説明

防振装置

【課題】構造を複雑化せずに、前後方向の加振力の影響を軽減してバランスよく防振性を向上させる。
【解決手段】ランマー本体3とハンドル4とに取り付ける一対の支持プレート10,10を弾性体30で対向状に連結して防振装置1を構成する。防振装置1は各支持プレート10の主面11がランマーの左右方向に向くように取り付ける。弾性体30がランマーの前後方向に比べて鉛直方向に大きな形状となるようにする、あるいは弾性体30のランマーの前後方向へ偏った部位に空間部25を形成するなどして弾性体30をランマーの前後方向よりも鉛直方向に偏在させ、ランマーの前後方向よりも鉛直方向のばね剛性が硬くなるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランマー用の防振装置に関し、特にその防振性を向上するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ランマーの本体は激しく振動することから、通常、そのランマー本体とハンドルとの間には振動を軽減するために防振装置が取り付けられる。
【0003】
そのような防振装置の一つとして、例えば、防振性を向上させるために、ランマーの加振力は鉛直方向だけでなく前後方向にも発生することに着目し、鉛直方向の加振力に加え、前後方向の加振力の影響も軽減できるようにした防振装置が提案されている(特許文献1)。
【0004】
その防振装置は、リング形状をした防振ゴムや、内部に4つのスプリングを有するスプリングダンパなどで構成されていて、ランマー本体の上方に配設することが特徴となっている。
【0005】
また、本発明の軸部や軸掛部に関し、棒状のピンをストッパーに利用して、ハンドルを引っ掛けてランマー本体をつり上げられるようにした防振装置がある(特許文献2)。
【特許文献1】特開2006−104725号公報
【特許文献2】特開2007−224551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の防振装置は防振性に優れてはいるものの、ランマー本体の上方に取り付ける必要があるため、ランマー本体の高さ寸法やハンドル形状などに制約を受け、汎用性に欠ける不利がある。また、部材点数の多い複雑な構造であるため、量産が難しいうえコストも高くつき易い。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、前後方向の加振力の影響が軽減でき、全体としてバランスよく防振性を向上できるうえ、構造が簡単で生産性に優れ、汎用性にも優れる防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、一対の支持プレートとブロック状の弾性体とで防振装置の主体を構成し、ランマーの前後方向よりも鉛直方向のばね剛性が硬くなるように弾性体が偏在するようにした。
【0009】
具体的には、一方がランマーの本体側に、他方がハンドル側にそれぞれ取り付けられる一対の支持プレートを、ブロック状の弾性体で対向状に連結してなる防振装置であって、弾性体に接合されている上記一対の支持プレートの各主面は、それぞれランマーの左右方向に向いていて、ランマーの前後方向よりも鉛直方向のばね剛性が硬くなるように、その前後方向よりも鉛直方向に弾性体が偏在している構成とする。尚、ここでいう偏在とは、一つの弾性体がランマーの前後方向よりも鉛直方向に偏って存在していることを意味している。
【0010】
この防振装置は、それぞれの主面がランマーの左右方向、つまりランマーの前後方向及び鉛直方向と略直交する方向(以下、単に左右方向や前後方向ともいう)に向くように、一方の支持プレートをランマーの本体側に取り付け、他方の支持プレートをランマーのハンドル側に取り付けて使用する。
【0011】
従って、必ずしもランマー本体の上方に取り付ける必要はなく、通常はランマー本体の側方に取り付ければよいため、ランマー本体の高さ寸法やハンドル形状などは比較的自由に設計でき、汎用性に優れている。
【0012】
しかも、防振装置は一対の支持プレートと一つのブロック状の弾性体とでその主体が構成されているため、量産が容易で生産性に優れ、比較的安価で提供できる。
【0013】
