説明

防振装置

【課題】支持荷重を受ける一方の弾性体の破損やへたりを抑制することを目的とする。
【解決手段】フランジ部23A,23Bが形成された外筒20A、20B、その内側に配置された内筒21A,21B、及び、それらを連結する弾性体22A,22Bを有し、軸方向端面同士を向かい合わせにして配置された一対の防振部材2A,2Bと、両側のフランジ部の間に挟み込まれたブラケット部材3と、一対の防振部材を軸方向両側から挟持する一対の挟持部材4A、4Bと、内筒の内側に挿通されて一対の挟持部材を連結する締結部材5と、を備え、締結部材を締め込んで一対の挟持部材を軸方向内側に押し込むことにより、内筒の端部同士が突き合わせられると共に、一対の挟持部材を介して弾性体が予圧縮される防振装置1において、一対の防止部材の弾性体のうち、振動発生体の支持荷重を受ける一方の弾性体22Aのバネ定数が他方の弾性体22Bのバネ定数よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用機械や建設用機械のキャビンマウントやエンジンマウント等として用いられる防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の防振装置として、従来、例えば下記特許文献1に示されているような、一対の防振部材を両側からプレート状の挟持部材で挟持した構成からなるサンドイッチ型の防振装置がある。上記防振部材は、軸方向外側の端部にフランジ部が形成された略円筒形状の外筒と、外筒の内側に配置された略円筒形状の内筒と、外筒と内筒との間に介在されたゴムなどの弾性体とから構成されている。一対の防振部材は、軸方向の端部同士を互いに向き合わせるように配置されており、一対の挟持部材で軸方向両側から挟持されている。また、一対の防振部材のフランジ部の間には、ブラケット部材が挟み込まれている。また、一対の挟持部材は締結部材を介して連結されている。この締結部材は、内筒の内側に挿通されたボルトの両端に、一対の挟持部材にそれぞれ締結するナットが螺着された構成からなる。
【0003】
上記した構成からなるサンドイッチ型の防振装置では、締結部材を締め込むことにより、内筒の端部同士が突き合わせられると共に、一対の挟持部材を介して弾性体が予圧縮される。そして、上記した一対の挟持部材及びブラケット部材のうちの何れか一方をエンジン等の振動発生体に連結し、他方を車体等の振動受体に連結することで、振動発生体と振動受体との間に介装される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−121161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の防振装置では、一対の防止部材の弾性体が同じ弾性材料からなると共に略同形状に成形されており、双方の弾性体のバネ定数が略同一となっている。このため、締結部材を締め込んで双方の弾性体を予圧縮したとき、双方の弾性体の予圧縮量は等しくなる。そして、振動発生体と振動受体との間に防振装置を介装させたとき、一対の防止部材の弾性体のうち、一方の弾性体に振動発生体の支持荷重が作用して圧縮されるため、上記した一方の弾性体の予圧縮量が増大し、その分、他方の弾性体の予圧縮量が減少する。その結果、振動発生体と振動受体との間に防振装置を介装させた状態(支持荷重負荷状態)において、一方(支持荷重を受ける側)の弾性体の予圧縮量が他方の弾性体よりも大きくなる。
【0006】
上記したように一方の弾性体の予圧縮量が他方の弾性体よりも大きいため、振動発生体の振動によって繰り返し荷重が入力されたとき、一方の弾性体の変位が他方の弾性体の変位よりも大きくなり、一方の弾性体が先に破損し易いという問題がある。また、一方の弾性体の方がへたり易いため、予圧縮力の低下、及び、支持変位増加による他構造物との接触の問題が生じやすい。
【0007】
また、支持荷重負荷状態における他方の弾性体の予圧縮量が小さいため、振動発生体の振動によってバウンド時(支持荷重側の荷重入力時)に、他方の弾性体側の外筒のフランジ部がブラケット部材から離間し易い。このため、防振装置のバネ定数が低下したり、リバウンド時に、ブラケット部材から一旦離間した外筒のフランジ部がブラケット部材に衝突して異音(打音)が発生したり、外筒のフランジ部とブラケット部材との衝突によるフランジ部やブラケット部材が破損したりする問題が生じやすい。
