説明

開閉弁

【課題】制御流体が高圧で、使用環境の温度変化が大きい場合においても、耐久性の低下を来すことが無く、開閉弁の駆動力が少なくて済む開閉弁を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の開閉弁は、心部に流体流通路を設けた弁体と、前記弁体が当接または離間することにより流体の流通を制御するゴム状弾性材製の弁座とを備えた開閉弁において、
前記弁体と前記弁座とが当接する接触領域に粘着防止手段として、微細な凹凸、溝、突起、等を設けた、高圧用のパイロット弁等に用いられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉弁に関する。
また、本発明は、例えばバルブや継ぎ手の部品として使用される開閉弁に関するものである。
【0002】
更にまた、本発明は、高圧用のパイロット弁に好適に用いられる開閉弁に関する。
また、本発明は、燃料電池用の水素ガス保存用タンクのパイロット弁に好適に用いられる開閉弁に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、図7に示すような開閉弁が知られている。
すなわち、図7に示す開閉弁は、図示しない電磁弁により往復動させられるプランジャー400が、軸方向に摺動可能にハウジング500内に配設され、このプランジャー400の一端にパイロット弁座200が設けられている。
【0004】
そして、電磁弁への通電によりプランジャー400が、図示しないスプリングに抗して図上下方側へ吸引され、パイロット弁座200がパイロットバルブ600より離間して開弁し、電磁弁の非通電によりスプリングの付勢力によってパイロット弁座200がパイロットバルブ600に圧接して閉弁するようになっている。
【0005】
また、図上上方であって、かつ、パイロットバルブ600よりも外周側には、メイン弁座201を有するメインバルブ601が軸方向に接離可能に設けられている。
ハウジング500におけるメインバルブ601の中央部には流出口700が形成され、このメインバルブ601がメイン弁座201に圧接することにより流出口700が閉塞され、メインバルブ601がメイン弁座201より離間することにより流出口17が開口されるようになっている。
【0006】
そして、電磁弁に通電すると、プランジャー400が、図上下方へ移動し、図示しないタンク室内の流体が、パイロット弁座200とパイロットバルブ600との間隙から、孔800から流出口700へ流出する。
ついで、流入口700側とパイロット弁座200側との差圧が小さくなって、メイン弁座201がピン900を介してプランジャー400により、図上下方に引き下げられ、メイン弁座201がメインバルブ601より離間すると、タンク室内の流体が、メイン弁座201とメインバルブ601との隙間を通じて流出口700より流出するようになっている。
【0007】
従来の開閉弁では、使用される環境が限定されており、使用温度が所定の範囲内に限定されている場合が殆どである。
例えば、工場内で使用される弁の場合には、工場内の温度が特定の範囲に限定されるので、そのような温度範囲に適応するシール部材を選択すればよい。
【0008】
しかし、上記した開閉弁は、以下に述べる問題点を招来した。
例えば自動車など野外に使用される機器に搭載される場合には、野外の使用状況によって温度環境が大きく異なる場合がある。
このため、広い温度範囲で、ゴム状弾性材製の弁座が安定したシール作用を発揮することが望まれる。
ゴム状弾性材製の弁座は、温度が高ければ柔らかくなり、低くなれば硬くなる傾向がある。
このため、広い温度範囲で、確実なシール作用を発揮させるためには、低温でも柔らかいシール部材を選択しなければならない。
【0009】
この結果、ゴム状弾性材製の弁座が、常温又は高温下では、柔らかくなりすぎてしまい、シール性は維持されても、耐久性が低下するといった問題があった。
特に、高圧用のパイロット弁に用いた場合は、パイロットバルブの孔径が0.2〜1mmと小さいこともあって、耐久性及び応答性能に問題があった。
具体的には、図8に示す様に、従来の開閉弁におけるパイロット弁座200に対してパイロットバルブ600を押し当てた状態において、パイロット弁座200は、パイロットバルブ600の孔800側に盛り上がる状態に弾性変形する。
この変形によって、パイロットバルブ600とパイロット弁座200との接触面積が広くなる。
【0010】
更に、タンク室内の流体の圧力が高いと、図9に示す様に、矢印で示す圧力によりパイロット弁座200が押圧され、パイロット弁座200は、パイロットバルブ600の孔800側に、更に盛り上がる状態に弾性変形する。
