説明

防皺性赤外反射フィルム、およびそれから製造される非平面積層物品

【課題】多種多様な非平面物品を製造することができるフィルムおよびそれから製造される積層物品を提供する。
【解決手段】室温対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光を少なくとも50%反射する複屈折性誘電性多層フィルムを提供する工程と、複合的な湾曲を有する基材32に対して、実質的にしわが形成されずに適合するように前記フィルムが収縮できるように前記フィルムのヒートセットが行われる工程と、を含むフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複屈折性誘電性多層反射フィルム、およびそれから製造される積層物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車用安全ガラスは、通常はガラスである2つの剛性層と、耐引き裂き性で力学的エネルギー吸収性の可塑化ポリビニルブチラール(PVB)中間層とから作製された積層体から製造される。このガラスは、ガラス板の間にPVBシートを配置し、係合する面から空気を排除し、続いてオートクレーブ中で組立体に高温高圧をかけて、PVBとガラスを光学的に透明な構造体に溶融接合することによって製造される。次に、このガラスは自動車の窓、フロントガラス、またはリアガラスに使用することができる。
【0003】
この積層体は、乗り物の窓の性能を向上させるように設計された少なくとも1つの機能層を有してもよい。重要な機能層の1つは、自動車室内に入る赤外線を軽減する。通常、赤外線阻止機能層は、望ましくない太陽放射線を反射または吸収する金属化または着色ポリマーフィルム構造体から作製される。フロントガラスに使用される場合、複合積層構造体は、人間の目で感じられる波長領域(通常約380〜約700ナノメートル(nm))の光の少なくとも約70%を透過し、スペクトルの可視部分の外にある太陽放射線は阻止するべきである。サイドウィンドウまたはリアウィンドウなどのその他のガラス構造体に使用される場合、可視光の透過量に関する制限は通常存在しない。
【0004】
図1Aを参照すると、1枚以上のガラス板に接合させて乗り物用安全ガラス積層体を製造することができる予備積層構造10を示している。予備積層体10は、ポリマー層14と金属化層16とを有する反射機能層12を有する。機能層12は、少なくとも1つのPVB層18の少なくとも1つの面に接合される。任意に、機能層12は第2のPVB層20に接合させることもできる。PVB層18、20の一方または両方は、追加の性能向上層を有してもよい。例えば、PVB層20はシェードバンド層22を任意に有してもよい。
【0005】
図1Bを参照すると、予備積層構造10は、少なくとも1枚、好ましくは2枚のガラス30、32と合わせることによって安全ガラス積層体34を形成することができる。予備積層体10をガラス板30、32と接合させるために、予備積層体10とガラス板30、32を互いに合わせる。積層体34を加熱して、PVB層18、20、ならびに機能層12をガラス板30、32の輪郭に一致させる。積層体34は3つの異なる方法のうちの1つによって組み立てることができる。これらの方法のうち2つは減圧脱気工程を使用し、この工程では可撓性のベルト、リング、またはバッグが積層体縁端に沿って配置され、減圧システムと接続され、同時に、ガラスとPVBの間を一時的に接合するために接合体の予備加熱が行われる。もう1つの方法は、本明細書ではニップローラーと呼ぶ加圧ローラー装置を使用し、これによって積層体に圧力を加えらることで脱気が行われ、層間の接合が促進される。減圧脱気工程と比べると、ニップロール工程の方が必要な手作業工程が少なく、より迅速に積層体を組み立てることができる。少なくともこれらの理由から、多くの自動車用ガラス製造の場合にはニップロール工程が好ましい方法である。
【0006】
乗り物の空気力学を向上させ、外部の視認性を高める目的で、乗り物の窓の形状は平面ではなく、急激な角度と複雑な曲線を有する場合が増えてきている。複雑に湾曲したガラス板の間に積層体10を配置し、ニップロール工程で積層するか、あるいは加熱してPVBをガラスに接合させる場合、ガラス板が大型の場合には特に機能層12は複合的な湾曲に完全に適合させることはできない。しわ、折り目、およびひだが機能層に形成される場合があり、機能層が金属化される場合にはニップロールかけの間に金属化層16に亀裂が生じることもあり、これは安全ガラスの光学的欠陥の原因となる。その結果、現在では湾曲がないかあるいは一次元の湾曲を有する小型の積層体のみがニップロール工程で製造されている。
【0007】
誘電性材料から、好ましくは異なる屈折率を有するポリマーの交互層から作製された複屈折性で非金属性のフィルムは、対象となるスペクトル領域の光を所望の程度反射または吸収し、同時にスペクトルの可視領域で実質的に透明となるため可視光は十分透過するように設計することができる。これらの複屈折性誘電性光学フィルムは、第1の屈折率を有する第1の材料と第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する第2の材料との交互層を含むことが好ましい。
【0008】
フィルムは、ブルースター角(p偏光の反射率が0になる角度)が非常に大きいかまたは存在しないポリマー層の多層スタックであることが好ましい。このフィルムから、p偏光の反射率が、入射角とともに緩やかに減少する多層ミラー、または入射角とは無関係である多層ミラー、または入射角が垂直からはなれるほど増加する多層ミラーが作製される。この多層フィルムはすべての入射方向に対して高い反射率(s偏光とp偏光の両方で)を有する。
【0009】
多層フィルムの反射率特性は層状構造の面内屈折率によって決まる。特に反射率は、各材料のx方向、y方向、およびz方向の屈折率(nx、ny、nz)の間の関係に依存する。本発明のフィルムは、2つの屈折率(通常はx軸とy軸に沿った屈折率、すなわちnxとny)がほぼ等しく第3の屈折率(通常はz軸に沿った屈折率、すなわちnz)は異なる少なくとも1種類の一軸複屈折材料を使用して作製されることが好ましい。x軸とy軸は、多層フィルムの所与の層の面を表す面内軸として規定され、それぞれの屈折率nxとnyは面内屈折率と呼ばれる。
【0010】
一軸複屈折系を得るための方法の1つは、多層ポリマーフィルムを二軸延伸(2つの軸に沿って延伸)することである。隣接する層が異なる応力誘導複屈折を有する場合、多層フィルムを二軸延伸することによって、2つの軸に平行な面に関して隣接層の屈折率に差が生じ、両方の偏光面の光を反射する。一軸複屈折材料は正または負のいずれかの一軸複屈折であってよい。正の一軸複屈折は、z方向の屈折率(nz)が面内屈折率(nxおよびny)よりも大きい場合に起こる。負の一軸複屈折は、z方向の屈折率(nz)が面内屈折率(nxおよびny)よりも小さい場合に起こる。
【0011】
1zがn2x=n2y=n2zと一致するように選択され多層フィルムが二軸延伸される場合、p偏光ではブルースター角が存在せず、そのためすべての入射角で反射率が一定となる。2つの互いに直交する面内軸に延伸された多層フィルムは、層の数、f比、屈折率などに依存して入射光を非常に高い比率で反射することができ、非常に効率的なミラーとなる。
【0012】
