説明

防火区画貫通部の構造とその施工方法

【課題】 建物内の仕切り床における上下区画間に貫通した区画貫通部からケーブル等の配線を保護する鞘管が脱落するのを防止すると共に火災発生時にはその区画貫通部を閉塞して類焼を防止する。
【解決手段】
仕切り床1に鞘管6を挿通した上下方向に貫通する区画貫通孔5を設けて鞘管6内に配線4を挿通している区画貫通部において、鞘管6の上端部とこの鞘管6から引き出されている配線4とに亘って熱膨脹性耐火テープ9を巻着してこの熱膨脹性耐火テープ9を配線4に針金等によって固定することにより区画貫通孔5からの鞘管6の脱落を防止していると共に、火災発生時には上記熱膨脹性耐火テープ9の熱膨脹により区画貫通孔5を閉塞して火炎等が隣接する区画側に侵入するのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内を上下防火区画に画成しているスラブ等の耐火仕切り床に設けた防火区画貫通部の構造と、この防火区画貫通部の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物内に設けられている耐火仕切り壁に、この耐火仕切り壁によって画成された区画間に貫通するケーブルや配管等の貫通部を設ける場合、特許文献1に記載されているように、仕切り壁に区画間を連通させた区画貫通孔を設け、この区画貫通孔に耐熱性に劣る合成樹脂管からなる鞘管を挿通したのち、この鞘管と区画貫通孔との間の隙間にコーキング材を充填して隙間を閉塞し、この鞘管内を通じてケーブルや配管等を区画間に貫通させている。
【0003】
さらに、このようなケーブルや配管等の区画貫通部の構造において、火災が発生した際には、鞘管が溶融或いは熱変形して区画貫通孔内を通じて区画間が連通した状態となり、火災が発生した区画側から火炎や煙等が隣接する区画側に侵入して該区画部が短時間で類焼する虞れがあるため、鞘管の外周面に熱膨脹性耐火テープを巻き付けておき、火災発生時にこの熱膨脹性耐火テープを膨脹させて区画貫通孔内を全面的に閉塞する発泡断熱層を形成するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3119045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された防火区画貫通部の構造によれば、仕切り壁に区画貫通孔が左右に隣接する区画間に水平方向に貫通している場合には、この区画貫通孔に鞘管を挿嵌してこの鞘管内を通じて隣接する区画間にケーブルや電線等を貫通状態に配線しても、鞘管と区画貫通孔との間の隙間に充填しているコーキング材等の充填材によって鞘管を区画貫通孔内に確実に保持しておくことができるが、仕切り壁がコンクリート製スラブ等からなる仕切り床である場合には、この仕切り床によって画成された上下区画間に配線を貫通させるための区画貫通孔は上下方向に設けられているため、この区画貫通孔に挿通した鞘管と区画貫通孔との間の隙間に上記コーキング材等の充填材を充填しても、充填材は保持力が弱くて劣化や振動等により鞘管が区画貫通孔から脱落し、火災発生時にはこの鞘管の外周面に巻装している上記熱膨脹性耐火テープの熱膨脹によって区画貫通孔を閉塞することができなくなる事態が発生するといった問題点がある。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、上下方向に貫通している区画貫通孔からケーブル等の配線を保護する鞘管が脱落することなく、貫通孔内に確実に配設しておくことができ、さらに、火災発生時には熱膨脹性耐火テープの熱膨脹によって区画貫通孔を確実に閉塞することができる防火区画貫通部の構造とその施工方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の防火区画貫通部の構造は、請求項1に記載したように、建物内を上下防火区画に画成している仕切り床に鞘管を挿通した上下方向に貫通する区画貫通孔を設けてあり、この区画貫通孔の開口端と鞘管の外周面との隙間にコーキング材を充填していると共に鞘管に配線を挿通、保護してなる防火区画貫通部において、上記区画貫通孔の上端開口部から突出した鞘管の上端部とこの鞘管の上端部から突出した上記配線間に亘って熱膨脹性耐火テープを巻装し、この熱膨脹性耐火テープを鞘管の上端から突出した上記配線に固定していることを特徴とする。
【0008】
このように構成した防火区画貫通部の構造において、請求項2に係る発明は、鞘管の上端から突出した配線部分に熱膨脹性耐火テープを金属線等の線条材の結着によって固定していることを特徴とする。
【0009】