【0008】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、支持荷重を受ける一方の弾性体を破損し難くすることができ、且つ、上記一方の弾性体をへたり難くして予圧縮力の低下を抑制すると共に支持変位増加による他構造物との接触を防止することができ、さらに、外筒のフランジ部とブラケット部材との離間を防止して、防振装置のバネ定数の低下、フランジ部とブラケット部材との衝突による異音(打音)、及びフランジ部やブラケット部材の破損を防止することができる防振装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る防振装置は、径方向外側に向けて突出するフランジ部が形成された外筒、該外筒の内側に配置された内筒、及び、前記外筒と内筒を連結する弾性体をそれぞれ有し、軸方向の端面同士を互いに向かい合わせにして配置された一対の防振部材と、振動発生体および振動受体のうちの何れか一方に連結されると共に前記一対の防振部材のフランジ部の間に挟み込まれたブラケット部材と、振動発生体および振動受体のうちの何れか他方に連結されると共に前記一対の防振部材を軸方向両側から挟持する一対の挟持部材と、前記内筒の内側に挿通されて前記一対の挟持部材を連結する締結部材と、を備えており、前記締結部材を締め込んで前記一対の挟持部材を軸方向内側にそれぞれ押し込むことにより、前記内筒の端部同士が突き合わせられると共に、前記一対の挟持部材を介して前記弾性体が予圧縮される防振装置において、前記一対の防止部材の弾性体のうち、前記振動発生体の支持荷重を受ける一方の弾性体のバネ定数が他方の弾性体のバネ定数よりも大きいことを特徴としている。
【0010】
このような特徴により、締結部材を締め込んで防振装置をセットする際、一対の防振部材の各弾性体がそれぞれ予圧縮される。このとき、振動発生体の支持荷重を受ける一方の弾性体のバネ定数が他方の弾性体のバネ定数よりも大きく、一方の弾性体が他方の弾性体よりも硬いため、一方の弾性体の方が他方の弾性体よりも予圧縮量が小さくなる。
次に、振動発生体と振動受体との間に防振装置を介装させると、一対の防止部材の弾性体のうち、一方の弾性体に振動発生体の支持荷重が負荷される。その結果、上記支持荷重によって一方の弾性体が圧縮されて一方の弾性体の予圧縮量が増大し、その分、他方の弾性体の予圧縮量が減少する。
このように支持荷重負荷時に一方の弾性体の予圧縮量が増大するが、上述したように防振装置セット時における一方の弾性体の予圧縮量が小さいので、支持荷重負荷時における一方の弾性体の予圧縮量が小さく抑えられ、反対に、他方の弾性体の予圧縮量が大きくなる。
【0011】
また、本発明に係る防振装置は、前記一方の弾性体が、前記他方の弾性体よりも弾性率が大きい弾性材料からなることが好ましい。
これにより、双方の弾性体が同形状であっても、振動発生体の支持荷重を受ける一方の弾性体のバネ定数が他方の弾性体のバネ定数よりも大きくなるため、締結部材を締め込んで防振装置をセットした際、一方の弾性体の方が他方の弾性体よりも予圧縮量が小さくなる。
【0012】
ところで、通常、バウンド時は、リバウンド時に比べて入力荷重が大きくなりやすく、且つ頻度も多いため、バウンド時の荷重を受ける一方の弾性体の方が他方の弾性体よりも疲労しやすい。
そこで、本発明に係る防振装置は、前記振動発生体の支持荷重が負荷された状態における前記一方の弾性体の予圧縮量が前記他方の弾性体の予圧縮量以下であることが好ましい。
これにより、振動発生体と振動受体との間に防振装置が介装され、振動発生体の支持荷重が負荷された状態では、支持荷重を受ける一方の弾性体の予圧縮量が小さく抑えられ、一方の弾性体の方が他方の弾性体よりも耐久性が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る防振装置によれば、支持荷重を受ける一方の弾性体の予圧縮量が小さく抑えられるため、その一方の弾性体を破損し難くすることができ、且つ、上記一方の弾性体をへたり難くして予圧縮力の低下を抑制すると共に支持変位増加による他構造物との接触を防止することができる。