説明

間隔保持部材、及びそれを用いた壁体構造

【課題】使用する部材を繰り返し利用でき、断熱性能にも優れたコンクリート壁を施工でき、しかも容易に型枠工事を実施できる間隔保持部材、及びそれを用いた壁体構造を提供する。
【解決手段】本発明の間隔保持部材1は、対向する型枠5A,5B間に配することで型枠5A,5Bの間隔を一定に保持する間隔保持部材1において、型枠5A,5B間に配され、その端部が直接もしくは間接的に当接する筒状部材2と、前記筒状部材2の内部に位置し、その端部が型枠5A,5Bから突出すると共に、少なくとも突出部分31,31に雄ねじ加工を施した棒状部材3とからなり、前記筒状部材2より大径で筒状部材2の端部31に挿着される着座部材4が、前記棒状部材3の少なくとも一方の雄ねじ部31に係止されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用する部材を繰り返し利用でき、断熱性能にも優れたコンクリート壁を施工でき、しかも容易に型枠工事を実施できる間隔保持部材、及びそれを用いた壁体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート型枠工法は、合板等で型枠を形成してコンクリート打設空間を形成するものであり、この打設空間を維持するために、各種の間隔保持部材が用いられている。
【0003】
例えば本発明者は、コンクリート型枠工事における資材の有効利用(再利用)を目的とし、特許文献1等を提案した。この提案は、従来、コンクリート内に埋め込まれていた部材を筒状部材で包囲(内在)させることで、資材の抜き取りを可能にし、さらに、壁面に外装材等を敷設する場合の固定箇所として利用するものである。
一方で、特許文献2のように、「抜き取り」を目的とした型枠保持具も提案されているが、連結材4内にセパレータ9を介在させることで抜き取りは可能であるものの、型枠の構築時に手間のかかるものである。
例えば、型枠3に対してフォームタイ10、セパレータ9、連結材4を取り付けるが、連結材4とセパレータ9とは螺合していないので、反対側のナット12を取り付けるまでの間、連結材4が脱落する恐れがある。
また、施工時の手間を省くために、当該保持具を工場等で組み付けても、フォームタイ10とセパレータ9は締着によって組み付け可能ではあるものの、連結材は常に脱落する恐れがあり、予めナットを装着すると型枠との組み付け時にナットを取り外さなければならず施工性が低下すると共に外したナットが落下する恐れもあり、部材の持ち運びや取付時に注意が必要になるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−13850号公報
【特許文献2】特開2008−127897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、型枠の構築時に筒状部材が脱落することなく、容易に型枠工事を実施できる間隔保持部材、及びそれを用いた壁体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、対向する型枠間に配することで型枠の間隔を一定に保持する間隔保持部材において、型枠間に配され、その端部が直接もしくは間接的に当接する筒状部材と、前記筒状部材の内部に位置し、その端部が型枠から突出すると共に、少なくとも突出部分に雄ねじ加工を施した棒状部材とからなり、前記筒状部材より大径で筒状部材の端部に挿着される着座部材が、前記棒状部材の少なくとも一方の雄ねじ部に係止されていることを特徴とする間隔保持部材に関するものである。
【0007】
また、本発明は、前記間隔保持部材において、筒状部材は、少なくとも一部を大径部とし、その大径部内に、前記棒状部材より大径な雌ねじ部を有することを特徴とする間隔保持部材をも提案する。
【0008】
また、本発明は、前記間隔保持部材において、着座部材は、型枠内面に接触する基部と、短筒状の挿着部からなり、挿着部内側に係止部を形成したことを特徴とする間隔保持部材をも提案する。
【0009】