さらに、請求項3に係る発明は、鞘管は合成樹脂製管であって、区画貫通孔に挿入しているこの鞘管の長さ方向の中央部外周面に熱膨脹性耐火テープを装着していることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は上記防火区画貫通部の施工方法であって、仕切り床にこの仕切り床によって画成された上下区画間に連通する上下方向に貫通した区画貫通孔を設けたのちこの区画貫通孔内に区画貫通孔よりも長い鞘管を挿通し、この鞘管の外周面の適所を区画貫通孔に支持させた状態にして鞘管に配線を挿通したのち、区画貫通孔から上方に突出する鞘管の上端部外周面とこの鞘管の上端から引き出されている配線の外周面間に亘って熱膨脹性耐火テープを装着することにより、鞘管をこの熱膨脹性耐火テープを介して配線に支持させ、しかるのち、区画貫通孔の上端開口部と鞘管の外周面との間の隙間にコーキング材を充填することを特徴とする。
【0011】
このように構成した防火区画貫通部の施工方法において、請求項5に係る発明は、予め、鞘管の長さ方向の中央部外周面に熱膨脹性耐火テープを装着しておくと共に、下部外周面にバックアップ材を装着しておき、この鞘管を区画貫通孔に挿入してバックアップ材によって鞘管を区画貫通孔に支持させることを特徴とする。
【0012】
さらに、請求項6に係る発明は、区画貫通孔から上方に突出する鞘管の上端部外周面とこの鞘管の上端から引き出されている配線の外周面間に亘って熱膨脹性耐火テープを巻き付けたのち、金属線等の耐熱線条材の結着によって熱膨脹性耐火テープを配線に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、仕切り床によって画成された上下防火区画間にケーブルや電線等の配線を挿通、保護している鞘管を挿通、支持した区画貫通孔を設けている防火区画貫通部において、この区画貫通孔の上端開口部から突出した鞘管の上端部とこの鞘管の上端部から突出した上記配線間に亘って熱膨脹性耐火テープを巻装し、この熱膨脹性耐火テープを鞘管の上端から突出した上記配線に固定しているので、仕切り床を上下方向に貫通した区画貫通孔に挿通している鞘管を熱膨脹性耐火テープを介してこの鞘管に挿通しているケーブルや電線等の配線に吊支状態に強固に支持させておくことができ、従って、鞘管が不測に区画貫通孔から脱落する虞れをなくすることができるばかりでなく、火災発生時には、鞘管が加熱による変形等によって区画貫通孔から脱落したとしても、上記熱膨脹性耐火テープが熱膨脹して区画貫通孔の上端開口部を隙間なく閉塞する耐火層を形成し、この耐火層によって火炎や煙、有害ガス等が隣接する区画内に侵入するのを確実に防止することができる。
【0014】
さらに、請求項2に係る発明によれば、鞘管の上端から突出した配線部分に熱膨脹性耐火テープを金属線等の線条材の結着によって固定しているので、常態においては、この線条材によって鞘管をケーブルや電線等の配線に確実に固定しておくことができると共に鞘管によって配線を保護しておくことができる。
【0015】
また、請求項3に係る発明によれば、鞘管は合成樹脂製管であって、区画貫通孔に挿入しているこの鞘管の長さ方向の外周面中央部に熱膨脹性耐火テープを装着しているので、火災発生時において、鞘管が脱落することなく残存している場合には、鞘管の溶融と共に熱膨脹性耐火テープの熱膨脹によって区画貫通孔内を閉塞することができ、区画貫通孔の上端から突出した鞘管上端部に装着している上記熱膨脹性耐火テープの熱膨脹による区画貫通孔の開口端の閉塞と共に、区画貫通孔をより確実に閉塞して類焼を防止することができる。
【0016】
請求項4に係る発明は、上記防火区画貫通部の施工方法であって、仕切り床にこの仕切り床によって画成された上下区画間に連通する上下方向に貫通した区画貫通孔を設けたのちこの区画貫通孔内に区画貫通孔よりも長い鞘管を挿通し、この鞘管の外周面の適所を区画貫通孔に支持させた状態にして鞘管にケーブル又は電線等の配線を挿通したのち、区画貫通孔から上方に突出する鞘管の上端部外周面とこの鞘管の上端から引き出されている配線の外周面間に亘って熱膨脹性耐火テープを装着することにより、鞘管をこの熱膨脹性耐火テープを介して配線に支持させるものであるから、仕切り床を上下方向に貫通している区画貫通孔内に挿通した鞘管をこの鞘管に挿通したケーブル又は電線等の配線に熱膨脹性耐火テープを介して確実に支持させた防火区画貫通部を簡単に施工することができると共に、火災発生時においては、区画貫通孔から鞘管が脱落していても、上記熱膨脹性耐火テープの熱膨脹によって区画貫通孔を閉塞することができる防火区画貫通部を得ることができる。
【0017】
さらに、請求項5に係る発明によれば、上記防火区画貫通部の施工時に、予め、長さ方向の外周面中央部に熱膨脹性耐火テープを装着しておくと共に、下部外周面にバックアップ材を装着しておき、この鞘管を区画貫通孔に挿入してバックアップ材によって鞘管を区画貫通孔に支持させるので、この鞘管に対するケーブルや電線等の配線の挿通作業が円滑に行えるばかりでなく、区画貫通孔から上方に突出した鞘管の上端部と、鞘管から上方に引き出されている上記配線部分間に亘る熱膨脹性耐火テープの装着作業も簡単に行うことができ、その上、火災発生時にはこの熱膨脹性耐火テープの熱膨脹と、鞘管の長さ方向の外周面中央部に装着している熱膨脹性耐火テープの熱膨脹とによって区画貫通孔を確実に閉塞し得る防火区画貫通部を提供することができる。
