説明

防水ケース

【課題】 液密性(水密性)を確実に保証することができ、例えばリミットスイッチの外囲器等として適用するに好適な安価で実用性の高い防水ケースを提供する。
【解決手段】 一面に開口部を備え、電気機器または電気部品の収納空間を形成した箱形のケース本体と、このケース本体の上記開口部が設けられた面に弾性シール部材を介して装着されて上記ケース本体を密閉するカバー体とを具備したものであって、特に前記ケース本体は、前記開口部が設けられた面の周縁にフランジ部を有し、また前記カバー体は、前記ケース本体の前記開口部が設けられた面を覆う板状の本体と、この本体の縁部に設けられて前記フランジ部に係合可能な複数の爪とを備え、これらの爪を前記フランジ部を挟み込んで折り曲げて前記ケース本体にかしめ装着した構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リミットスイッチの外囲器等として用いるに好適な防水ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
回転型リミットスイッチは、例えば物体により押圧されて回動するレバーが予め設定した角度まで回動したとき、マイクロスイッチを付勢して電気信号を出力するように構成される。特に屋外等にて使用されるリミットスイッチは、レバーを弾性偏倚した状態で回動自在に支持するばね機構や、マイクロスイッチ等の電気部品を防水ケース(外囲器)に収納し、水濡れから保護するように構成される(例えば特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平8−22743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで従来のリミットスイッチにおいては、防水ケースのカバーをケース本体にねじ止めする等して開閉自在に設けており、カバーを開いて電気部品に対する結線作業等を行い得るようになっている。しかしその反面、カバーの閉じ忘れや、ケース本体にカバーを固定するねじの緩みに起因してその液密性(水密性)が損なわれ、浸水による故障の原因となっている。
【0004】
また上記ケース本体は、一般にダイカスト製の堅牢なブロック体として実現される。そして前記カバーとしては、上記ブロック体の裏面側開放面を覆って(閉塞して)設けられる金属板が用いられることが多い。しかし上述したダイカスト製のケース本体(ブロック体)にカバーをねじ止めするには、予め上記ケース本体(ブロック体)にねじ溝を刻設しておくことが必要であり、ねじ溝の刻設作業が製造コスト増大の要因となっている。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、液密性(水密性)を確実に保証することができ、リミットスイッチの外囲器等として適用するに好適な安価で実用性の高い防水ケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するべく本発明に係る防水ケースは、一面に開口部を備え、電気機器または電気部品の収納空間を形成した箱形のケース本体と、このケース本体の上記開口部が設けられた面に弾性シール部材を介して装着されて上記ケース本体を密閉するカバー体とを具備したものであって、
特に前記ケース本体は、前記開口部が設けられた面の周縁にフランジ部を有し、また前記カバー体は、前記ケース本体の前記開口部が設けられた面を覆う板状の本体と、この本体の縁部に設けられて前記フランジ部に係合可能な複数の爪とを備え、これらの爪を前記フランジ部を挟み込んで折り曲げて前記ケース本体にかしめ装着されることを特徴としている。
【0007】
好ましくは請求項2に記載するように前記ケース本体は、ダイカスト製の金属ブロック体からなり、前記開口部が設けられた面とその反対側の面との間を貫通するねじ止め用の貫通孔を備えたものとして実現される。また請求項3に記載するように前記弾性シール部材は、前記ケース本体の前記開口部が設けられた面を覆う大きさの板状のゴム(例えば耐候性に優れたクロロプレンゴム)からなる。また請求項4に記載するように、前記ケース本体は、前記開口部が設けられた面とは異なる面に設けられた孔部に、その内部に収納した電気機器または電気部品に接続されたコネクタ(例えばコンジットコネクタ)を液密にシールして装着したものとして実現される。
【発明の効果】
【0008】
このような構成の防水ケースによれば、ケース本体に対してカバー体がかしめ装着されているので、不本意にカバー体が開けられることがなくなる。従ってケース本体の開口部が設けられた面に弾性シール部材を介してカバー体を設け、その間のシール性を予め確保しておけば防水ケースの液密性(水密性)を確実に保証することができる。また上記カバー体を裏面としてケース本体を所定の設置面にねじ止め固定して用いる場合、ねじ止めによるケース本体の押圧によって前記弾性シール部材が押し潰され、ケース本体のフランジ部を挟み込んで該ケース本体にかしめられたカバー体の爪が上記フランジ部から浮き上がったとしても、弾性シール部材がカバー体を介して設置面とケース本体との間に強く挟み込まれるので、その間のシール性が確実に保持される。従って、例えばこの防水ケースを外囲器として用いたリミットスイッチの使用形態に拘わることなく、その液密性(水密性)を確保することができるので、水濡れ等の不具合を確実に防止することができる。
【0009】
