説明

防滑性を有する床用硝子タイル及びその製造方法

【課題】意匠性に優れ、安全で、かつ、滑り防止性、特に泥水が付着した際の滑り防止性に優れた床用硝子板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】強化硝子板の表面に粒径粗さ60〜130メッシュの金鋼砂を圧縮空気により吹付け、表面張力を増大させる凹凸を設け、歩行時の滑り防止性に優れる表面とした。本発明の床用硝子タイルは、特に泥水が付着した際の歩行に対する滑り防止性に優れており、強化硝子板1の裏面側に、印刷層2を有する意匠フィルムが積層された層構成を有しており、前記強化硝子板の表面側には滑り防止効果を発揮させるために、JIS B 0601に準ずる表面粗さが40〜10μmの凹凸が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化硝子板の表面上に表面張力を増大する凹凸面が設けられた滑り防止性に優れる床用硝子タイルに関する。さらに詳しくは、特に水濡れ時の滑り防止性に優れた床用硝子タイルに関する。又、本発明は、このような床用硝子タイルの製造方法に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
従来から、硝子板は、窓や、什器、又は建築用として一般に広く使用されている。これら硝子板の多くの使用目的は室内空間を彩る素材として例えば、室内壁面や間仕切り、ドアなど立体的な用途に使用されることが多く、キッチン、玄関、トイレ等の極めて水や泥水が付着し易い平面的な床等に使用するには硝子板の持つ「滑る」と言う問題から敬遠されていた。ところが、滑り防止性を付与した硝子板の提案として、例えば下記の特許文献1には、硝子板表面に突起物を設けて滑り防止性を付与したものが開示されている。これは、硝子板表面に微粒硝子を一定間隔、又は、不規則に融着したもので、乾燥時の歩行に対する滑り防止性としては優れた硝子板である。
【特許文献1】特許第2980536号公報
【0003】
しかし、この硝子板の場合、表面に突起物を設ける方法は硝子板表面に無数の塊が存在するために意匠を付与した際の見栄えが悪く、また、床は複数の人が歩行するに当たり、その歩行環境においては、砂、水、泥水が混在し、特に表面に泥水が存在する場合は滑り防止性に劣ると言う問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では、従来の硝子板のこのような問題点を解決したもので、意匠性ある安全で、かつ、滑り防止性、特に泥水が付着した際の滑り防止性に優れた硝子板を提供することを課題とする。又、本発明の課題は、このような防止性に優れた硝子板を製造するのに適した方法を提供することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、種々検討を行った結果、基材としての強化硝子板の裏面側に、電子写真方式の複写機を用いてトナー画像が印刷された意匠フィルムの当該トナー画像が前記強化硝子板側に位置するようにして積層された層構成を有し、当該強化硝子板の表面に設けられた凹凸表面がJIS B 0601に準ずる表面粗さが40〜10μmの範囲内である場合に、当該凹凸表面が表面張力を増大し、歩行時の360度の進入角度に対し防滑性を有することを見い出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、前述の課題を解決可能な本発明の床用硝子タイルは、強化硝子板の裏面側に、印刷層を有する意匠フィルムが積層された層構成を有しており、前記強化硝子板の表面側には滑り防止効果を発揮させるために、JIS B 0601に準ずる表面粗さが40〜10μmの凹凸が形成されていることを特徴とする。
【0007】
更に、本発明は、上記の特徴を有した床用硝子タイルにおいて、印刷層を有する前記意匠フィルムのフィルム基材が、50〜100μmの厚みを有するポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とするものでもある。
