説明

防水部材付きフレキシブル回路基板

【解決課題】防水性能が高いフレキシブル回路基板を提供すること。
【解決手段】電子機器の筐体に挿通されるフレキシブル回路基板と、該フレキシブル回路基板の防水部位に付設されている防水部材と、を有し、該防水部材は、紫外線硬化性シリコン樹脂の硬化物であり、防水性の弾性体であること、を特徴とする防水部材付きフレキシブル回路基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水部材付きフレキシブル回路基板、特に、携帯電話に用いられるフレキシブル回路基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話には、高い防水性能が要求されている。
【0003】
通常、携帯電話では、第1の筐体と第2の筐体がヒンジ部で繋がっている。図1に、携帯電話のヒンジ部近傍の断面図を示す。携帯電話1では、電子部品や回路基板4aが内部に設置されている第1の筐体2aと、電子部品や回路基板4bが内部に設置されている第2の筐体2bがヒンジ部3で繋がっている。そして、それぞれの筐体内の電子部品又は回路基板4は、フレキシブル回路基板5により、電気的に接続されている。詳細には、該フレキシブル回路基板の両端のコネクタ6a、6bが、回路基板4a、4bと繋がっている。あるいは、該フレキシブル回路基板の両端のコネクタ6a、6bが、筐体内の電子部品に直接繋がっている。
【0004】
このとき、フレキシブル回路基板5は、第1の筐体2a内から一旦外に出て、ヒンジ部3の内部を通り、第2の筐体2b内に繋がっている。そのため、筐体2とフレキシブル回路基板5との間の防水が不十分だと、携帯電話1に水がかかったり、携帯電話1を水中に落とした場合には、筐体2内に水が浸入してしまうために、電子部品等が故障してしまう。
【0005】
そこで、特開2003−142836号公報(特許文献1)では、筐体とフレキシブル回路基板との間に、パッキンを配置して、防水する防水構造が開示されている。
【0006】
また、特開2004−214927号公報(特許文献2)には、インサート成型により、防水キャップをフレキシブル回路基板に固定し、更に、防水キャップの外周にOリングを配置する防水構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−142836号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2004−214927号公報(段落番号0021)
【0008】
【特許文献1】特開2009−26966号公報(特許請求の範囲、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、従来の防水構造では、防水性が十分ではないという問題があった。
【0010】
従って、本発明の課題は、上記問題を解決することであり、防水性能が高いフレキシブル回路基板を提供することにある。
【0011】
なお、携帯電話に限らず、電子部品や回路基板が内部に設置されている複数の筐体が、ヒンジ部で繋がっている構造を有する電子機器においては、上記課題は、共通の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的は、以下の本発明(1)〜(4)により達成される。
(1)電子機器の筐体に挿通されるフレキシブル回路基板と、該フレキシブル回路基板の防水部位に付設されている防水部材と、を有し、
該防水部材は、紫外線硬化性シリコン樹脂の硬化物であり、防水性の弾性体であること、
を特徴とする防水部材付きフレキシブル回路基板。
(2)フレキシブル回路基板の防水部材の付設部位が、成形型内に充填されている紫外線硬化性シリコン樹脂と接触するように、該フレキシブル回路と該紫外線硬化性シリコン樹脂とを配置する配置工程と、
該紫外線硬化性シリコン樹脂を硬化させる硬化工程と、
を有する防水部材付きフレキシブル回路基板の製造方法。
