防振装置
【課題】こすれ音の発生を抑制しつつ、耐久性の向上を図ることができる防振装置を提供すること。
【解決手段】一対の主脚部材31の間に位置する第3脚部材32が、内筒部材1の外周面と外筒部材2の内周面との間に接続されるので、内筒部材1と外筒部材2との間に比較的大きな変位(例えば、エンジンのロール変位)が入力された場合であっても、こすれ音の発生を抑制できる。内筒部材1の第3脚接続面部分13は、外筒部材2から離間する方向へ向けて凹の円弧状に湾曲して形成されるので、第3脚部材32の応力を分散させて、亀裂の発生を抑制することができ、その結果、耐久性の向上を図ることができる。
【解決手段】一対の主脚部材31の間に位置する第3脚部材32が、内筒部材1の外周面と外筒部材2の内周面との間に接続されるので、内筒部材1と外筒部材2との間に比較的大きな変位(例えば、エンジンのロール変位)が入力された場合であっても、こすれ音の発生を抑制できる。内筒部材1の第3脚接続面部分13は、外筒部材2から離間する方向へ向けて凹の円弧状に湾曲して形成されるので、第3脚部材32の応力を分散させて、亀裂の発生を抑制することができ、その結果、耐久性の向上を図ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振装置に関し、特に、こすれ音の発生を抑制しつつ、耐久性の向上を図ることができる防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンを車両に支持する防振装置の一例として、内筒部材の外周面と外筒部材の内周面との間を、ゴム状弾性体からなり内筒部材を挟んで両側に位置する一対の脚部材により接続する構造のものが知られている(特許文献1〜4)。
【0003】
この種の防振装置を図12(a)に示す。図12(a)は、従来の防振装置800の正面図である。防振装置800は、金属材料からなる内筒部材810及び外筒部材820と、それら内筒部材810の外周面と外筒部材820の内周面との間を接続すると共にゴム状弾性体からなる一対の脚部材830と、外筒部材820の内周面から突設されるストッパ部材840と、を備える。
【0004】
この防振装置800では、ストッパ部材840の先端が内筒部材810の外周面に当接した状態で、車両の旋回などによりエンジンがロール方向へ変位すると、内筒部材810の外周面とストッパ部材840の先端との間でこすれ音が発生し、異音となる。そこで、本願出願人は、ストッパ部材840に該当する部位の先端を内筒部材810の外周面に接続して第3脚部材940とする構造の防振装置900に想到した(本願出願時において未公知)。なお、図12(b)は、防振装置900の正面図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2976968号公報
【特許文献2】特開2005−249062号公報
【特許文献3】特開2005−172242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した防振装置900では、防振装置800のストッパ部材840に比べて、第3脚部材940のゴムボリュームが増加するため、その第3脚部材940を圧縮させる方向(図12(b)下方向)への内筒部材810の変位時に、第3脚部材940に大きなひずみが発生する。そのため、第3脚部材940に亀裂が発生して、耐久性の悪化を招くという問題点があった。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、こすれ音の発生を抑制しつつ、耐久性の向上を図ることができる防振装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
請求項1記載の防振装置によれば、内筒部材の外周面と外筒部材の内周面との間が一対の主脚部材で接続される構造において、それら一対の主脚部材の間に位置する第3脚部材が、内筒部材の外周面と外筒部材の内周面との間に接続されるので、内筒部材と外筒部材との間に比較的大きな変位(例えば、エンジンのロール変位)が入力された場合であっても、こすれ音の発生を抑制することができるという効果がある。
【0009】
更に、内筒部材の外周面は、少なくとも第3脚部材が接続される部分が、軸心方向視において、内筒部材の軸心と反対側に円弧中心が位置する円弧状に湾曲して形成されるので、第3脚部材の応力を分散させて、亀裂の発生を抑制することができ、その結果、耐久性の向上を図ることができるという効果がある。
【0010】
即ち、内筒部材の外周面の内の第3脚部材が接続される外周面が、軸心方向視において、外筒部材へ向けて凸の円弧状に湾曲する構成では、第3脚部材を圧縮させる方向へ内筒部材が変位された状態において、第3脚部材の一部(即ち、内筒部材の外周面近傍であって第3脚部の幅方向中央部となる部分)に応力が集中する。
【0011】
これに対し、請求項1では、第3脚部材が接続される内筒部材の外周面を、内筒部材の軸心と反対側に円弧中心が位置する円弧状に湾曲させたので、内筒部材の外周面近傍において、第3脚部材の応力を分散させ幅方向中央部に応力が集中することを低減できる。その結果、亀裂の発生を抑制して、耐久性の向上を図ることができる。
【0012】
請求項2記載の防振装置によれば、請求項1記載の防振装置の奏する効果に加え、内筒部材の外周面であって主脚部材が連結される主脚接続面部分と第3脚部材が連結される第3脚接続面部分との間に位置する中間面部分が外部に露出するので、主脚部材と第3脚部材とを分離させることができる。これにより、第3脚部材に亀裂が発生したとしても、その亀裂が主脚部材まで進行することを防止できるという効果がある。また、請求項2によれば、中間面部分が、主脚部材および第3脚部材に連なるゴム膜に覆われる場合であっても、そのゴム膜の厚み寸法が略2mm以下とされるので、ゴム膜を亀裂の進行に寄与しない部分とすることができる。即ち、第3脚部材に亀裂が発生しても、その亀裂が主脚部材まで進行することを防止できる。
【0013】
請求項3記載の防振装置によれば、請求項2記載の防振装置の奏する効果に加え、第3脚部材は、一対の主脚部材との間の空間に面する側面にそれぞれ凹設されると共に内筒部材の中間面部分またはゴム膜に連なる一対の脚凹部を備えるので、内筒部材の外周面(第3脚接続面部分)近傍において、第3脚部材の応力を分散させて幅方向中央部に応力が集中することを低減できるという効果がある。また、一対の脚凹部により、内筒部材の外周面(第3脚接続面部分)近傍における第3脚部材の変形性を確保できるので、その分、ひずみの集中部を外筒部材側へずらすことができるという効果がある。その結果、亀裂の発生を抑制して、耐久性の向上を図ることができる。
【0014】
請求項4記載の防振装置によれば、請求項1から3のいずれか1項に記載の防振装置の奏する効果に加え、内筒部材は、第3脚部材が接続される外周面部分に凹設されると共に第3脚部材の幅方向両側にそれぞれ位置する一対の内筒凹部を備えるので、内筒部材の外周面の面積(即ち、第3脚部材が接続される接続面の面積)を増加させることができる。よって、内筒部材の外周面近傍において、第3脚部材の応力を分散させ幅方向中央部に応力が集中することの低減効果を更に発揮させることができるという効果がある。その結果、亀裂の発生を抑制して、耐久性の向上をより一層図ることができる。
【0015】
また、このように、一対の内筒凹部によって、内筒部材の外周面の面積(即ち、第3脚部材が接続される接続面の面積)を増加させることで、その分、接続面に作用する応力の抑制が可能となるので、内筒部材の外周面と第3脚部材との接続状態を維持し易くすることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は、本発明の第1実施の形態における防振装置の正面図であり、(b)は、図1(a)のIb−Ib線における防振装置の断面図である。
【図2】図1(a)に示す防振装置の一部を部分的に拡大した部分拡大正面図である。
【図3】(a)は、第2実施の形態における防振装置の正面図であり、(b)は、図3(a)のIIIb−IIIb線における防振装置の断面図である。
【図4】図3(a)に示す防振装置の一部を部分的に拡大した部分拡大正面図である。
【図5】(a)は、第3実施の形態における防振装置の正面図であり、(b)は、図5(a)のVb−Vb線における防振装置の断面図である。
【図6】図5(a)に示す防振装置の一部を部分的に拡大した部分拡大正面図である。
【図7】内筒部材の変位と第3脚部材に発生する最大主ひずみとの関係を数値計算により解析した結果を示す特性図である。
【図8】数値計算により解析した防振装置のひずみ分布を示す解析図である。
【図9】数値計算により解析した防振装置のひずみ分布を示す解析図である。
【図10】第4実施の形態における防振装置の正面図である。
【図11】第5実施の形態における防振装置の正面図である。