さらに、本発明は、前記間隔保持部材を配して施工した壁体構造であって、前記型枠間に、間隔保持部材を配してコンクリートを打設し、該コンクリートに埋設された前記筒状部材にアンカーボルトを螺合させて取り付けてなることを特徴とする壁体構造をも提案する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の間隔保持部材は、棒状部材の雄ねじ部に係止された着座部材が、筒状部材の抜け落ち(脱落)を防止するので、型枠を所定位置に配設する構築作業を容易に実施することができる。また、例えば施工時の手間を省くために、一方の型枠に形成した貫通孔に、当該間隔保持部材を次々と取り付けることもできるため、型枠工事が極めて短時間で実施できるものとなる。
そして、コンクリートの硬化後に棒状部材を抜き取りすることにより、使用する部材を繰り返し利用でき、冷熱の伝わり(冷熱橋)が遮断されるため、断熱性能にも優れたコンクリート壁とすることができる。
【0011】
また、筒状部材が、少なくとも一部を大径部とし、その大径部内に、前記棒状部材より大径な雌ねじ部を有する間隔保持部材は、コンクリート壁の硬化後に取り付けるアンカーボルトをその雌ねじ部に安定に且つ強固に固定することができる。
【0012】
また、着座部材が、型枠内面に接触する基部と、短筒状の挿着部とからなり、挿着部内側に係止部を形成した場合には、挿入部の係止部がその内側に位置する棒状部材の雄ねじ部に外側から係止するため、筒状部材が棒状部材から抜け落ち(脱落)することがない。
【0013】
さらに、本発明の間隔保持部材を用いた壁体構造は、コンクリートの硬化後に埋設された筒状部材にアンカーボルトを螺合させて取り付けてなるので、多様な外装材に対応することができる。特に間隔保持部材の筒状部材に雌ねじ部を設けた場合には、該雌ねじ部にアンカーボルトを安定に且つ強固に固定することができ、外装材の構築をより安定におこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)本発明の間隔保持部材の一実施例(第1実施例)を示す断面図、(b)棒状部材に緩く筒状部材を嵌め付けた状態を示す断面図、(c)着座部材を示す断面図、(d)筒状部材を示す断面図、(e)棒状部材を示す断面図である。
【図2】(a)着座部材の斜視図、側断面図、正面図、(b)着座部材の別の態様の側断面図、正面図、(c)ナット(雌ねじ部)の正面図、側面図、(d)連結筒材の側断面図、(e)連結筒材の別の態様の背面図、側断面図、正面図、(f)異径筒材の背面図、側断面図、正面図である。
【図3】(a)第1実施例の間隔保持部材を用いたコンクリート型枠工法における第1の工程の状態(コンクリート打設空間)を示す断面図、(b)第2の工程の状態(打設したコンクリートの硬化後に型枠を取り外した状態)を示す断面図、(c)第3の工程の状態(棒状部材を抜き取りした状態)を示す断面図、(d)アンカーボルトを取り付けたコンクリート壁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の間隔保持部材は、コンクリート型枠工法において、対向する型枠の間隔を一定に保持する、即ちコンクリート打設空間の間隔を一定に保持するセパレータと称される部材であり、言い換えれば施工するコンクリート壁の厚みを確保ずるための部材である。
そして、型枠間に配され、その端部が直接もしくは間接的に当接する筒状部材と、前記筒状部材の内部に位置し、その端部が型枠から突出すると共に、少なくとも突出部分に雄ねじ加工を施した棒状部材とからなり、前記筒状部材より大径で筒状部材の端部に挿着される着座部材が、前記棒状部材の少なくとも一方の雄ねじ部に係止されていることを特徴とする。
【0016】
前記筒状部材は、前述のように型枠間に配され、その端部が直接もしくは間接的に当接する部材であって、主に樹脂製の管材からなり、一部材からなるものでも複数部材を組み合わせたものであってもよい。