この様な変形は、流体の圧力及び環境温度が高ければ高いほど、顕著である。
この結果、パイロット弁座200の変形量が大きくなれば成る程、パイロット弁座200の損傷程度も大きくなり、繰り返し使用することによって、変形量の大きい隆起部分が破損するといった問題があり、耐久性が低下するといった欠点を惹起した。
【0011】
また、閉弁状態におけるパイロット弁座200の変形によって、パイロット弁座200とパイロットバルブ600との接触面積がさらに増大し、パイロットバルブ600を開弁状態へ引き戻すために必要とされる力が、より大きくする必要があるといった問題も招来した。
この問題は、例えば電磁弁の駆動電力が増大し、電力消費量の増加を招く問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−46439号公報
【特許文献2】特開2003−240148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、制御流体が高圧で、使用環境の温度変化が大きい場合においても、耐久性の低下を来すことが無く、開閉弁の駆動力が少なくて済む開閉弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の開閉弁は、心部に流体流通路を設けた弁体と、前記弁体が当接または離間することにより流体の流通を制御するゴム状弾性材製の弁座とを備えた開閉弁において、
前記弁体と前記弁座とが当接する接触領域に粘着防止手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1記載の発明の開閉弁によれば、制御流体が高圧で、使用環境の温度変化が大きい場合においても、耐久性の低下を来すことが無く、開閉弁の駆動力が少なくて済む。
請求項2記載の発明の開閉弁によれば、接触領域に設けた微細な凹凸により、弁体と弁座との粘着及び粘着に伴う吸い付きを効果的に阻止出来る。
【0016】
請求項3記載の発明の開閉弁によれば、接触領域に設けた梨地表面により、弁体と弁座との粘着及び粘着に伴う吸い付きを、より効果的に阻止出来る。
請求項4記載の発明の開閉弁によれば、接触領域に設けた軸方向に伸びる溝により、弁体と弁座との粘着及び粘着に伴う吸い付きを効果的に阻止出来る。
【0017】
請求項5記載の発明の開閉弁によれば、接触領域に設けた軸方向に伸びる突起により、弁体と弁座との粘着及び粘着に伴う吸い付きを効果的に阻止出来る。
請求項6記載の発明の開閉弁によれば、弁座表面に設けた微細な凹凸により、弁体と弁座との粘着及び粘着に伴う吸い付きを効果的に阻止出来る。
【0018】
請求項7記載の発明の開閉弁によれば、弁座表面に設けた梨地面により、弁体と弁座との粘着及び粘着に伴う吸い付きを効果的に阻止出来る。
請求項8記載の発明の開閉弁によれば、部分突起により、早期に流通路が生起するため、弁体と弁座との粘着及び粘着に伴う吸い付きを効果的に解消出来る。
【0019】
請求項9記載の発明の開閉弁によれば、一文字形状の部分突起により、より確実に、早期に流通路が生起するため、弁体と弁座との粘着及び粘着に伴う吸い付きを効果的に解消出来る。
請求項10記載の発明の開閉弁によれば、高圧用のパイロット弁に用いて特に有用である。
【0020】
請求項11記載の発明の開閉弁によれば、燃料電池用の水素ガス保存用タンクのパイロット弁に用いて特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る第1の態様の開閉弁の断面図である。
【図2】本発明に係る第2の態様の開閉弁の断面図である。
【図3】本発明に係る第3の態様の開閉弁の断面図である。
【図4】本発明に係る第4の態様の開閉弁の断面図である。
【図5】本発明に係る第5の態様の開閉弁の断面図である。
【図6】図5の弁座の平面図である。
【図7】従来技術に係る弁装置の断面図である。
【図8】図7に示した開閉弁の断面図である。
【図9】図7に示した開閉弁の弁座の変形状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図に基づき説明する。
図1において、本発明に係る第1の態様の開閉弁は、中心部に流体流通路11を設けた弁体1と、この弁体1が当接または離間することにより流体の流通を制御するゴム状弾性材製の弁座2とを備えている。
そして、弁体1と弁座2とが当接する接触領域の弁体1側のシール面12よりも内径面側に、粘着防止手段3として、微細な凹凸が形成されている。
【0023】
この微細な凹凸は、弁体1の表面を化学的若しくは物理的に荒らす、梨地処理により形成されている。