また上記構成によれば、ケース本体にカバー体をかしめるだけなのでケース本体にねじ溝を刻設する必要がない。従ってケース本体としてダイカスト性のブロック体を用いる場合であってもその製造コストを安価に抑えることが可能となる等の実用上多大なる効果が奏せられる。またケース本体の開口部が設けられた面とは異なる面に設けられた孔部に、その内部に収納した電気機器または電気部品に接続されたコネクタ(例えばコンジットコネクタ)を液密にシールして装着しておけば、カバー体を開けることなくその電気的接続を容易に行い得るので、前述した如くカバー体をケース本体にかしめて開閉不能に装着しても、何等の不具合も生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る防水ケースについて、この防水ケースを外囲器として用いたリミットスイッチを例に説明する。
図1はリミットスイッチの概略構成を示す分解斜視図で、1は外囲器(防水ケース)の主体部をなすケース本体、2はこのケース本体1の開口部が設けられた下面に装着されるカバー体である。ケース本体1は、下面側を開口してその内部に電気部品等の収納空間を形成した、例えばアルミダイカスト製の箱形のブロック体からなる。カバー体2は、このケース本体1の下面側に開口された開口部を覆って、該ケース本体1の下面に弾性シール部材3を介して装着される、例えばステンレス鋼製の板状体からなる。尚、上記弾性シール部材3は、例えば耐候性に優れたクロロプレンゴムからなる。
【0011】
ところでリミットスイッチは、例えばトーションばね(図示せず)により回動付勢されて中立位置に保持されているレバー11が、その先端を検出対象物体により押圧される等して予め設定された角度まで回動したとき、マイクロスイッチ12を付勢してその電気接点を導通させるように構成される。この実施形態においては上述したトーションばね組み込んで構成されたレバー復帰機構13の主体部が前記ケース本体1の内部(収納空間)に組み込まれ、その回動軸13aをケース本体1の上面を貫通する軸孔1aを挿通させて外部に突出させて設けられる。前述したレバー11は、上記ケース本体1の上面に突出した前記回転軸13aにその基端部が装着されて回動変位可能に設けられる。
【0012】
尚、レバー11の先端部にはローラ14が回転自在に装着されており、このローラ14を介して検出対象物体がレバー11に当接して該レバー11を回動させる。またレバー11の中立位置は、該レバー11の前記回転軸13aへの取り付け角度を調節することによって任意に設定される。またケース本体1への回転軸13aの装着は、周知の液密シール型軸受機構を介して行われる。
【0013】
一方、前記レバー復帰機構13の回転軸13aには、例えば円盤の外周縁の一部を直線状に切り欠いたカム板15が装着されている。前述したマイクロスイッチ12は、進退可能に設けられた作動片(可動突起)をスライダ16を介して前記カム板15に対峙させて前記ケース本体1の内部(収納空間)に組み込まれる。そしてマイクロスイッチ12は、前記レバー11が回動したとき、これに伴って回動する前記カム板15によりスライダ16を介して上記作動片(可動突起)を押圧されることで付勢される。このマイクロスイッチ12の付勢による電気接点の導通状態は、該マイクロスイッチ12に結線された信号線を介して外部機器(図示せず)により検出される。ちなみにこの実施形態においては、前記ケース本体1の側壁面にコネクタ17が装着されており、このコネクタ17を介して上記マイクロスイッチ12と外部機器とが電気的に接続されるようになっている。このコネクタ17としては結線作業性に優れ、また耐候性に優れたナイロン製の、いわゆるコンジット型のものが用いられる。尚、このコネクタ17の取付部も、水密にシールされることは言うまでもない。
【0014】
さて上述したリミットスイッチの外囲器の主体部をなすケース本体1は、特に詳述しないが前述したレバー復帰機構13を組み込む空間部と前記マイクロスイッチ12を組み込む空間部とを区画して設け、これらの空間部を連通する位置に前述したスライダ16を組み込むものとなっている。そしてケース本体1は、図1におけるA-A線に沿う断面構造を図2に示すように、上記2つの空間部を区画する部位の互いに対向する周壁を肉厚部とし、これらの肉厚部に該ケース本体1の上下面を貫通する長溝状の取り付け孔(貫通孔)4を設けている。またケース本体1の下面側周縁には、その側方に突出するフランジ部5が複数箇所に亘って設けられている。これらのフランジ部5は、後述するように前記カバー体2のかしめ装着部として機能する。
【0015】
これに対して前述した弾性シール部材3は、上記ケース本体1の下面形状よりも僅かに狭い形状のものからなり、ケース本体1の下面周縁に沿ってその内側に設けられた段差部に嵌め込まれるようになっている。特にこの弾性シール部材3は、上記段差部の深さよりも厚い肉厚シート状のものからなり、ケース本体1の下面から僅かに突出させて該下面に嵌め込まれる。
【0016】
このような弾性シール部材3を介して前記ケース本体1の下面に装着される前記カバー体2は、前記ケース本体1の下面形状とほぼ同等な大きさのものからなり、特にその両側部には該ケース本体1の側部に位置付けられる位置決め用の立ち上がり辺2aが設けられている。またこのカバー体2の周縁部には、前述したケース本体1のフランジ部5に対応して舌片状の複数の爪(かしめ片)6が設けられている。これらの各爪(かしめ片)6の長さは、前記フランジ部5の厚みよりも長く設定されている。