そして、一対の支持プレートは弾性体で連結されていて、ランマー本体で発生する振動は弾性体の弾性変形によって吸収されるため、ハンドルに伝わる振動が軽減される。
【0014】
本発明では、更に、鉛直方向のばね剛性が相対的に硬く、前後方向のばね剛性が相対的に柔らかくなるように弾性体を鉛直方向に偏って存在させている。
【0015】
従って、全体としては適当なばね剛性を確保しながら前後方向に発生する加振力の影響を軽減することができるので、ばね剛性が全体的に柔らかくなって操作性が悪くなるようなことがない。
【0016】
また、各支持プレートの主面は、ランマーの加振力が発生する前後方向及び鉛直方向と略直交する左右方向に向いているので、ランマー本体の振動の一部は、両支持プレートの相対的な回動変位による弾性体の捩り変形によって吸収される。その際、鉛直方向のばね剛性をある程度硬くしておくことで、弾性体が鉛直方向に弾性変形するよりも回動方向に捩り変形し易くなるため、操作性を損なうことなく、全体としてバランスよく防振性を向上させることができる。
【0017】
弾性体を偏在させる具体例としては、例えば、弾性体をランマーの前後方向に比べて鉛直方向に大きな形状とすることや、弾性体がランマーの前方及び後方の少なくともいずれか一方へ偏った部位に空間部を備えているようにすることが挙げられる。この両者を組み合わせるようにしてもよい。
【0018】
つまり、弾性体を縦長にするなど、弾性体の外観形状を偏らせるだけでなく、円形形状など、弾性体の外観形状は偏っていなくても、空間部を形成することによって実質的に弾性体が偏って存在するようにしてもよい。要は弾性体を所定形状に形成することによって、鉛直方向のばね剛性よりも前後方向のばね剛性の方が柔らかくなっていればよい。
【0019】
後者の場合であれば、例えば、上記一対の支持プレートのいずれか一方に柱状の軸部を突設し、他方にその軸部の外径よりも内径の大きい開口を有する軸掛部を設ける。そして、上記軸部の先端部分が軸掛部に入り込んだ状態で弾性体に埋設し、その軸掛部内における軸部前後の弾性体の部分に、上記空間部を形成することができる。
【0020】
そうすれば、まず、その軸掛部内の軸部前後に空間部が形成されているため、前後方向のばね剛性が柔らかくなって前後方向の振動が軽減され、防振性が向上する。
【0021】
そして、防振装置の鉛直方向側に過度な負荷が加われば、軸部の先端部分が軸掛部に引っ掛かって支持プレートどうしが直接的に力を作用し合うようになるので、弾性体の過度な変形を規制できる。従って、安心してハンドルを引っ掛けてランマーをつり上げることができるため、作業性、安全性を向上させることができる。
【0022】
特に、上記軸掛部は、上記軸部の突設された支持プレートの方に向いて開口の周縁から立ち上がる軸受壁を備えるようにしておくとよい。そうすれば、軸部の広い範囲が軸受壁で受け止められるため、多少ぐらついても軸部が軸掛部から外れることがない。
【0023】
更に、上記軸掛部は、空間部も含めて、鉛直方向よりもランマーの前後方向に大きな形状となるようにするのが好ましい。そうすれば、前後方向のばね剛性が更に柔らかくなるうえ、軸部も前後方向により大きく変位し易くなるため、前後方向の振動をよりいっそう軽減することができる。
【0024】
一方、前者の場合であれば、例えば、上記左右方向から見て、弾性体が鉛直方向側に長い楕円形状をしているようにするこができる。
【0025】
上述したように、この防振装置では、両支持プレートの相対的な回動動作が振動吸収に大きく作用することから、楕円形状とすることでその回動動作を円滑に導くことができ、防振性を向上させることができる。
【0026】
上記左右方向から見て、弾性体の少なくとも鉛直方向側の両端の部分が円弧形状となるようにすることによっても、その回動動作を円滑に導くことができる。尚、ここで少なくともとしたのは円形状を含む趣旨である。
【0027】
