説明

防水ジョイントコネクタ

【課題】端子の数にかかわらず、これらの端子同士の電気的接続を簡素な構造で確実に行うことが可能な防水ジョイントコネクタを提供する。
【解決手段】防水ジョイントコネクタJCは、接続用導体10と、ハウジング20と、蓋部材30とを備える。接続用導体10は、各端子40と嵌合される複数の嵌合部12を有し、予めハウジング20内に保持される。ハウジング20は、複数の端子挿入部26と、その反対の側に開口する蓋部材挿入部28とを有する。蓋部材30は、蓋部材挿入部28を塞ぐ蓋部32と嵌合検知部34とを有する。嵌合検知部34は、嵌合不良の端子40により弾性変位状態にある端子係止部27と当接することにより、蓋部材30が蓋部材挿入部28に装着されるのを阻む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用ワイヤハーネス等に含まれる複数の防水用電線同士を電気的に接続するための防水ジョイントコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の防水用電線同士を電気的に接続するための防水ジョイントコネクタとして、例えば特許文献1に記載されるものが知られている。この防水ジョイントコネクタを図9に示す。
【0003】
当該防水ジョイントコネクタは、電線70に装着された端子72同士を電気的に接続するためのもので、ハウジング80と、蓋部材であるゴム栓体90とを有する。
【0004】
前記ハウジング80は、特定方向に開口してその開口から前記各端子72が挿入可能な端子挿入部82と、その挿入された端子を係止するための可撓支持片84と、前記端子挿入部82と反対の側に開口して当該開口から前記ゴム栓体が挿入可能な栓体収容室86とを有する。前記端子挿入部82の内周面には、前記電線70に装着された防水栓74の外周面が密着する。
【0005】
前記ゴム栓体90には、これと一体に、複数の接触部92及び挿入検知バー94を一体に有する短絡金具96が設けられている。前記各接触部92は、前記栓体収容室86内へのゴム栓体90の挿入に伴い、前記可撓支持片84により係止された端子72とそれぞれ嵌合することにより、これらの端子72同士を電気的に接続する。前記挿入検知バー94は、前記端子72の挿入が不完全である場合に前記可撓支持片84と当接して前記栓体収容室86内への前記ゴム栓体90の挿入を妨げることにより、当該不完全挿入の検知を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平4−27588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記図9に示される防水ジョイントコネクタでは、前記ハウジング80内へのゴム栓体90の挿入抵抗が大きいために、端子72の挿入が完全であるか否かの判別が難しく、また、可撓支持部84による端子係止力の設定が難しいという課題がある。
【0008】
具体的には、前記ゴム栓体90に端子72同士を短絡させるための短絡金具96が一体に設けられ、このゴム栓体90の前記ハウジング80内への挿入時に前記短絡金具96の各接触部92が前記各端子72に同時に嵌合されるので、その嵌合抵抗がそのままゴム栓体90の挿入抵抗に加算され、しかもその抵抗は前記端子72の数が多いほど大きくなる。このように、全ての端子72が完全に挿入された正常状態においてもゴム栓体90には大きな挿入抵抗が働くので、その大きな抵抗が、前記各端子72の嵌合抵抗によるものであるのか(すなわち正常時における抵抗であるのか)、あるいは端子72の不完全挿入により挿入検知バー94が端子係止片に当接していることによるものであるのかの判別が難しく、当該判別は前記嵌合抵抗が大きくなるほど困難になる。
【0009】
一方、ハウジング80側の可撓支持片84は、前記の嵌合抵抗による反力に抗して前記端子72を係止しなければならないので、その係止力を大きく設定せざるを得ず、これに伴うハウジング80の大型化が必至となる。