具体的な梨地処理としては、ショットブラスト処理、放電加工、酸処理、リン酸塩処理等が挙げられる。
ついで、図2に基づき、本発明に係る第2の態様の開閉弁を説明する。
先に説明した第1の態様と相違する点は、粘着防止手段3が、弁体1の接触領域に、軸方向に伸びる複数の溝32を設けた点である。
この溝32は、弁体1が弁座2と接するシール面12よりも内径面側に、弁体1の曲面に沿って、流通路11に向って伸びており、略等間隔に複数本設けられている。
【0024】
ついで、図3に基づき、本発明に係る第3の態様の開閉弁を説明する。
先に説明した第2の態様と相違する点は、粘着防止手段3が、弁体1の接触領域に、軸方向に伸びる複数の突起33を設けた点である。
この突起33は、弁体1が弁座2と接するシール面12よりも内径面側に、弁体1の曲面に沿って、流通路11に向って伸びており、略等間隔に複数本設けられている。
【0025】
ついで、図4に基づき、本発明に係る第4の態様の開閉弁を説明する。
先に説明した第1の態様と相違する点は、粘着防止手段3が、弁座2の弁体1と接するシール面12よりも内径面側に、微細な凹凸34を形成している点である。
この微細な凹凸34は、弁座1の表面を直接、酸処理、リン酸塩処理等の化学的方法若しくはショットブラスト等の物理的方法により荒らす方法や、弁座1を成形する金型表面に、予めショットブラストや放電加工により凹凸を形成しておくことにより形成する。
【0026】
ついで、図5及び図6に基づき、本発明に係る第5の態様の開閉弁を説明する。
先に説明した第1の態様と相違する点は、粘着防止手段3が、弁座2の弁体1と接するシール面12よりも内径面側に、部分突起35を設けた点である。
そして、この部分突起35は、一文字形状であるが、十文字形状であっても良い。
この様に、部分突起35を設けることにより、弁座2の接触領域に、剥がれ易い箇所が出来、弁体1と弁座2とが当接する接触領域の粘着を効果的に解除することが出来る。
【0027】
また、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係る開閉弁は、高圧用のパイロット弁、特に、燃料電池用の水素ガス保存用タンクのパイロット弁に用いることが出来る。
【符号の説明】
【0029】
1 弁体
2 弁座
3 粘着防止手段
11 流通路
12 シール面
31 微細な凹凸
32 溝
33 突起
34 微細な凹凸
35 部分突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部に流体流通路(11)を設けた弁体(1)と、前記弁体(1)が当接または離間することにより流体の流通を制御するゴム状弾性材製の弁座(2)とを備えた開閉弁において、
前記弁体(1)と前記弁座(2)とが当接する接触領域に粘着防止手段(3)を設けたことを特徴とする開閉弁。
【請求項2】
前記粘着防止手段(3)が、前記弁体(1)の接触領域に設けた微細な凹凸(31)であることを特徴とする請求項1記載の開閉弁。
【請求項3】
前記凹凸(31)が、梨地処理により形成されたことを特徴とする請求項2記載の開閉弁。
【請求項4】
前記粘着防止手段(3)が、前記弁体(1)の接触領域に設けた軸方向に伸びる溝(32)であることを特徴とする請求項1記載の開閉弁。
【請求項5】
前記粘着防止手段(3)が、前記弁体(1)の接触領域に設けた軸方向に伸びる突起(33)であることを特徴とする請求項1記載の開閉弁。
【請求項6】
前記粘着防止手段(3)が、前記弁座(2)の接触領域に設けた微細な凹凸(34)であることを特徴とする請求項1記載の開閉弁。
【請求項7】
前記凹凸(34)が、梨地処理により形成されたことを特徴とする請求項6記載の開閉弁。
【請求項8】
前記粘着防止手段(3)が、前記弁座(2)の接触領域の内側に設けた部分突起(35)であることを特徴とする請求項1記載の開閉弁。
【請求項9】
前記部分突起(35)が、一文字形状であることを特徴とする請求項8記載の開閉弁。
【請求項10】
前記開閉弁が、高圧用のパイロット弁に用いられることを特徴とする請求項1〜9いずれか一項に記載の開閉弁。
【請求項11】
前記開閉弁が、燃料電池用の水素ガス保存用タンクのパイロット弁に用いられることを特徴とする請求項10に記載の開閉弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−27191(P2011−27191A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174294(P2009−174294)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】