【0008】
又、本発明は、上記の特徴を有する意匠性及び滑り防止性に優れた床用硝子タイルの製造方法でもあり、この製造方法は、
工程A:強化硝子板の表面に、粒径粗さ60〜130メッシュの金剛砂を圧縮空気により吹き付け、JIS B 0601に準ずる表面粗さが40〜10μmの範囲の凹凸表面を形成させるか、あるいは、板硝子の表面に、粒径粗さ60〜130メッシュの金剛砂を圧縮空気により吹き付け、JIS B 0601に準ずる表面粗さが40〜10μmの範囲の凹凸表面を形成させた後で、得られた板硝子を物理的又は化学的に強化処理することにより凹凸表面を有する強化硝子板を製造する工程、
工程B:前記工程Aにて得られた強化硝子板の表面の乱反射を抑制して透視性を向上させるために、当該強化硝子板を、フッ酸の入った処理浴の中に浸漬させ、取り出し、洗浄、乾燥させる工程、及び、
工程C:前記工程Bにて得られた強化硝子板の裏面側に、印刷層を設けた意匠フィルムを接着層を介して貼着させる工程
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の床用硝子タイルは、裏面側に設けられた印刷層が強化硝子板を通して観察でき、意匠性に優れるだけでなく、その表面に形成された凹凸によって泥水付着時の滑り防止性と安全性の点でも優れており、各種建築物の床用材料として好適である。
又、本発明の製造方法を用いることによって、泥水付着時の滑り防止性と安全性に優れた床用硝子タイルが提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず、本発明の床用硝子タイルの好ましい一例における層構成を図1に示して本発明を詳細に説明する。
本発明の床用硝子タイルは、図1に示されるように、基材としての強化硝子板1の裏面側に、意匠性を付与するための印刷層2を有した意匠フィルムが積層された層構成を有しており、一般的には強化硝子板1/接着剤層4/印刷層(トナー画像)2/フィルム基材3の層構成を有し、強化硝子板1の表面には凹凸が設けられている。
【0011】
床材として使用される本発明の床用硝子タイルでは、タイルの基材が強化硝子板であり、強化処理した網入り硝子板を使用することも可能であるが、一般的には強化処理された強化硝子板が使用されるので、フロート硝子板の場合のように、万一破壊した際にその破片が鋭利な形状になることがなく、万一破損しても破片が粒状となるので破片による負傷が恐れがなく、安全性に優れると言う利点があり、また、フロート硝子板に比して3〜5倍の衝撃強度を有している。
【0012】
本発明の床用硝子タイルを構成する強化硝子板の衝撃強度を平均破壊高さで示すと6〜9mであり、この試験はJIS R 3206に準じた試験で質量225gの鋼球を30.3cm×30.3cmの供試体の中心部に落下して、その破壊の高さを測定したものである。破壊高さは主に硝子板の厚みに起因するところが大きく、本発明では強化硝子板の厚みは5mm以上が好ましい。また、この衝撃強度を他のものと比較した場合、一般に床材として使用されている陶器のタイル等は厚み10mmで、質量28.8gの鋼球を落下させる場合、その破壊高さは0.66mである。この数値からも強化硝子板は衝撃性、つまり安全性に優れた硝子板であると言える。
【0013】
そして、本発明の床用硝子タイルを構成する強化硝子板の表面には凹凸が設けられており、この凹凸は、JIS B 0601に準ずる表面粗さ(十点平均粗さRz)が40〜10μmであり、この範囲は、滑り防止性が最も効果的に現われる範囲である。この際、表面粗さが40μm以上では硝子板の強度が低下する可能性があり、逆に10μm以下では滑り防止性に劣る傾向があるので好ましくない。本発明において好ましい強化硝子板の表面凹凸は35〜10μmであり、30〜13μmが特に好ましい。