逆に、当該係止力が不十分である場合、各端子72と各嵌合部92とが嵌合する前にその抵抗によって当該端子72が可撓支持片84から離脱し、これにより当該端子72の挿入確実性が却って低下するおそれがある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑み、防水用電線及び端子の数にかかわらず、当該端子同士の電気的接続を簡素な構造で確実に行うことが可能な防水ジョイントコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、端末に端子が設けられ、かつ、この端子の後ろ側に防水栓が設けられた複数の防水用電線同士を電気的に接続するための防水ジョイントコネクタであって、前記各端子と嵌合可能な形状を有し、その嵌合方向と直交する方向に配列される複数の嵌合部と、これらの嵌合部同士を相互連結する連結部とを一体に有する接続用導体と、特定方向に開口してその開口から前記各端子及びその後ろ側の前記防水栓が挿入可能であり、かつ、その防水栓と密着可能な形状の内周面を有する複数の端子挿入部と、これらの端子挿入部と反対の向きに開口する蓋部材挿入部と、前記端子挿入部の開口から予め定められた正規嵌合位置まで挿入された端子がその挿入方向に沿って前記各嵌合部と嵌合されるように前記接続用導体を直接保持する導体保持部と、前記端子挿入部への前記端子の挿入に伴ってこの端子から当該挿入方向と直交する方向に沿って退避する向きに弾性変位し、かつ、当該端子が前記正規嵌合位置に到達することにより復帰方向に変位して当該端子を係止する端子係止部とを有するハウジングと、前記接続用導体および前記ハウジングとは別の部材で構成され、前記蓋部材挿入部の開口を塞ぐように当該蓋部材挿入部に挿入されて前記ハウジングに装着されることが可能な形状を有する蓋部材とを備え、前記蓋部材は、前記蓋部材挿入部を塞ぐ形状を有する蓋部と、この蓋部から前記ハウジングの外壁と当該ハウジングの導体保持部に保持された接続用導体の連結部との間を通過して前記各端子係止部に向かうように突出する嵌合検知部とを有し、この嵌合検知部は、いずれかの端子が前記正規嵌合位置の手前に位置することにより当該端子に対応する端子係止部が当該端子から退避する向きに一定以上弾性変位しているときにこの端子係止部と当接することにより当該蓋部材の前記蓋部材挿入部への装着を阻む形状を有するものである。
【0012】
このジョイントコネクタでは、複数の嵌合部及びこれらを連結する連結部を含む接続用導体が予めハウジング側の導体保持部に保持され、当該各嵌合部と電線側の端子との嵌合作業がなされてから前記ハウジングの蓋部材挿入部に蓋部材が挿入されることが可能であるため、前記端子の数にかかわらず前記蓋部材の挿入抵抗を低く抑えることができる。このことは、前記各端子の嵌合検知を容易にして当該端子同士の電気的接続を確実にする。
【0013】
具体的に、前記各端子は、前記ハウジングの端子挿入部から当該ハウジング内に挿入されることにより、当該端子に対応する嵌合部と嵌合されることが可能である。このとき、前記ハウジングの端子係止部は前記端子から退避する方向に弾性変位することにより当該端子の挿入を許容し、この端子が正規嵌合位置まで挿入されたときに復帰方向に変位して当該端子を係止する。もし当該端子が当該正規嵌合位置まで挿入されない不完全挿入状態にあるときは、前記端子係止部は復帰方向に変位できずに一定以上弾性変位したままの状態となる。
【0014】
このようにして各端子と各嵌合部との嵌合作業が行われた後に前記ハウジングの蓋部材挿入部に前記蓋部材が挿入される。このとき、当該蓋部材の嵌合検知部は、前記接続用導体の連結部とハウジングの外壁との間を通って前記端子係止部側に至るが、いずれかの端子が正規嵌合位置まで十分に挿入されていない場合にはその端子に対応する端子係止部(すなわち復帰方向に変位していない端子係止部)と接触することにより当該蓋部材の当該蓋部材挿入部への装着を阻む。この装着の阻止が、作業者に挿入が不十分な端子の存在を知らせることができる。
【0015】
しかも、この蓋部材と前記接続用導体とは別の部材であって、当該接続用導体は予め前記ハウジング内に保持されており、当該接続用導体の各嵌合部と前記端子との嵌合作業が終了した後に前記蓋部材が挿入されることから、従来のように蓋部材と接続用導体とが一体にハウジングに挿入されるものと異なり、当該接続用導体の各嵌合部と各端子との嵌合抵抗が前記蓋部材の挿入抵抗に加算されることがない。従って、作業者は、前記嵌合検知部と前記端子係止部との当接による蓋部材の挿入抵抗の増大を容易に判別することができる。すなわち、嵌合不良の検知が容易となる。
【0016】
前記蓋部材の嵌合検知部は、前記端子が前記正規嵌合位置に到達して当該端子を前記端子係止部が係止している状態では、この端子係止部と前記ハウジングの外壁との間に進入することにより当該端子係止部を拘束する形状を有することが、より好ましい。この形状は、当該嵌合検知部に、嵌合検知機能だけでなく、前記端子係止部が係止解除方向に変位するのを阻止して端子の係止をより確実にする二重係止機能を付与することができる。