【図12】(a)は、従来の防振装置の正面図であり、(b)は、本願の基礎となる防振装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の第1実施の形態における防振装置100の正面図であり、図1(b)は、図1(a)のIb−Ib線における防振装置100の断面図である。また、図2は、図1(a)に示す防振装置100の一部を部分的に拡大した部分拡大正面図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、防振装置100は、自動車のエンジンを支持固定しつつ、そのエンジン振動を車体フレームへ伝達させないようにするための防振装置であり、エンジン側に取り付けられる内筒部材1と、車体側に取り付けられる外筒部材2と、これら内筒部材1及び外筒部材2を連結すると共にゴム状弾性体から構成される防振基体3とを備える。
【0019】
なお、防振装置100は、図1(a)に示す状態でエンジンを車体に支持する。即ち、防振装置100は、重力の作用方向が図1(a)上下方向に一致する向きで、エンジンを車体に支持する。そのため、防振装置100は、エンジンの重量により内筒部材1が図1(a)下方へ所定量だけ変位し、第3脚部材32が内筒部材1と外筒部材2との間で圧縮変形された状態(いわゆる1W状態)で、エンジンを車体に支持する。
【0020】
内筒部材1は、アルミニウム合金から筒状に形成される部材であり、内筒部材1の略中央部には、断面円形の貫通孔11が軸心Oに沿って貫通形成される。貫通孔11には、内筒部材1をエンジン側の部品に締結固定するためのボルトが挿通される。外筒部材2は、鉄鋼材料から筒状に形成される部材であり、内筒部材1の外周側を取り囲むと共に内筒部材1に軸心Oが略一致する状態に配置される。
【0021】
なお、内筒部材1及び外筒部材2を軸心Oに垂直な平面で切断した断面形状は、軸心Oに沿って(即ち、軸心O上のいずれの箇所でも)同じ形状とされる。よって、かかる断面形状は、図1(a)及び図2に示す軸心O方向視における形状に一致する。また、両部材1,2の材質は例示であり、内筒部材1に鉄鋼材料を、外筒部材2に鉄鋼材料を、それぞれ採用しても良く、或いは、他の材質(例えば、樹脂材料など)を採用しても良い。
【0022】
ここで、内筒部材1は、その外周面が、軸心Oを挟んで対向配置される一対の主脚接続面部分12と、それら一対の主脚接続面部分12の一端側(図1(a)下側)に位置する第3脚接続面部分13と、その第3脚接続面部分13に対して軸心Oを挟んで位置し一対の主脚接続面部分12に両端がそれぞれ連なるストッパ面部分14と、主脚接続面部分12及び第3脚接続面部分13の間に位置しそれらに連なる一対の中間面部分15とから構成される。
【0023】
なお、外筒部材2は、軸心O方向視において、長円形状に形成され、その長円形状の直線部分に対応する内周面が、内筒部材1の第3脚接続面部分13及びストッパ面部分14にそれぞれ対向する向きに配設される。
【0024】
防振基体3は、ゴム状弾性体から構成され、内筒部材1の外周面および外筒部材2の内周面に加硫接着される部材であり、内筒部材1を挟んで位置する一対の主脚部材31と、それら一対の主脚部材31の間に位置する第3脚部材32と、外筒部材2の内周面を覆う下覆設部材33及び上覆設部材34とを備える。
【0025】
主脚部材31は、軸心O方向視形状が略矩形状(即ち、両側面が略平行な直線状)に形成され、長手方向一端側が内筒部材1の外周面の内の主脚接続面部分12に接続されると共に、長手方向他端側が外筒部材2の軸心O方向視円弧状となる部分の内周面に接続される。
【0026】
ここで、内筒部材1の一対の主脚接続面部分12は、第3脚接続面部分13からストッパ面部分14へ向かうに従って、軸心O方向視における対向面間隔(図1(a)左右方向幅)が漸次大きくなる逆ハの字形状に形成される。一方、一対の主脚部材31は、主脚接続面部分12に対して長手方向が略垂直となる向きでそれぞれ接続され、軸心O方向視において略ハの字形状に形成される。
【0027】
主脚部材31の長手方向一端側には、内筒部材1のストッパ面部分14を一定の厚みで覆うゴム膜が連なっている。なお、内筒部材1のストッパ面部分14は、軸心O方向視における形状が、外筒部材2の内周面へ向けて凸の円弧状に湾曲して形成される。
【0028】
第3脚部材32は、軸心O方向視形状が略矩形状(即ち、両側面が略平行な直線状)に形成され、長手方向一端側が内筒部材1の外周面の内の第3脚接続面部分13に接続されると共に、長手方向他端側が外筒部材2の軸心O方向視直線状となる部分の内周面に接続される。
【0029】
ここで、内筒部材1の第3脚接続面部分13は、軸心O方向視において、内筒部材1の軸心Oと反対側に円弧中心が位置する円弧状に湾曲して形成される。即ち、内筒部材1は、第3脚部材32が接続される外周面部分が、外筒部材2の内周面から内筒部材1の軸心Oへ向けて凹となる形状に窪んで形成される。
【0030】
また、内筒部材1は、主脚接続面部分12と第3脚接続面部分13との間に位置する中間面部分15が外部に露出される。即ち、主脚部材31の長手方向一端側および第3脚部材32の長手方向一端側は、内筒部材1の中間面部分15には接続されず、主脚接続面部分12及び第3脚接続面部分13のみに接続される。
【0031】
下覆設部材33及び上覆設部材34は、外筒部材2の内周面を覆う部材であり、下覆設部材33は、主脚部材31の長手方向他端側および第3脚部材32の長手方向他端側に連なる。また、上覆設部材34は、一対の主脚部材31の長手方向他端側に連なり、内筒部材1のストッパ面部分14を受け止めることで、ストッパ機能時の緩衝作用を発揮する。
【0032】
なお、下覆設部材33と第3脚部材32の長手方向他端側とが連なる部分の半径は、軸心O方向視において、第3脚部材32の長手方向一端側が第3脚接続面部分13に連なる部分の半径よりも十分に大きな値(本実施の形態では5倍以上)に設定される。これにより、第3脚部材32は、長手方向他端側における幅寸法(図1(a)左右方向幅)が大きくされる。
【0033】
防振基体3には、各部材31〜34が上述のように構成されることで、主脚部材31と上覆設部材34との間の空間として形成される第1すぐり部41が軸心O方向に貫通して形成されると共に、主脚部材31と第3脚部材32との間の空間として形成される一対の第2すぐり部42がそれぞれ軸心O方向へ貫通して形成される。
【0034】
以上のように、本実施の形態における防振装置100によれば、内筒部材1の外周面と外筒部材2の内周面との間を一対の主脚部材31で接続する構造において、それら一対の主脚部材31の間に位置する第3脚部材32を、内筒部材1の外周面と外筒部材2の内周面との間に接続するので、例えば、エンジンのロール変位が入力された場合であっても、こすれ音の発生を抑制することができる。
【0035】
また、内筒部材1の外周面は、第3脚部材32が接続される第3脚部接続面部分13が、軸心O方向視において、内筒部材1の軸心Oと反対側に円弧中心が位置する円弧状に湾曲して形成されるので、第3脚部材32の応力を分散させて、亀裂の発生を抑制することができ、その結果、耐久性の向上を図ることができる。
【0036】
即ち、内筒部材1の第3脚部接続面部分13が、軸心O方向視において、例えば、内筒部材1の軸心Oと同じ側に円弧中心が位置する円弧状(外筒部材2へ向けて凸の円弧状)に湾曲する構成では(図12(b)参照)、第3脚部材32を圧縮させる方向へ内筒部材1が変位する1W状態またはそれ以上に第3脚部材32を圧縮変形させる状態において、第3脚部材32の一部(即ち、内筒部材1の第3脚部接続面部分13近傍であって第3脚部材32の幅方向(図1(a)及び図2左右方向)中央部となる部分)に応力が集中する。
【0037】
これに対し、内筒部材1の第3脚部接続面部分13を、内筒部材1の軸心Oと反対側に円弧中心が位置する円弧状に湾曲させることで、内筒部材1の第3脚部接続面部分13近傍において、第3脚部材32の応力を分散させ幅方向(図1(a)及び図2左右方向)中央部に応力が集中することを低減できる。その結果、第3脚部材32への亀裂の発生を抑制して、耐久性の向上を図ることができる。
【0038】
このように、第3脚部材32には、第3脚部接続面部分13近傍側で応力が集中しやすいところ、この応力集中箇所で仮に亀裂が発生したとしても、本実施の形態では、内筒部材1の中間面部分15を外部に露出させたので、主脚部材31の長手方向一端側と第3脚部材32の長手方向一端側とを分離させることができ、その結果、その亀裂が主脚部材31まで進行することを防止することができる。
【0039】
次いで、図3及び図4を参照して、第2実施の形態における防振装置200について説明する。第1実施の形態では、第3脚部材32の両側面が平坦面状に形成される場合を説明したが、第2実施の形態における第3脚部材232には、両側面に一対の脚凹部232aがそれぞれ設定される。なお、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0040】