本発明では、床用硝子タイルの表面に形成された凹凸によって滑り防止性が付与され、硝子板表面に凹凸を設ける方法としては、型板硝子板などのように、硝子板の製造時にロールにより模様を彫り込む方法も考えられるが、この場合には、凹凸面が滑らかな球面上となって、滑り防止効果が期待できない。本発明の床用硝子タイルの滑り防止を有する凹凸表面は、主にサンドブラスト法を用いて設けられ、強化硝子板の表面にサンドブラスト法により直接凹凸を設けても良く、あるいは、フロート硝子板の表面にサンドブラスト法により凹凸を設けた後で強化処理を施してもよい。サンドブラスト法により凹凸を設ける際には、具体的には粒径粗さ60〜130メッシュの金剛砂を圧縮空気により強化硝子板の表面に吹き付けて表面を粗し、40〜10μmの表面粗さの凹凸を設ける。本発明では、凹凸表面を設ける位置が特に限定されるものではなく、床用硝子タイルの表面の一部又は全面に上記凹凸が設けられれば良いが、歩行時のあらゆる角度からの浸入に対し滑り防止効果が発揮されるようにタイル全面に上記凹凸が設けられることが好ましい。尚、本発明では、フロート硝子板の表面にサンドブラスト法により凹凸を設けた後で強化処理を行う場合、表面凹凸が変形しないようにしてフロート硝子板の軟化点近傍の温度にまで加熱し、空気を均一に吹き付けて冷却し、強化処理を行う。
【0014】
一般的に、硝子板表面は通常の歩行では滑り難い表面とされているが、表面に砂や汚泥、特に泥水が付着すると滑り易い表面に変化する。本発明では、タイル表面に凹凸を設けることで硝子板の表面面積を増やし、表面に泥水が付着した際に表面張力を増大することで滑り防止性が向上する。図を用いて説明すれば、図2は、表面が平滑な硝子板に泥水が付着した際の歩行時の概略断面図であり、図3は、凹凸面を設けた硝子板表面に泥水が付着した際の歩行時の概略断面図である。符号Aは凹部、Bは凸部、Cは泥水、Dは応力(靴、草履等)、Eは強化硝子板、Fは濃縮相である。図2に示されるように、EとDの間にCの泥水が存在することでEとDの間には表面張力が働き、矢印f2の方向には離れるのを防ごうとする力が働き、滑り防止効果は期待できるが、矢印f1の方向には限り無く滑る作用が生じ、滑りの原因と考えられる。つまり、表面張力を増大すれば矢印f1、f2の方向に対し滑り防止効果がより期待できる。図3はこの表面張力効果を最大限に引き出すために設けられた凹凸面であり、Cが付着した場合、符号イとロの間、ロとハの間、そして、イとハの間にも表面張力が働き、矢印f1の方向に対し滑り防止効果が生じる。
【0015】
表面張力は吸着により変化するところが大きく、図3のAの深さとBの高さとの相互関係が強く、つまり、歩行時にDが矢印f1の方向に働くときにCの泥水が前面に押し出された時、図3のように表面張力によりDとAの界面には分子やイオンの濃縮相(圧縮相)が生じ、吸着状態になる。つまり、表面張力の吸着より滑り防止効果が現われる。例えるならば、Aが吸着盤の働きをすることで矢印f1、f2の方向に対し離れるのを防ごうとする力が働き、滑り防止になる。このことは、AとD間の吸着及び、密着性との相互関係も大きく、Aのイとロ間には吸着によるDとの密着性も増大する。又、Aの深さとBの高さは前述の粒径粗さに起因するところが大きいが、サンドブラストに使用される金剛砂のメッシュが粗い方が凹凸は深く、高くなり表面粗さも大きくなる傾向にあり、表面張力による吸着は増す。一方メッシュが細かい程凹凸は浅く、低くなり表面粗さも小さくなり、表面張力による吸着は低下する傾向にある。本発明では、強化硝子板の表面に設けられた凹凸表面が表面張力を増大し、歩行時の360度の進入角度に対し防滑性を発揮する。
又、サンドブラストで凹凸を設けた状態のままでは表面が乱反射により薄白濁色になって透視性が劣るため、本発明では、表面の粗さを保ちながら薄白濁色部を酸洗いすることで、乱反射を抑制し透視性を向上させ、後で貼り付けられる印刷したフィルムの画像が鮮明に反映される透視性が得られるようになっている。
【0016】