また、後者の場合、上記弾性体のランマーの前後方向の端寄りの部位に上記空間部を形成して、その空間部がボルト装着穴を兼ねるようにすることもできる。そうすれば、効率よく防振性、操作性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明の防振装置によれば、操作性を損なうことなく前後方向の加振力の影響を軽減することができ、ランマー本体で発生する振動がハンドルに伝わるのを効率よく軽減することができる。構造も簡単で生産性に優れ、汎用性にも優れる防振装置を比較的安価で提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の防振装置1を用いたランマーの概略図を示している。このランマーは、振動軸P方向に往復動する衝撃板2などを有するランマー本体3や、ランマー本体3の前後左右を取り囲むように配設されるパイプ製のハンドル4、ハンドル4の左右両側に対向状に設けられた一対の支持片4a,4aなどを備えている。防振装置1は、この支持片4aとランマー本体3の側部との間に取り付けられて、左右一対の形で用いられる。
【0031】
また、図1にはランマーとともに座標軸を示してある。この座標軸は、地面に載置された使用時のランマーの基本姿勢を基準に規定したものであり、X方向はそのランマーの前後方向を、Y方向はその左右方向を、Z方向はその鉛直方向をそれぞれ表している。以後、特に言及しない限り、前後等の方向はこの方向に従うものとする。
【0032】
図2〜図4に本実施形態の防振装置1を示す。この防振装置1は一対の金属製の支持プレート10,10と、一つのゴム製の弾性体30とを備えている。これら一対の支持プレート10,10は、加硫一体成型によってブロック状の弾性体30の両側に対向状に一体に接合され、互いに略平行な非接触状態で弾性体30を介して連結されている。
【0033】
支持プレート10は、いずれも鋼板のプレス加工品であり、板厚が異なる点を除けば、俵形をした同一の外観形状を呈している。詳しくは、各支持プレート10は、その主面11に直交する方向から見て、長手方向の両端に、主面11の中心(主面中心ともいう)からの半径及び長さが等しく、主面中心に対して点対称状に位置する円弧形状をした一対の弧状端部12,12と、長手方向の両側に、互いに略平行な一対の側端部13,13とを有している。
【0034】
弾性体30は、これら支持プレート10,10の形状に対応するように形成された横断面が俵形をしたブロック体からなり、一対の弧状端部32,32と一対の側端部33,33とを有している。各支持プレート10と弾性体30とは互いの外郭線が重なるように一体に接合されている。
【0035】
つまり、本実施形態の防振装置1は、円形の外観形状を呈する防振装置(図2、図3に仮想線で示す)の両側部を切り取ったような形態にすることで、弾性体30が側端部33側よりも弧状端部32側に偏在するように構成したものである。
【0036】
そして、図2において手前に示した一方の支持プレート10(第1支持プレート10aともいう)の各弧状端部12寄りには、それぞれ内周面に雌ねじが形成された第1ボルト締結孔14が開口している。また、各側端部13の中間部分には略半円状に凹む凹部15が形成されている。
【0037】
一方、図2において奥側に示した他方の支持プレート10(第2支持プレート10bともいう)の各弧状端部12寄りには、それぞれ第1支持プレート10aの第1ボルト締結孔14に対応してこれよりもひとまわり大径のボルト装着孔16が開口している。また、各側端部13の中間部分には、第1支持プレート10の凹部15に対応して、それぞれ第2ボルト締結孔17が開口している。尚、凹部15はこの第2ボルト締結孔17よりも十分大きく形成されている。また、第1支持プレート10aの板厚は第2支持プレート10bよりも大きく形成されている。
【0038】
そして、弾性体30には、ボルト装着孔16に対応してこれと同径の貫通孔34が各弧状端部32寄りに形成されているとともに、凹部15に対応してこれの外郭線と重なるように各側端部33に溝部35が形成されている。
【0039】
従って、防振装置1の第2支持プレート10b側には、ボルト装着孔16と貫通孔34とによって底面中央に第1ボルト締結孔14が開口したボルト装着穴18が形成され、第1支持プレート10a側には、凹部15と溝部35とによって底面中央に第2ボルト締結孔17が開口するとともに、側方が開放されたボルト装着部19が形成されている。
【0040】