図3(a)は、第2実施の形態における防振装置200の正面図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIb−IIIb線における防振装置200の断面図である。また、図4は、図3(a)に示す防振装置200の一部を部分的に拡大した部分拡大正面図である。
【0041】
図3及び図4に示すように、第2実施の形態における防振装置200は、防振基体203の第3脚部材232に、脚凹部232aが凹設される。脚凹部232aは、軸心O方向視において、円弧状に湾曲して形成される略半円形状の凹部であり、第3脚部材232の両側面(一対の主脚部材31との間の空間に面する両側の側面)にそれぞれ設定されると共に、内筒部材1の中間面部分15に滑らかに連なる。
【0042】
これにより、内筒部材1の第3脚接続面部分13近傍において、第3脚部材232の応力を分散させて幅方向(図3(a)及び図4左右方向)中央部に応力が集中することを低減できる。
【0043】
また、一対の脚凹部232aにより、内筒部材1の第3脚接続面部分13近傍における第3脚部材232の変形性を確保できるので、その分、ひずみの集中部を外筒部材2側(第3脚部材232の長手方向他端側、図3(a)及び図4下方)へずらすことができる。第3脚部材232の長手方向他端側は、下覆設部材33によりゴムボリューム(体積)が大きくされているので、かかる部分側へひずみの集中部がずれることで、亀裂の発生を抑制して、耐久性の向上を図ることができる。
【0044】
なお、脚凹部232aの半径は、第3脚部材232の幅方向寸法(図3(a)及び図4左右方向幅)の5%から35%の範囲に設定することが好ましい。また、防振脚部230を軸心Oに垂直な平面で切断した断面形状は、軸心Oに沿って(即ち、軸心O上のいずれの箇所でも)同じ形状とされる。よって、かかる断面形状は、図3(a)及び図4に示す軸心O方向視における形状に一致する。
【0045】
次いで、図5及び図6を参照して、第3実施の形態における防振装置300について説明する。第1実施の形態では、内筒部材1の第3脚接続面部分13が1の円弧により湾曲し凹凸を有さない形状に形成される場合を説明したが、第3実施の形態における内筒部材301の第3脚接続面部313は、1の円弧に複数の凹部(内筒凹部313a)が凹設された形状に形成される。なお、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0046】
図5(a)は、第3実施の形態における防振装置300の正面図であり、図5(b)は、図5(a)のVb−Vb線における防振装置300の断面図である。また、図6は、図5(a)に示す防振装置300の一部を部分的に拡大した部分拡大正面図である。
【0047】
図5及び図6に示すように、第3実施の形態における防振装置300は、内筒部材301の第3脚接続面部分313に一対の内筒凹部313aが凹設される。内筒凹部313aは、軸心O方向視において、円弧状に湾曲して形成される略半円形状の凹部であり、第3脚接続面部分313の両端にそれぞれ設定されると共に、内筒部材1の中間面部分15に滑らかに連なる。
【0048】
防振基体303の第3脚部材332は、長手方向(図5(a)上下方向)一端側が、中間面部分15を外部に露出させつつ、内筒部材301の第3脚接続面部分313であって内筒凹部313aを含む範囲に接続される。
【0049】
これにより、内筒部材301の第3脚接続面部分313の面積(即ち、第3脚部材332の長手方向一端側が接続される接続面の面積)を増加させることができる。よって、内筒部材301の第3脚接続面部分313近傍において、第3脚部材332の応力を分散させ幅方向(図5(a)及び図6左右方向)中央部に応力が集中することを低減できる。その結果、亀裂の発生を抑制して、耐久性の向上を図ることができる。
【0050】
また、このように、第3脚接続面部分313に一対の内筒凹部313aを設定することで、第3脚部材332が接続される接続面の面積(即ち、加硫接着面積)を増加させることができる。よって、その分、第3脚接続面部分313に作用する応力の抑制が可能となるので、内筒部材301の第3脚接続面部分313と第3脚部材332の長手方向一端側との接続状態を維持し易くすることができる。即ち、内筒部材301の第3脚接続面部分313から第3脚部材332の長手方向一端側が完全に分離することを抑制できる。
【0051】
なお、内筒凹部313aの半径は、第3脚部材332の幅方向寸法(図5(a)及び図6左右方向幅)の5%から35%の範囲(即ち、第2実施の形態における脚凹部232aの場合と同等)に設定することが好ましい。また、内筒部材301を軸心Oに垂直な平面で切断した断面形状は、軸心Oに沿って(即ち、軸心O上のいずれの箇所でも)同じ形状とされる。よって、かかる断面形状は、図5(a)及び図6に示す軸心O方向視における形状に一致する。
【0052】
次いで、図7から図9を参照して、第1から第3実施の形態で説明した防振装置100〜300のひずみ特性を解析した結果について説明する。図7は、数値計算により解析した内筒部材1,301の変位と第3脚部材32,232,332に発生する最大主ひずみとの関係を示す特性図である。
【0053】
特性図は、防振装置100〜300,900をモデル化して数値計算(有限要素法解析)により解析した結果を示しており、横軸が内筒部材1,301の変位の値を、縦軸が第3脚部材32,232,332に発生する最大主ひずみ[%]の値を、それぞれ表す。また、特性L1は、第1実施の形態における防振装置100(図1参照)に、特性L2は、第2実施の形態における防振装置200(図3参照)に、特性L3は、第3実施の形態における防振装置300(図5参照)に、それぞれ対応する。
【0054】
ここで、横軸の変位の方向は、無負荷状態(即ち、図1(a)、図3(a)及び図5(a)に示す状態)を原点とし、その原点位置から内筒部材1,301の第3脚接続面部分13,313が外筒部材2の内周面との間で第3脚部材32,232,332を長手方向(例えば、図1(a)上下方向)に圧縮変形させる方向(即ち、車両への装着状態における重力方向下方、例えば、図1(a)下方)に対応する。
【0055】
また、横軸の変位X1は、第3脚部材32,232,332の長手方向(例えば、図1(a)上下方向)寸法を無負荷状態時に対して75%に圧縮させる(即ち、内筒部材1の第3脚接続面部分13,313と外筒部材2の内周面との間の対向間隔を無負荷状態における対向間隔の75%とする)内筒部材1,301の変位の値に対応する。また、変位X2は、50%に対応する。
【0056】
なお、特性図には、比較のために、従来品として、防振装置900(図10参照)における内筒部材810の変位と第3脚部材940に発生する最大主ひずみとの関係を特性L4として示す。変位の方向および変位X1,X2については、防振装置100〜300の場合と同様であるので説明は省略する。
【0057】
図7に示すように、変位X1までの変位範囲では、防振装置900(特性L4)と防振装置100〜300(特性L1〜L3)との間で最大主ひずみの値に大きな差は生じず、ほぼ同じ特性を有する。
【0058】
変位X1よりも大きな変位範囲では、防振装置900における最大主ひずみの増加率に対して、防振装置100〜300における最大主ひずみの増加率が小さくなり、変位X2では、防振装置900における最大主ひずみの値に対し、防振装置100〜300における最大主ひずみの値が略30%〜35%小さな値となる。これにより、内筒部材1,301の第3脚接続面部分13、313(内筒凹部313a)や脚凹部232aによる効果が確認される。
【0059】
また、変位X1よりも大きな変位範囲では、防振装置100における最大主ひずみの値に対し、防振装置200,300における最大主ひずみの値が小さな値となり、例えば、変位X2では、防振装置100における最大主ひずみの値に対し、防振装置200,300における最大主ひずみの値が略5%小さな値となる。これにより、防振装置100の内筒部材1及び第3脚部材32に対し、内筒凹部313a及び脚凹部232aを設定したことによる効果が確認される。
【0060】
図8及び図9は、数値計算により解析した防振装置100〜300,900のひずみ分布を示す解析図である。
【0061】
解析図は、防振装置100〜300,900をモデル化して数値計算(有限要素法解析)により解析した結果を示しており、内筒部材1,301,810を変位X2(図7参照)まで変位させた状態における最大主ひずみ[%]の大きさが色の濃淡により図示される。なお、解析図では、色の濃度が高い(濃い)部分ほど、最大主ひずみの大きさが大きいことを示す。
【0062】
なお、図8(a)及び図8(b)の解析図は、図7に特性L1及び特性L2で示した第1実施の形態における防振装置100及び第2実施の形態における防振装置200にそれぞれ対応し、図9(a)及び図9(b)の解析図は、図7に特性L3及び特性L4で示した第3実施の形態における防振装置300及び比較のための防振装置900にそれぞれ対応する。図8及び図9において、符号の図示を省略する。