多層フィルムの反射率特性を決定する第2要因は、フィルムスタックの層の厚さである。隣接する層の組(一方の層が高い屈折率を有し、他方が低い屈折率を有する)は、全体の光学的厚さが反射する光の波長の1/2であることが好ましい。2成分系の場合は、最大反射率を実現するためには、多層ポリマーフィルムの個々の層の光学的厚さが反射する光の1/4であるが、別の理由でこの層の組はその他の比率の光学的厚さを有することもある。光学的厚さは、材料の面内屈折率と材料の実際の厚さの積として規定され、本明細書で議論されるすべての実際の厚さは任意の延伸またはその他の加工の後で測定される。
【0013】
例えば、近赤外光を反射する層の厚さを選択し、かすめ角で入射する場合でさえも反射率帯域がスペクトルの可視領域に移行しないように赤外領域内に反射帯域を設定することによって、高い入射角でさえもスペクトルの可視領域では透明である赤外ミラーを作製することができる。米国特許第5,882,774号および第6,049,419号に記載される赤外(IR)反射フィルムは、フィルムを通過する太陽エネルギー量を制御し、好ましくは任意の角度で人間の肉眼で感じる光の強度を有意に低下させたり変色させたりすることがない。層の材料、層の厚さ、および層の屈折率は、約700nm〜約2000nmの波長範囲内で赤外線を反射するが可視光は透過するように選択される。このフィルムは、スペクトルの赤外領域で少なくとも幅100nmの帯域にわたって少なくとも50%の平均反射率を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
これらのフィルムは実質的に平坦な基材に適用されて積層体を形成する。しかしながら、非平面基材に適用すると、フィルムにしわが形成され、そのため急激な湾曲または複合的な湾曲を有する積層体にはフィルムを使用されない。乗り物用フロントガラスへの使用が意図される積層体などの実質的に光学的に透明であるべき積層体にとって、しわは特に問題である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の態様では、本発明はフィルムの製造方法に関する。本発明の方法は、対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光を少なくとも50%反射する複屈折性誘電性多層フィルムを提供することを含む。このフィルムは、複合的な湾曲を有する基材に対して、実質的にしわが形成されずに適合するようにフィルムを収縮させるためのヒートセットが行われる。好ましくは、対象となる波長領域は約700nm〜約2000nmである。
【0016】
第2の態様では、本発明はフィルムの製造方法に関する。本発明の方法は、対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光を少なくとも50%反射する複屈折性誘電性多層フィルムを提供することを含む。このフィルムは、加熱によって両方の面内方向でフィルムが少なくとも約0.4%収縮するのに十分な温度でヒートセットが行われる。好ましくは、対象となる波長領域は約700nm〜約2000nmである。
【0017】
第3の態様では、本発明は、対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光を少なくとも50%反射する複屈折性誘電性多層フィルムに関する。このフィルムは、複合的な湾曲を有する基材に対して実質的にしわが形成されずに適合するようにフィルムを収縮させるために十分な温度でヒートセットが行われる。好ましくは、対象となる波長領域は約700nm〜約2000nmである。
【0018】
第4の態様では、本発明は、対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光を少なくとも50%反射する複屈折性誘電性多層フィルムに関する。このフィルムは、加熱によって両方の面内方向でフィルムが少なくとも約0.4%収縮するのに十分な温度でヒートセットが行われる。好ましくは、対象となる波長領域は約700nm〜約2000nmである。
【0019】
第5の態様では、本発明は積層物品の製造方法に関する。本発明の方法は、ガラスなどのグレージング材料の第1の非平面層、第1のエネルギー吸収層、フィルム層、第2のエネルギー吸収層、およびグレージング材料の第2の非平面層を有する積層体を組み立てることを含む。このフィルム層は、対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光を少なくとも50%反射する複屈折性誘電性多層フィルムである。積層体を加熱することで、層間の残留空気が除去され、エネルギー吸収層とフィルム層が非平面グレージング層の形状に適合するように層が接合する。積層体をさらに加熱し積層体に圧力を加えると、層が互いに接合し、光学的な構造体が形成され、その構造体を冷却すると、構造体のフィルム層には実質的にしわが形成されない。好ましくは、対象となる波長領域は約700nm〜約2000nmである。
【0020】
第6の態様では、本発明はグレージング物品のニップロール積層方法に関し、グレージング材料の第1の非平面層、第1のエネルギー吸収層、非金属化フィルム層、第2のエネルギー吸収層、およびグレージング材料の第2の非平面層を有する積層体を組み立てることを含む。このフィルム層は、約700〜約2000nmの波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光を少なくとも50%反射する。層間の残留空気を除去するために積層体が加熱され、これらの層はニップローラーによって接合される。エネルギー吸収層およびフィルム層は、亀裂や折り目が実質的に生じることなく非平面ガラス層の形状に適合する。
【0021】
第7の態様では、本発明は、エネルギー吸収材料の少なくとも1つの層とフィルム層とを含む予備積層体に関する。このフィルム層は、対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光を少なくとも50%反射する複屈折性誘電性多層フィルムである。このフィルムは、複合的な湾曲を有する基材に対して実質的にしわが形成されずに適合するようにフィルムを収縮させるために十分な温度でヒートセットが行われる。好ましくは、対象となる波長領域は約700nm〜約2000nmである。
【0022】
第8の態様では、本発明は、第1の非平面ガラス層、第1のエネルギー吸収PVB層、フィルム層、第2のエネルギー吸収PVB層、および第2の非平面ガラス層を有する光学的に透明な積層物品に関する。このフィルム層は、約700nm〜約2000nmの波長間にある少なくとも幅100nmの帯域の光を少なくとも50%反射する複屈折性誘電性多層フィルムである。好ましくは、積層物品はフロントガラスである。
【0023】
第9の態様では、本発明はガラス物品を有する乗り物に関する。この物品は、第1の非平面ガラス層、第1のエネルギー吸収PVB層、フィルム層、第2のエネルギー吸収PVB層、および第2の非平面ガラス層を有する光学的に透明な積層体である。このフィルム層は、約700nm〜約2000nmの波長間にある少なくとも幅100nmの帯域の光を少なくとも50%反射する複屈折性誘電性多層フィルムである。
【0024】
本発明の1つ以上の実施態様の詳細を、添付の図面および以下の説明で示す。本発明のその他の特徴、目的、および利点は、説明および図面、ならびに請求項から明らかになるであろう。
異なる図面の同様の参照番号は同様の要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】1枚以上のガラス板と接合させて乗り物用安全ガラス積層体を作製することができる予備積層構造の断面図である。
【図1B】乗り物用安全ガラス積層体の断面図である。
【図2A】1枚以上のガラス板と接合させて乗り物用安全ガラス積層体を作製することができる二重予備積層構造の断面図である。