(3)前記成形型は、成形型の側壁に、前記フレキシブル回路基板を嵌め込むための切欠き部が形成されている成形型であり、前記配置工程において、該切欠き部に、前記フレキシブル回路基板を嵌め込むことにより、前記フレキシブル回路基板を配置することを特徴とする(2)記載の防水部材付きフレキシブル回路基板の製造方法。
(4)前記成形型は、複数の構成要素からなり、内部に、前記紫外線硬化性シリコン樹脂が充填される樹脂充填空間を有する成形型であり、前記配置工程において、前記フレキシブル回路基板の防水部材の付設部位を、上下から挟みむようにして、前記フレキシブル回路基板に、該成形型を設置し、次いで、該樹脂充填空間内に、前記紫外線硬化性シリコン樹脂を充填することにより、前記フレキシブル回路基板と前記紫外線硬化性シリコン樹脂とを配置することを特徴とする(2)記載の防水部材付きフレキシブル回路基板の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、防水性能が高いフレキシブル回路基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】携帯電話のヒンジ部近傍の断面図である。
【図2】本発明の防水部材付きフレキシブル回路基板の形態例の模式的な平面図である。
【図3】図2中の防水部材をx−x断面で切ったときの端面図である。
【図4】本発明の防水部材付きフレキシブル回路基板が、筐体のフレキシブル回路基板の挿通部に配置さている様子を示す模式的な端面図である。
【図5】防水部材の形態例を示す模式的な端面図である。
【図6】本発明の防水部材付きフレキシブル回路基板の製造方法(1)に用いられる成形型の模式的な斜視図である。
【図7】成形型にフレキシブル回路基板が設置されている様子を示す模式的な平面図である。
【図8】図7中のz−z線で切ったときの端面図である。
【図9】配置工程(1)で、フレキシブル回路と紫外線硬化性シリコン樹脂とが配置されている様子を示す模式的な端面図である。
【図10】硬化工程(1)で、硬化された後の様子を示す模式的な端面図である。
【図11】本発明の防水部材付きフレキシブル回路基板の製造方法(1)に用いられる成形型の模式的な斜視図である。
【図12】図11中の成形型の構成要素を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の防水部材付きフレキシブル回路基板は、電子機器の筐体に挿通されるフレキシブル回路基板と、該フレキシブル回路基板の防水部位に付設されている防水部材と、を有し、
該防水部材は、紫外線硬化性シリコン樹脂の硬化物であり、防水性の弾性体であること、
を特徴とする防水部材付きフレキシブル回路基板である。
【0016】
本発明の防水部材付きフレキシブル回路基板について、図2〜図4を参照して説明する。図2は、本発明の防水部材付きフレキシブル回路基板の形態例の模式的な平面図であり、図3は、図2中の防水部材をx−x断面で切ったときの端面図であり、図4中(4−1)は、本発明の防水部材付きフレキシブル回路基板が、筐体のフレキシブル回路基板の挿通部位に配置さている様子を示す模式的な端面図であり、(4−2)は、(4−1)の筐体のみを示す図である。
【0017】
図2中、防水部材付きフレキシブル回路基板10は、フレキシブル回路基板5と、防水部材11aと、を有している。フレキシブル回路基板5の両端には、コネクタ6(6a、6b)が付設されている。また、コネクタ6が付設されている側とは反対側のフレキシブル回路基板上には、補強板が付設されていてもよい。そして、防水部材付きフレキシブル回路基板10は、電子部品又は回路基板が内部に設置されている2つの筐体が、ヒンジ部で取り付けられている電子機器、例えば、図1に示す携帯電話に用いられる。
【0018】
防水部材11aは、紫外線硬化性シリコン樹脂の硬化物からなる。
【0019】
図3に示すように、防水部材11aは、フレキシブル回路基板の防水部位13の一方の実装面14と、フレキシブル回路基板5の両側面15a、15bを覆うようにして、フレキシブル回路基板5に接着して付設されている。また、フレキシブル回路基板5の他方の実装面12は、防水部材11で覆われていない。
【0020】