この筒状部材は、棒状部材を包囲し、コンクリートとの接触を防止すると共にコンクリートの硬化後も基本的にはコンクリート内に(少なくともその大部分を)残存させる部材を指す。なお、この筒状部材は、棒状部材を包囲しているものの、螺合していないので、容易に棒状部材に嵌め付けることができる反面、端部を型枠に強固に当接(圧接)する必要があり、また型枠の配設以前には着座部材がなければ棒状部材から抜け落ち(脱落)してしまうものである。
また、この筒状部材は、少なくとも一部を大径部とし、その大径部内に、前記棒状部材より大径な雌ねじ部を有するようにしてもよい。この場合、後述する図示実施例のように外側へ膨出する大径部の内面にナットを保持して雌ねじ部を形成すればよく、コンクリート壁の硬化後に取り付けるアンカーボルトをその雌ねじ部(図示実施例ではナットの螺合溝)に安定に且つ強固に螺合して固定することができる。
【0017】
前記棒状部材は、前述のように前記筒状部材の内部に位置するので、前記筒状部材と同様に型枠間に亘って配され、その端部が型枠から突出すると共に、少なくとも突出部分に雄ねじ加工を施した部材であって、一部材からなるものでも、複数部材を螺合手段等により連結したものでもよい。この「雄ねじ加工」については、少なくとも突出部分に施せばよいが、筒状部材方向(端縁から内側へ長く)にさらに加工を施してもよい。例えば筒状部材内まであるいは筒状部材の左端付近まで加工を施すことで、着座部材が筒状部材の端部に配置可能になり、筒状部材のがたつき(スライド状のズレ動き)を抑えることが可能となる。
なお、図示実施例の棒状部材は、直棒材の端部に断面視台形状(錐状)の台座を介在させて筒状部材と型枠との接触(フォームタイとの挟み込み)を安定性を高め、その内部に短い短棒材を配したものである。
この棒状部材は、コンクリート打設空間内に位置する部分(図示実施例では直棒材)が前記筒状部材で包囲され、コンクリートに接触することなく配され、コンクリートの打設、硬化後に容易に抜き出すことができる。
【0018】
前記着座部材は、前記筒状部材より大径の部材であって、前記筒状部材の端部に挿着されると共に、前記棒状部材の少なくとも一方の雄ねじ部に係止されるものである。
この着座部材は、例えば後述する図示実施例のように型枠内面に接触する基部と、短筒状の挿着部とからなり、挿着部内側に例えば略爪状の係止部を形成した場合、挿着部の係止部(爪)がその内側に位置する棒状部材の雄ねじ部に外側から係止するため、筒状部材が棒状部材から抜け落ち(脱落)することがない。
【0019】
さらに、前記間隔保持部材は、前記棒状部材が複数部材を螺合手段等により連結したものである場合などには、コンクリート打設空間内での回転を防止する機構が少なくとも1箇所以上に設けられていることが望ましい。この回転防止機構としては、打設したコンクリート自体により回転方向の抵抗となる構成を設けることにより、供回りを防ぐことができる。
より具体的には、この回転防止機構としては、コンクリート打設空間内に位置して打設するコンクリートと接触する部分(接触部分)に突状部を形成したり、前記接触部分を非円形状に形成する構成などがあり、適宜に組み合わせて適用してもよい。
【0020】
また、対向する型枠は、後述する図示実施例のようにコンクリート壁の硬化後に双方の型枠を前記棒状部材と共に取り外して再利用してもよいし、何れか一方の型枠を捨て型枠として用いるようにしてもよく、この型枠としては、単層に限定されるものではなく、複層以上からなるものでもよい。このような型枠としては、合板(木質)、FRP等の強化プラスチックボードなどが用いられることが多く、コンクリート打設後に取り外して再利用してもよい。
【0021】
本発明の前記構成の間隔保持部材を用いたコンクリート型枠工法は、以下の3つの工程からなる。なお、各型枠は、前記棒状部材と共に取り外して再利用する例を示す。
まず、第1の工程として、型枠間に前記構成の間隔保持部材を取り付けてコンクリート打設空間を形成する。
この工程では、一方側の型枠に予め前記間隔保持部材の一方側の端部が貫通して取り付けられ、該間隔保持部材の他方側の端部には着座部材が取り付けられている。この状態では、間隔保持部材を構成する筒状部材の端部は、直接もしくは間接的に当接しており、棒状部材の端部は型枠から突出している。