【0063】
図9(b)に示すように、防振装置900(図12(b)参照)では、第3脚部材940の略幅方向中央部であって内筒部材810の外周面近傍に最大主ひずみの大きな箇所が集中している。そのため、そのひずみの集中箇所に亀裂が発生し、その亀裂が進行することで、第3脚部材940の破断を招く。
【0064】
一方、防振装置100(図1参照)では、内筒部材1の第3脚部接続面部分13が、外筒部材2から離間する方向へ向けて凹の円弧状に湾曲されているので、内筒部材1の第3脚部接続面部分13近傍において、第3脚部材32の最大主ひずみが大きくなる箇所が分散され、幅方向中央部への集中が低減されている。
【0065】
防振装置200(図4参照)では、第3脚部材232に一対の脚凹部232aが凹設されているので、最大主ひずみが大きくなる箇所が、防振装置100の場合と比較して、内筒部材1の第3脚接続面部分13近傍から外筒部材2側へ離間され(図8(b)下方へずれ)、内筒部材1の第3脚接続面部分13近傍において、最大主ひずみが小さくされている。
【0066】
また、防振装置300(図5参照)では、内筒部材301の第3脚接続面部分313に一対の内筒凹部313aが凹設されているので、最大主ひずみが大きくなる箇所が、防振装置100の場合と比較して、内筒部材301の第3脚接続面部分313近傍から外筒部材2側へ離間され(図9(a)下方へずれ)、内筒部材301の第3脚接続面部分313近傍において、最大主ひずみが小さくされている。
【0067】
なお、実際の製品では、内筒部材1等が寸法公差を有し加硫金型より小さく形成される場合があると共に、加硫金型に摩耗も生じる。そのため、内筒部材1等の中間面部分15と加硫金型との間に隙間が空いた場合には、中間面部分15がゴム膜で覆われ、外部に完全に露出させられないことがある。本数値計算では、これを考慮して、中間面部分15が外部に完全に露出されたモデルの他に、内筒部材1等の中間面部分15が厚さ2mmのゴム膜で覆われた状態のモデル(図8及び図9参照)でも解析を行い、比較した。その結果、厚さ2mm以下のゴム膜であれば、解析結果に影響のないことを確認した。
【0068】
次いで、図10を参照して、第4実施の形態における防振装置400について説明する。第1実施の形態では、外筒部材2を軸心O方向視において長円形状に形成する場合を説明したが、第4実施の形態における外筒部材402は、軸心O方向視形状が円形に形成される。なお、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0069】
図10は、第4実施の形態における防振装置400の正面図である。図10に示すように、第4実施の形態における外筒部材402は、軸心O方向視における形状が、円形に形成され、内筒部材1の外周側を取り囲みつつ内筒部材1に軸心Oが略一致する状態に配置される。
【0070】
なお、防振基体403は、外筒部材402の形状の変更に伴い、第3脚部材432の長手方向(図10上下方向)寸法が長くされると共に、下覆設部材433及び上覆設部材434の厚み寸法(図10上下方向寸法)が大きくされる点のみが、第1実施の形態における防振基体3と異なる。
【0071】
このように外筒部材402を軸心O方向視において円形に形成した場合でも、第1実施の形態における防振装置100と同様の効果を得ることができる。特に、本実施の形態における防振装置400によれば、第3脚部材432の長手方向寸法を長くすることができると共に、第3脚部材432の長手方向他端側(図10下側)のゴムボリュームを下覆設部材433により大きくできるので、第3脚部材432における亀裂の発生を抑制して、耐久性のより一層の向上を図ることができる。
【0072】
次いで、図11を参照して、第5実施の形態における防振装置500について説明する。第5実施の形態における防振装置500は、第2実施の形態における防振装置200と第3実施の形態における防振装置300とを組み合わせて形成される。なお、上記各実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0073】
図11は、第5実施の形態における防振装置500の正面図である。図11に示すように、第5実施の形態における防振装置500は、第3実施の形態における防振装置300に対し、第2実施の形態における脚部凹部232aを追加して形成される。即ち、第3実施の形態における防振装置300では第3脚部材332の両側面が平坦面状に形成されたのに対し、第5実施の形態における防振装置500では第3脚部材532の両側面に第2実施の形態における一対の脚凹部232aが設定される。防振装置500は、防振装置300に対し、脚凹部232aの有無を除く他の構成は同一とされる。
【0074】
第5実施の形態における防振装置500によれば、第2実施の形態における防振装置200及び第3実施の形態における防振装置300が奏する効果を相乗的に発揮させることができる。その結果、第3脚部材532における亀裂の発生を抑制して、耐久性のより一層の向上を図ることができる。
【0075】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0076】
上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。また、各構成の大小関係は一例であり、他の関係を採用することは当然可能である。
【0077】
上記各実施の形態では、内筒部材1,301が軸心O方向に沿って同じ断面形状に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものはではなく、例えば、径方向外方へ向けて膨出される膨出部を内筒部材1,301の軸心O方向中央に設けても良い。
【0078】
上記各実施の形態では、内筒部材1,301の中間面部分15が外部に露出される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、主脚部材31及び第3脚部材32,232,332,432,532に連なるゴム膜により中間面部分15の一部または全部が覆われていても良い。
【0079】
但し、中間面部分15の全部がゴム膜により覆われる場合には、ゴム膜の厚み寸法(中間面部分15の外周面からゴム膜の表面までの距離)を略2mm以下とすることが好ましい。ゴム膜の厚み寸法を略2mm以下とすることで、ゴム膜を、第3脚部材32,232332,432,532等の弾性変形に追従せず、亀裂の進行に寄与しない部分とすることができるので、第3脚部材32等に亀裂が発生しても、その亀裂が主脚部材31まで進行することを防止できる。
【0080】
一方で、このように中間面部分15がゴム膜により覆われることを許容することで、加硫金型を製造する際の寸法公差を緩やかとして、製造コストの低減を図ることができると共に、加硫金型の使用に伴い、中間面部分15に対応する箇所が磨耗しても、その加硫金型の磨耗を許容できるので、加硫金型の耐用期間を延長して、製造コストの低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0081】
100,200,300,400,500 防振装置
1,301 内筒部材
12 主脚接続面部分
13,313 第3脚接続面部分
313a 内筒凹部
15 中間面部分
2,402 外筒部材
31 主脚部材
32,232,332,432,532 第3脚部材
232a 脚凹部
42 第2すぐり部(主脚部材と第3脚部材との間の空間)
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振装置に関し、特に、こすれ音の発生を抑制しつつ、耐久性の向上を図ることができる防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンを車両に支持する防振装置の一例として、内筒部材の外周面と外筒部材の内周面との間を、ゴム状弾性体からなり内筒部材を挟んで両側に位置する一対の脚部材により接続する構造のものが知られている(特許文献1〜4)。
【0003】
この種の防振装置を図12(a)に示す。図12(a)は、従来の防振装置800の正面図である。防振装置800は、金属材料からなる内筒部材810及び外筒部材820と、それら内筒部材810の外周面と外筒部材820の内周面との間を接続すると共にゴム状弾性体からなる一対の脚部材830と、外筒部材820の内周面から突設されるストッパ部材840と、を備える。
【0004】