【0018】
また、請求項6に係る発明によれば、区画貫通孔から上方に突出する鞘管の上端部外周面とこの鞘管の上端から引き出されている配線の外周面間に亘って熱膨脹性耐火テープを巻き付けたのち、金属線等の耐熱線条材の結着によって熱膨脹性耐火テープを配線に固定するので、鞘管を熱膨脹性耐火テープを介して鞘管から引き出されている配線に簡単且つ確実に固定、支持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明防火区画貫通部の区画貫通孔部分を縦断した状態の側面図。
【図2】区画貫通孔の上端開口部から突出している鞘管部分の斜視図。
【図3】外周面に熱膨脹性耐火テープを装着した鞘管の一部を縦断した側面図。
【図4】鞘管を区画貫通孔内に挿通した状態の側面図。
【図5】鞘管の上端部と配線間に熱膨脹性耐火テープを装着した一部縦断側面図。
【図6】本発明の別な実施の形態を示す一部縦断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1、図2において、1は建物内を上層の防火区画2と下層の防火区画3とに画成しているコンクリート製の床版(スラブ)からなる仕切り床で、この仕切り床1に、上記上下防火区画2、3間に亘ってケーブル又は電線等の配線4を施工するための区画貫通孔5を上下方向に貫設して、この区画貫通孔5に区画貫通孔5の長さよりも長く、且つ、外径が区画貫通孔5の径よりも小径の鞘管6を挿通して区画貫通孔5にバックアップ材7等によって支持させていると共に区画貫通孔5の上側開口端とこの開口端に対向する鞘管6の外周面との間の隙間にシリコーンコーキング等のコーキング材8を充填してあり、さらに、この鞘管6内に上記配線4を挿通して該鞘管6により配線4を保護している。なお、区画貫通孔5は仕切り床1を上下方向に斜めに貫通した状態で穿設されているが、垂直状に貫設しておいてもよいのは勿論である。また、鞘管6の内径は配線4よりも数倍、大径に形成されている。
【0021】
鞘管6はポリエチレン、ポリプロピレン、或いは硬質塩化ビニル等の合成樹脂製のコルゲート管からなり、その上端部を区画貫通孔5の上端開口部から上方に向かって突出させて、この突出上端部と鞘管6から上方に引き出されている上記配線4の引き出し部分間に亘って熱膨脹性耐火テープ9を巻き付け、この熱膨脹性耐火テープ9の内面に設けている粘着剤層又は接着剤層(図示せず)を鞘管6の上端部外周面と上記配線4の外周面に亘って貼着していると共に、配線4に巻き付けている熱膨脹性耐火テープ部分を針金などの金属線、或いは、耐熱性を有する繊維糸条等の線条材10の結着によって配線4に固定している。
【0022】
上記熱膨脹性耐火テープ9は、所望厚みと所望の膨脹率を有し、火災が発生した際にその熱により発泡して体積膨脹し、区画貫通孔5の上端開口部を全面的に閉塞する発泡耐火層を形成するようにその巻層厚みと仕切り床1からの離間距離を設定している。なお、鞘管6としてはコルゲート管に限らず、内外周面が平滑な直管であってもよい。また、区画貫通孔5から突出する鞘管6の突出長を短くすると共にこの鞘管6の上端部と配線4間に亘って巻着している上記熱膨脹性耐火テープ9の下端縁を区画貫通孔5の上端開口部周縁に密着させてこの区画貫通孔5を上記熱膨張性耐火テープ9の下端縁で閉止しておいてもよい。
【0023】
さらに、区画貫通孔5の孔壁に対向させて鞘管6の長さ方向の中央部外周面に、上記熱膨脹性耐火テープ9と同じ材質の熱膨脹性耐火テープ9'を巻き付けることにより装着して防火区画貫通部を構成している。なお、この熱膨脹性耐火テープ9'も、鞘管6を配線4に固定させている上記熱膨脹性耐火テープ9と同様に所望厚みと所望の膨脹率を有し、火災が発生した際に熱により発泡して体積膨脹し、区画貫通孔5を全面的に閉塞する発泡耐火層を形成するように巻層厚みを設定している。
【0024】
熱膨脹性耐火テープの加熱発泡による体積膨脹率は2〜50倍であって、厚みは0.2mm 〜10mmに形成されてあり、上記配線4に鞘管6を固定、支持させる上記熱膨脹性耐火テープ8や鞘管6の長さ方向の中央部外周面に巻着する上記熱膨脹性耐火テープ9'としては、上述したように、所望の厚みと体積膨脹率を有する熱膨脹性耐火テープを選択して熱膨脹した際に、区画貫通孔5を閉塞するように設定している。なお、熱膨脹性耐火テープの加熱発泡による体積膨張率とは、熱膨脹性耐火テープが膨脹して形成される発泡耐火層の体積を、膨脹前の熱膨脹性耐火テープの体積で除した値をいう。
【0025】