【図2B】1枚以上のガラス板と接合させて乗り物用安全ガラス積層体を作製することができる三重予備積層構造の断面図である。
【図3】乗り物用安全ガラス積層体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のフィルムは、第1の面内屈折率を有する第1の材料と、第1の屈折率とは異なる第2の面内屈折率を有する第2の材料との交互層を有する複屈折性多層誘電性光学フィルムである。このフィルムは、あらゆる入射方向でs偏光とp偏光に対する反射性が高く、対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域で少なくとも50%、好ましくは70%、より好ましくは90%の平均反射率を有する。対象となる波長領域は、意図する用途に応じて幅広く変動しうる。実施態様の1つでは、対象となる波長領域が赤外領域であり、フィルムは赤外領域の入射放射線を反射するように設計される。IR反射フィルム(本明細書では太陽光阻止フィルムとも呼ぶ)は、約700nm〜約2000nmの範囲内のスペクトルの近赤外部分の光を反射するのに十分な光学的厚さ(実際の層の厚さおよび材料の選択によって)を有するポリマー層を有する。
【0027】
実施態様の1つでは、太陽光阻止フィルムは、約1200nmより上のIR領域で発生する一次反射帯域からスペクトルの可視領域で発生するより高次の反射による可視色を除去するように設計された2成分狭帯域IR反射フィルムである。観察角0°でこのフィルムによって遮断すべきである、すなわち透過するべきでない光の帯域幅は約700〜1200nmである。さらに、直角ではない角度の可視色を軽減するために、通常、短波長帯域端は長波長可視帯域端から約100〜150nm離れており、さらにはIRまでシフトしており、そのため使用される最大角度で反射帯域がスペクトルの可視領域にシフトしない。この結果、狭帯域太陽光阻止フィルムは通常の角度では約850nm〜約1200nmを反射する。四分の一波長スタックの場合、近赤外光を反射するためにはこのフィルムの層の組は、425〜600nm(反射させたい光の波長の1/2)の範囲の光学厚さを有することが好ましい。より好ましくは、四分の一波長スタックの場合、近赤外光を反射するためにはフィルムの個々の層の光学的厚さが212〜300nm(反射させたい光の波長の1/4)の範囲である。
【0028】
広い帯域にわたって反射するためには、フィルムの種々の層の厚さが相対的に変化することが好ましく(本明細書では層厚さ勾配と呼ぶ)、これは望ましい帯域幅の反射が実現されるように選択される。実施態様の1つでは、層厚さ勾配は直線的であってもよく、この場合層の組の厚さはフィルムの厚さ方向に沿って一定の比率で増加し、そのため各層の組は、前の層の組の厚さよりもある比率で厚くなる。別の実施態様では、フィルムの一方の主面からもう一方の主面までで層厚さが減少した後、増加し、次に再び減少してもよいし、あるいは米国特許第6,157,490号に記載されるように一方または両方の帯域端がより明瞭となるように設計された交互の厚さ分布を有することもできる。
【0029】
別の実施態様では、本発明は、米国特許第5,360,659号に記載されるような6層の交互繰り返し単位を有する帯域端が拡大された2成分IR反射フィルム構造体を含む。この構造体は、約380〜約700nmの間の可視波長領域の望ましくない2次、3次、および4次反射は抑制し、約700〜約2000nmの間の赤外波長領域の光は反射する。4次を超える反射は、一般にはスペクトルの可視領域ではなく紫外領域にあるか、あるいは問題とならない程度の低強度となる。このフィルムは、第1のポリマー材料(A)と第2のポリマー材料(B)とを含み、その6層の交互繰り返し単位の相対的光学的厚さはおよそ778A.111B.111A.778B.111A.111Bである。繰り返し単位に6層のみを使用するため、材料をより効率的に使用することができ、比較的製造が容易である。この構造体でも、フィルムの厚さ方向に繰り返し単位厚さ勾配を導入することが望ましい。
【0030】
さらに別の実施態様では、2成分フィルムは、約1200〜2000nmの間の波長の赤外光を反射する6層交互層繰り返し単位を含む交互層の第1の部分と、約700〜1200nmの間の波長の赤外光を反射するAB繰り返し単位を有し実質的に光学的厚さが等しい交互層の第2の部分とを含むことができる。このような交互層の組合せは複合設計と呼ばれ、赤外波長領域全体の光を反射する。交互層の両方の部分の層厚さは、角度による感知される色の変化を最小限にするため赤外スペクトル内に反射帯域が得られるように調整可能である。
【0031】
多層光学フィルムは3種類以上の区別可能なポリマーを含むこともできる。第3またはそれ以降のポリマーは、光学スタック中の第1のポリマーと第2のポリマーの間の接着促進層として、光学的な目的でスタック中の追加の成分として、光学スタック間の保護境界層として、スキン層として、機能性コーティングとして、あるいは任意のその他の目的で使用すると好適である場合もある。したがって、第3またはそれ以降のポリマーが使用される場合、その組成は制限されない。
【0032】
別の実施態様では、3種類以上の区別可能なポリマーを有するIR反射フィルムを作製することができる。これによって反射帯域がIRにさらに入り込み、IR反射量は増加するが、高次の高調波の反射により生じるスペクトルの可視領域の色は最小限となる。このようなフィルムの例としては米国特許第RE34,605号に記載のフィルムが挙げられる。RE’305号特許には、3種類の多様で実質的に透明なポリマー材料A、B、およびCを含み、ABCBの繰り返し単位を有する多層光学干渉フィルムが記載されている。これらの層の光学的厚さは約90nm〜約450nmの間であり、それぞれのポリマー材料は異なる屈折率niを有する。
【0033】
太陽光の赤外範囲内の波長の広い帯域幅を反射する(例えば約700〜約2000nmを反射)フィルムを作製するために、フィルムの厚さ方向に層厚さ勾配が導入され、その層厚さはフィルムの厚さ方向で単調増加することが好ましい。好ましくは、3成分系の場合、第1のポリマー材料(A)は第2のポリマー材料(B)と屈折率が少なくとも約0.03異なり、第2のポリマー材料(B)は第3のポリマー材料(C)と屈折率が少なくとも約0.03異なり、第2のポリマー材料(B)の屈折率は、第1のポリマー材料(A)と第3のポリマー材料(C)のそれぞれの屈折率の中間にある。任意またはすべてのポリマー材料は、コポリマーまたはポリマーの混和性混合物を使用することで所望の屈折率を有するように合成することができる。
【0034】
別の有用なフィルム設計が米国特許第6,027,260号に記載されている。スペクトルの第1の領域の電磁放射線の少なくとも1つの偏光に対して1次反射帯域を示し、第1の反射帯域の少なくとも2次好ましくは少なくとも3次またはより高次の高調波は抑制し、1次の高調波の反射率は実質的に一定に維持されるかあるいは入射角の関数として増加する光学フィルムおよびその他の光学体が記載されている。
【0035】
これは、ABCの順序で繰り返すように配列されたポリマー材料A、B、およびCから光学体の少なくとも一部を作製することによって実現され、ここで、Aは互いに直交する軸x、y、およびzに関してそれぞれ屈折率nxA、nyA、およびnzAを有し、Bは軸x、y、およびzに関してそれぞれ屈折率nxB、nyB、およびnzBを有し、Cは軸x、y、およびzに関してそれぞれ屈折率nxC、nyC、およびnzCを有し、軸zはフィルムまたは光学体の面と直交し、nxA>nxB>nxCまたはnyA>nyB>nyCであり、nzC≧nzB≧nzAである。好ましくは、差nzA−nzBおよび差nzB−nzCの少なくとも一方は約−0.05以下である。