この防振装置800では、ストッパ部材840の先端が内筒部材810の外周面に当接した状態で、車両の旋回などによりエンジンがロール方向へ変位すると、内筒部材810の外周面とストッパ部材840の先端との間でこすれ音が発生し、異音となる。そこで、本願出願人は、ストッパ部材840に該当する部位の先端を内筒部材810の外周面に接続して第3脚部材940とする構造の防振装置900に想到した(本願出願時において未公知)。なお、図12(b)は、防振装置900の正面図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2976968号公報
【特許文献2】特開2005−249062号公報
【特許文献3】特開2005−172242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した防振装置900では、防振装置800のストッパ部材840に比べて、第3脚部材940のゴムボリュームが増加するため、その第3脚部材940を圧縮させる方向(図12(b)下方向)への内筒部材810の変位時に、第3脚部材940に大きなひずみが発生する。そのため、第3脚部材940に亀裂が発生して、耐久性の悪化を招くという問題点があった。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、こすれ音の発生を抑制しつつ、耐久性の向上を図ることができる防振装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
請求項1記載の防振装置によれば、内筒部材の外周面と外筒部材の内周面との間が一対の主脚部材で接続される構造において、それら一対の主脚部材の間に位置する第3脚部材が、内筒部材の外周面と外筒部材の内周面との間に接続されるので、内筒部材と外筒部材との間に比較的大きな変位(例えば、エンジンのロール変位)が入力された場合であっても、こすれ音の発生を抑制することができるという効果がある。
【0009】
更に、内筒部材の外周面は、少なくとも第3脚部材が接続される部分が、軸心方向視において、内筒部材の軸心と反対側に円弧中心が位置する円弧状に湾曲して形成されるので、第3脚部材の応力を分散させて、亀裂の発生を抑制することができ、その結果、耐久性の向上を図ることができるという効果がある。
【0010】
即ち、内筒部材の外周面の内の第3脚部材が接続される外周面が、軸心方向視において、外筒部材へ向けて凸の円弧状に湾曲する構成では、第3脚部材を圧縮させる方向へ内筒部材が変位された状態において、第3脚部材の一部(即ち、内筒部材の外周面近傍であって第3脚部の幅方向中央部となる部分)に応力が集中する。
【0011】
これに対し、請求項1では、第3脚部材が接続される内筒部材の外周面を、内筒部材の軸心と反対側に円弧中心が位置する円弧状に湾曲させたので、内筒部材の外周面近傍において、第3脚部材の応力を分散させ幅方向中央部に応力が集中することを低減できる。その結果、亀裂の発生を抑制して、耐久性の向上を図ることができる。
【0012】
請求項2記載の防振装置によれば、請求項1記載の防振装置の奏する効果に加え、内筒部材の外周面であって主脚部材が連結される主脚接続面部分と第3脚部材が連結される第3脚接続面部分との間に位置する中間面部分が外部に露出するので、主脚部材と第3脚部材とを分離させることができる。これにより、第3脚部材に亀裂が発生したとしても、その亀裂が主脚部材まで進行することを防止できるという効果がある。また、請求項2によれば、中間面部分が、主脚部材および第3脚部材に連なるゴム膜に覆われる場合であっても、そのゴム膜の厚み寸法が略2mm以下とされるので、ゴム膜を亀裂の進行に寄与しない部分とすることができる。即ち、第3脚部材に亀裂が発生しても、その亀裂が主脚部材まで進行することを防止できる。
【0013】
請求項3記載の防振装置によれば、請求項2記載の防振装置の奏する効果に加え、第3脚部材は、一対の主脚部材との間の空間に面する側面にそれぞれ凹設されると共に内筒部材の中間面部分またはゴム膜に連なる一対の脚凹部を備えるので、内筒部材の外周面(第3脚接続面部分)近傍において、第3脚部材の応力を分散させて幅方向中央部に応力が集中することを低減できるという効果がある。また、一対の脚凹部により、内筒部材の外周面(第3脚接続面部分)近傍における第3脚部材の変形性を確保できるので、その分、ひずみの集中部を外筒部材側へずらすことができるという効果がある。その結果、亀裂の発生を抑制して、耐久性の向上を図ることができる。
【0014】
請求項4記載の防振装置によれば、請求項1から3のいずれか1項に記載の防振装置の奏する効果に加え、内筒部材は、第3脚部材が接続される外周面部分に凹設されると共に第3脚部材の幅方向両側にそれぞれ位置する一対の内筒凹部を備えるので、内筒部材の外周面の面積(即ち、第3脚部材が接続される接続面の面積)を増加させることができる。よって、内筒部材の外周面近傍において、第3脚部材の応力を分散させ幅方向中央部に応力が集中することの低減効果を更に発揮させることができるという効果がある。その結果、亀裂の発生を抑制して、耐久性の向上をより一層図ることができる。
【0015】
また、このように、一対の内筒凹部によって、内筒部材の外周面の面積(即ち、第3脚部材が接続される接続面の面積)を増加させることで、その分、接続面に作用する応力の抑制が可能となるので、内筒部材の外周面と第3脚部材との接続状態を維持し易くすることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は、本発明の第1実施の形態における防振装置の正面図であり、(b)は、図1(a)のIb−Ib線における防振装置の断面図である。
【図2】図1(a)に示す防振装置の一部を部分的に拡大した部分拡大正面図である。
【図3】(a)は、第2実施の形態における防振装置の正面図であり、(b)は、図3(a)のIIIb−IIIb線における防振装置の断面図である。
【図4】図3(a)に示す防振装置の一部を部分的に拡大した部分拡大正面図である。
【図5】(a)は、第3実施の形態における防振装置の正面図であり、(b)は、図5(a)のVb−Vb線における防振装置の断面図である。
【図6】図5(a)に示す防振装置の一部を部分的に拡大した部分拡大正面図である。
【図7】内筒部材の変位と第3脚部材に発生する最大主ひずみとの関係を数値計算により解析した結果を示す特性図である。
【図8】数値計算により解析した防振装置のひずみ分布を示す解析図である。
【図9】数値計算により解析した防振装置のひずみ分布を示す解析図である。
【図10】第4実施の形態における防振装置の正面図である。
【図11】第5実施の形態における防振装置の正面図である。
【図12】(a)は、従来の防振装置の正面図であり、(b)は、本願の基礎となる防振装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の第1実施の形態における防振装置100の正面図であり、図1(b)は、図1(a)のIb−Ib線における防振装置100の断面図である。また、図2は、図1(a)に示す防振装置100の一部を部分的に拡大した部分拡大正面図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、防振装置100は、自動車のエンジンを支持固定しつつ、そのエンジン振動を車体フレームへ伝達させないようにするための防振装置であり、エンジン側に取り付けられる内筒部材1と、車体側に取り付けられる外筒部材2と、これら内筒部材1及び外筒部材2を連結すると共にゴム状弾性体から構成される防振基体3とを備える。
【0019】
なお、防振装置100は、図1(a)に示す状態でエンジンを車体に支持する。即ち、防振装置100は、重力の作用方向が図1(a)上下方向に一致する向きで、エンジンを車体に支持する。そのため、防振装置100は、エンジンの重量により内筒部材1が図1(a)下方へ所定量だけ変位し、第3脚部材32が内筒部材1と外筒部材2との間で圧縮変形された状態(いわゆる1W状態)で、エンジンを車体に支持する。
【0020】
内筒部材1は、アルミニウム合金から筒状に形成される部材であり、内筒部材1の略中央部には、断面円形の貫通孔11が軸心Oに沿って貫通形成される。貫通孔11には、内筒部材1をエンジン側の部品に締結固定するためのボルトが挿通される。外筒部材2は、鉄鋼材料から筒状に形成される部材であり、内筒部材1の外周側を取り囲むと共に内筒部材1に軸心Oが略一致する状態に配置される。
【0021】
なお、内筒部材1及び外筒部材2を軸心Oに垂直な平面で切断した断面形状は、軸心Oに沿って(即ち、軸心O上のいずれの箇所でも)同じ形状とされる。よって、かかる断面形状は、図1(a)及び図2に示す軸心O方向視における形状に一致する。また、両部材1,2の材質は例示であり、内筒部材1に鉄鋼材料を、外筒部材2に鉄鋼材料を、それぞれ採用しても良く、或いは、他の材質(例えば、樹脂材料など)を採用しても良い。
【0022】
ここで、内筒部材1は、その外周面が、軸心Oを挟んで対向配置される一対の主脚接続面部分12と、それら一対の主脚接続面部分12の一端側(図1(a)下側)に位置する第3脚接続面部分13と、その第3脚接続面部分13に対して軸心Oを挟んで位置し一対の主脚接続面部分12に両端がそれぞれ連なるストッパ面部分14と、主脚接続面部分12及び第3脚接続面部分13の間に位置しそれらに連なる一対の中間面部分15とから構成される。