【0017】
また、前記蓋部材は、前記嵌合検知部を前記端子係止部と前記ハウジングの外壁との間に導くように前記接続用導体の連結部による案内を受ける被案内部を含むことが、より好ましい。この被案内部は、前記ハウジング内における前記接続用導体の連結部の存在を有効に利用して、前記嵌合検知部をその嵌合検知に適した位置に導くことができる。
【0018】
また、前記蓋部材は、前記接続用導体の連結部に当接することによって当該蓋部材の前記蓋部材挿入部への過度の挿入を阻止する導体当接部を含むことが、より好ましい。この導体当接部は、前記ハウジング内における前記接続用導体の連結部の存在を利用して前記蓋部材の過度の挿入を確実に防ぐことができる。
【0019】
前記蓋部材の具体的な構造は適宜設定が可能である。例えば、その蓋部が、蓋部本体と、この蓋部本体の外周面上に装着され、弾性変形状態で前記蓋部材挿入部の内周面と全周にわたり密着するシール部材とを有し、前記蓋部本体と前記嵌合検知部とが前記シール部材よりも硬質の樹脂により構成されているものでは、当該嵌合検知部に端子嵌合検知に必要な剛性を確保しながら、前記蓋部本体の外周面上に装着されるシール部材の弾性変形を利用して当該シール部材と前記蓋部材挿入部の内周面との密着を確実にすることにより、高い防水機能も確保することができる。さらに、前記蓋部本体と前記嵌合検知部とが前記シール部材よりも硬質の樹脂により一体成形されているものでは、当該一体成形により蓋部材の部品点数を削減できる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明に係る防水ジョイントコネクタによれば、前記端子の数にかかわらず前記蓋部材の挿入抵抗を低く抑えることができ、これにより、前記各端子の嵌合検知を容易にして当該端子同士の電気的接続を確実にすることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る防水ジョイントコネクタの分解斜視図である。
【図2】前記防水ジョイントコネクタにより端子同士を接続した状態を示す斜視図である。
【図3】前記防水ジョイントコネクタの内部構造を示す垂直断面を含む斜視図である。
【図4】前記防水ジョイントコネクタの接続用導体及びハウジングの構造を示す水平断面を含む斜視図である。
【図5】前記ハウジング内を蓋部材挿入側から見た斜視図である。
【図6】前記ハウジングの蓋部材挿入部内に蓋部材が挿入される途中の状態を示す断面正面図である。
【図7】前記ハウジング内の正規嵌合位置まで端子が挿入された状態を示す断面正面図である。
【図8】前記ハウジング内の正規嵌合位置の手前で端子の挿入が止まっている状態を示す断面正面図である。
【図9】従来の防水ジョイントコネクタの断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、複数本の電線(防水用電線)50と、これらを相互接続するための防水ジョイントコネクタJCとを示す。前記各電線50は、例えば車載用ワイヤハーネスに含まれるもので、各電線50の端末にそれぞれ端子40が設けられ、これらの端子40同士が前記防水ジョイントコネクタJCを用いて電気的に接続される。
【0024】
前記各電線50は、導体及びこれを覆う絶縁被覆を有する。各電線50の端末では前記絶縁被覆が部分的に除去されることにより導体が露出し、その露出した導体に前記端子40が接続されている。この端子40は、雌型の電気接触部42と、その後ろ側に形成された電線圧着部44とを一体に有する。電線圧着部44は、周知の圧着端子と同様、図示の基板と、この基板の幅方向両側から延びる図略の一対のバレルとを有し、これらのバレルが前記の露出した導体を抱き込むようにして当該導体に圧着される。
【0025】
さらに、前記各端子40の後ろ側の位置には防水栓46が設けられる。これらの防水栓46はゴム等の軟質材料からなり、前記電線50の絶縁被覆の外周面上に固着される。
【0026】
図1及び図3に示すように、前記防水ジョイントコネクタJCは、前記端子40同士を電気的に接続する媒体となる接続用導体10と、これを収容するハウジング20と、これら接続用導体10及びハウジング20とは別の部材として構成された蓋部材30とを備える。
【0027】