また、他方の弾性体の予圧縮量が大きくなるため、外筒のフランジ部とブラケット部材との離間を防止して、防振装置のバネ定数の低下、フランジ部とブラケット部材との衝突による異音、及びフランジ部やブラケット部材の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態を説明するためのセット前の防振装置の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するためのセット状態の防振装置の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態を説明するための支持荷重負荷状態の防振装置の断面図である。
【図4】本発明の変形例を説明するための防振装置の断面図である。
【図5】本発明の変形例を説明するための防振装置の断面図である。
【図6】本発明の変形例を説明するための防振装置の断面図である。
【図7】本発明の変形例を説明するための防振装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る防振装置の実施の形態について、図面に基いて説明する。
なお、図1に示す符号Oは、防振装置1の中心軸を示しており、中心軸Oに沿った方向を「軸方向」とし、中心軸Oに直交する方向を「径方向」とし、中心軸O回りの方向を「周方向」とする。また、一方の防振部材2A(2B)からみて他方の防振部材2B(2A)に対向する対向面側を軸方向内側とし、その反対側を軸方向外側とする。
【0016】
図1に示すように、防振装置1は、例えばエンジンマウントとして適用されるものであり、建設機械等に搭載された図示せぬエンジン(本発明の振動発生体に相当する。)から入力される振動を減衰吸収して図示せぬ機体(本発明の振動受体に相当する。)への振動伝達を抑制するためのものである。
【0017】
この防振装置1の概略構成としては、互いの軸方向内側の端面同士を向かい合わせにして同軸に配置された一対の防振部材2A,2Bと、一対の防振部材2A,2Bと図示せぬ機体との間に介装されたブラケット部材3と、一対の防振部材2A,2Bを軸方向両側から挟持する一対の挟持部材4A,4Bと、一対の挟持部材4A,4Bを連結する締結部材5と、を備えている。上記した構成からなる防振部材2A,2Bは、同形状の一対の防振部材2A,2Bが、中心軸Oの垂直面を対称面にして対称に配置された構成からなり、一対の防振部材2A,2Bは同様の構成の部材であり、それぞれ同形状の外筒20A,20B、内筒21A,21B及び弾性体22A,22Bを有している。
【0018】
防振部材2A(2B)は、略円筒形状の外筒20A(20B)と、外筒20A(20B)よりも小径であり外筒20A(20B)の内側に間隔をあけて配置された略円筒形状の内筒21A(21B)と、外筒20A(20B)と内筒21A(21B)との間に介在された弾性体22A(22B)と、から構成されている。
【0019】
外筒20A(20B)の軸方向外側の端部には、径方向外側に突出したフランジ部23A(23B)が設けられている。このフランジ部23A(23B)は、外筒20A(20B)の全周に亘って延設された円環部である。
【0020】
内筒21A(21B)は、中心軸Oを共通軸にして外筒20A(20B)と同軸に配置されており、また、外筒20A(20B)よりも全長が長く、外筒20A(20B)の軸方向外側へ突出した状態で配置されている。また、外力が作用していない状態では、内筒21A(21B)の軸方向内側の端面が、外筒20A(20B)の軸方向内側の端面よりも軸方向外側にあり、両側の内筒21A,21Bの軸方向内側の端面同士は、互いに離間して対向配置されている。
【0021】
弾性体22A(22B)は、外筒20A(20B)と内筒21A(21B)とを弾性的に連結するゴム体であり、外筒20A(20B)の内周面20a及びフランジ部23A(23B)の軸方向外側の外側面23aにそれぞれ加硫接着されているとともに、内筒21A(21B)の外周面21aに加硫接着されている。弾性体22A(22B)は、軸方向外側にいくに従い漸次縮径されたテーパー状の形状を成しており、弾性体22A(22B)の軸方向内側の端面22aは、湾曲状に凹んだ形状になっている。
【0022】