このような熱膨脹性耐火テープ9としては、加熱によって膨脹して難燃性を有し、且つ、火炎等によって破壊し難い発泡耐火層を生成する発泡性耐火形成材が使用される。このような発泡性耐火形成材としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛、及び無機充填材を含有する樹脂組成物(A)、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛、及び無機充填材を含有する樹脂組成物(B)が挙げられる。
【0026】
先ず、樹脂組成物(A)について説明する。エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、基本的にはエポキシ基をもつモノマーと硬化剤とを反応させることにより得られる。エポキシ樹脂の硬化方法は、特に限定されず、公知の方法によって行うことができる。エポキシ基をもつモノマーとしては、例えば、2官能のグリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、多官能のグリシジルエーテル型等のモノマーが用いられる。
【0027】
2官能のグリシジルエーテル型のモノマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール型、ポリプロピレングリコール型、ネオペンチルグリコール型、1,6−ヘキサンジオール型、トリメチロールプロパン型、プロピレンオキサイド−ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型等のモノマーが用いられる。グリシジルエーテル型のモノマーとしては、例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸型、テトラヒドロ無水フタル酸型、ダイマー酸型、p−オキシ安息香酸型等のモノマーが用いられる。多官能のグリシジルエーテル型のモノマーとしては、例えば、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、DPPノボラック型、ジシクロペンタジエン・フェノール型等のモノマーが用いられる。これらのエポキシ基をもつモノマーは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0028】
上記硬化剤としては、重付加型又は触媒型のものが用いられる。重付加型の硬化剤としては、例えば、ポリアミン、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタン等が用いられる。触媒型の硬化剤としては、例えば、三級アミン、イミダゾール類、ルイス酸、ルイス塩基等が用いられる。エポキシ樹脂は、加熱時に形成された炭化層(燃焼残渣)が発泡耐火層として機能する上に、架橋構造をとるため熱膨張後の形状保全性に優れている。
【0029】
リン化合物としては特に限定されず、例えば、赤リンや;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム類;以下に示す化学式(化1)で示される化合物等が用いられる。これらのうち、耐火性の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム類、及び、化学式(化1)で示される化合物が好ましく、性能、安全性、費用等の点においてポリリン酸アンモニウム類がより好ましい。
【0030】
【化1】

【0031】
式中、R1及びR3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又は炭素数6〜16のアリール基を示す。R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、又は、炭素数6〜16のアリールオキシ基を示す。
【0032】
赤リンは少量の添加で難燃効果を向上する。赤リンとしては、市販の赤リンを用いることもできるが、耐湿性、混錬時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好適に用いられる。
【0033】
ポリリン酸アンモニウム類としては、特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、取扱性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。市販品としては、例えば、クラリアント社製「EXOLIT AP422」、「EXOLIT AP462」、住友化学工業社製「スミセーフP」、チッソ社製「テラージュC60」、「テラージュC70」、「テラージュC80」等が挙げられる。
【0034】