防水部材付きフレキシブル回路基板10が用いられている電子機器では、フレキシブル回路基板の一端に付設されているコネクタ6aは、第1の筐体内の電子部品又は回路基板に接続され、フレキシブル回路基板の他端に付設されているコネクタ6bは、第2の筐体内の電子部品又は回路基板に接続され、フレキシブル回路基板5のヒンジ内内設部21は、ヒンジ部内に収められる。このとき、フレキシブル回路基板5は、第1の筐体の内部から外へ出て、ヒンジ部の内部を通って、第2の筐体の内部に入るように設置される。
【0021】
図4に示すように、防水部材付きフレキシブル回路基板10は、電子機器の筐体2に設けられたフレキシブル回路基板の挿通部位16に、挿通される。そして、防水部材11a及びフレキシブル回路基板5が、フレキシブル回路基板の挿通部位16に設置される。このとき、防水部材11aは、電子機器の筐体2とフレキシブル回路基板5との間隙を埋めるようにして配設されることにより、これらの間隙を密封して防水する。
【0022】
詳細には、フレキシブル回路基板の挿通部位16の開口面積より、防水部材11a及びフレキシブル回路基板5の断面積を大きくしておき、筐体2で防水部材11a及びフレキシブル回路基板5を挟み込んで圧縮する。このとき、筐体2のフレキシブル回路基板の挿通部位16のうち、フレキシブル回路基板5と接触している箇所は、筐体2とフレキシブル回路基板5とが直接接触することにより、筐体2とフレキシブル回路基板5との間が塞がれている。また、フレキシブル回路基板の挿通部位16のうち、筐体2のフレキシブル回路基板5と接触している箇所以外の箇所は、防水部材11aが、筐体2とフレキシブル回路基板5との間に挟み込まれることにより、筐体2とフレキシブル回路基板5との間が塞がれている。
【0023】
防水部材11aは、紫外線硬化性シリコン樹脂の硬化物であり、防水性を有する弾性体である。そして、防水部材11aは弾性体なので、防水部材11aが筐体2で挟み込まれて押えるつけられることにより内部応力が発生し、この内部応力で、フレキシブル回路基板の他方の面12及び防水部材11aが、筐体2に押し付けられる。このことにより、筐体2とフレキシブル回路基板の他方の面12及び防水部材11aとが密着して、防水部材付きフレキシブル回路基板10の防水部位が防水される。
【0024】
また、防水部材11aは、紫外線硬化性シリコン樹脂の硬化物なので、防水性能が高い。
【0025】
本発明に係るフレキシブル回路基板としては、通常、ヒンジ部内を通って第1の筐体内の電子部品又は回路基板と第2の筐体内の電子部品又は回路基板とを繋ぐために用いられているフレキシブル回路基板であればよく、特に制限されない。本発明に係るフレキシブル回路基板としては、例えば、片面に回路が形成されているフレキシブル回路基板や、両面に回路が形成されているフレキシブル回路基板が挙げられ、また、一層のフレキシブル回路基板であっても、2以上のフレキシブル回路基板が重ねられている多層のフレキシブル回路基板であってもよい。
【0026】
本発明に係るフレキシブル回路基板は、表面が樹脂材で覆われている。フレキシブル回路基板を覆っている樹脂材としては、通常のフレキシブル回路基板に用いられている材質であれば、特に制限されないが、筐体とフレキシブル回路基板が直接接触するような形態例では、シリコン樹脂、フッ素系樹脂、ウレタン樹脂、エラストマー樹脂等の弾性樹脂が、フレキシブル回路基板が適度な柔軟性を有し且つ筐体とフレキシブル回路基板が直接接触する箇所の防水性能が高くなる点で好ましい。
【0027】
本発明の防水部材付きフレキシブル回路基板では、フレキシブル回路基板に、防水部材が付設されている。防水部材が付設される箇所は、フレキシブル回路基板の防水部位であり、例えば、図2では、符号13で示すフレキシブル回路基板の防水部位13である。そして、防水部位は、フレキシブル回路基板のうち、筐体に形成されているフレキシブル回路基板が挿入される部位(筐体の挿通部位)に位置する部位であり、例えば、図1では、符号18で示す部分が、防水部位18a、18bである。
【0028】