このように構成された防振装置1は、弧状端部12,32を鉛直方向に、側端部13,33を前後方向にそれぞれ向けた状態で、各支持プレート10の主面11が左右方向(Y方向)に向くように、一方の支持プレート10がランマー本体3の側面に取り付けられ、他方の支持プレート10がその側面と対向しているハンドル4の支持片4aに取り付けられる。
【0041】
具体的には、ボルト装着部19を介してその側方から差し入れられる図示しないボルトで第2支持プレート10bをランマー本体3の側面に締結する。そして、第1ボルト締結孔14に重ねた支持片4aの取付孔から図示しないボルトをねじ込んで第1支持プレート10aを支持片4aに固定する。第2支持プレート10b側からボルトをねじ込んでナットで締結することもできる。この防振装置1の場合、ボルト装着部19の側方は開放されているのでボルトを締結し易いし、そのボルトを外してランマー本体3からハンドル4を簡単に取り外すこともできる。
【0042】
ところで、ランマーは、一般に作業者が強制的に押さなくても振動によって前進するように構成されている。つまり、図1に示すように、衝撃板2が往復動する振動軸Pが鉛直方向に対して所定角度前方に傾いているため、ランマー本体3が振動すると、鉛直方向だけでなく、前後方向にも加振力が発生する。
【0043】
従って、防振性を向上させるためには、鉛直方向だけでなく前後方向の加振力の影響も軽減することが重要であり、この防振装置1では、その前後方向の加振力の影響が効果的に軽減できるようになっている。
【0044】
この点、詳しく説明すると、例えば図5は、荷重の変化に対する前後方向(X方向)及び鉛直方向(Z方向)のばね特性について、図2に仮想線で示した円形状の防振装置と比較した本実施形態の防振装置1のばね特性を示している。図に示すように、円形状の防振装置では、前後方向のばね特性(図中、2点鎖線L1で示す)と鉛直方向のばね特性(図中、2点鎖線L2で示す)とが同じになっているのに対し、本実施形態の防振装置1では、鉛直方向に弾性体30が偏在しているため、鉛直方向には硬いばね特性(図中、実線L3で示す)を示す一方で、前後方向には柔らかいばね特性(図中、実線L4で示す)を示し、方向によってそれぞれ異なったばね特性が発揮される。
【0045】
従って、円形状の防振装置では、防振性を向上させるために弾性体のばね剛性を柔らかくすると、全体的にばね剛性が柔らかくなって操作性も悪くなり易いが、本実施形態の防振装置1では、全体としては適当なばね剛性を確保しながら前後方向に発生する加振力の影響を軽減することができる。
【0046】
また、ランマー本体3が振動すると、図1に示すように、両支持プレート10,10は、左右方向(Y方向)にのびる仮想回動軸Aまわりに相対的に回動変位し、その作用で弾性体30が捩り変形して振動の一部が吸収される。その際、鉛直方向のばね剛性をある程度硬くしておくことで、弾性体30が鉛直方向に弾性変形するよりも回動方向に捩り変形し易くなるため、操作性を損なうことなく、全体としてバランスよく防振性を向上させることができる。
【0047】
しかも、弾性体30の鉛直方向側の両端の部分は円弧形状に形成されているので(弧状端部32)、その回動動作が円滑に導かれるようになっている。
【0048】
(変形例)
第1実施形態では弾性体30を偏在させるために、左右方向から見て、俵形を呈するように形成したが、それ以外にも次のように形成することもできる。尚、いずれの変形例も基本構成は第1実施形態と同じであるため、対応する部材には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0049】
図6はその第1変形例であり、この防振装置1では、上記方向から見て弾性体30が略長方形状を呈するようにした。
【0050】
すなわち、第1実施形態の防振装置1と比べてその弧状端部32の長さを短くして略長方形状となるように形成した。一対の支持プレート10,10はそれに併せて略長方形状に形成する一方で、第2支持プレート10bについては、その各側端部13の中間部分に外方に張り出すフランジ部20を形成し、そこに第2ボルト締結孔17が開口するようにした。尚、第1支持プレート10aの凹部15は、側端部13間の寸法が小さくなる分、凹み量も小さくなって円弧状となっている。
【0051】
この防振装置1によれば、第1実施形態よりも更に弾性体30が前後方向よりも鉛直方向に大きく偏って形成されているため、前後方向の加振力の影響を更に軽減することができる。