本発明の床用硝子タイルには、意匠性を付与し、かつ万一、強化硝子板が割れてもその破片が飛び散らないように、強化硝子板の裏面側にフィルム基材が貼り合わせられており、このフィルム基材としては、印刷層を有するものの他に、透明性ある着色が施されたものも使用できる。フィルム基材の素材としては、塩化ビニル系、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、オレフィン系等が挙げられ、何れも使用可能であるが、耐薬品性や耐溶剤性に富んだオレフィン系、ポリエステル系が好ましい。特に、耐熱性を有する厚み50〜100μmのポリエステル系のポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0017】
又、本発明では、意匠性を付与する手段としてのフィルムへの印刷方法が限定されるものではなく、一般的に使用されているグラビア印刷や、シルク印刷、オフセット印刷等いずれの印刷方法でも良いが、多品種・小ロットへの対応に適しているという観点からは電子写真装置による無版印刷方式が好ましく、電子写真方式の複写機を用いてトナー画像が印刷されたフィルムを作製し、当該トナー画像が強化硝子板側に位置するようにして積層される。本発明では、印刷層(トナー画像層)の光堅牢度を高める目的で、紫外線吸収剤を例えばウレタン系樹脂に練り込んで形成した紫外線カット層を設けても良い。尚、本発明では、印刷層によって表現される絵柄の種類が限定されるものではないが、天然大理石の絵柄が表現されたものが特に好ましい。
【0018】
本発明の床用硝子タイルは、滑り防止性を有することから特に建物の床面や階段部分に使用されるが、その施工において、下地材の不陸を吸収する目的から、下地材に不陸吸収性を有する発泡体シートを接着剤を用いて積層し、更にその上に、接着剤を用いて本発明の床用硝子タイルを接着することが好ましく、発泡体シートの素材としては、耐薬品性や環境性に富んだポリエチレン発泡体シート(例えば厚さ約3mm)が好ましく使用される。また、発泡体の選択は発泡体の気泡構造の形状も重要であり、気泡構造としては、連続気泡や独立気泡などがあるが、水や空気を通さない独立気泡構造をもつ不陸吸収性、防音性、防水性、防湿性、断熱性に優れたポリエチレン独立発泡体シートの選択がより好ましい。但し、本発明の床用硝子タイルは、コンクリート層の表面に水平モルタル層を設けた床面上に接着剤を塗布し、この接着剤層の上に圧着して施工されても良い。
【0019】
尚、本発明では、強化硝子板と意匠フィルムとの間の接着、及び、意匠フィルムと発泡体シートとの間の接着を行うのに使用される接着剤が特に限定されるものではないが、接着強度や耐熱性、耐候性に優れる接着剤を選択することが好ましい。
【0020】
上記の特徴を有する意匠性及び滑り防止性に優れた床用硝子タイルを製造するための本発明の方法では、第1の工程Aにおいて、予め強化処理がなされた強化硝子板の表面に、市販されている粒径粗さが60〜130メッシュの金剛砂を圧縮空気により吹き付け、JIS B 0601に準ずる表面粗さが40〜10μmの範囲の凹凸表面を形成させても良いし、あるいは、強化処理が未だなされていない市販の板硝子(フロートガラス)の表面に、粒径粗さ60〜130メッシュの金剛砂を圧縮空気により吹き付け、JIS B 0601に準ずる表面粗さが40〜10μmの範囲の凹凸表面を形成させてから、その後、得られたスリガラス状の板硝子を物理的又は化学的に強化処理することにより凹凸表面を有する強化硝子板を製造しても良い。この際、スリガラス状の板硝子を物理的に強化処理するには、硝子板を軟化温度付近にまで加熱した後、急冷することでガラス表面に圧縮応力を発生させて強化を行う。又、化学的に強化処理するには、硝子板を高温で溶融した塩(KNO3)に浸漬し、硝子中のナトリウムとカリウムを置換することにより硝子表面に圧縮応力を生じさせる。
【0021】