なお、前述のように施工時の手間を省くために、一方の型枠に形成した貫通孔に、着座部材を組み付けた状態の間隔保持部材を次々と所定位置に配設するようにしてもよい。
その後は定法に準じて所定位置に他方側の型枠を着座部材が当接するように配すると共に間隔保持部材の各端部をフォームタイ(R)等の押さえ部材(ボルト材)と連結し、各型枠の外側には縦バタ、横バタ等を配し、前記押さえ部材にて締め付け固定すると共にしてコンクリート打設空間を形成する。
次に、第2の工程として、前記コンクリート打設空間にコンクリートを打設する。
この工程にてコンクリートは、前記間隔保持部材の周囲を埋め尽くすように充填されるが、前述のように棒状部材は筒状部材にて包囲されているため、直接的に接触しない。
そして、第3の工程として、コンクリートの硬化後に、棒状部材を抜き出す。
前記第2の工程にて説明したように、棒状部材はコンクリートと直接的に接触していないので、特別な治具や特に強い力を必要とすることなく一方側の型枠の外側から押さえ部材の締め付けを解除して容易に抜き出すことができる。より具体的には、各型枠の外側に配したバタ(縦、横)等の押さえ具を取り外し、型枠を撤去した後、他方側の端部に取り付けた着座部材を外し、一方側から棒状部材を抜き出す。筒状部材は、棒状部材を抜き出した後もそのままコンクリート内に埋設される。
【0022】
このように、本発明の間隔保持部材を用いたコンクリート型枠工法では、第1〜第3の工程がそれぞれ極めて容易に実施でき、施工性に優れ、棒状部材の雄ねじ部に係止された着座部材が、筒状部材の抜け落ち(脱落)を防止するので、前記第1の工程における型枠を所定位置に配設する構築作業を容易に実施することができる。
そして、コンクリートの硬化後に棒状部材を抜き取りすることにより、使用する部材を繰り返し利用でき、施工されるコンクリート壁は、冷熱の伝わり(冷熱橋)が遮断されるため、断熱性能に優れたものとなる。
【実施例1】
【0023】
図1(a)に示す本発明の第1実施例の間隔保持部材1は、図3に示すようにその端部が直接もしくは間接的に一方側(右側)の型枠5Aに当接する筒状部材2と、前記筒状部材2の内部に位置し、その端部が型枠5Aから突出すると共に、少なくとも突出部分31に雄ねじ加工を施した棒状部材3とからなり、前記筒状部材2より大径で筒状部材2の端部に挿着される着座部材4が、前記棒状部材3の少なくとも一方の雄ねじ部31に係止されている構成である。
【0024】
前記筒状部材2は、図1(b),(d)に示すように棒状部材3の大部分(=直棒材3A)を包囲し、後述する図3に示すように包囲した直棒材3Aとコンクリート7との接触を防止すると共にコンクリート7の硬化後も基本的にはコンクリート7内に残存させる部材である。
図示実施例の筒状部材2は、その端部(右側端部)が断面視台形状(錐状)の台座3Bを介して型枠5Aに間接的に当接するものであって、樹脂製の管材からなる複数部材2A〜2Cを組み合わせたものである。より詳しくは長さ方向に略同一径の直管材2Aと、図2(f)に示す大径部21を含む異径管材2Cと、その両者を連結する図2(d)に示す連結管材2Bとからなり、前記大径部21内には、棒状部材3(直棒材3A)より大径な雌ねじ部22として図2(c)に示すナット2dが保持されている。この雌ねじ部22であるナット2dは、予めその螺合溝が、後述するアンカーボルト8と螺合するものを用いている。
なお、前記連結管材2Bには、直管材2Aの端縁(左側端縁)が嵌め込まれる直管嵌合部23が一方側(右側)に形成され、異径管材2Cの端縁(右側端縁)25が嵌め込まれる異径管嵌合部24が他方側(左側)に形成される構成であるが、図2(e)に示す連結管材2B'のように前記異径管嵌合部24に代えて異径管材2Cの端縁(右側端縁)25の内側に嵌め込む挿着部26を形成した構成でもよい。
【0025】