【0052】
図7は第2変形例であり、この防振装置1では、弾性体30の鉛直方向側の横断面が略台形状になるように形成した。
【0053】
すなわち、第1支持プレート10aは第1変形例と同じ略長方形状とする一方で、第2支持プレート10bは円形にして、弾性体30の前後方向側に第1支持プレート10aの側端部13から第2支持プレート10bの前後方向側の各外周縁部21,21に連なる傾斜面22,22を形成し、図7の(b)に仮想線で示すような円柱形の外観形状をした防振装置1において、その軸方向の両側を斜めに切り取ったような形態とした。尚、この形態におけるボルト装着部19は、第1支持プレート10a側の開口が斜めに傾斜した穴形状となっている。
【0054】
この防振装置1も弾性体30が偏在しているため前後方向の振動を軽減できるし、第2支持プレート10bの取り付け面積が大きくなっている分、取り付けが安定する利点がある。
【0055】
図8は第3変形例であり、この防振装置1では、上記方向から見て、鉛直方向側に長い楕円形状を呈するように形成した。
【0056】
すなわち、一対の支持プレート10,10及び弾性体30が、上記方向から見てそれぞれの外郭線が重なるように同じ楕円形状に形成されている。尚、この形態におけるボルト装着部19は第2支持プレート10b側のボルト装着穴18と同じ穴形状となっている。
【0057】
この防振装置1によれば、簡単な形態でありながら、前後方向の振動を軽減して弾性体30の回動動作を円滑に導くことができる。
【0058】
(第2実施形態)
図9〜図13は第2実施形態の防振装置1を示している。この防振装置1は図9の上下方向側が鉛直方向になるようにランマーに取り付けられる。そして、図12はその第1支持プレート10aを、図13はその第2支持プレート10bを示している。本実施形態の基本的な構成についても第1実施形態と同様であるため、対応する部材については同じ符号を付してその説明は省略する。
【0059】
この防振装置1では、図12、13に示すように、第1及び第2支持プレート10a,10bがいずれも同じ円形に形成されていて、これらの主面11,11には、第1ボルト締結孔14,14及び第2ボルト締結孔17,17が2箇所ずつ、それぞれの主面中心に対して点対称状に形成されている。そして、これら第1ボルト締結孔14,14及び第2ボルト締結孔17,17の並びに直交して比較的大径のボルト装着孔16,16が2箇所ずつ、それぞれの主面11中心に対して点対称状に形成されている。
【0060】
一方、弾性体30の両側には、図9〜11に示すように、これらボルト装着孔16,16,・・に対応して同径の貫通孔34,34,・・が形成されている。
【0061】
従って、防振装置1の両側面には、これらボルト装着孔16と貫通孔34とによって、底面中央に第1ボルト締結孔14や第2ボルト締結孔17が開口したボルト装着穴18,18,・・が、それぞれ鉛直方向及び前後方向の各端寄りの部位に形成されることとなる。尚、前後方向の2つのボルト装着穴18,18が鉛直方向の2つよりも大径に形成してあるのは、作業性の向上を図るとともに、空間部としても機能させるためである。
【0062】
そして、第1支持プレート10aの一方の主面11の略中央には、一つの円柱状の軸部23が突設されていて、第2支持プレート10bの一方の主面11の略中央部には、この軸部23と係合する軸掛部24が形成されている。
【0063】
この軸掛部24には、軸部23の外径よりも内径が大きく開口する円形の開口部24aと、その開口部24aの周縁から略垂直に立ち上がる環状の軸受壁24bとが備えられている。そして、図10,11に示すように、第1支持プレート10aの軸部23側と、第2支持プレート10bの軸受壁24b側とが互いに対向して、軸部23の先端部分が軸掛部24の略中心部に入り込んた状態で弾性体30に埋設されている。
【0064】
従って、この防振装置1を用いたランマーの場合、そのハンドル4をクレーンで引っ掛けてつり上げるようなことがあっても、所定以上の負荷が加わると、軸部23の先端部分が軸掛部24に受け止められて両支持プレート10,10が直接的に支持し合う状態となるため、弾性体30の過度な変形を規制でき、耐久性や作業性、安全性が向上する。