【0036】
これらの制約内にあるフィルムまたは光学体を設計することによって、1次反射帯域がスペクトルの赤外領域内にある場合に、入射角によって1次高調波反射が実質的に減少することなく、2次、3次、および4次以上の高次の反射の少なくとも一部の組合せを抑制することができる。
【0037】
別の実施態様では、本発明の赤外反射フィルムは、約1200〜2000nmの間の波長の赤外光を反射し、可視色に寄与するより高次の反射はできるだけ軽減する多成分光学設計を含む交互層の第1の部分と、AB繰り返し単位と実質的に同じ光学的厚さを有し約700〜1200nmの間の波長の赤外光を反射する交互層の第2の部分とを含むことができる。この複合設計は例えば米国特許第5,360,659号に記載のようにして得ることができるが、本明細書に記載される任意の多成分光学設計に有用であり、より広い範囲での用途がある。交互層の両方の部分の層厚さは、角度による感知される色の変化を最小限にするため赤外スペクトル内に反射帯域が得られるように調整可能である。
【0038】
さらに別の実施態様では、スペクトルの可視領域から離れて反射帯域が選択的に配置される場合、フィルムの光学的効率を増加させる「ギャップフィルター」成分を上述の任意のIR阻止フィルムに併用することによって、感知される色の角度による変化を最小限にすることができる。このような成分は、通常の角度では可視スペクトルの帯域端とIR反射帯域の波長帯域端の間のIR線を吸収または反射する。このフィルムは米国特許第6,049,419号により詳細に記載されている。
【0039】
材料の選択
本発明のフィルムの反射率特性を決定するもう1つの要因は、スタック中の層に選択される材料である。多くの種類の材料を使用することができ、所与の用途における材料の的確な選択は、特定の軸における種々の光学層の間で得られる屈折率の一致およびずれに関する要求、ならびに得られる製品に望まれる物理的性質に依存する。簡略化のため、本明細書では第1のポリマーおよび第2のポリマーと呼ぶ2種類の材料のみで作製した光学スタックを考慮しながらさらに本発明のフィルムについて説明する。
【0040】
スタック中の2種類のポリマーのうちの少なくとも1つ(本明細書では第1のポリマーと呼ぶ)は、絶対値の大きな応力光係数を有する。第1のポリマーは、延伸した場合に大きな複屈折が得られることが必要である。用途に依存するが、複屈折は、フィルム面内の2つの直交する方向の間に生じてもよいし、1つ以上の面内方向とフィルム面と直交する方向との間に生じてもよいし、またはこれらの組合せであってもよい。第1のポリマーは延伸後に複屈折を維持すべきであり、それによって最終フィルムに所望の光学的性質が付与される。
【0041】
反射フィルムまたはミラーフィルムを作製するために、屈折率の基準はフィルム面内の任意の方向で等しくなるように適用され、通常は、直交する面内方向で任意の所与の層の屈折率が等しいかほぼ等しくなる。しかしながら、第1のポリマーのフィルム面屈折率は、第2のポリマーのフィルム面屈折率とできるだけ大きく異なると好都合である。このため、延伸前の第1のポリマーの屈折率が第2のポリマーよりも高い場合、延伸方向で面内屈折率が増加し、z軸屈折率は減少して第2のポリマーの屈折率と一致すると好都合である。同様に、延伸前の第1のポリマーの屈折率が第2のポリマーよりも低い場合は、延伸方向で面内屈折率が減少し、z軸屈折率が増大して第2のポリマーの屈折率と一致すると好都合である。第2のポリマーは延伸によって複屈折をほとんどまたは全く示さないか、あるいは反対の(正−負または負−正)複屈折を示すと好都合であり、それによって最終フィルムのフィルム面屈折率と第1のポリマーの屈折率との差ができるだけ大きくなる。これらの基準は、ミラーフィルムがある程度の偏光特性も有することを意味する場合、偏光フィルムに関して前述した基準と適宜組み合わせることができる。
【0042】
ほとんどの用途では、第1のポリマーと第2のポリマーのいずれも、問題となるフィルムの対象帯域幅内に吸収帯域が存在しないと好都合である。したがって、帯域幅内のすべての入射光は反射するか透過するかのいずれかである。しかしながら一部の用途では、第1および第2のポリマーの一方または両方が、特定の波長をすべてまたは部分的に吸収すると有用である場合もある。
【0043】
本発明の太陽光阻止フィルムの第1および第2の光学層、ならびに任意の非光学層は、例えばポリエステルなどのポリマーで構成されるのが一般的である。用語「ポリマー」は、ホモポリマーとコポリマーを含み、同時押出によって、またはエステル交換などの反応によって混和性混合物を得ることができるポリマーまたはコポリマーも含むものと理解されたい。一般に、実質的に応力光係数ならびに延伸後の複屈折の維持を実質的に低下させないようにコモノマーを使用するべきである。実際は、これらの制限によってコモノマー含有率の上限が定まり、その厳密な値は使用するコモノマーの選択によって変動する。しかしながら、コモノマーの混入によって他の性質が向上する場合には、ある程度の光学的性質の妥協は容認できる。用語「ポリマー」、「コポリマー」、および「コポリエステル」は、ランダムコポリマーとブロックコポリマーの両方を含む。
【0044】
本発明の多層反射ミラーおよび偏光子に使用されるポリエステルは一般に、カルボキシレートサブユニットとグリコールサブユニットを含み、カルボキシレートモノマー分子とグリコールモノマー分子の反応によって生成する。各カルボキシレートモノマー分子は2つ以上のカルボン酸官能基またはエステル官能基を有し、各グリコールモノマー分子は2つ以上のヒドロキシ官能基を有する。カルボキシレートモノマー分子はすべてが同種であってもよいし、2種類以上の異なる分子が存在してもよい。グリコールモノマー分子についても同様のことが適用される。用語「ポリエステル」には、炭酸エステルとの反応によって誘導されるポリカーボネートも含まれる。
【0045】
ポリエステル層のカルボキシレートサブユニットの形成に使用すると好適なカルボキシレートモノマー分子としては、例えば、2,6−ナフタレンジカルボン酸およびその異性体、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロオクタンジカルボン酸、1,6−シクロヘキサンジカルボン酸およびその異性体、t−ブチルイソフタル酸、トリメリット酸、スルホン酸ナトリウム化イソフタル酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸およびその異性体、ならびにこれらの酸の低級アルキルエステル、例えばメチルエステルまたはエチルエステルが挙げられる。この場合、用語「低級アルキル」は、C1〜C10直鎖または分岐アルキル基を意味する。
【0046】
ポリエステル層のグリコールサブユニットの形成に使用すると好適なグリコールモノマー分子としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールおよびその異性体、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリシクロデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびその異性体、ノルボルナンジオール、ビシクロオクタンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,4−ベンゼンジメタノールおよびその異性体、ビスフェノールA、1,8−ジヒドロキシビフェニルおよびその異性体、ならびに1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンが挙げられる。