【0023】
なお、外筒部材2は、軸心O方向視において、長円形状に形成され、その長円形状の直線部分に対応する内周面が、内筒部材1の第3脚接続面部分13及びストッパ面部分14にそれぞれ対向する向きに配設される。
【0024】
防振基体3は、ゴム状弾性体から構成され、内筒部材1の外周面および外筒部材2の内周面に加硫接着される部材であり、内筒部材1を挟んで位置する一対の主脚部材31と、それら一対の主脚部材31の間に位置する第3脚部材32と、外筒部材2の内周面を覆う下覆設部材33及び上覆設部材34とを備える。
【0025】
主脚部材31は、軸心O方向視形状が略矩形状(即ち、両側面が略平行な直線状)に形成され、長手方向一端側が内筒部材1の外周面の内の主脚接続面部分12に接続されると共に、長手方向他端側が外筒部材2の軸心O方向視円弧状となる部分の内周面に接続される。
【0026】
ここで、内筒部材1の一対の主脚接続面部分12は、第3脚接続面部分13からストッパ面部分14へ向かうに従って、軸心O方向視における対向面間隔(図1(a)左右方向幅)が漸次大きくなる逆ハの字形状に形成される。一方、一対の主脚部材31は、主脚接続面部分12に対して長手方向が略垂直となる向きでそれぞれ接続され、軸心O方向視において略ハの字形状に形成される。
【0027】
主脚部材31の長手方向一端側には、内筒部材1のストッパ面部分14を一定の厚みで覆うゴム膜が連なっている。なお、内筒部材1のストッパ面部分14は、軸心O方向視における形状が、外筒部材2の内周面へ向けて凸の円弧状に湾曲して形成される。
【0028】
第3脚部材32は、軸心O方向視形状が略矩形状(即ち、両側面が略平行な直線状)に形成され、長手方向一端側が内筒部材1の外周面の内の第3脚接続面部分13に接続されると共に、長手方向他端側が外筒部材2の軸心O方向視直線状となる部分の内周面に接続される。
【0029】
ここで、内筒部材1の第3脚接続面部分13は、軸心O方向視において、内筒部材1の軸心Oと反対側に円弧中心が位置する円弧状に湾曲して形成される。即ち、内筒部材1は、第3脚部材32が接続される外周面部分が、外筒部材2の内周面から内筒部材1の軸心Oへ向けて凹となる形状に窪んで形成される。
【0030】
また、内筒部材1は、主脚接続面部分12と第3脚接続面部分13との間に位置する中間面部分15が外部に露出される。即ち、主脚部材31の長手方向一端側および第3脚部材32の長手方向一端側は、内筒部材1の中間面部分15には接続されず、主脚接続面部分12及び第3脚接続面部分13のみに接続される。
【0031】
下覆設部材33及び上覆設部材34は、外筒部材2の内周面を覆う部材であり、下覆設部材33は、主脚部材31の長手方向他端側および第3脚部材32の長手方向他端側に連なる。また、上覆設部材34は、一対の主脚部材31の長手方向他端側に連なり、内筒部材1のストッパ面部分14を受け止めることで、ストッパ機能時の緩衝作用を発揮する。
【0032】
なお、下覆設部材33と第3脚部材32の長手方向他端側とが連なる部分の半径は、軸心O方向視において、第3脚部材32の長手方向一端側が第3脚接続面部分13に連なる部分の半径よりも十分に大きな値(本実施の形態では5倍以上)に設定される。これにより、第3脚部材32は、長手方向他端側における幅寸法(図1(a)左右方向幅)が大きくされる。
【0033】
防振基体3には、各部材31〜34が上述のように構成されることで、主脚部材31と上覆設部材34との間の空間として形成される第1すぐり部41が軸心O方向に貫通して形成されると共に、主脚部材31と第3脚部材32との間の空間として形成される一対の第2すぐり部42がそれぞれ軸心O方向へ貫通して形成される。
【0034】
以上のように、本実施の形態における防振装置100によれば、内筒部材1の外周面と外筒部材2の内周面との間を一対の主脚部材31で接続する構造において、それら一対の主脚部材31の間に位置する第3脚部材32を、内筒部材1の外周面と外筒部材2の内周面との間に接続するので、例えば、エンジンのロール変位が入力された場合であっても、こすれ音の発生を抑制することができる。
【0035】
また、内筒部材1の外周面は、第3脚部材32が接続される第3脚部接続面部分13が、軸心O方向視において、内筒部材1の軸心Oと反対側に円弧中心が位置する円弧状に湾曲して形成されるので、第3脚部材32の応力を分散させて、亀裂の発生を抑制することができ、その結果、耐久性の向上を図ることができる。
【0036】
即ち、内筒部材1の第3脚部接続面部分13が、軸心O方向視において、例えば、内筒部材1の軸心Oと同じ側に円弧中心が位置する円弧状(外筒部材2へ向けて凸の円弧状)に湾曲する構成では(図12(b)参照)、第3脚部材32を圧縮させる方向へ内筒部材1が変位する1W状態またはそれ以上に第3脚部材32を圧縮変形させる状態において、第3脚部材32の一部(即ち、内筒部材1の第3脚部接続面部分13近傍であって第3脚部材32の幅方向(図1(a)及び図2左右方向)中央部となる部分)に応力が集中する。
【0037】
これに対し、内筒部材1の第3脚部接続面部分13を、内筒部材1の軸心Oと反対側に円弧中心が位置する円弧状に湾曲させることで、内筒部材1の第3脚部接続面部分13近傍において、第3脚部材32の応力を分散させ幅方向(図1(a)及び図2左右方向)中央部に応力が集中することを低減できる。その結果、第3脚部材32への亀裂の発生を抑制して、耐久性の向上を図ることができる。
【0038】
このように、第3脚部材32には、第3脚部接続面部分13近傍側で応力が集中しやすいところ、この応力集中箇所で仮に亀裂が発生したとしても、本実施の形態では、内筒部材1の中間面部分15を外部に露出させたので、主脚部材31の長手方向一端側と第3脚部材32の長手方向一端側とを分離させることができ、その結果、その亀裂が主脚部材31まで進行することを防止することができる。
【0039】
次いで、図3及び図4を参照して、第2実施の形態における防振装置200について説明する。第1実施の形態では、第3脚部材32の両側面が平坦面状に形成される場合を説明したが、第2実施の形態における第3脚部材232には、両側面に一対の脚凹部232aがそれぞれ設定される。なお、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0040】
図3(a)は、第2実施の形態における防振装置200の正面図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIb−IIIb線における防振装置200の断面図である。また、図4は、図3(a)に示す防振装置200の一部を部分的に拡大した部分拡大正面図である。
【0041】
図3及び図4に示すように、第2実施の形態における防振装置200は、防振基体203の第3脚部材232に、脚凹部232aが凹設される。脚凹部232aは、軸心O方向視において、円弧状に湾曲して形成される略半円形状の凹部であり、第3脚部材232の両側面(一対の主脚部材31との間の空間に面する両側の側面)にそれぞれ設定されると共に、内筒部材1の中間面部分15に滑らかに連なる。
【0042】
これにより、内筒部材1の第3脚接続面部分13近傍において、第3脚部材232の応力を分散させて幅方向(図3(a)及び図4左右方向)中央部に応力が集中することを低減できる。
【0043】
また、一対の脚凹部232aにより、内筒部材1の第3脚接続面部分13近傍における第3脚部材232の変形性を確保できるので、その分、ひずみの集中部を外筒部材2側(第3脚部材232の長手方向他端側、図3(a)及び図4下方)へずらすことができる。第3脚部材232の長手方向他端側は、下覆設部材33によりゴムボリューム(体積)が大きくされているので、かかる部分側へひずみの集中部がずれることで、亀裂の発生を抑制して、耐久性の向上を図ることができる。
【0044】
なお、脚凹部232aの半径は、第3脚部材232の幅方向寸法(図3(a)及び図4左右方向幅)の5%から35%の範囲に設定することが好ましい。また、防振脚部230を軸心Oに垂直な平面で切断した断面形状は、軸心Oに沿って(即ち、軸心O上のいずれの箇所でも)同じ形状とされる。よって、かかる断面形状は、図3(a)及び図4に示す軸心O方向視における形状に一致する。
【0045】
次いで、図5及び図6を参照して、第3実施の形態における防振装置300について説明する。第1実施の形態では、内筒部材1の第3脚接続面部分13が1の円弧により湾曲し凹凸を有さない形状に形成される場合を説明したが、第3実施の形態における内筒部材301の第3脚接続面部313は、1の円弧に複数の凹部(内筒凹部313a)が凹設された形状に形成される。なお、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0046】