前記棒状部材3は、図1(b),(e)に示すようにその大部分(直棒材3A)が前記筒状部材2の内部に位置し、その端部が型枠5A,5Bから突出すると共に、その突出部分31,31に雄ねじ加工を施した部材であり、コンクリート7の打設時には、前記筒状部材2と共に型枠5A,5B間を保持するが、コンクリート7の硬化後には抜き取りする部材である。
図示実施例の棒状部材3は、長さ方向に略同一径の直棒材3Aと、断面視台形状(錐状)の台座3Bと、短棒材3Cとをそれぞれ螺合手段により直列状に連結した構成であり、そのうち直棒材3Aのみが前記筒状部材2にて包囲される部材である。
この棒状部材3は、コンクリート7の硬化後には一方側(右側)の型枠5Aと共に一方側から一連に抜き取りするものであり、前記突出部分31,31とは、短棒材3Cの端部が一方側の型枠5Aから突出する部分と、直棒材3Aが他方側(左側)の型枠5Bから突出する部分とを指す。
【0026】
前記着座部材4は、図1(b),(c)、図2(a)に示すように前記筒状部材2より大径の基部41と、前記筒状部材2の端部に挿着される短筒状の挿着部42とからなる部材であり、前述のように前記棒状部材3の雄ねじ部31に係止されることにより筒状部材2の抜け落ち(脱落)を防止することができる。
図示実施例の着座部材4は、挿着部42の内側に略爪状の係止部421が形成される構成であり、該挿着部42の係止部(爪)421がその内側に位置する棒状部材3の雄ねじ部31に外側から係止するため、筒状部材2が棒状部材3から抜け落ち(脱落)することがない。
なお、図2(b)に示す別の態様の着座部材4'のように基部41の内側に略爪状の係止部411を設けるようにしてもよい。
【0027】
図3(a)〜(d)は、前記構成の間隔保持部材1を用いたコンクリート型枠工法を示すものであって、まず第1の工程として、図3(a)に示すように型枠5A,5B間に前記構成の間隔保持部材1を取り付けてコンクリート打設空間70を形成する。
この工程では、予め着座部材4を組み付けた間隔保持部材1の一方側(右側)の端部を、前記図1(b)に示すように、工場等にて貫通孔を形成した一方側の型枠5A(同図では点線で示した)に次々に取り付けるようにした。この状態では、筒状部材2は棒状部材3を包囲した状態で他方側(左側)へスライドするが、その端部(雄ねじ部31)に着座部材4が取り付けられているので、他方側の型枠5Bを配設する以前に抜け落ち(脱落)すること無くコンクリート打設空間70を形成することができる。
そして、この間隔保持部材1の端部、即ち棒状部材2の各端部31は、それぞれ型枠5A,5Bから突出しているので、各端部31をそれぞれフォームタイ(R)等の押さえ部材(ボルト材)9と連結し、各型枠5A,5Bの外側には縦バタ6A、横バタ6B等を配し、前記押さえ部材9にて締め付け固定すると共にしてコンクリート打設空間70を形成する。
【0028】
次に、第2の工程として、図3(b)に示すように前記コンクリート打設空間70にコンクリート7を打設する。
この工程にてコンクリート7は、前記間隔保持部材1の周囲を埋め尽くすように充填されるが、前述のように棒状部材3の大部分(直棒材3A)は筒状部材2にて包囲されているため、この直棒材3Aは直接的にコンクリート7と接触することがない。
なお、同図は、既にコンクリート7の硬化後に型枠5A,5Bと共に押さえ部材9、縦バタ6A、横バタ6Bを取り外した状態を示している。
【0029】
そして、第3の工程として、図3(c)に示すように硬化したコンクリート7から、棒状部材3を抜き出す。
前記第2の工程にて説明したように、棒状部材3の直棒材3A及び短棒材3Cはコンクリート7と直接的に接触しておらず、棒状部材3の台座3Bは側面が他方側(左側)が縮径するテーパ状であるため、特別な治具や特に強い力を必要とすることなく容易に抜き出すことができる。
なお、棒状部材3の抜き出しに際し、図示するように他方側の端部31に取り付けた着座部材4を外しておく。
【0030】
その後、図3(d)に示すように他方側(左側)からアンカーボルト8をコンクリート7に埋設された筒状部材2内に挿入し、ナット2dの螺合溝である雌ねじ部22に螺合させて固定する。
【0031】