また、弾性体22A(22B)の軸方向内側の外周部には、軸方向外側に向けて突出したストッパ部24A(24B)が設けられている。このストッパ部24A(24B)は、挟持部材4A(4B)の軸方向内側の内面4aに間隔をあけて対向する当接面24aを有する凸部であり、全周に亘って円環状に形成されている。なお、弾性体22A(22B)としては、ゴム以外にも合成樹脂等の弾性体を用いることも可能である。
【0023】
また、一対の弾性体22A,22Bのうち、図示せぬエンジンの支持荷重を受ける一方の弾性体22Aは、他方の弾性体22Bよりも弾性率が大きい弾性材料からなり、一方の弾性体22Aのバネ定数は、他方の弾性体22Bのバネ定数よりも大きくなっている。具体的に説明すると、図2に示すように図示せぬエンジンの支持荷重が負荷された状態において、双方の弾性体22A,22Bの予圧縮量がそれぞれ0以上であり、且つ、一方の弾性体22Aの予圧縮量が他方の弾性体22Bの予圧縮量以下になるように、双方の弾性体22A,22Bの弾性材料の弾性率がそれぞれ設定されている。また、好ましくは、図3に示すように支持荷重負荷状態において、一方の弾性体22Aの予圧縮量と他方の弾性体22Bの予圧縮量とが等しくなるように、双方の弾性体22A,22Bの弾性材料の弾性率がそれぞれ設定されている。
【0024】
なお、上記した図示せぬエンジンの支持荷重を受ける弾性体21Aとは、当該防振装置1に図示せぬエンジンが搭載されたときに、そのエンジンの荷重によって挟持部材4Aを介して圧縮力を受ける弾性体であり、本実施の形態では、後述するように上側の挟持部材4Aに図示せぬエンジンが連結されるため、上側の弾性体21Aが支持荷重を受ける構造となっている。
【0025】
ブラケット部材3は、図示せぬ機体に固定される肉厚プレート状の部材である。このブラケット部材3には、一対の防振ゴム2A,2Bの外筒20A,20Bが挿通された略円形状の取付孔30が形成されている。このブラケット部材3の取付孔30の周辺部分は、一対の防振ゴム2A,2Bの上下のフランジ部23A,23B間に配置され、これら上下のフランジ部23A,23Bにより挟み込まれている。
【0026】
一対の挟持部材4A,4Bは、一対の防振部材2A,2Bを軸方向両側から挟持するプレート部材であり、一対の防振部材2A,2Bの軸方向外側の端部にそれぞれ取り付けられている。この一対の挟持部材4A,4Bのうちの一方の挟持部材4Aは、図示せぬエンジンブラケットを介して図示せぬエンジンに固定されている。また、一対の挟持部材4A,4Bには、内筒21A(21B)の内側に連通されたボルト孔40A,40Bがそれぞれ形成されている。
【0027】
締結部材5は、一対の挟持部材4A,4Bを連結する部材であり、具体的には、ボルト50とナット51とからなる。ボルト50は、図1に示すように、一方の挟持部材4Aの軸方向外側から当該挟持部材4Aのボルト孔40A内に挿入され、図2に示すように、上下一対の内筒21A,21Bの内側及び他方の挟持部材4Bのボルト孔40Bにそれぞれ挿通され、他方の挟持部材4Bの軸方向外側(図1における下方側)に突出される。そして、他方の挟持部材4Bのボルト孔40Bから突出したボルト50の先端には、ナット51が螺合される。
【0028】
次に、上記した構成の防振装置1の設置方法について説明する。
【0029】
まず、図1に示すように、一対の防振部材2A、2Bとブラケット部材3と一対の挟持部材4A、4Bを組み立てる。詳しく説明すると、まず、一方の防振部材2Aの外筒20Aをブラケット部材3の上方側からブラケット部材3の取付孔30内に挿入させるとともに、他方の防振部材2Bの外筒20Bをブラケット部材3の下方側からブラケット部材3の取付孔30内に挿入させ、一対の外筒20A,20Bのフランジ部23A,23Bでブラケット部材3を上下から挟み込む。続いて、一対の防振部材2A,2Bの上下に挟持部材4A,4Bをそれぞれ配置し、これら一対の挟持部材4A,4Bで一対の防振部材2A,2Bを上下から挟む。
【0030】
次に、図2に示すように、一対の挟持部材4A,4Bを締結部材5で連結すると共に、締結部材5を締め込んで弾性体22A,22Bに予圧縮力を付与して防振装置1をセットする。
詳しく説明すると、まず、図1に示すように、一方の挟持部材4Aのボルト孔40Aからボルト50を挿入し、一対の内筒21A,21B内を挿通させ、ボルト50の先端を、他方の挟持部材4Bのボルト孔40Bから突出させ、突出したボルト50の先端にナット51を螺着させる。