図5(a)は、第3実施の形態における防振装置300の正面図であり、図5(b)は、図5(a)のVb−Vb線における防振装置300の断面図である。また、図6は、図5(a)に示す防振装置300の一部を部分的に拡大した部分拡大正面図である。
【0047】
図5及び図6に示すように、第3実施の形態における防振装置300は、内筒部材301の第3脚接続面部分313に一対の内筒凹部313aが凹設される。内筒凹部313aは、軸心O方向視において、円弧状に湾曲して形成される略半円形状の凹部であり、第3脚接続面部分313の両端にそれぞれ設定されると共に、内筒部材1の中間面部分15に滑らかに連なる。
【0048】
防振基体303の第3脚部材332は、長手方向(図5(a)上下方向)一端側が、中間面部分15を外部に露出させつつ、内筒部材301の第3脚接続面部分313であって内筒凹部313aを含む範囲に接続される。
【0049】
これにより、内筒部材301の第3脚接続面部分313の面積(即ち、第3脚部材332の長手方向一端側が接続される接続面の面積)を増加させることができる。よって、内筒部材301の第3脚接続面部分313近傍において、第3脚部材332の応力を分散させ幅方向(図5(a)及び図6左右方向)中央部に応力が集中することを低減できる。その結果、亀裂の発生を抑制して、耐久性の向上を図ることができる。
【0050】
また、このように、第3脚接続面部分313に一対の内筒凹部313aを設定することで、第3脚部材332が接続される接続面の面積(即ち、加硫接着面積)を増加させることができる。よって、その分、第3脚接続面部分313に作用する応力の抑制が可能となるので、内筒部材301の第3脚接続面部分313と第3脚部材332の長手方向一端側との接続状態を維持し易くすることができる。即ち、内筒部材301の第3脚接続面部分313から第3脚部材332の長手方向一端側が完全に分離することを抑制できる。
【0051】
なお、内筒凹部313aの半径は、第3脚部材332の幅方向寸法(図5(a)及び図6左右方向幅)の5%から35%の範囲(即ち、第2実施の形態における脚凹部232aの場合と同等)に設定することが好ましい。また、内筒部材301を軸心Oに垂直な平面で切断した断面形状は、軸心Oに沿って(即ち、軸心O上のいずれの箇所でも)同じ形状とされる。よって、かかる断面形状は、図5(a)及び図6に示す軸心O方向視における形状に一致する。
【0052】
次いで、図7から図9を参照して、第1から第3実施の形態で説明した防振装置100〜300のひずみ特性を解析した結果について説明する。図7は、数値計算により解析した内筒部材1,301の変位と第3脚部材32,232,332に発生する最大主ひずみとの関係を示す特性図である。
【0053】
特性図は、防振装置100〜300,900をモデル化して数値計算(有限要素法解析)により解析した結果を示しており、横軸が内筒部材1,301の変位の値を、縦軸が第3脚部材32,232,332に発生する最大主ひずみ[%]の値を、それぞれ表す。また、特性L1は、第1実施の形態における防振装置100(図1参照)に、特性L2は、第2実施の形態における防振装置200(図3参照)に、特性L3は、第3実施の形態における防振装置300(図5参照)に、それぞれ対応する。
【0054】
ここで、横軸の変位の方向は、無負荷状態(即ち、図1(a)、図3(a)及び図5(a)に示す状態)を原点とし、その原点位置から内筒部材1,301の第3脚接続面部分13,313が外筒部材2の内周面との間で第3脚部材32,232,332を長手方向(例えば、図1(a)上下方向)に圧縮変形させる方向(即ち、車両への装着状態における重力方向下方、例えば、図1(a)下方)に対応する。
【0055】
また、横軸の変位X1は、第3脚部材32,232,332の長手方向(例えば、図1(a)上下方向)寸法を無負荷状態時に対して75%に圧縮させる(即ち、内筒部材1の第3脚接続面部分13,313と外筒部材2の内周面との間の対向間隔を無負荷状態における対向間隔の75%とする)内筒部材1,301の変位の値に対応する。また、変位X2は、50%に対応する。
【0056】
なお、特性図には、比較のために、従来品として、防振装置900(図10参照)における内筒部材810の変位と第3脚部材940に発生する最大主ひずみとの関係を特性L4として示す。変位の方向および変位X1,X2については、防振装置100〜300の場合と同様であるので説明は省略する。
【0057】
図7に示すように、変位X1までの変位範囲では、防振装置900(特性L4)と防振装置100〜300(特性L1〜L3)との間で最大主ひずみの値に大きな差は生じず、ほぼ同じ特性を有する。
【0058】
変位X1よりも大きな変位範囲では、防振装置900における最大主ひずみの増加率に対して、防振装置100〜300における最大主ひずみの増加率が小さくなり、変位X2では、防振装置900における最大主ひずみの値に対し、防振装置100〜300における最大主ひずみの値が略30%〜35%小さな値となる。これにより、内筒部材1,301の第3脚接続面部分13、313(内筒凹部313a)や脚凹部232aによる効果が確認される。
【0059】
また、変位X1よりも大きな変位範囲では、防振装置100における最大主ひずみの値に対し、防振装置200,300における最大主ひずみの値が小さな値となり、例えば、変位X2では、防振装置100における最大主ひずみの値に対し、防振装置200,300における最大主ひずみの値が略5%小さな値となる。これにより、防振装置100の内筒部材1及び第3脚部材32に対し、内筒凹部313a及び脚凹部232aを設定したことによる効果が確認される。
【0060】
図8及び図9は、数値計算により解析した防振装置100〜300,900のひずみ分布を示す解析図である。
【0061】
解析図は、防振装置100〜300,900をモデル化して数値計算(有限要素法解析)により解析した結果を示しており、内筒部材1,301,810を変位X2(図7参照)まで変位させた状態における最大主ひずみ[%]の大きさが色の濃淡により図示される。なお、解析図では、色の濃度が高い(濃い)部分ほど、最大主ひずみの大きさが大きいことを示す。
【0062】
なお、図8(a)及び図8(b)の解析図は、図7に特性L1及び特性L2で示した第1実施の形態における防振装置100及び第2実施の形態における防振装置200にそれぞれ対応し、図9(a)及び図9(b)の解析図は、図7に特性L3及び特性L4で示した第3実施の形態における防振装置300及び比較のための防振装置900にそれぞれ対応する。図8及び図9において、符号の図示を省略する。
【0063】
図9(b)に示すように、防振装置900(図12(b)参照)では、第3脚部材940の略幅方向中央部であって内筒部材810の外周面近傍に最大主ひずみの大きな箇所が集中している。そのため、そのひずみの集中箇所に亀裂が発生し、その亀裂が進行することで、第3脚部材940の破断を招く。
【0064】
一方、防振装置100(図1参照)では、内筒部材1の第3脚部接続面部分13が、外筒部材2から離間する方向へ向けて凹の円弧状に湾曲されているので、内筒部材1の第3脚部接続面部分13近傍において、第3脚部材32の最大主ひずみが大きくなる箇所が分散され、幅方向中央部への集中が低減されている。
【0065】
防振装置200(図4参照)では、第3脚部材232に一対の脚凹部232aが凹設されているので、最大主ひずみが大きくなる箇所が、防振装置100の場合と比較して、内筒部材1の第3脚接続面部分13近傍から外筒部材2側へ離間され(図8(b)下方へずれ)、内筒部材1の第3脚接続面部分13近傍において、最大主ひずみが小さくされている。
【0066】
また、防振装置300(図5参照)では、内筒部材301の第3脚接続面部分313に一対の内筒凹部313aが凹設されているので、最大主ひずみが大きくなる箇所が、防振装置100の場合と比較して、内筒部材301の第3脚接続面部分313近傍から外筒部材2側へ離間され(図9(a)下方へずれ)、内筒部材301の第3脚接続面部分313近傍において、最大主ひずみが小さくされている。
【0067】
なお、実際の製品では、内筒部材1等が寸法公差を有し加硫金型より小さく形成される場合があると共に、加硫金型に摩耗も生じる。そのため、内筒部材1等の中間面部分15と加硫金型との間に隙間が空いた場合には、中間面部分15がゴム膜で覆われ、外部に完全に露出させられないことがある。本数値計算では、これを考慮して、中間面部分15が外部に完全に露出されたモデルの他に、内筒部材1等の中間面部分15が厚さ2mmのゴム膜で覆われた状態のモデル(図8及び図9参照)でも解析を行い、比較した。その結果、厚さ2mm以下のゴム膜であれば、解析結果に影響のないことを確認した。
【0068】