上記化学式(1)で表される化合物としては、特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルニチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィジ酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。なかでも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。上記リン化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0035】
上記熱膨張性黒鉛は、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理することにより生成するグラファイト層間化合物であり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。上記のように酸処理された熱膨張性黒鉛は、更に、アンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和することによって、中和処理された熱膨張性黒鉛とする。
【0036】
上記脂肪族低級アミンとしては、特に限定されず、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。上記アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、特に限定されず、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0037】
上記中和処理された熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュより小さくなると、黒鉛の膨張度が小さく、所定の発泡耐火層が得られず、粒度が20メッシュより大きくなると、黒鉛の膨張度が大きいという利点はあるが、後述の樹脂分と混練する際に分散性が悪くなり、物性の低下が避けられない。中和処理された熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、東ソー社製「フレームカットGREP−EG」、UCAR Carbon社製「GRAFGUARD」等が挙げられる。
【0038】
上記無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩;硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム「MOS」(商品名)、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ等が挙げられる。
【0039】
上記無機充填剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。上記無機充填剤のうち、特に含水無機物と金属炭酸塩の併用が好ましい。含水無機物と金属炭酸塩は、骨材的な働きをするところから、燃焼残渣の強度向上や熱容量の増大に寄与するものと考えられる。
【0040】
上記水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の含水無機物は、加熱時の脱水反応によって生成した水のために吸熱が起こり、温度上昇が低減されて高い耐熱性が得られる点、及び、加熱残渣として酸化物が残存し、これが骨材となって働くことで残渣強度が向上する点で特に好ましい。水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムは、脱水効果を発揮する温度領域が異なるため、併用すると脱水効果を発揮する温度領域が広がり、より効果的な温度上昇抑制効果が得られることから、併用することが好ましい。
【0041】
上記炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩は、上記リン化合物との反応で膨張を促すと考えられ、特に、リン化合物として、ポリリン酸アンモニウムを使用した場合に、高い膨張効果が得られる。また、有効な骨材として働き、燃焼後に形状保持性の高い残渣を形成する。
【0042】
上記無機充填剤の粒径としては、0.5〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜50μmである。そして、この無機充填剤は、添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため粒径の小さいものが好ましいが、0.5μm未満になると二次凝集が起こり、分散性が悪くなる。上記無機充填剤の添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることで樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、粒径の大きいものが好ましい。また、粒径が100μmを超えると、樹脂組成物の力学的物性が低下する。
