予め円盤状に切断したアルミニウムの板材を絞り成形して製造される。閉鎖膜2はアルミニウム箔の他、ガスバリア性の樹脂材料等から構成されている。バリア層2dがアルミニウム箔の場合、少なくともその表面又は裏面にポリエチレン等の樹脂が積層されており、内ショルダー1及びチューブショルダー5aとの溶着が強固になる。閉鎖膜2は溶着する下面が150〜250℃に加熱され、内ショルダー1上に溶着される。図2は、この閉鎖膜2と内ショルダー1から構成される円盤部材3を、マンドレルヘッド4上に載置し、上方から200〜300℃に溶融したショルダー材5を、円盤部材3の閉鎖膜2上に落下する状態を示す図面である。ショルダー材5は、実施例1では環状を呈しているが、形状は任意に選択することができる。又ショルダー材5は、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂等で構成されている。なお、マンドレルヘッド4の外周には、内部にアルミニウム箔等のバリア層6aを有する胴部6が、丸めて巻き付けられている。
【0012】
図3は、閉鎖膜2を上面に溶着した円盤部材3上に、溶融した環状のショルダー材5を落下し、その上からマトリクス及びフォーミングから成る金型7で押圧成形し、チューブショルダー5aを成形するものである。上金型7による強い押圧力で、チューブショルダー5aを成形した場合、図5(図4のW−W線拡大断面図)に示すように、閉鎖膜2の皺2eの周囲に溶融樹脂が入り込み、皺2eを完全に埋め込むことができる。すなわち、発明者は、溶融した環状のショルダー材5を、上金型7で強く押圧成形することで、溶融樹脂で皺2eの凹凸の周囲を完全に埋めることができることを見出したのである。図5に示すように、チューブショルダー5aと閉鎖膜2の隙間がなくなり、皺を伝って外気が内部に流入するのを阻止することができる。従来の公知の製造方法である、予め成形したチューブショルダーの内側に、円盤部材を単に溶着した場合や、円盤部材の上に単に射出成形により溶融樹脂を流し込んで、チューブショルダーを一体成形する場合においては、溶融樹脂により皺の凹凸を完全に埋めることが不可能であり、チューブショルダー5aと閉鎖膜2の間に隙間が生じていた。
【実施例2】
【0013】
次ぎに、本発明の実施例2は、図6に示すように、チューブショルダー5aを成形すると同時に、上金型7による押圧成形により胴部6が、チューブショルダー5aの下端に溶着される。本発明は、胴部6のアルミニウム箔等のバリア層6aと、閉鎖膜2のアルミニウム箔等のバリア層2dの最短距離Sが、0<S≦1.0mmになるように構成されている。実施例2においては、チューブショルダー5aの肉厚を薄く形成することが重要である。なお、閉鎖膜2は、バリア層2dがアルミニウム箔である場合は、少なくとも片面に、ポリエチレンテレフタレート樹脂、その外側にポリエチレン樹脂を積層することにより、閉鎖膜2の開口を容易にすると共に、内ショルダー1及びチューブショルダー5aとの溶着を強固なものとすることができる。
【0014】
実施例2は、このようにバリア層間の最短距離Sを1mm以下に小さくしたことにより、外気がチューブショルダー5aを透過して、内容物内に混入するのを防止することができる。なお、閉鎖膜2のバリア層2dは、アルミニウム箔の他、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂等のガスバリア性樹脂で構成されてもよい。又同様に、胴部6のバリア層6aも、アルミニウム箔の他、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂等のガスバリア性樹脂であってもよい。
【実施例3】
【0015】
図7はこの発明の実施例3であり、閉鎖膜12の傘状の裾部12cが、若干上方に持ち上げられた状態で、ほぼ水平方向の位置に成形された実施例である。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0016】
上記製造方法で製造されたチューブ容器は、図8に示すように、積層シートが円筒状に丸められ、相互の端部を上下に重ね又は突き合わされて溶着されている。すなわち、本発明は、継ぎ目がある胴部26を有する一般的な閉鎖膜チューブ容器に適用することができる。又他の実施例として、本発明は、図9に示すように、継ぎ目がない胴部36を有する閉鎖膜チューブ容器にも適用することができる。胴部36は、外観上継ぎ目がないので、