【0047】
本発明の太陽光阻止フィルムに有用なポリエステルはポリエチレンナフタレート(PEN)であり、これはナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールの反応などによって生成することができる。ポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)は第1のポリマーとして選択されることが多い。PENは大きな正の応力光係数を有し、延伸後に効率的に複屈折を維持し、可視範囲の吸光度がほとんどまたは全くない。さらにPENは等方性状態で大きな屈折率を有する。波長550nmの偏光入射光の屈折率は、偏光面が延伸方向と平行である場合に約1.64から約1.9まで増大する。分子配向が増加するとPENの複屈折が増加する。延伸比を大きくしその他の延伸条件を固定して材料の延伸を行うことによって、分子配向を増大させることができる。第1のポリマーとして好適なその他の半結晶質ナフタレンジカルボン酸ポリエステルとしては、例えば、ポリブチレン2,6−ナフタレート(PBN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびそれらのコポリマーが挙げられる。非ポリエステルポリマーも偏光フィルムの作製に有用である。例えば、多層反射ミラーを作製するためにポリエーテルイミドをPENやcoPENのポリエステルと併用することができる。ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンなどのその他のポリエステル/非ポリエステルの組合せ(例えばDow Chemical Corp.(ミシガン州Midland)より商品名Engage 8200で入手可能なもの)も使用可能である。好適な第1のポリマーは例えば、WO99/36248号、WO99/36262号、WO01/22130号、および米国特許出願第09/444,756号に記載されている。
【0048】
好ましい第1のポリマーの1つは、90mol%のナフタレンジカルボン酸ジメチルおよび10mol%のテレフタル酸ジメチルから誘導されるカルボキシレートサブユニットと、100mol%のエチレングリコールサブユニットから誘導されるグリコールサブユニットとから誘導され、固有粘度(IV)が0.48dL/gであるcoPENである。屈折率は約1.63である。本明細書ではこのポリマーを低融点PEN(90/10)と呼ぶ。もう1つの好ましい第1のポリマーは、固有粘度が0.74dL/gでありEastman Chemical Company(テネシー州Kingsport)より入手可能なPETである。
【0049】
その他の必要なポリマー(本発明では第2のポリマーと呼ぶ)は、最終フィルムで少なくとも1方向の屈折率が、同じ方向での第1のポリマーの屈折率と有意に異なるように選択すべきである。通常ポリマー材料は分散性である(すなわち波長によって屈折率が変化する)ため、これらの条件は、対象となる特定のスペクトル帯域幅に関して考慮する必要がある。第2のポリマーの選択は、問題となる多層光学フィルムの意図する用途にのみ依存するのではなく、第1のポリマーや加工条件も考慮して選択されることは、これまでの議論から理解できるであろう。
【0050】
第2の光学層は、第1のポリマーと適合したガラス転移温度を有し、第1のポリマーの等方性屈折率と同様の屈折率を有する種々の第2のポリマーから作製することができる。好適なポリマーの例としては、ビニルナフタレン、スチレン、無水マレイン酸、アクリレート、およびメタクリレートなどのモノマーから生成されるビニルポリマーおよびコポリマーが挙げられる。好適なポリマーの例としては、ポリアクリレート、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)などのポリメタクリレート、およびイソタクチックまたはシンジオタクチックポリスチレンが挙げられる。その他のポリマーとしては、ポリスルホン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアミド酸、およびポリイミドなどの縮合ポリマーが挙げられる。さらに、第2の光学層は、ポリエステルやポリカーボネートなどのポリマーおよびコポリマーから作製することができる。
【0051】
好ましい第2のポリマーは、Ineos Acrylics,Inc.(デラウェア州Wilmington)より商品名CP71およびCP80で入手可能なもののようなポリメタクリル酸メチル(PMMA)ホモポリマー、またはPMMAよりもガラス転移温度が低いポリメタクリル酸エチル(PEMA)である。さらに別の小野増井第2のポリマーとしては、PMMAコポリマー(coPMMA)、例えば75質量%のメタクリル酸メチル(MMA)モノマーと25質量%のアクリル酸エチル(EA)モノマーから生成されるcoPMMA(Ineos Acrylics,Inc.より商品名Perspex CP63で入手可能)、MMAコノモノマー単位およびメタクリル酸n−ブチル(nBMA)コノモマー単位から生成されるcoPMMA、あるいはSolvay Polymers,Inc.(テキサス州Houston)より商品名Solef 1008で入手可能なもののようなPMMAとポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)の混合物が挙げられる。さらに別の好ましい第2のポリマーとしては、Dow−Dupont Elastomersより商品名Engage 8200で入手可能なポリ(エチレン−コ−オクテン)(PE−PO)、Fina Oil and Chemical Co.(テキサス州Dallas)より商品名Z9470で入手可能なポリ(プロピレン−コ−エチレン)(PPPE)、ならびにHuntsman Chemical Corp.(ユタ州Salt Lake City)より商品名Rexflex W111で入手可能なアタクチックポリプロピレン(aPP)とイソタクチックポリプロピレン(iPP)のコポリマーなどのポリオレフィンコポリマーが挙げられる。第2の光学層は、E.I.duPont de Nemours & Co.,Inc.(デラウェア州Wilmington)より商品名Bynel 4105で入手可能なものなどの線状低密度ポリエチレン−g−無水マレイン酸(LLDPE−g−MA)などの官能化ポリオレフィンから作製することもできる。
【0052】
IR反射ミラーの光学層の第1/第2のポリマーの特に好ましい組合せとしては、PEN/PMMA、PET/PMMAまたはPET/coPMMA、PEN/Ecdel、PET/Ecdel、PEN/sPS、PET/sPS、PEN/coPET、PEN/PETG、およびPEN/THVが挙げられる。Ecdelは、Eastman Chemical Company(テネシー州Kingsport)より入手可能なコポリエステルエーテルエラストマーの商品名である。THVは、Minnesota Mining and Manufacturing Company(3M)(ミネソタ州St.Paul)より市販されるフルオロポリマーの商品名である。PMMAはポリメタクリル酸メチルを意味し、coPETはテレフタル酸を主成分とするコポリマーまたはブレンド(前述の通り)を意味し、PETGは第2のグリコール(通常はシクロヘキサンジメタノール)を使用するPETのコポリマーを意味する。sPSはシンジオタクチックポリスチレンを意味する。
【0053】