次工程の工程Bでは、前記工程Aにおいてサンドブラスト処理された強化硝子板の表面の乱反射を抑制して透視性を向上させるために、当該強化硝子板を、フッ酸の入った処理浴の中に浸漬させ、取り出し、洗浄、乾燥させる。このような酸処理によって、サンブラストにより形成されたJIS B 0601に準ずる表面粗さが40〜10μmの範囲の凹凸表面はほとんど影響を受けないが、凹凸の山から谷又は谷から山への移行部である傾斜面に存在していた細かな凹凸が部分的になだらかになって、強化硝子板の透明性(視認性)が高められ、後工程にて設けられる意匠フィルムの印刷層の絵柄が、極端に滲むことなく、強化硝子板を通して表面側から観察できるようになる。
【0022】
最終工程である工程Cでは、前記工程Bにて得られた強化硝子板の裏面側に、印刷層を設けた意匠フィルムを接着層を介して貼着させるが、接着に使用される接着剤の種類は特に限定されるものではなく、上記印刷層の裏面側には、更に隠蔽性を有する層が設けられても良く、この意匠フィルムの裏面側には更に前述の発泡体シートを貼着しても良い。
以下、本発明の床用硝子タイルの実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
〔実施例1〕
厚み5mm、縦45.5cm、横45.5cmの強化硝子板の表面全体に粒径粗さ100メッシュの金鋼砂を圧縮空気で吹付けて(サンドブラスト加工)表面に凹凸を設けた。
この時の表面粗さをサーフコーダーSE−30K解析装置AY−31(株式会社小坂研究所製)で測定したとろ19μmであった。
(2)上記硝子板をフッ酸のバスに3秒間浸け(フロスト加工)、洗浄、乾燥して半透明な硝子板とし、硝子板基材とした。
(3)ポリエチレンテレフタレートフィルム上に電子写真装置(キャノン製)で画像を形成した。
(4)上記フィルムの画像面に接着剤をコンマコーターにて塗布し乾燥後硝子板基材の凹凸を設けた面の反対の面にロールプレス機にて貼りつけ、圧力700g/cm、熱120℃のアップダウンプレス機にて圧着プレスした。この方法にて製造された硝子板は表面に凹凸が存在し、又、画像も鮮明に反映される透視性となった。そして、このようにして製造した硝子板を滑り防止性試験と衝撃試験を行なった。結果を表1に示す。
【0024】
[滑り防止試験]
硝子板の表面に泥水をまき、実際に複数の人が靴を履いてあらゆる角度から進入し、歩行した時の滑り防止性を次の4段階で評価した。
◎:極めて滑り防止効果あり
○:滑り防止効果あり
△:やや滑り防止効果あり
×:滑り防止効果なし
[衝撃試験]
項目1:硝子板をコンクリート上に置きその上を2tトラックで10往復する。
項目2:硝子板をコンクリート上に置きその上に体重75Kg男性が1.5mから飛び下りる。
項目3:硝子板を壁に立て掛けその表面を質量800gのバールの先端で成人男性が殴打する。
上記3項目にて試験をし、次の2段階で評価した。
○:割れない
×:割れる
【0025】
〔実施例2〕
粒径粗さ80メッシュの金鋼砂でサンドブラスト加工して表面粗さ40μmに凹凸を設ける以外は実施例1と同様の方法で硝子板を製造し、実施例1と同様の試験を行なった。結果を表1に示す。
【0026】
〔実施例3〕
粒径粗さ60メッシュの金鋼砂でサンドブラスト加工して表面粗さ40μmの凹凸を設ける以外は実施例1と同様の方法で硝子板を製造し、実施例1と同様の試験を行なった。結果を表1に示す。
【0027】
〔実施例4〕
粒径粗さ130メッシュの金鋼砂でサンドブラスト加工して表面粗さ10μmの凹凸を設ける以外は実施例1と同様の方法で硝子板を製造し、実施例1と同様の試験を行なった。結果を表1に示す。
【0028】
[比較例1]
粒径粗さ150メッシュの金鋼砂でサンドブラスト加工して表面粗さ7.8μmの凹凸を設ける以外は実施例1と同様の方法で硝子板を製造し、実施例1と同様の試験を行なった。結果を表1に示す。
【0029】
[比較例2]
粒径粗さ50メッシュの金鋼砂でサンドブラスト加工して表面粗さ44μmの凹凸を設ける以外は実施例1と同様の方法で硝子板を製造し、実施例1と同様の試験を行なった。結果を表1に示す。
【0030】
[比較例3]
凹凸面を有さない強化硝子板を基材とし、実施例1と同様の試験を行なった。結果を表1に示す。
【0031】
[比較例4]