【0065】
そして、軸掛部24内における軸部23の前後方向の弾性体30の部分には、それぞれ周方向に延びるように空間部25,25が形成されている。
【0066】
つまり、本実施形態の防振装置1は、これら空間部25,25の存在によって前後方向よりも鉛直方向に弾性体30が偏在するように構成されている。
【0067】
従って、前後方向のばね剛性は鉛直方向に比べて柔らかくなるうえ、空間部25の存在によって軸部23が前後方向に変位し易くなることから、前後方向の振動を効果的に軽減することができる。
【0068】
(変形例)
図14及び図15は上記の第2実施形態の変形例を示している。この変形例の防振装置1では、特に第2支持プレート10bの形態が異なっていて、図15に示すように、軸掛部24が第2実施形態のものに比べて鉛直方向側よりも前後方向側に大きく形成されている。
【0069】
この軸掛部24について詳しく説明すると、その開口部24aは主面11上を前後方向に延びる略長方形状に形成されている。そして、その鉛直方向側の両側にのみ軸受壁24b,24bが備えられ、前後方向側は開放されている。各軸受壁24bの長手方向の中間部には、軸部23に近接しないようにそれぞれ開口部24aの外側に湾曲した湾曲部24cが形成されている。
【0070】
この第2支持プレート10bを適用した防振装置1では、図14に示すように、軸部23前後の空間部25,25を開口部24aに対応して前後に大きく形成することができる。
【0071】
従って、この防振装置1によれば、第2実施形態の防振装置1の機能を損なわずに、前後方向のばね剛性がより柔らかくなり、軸部23も前後方向により変位し易くなるため、防振性を更に向上させることができる。
【0072】
(第3実施形態)
図16に、第3実施形態の防振装置1を示す。基本的構成は第1及び第2実施形態と同様であるが、本実施形態では前後方向のボルト装着穴18,18を利用して空間部25を形成した。
【0073】
すなわち、円形をした第1支持プレート10aの主面11上を前後方向に並ぶボルト装着孔16,16と、これらボルト装着孔16,16に対応して円形の弾性体30に形成される貫通孔34,34とを、それぞれ弧側が周縁に沿って鉛直方向に延びる弓形にすることで、防振装置1の第1支持プレート10a側の前後方向側の各端寄りの部分に、空間部25を兼ねた比較的大きなボルト装着穴18が形成されるようにした。
【0074】
従って、この防振装置1によれば、その前後方向の中間部に形成される略長方形状をした弾性体30の部分が、主として弾性機能を発揮することとなるため、前後方向のばね剛性が柔らかくなって防振性が向上するとともに、ボルトを締結し易くなって作業性が向上する。
【0075】
以上説明したように、本発明の防振装置1によれば、簡単な構造でありながらも、前後方向の加振力の影響を軽減してバランスよく防振性を向上させることができる。
【0076】
なお、本発明にかかる防振装置1は、前記の実施の形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0077】
例えば、図17は第1実施形態の防振装置1に、第2実施形態の軸部23と軸掛部24の構成を適用した形態を示したものであるが、このように第1実施形態の各防振装置1や第3実施形態の防振装置1に、第2実施形態の軸部23と軸掛部24とを設けてもよい。その場合、軸掛部24内の軸部23前後には空間部25,25を形成しておくのが好ましい。
【0078】
上記実施形態の各支持プレート10は、その外郭線が弾性体30と重なるようになっているが、支持プレート10の一部は弾性体30の外側にはみ出していてもよく、支持プレート10の形状は任意に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】第1実施形態の防振装置を適用したランマーの斜視図である。
【図2】第1実施形態の防振装置の正面図である。
【図3】図2のI−I線断面図である。
【図4】図2のII−II線断面図である。
【図5】第1実施形態の防振装置のばね特性を説明するための図である。
【図6】第1実施形態の防振装置の第1変形例である。(a)は正面図、(b)は底面図である。