ミラーフィルムの場合、フィルム面と垂直な方向で第1のポリマーと第2のポリマーの屈折率が一致することが好ましく、その理由は入射光の角度によらず一定の反射率が得られる(すなわちブルースター角が存在しない)からである。例えば、特定の波長で、2軸延伸PENの面内屈折率は1.76となるが、フィルム面に対して垂直方向の屈折率は1.49となる。多層構造体の第2のポリマーとしてPMMAが使用される場合、同じ波長における屈折率は全3方向で1.495となる。別の例はPET/Ecdel系であり、PETの同様の屈折率は1.66および1.51となり、Ecdel等方性屈折率は1.52となる。
【0054】
第1および第2の光学層以外に、本発明の多層反射フィルムは、1層以上のスキン層、または一組の光学層の間の保護境界層などの1層以上の内部非光学層などの1層以上の非光学層を任意に有することができる。非光学層は、多層フィルム構造体を得るため、または加工中または加工後の悪影響または損傷から保護するために使用することができる。一部の用途では、犠牲保護スキンを有することが望ましいこともあり、この場合、使用前にスキン層を光学スタックから剥がすことができるようにスキン層と光学スタックの間の境界面の接着が制御される。
【0055】
多層光学体に引き裂き抵抗性、貫入抵抗性、靭性、耐候性、および耐溶剤性などの性質を付与またはこれらを向上させるように非光学層の材料を選択することができる。通常1層以上の非光学層は、第1および第2の光学層で透過、偏光、または反射する光の少なくとも一部がこれらの層を通過するように配置される(すなわち、これらの層は第1および第2の光学層を透過または反射する光路内に配置される)。通常、非光学層は、対象となる波長領域にわたって光学フィルムの反射特性に実質的な影響を与えない。湾曲が急激な基材に積層した場合に亀裂やしわが生じない本発明のフィルムを得るためには、光学層の性質とともに結晶性や収縮特性などの非光学層の性質を考慮する必要がある。
【0056】
非光学層は任意の適切な材料であってもよいし、光学スタックに使用される材料のうちの1つと同じであってもよい。例えば、非光学層の材料の選択に関して考慮すべき要素としては、%破断時伸び、ヤング率、引き裂き強さ、内部層への接着性、対象の電磁帯域幅における%透過率および吸光度、光学的透明性またはヘイズ、周波数の関数としての屈折率、テクスチャーおよび粗さ、溶融熱安定性、分子量分布、溶融レオロジーおよび同時押出適性、靭性層と光学層の材料の間の混和性および相互拡散性、粘弾性応答、延伸条件下での緩和および結晶化挙動、使用温度における熱安定性、耐候性、コーティングに対する接着性、ならびに種々の気体および溶剤の浸透性が挙げられる。当然ながら前述したように、光学スタックの光学的性質に悪影響を与える光学的性質を選択された材料がもたないことが重要である。非光学層は、第1および第2の光学層に使用される任意のポリマーを含めたポリエステルなどの種々のポリマーから作製することができる。ある実施態様では、非光学層に選択される材料は、第2の光学層に選択される材料と類似または同一である。coPEN、coPET、またはその他のコポリマー材料をスキン層に使用すると、多層光学フィルムの分裂(すなわち、応力で誘発される延伸方向におけるポリマーの結晶化および配向が原因であるフィルムの分断)が軽減される。第1の光学層の延伸に使用される条件下で延伸した場合、coPENの非光学層の配向は非常にわずかであることが多いため、応力による結晶化がほとんどない。
【0057】
好ましくは、第1の光学層、第2の光学層、および任意に使用される非光学層のポリマーは、類似したレオロジー的性質(例えば溶融粘度)を有するように選択され、それによって流れを乱さずに同時押出が可能になる。通常、第2の光学層、スキン層、および任意の他の非光学層のガラス転移温度Tgは、第1の光学層のガラス転移温度よりも低いか約40℃以下高いかのいずれかである。好ましくは、第2の光学層、スキン層、および任意の非光学層のガラス転移温度は第1の光学層のガラス転移温度よりも低い。多層光学フィルムの延伸に長手方向延伸(LO)ローラーが使用される場合、低Tg材料はローラーに固着するため、望ましい低Tgスキン材料を使用することができない。LOローラーが使用されない場合は、この制限は問題とならない。一部の用途では、耐久性がありUV線から光学スタックを保護できることから、好ましいスキン層材料としてPMMAとポリカーボネートが挙げられる。
【0058】
スキン層および他の任意の非光学層は、第1および第2の光学層よりも厚い場合もあるし、薄い場合もあるし、同じ厚さの場合もある。一般にスキン層および任意の非光学層の厚さは、個々の第1および第2の光学層の少なくとも1つの厚さの少なくとも4倍であり、通常は少なくとも10倍であり、少なくとも100倍となる場合もある。特性の厚さを有する多層反射フィルムを作製するために、非光学層の厚さを変動させてもよい。
【0059】
フィードブロックおよびダイ壁面による高い剪断から多層スタックを保護するために、多層スタックの製造中にその一方または両方の主面上にスキン層を同時押出することができ、多くの場合、例えばUV安定剤などの添加剤を、スキン層を構成するポリマーメルトと混合し、製造中の多層光学スタックの一面または両面に改質されたスキン層を同時押出することによって所望の化学的または物理的性質を有する外部層を得ることができる。あるいは、多層フィルムの製造中にスキン層の外側に追加の層を同時押出することができるし、これらの層は別のコーティング作業で多層フィルム上にコーティングすることができるし、あるいはこれらの層は独立したフィルム、箔、あるいは剛性または半剛性補強基材として多層フィルムに積層することもできる。
【0060】
物理的または化学的性質(特にフィルムまたは装置の表面に沿って)を変化または向上させるために本発明のフィルムおよび光学装置に種々の機能層またはコーティングを加えることができる。このような層またはコーティングとしては、例えば、製造工程中のフィルムの取り扱いを容易にするための低摩擦コーティングまたは滑性粒子、多層光学フィルムへの拡散特性を付与するため、または多層光学フィルムを別のフィルムまたは表面と隣接して配置する場合のウェットアウトやニュートン環を防止するための粒子、フィルムを接着ロール形態で使用される場合に使用される感圧接着剤やホットメルト接着剤などの接着剤、接着促進剤、プライマー、および低接着性裏材料を挙げることができる。機能層またはコーティングとしては、耐破砕性、耐貫入性、または貫入引き裂き抵抗性のフィルムおよびコーティングも挙げることができ、例えば、本願と同一の譲受人に譲渡された米国特許出願の発明の名称「GLAZING ELEMENT AND LAMINATE FOR USE IN THE SAME(グレージング要素およびそれに使用される積層体)」の米国特許出願第09/591,584号に記載の機能層が挙げられる。さらなる機能層またはコーティングとしては、WO98/26927号および米国特許第5,773,102号に記載されるような制振フィルム層、水や有機溶剤などの液体、酸素、水蒸気、または二酸化炭素などの気体に対するフィルムまたは装置の浸透特性を変化させたりフィルムを保護したりするためのバリア層、および/またはフィルムまたは装置の機械的完全性または強度を向上させるように意図された基材および支持層を挙げることができる。これらの機能成分は、1層以上のスキン層に取り入れてもよいし、独立したフィルムまたはコーティングとして適用してもよい。
【0061】