このように本発明の間隔保持部材1は、棒状部材3の雄ねじ部31に係止された着座部材4が、筒状部材2の抜け落ち(脱落)を防止するので、他方側(左側)型枠5Bを所定位置に配設する構築作業を容易に実施することができる。また、例えば施工時の手間を省くために、一方側(右側)の型枠5Aに形成した貫通孔に当該着座部材4を組み付けた間隔保持部材1を差し込んで取り付けることもできるため、型枠工事が極めて短時間で実施できるものとなる。
そして、コンクリート7の硬化後に棒状部材3を抜き取りすることにより、使用する部材を繰り返し利用でき、冷熱の伝わり(冷熱橋)が遮断されるため、断熱性能にも優れたコンクリート壁7とすることができる。
【0032】
また、図示実施例の筒状部材2には、一部を大径部21とし、その大径部21内に、前記棒状部材3より大径な雌ねじ部22(ナット2d)を形成したので、コンクリート壁7の硬化後に取り付けるアンカーボルト8をその雌ねじ部22に安定に且つ強固に固定することができる。
また、図示実施例の着座部材4は、型枠5B内面に接触する基部41と、短筒状の挿着部42とからなり、挿着部42内側に係止部421を形成したので、挿着部42の係止部421がその内側に位置する棒状部材3の雄ねじ部31に外側から係止するため、筒状部材2が棒状部材3から抜け落ち(脱落)することがない。
【0033】
そして、本発明の間隔保持部材1を用いた壁体構造は、コンクリート7の硬化後に埋設された筒状部材2にアンカーボルト8を螺合させて取り付けてなるので、多様な外装材に対応することができる。特に筒状部材2に雌ねじ部22を設けたので、該雌ねじ部22にアンカーボルト8を安定に且つ強固に固定することができ、外装材の構築をより安定におこなうことができる。
【符号の説明】
【0034】
1 間隔保持部材
2 筒状部材
2A 直管材
2B 連結管材
2C 短管材
2d ナット
21 大径部
22 雌ねじ部
3 棒状部材
3A 直棒材
3B 台座
3C 短棒材
31 端部(雄ねじ部)
4 着座部材
41 基部
42 挿着部
421 係止部
5A (一方側の)型枠
5B (他方側の)型枠
6A 縦バタ
6B 横バタ
70 コンクリート打設空間
7 コンクリート
8 アンカーボルト
9 押さえ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する型枠間に配することで型枠の間隔を一定に保持する間隔保持部材において、
型枠間に配され、その端部が直接もしくは間接的に当接する筒状部材と、
前記筒状部材の内部に位置し、その端部が型枠から突出すると共に、少なくとも突出部分に雄ねじ加工を施した棒状部材とからなり、
前記筒状部材より大径で筒状部材の端部に挿着される着座部材が、前記棒状部材の少なくとも一方の雄ねじ部に係止されていることを特徴とする間隔保持部材。
【請求項2】
筒状部材は、少なくとも一部を大径部とし、その大径部内に、前記棒状部材より大径な雌ねじ部を有することを特徴とする請求項1に記載の間隔保持部材。
【請求項3】
着座部材は、型枠内面に接触する基部と、短筒状の挿着部からなり、挿着部内側に係止部を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の間隔保持部材。
【請求項4】
対向する型枠間に請求項1〜3の何れか一項に記載の間隔保持部材を配して施工した壁体構造であって、
前記型枠間に、間隔保持部材を配してコンクリートを打設し、該コンクリートに埋設された前記筒状部材の雌ねじ部にアンカーボルトを螺合させて取り付けてなるとを特徴とする壁体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−167525(P2012−167525A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31551(P2011−31551)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フォームタイ
【出願人】(000253400)舩木商事有限会社 (16)
【Fターム(参考)】