【0031】
続いて、ボルト50又はナット51を軸回転させて締結部材5を締め付けていく。締結部材5を締め付けていくと、一対の挟持部材4A,4Bがそれぞれ軸方向内側に押し込まれ、一対の挟持部材4A,4B間の間隔が狭くなり、一対の防振部材2A,2Bが一対の挟持部材4A,4Bにより軸方向両側からそれぞれ押圧される。これにより、一対の内筒21A,21Bが軸方向内側に向けてそれぞれ押し込まれ、一対の内筒21A,21Bの軸方向内側の端面同士が互いに突き合わせられる。
【0032】
また、上述したように締結部材5によって一対の挟持部材4A,4Bがそれぞれ軸方向内側に押し込まれることで、一対の挟持部材4A,4Bを介して弾性体22A,22Bが軸方向に圧縮され、弾性体22A,22Bが径方向外側に膨らむように弾性変形する。これにより、弾性体22A,22Bに予圧縮力が付与される。このとき、図示せぬエンジンの支持荷重を受ける一方の弾性体22Aが他方の弾性体22Bよりもバネ定数が大きくて硬いため、一方の弾性体22Aの方が他方の弾性体22Bよりも予圧縮量が小さくなる。
【0033】
また、上述したように締結部材5によって一対の挟持部材4A,4Bがそれぞれ軸方向内側に押し込まれることで、一対の外筒20A,20Bの各フランジ部23A,23Bがブラケット部材3にそれぞれ密接される。これにより、ブラケット部材3が上下のフランジ部23A,23B間に挟持され、一対の防振部材2A,2Bがブラケット部材3に固定される。
【0034】
次に、上記した防振装置1を図示せぬ機体に固定すると共に当該防振装置1上に図示せぬエンジンを載せ、図示せぬ機体とエンジンとの間に防振装置1を介装させる。詳しく説明すると、上記したブラケット部材3を図示せぬ機体に固定して、中心軸Oが鉛直になるように防振装置1を機体に設置する。また、一方(上側)の挟持部材4Aに図示せぬエンジンブラケットを介して図示せぬエンジンを固定し、エンジンを支持する。
【0035】
これにより、図3に示すように、一方の挟持部材4Aを介して一方の弾性体22Aにエンジンの支持荷重が負荷され、上記支持荷重によって一方の弾性体22Aが圧縮されて一方の弾性体22Aの予圧縮量が増大し、その分、他方の弾性体22Bの予圧縮量が減少する。ただし、上述したように、一方の弾性体22Aが他方の弾性体22Bよりもバネ定数が大きく、防振装置1のセット時(図2に示す。)における一方の弾性体22Aの予圧縮量が小さいので、支持荷重負荷時における一方の弾性体22Aの予圧縮量が小さく抑えられる。その結果、支持荷重負荷時における一方の弾性体22Aの予圧縮量が他方の弾性体22Bの予圧縮量以下となり、好ましくは、一方の弾性体22Aと他方の弾性体22Bとの予圧縮量が等しくなり、一方の弾性体22Aのストッパ部24Aの当接面24aと挟持部材4Aの内面4aとの間隔L1と、他方の弾性体22Bのストッパ部24Bの当接面24aと挟持部材4Bの内面4aとの間隔L2と、が等しくなる。
以上により、図示せぬエンジンが防振装置1を介して図示せぬ機体にマウントされる。
【0036】
上記した防振装置1によれば、支持荷重を受ける一方の弾性体22Aの予圧縮量が小さく抑えられるため、その一方の弾性体22Aを破損し難くすることができ、且つ、一方の弾性体22Aをへたり難くして予圧縮力の低下を抑制すると共に支持変位増加による他構造物との接触を防止することができる。
【0037】
また、支持荷重を受けない他方の弾性体22Bの予圧縮量が大きくなるため、支持荷重負荷時や振動入力(バウンド)時における、他方の外筒20Bのフランジ部23Bとブラケット部材3との離間を防止することができる。これにより、防振装置1のバネ定数の低下を防止することができると共に、フランジ部23Bとブラケット部材3との衝突による異音(打音)及びフランジ部23Bやブラケット部材3の破損を防止することができる。
【0038】
また、上記した防振装置1では、一方の弾性体22Aの弾性材料として、他方の弾性体22Bの弾性材料よりも弾性率が大きいものを用いることで、一方の弾性体22Aのバネ定数を他方の弾性体22Bのバネ定数よりも大きくしているので、双方の弾性体22A,22Bを同形状にすることができる。これにより、一対の弾性体22A,22Bのバネ定数の設定精度が高くなり、容易に品質を確保することができる。また、弾性体22A,22Bを同一の金型で成形することができ、別形状の弾性体を製作する場合に比べてコストを抑えることができる。