一部の用途では、着色フィルムの多層光学フィルムへの積層、フィルム表面への着色コーティングの適用、またはフィルムの作製に使用されるスキン層などの1種類以上の材料への染料または顔料の混入などによってフィルムを着色することによって、多層光学フィルムの外観および/または性能を変化させることが望ましい場合がある。通常、染料または顔料は、赤外、紫外、および/または可視スペクトルの一部を含むスペクトルの1つ以上の設定領域で吸収が起こる。染料または顔料は、フィルムの性質を引き立たせるために使用することができ、特にフィルムがある周波数は透過するがその他は反射する場合に使用することができる。本発明の多層光学フィルムと併用することができる特に有用な着色層は、同時係属中の米国特許出願第09/633,911号に記載されている。このフィルムは、多層フィルム上にスキン層として積層したり、押出コーティングしたり、同時押出したりすることができる。顔料添加量を約0.01〜約1.0質量%の間で変動させて、可視光の透過を約10〜約90%に変動させることができる。実際には、着色フィルム層が多層光学フィルムと併用される場合に、可視光の%透過率が多層光学フィルムの正常値Tvisの約80〜85%から積層構造体に対して直角で測定した法的限度の約70〜75%に減少するように、顔料添加量が選択される。これによって、多層フィルム構造体の日よけ係数が向上する。
【0062】
UV吸収性材料のカバー層への使用も、UV放射線に曝露した場合に不安定になりうる内部層を保護するために使用することができるので望ましい。外観を変化させたり、特定の用途にフィルムを特化するために、本発明の多層光学フィルムをインク、染料、または顔料などで処理することもできる。したがって例えば、本発明のフィルムは、製品の識別、広告、注意書き、装飾、またはその他の上方を示すために使用されるインクまたはその他の印刷表示で処理することができる。スクリーン印刷、凸版印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、点描印刷、レーザー印刷などの種々の方法を使用してフィルム上に印刷することができ、1成分インクおよび2成分インク、酸化乾燥インクおよびUV乾燥インク、溶解インク、分散インク、ならびに100%インク系などの種々のインクを使用することができる。
【0063】
ある用途では、透過性を増大させ反射グレアを軽減させるために、1層以上の反射防止層またはコーティングを有することが望ましい場合もある。好適な層およびコーティングとしては、例えば、従来の真空めっき誘電性金属酸化物または金属/金属酸化物光学フィルム、シリカまたはジルコニアゾルゲルコーティング、低屈折率フルオロポリマーから誘導されるものなどのコーティングまたは同時押出された反射防止層が挙げられる。本発明の太陽光阻止フィルムがPVBなどの力学的エネルギー吸収材料のシートの間に積層される場合、PVBと多層光学スタック材料の間の屈折率の差が大きいことによって生じる界面における反射を最小限にするようにスキン層の屈折率を選択することができる。例えば、スキン層の屈折率が、PVBと同じ屈折率、PVBと高屈折率の第1の光学材料との間の屈折率、またはPVBの屈折率と光学スタックの複合屈折率との間の屈折率になるようにスキン層を選択することができる。ある実施態様では、スキンと光学スタックの間、または多重系の光学スタックの間に保護境界層(PBL)が使用される。これらの実施態様では、PBL材料は、スキンとPBLの間、およびPBLと光学スタックの間のさらなる界面における反射を最小限にするように選択することができる。例えば、PBLの屈折率が、スキンと同じ屈折率、スキンの屈折率と光学スタックの複合屈折率との間の屈折率、または複合光学スタックと同じ屈折率となるように選択することができる。PVBと光学スタックの間の屈折率差をできるだけ小さくするために好ましいスキン層とPBL層は、CoPENとCoPETである。
【0064】
多層光学フィルムに加えることができるさらに別の機能層またはコーティングとしては、例えば金属層およびその他の導電層が挙げられる。金属層は、例えば、金、銀、アルミニウム、およびニッケル、ならびにこれらの金属およびその他の金属の分散体から作製することができる。乗り物用フロントガラス構造体では、金属層はアンテナ、曇り止めおよび曇り取り、霜取り、または電磁遮蔽に使用することができる。その他の層としては、帯電防止コーティングまたはフィルム、難燃剤、UV安定剤、耐摩耗性またはハードコート材料、光学コーティング、曇り止め材料、磁気または光磁気コーティングまたはフィルム、液晶パネル、エレクトロクロミックまたはエレクトロルミネセンスパネル、写真乳剤、プリズムフィルム、およびホログラフィーフィルムまたは画像が挙げられる。さらに別の機能層またはコーティングは、例えばWO97/01440号、WO99/36262号、およびWO99/36248号に記載されている。これらの機能成分は1層以上のスキン層に混入することができるし、独立したフィルムまたはコーティングとして適用することもできる。あるいは多層フィルム自体は、エンボス、ホログラフィー画像、コロナ、電子ビーム、またはプラズマ処理によって改質することができる。
【0065】
上記IR阻止多層光学フィルムはWO99/36248号により作製することができる。これらのフィルムは、複合的な湾曲を有するグレージングに金属化太陽光阻止フィルムをニップロール積層する場合に通常見られる亀裂の問題を解決する。しかしながら、これらのフィルムは、急激で複合的な湾曲を有する大型の積層体および/またはグレージングに適用する場合に特に、ニップロール積層中にしわが発生する場合がある。本発明の別の態様では、工程条件を制御することによって収縮特性が向上したフィルムを製造することができ、それによって、ニップロール積層工程中にしわが発生しないフィルムが得られる。
【0066】
しわのないIRフィルムの製造方法
ポリマー多層フィルムの製造方法はWO99/36248号に詳細に記載されている。押出および層形成の後、フィルムは鋳造ホイール上で冷却されて、ウェブが形成される。次にウェブは、長手方向(ウェブ経路すなわち機械方向(MD)に沿って)および横断方向(ウェブ経路を横断する、すなわち横断方向(TD))に順次長手方向延伸機(LO)とテンターで延伸される。延伸比は、特定の用途に要求される光学的性質および機械的性質を基準にして決定される。代表的なLOでは、温度制御されたローラーの間でフィルム構造体の第1のポリマーのTgよりも低温にウェブが予備加熱される。次にウェブは、第1のポリマーのTgよりも高温までウェブを加熱するIRランプの下である延伸ギャップで延伸される。LOで延伸されたフィルムは冷却ロールで冷却され、次にテンターに送られる。
【0067】
通常、テンターは予備加熱ゾーン、延伸ゾーン、ヒートセットゾーン、および冷却ゾーンの4つのゾーンを有する。これらのゾーンのそれぞれはサブゾーンを有する場合もある。長手方向に延伸されたフィルムはテンター予備加熱ゾーンに入り、フィルムの各端部がチェーンに挟まれる。これらのチェーンはフィルムの速度で移動する。予備加熱されたフィルムは延伸ゾーンに移動し、ここでチェーンは分岐し(レール位置によって制御される)横断方向に延伸される。延伸されたフィルムは次にヒートセットゾーンを通過し、フィルムのさらなる結晶化が促され、収縮およびその他の機械的性質が得られてから、冷却ゾーンを通ってテンターから排出される。完全に延伸されたフィルムは最後にトリミングが行われ、ワインダーに巻き取られる。
【0068】
フィルムが積層される非平面基材が特殊な形状または湾曲を有する場合、しわを軽減するためにフィルムの収縮を各面内方向でそれぞれ制御することができる。基材のある領域の2つの主軸に沿った曲率が等しくない場合、しわが形成されないようにフィルムをその領域に積層するために、フィルムの収縮が各面内方向で異なるように制御することができる。より収縮の大きなフィルムの面内方向は、より大きな曲率を有する基材の方向に合わせるべきである。