【0017】
このような複数の爪(かしめ片)6を備えたカバー体2は、前述したように弾性シール部材3を介して前記ケース本体1の下面に位置合わせされ、上記爪6の先端部を前記フランジ部5の上面側に向けてそれぞれ折曲することで、図2に示すように前記フランジ部5の縁部をそれぞれ挟み込んで前記ケース本体1にかしめ装着される。即ち、この外囲器(防水ケース)においては、ケース本体1に対してカバー体2の爪6を折り曲げることにより、該カバー体2がケース本体1に取り外し不能にかしめ装着される。尚、カバー体2および弾性シール部材3には、ケース本体1に設けられた長溝状の取り付け孔(貫通孔)4に対応して、固定用の取付孔がそれぞれ設けられている。
【0018】
かくしてこのような構造の防水ケースによれば、ケース本体1に対してカバー体2がかしめ装着されるので、従来構造のようにケース本体にカバー体をねじ止めするためのねじ溝を刻設する必要がない。換言すればケース本体1をダイカスト成形により簡易に製作すると共に、カバー体2をプレス加工等により簡易に製作し、これらをかしめ加工だけにより簡易に組み立てることができる。従ってリミットスイッチの外囲器として用いられる防水ケースを、安価で簡単な構造とすることができる。
【0019】
また上述した如くカバー体2をケース本体1にかしめ装着した防水ケースにあっては、従来の防水ケースのように取り外し可能なねじがないので、不本意にカバー体2を開けてしまうような不具合を招来する虞がない。逆にカバー体2を開けるには、ケース本体1にカバー体2を固定している(かしめ装着している)爪6を意図的にこじ開けることが必要となる。従ってその液密性を確実に保証することができる。
【0020】
更には前述した長溝状の取り付け孔(貫通孔)4を利用して上述した構造のリミットスイッチを、ひいては防水ケースをねじ20を用いて所定の設置場所(例えば基台21)に固定するような場合、図3に示すようにねじ20による締め付けによってケース本体1が留次20の頭部と基台21との間に挟み込まれて、フランジ部5の縁部にかしめられた爪6との間に隙間Δが生じる虞がある。しかしこの場合であっても、逆に上記締め付けによってケース本体1と弾性シール部材3との間、更には弾性シール部材3とカバー体2との間のシール性がより強固に確保されることになるので、上述した爪6の浮き上がりがそのシール性に支障を及ぼすことがない。故に、ねじ20を用いた防水ケースの基台21への固定時においても、その液密性を確実に保証することができる。
【0021】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。ここでは防水ケースをリミットスイッチの外囲器として用いる場合を例に説明したが、その他の機器の外囲器として用いる場合にも同様に適用可能である。またカバー体2における爪6の数やその長さはケース本体1の大きさ等に応じて定めれば良いものであり、要は本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る防水ケースを外囲器として用いたリミットスイッチの概略構造を示す分解斜視図。
【図2】図1に示すリミットスイッチにおける外囲器(防水ケース)の断面構造を示す図。
【図3】図1に示すリミットスイッチをねじを用いて基台に取り付けた状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0023】
1 ケース本体
2 カバー体
3 弾性シール部材
5 フランジ部
6 爪(かしめ片)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に開口部を備え、電気機器または電気部品の収納空間を形成した箱形のケース本体と、このケース本体の上記開口部が設けられた面に弾性シール部材を介して装着されて上記ケース本体を密閉するカバー体とを具備し、
前記ケース本体は、前記開口部が設けられた面の周縁にフランジ部を有し、
前記カバー体は、前記ケース本体の前記開口部が設けられた面を覆う板状の本体と、この本体の縁部に設けられて前記フランジ部に係合可能な複数の爪とを備え、これらの爪を前記フランジ部を挟み込んで折り曲げて前記ケース本体にかしめ装着されることを特徴とする防水ケース。
【請求項2】
前記ケース本体は、ダイカスト製のブロック体からなり、前記開口部が設けられた面とその反対側の面との間を貫通するねじ止め用の貫通孔を備えたものである請求項1に記載の防水ケース。
【請求項3】
前記弾性シール部材は、前記ケース本体の前記開口部が設けられた面を覆う大きさの板状のゴムからなる請求項1に記載の防水ケース。
【請求項4】
前記ケース本体は、前記開口部が設けられた面とは異なる面に設けられた孔部に、その内部に収納した電気機器または電気部品に接続されたコネクタを液密にシールして装着したものである請求項1に記載の防水ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−87879(P2007−87879A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−278000(P2005−278000)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】