この実施の形態に係る接続用導体10は、金属板を所定形状に打ち抜くことにより形成されており、複数本の嵌合部12と、これらの嵌合部12同士を連結する連結部14とを一体に有する。前記各嵌合部12は、前記各端子40の雌型電気接触部42と嵌合可能な雄型の電気接触部すなわちタブであり、その嵌合方向(嵌合部12の軸方向)と直交する方向に配列される。前記連結部14は、平板状をなし、前記各嵌合部12の後端(図1及び図3では左端)に一体につながる。
【0028】
前記ハウジング20は、前記接続用導体10を格納可能な形状を有し、その全体が合成樹脂等の絶縁材料により一体に成形されている。具体的に、このハウジング20は長手方向の両側に開口する略筒状の外壁22を含むとともに、左右一対の導体保持部24と、複数の端子挿入部26及び端子係止部27と、蓋部材挿入部28とを有する。
【0029】
前記導体保持部24は、前記外壁22の長手方向中間部位の左右内側面上に形成される。各導体保持部24は、前記接続用導体10の連結部14の長手方向(すなわち前記嵌合部12の配列方向と平行な方向)の両端部をそれぞれその板厚方向に挟むようにして直接保持する形状を有する。具体的には、これらの導体保持部24に挟み込まれるように前記連結部14の両端部が圧入される。その一方、前記連結部14の板厚方向と平行な方向(図1及び図3では上下方向)には、当該連結部14とハウジング20の外壁22との間に隙間が確保されている。
【0030】
前記端子挿入部26は、前記各端子40毎に形成されている。各端子挿入部26は、前記ハウジング20の長手方向の一方(図1及び図3,4では右方向)に開口し、その開口から当該端子挿入部26内に前記端子40が挿入可能な形状を有する。各端子挿入部26の奥側半部は、前記接続用導体10の嵌合部12を格納する一方、各端子挿入部26の開口側半部は円筒状内周面を有する円筒部26aを構成する。各円筒部26aは円形の開口を有し、この開口から挿入された端子40がそのまま奥側の嵌合部12に嵌入される。そして、この嵌入と同時に、当該端子40の後ろ側に設けられた防水栓46の外周面が当該防水栓46の弾性変形を伴いながら前記円筒部26aの内周面に全周にわたり密着するように、前記各円筒部26aの内径が設定されている。
【0031】
前記端子係止部27は、前記各端子挿入部26毎に形成されている。各端子係止部27は、いわゆるランスであり、ハウジング20の天壁(外壁22の上側部分)のうち前記端子挿入部26の端子挿入方向の中間部位から前記連結部14側に向かって延びる片持ちばり状をなす。
【0032】
各端子係止部27の自由端部は上下方向すなわち前記端子40の挿入方向と直交する方向に弾性変位(撓み変位)可能な係止部27aを構成する。この係止部27aは、端子40の挿入時には当該端子40の前記被係止突起45と接触することにより当該端子40から前記方向に沿って退避するように(図では上向きに)弾性変位し、かつ、当該端子40が前記正規嵌合位置に到達した時点で復帰方向に変位して前記被係止突起45に対して端子挿入側から当接することにより、その抜け止め(係止)を行う。この係止のための係止部27aの位置は、端子係止部27が完全に復帰した位置(すなわち端子係止部27が無変形であるときの位置)であってもよいし、当該端子係止部27の弾性変位が少し残っている位置であってもよい。
【0033】
前記蓋部材挿入部28は、前記外壁22のうち前記導体保持部24を挟んで前記端子挿入部26と反対の側の部分により構成される。つまり、この蓋部材挿入部28は前記端子挿入部26と反対の向きに開口する略角筒状をなし、この開口から前記蓋部材30がハウジング20内に挿入されることを許容する形状を有する。この蓋部材挿入部28の開口側端部には、前記蓋部材30を係止するための上下一対の係止穴28aが設けられている。
【0034】
前記蓋部材30は、前記蓋部材挿入部28の開口を塞ぐように当該蓋部材挿入部に挿入されることにより前記ハウジング20に装着されるもので、蓋部32と嵌合検知部34とを有する。蓋部32は、前記蓋部材挿入部を塞ぐ形状を有するもので、蓋部本体35と、ゴム等の弾性材料からなるシール部材36とにより構成される。
【0035】
前記蓋部本体35は、前記嵌合検知部34とともに、前記シール部材36よりも硬質の樹脂により一体成形されたもので、前記蓋部材挿入部28の内周面よりも一回り小さい外周面を有する外側部35aと、この外側部35aよりも奥側でかつ当該外側部35aよりもさらに一回り小さい外周面を有するシール部材装着部35bとを有し、前記外側部35aの外周面からは被係止爪35cが突出する。この被係止爪35cは、図3および図7に示されるように蓋部材30がハウジング20の蓋部材挿入部28に完全に挿入された状態で当該蓋部材挿入部28の係止穴28aに嵌って当該蓋部材挿入部28に係止される位置に形成されている。