本発明の防水部材付きフレキシブル回路基板に係る防水部材は、紫外線照射により硬化する紫外線硬化性のシリコン樹脂を、硬化させたもの、すなわち、紫外線硬化性シリコン樹脂の硬化物からなる。そして、防水部材は、紫外線硬化性シリコン樹脂の硬化物からなるので、防水性能を有する。
【0029】
本発明の防水部材付きフレキシブル回路基板に係る紫外線硬化性シリコン樹脂は、硬化前の樹脂であり、紫外線を照射することにより硬化する紫外線硬化性シリコン樹脂である。このような紫外線硬化性シリコン樹脂としては、例えば、アクリル基又はメタクリル基等の紫外線硬化性の官能基を有するオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0030】
図2〜図4では、防水部材11が防水部位のフレキシブル回路基板の一方の実装面及び両側面の3面を覆って接着している形態例を示しているが、これに限定されず、本発明の防水部材付きフレキシブル回路基板の形態例としては、防水部材が防水部位のフレキシブル回路基板の4面全て(両実装面及び両側面)を覆って接着している形態例や、防水部材が防水部位のフレキシブル回路基板の一方の実装面のみの1面を覆って接着している形態例や、防水部材が防水部位のフレキシブル回路基板の両実装面の2面を覆って接着している形態例が挙げられる。なお、フレキシブル回路基板の実装面とは、コネクタ、コネクタの裏側に相当する位置に取り付けられる補強板、両面テープ等が固定される面であり、平面方向に広がっている面である。また、フレキシブル回路基板の側面とは、フレキシブル回路基板の2つの実装面を上下の面としたときの側面である。
【0031】
また、本発明の防水部材付きフレキシブル回路基板のうち、防水部材がフレキシブル回路基板の一方の実装面及び両側面の3面を覆って接着している形態例では、フレキシブル回路基板の側面側の防水部材の形状は、フレキシブル回路基板の一方の実装面及び両側面の3面を覆っている形状であれば、特に制限されず、例えば、図3に示すように、断面視したときに、長方形の防水部材中にフレキシブル回路基板が埋め込まれているような形状や、図5中(5−1)及び(5−2)に示すように、断面視したときに、長方形の防水部材の上面にフレキシブル回路基板の側面接着部17(17a、17b)が突出したような形状が挙げられる。また、本発明の防水部材付きフレキシブル回路基板のうち、防水部材が防水部位のフレキシブル回路基板の4面全て(両実装面及び両側面)を覆って接着している形態例の防水部材の形状としては、図5中(5−3)に示す防水部材11dの形状が挙げられる。また、本発明の防水部材付きフレキシブル回路基板のうち、防水部材が防水部位のフレキシブル回路基板の一方の実装面のみの1面を覆って接着している形態例の防水部材の形状としては、図5中(5−4)に示す防水部材11eの形状が挙げられる。また、本発明の防水部材付きフレキシブル回路基板のうち、防水部材が防水部位のフレキシブル回路基板の両実装面の2面を覆って接着している形態例の防水部材の形状としては、図5中(5−5)に示す防水部材11fの形状が挙げられる。また、防水部材の全体形状は、筐体の挿通部位の形状に合わせて、適宜選択される。
【0032】
防水部材は、フレキシブル回路基板に接着することができる接着性の樹脂からなり、自らの接着力で、フレキシブル回路基板に直接接着していてもよいし、あるいは、フレキシブル回路基板への接着性がない樹脂からなり、防水性の接着剤を介して、フレキシブル回路基板に接着していてもよい。
【0033】
本発明の防水部材付きフレキシブル回路基板は、その両端に、筐体内の電子部品又は回路基板と接続するためのコネクタが付設されている。また、本発明の防水部材付きフレキシブル回路基板は、必要に応じて、表面実装が可能な電子部材、例えば、抵抗、トランジスタ、コンデンサ等が付設されている。
【0034】
本発明の防水部材付きフレキシブル回路基板が用いられる電子機器としては、電子部品又は回路基板が内部に設置されている2個の筐体が、ヒンジ部で繋がっている電子機器であれば、特に制限されず、携帯電話、デジタルカメラ、デジタルムービー等が挙げられる。
【0035】