【0043】
また、上記無機充填剤は、粒径の大きいものと粒径の小さいものを組み合わせて使用することがより好ましく、組み合わせて用いることによって、発泡性耐火形成材7の力学的性能を維持したまま、高充填化することが可能となる。無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウムである粒径1μmの「ハイジライトH−42M」(昭和電工社製)、粒径18μmの「ハイジライトH−31」(昭和電工社製)、及び、炭酸カルシウムである粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」(白石カルシウム社製)、粒径8μmの「BF300」(備北粉化工社製)等が挙げられる。
【0044】
上記樹脂組成物(A)において、リン化合物の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して50〜150重量部が好ましい。配合量が、50重量部未満になると燃焼残渣に十分な形状保持性が得られず、多くなると機械的物性の低下が大きくなり、使用に耐えられなくなる。
【0045】
上記樹脂組成物(A)において、中和処理された熱膨張性黒鉛の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して15〜100重量部が好ましい。配合量が、15重量部未満では、十分な厚さの発泡耐火層が形成されないため耐火性能が低下し、100重量部を超えると、機械的強度の低下が大きく、使用に耐えられなくなる。
【0046】
上記樹脂組成物(A)において、無機充填剤の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して30〜500重量部が好ましい。配合量が、30重量部未満では、熱容量の低下に伴い十分な耐火性が得られず、500重量部を超えると、機械的強度の低下が大きく、使用に耐えられなくなる。
【0047】
上記樹脂組成物(B)としては、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛並びに無機充填剤を含有するものが用いられる。熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質としては特に限定されず、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ(1−)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリブテン、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ブチルゴム、ニトリルゴム、水添石油樹脂等が挙げられる。
【0048】
上記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質の溶融粘度、柔軟性、粘着性等を調整するため、2種以上をブレンドしたものをベース樹脂として使用してもよい。
【0049】
上記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質には、性能を阻害しない範囲で、架橋や変性が施されてもよい。熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質の架橋や変性を行う時期については特に限定されず、予め架橋、変性した熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質を用いてもよく、後述のリン化合物や無機充填剤等の他の成分を配合する際に同時に架橋や変性してもよい。また、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質に他の成分を配合した後に架橋や変性してもよく、この架橋や変性は、いずれの段階で行ってもよい。
【0050】
上記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質の架橋方法については特に限定されず、通常行われる架橋方法、例えば、各種架橋剤、過酸化物等を使用する架橋方法、電子線照射による架橋方法等が挙げられる。上記樹脂組成物(B)で用いられるリン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛及び無機充填剤は、上記樹脂組成物(A)で用いられるものと同様である。
【0051】