【0036】
前記シール部材36は、前記シール部材装着部35bの外周面上に固定される。このシール部材36の外周部は、蓋部材30の挿入方向に並ぶ複数本の突条36aを有する。各突条36aは、蓋部材30の全周にわたり連続して外向きに突出する形状を有し、当該蓋部材30の挿入の際に弾性圧縮変形しながら前記蓋部材挿入部28の内周面に全周にわたって圧接することにより、ハウジング20の外部から内部への水の浸入を阻止する。
【0037】
前記嵌合検知部34は、この実施の形態では、蓋部材30の幅方向(嵌合部12の配列方向と平行な方向)に連続する平板状をなし、前記蓋部本体35からハウジング20の奥側に向かって突出する。具体的に、当該嵌合検知部34の形状及び位置は当該嵌合検知部34が次のような作用を奏するように設定される。
【0038】
1)前記蓋部材挿入部28への前記蓋部材30の挿入時に図3及び図6〜図8に示されるように前記ハウジング20の外壁22と当該ハウジング20の導体保持部24に保持された接続用導体10の連結部14との間を通過して前記各端子係止部27に至る。
【0039】
2)図7に示すように端子40が正規嵌合位置(当該端子40の電気接触部42と接続用導体10の嵌合部12とが十分に嵌合する位置)まで挿入されて端子係止部27が弾性復帰している状態では、当該端子係止部27の上面とハウジング20の天壁(外壁22の上側部分)との間に進入することにより当該端子係止部27を上側から拘束する。すなわち、当該端子係止部27が端子40から逃げる方向すなわち係止を解除する方向に弾性変位するのを規制する。
【0040】
3)図8に示すように端子40の挿入が不十分で当該端子40が正規嵌合位置(当該端子40の電気接触部42と接続用導体10の嵌合部12とが十分に嵌合する位置)まで至っておらず、そのために端子係止部27が弾性復帰していない状態では、蓋部材30が装着位置(被係止爪35cが蓋部材挿入部28に係止される位置)まで挿入される前に前記端子係止部27と当接することにより、当該蓋部材30の装着を阻む。
【0041】
なお、この実施の形態に係るハウジング20では、その天壁に図5〜図8に示されるような嵌合検知部案内部23が下向きに突設される。この嵌合検知部案内部23は、前記蓋部材30の挿入時に前記嵌合検知部34の上面と接触することにより、その高さ位置を安定させる。一方、前記蓋部材30には前記嵌合検知部34の下面から下方に膨出する被案内部37が形成され、この被案内部37は、前記嵌合検知部34が前記端子係止部27と前記ハウジング20の天壁との間に挿入されるように前記接続用導体10の連結部14の上面からの案内を受ける。
【0042】
さらに、前記被案内部37の下側には導体当接部38が形成され、この導体当接部38は前記蓋部材30が正規の装着位置よりも深く挿入されようとしたときに前記接続用導体10の連結部14に当接することによって当該蓋部材30の過度の挿入を阻止する。
【0043】
次に、この防水ジョイントコネクタJCを用いて複数の端子40同士を電気的に接続する方法を説明する。
【0044】
まず、防水ジョイントコネクタJCにおけるハウジング20の各端子挿入部26にこれに対応する端子40が挿入される。この挿入方向に沿い、当該端子40の電気接触部42が前記ハウジング20内に予め保持されている接続用導体10の対応する嵌合部12に嵌合される。
【0045】
この挿入の過程において、前記端子の被係止突起45がハウジング20の端子係止部27の係止部27aと接触し、その接触時に当該係止部27aを上向き(すなわち端子40から退避する向き)に弾性変位させる。換言すれば、前記係止部27aは当該退避の向きに弾性弾性変位することにより当該端子40の挿入を許容する。この係止部27aは、前記端子40が図7に示される正規嵌合位置まで挿入された段階で復帰方向に変位して前記被係止突起45を係止するが、図8に示されるように当該端子40が当該正規嵌合位置まで挿入されない不完全挿入状態にあるときは復帰方向に変位できず、よって前記退避方向に一定以上弾性変位した状態にとどまる。
【0046】