本発明の防水部材付きフレキシブル回路基板の製造方法を以下に示す。本発明の第一の形態の防水部材付きフレキシブル回路基板の製造方法(以下、製造方法(1)とも記載する。)は、フレキシブル回路基板の防水部材の付設部位が、成形型内に充填されている紫外線硬化性シリコン樹脂と接触するように、該フレキシブル回路と該紫外線硬化性シリコン樹脂とを配置する配置工程(1)と、
該紫外線硬化性シリコン樹脂を硬化させる硬化工程(1)と、
を有することを特徴とする防水部材付きフレキシブル回路基板の製造方法である。
【0036】
製造方法(1)について、防水部材がフレキシブル回路基板の一方の実装面及び両側面の3面を覆って接着している防水部材付きフレキシブル回路基板であり且つ防水部材が紫外線硬化性シリコン樹脂の硬化物からなる形態例の製造を例に、図6〜図10を参照して説明する。図6は、製造方法(1)に用いられる成形型の模式的な斜視図であり、図7は、成形型にフレキシブル回路基板が設置されている様子を示す模式的な平面図であり、図8は、図7中のz−z線で切ったときの端面図であり、図9は、配置工程(1)で、フレキシブル回路と紫外線硬化性シリコン樹脂とが配置されている様子を示す模式的な端面図であり、図10は、硬化工程(1)で、硬化された後の様子を示す模式的な端面図である。
【0037】
図6に示すように、成形型20aは、上面のない直方体の容器であり、紫外線を透過する材質、例えば、石英、紫外線透過性のアクリル樹脂等からなる。成形型20aの2つの側壁201には、フレキシブル回路基板5を嵌め込むことにより、フレキシブル回路基板5が設置される切欠き部19が形成されている。
【0038】
次いで、図7及び図8に示すように、成形型20aの切欠き部19に、フレキシブル回路基板5を設置する。このとき、フレキシブル回路基板5の防水部位の一方の実装面14及び両側面15a、15bが、成形型20a内に位置するように、フレキシブル回路基板5を設置する。なお、フレキシブル回路基板5の他方の実装面12の位置(符号22で示す点線の位置)は、成形型20aの他の2つの側壁202の高さと同じか、成形型20aの他の2つの側壁202の高さより低い位置にする。
【0039】
次いで、図9に示すように、成形型20a内に、紫外線硬化性シリコン樹脂23を、フレキシブル回路基板5の他方の実装面12の位置22まで充填する。このことにより、フレキシブル回路基板5の一方の実装面14及び両側面15a、15bが、成形型20a内に充填されている紫外線硬化性シリコン樹脂で覆われる。
【0040】
このようにして、配置工程(1)を行う。
【0041】
次いで、図9に示す成形型20aごと、成形型20a内に充填されている紫外線硬化性シリコン樹脂23に、紫外線を照射し、紫外線硬化性シリコン樹脂を、硬化させて、図10に示す紫外線硬化性シリコン樹脂の硬化物24にする(硬化工程(1))。
【0042】
硬化工程(1)を行った後は、成形型20aを、紫外線硬化性シリコン樹脂の硬化物24から外して、本発明の防水部材付きフレキシブル回路基板を得る。
【0043】
配置工程(1)において、成形型として、図6に示すような、成形型の側壁の上部に、フレキシブル回路基板を嵌め込むための切欠き部が形成されている成形型を用いる場合、配置工程(1)では、成形型の側壁の切欠き部に、フレキシブル回路基板を嵌め込むことにより、フレキシブル回路基板を配置する。このとき、フレキシブル回路基板の防水部材の付設部位が、成形型の内側に位置するように、フレキシブル回路基板を配置する。そして、この場合、配置工程(1)では、成形型の切欠き部にフレキシブル回路基板を嵌め込んでから、成形型内に紫外線硬化性シリコン樹脂を充填し、紫外線硬化性シリコン樹脂を配置する。なお、成形型の切欠き部にフレキシブル回路基板を嵌め込む前に、成形型内にある程度の量の紫外線硬化性シリコン樹脂を入れておき、次いで、成形型の切欠き部にフレキシブル回路基板を嵌め込んでから、更に、成形型内に紫外線硬化性シリコン樹脂を充填してもよい。
【0044】
配置工程(1)に係る成形型は、防水部材の形状を成形するための成形型である。配置工程(1)に係る成形型は、一続きの1つの構成要素により構成される成形型であっても、複数の構成要素を組み合わせて構成されている成形型であってもよい。