硝子板の表面上に、微粒硝子の融着された塊からなる直径が1.0mmの複数の突起物が、1.5mmの間隔で設けられている硝子板(前記引用文献1記載のもの)を基材とし、実施例1と同様の試験を行なった。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
実施例1〜4(本発明品)は優れた滑り防止性を有し、泥水が付着した際の歩行に対し滑り防止効果がある。比較例1は凹凸面がより平滑に近いので実施例1〜4より泥水が付着した際の歩行に対し滑り防止効果が劣る。比較例2は実施例1〜4と同等の滑り防止効果があるが衝撃性が著しく劣る。比較例3は実施例1〜4に比べ泥水が付着した際の歩行に対して滑り防止性が著しく劣る。比較例4は実施例1〜4より泥水が付着した際の歩行に対して滑り防止性が劣る。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の床用硝子タイルは、強化硝子板表面に凹凸を設けたことで滑り防止性に優れる床用硝子タイルとなった。特に泥水付着時の滑り防止性に優れ、室内の床を始め、玄関や浴室等の水や泥水が付着する頻度の高い部位への使用が可能となった床用硝子タイルが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の床用硝子タイルの好ましい一例における層構成を示す図である。
【図2】表面が平滑な硝子板に泥水が付着した際の歩行時の概略断面図である。
【図3】凹凸面を設けた硝子板表面に泥水が付着した際の歩行時の概略断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1:強化硝子板
2:印刷層
3:フィルム基材
4:接着剤層
A:凹部
B:凸部
C:泥水
D:応力負荷体(靴など)
E:強化硝子板
F:圧縮相
イ:始点
ロ:始点
ハ:始点
f1:応力が働く方向
f2:応力が働く方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化硝子板の裏面側に、印刷層を有する意匠フィルムが積層された層構成を有しており、前記強化硝子板の表面側には滑り防止効果を発揮させるために、JIS B 0601に準ずる表面粗さが40〜10μmの凹凸が形成されていることを特徴とする床用硝子タイル。
【請求項2】
印刷層を有する前記意匠フィルムのフィルム基材が、50〜100μmの厚みを有するポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の床用硝子タイル。
【請求項3】
意匠性及び滑り防止性に優れた床用硝子タイルを製造するための方法であって、当該方法が、
工程A:強化硝子板の表面に、粒径粗さ60〜130メッシュの金剛砂を圧縮空気により吹き付け、JIS B 0601に準ずる表面粗さが40〜10μmの範囲の凹凸表面を形成させるか、あるいは、板硝子の表面に、粒径粗さ60〜130メッシュの金剛砂を圧縮空気により吹き付け、JIS B 0601に準ずる表面粗さが40〜10μmの範囲の凹凸表面を形成させた後で、得られた板硝子を物理的又は化学的に強化処理することにより凹凸表面を有する強化硝子板を製造する工程、
工程B:前記工程Aにて得られた強化硝子板の表面の乱反射を抑制して透視性を向上させるために、当該強化硝子板を、フッ酸の入った処理浴の中に浸漬させ、取り出し、洗浄、乾燥させる工程、及び、
工程C:前記工程Bにて得られた強化硝子板の裏面側に、印刷層を設けた意匠フィルムを接着層を介して貼着する工程
を含むことを特徴とする床用硝子タイルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−302516(P2007−302516A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133158(P2006−133158)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(593090101)株式会社新禅 (6)
【Fターム(参考)】