【図7】第1実施形態の防振装置の第2変形例である。(a)は正面図、(b)は底面図である。
【図8】第1実施形態の防振装置の第3変形例である。(a)は正面図、(b)は底面図である。
【図9】第2実施形態の防振装置の正面図である。
【図10】図9のI−I線断面図である。
【図11】図9のII−II線断面図である。
【図12】第2実施形態の防振装置の第1支持プレートである。(a)は正面図、(b)は(a)のII−II線断面図である。
【図13】第2実施形態の防振装置の第2支持プレートである。(a)は正面図、(b)は(a)のI−I線断面図である。
【図14】第2実施形態の防振装置における変形例の正面図である。
【図15】第2実施形態の防振装置における変形例の第2支持プレートである。(a)は正面図、(b)は(a)のI−I線断面図である。
【図16】第3実施形態の防振装置の正面図である。
【図17】第1実施形態に第2実施形態の構成の一部を適用した防振装置の正面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 防振装置
3 ランマー本体
4 ハンドル
4a 支持片
10 支持プレート
10a 第1支持プレート
10b 第2支持プレート
11 主面
12 弧状端部
18 ボルト装着穴
23 軸部
24 軸掛部
24a 開口部
24b 軸受壁
25 空間部
30 弾性体
32 弧状端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方がランマーの本体側に、他方がハンドル側にそれぞれ取り付けられる一対の支持プレートを、ブロック状の弾性体で対向状に連結してなる防振装置であって、
弾性体に接合されている上記一対の支持プレートの各主面は、それぞれランマーの左右方向に向いていて、
ランマーの前後方向よりも鉛直方向のばね剛性が硬くなるように、その前後方向よりも鉛直方向に弾性体が偏在していることを特徴とする防振装置。
【請求項2】
請求項1に記載の防振装置であって、
上記弾性体が、ランマーの前後方向に比べて鉛直方向に大きな形状とされていることを特徴とする防振装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の防振装置であって、
上記弾性体が、ランマーの前方及び後方の少なくともいずれか一方へ偏った部位に空間部を備えていることを特徴とする防振装置。
【請求項4】
請求項3に記載の防振装置であって、
上記一対の支持プレートのいずれか一方に柱状の軸部が突設され、他方にその軸部の外径よりも内径の大きい開口を有する軸掛部が設けられていて、
上記軸部の先端部分は軸掛部に入り込んだ状態で弾性体に埋設され、その軸掛部内における軸部前後の弾性体の部分に、上記空間部が形成されていることを特徴とする防振装置。
【請求項5】
請求項4に記載の防振装置であって、
上記軸掛部が、上記軸部の突設された支持プレートの方に向いて開口の周縁から立ち上がる軸受壁を備えていることを特徴とする防振装置。
【請求項6】
請求項5に記載の防振装置であって、
上記軸掛部が、鉛直方向よりもランマーの前後方向に大きな形状とされていることを特徴とする防振装置。
【請求項7】
請求項2〜請求項6のいずれか一つに記載の防振装置であって、
上記左右方向から見て、弾性体が鉛直方向側に長い楕円形状をしていることを特徴とする防振装置。
【請求項8】
請求項2〜請求項6のいずれか一つに記載の防振装置であって、
上記左右方向から見て、弾性体の少なくとも鉛直方向側の両端の部分が円弧形状をしていることを特徴とする防振装置。
【請求項9】
請求項3〜請求項8のいずれか一つに記載の防振装置であって、
上記弾性体のランマーの前後方向の端寄りの部位に上記空間部が形成されていて、
その空間部がボルト装着穴を兼ねていることを特徴とする防振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−249951(P2009−249951A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100691(P2008−100691)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】