このようにして各端子40と各嵌合部12との嵌合作業が全て行われた後、図6に示すように、前記ハウジング20の蓋部材挿入部28に前記蓋部材30がその嵌合検知部34側から挿入される。この嵌合検知部34は、被案内部37が接続用導体10の連結部14から受ける案内と、当該嵌合検知部34が嵌合検知部案内部23から直接受ける案内とにより、前記連結部14とハウジング20の外壁22との間を通って端子係止部27側に導かれる。
【0047】
このとき、全ての端子40が図7に示される前記正規嵌合位置まで十分に挿入されていれば、前記嵌合検知部34は全ての端子係止部27と前記嵌合検知部案内部23との間に進入することができる。このため、蓋部材30はその被係止爪35cが蓋部材挿入部28の係止穴28aに嵌り込む正規の装着位置まで挿入されることが許容される。この装着状態において、前記嵌合検知部34は前記各端子係止部27の上方に位置して当該端子係止部27が上向きすなわち係止解除の向きに弾性変位するのを規制する。すなわち端子40の二重係止機能を発揮する。
【0048】
その一方、前記端子40のうちのいずれかが図8に示されるように前記正規嵌合位置まで十分に挿入されていない場合、前記嵌合検知部34は、蓋部材30が前記装着位置まで挿入される前に、前記の不完全挿入状態にある端子40により上向きに弾性変位させられている端子係止部27と当接し、これにより、当該蓋部材30のそれ以上の挿入(すなわち装着)を阻止する。このことから、作業者は、いずれかの端子40の挿入が不十分であることを認識することができる。
【0049】
ここで、前記図9に示される従来のコネクタと異なる点は、接続用導体10が蓋部材30側に設けられているのではなく予めハウジング20内に保持されていること、及び、当該接続用導体10と端子40との嵌合作業が終了してから蓋部材30を蓋部材挿入部28に挿入することが可能であること、にある。
【0050】
図9に示される従来のコネクタでは、ゴム栓体90の挿入と、接続用導体である短絡金具96の嵌合部92と端子72との嵌合とが同時に行われることから、当該ゴム栓体90の挿入抵抗には全ての端子72の嵌合抵抗が加算される。従って、当該挿入抵抗は端子72の数が多いほど大きなものとなる。この大きな挿入抵抗は、その抵抗が通常時のものであるのか、あるいは嵌合検知部である挿入検知バー94と可撓支持片84との当接に起因して増大したものであるのかの判別を困難にする。また、各可撓支持片84は前記各端子72と前記各嵌合部92との嵌合の際にその嵌合抵抗に抗して端子72を保持しなければならないことから、その保持に十分な係止力を確保するために当該可撓支持片84の大型化は避けられない。
【0051】
これに対し、前記防水ジョイントコネクタJCでは、接続用導体10が予めハウジング20内に保持されていて、蓋部材30の挿入の前に全ての端子40の嵌合作業を済ませることが行われるため、端子40の数にかかわらず蓋部材30の挿入抵抗は低く抑えられることが可能であり、また、端子係止部27に求められる係止力も低くて済む。従って、前記のように嵌合検知部34と弾性変位状態にある端子係止部27との当接により蓋部材30の挿入抵抗が急増した場合に、作業者はこれが端子40の不完全挿入によるものであるとの判別を容易に行うことができる。すなわち、嵌合不良の検知は従来に比して飛躍的に容易となる。
【0052】
なお、本発明は以上説明した実施の形態に限られるものではない。例えば、前記嵌合検知部34は、必ずしも端子40の二重係止機能を有するものでなくてもよい。また、端子係止部27毎に形成されたものでもよい。
【0053】
前記蓋部材30全体の具体的な構造も適宜設定可能である。例えば、前記被案内部37や前記導体当接部38は省略が可能である。また、蓋部材30全体が単一の材料により一体に成形されたものでもよい。ただし、図示のように、その蓋部32が蓋部本体35とシール部材36とを有し、蓋部本体35と前記嵌合検知部34とが前記シール部材36よりも硬質の樹脂により一体成形されているものでは、当該一体成形により蓋部材30の部品点数の増加を抑えつつ当該嵌合検知部34に端子嵌合検知に必要な剛性(すなわち端子係止部27との当接による嵌合検知部34自身の変形を防ぐ特性)を確保しながら、前記蓋部本体35の外周面上に装着されるシール部材36の弾性変形を利用して当該シール部材36と前記蓋部材挿入部28の内周面との密着を確実にすることにより、高い防水機能も確保することが可能になる。
【0054】