【0045】
図6に示す成形型20a以外に、例えば、成形型としては、図11及び図12に示す成形型30が挙げられる。図11中、成形型30は、2つの成形型の構成要素31a、31bとからなり、フレキシブル回路基板を上下から挟み込むようにして、防水部位に設置される成形型である。成形型30は、紫外線を透過する材質からなる。なお、図11中の成形型の構成要素31aは、成形型の構成要素31bと、フレキシブル回路基板に対して上下対称な形状である。
【0046】
図12に示すように、成形型の構成要素31bには、成形型の構成要素31aと31bとを合わせたときに、フレキシブル回路基板が嵌り込む空間となるフレキシブル回路基板嵌め込み空間32と、紫外線硬化性シリコン樹脂が充填される空間となる樹脂充填空間34と、成形型30の外から樹脂充填空間34内に紫外線硬化性シリコン樹脂を注入するための樹脂注入空間33と、が形成されている。なお、成形型30では、樹脂充填空間34内に、フレキシブル回路基板の防水部材の付設部位が位置するように、フレキシブル回路基板嵌め込み空間32及び樹脂充填空間34が形成されている。
【0047】
そして、フレキシブル回路基板の防水部位を上下から挟みこむようにして、成形型の構成要素31aと31bとを合わせて、フレキシブル回路基板の防水部位に成形型30を設置し、次いで、樹脂注入空間33より紫外線硬化性シリコン樹脂を、成形型30内の樹脂充填空間34に注入して、樹脂充填空間34内を紫外線硬化性シリコン樹脂で満たすことにより、配置工程(1)を行う。
【0048】
配置工程(1)において、成形型として、図11及び図12に示すような、複数の構成要素からなり、内部に、紫外線硬化性シリコン樹脂が充填される樹脂充填空間を有する成形型を用いる場合、配置工程(1)では、フレキシブル回路基板の防水部位の付設部位を、上下から挟みむようにして、フレキシブル回路基板に成形型を設置し、次いで、樹脂充填空間内に、紫外線硬化性シリコン樹脂を充填することにより、フレキシブル回路と紫外線硬化性シリコン樹脂とを配置する。
【0049】
配置工程(1)に係る成形型の内側には、硬化後に、紫外線硬化性シリコン樹脂の硬化物の離型性を高めるために、離型剤を塗布してもよい。
【0050】
配置工程(1)では、成形型にフレキシブル回路基板を設置する前に、フレキシブル回路基板の紫外線硬化性シリコン樹脂と接触する面、特に、フレキシブル回路基板の両側面に、予め、紫外線硬化性シリコン樹脂を塗る等の下地処理をして、紫外線硬化性シリコン樹脂で覆われる面の濡れ性を向上させてから、下地処理したフレキシブル回路基板を成形型に設置することができる。
【0051】
製造方法(1)は、防水部材の製造(成形)とフレキシブル回路基板への付設(接着)とを、同時に行う形態であるが、先に、防水部材を製造しておき、次いで、製造した防水部材をフレキシブル回路基板に付設(接着)して、本発明の防水部材付きフレキシブル回路基板を製造してもよい。
【0052】
先に、防水部材を製造しておき、次いで、製造した防水部材をフレキシブル回路基板に付設(接着)する製造方法を、以下に示す。本発明の第二の形態の防水部材付きフレキシブル回路基板の製造方法(以下、製造方法(2)とも記載する。)は、紫外線硬化性シリコン樹脂を硬化させて、紫外線硬化性シリコン樹脂の硬化物塊を得る硬化工程(2)と、
紫外線硬化性シリコン樹脂の硬化物塊を、防水部材の形状に切り、防水部材を得る切り出し工程(2)と、
該防水部材を、フレキシブル回路基板の防水部位に接着する接着工程(2)と、
を有することを特徴とする防水部材付きフレキシブル回路基板の製造方法である。
【0053】
つまり、製造方法(2)は、紫外線硬化性シリコン樹脂の硬化物の大きな塊を製造し、その塊を、防水部材の形状に切って成形することにより、先に、防水部材を製造する製造方法である。
【0054】