上記樹脂組成物(B)において、リン化合物と中和処理された熱膨張性黒鉛の配合量(両者の合計量)は、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質100重量部に対して20〜500重量部が好ましい。両者の合計量が、20重量部未満になると十分な熱膨張性が得られず、500重量部を超えると均一な分散が困難となるため、均一な厚さに成形することが困難となる。
【0052】
また、リン化合物と中和処理された熱膨張性黒鉛との重量比(熱膨張性黒鉛/リン化合物)は、0.01〜9が好ましい。熱膨張性黒鉛の比率が多くなると、燃焼時に膨張した黒鉛が飛散して十分な発泡耐火層が形成され難くなり、リン化合物の比率が多くなると十分な発泡耐火層が形成されなくなるため、十分な断熱性が得られなくなる。
【0053】
上記樹脂組成物(B)において、無機充填剤の配合量は、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質100重量部に対して50〜500重量部が好ましい。配合量が、50重量部未満になると十分な耐火性が得られず、500重量部を超えると機械的強度が低下する。この樹脂組成物(B)に粘着性が不足する場合は、例えば、上記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質に粘着付与剤を添加することにより、粘着性を付与することができる。粘着付与剤としては特に限定されず、例えば、粘着付与樹脂、可塑剤、油脂類、高分子低重合物等が挙げられる。
【0054】
上記樹脂組成物(A)及び(B)には、その物性を損なわない範囲で、難燃剤、酸化防止剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂等が添加されてもよい。また、樹脂組成物(A)及び(B)は、上記各成分を、例えば、押出機、ニーダーミキサー、二本ロール、バンバリーミキサー等、公知の混練装置を用いて溶融混練することにより得ることができる。これらの樹脂組成物は、公知の方法で成形することにより、熱膨脹性耐火テープ9とすることができる。
【0055】
上記のように構成した防火区画貫通部を施工するには、仕切り床1に、この仕切り床1によって画成された上下防火区画2、3間に連通する上下方向に貫通した区画貫通孔5を設けたのち、図4に示すように、この区画貫通孔5内に、区画貫通孔5の長さよりも長く、且つ、区画貫通孔5の孔径よりもその外径が小径に形成されたポリエチレン等の合成樹脂からなる鞘管6を挿通し、区画貫通孔5の上下開口端からその上下端部をそれぞれ突出させた状態にする。
【0056】
鞘管6を上記区画貫通孔5に挿通する前に、予め、この鞘管6の長さ方向の中央部外周面に、図3に示すように熱膨脹性耐火テープ9'を巻き付けることによって装着しておくと共に、上記図4等に示すように、この鞘管6の下部外周面にウレタン発泡体等の難燃材からなる一定厚みのバックアップ材7をその外径が区画貫通孔5の孔径よりも僅かに大径となるようにリング状に装着しておき、しかるのち、この鞘管6を上記区画貫通孔5に挿入する。
【0057】
この際、バックアップ材7が弾性的に縮径してその外周面を区画貫通孔5の孔壁に摺接させながら鞘管6は区画貫通孔5内に挿入していき、鞘管6の上下端が区画貫通孔5の上下開口端からそれぞれ所定長さ、突出した挿通状態となった時に挿入作業を止めると、区画貫通孔5の孔壁に圧着するバックアップ材7の弾性力によって鞘管6は区画貫通孔5に挿通状態で支持される。なお、上記熱膨脹性耐火テープ9'を巻いた鞘管6の外径が区画貫通孔5の孔径よりも小径となるように巻着されている。
【0058】
この状態にして、鞘管6にケーブル又は電線等の配線4を挿通することにより、区画貫通孔5を通じて上下区画2、3間に亘る配線作業を行い、しかるのち、図5に示すように区画貫通孔5から上方に突出している鞘管6の突出端部の外周面とこの鞘管6から上方に引き出されている配線4の引き出し部分とに亘って熱膨脹性耐火テープ9の下半部と上半部とをそれぞれ巻き付けることによりこの熱膨脹性耐火テープ9の内面に設けている粘着層又は内面に塗布している接着剤層を鞘管6の突出端部の外周面と鞘管6から引き出されている配線4の引き出し部分に貼着し、次いで、この配線4に巻き付けている熱膨脹性耐火テープの上半部分9aの外周面に針金などの金属線、或いは、耐熱性を有する繊維糸条等の線条材10を巻着して該熱膨脹性耐火テープ部分9aをこの線条材10によって配線4上に結着、固定することにより、鞘管6をこの熱膨脹性耐火テープ9を介して配線4に支持させた状態にしたのち、区画貫通孔5の上端開口部とこの開口部に対向する鞘管6の外周面との間の隙間にコーキング材8(図1、図2に示す)を充填して該隙間をコーキング材8により閉止することにより防火区画貫通部の施工を完了する。なお、コーキング材8としては、シリコーンコーキング材に限らず、モルタル、パテ材等を採用することができる。
【0059】