接続用導体10の形状も図示のものに限定されない。例えば、接続用導体10の嵌合部12は、端子40との嵌合方向と直交する方向に配列されていればよく、複数列に亘って配列されていてもよい。連結部14も必ずしも平板状である必要はなく、当該連結部14とハウジング外壁22との間を前記嵌合検知部34が通過するのを許容する形状であればよい。
【符号の説明】
【0055】
JC 防水ジョイントコネクタ
10 接続用導体
12 嵌合部
14 連結部
20 ハウジング
22 ハウジングの外壁
24 導体保持部
26 端子挿入部
27 端子係止部
28 蓋部材挿入部
30 蓋部材
32 蓋部
34 嵌合検知部
35 蓋部本体
36 シール部材
37 被案内部
38 導体当接部
40 端子
46 防水栓
50 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末に端子が設けられ、かつ、この端子の後ろ側に防水栓が設けられた複数の防水用電線同士を電気的に接続するための防水ジョイントコネクタであって、
前記各端子と嵌合可能な形状を有し、その嵌合方向と直交する方向に配列される複数の嵌合部と、これらの嵌合部同士を相互連結する連結部とを一体に有する接続用導体と、
特定方向に開口してその開口から前記各端子及びその後ろ側の前記防水栓が挿入可能であり、かつ、その防水栓と密着可能な形状の内周面を有する複数の端子挿入部と、これらの端子挿入部と反対の向きに開口する蓋部材挿入部と、前記端子挿入部の開口から予め定められた正規嵌合位置まで挿入された端子がその挿入方向に沿って前記各嵌合部と嵌合されるように前記接続用導体を直接保持する導体保持部と、前記端子挿入部への前記端子の挿入に伴ってこの端子から当該挿入方向と直交する方向に沿って退避する向きに弾性変位し、かつ、当該端子が前記正規嵌合位置に到達することにより復帰方向に変位して当該端子を係止する端子係止部とを有するハウジングと、
前記接続用導体および前記ハウジングとは別の部材で構成され、前記蓋部材挿入部の開口を塞ぐように当該蓋部材挿入部に挿入されて前記ハウジングに装着されることが可能な形状を有する蓋部材とを備え、
前記蓋部材は、前記蓋部材挿入部を塞ぐ形状を有する蓋部と、この蓋部から前記ハウジングの外壁と当該ハウジングの導体保持部に保持された接続用導体の連結部との間を通過して前記各端子係止部に向かうように突出する嵌合検知部とを有し、この嵌合検知部は、いずれかの端子が前記正規嵌合位置の手前に位置することにより当該端子に対応する端子係止部が当該端子から退避する向きに一定以上弾性変位しているときにこの端子係止部と当接することにより当該蓋部材の前記蓋部材挿入部への装着を阻む形状を有することを特徴とする防水ジョイントコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の防水ジョイントコネクタにおいて、
前記蓋部材の嵌合検知部は、前記端子が前記正規嵌合位置に到達して当該端子を前記端子係止部が係止している状態でこの端子係止部と前記ハウジングの外壁との間に進入することにより当該端子係止部を拘束する形状を有することを特徴とする防水ジョイントコネクタ。
【請求項3】
請求項2に記載の防水ジョイントコネクタにおいて、
前記蓋部材は、前記嵌合検知部を前記端子係止部と前記ハウジングの外壁との間に導くように前記接続用導体の連結部による案内を受ける被案内部を含むことを特徴とする防水ジョイントコネクタ。
【請求項4】
請求項2または3記載の防水ジョイントコネクタにおいて、
前記蓋部材は、前記接続用導体の連結部に当接することによって当該蓋部材の前記蓋部材挿入部への過度の挿入を阻止する導体当接部を含むことを特徴とする防水ジョイントコネクタ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の防水ジョイントコネクタにおいて、
前記蓋部材の蓋部は、蓋部本体と、この蓋部本体の外周面上に装着され、弾性変形状態で前記蓋部材挿入部の内周面と全周にわたり密着するシール部材とを有し、前記蓋部本体と前記嵌合検知部とが前記シール部材よりも硬質の樹脂により構成されていることを特徴とする防水ジョイントコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−177045(P2010−177045A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18444(P2009−18444)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】