製造方法(2)によるフレキシブル回路基板の製造の形態例としては、先ず、紫外線硬化性シリコン樹脂を大きな硬化用の容器に入れ、紫外線を照射して硬化させて、紫外線硬化性シリコン樹脂の硬化物塊を得、次いで、得られた紫外線硬化性シリコン樹脂の硬化物塊を、例えば、図5中(5−4)の防水部材11eの形状や、(5−5)の防水部材11fの形状に切り、防水部材11e又は防水部材11fを得、次いで、得られた防水部材を、フレキシブル回路基板に付設(接着)する形態例が挙げられる。
【0055】
製造方法(1)及び(2)に係る紫外線硬化性シリコン樹脂及び紫外線硬化性シリコン樹脂を硬化させて得られる紫外線硬化性シリコン樹脂の硬化物は、本発明の防水部材付きフレキシブル回路基板に係る紫外線硬化性シリコン樹脂及び紫外線硬化性シリコン樹脂の硬化物と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、防水性に優れるフレキシブル回路基板を、簡便な方法で製造することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 携帯電話
2a 第1の筐体
2b 第2の筐体
3 ヒンジ部
4a、4b 回路基板
5 フレキシブル回路基板
6、6a、6b コネクタ
7、7a、7b 防水部材
10 防水部材付きフレキシブル回路基板
11、11a、11b、11c、11d、11e、11f 防水部材
12 フレキシブル回路基板の他方の実装面
13 フレキシブル回路基板の防水部位
14 フレキシブル回路基板の一方の実装面
15、15a、15b フレキシブル回路基板の側面
16 フレキシブル回路基板の挿通部位
17 側面接着部
18 防水部位
19 切欠き部
20、30 成形型
21 ヒンジ内内設部
22 フレキシブル回路基板の他方の実装面の位置
23 紫外線硬化性シリコン樹脂
24 紫外線硬化性シリコン樹脂の硬化物
31a、31b 成形型の構成要素
32 フレキシブル回路基板嵌め込み空間
33 樹脂注入空間
34 樹脂充填空間
201 成形型の2つの側壁
202 成形型の他の2つの側壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の筐体に挿通されるフレキシブル回路基板と、該フレキシブル回路基板の防水部位に付設されている防水部材と、を有し、
該防水部材は、紫外線硬化性シリコン樹脂の硬化物であり、防水性の弾性体であること、
を特徴とする防水部材付きフレキシブル回路基板。
【請求項2】
フレキシブル回路基板の防水部材の付設部位が、成形型内に充填されている紫外線硬化性シリコン樹脂と接触するように、該フレキシブル回路と該紫外線硬化性シリコン樹脂とを配置する配置工程と、
該紫外線硬化性シリコン樹脂を硬化させる硬化工程と、
を有する防水部材付きフレキシブル回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記成形型は、成形型の側壁に、前記フレキシブル回路基板を嵌め込むための切欠き部が形成されている成形型であり、前記配置工程において、該切欠き部に、前記フレキシブル回路基板を嵌め込むことにより、前記フレキシブル回路基板を配置することを特徴とする請求項2記載の防水部材付きフレキシブル回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記成形型は、複数の構成要素からなり、内部に、前記紫外線硬化性シリコン樹脂が充填される樹脂充填空間を有する成形型であり、前記配置工程において、前記フレキシブル回路基板の防水部材の付設部位を、上下から挟みむようにして、前記フレキシブル回路基板に、該成形型を設置し、次いで、該樹脂充填空間内に、前記紫外線硬化性シリコン樹脂を充填することにより、前記フレキシブル回路基板と前記紫外線硬化性シリコン樹脂とを配置することを特徴とする請求項2記載の防水部材付きフレキシブル回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−4213(P2012−4213A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136056(P2010−136056)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】