このように構成した防火区画貫通部の構造によれば、常態においては、仕切り床1に設けている区画貫通孔5に挿通して上下区画2、3間に亘って配設されているケーブル又は電線等の配線4は、区画貫通孔5に挿通している鞘管6によって保護されていると共に、この鞘管6は区画貫通孔5から上方に突出している突出部分に熱膨脹性耐火テープ9の下半部を巻着し、且つ、この熱膨脹性耐火テープ9の上半部を鞘管6から引き出されている配線部分に巻着して線条材10により結着しているので、区画貫通孔5内から脱落することなく熱膨脹性耐火テープ9によって配線4に確実に支持させておくことができる。
【0060】
また、火災が発生した時には、鞘管6が加熱により変形或いは溶融すると共にこの鞘管6の長さ方向の中央部外周面に装着している熱膨脹性耐火テープ9'が熱膨脹して区画貫通孔5内を全面的に閉塞する発泡耐火層を形成し、この発泡耐火層によって火炎や煙等が隣接する区画側に侵入するのを防止する。さらに、区画貫通孔5から突出している鞘管6の上端部から配線4に亘って巻着している熱膨脹性耐火テープ9も熱膨脹して区画貫通孔5の上端開口部を隙間なく閉塞する。
【0061】
この熱膨脹性耐火テープ9は、火災発生時に鞘管6が熱変形等によってこの熱膨脹性耐火テープ9から外れて脱落しても、線条材10の結着によって配線4に取り付けられた状態を保持するので、鞘管6の長さ方向の中央部外周面に上記熱膨脹性耐火テープ9'を必ずしも設けておく必要はない。特に、図6に示すように、仕切り床1に区画貫通孔5を垂直状に貫設し、この区画貫通孔5に配線4を挿通、保護している鞘管6を挿通すると共に、区画貫通孔5の上端開口部から突出している鞘管6の上端部とこの鞘管6から引き出されている配線4間に装着した熱膨脹性耐火テープ9の下端部、即ち、鞘管6の上端部を被覆している下端部を区画貫通孔5の上端開口部に密接状態となるように配設しておけば、上下いずれの区画2、3から火災が発生しても、鞘管6の長さ方向の中央部外周面に上記熱膨脹性耐火テープ9'を設けておくことなく、この熱膨脹性耐火テープ9を熱膨脹させて隣接する区画に火炎や煙等が侵入するのを確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 仕切り床
2、3 防火区画
4 配線
5 区画貫通孔
6 鞘管
8 コーキング材
7 バックアップ材
9、9' 熱膨脹性耐火シート
10 線条材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内を上下防火区画に画成している仕切り床に鞘管を挿通した上下方向に貫通する区画貫通孔を設けてあり、この区画貫通孔の開口端と鞘管の外周面との隙間にコーキング材を充填していると共に鞘管に配線を挿通、保護してなる防火区画貫通部において、上記区画貫通孔の上端開口部から突出した鞘管の上端部とこの鞘管の上端部から突出した上記配線間に亘って熱膨脹性耐火テープを巻装し、この熱膨脹性耐火テープを鞘管の上端から突出した上記配線に固定していることを特徴とする防火区画貫通部の構造。
【請求項2】
鞘管の上端から突出した配線部分に熱膨脹性耐火テープを金属線等の線条材の結着によって固定していることを特徴とする請求項1に記載の防火区画貫通部の構造。
【請求項3】
鞘管は合成樹脂製管であって、区画貫通孔に挿入しているこの鞘管の長さ方向の中央部外周面に熱膨脹性耐火テープを装着していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の防火区画貫通部の構造。
【請求項4】
仕切り床にこの仕切り床によって画成された上下区画間に連通する上下方向に貫通した区画貫通孔を設けたのちこの区画貫通孔内に区画貫通孔よりも長い鞘管を挿通し、この鞘管の外周面の適所を区画貫通孔に支持させた状態にして鞘管に配線を挿通したのち、区画貫通孔から上方に突出する鞘管の上端部外周面とこの鞘管の上端から引き出されている配線の外周面間に亘って熱膨脹性耐火テープを装着することにより、鞘管をこの熱膨脹性耐火テープを介して配線に支持させ、しかるのち、区画貫通孔の上端開口部と鞘管の外周面との間の隙間にコーキング材を充填することを特徴とする防火区画貫通部の施工方法。
【請求項5】
予め、鞘管の長さ方向の中央部外周面に熱膨脹性耐火テープを装着しておくと共に、下部外周面にバックアップ材を装着しておき、この鞘管を区画貫通孔に挿入してバックアップ材によって鞘管を区画貫通孔に支持させることを特徴とする請求項4に記載の防火区画貫通部の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−169357(P2011−169357A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32093(P2010−32093)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】