【0039】
また、上記した防振装置1では、支持荷重負荷状態における一方の弾性体22Aの予圧縮量が他方の弾性体22Bの予圧縮量以下になるように、双方の弾性体22A,22Bの弾性率(バネ定数)が設定されているので、支持荷重負荷状態における一方の弾性体22Aの方が他方の弾性体22Bよりも耐久性が向上する。これにより、バウンド時の圧縮力を受ける一方の弾性体22Aの疲労による破損を抑制することができる。
【0040】
また、支持荷重が負荷された状態において、一方の弾性体22Aのストッパ部24Aの当接面24aと挟持部材4Aの内面4aとの間隔L1と、他方の弾性体22Bのストッパ部24Bの当接面24aと挟持部材4Bの内面4aとの間隔L2と、が等しくなるので、双方のストッパ24A,24Bの接触頻度を同等に設定することができる。
また、上記したように一方の弾性体22Aのへたりを防止できるので、支持荷重負荷状態において、一方の弾性体22Aのストッパ24Aの当接面24aが挟持部材4Aの内面4aに常時接触することを防止することができる。
【0041】
以上、本発明に係る防振装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本発明は、図4に示すように、弾性体122A(122B)が、外筒120A(120B)に加硫接着された環状の第一弾性部122aと、内筒21A(21B)に加硫接着されて上記した第一弾性部122aの内側に嵌合された第二弾性部122bと、からなり、防振部材102A(102B)が2つに分割可能な構成であってもよい。なお、この場合、一方の弾性体122Aの第二弾性部122bを、他方の弾性体122Bの第二弾性部122bよりも弾性率が大きい弾性材料で形成することで、一方の弾性体122Aのバネ定数を他方の弾性体122Bのバネ定数よりも大きくする。
【0042】
また、図4に示すように、外筒120A(120B)のフランジ部123A(123B)が、縦断面視において湾曲された形状であってもよく、また、外筒120A(120B)の軸方向内側の端部から径方向内側に向かって全周に亘って突出した環状の底壁部125A(天壁部125B)が設けられていてもよい。
【0043】
また、本発明は、図5に示すように、弾性体222A(222B)に肉抜きされたスグリ225A(225B)が形成された構成であってもよい。また、内筒21A(21B)の端面に凸状の位置決め部226A(226B)を突設すると共に、挟持部材4A(4B)のボルト孔40A(40B)の縁部に凹状の切欠き部241A(241B)を形成する。そして、一対の挟持部材4A,4Bで防振部材202A,202Bを挟持してセットする際に、上記した位置決め部226A(226B)を切欠き部241A(241B)の内側に嵌め込むことで、一対の防振部材202A,202Bの位置決めを行う構成であってもよい。
【0044】
また、上記した実施の形態では、弾性材料からなるストッパ部24A、24Bが設けられた防振部材2A、2Bが備えられているが、本発明は、図6に示すように、防振部材302A、302Bに金属製等のストッパ部(第一ストッパ部325A、325B)が設けられていてもよい。詳しく説明すると、外筒320A(320B)のフランジ部323A(323B)の外縁から軸方向外側に向けて突出した筒状の第一ストッパ部325A(325B)が設けられている。また、弾性体322A(322B)の外周部には、第一ストッパ部325A(325B)よりも軸方向外側に突出した第二ストッパ部324A(324B)が設けられている。
【0045】
また、本発明は、図7に示すように、外筒420A(420B)や弾性体422A(422B)とは別体のストッパ部材425A(425B)を装着させた構成であってもよい。上記したストッパ部材425A(425B)は、外筒420A(420B)のフランジ部423A(423B)とブラケット部材403との間に挟持された円環状のリングプレート部425aと、リングプレート部425aの外縁から軸方向外側に向けて突出した延出部425bと、からなる。
さらに、本発明は、例えば図5に示すように、ストッパ部が無い構成にすることも可能である。