次いで、図10を参照して、第4実施の形態における防振装置400について説明する。第1実施の形態では、外筒部材2を軸心O方向視において長円形状に形成する場合を説明したが、第4実施の形態における外筒部材402は、軸心O方向視形状が円形に形成される。なお、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0069】
図10は、第4実施の形態における防振装置400の正面図である。図10に示すように、第4実施の形態における外筒部材402は、軸心O方向視における形状が、円形に形成され、内筒部材1の外周側を取り囲みつつ内筒部材1に軸心Oが略一致する状態に配置される。
【0070】
なお、防振基体403は、外筒部材402の形状の変更に伴い、第3脚部材432の長手方向(図10上下方向)寸法が長くされると共に、下覆設部材433及び上覆設部材434の厚み寸法(図10上下方向寸法)が大きくされる点のみが、第1実施の形態における防振基体3と異なる。
【0071】
このように外筒部材402を軸心O方向視において円形に形成した場合でも、第1実施の形態における防振装置100と同様の効果を得ることができる。特に、本実施の形態における防振装置400によれば、第3脚部材432の長手方向寸法を長くすることができると共に、第3脚部材432の長手方向他端側(図10下側)のゴムボリュームを下覆設部材433により大きくできるので、第3脚部材432における亀裂の発生を抑制して、耐久性のより一層の向上を図ることができる。
【0072】
次いで、図11を参照して、第5実施の形態における防振装置500について説明する。第5実施の形態における防振装置500は、第2実施の形態における防振装置200と第3実施の形態における防振装置300とを組み合わせて形成される。なお、上記各実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0073】
図11は、第5実施の形態における防振装置500の正面図である。図11に示すように、第5実施の形態における防振装置500は、第3実施の形態における防振装置300に対し、第2実施の形態における脚部凹部232aを追加して形成される。即ち、第3実施の形態における防振装置300では第3脚部材332の両側面が平坦面状に形成されたのに対し、第5実施の形態における防振装置500では第3脚部材532の両側面に第2実施の形態における一対の脚凹部232aが設定される。防振装置500は、防振装置300に対し、脚凹部232aの有無を除く他の構成は同一とされる。
【0074】
第5実施の形態における防振装置500によれば、第2実施の形態における防振装置200及び第3実施の形態における防振装置300が奏する効果を相乗的に発揮させることができる。その結果、第3脚部材532における亀裂の発生を抑制して、耐久性のより一層の向上を図ることができる。
【0075】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0076】
上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。また、各構成の大小関係は一例であり、他の関係を採用することは当然可能である。
【0077】
上記各実施の形態では、内筒部材1,301が軸心O方向に沿って同じ断面形状に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものはではなく、例えば、径方向外方へ向けて膨出される膨出部を内筒部材1,301の軸心O方向中央に設けても良い。
【0078】
上記各実施の形態では、内筒部材1,301の中間面部分15が外部に露出される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、主脚部材31及び第3脚部材32,232,332,432,532に連なるゴム膜により中間面部分15の一部または全部が覆われていても良い。
【0079】
但し、中間面部分15の全部がゴム膜により覆われる場合には、ゴム膜の厚み寸法(中間面部分15の外周面からゴム膜の表面までの距離)を略2mm以下とすることが好ましい。ゴム膜の厚み寸法を略2mm以下とすることで、ゴム膜を、第3脚部材32,232332,432,532等の弾性変形に追従せず、亀裂の進行に寄与しない部分とすることができるので、第3脚部材32等に亀裂が発生しても、その亀裂が主脚部材31まで進行することを防止できる。
【0080】
一方で、このように中間面部分15がゴム膜により覆われることを許容することで、加硫金型を製造する際の寸法公差を緩やかとして、製造コストの低減を図ることができると共に、加硫金型の使用に伴い、中間面部分15に対応する箇所が磨耗しても、その加硫金型の磨耗を許容できるので、加硫金型の耐用期間を延長して、製造コストの低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0081】
100,200,300,400,500 防振装置
1,301 内筒部材
12 主脚接続面部分
13,313 第3脚接続面部分
313a 内筒凹部
15 中間面部分
2,402 外筒部材
31 主脚部材
32,232,332,432,532 第3脚部材
232a 脚凹部
42 第2すぐり部(主脚部材と第3脚部材との間の空間)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の内筒部材と、前記内筒部材の外周側を取り囲む外筒部材と、前記内筒部材を挟んで位置し前記内筒部材の外周面と前記外筒部材の内周面との間を接続すると共にゴム状弾性体からなる一対の主脚部材と、を備えた防振装置において、
前記一対の主脚部材の間に位置し前記内筒部材の外周面と前記外筒部材の内周面との間を接続すると共にゴム状弾性体からなる第3脚部材を備え、
前記内筒部材の外周面の内の少なくとも前記第3脚部材が接続される外周面が、軸心方向視において、前記内筒部材の軸心と反対側に円弧中心が位置する円弧状に湾曲して形成されることを特徴とする防振装置。
【請求項2】
前記内筒部材の外周面であって前記主脚部材が連結される主脚接続面部分と前記第3脚部材が連結される第3脚接続面部分との間に位置する中間面部分が外部に露出するか、または、前記中間面部分が、前記主脚部材および第3脚部材に連なると共に厚み寸法を略2mm以下とするゴム膜に覆われていることを特徴とする請求項1記載の防振装置。
【請求項3】
前記第3脚部材は、前記一対の主脚部材との間の空間に面する側面にそれぞれ凹設されると共に前記内筒部材の中間面部分またはゴム膜に連なる一対の脚凹部を備えることを特徴とする請求項2記載の防振装置。
【請求項4】
前記内筒部材は、前記第3脚部材が接続される外周面部分に凹設されると共に前記第3脚部材の幅方向両側にそれぞれ位置する一対の内筒凹部を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の防振装置。
【請求項1】
筒状の内筒部材と、前記内筒部材の外周側を取り囲む外筒部材と、前記内筒部材を挟んで位置し前記内筒部材の外周面と前記外筒部材の内周面との間を接続すると共にゴム状弾性体からなる一対の主脚部材と、を備えた防振装置において、
前記一対の主脚部材の間に位置し前記内筒部材の外周面と前記外筒部材の内周面との間を接続すると共にゴム状弾性体からなる第3脚部材を備え、
前記内筒部材の外周面の内の少なくとも前記第3脚部材が接続される外周面が、軸心方向視において、前記内筒部材の軸心と反対側に円弧中心が位置する円弧状に湾曲して形成されることを特徴とする防振装置。
【請求項2】
前記内筒部材の外周面であって前記主脚部材が連結される主脚接続面部分と前記第3脚部材が連結される第3脚接続面部分との間に位置する中間面部分が外部に露出するか、または、前記中間面部分が、前記主脚部材および第3脚部材に連なると共に厚み寸法を略2mm以下とするゴム膜に覆われていることを特徴とする請求項1記載の防振装置。
【請求項3】
前記第3脚部材は、前記一対の主脚部材との間の空間に面する側面にそれぞれ凹設されると共に前記内筒部材の中間面部分またはゴム膜に連なる一対の脚凹部を備えることを特徴とする請求項2記載の防振装置。
【請求項4】
前記内筒部材は、前記第3脚部材が接続される外周面部分に凹設されると共に前記第3脚部材の幅方向両側にそれぞれ位置する一対の内筒凹部を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の防振装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−241730(P2012−241730A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109362(P2011−109362)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】
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