外観的に美麗であると共に印刷面を特定する必要がない利点がある。この継ぎ目がない胴部36を有する閉鎖膜チューブ容器は、従来公知の製造方法で製造される。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明に係る製造方法は、外部からの酸素等のガスの透過を完全に防止でき、又閉鎖膜の腐食を防止することができるので、流通、販売過程における内容物の劣化を防止することができる。又開封後においても、ねじ部、口部のガス遮断効果を有するので、閉鎖膜チューブ容器として、医薬品、食品、歯磨き等を収納するのに広く適し、多岐分野にわたって利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る製造方法の実施例1を示す製造工程を示す断面図。
【図2】本発明に係る製造方法の実施例1を示す製造工程を示す断面図。
【図3】本発明に係る製造方法の実施例1を示す製造工程を示す断面図。
【図4】本発明に係る製造方法の実施例1を示す製造工程を示す断面図。
【図5】本発明に係る製造方法の実施例1である図4のW−W線拡大断面図。
【図6】本発明に係る製造方法で成形された実施例2を示す、胴部と肩部の継ぎ目の 拡大断面図。
【図7】本発明に係る製造方法で成形された実施例3を示す、胴部と肩部の継ぎ目の 拡大断面図。
【図8】本発明に係る製造方法の実施例1〜3の胴部横断面を示す断面図。
【図9】本発明に係る製造方法の他の実施例の胴部横断面を示す断面図。
【図10】従来の製造方法で製造された、閉鎖膜チューブ容器を示す断面図。
【図11】従来の製造方法で製造された、閉鎖膜チューブ容器の製造工程を示す断面 図。
【図12】従来の製造方法で製造された、閉鎖膜チューブ容器のガス透過状態を示す 断面図。
【図13】従来の製造方法で成形された、閉鎖膜チューブ容器の胴部と肩部の継ぎ目 の拡大断面図。
【符号の説明】
【0019】
1 11 内ショルダー
2 12 閉鎖膜
2d 12d バリア層
3 円盤部材
4 マンドレルヘッド
5 ショルダー材
5a 15a チューブショルダー
6 16 胴部
6a 16a バリア層
7 上金型
26 継ぎ目がある胴部を有する閉鎖膜チューブ容器
36 継ぎ目がない胴部を有する閉鎖膜チューブ容器
S 最短距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内ショルダーの上面に閉鎖膜を被着した円盤部材を、マンドレルヘッド上に載置し、次いでショルダー材を、前記円盤部材上に落下し、該ショルダー材を上金型で押圧してチューブショルダを成形し、前記閉鎖膜を内ショルダーとチューブショルダーで挟着したことを特徴とする閉鎖膜チューブ容器の製造方法。
【請求項2】
マンドレルヘッドの外周面に、積層シートが円筒状に丸めて支持される胴部が、チューブショルダーの下端に溶着される閉鎖膜チューブ容器の製造方法であって、前記胴部のバリア層と、前記閉鎖膜のバリア層の最短距離Sが、0<S≦1.0mmであることを特徴とする請求項1記載の閉鎖膜チューブ容器の製造方法。
【請求項3】
前記バリア層が、アルミニウム箔又はガスバリア性樹脂で構成されることを特徴とする請求項1又は2記載の閉鎖膜チューブ容器の製造方法。
【請求項4】
前記胴部の表面に、継ぎ目を有することを特徴とする請求項1乃至3記載の閉鎖膜チューブ容器の製造方法。
【請求項5】
前記胴部の表面に、継ぎ目がないことを特徴とする請求項1乃至3記載の閉鎖膜チューブ容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−223058(P2007−223058A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43623(P2006−43623)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000238614)武内プレス工業株式会社 (72)
【Fターム(参考)】