【0046】
また、上記した実施の形態では、一方の弾性体22Aが他方の弾性体22Bよりも弾性率が大きい弾性材料によって形成されることで、一方の弾性体22Aが他方の弾性体22Bよりもバネ定数が大きくなっているが、本発明は、弾性率の異なる弾性材料を用いることなく、双方の弾性体を異なるバネ定数にすることができる。例えば、双方の弾性体を異なる形状にすることで、一方の弾性体のバネ定数を他方の弾性体のバネ定数よりも大きくすることが可能である。
【0047】
また、上記した実施の形態では、支持荷重負荷時における一方の弾性体22Aの予圧縮量が他方の弾性体22Bの予圧縮量以下となるが、本発明は、少なくとも、セット時における一方の弾性体22Aの予圧縮量が他方の弾性体22Bの予圧縮量よりも小さければ、一方の弾性体22Aの破損やへたりを抑制できるので、支持荷重負荷状態における一方の弾性体22Aの予圧縮量が他方の弾性体22Bの予圧縮量よりも大きくてもよい。
【0048】
上記した実施の形態では、挟持部材4A、4Bがプレート状の部材からなるが、本発明は、プレート状以外の挟持部材であってもよく、例えば、円錐台形状や箱状の挟持部材を用いることも可能である。
また、上記した実施の形態では、外筒20A、20Bの軸方向外側の端部にフランジ部23A、23Bが設けられているが、本発明は、外筒20A、20Bの軸方向の中間部にフランジ部23A、23Bが設けられた構成にすることも可能である。
【0049】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 防振装置
2A、2B 防振部材
3、403 ブラケット部材
4A、4B 挟持部材
5 締結部材
20A、20B 外筒
21A、21B 内筒
22A、22B 弾性体
23A、23B フランジ部
102A、102B 防振部材
120A、120B 外筒
122A、122B 弾性体
123A、123B フランジ部
202A、202B 防振部材
222A、222B 弾性体
302A、302B 防振部材
320A、320B 外筒
322A、322B 弾性体
323A、323B フランジ部
420A、420B 外筒
422A、422B 弾性体
423A、423B フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向外側に向けて突出するフランジ部が形成された外筒、該外筒の内側に配置された内筒、及び、前記外筒と内筒を連結する弾性体をそれぞれ有し、軸方向の端面同士を互いに向かい合わせにして配置された一対の防振部材と、
振動発生体および振動受体のうちの何れか一方に連結されると共に前記一対の防振部材のフランジ部の間に挟み込まれたブラケット部材と、
振動発生体および振動受体のうちの何れか他方に連結されると共に前記一対の防振部材を軸方向両側から挟持する一対の挟持部材と、
前記内筒の内側に挿通されて前記一対の挟持部材を連結する締結部材と、
を備えており、
前記締結部材を締め込んで前記一対の挟持部材を軸方向内側にそれぞれ押し込むことにより、前記内筒の端部同士が突き合わせられると共に、前記一対の挟持部材を介して前記弾性体が予圧縮される防振装置において、
前記一対の防止部材の弾性体のうち、前記振動発生体の支持荷重を受ける一方の弾性体のバネ定数が他方の弾性体のバネ定数よりも大きいことを特徴とする防振装置。
【請求項2】
請求項1に記載の防振装置において、
前記一方の弾性体は、前記他方の弾性体よりも弾性率が大きい弾性材料からなることを特徴とする防振装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の防振装置において、
前記振動発生体の支持荷重が負荷された状態における前記一方の弾性体の予圧縮量が前記他方の弾性体の予圧縮量以下であることを特徴とする防振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−117512(P2011−117512A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274483(P2009−274483)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】