【0069】
例えば、非平面で湾曲または複合的な湾曲を有する基材に実質的にしわが形成されないように積層するために、PEN系またはPET系フィルムの場合、収縮は両方の面内方向で約0.4%を超え、好ましくは少なくとも1つの面内方向で約0.7%を超え、より好ましくは少なくとも1つの面内方向で約1%を超える。端部の層間剥離を防止するため、収縮は最小限に維持されるべきである。この現象を「引き込み」と呼ぶ。そのため、収縮は好ましくは各面内方向で約3%未満であり、より好ましくは各面内方向で約2.5%未満である。
【0070】
同様の滞留時間でフィルムの収縮を誘導するため、平面基材への積層が意図されたフィルムのヒートセット温度と比較するとテンターヒートセット温度は下げられる。しかしながら、この低いヒートセット温度のために中間層の接着性が低くなることがある。これらの条件の間で妥協点を見つけ、収縮の増加と許容できる中間層の接着性が得られる工程条件を発見することが目標となる。
【0071】
収縮を最小限にするためには、フィルム延伸後に結晶成長を最大化する温度および/または滞留時間などのヒートセット条件を選択することが望ましい。この温度はフィルムの材料の依存し、通常は、構造体中の最高Tgを有するフィルム中のポリマー、通常は第1のポリマーおよび/またはスキン層を構成するポリマー(本明細書では主ポリマーと呼ぶ)のガラス転移温度と溶融温度の間である。前述したように、スキン層は第1のポリマーと同じポリマーの場合もあるし、異なるポリマーの場合もある。しかしながら、スキン層のTgは第1のポリマーのTg以下であることが好ましい。
【0072】
例えば、平面基材への積層が意図されるPEN系多層IRミラーフィルムの通常のヒートセット条件は約249℃である。収縮を制御し、しわが形成されずに非平面基材に積層するのに好適なフィルムを得るためには、PEN系多層IRミラーフィルムのヒートセット温度は約10秒間で約199℃〜約204℃の間、好ましくは約202℃に下げるべきである。非平面基材への積層に好適なPET系多層IRミラーフィルムのヒートセット温度は約10秒間で約227℃〜243℃、好ましくは約235℃〜約241℃にするべきである。
【0073】
ヒートセット温度および滞留時間以外で、フィルム収縮に影響を与えるもう1つの要因はトーイン(toe−in)である。トーインは、最大レール設定に対して測定したテンターヒートセットゾーン中のレール間隔の減少として規定される。例えば、延伸ゾーンの端でフィルムの最大幅が170.2cmであり、ヒートセットゾーンでのフィルム幅が165.1cmである場合、トーインは5.08cmである。移行を円滑にするために、ヒートセットゾーンの最初のレールは最大レール設定とヒートセットゾーンの残りの部分のレール設定との間であることが好ましい。しかしながら、テンターレール構成とテンター幅は広範囲で変動させることができ、理想的なレール設定は各場合について実験的に求める必要がある。
【0074】
トーインは、TDとMDの両方の面内方向の収縮に影響を与える。さらに、収縮特性に関してトーインとヒートセット温度の間に非線形相互作用が存在する。測定収縮値は、測定中に使用される温度および時間の強い関数でもある。測定収縮値およびヒートセット温度とトーインの間の非線形性は、種々の測定条件によって非常に異なる場合がある。本明細書では収縮特性は、150℃15分間の標準試験条件を使用して測定される。
【0075】
また、必要なトーインは、フィルムの材料、意図する用途、ならびにヒートセット温度および滞留時間に依存する。フィルムの収縮を制御するために、ヒートセット温度とトーインのいずれか一方または両方を変動させることができる。例えば、PEN系多層IRミラーフィルムの場合、統計モデルによる予測では、約1%のMD収縮と約2%のTD収縮を得るためにはテンターヒートセット温度は約10秒間で約202℃で、トーインは最大レール設定約177.8cmから約1.27cm〜約2.54cmとなるべきである。
【0076】
収縮を制御し、しわを形成せずに非平面基材に対して積層するのに好適なフィルムを得るためには、使用されるポリマーに応じてトーインを調整するべきである。PEN系多層IRミラーフィルムの場合、前述の好ましいヒートセット温度、フィルム幅、およびヒートセットゾーン滞留時間においてトーインは約0〜3.81cm、好ましくは約1.27〜2.54cmとなるべきである。PET系多層IRミラーフィルムの場合、前述の好ましい条件においてトーインは約0〜5.08cm、好ましくは約0〜3.81cmとなるべきである。
【0077】
多層IRフィルムは、PVBに対する接着を促進するためにプライマーをコーティングすることができる。コーティングによって、フィルムの収縮特性が変化することもある。通常、プライマーコーティングによってTD収縮が約0.2%〜約0.4%減少し、MD収縮が0.1〜約0.3%増加しうる。この変化量は、コーターオーブンの乾燥温度、ならびにフィルム張力やヒートセットゾーン内の滞留時間に依存する。したがって、積層前の多層IRフィルムにプライマーおよび/またはUVAコーティングなどのコーティングが必要な場合、収縮特性を得るためのフィルム工程条件を計画するときにはコーティング作業によるフィルム収縮特性への影響を考慮すべきである。
【0078】
積層手順
上述の多層IRミラーフィルムは、多種多様な非平面基材に適用することができる。代表的な基材材料としては、ガラスなどのグレージング材料(絶縁、強化、積層、焼きなまし、または熱強化が行われてもよい)、ならびにポリカーボネートやポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのプラスチックが挙げられる。非平面基材という用語は、連続的または複合的な湾曲を有する基材を意味する。複合的な湾曲は、1つの点から2つの異なる非直線方向に基材が湾曲していることを意味する。湾曲は非平面性の程度で表すことができる。例えば、基材の主面から測定した領域の深さ(d)に対する隆起またはへこんだ領域の幅(w)のアスペクト比は、領域の開口部に沿って測定することができる。あるいは、基材の非平面性は、絶対項として測定することもできる。例えば、隆起またはへこんだ領域の深さdは、基材の第1の主面によって画定される幾何学的表面から測定することが好ましく、通常はその幾何学的表面からの最大深さである。
【0079】
本発明の多層IRミラーフィルムは、ニップロール積層工程中に実質的な亀裂または折り目なしに非平面基材に適合させることができる。好ましくは、非平面基材は複合的な湾曲を有する。本明細書で使用される実質的に亀裂または折り目がないとは、なめらかなフィルム表面を約1m未満の距離、好ましくは約0.5mの距離から肉眼で見た場合に不連続部分を発見できないことを意味する。
【0080】
本発明の多層IRミラーフィルムは、実質的にしわが形成されずに非平面基材に適合するようフィルムが収縮できるために十分な温度でヒートセットが行われる。好ましくは、非平面基材は複合的な湾曲を有する。本明細書で使用される実質的にしわが形成されないとは、約1m未満の距離、好ましくは約0.5mの距離から肉眼で見た場合に、なめらかなフィルム表面の収縮による小さな隆起または溝を発見できないことを意味する。
【0081】
多層IRフィルムが乗り物用安全ガラス積層体に積層される場合、その積層構造体は、約1m未満の距離、好ましくは約0.5mの距離から肉眼で見た場合に、しわが実質的に存在せず、好ましくは光学的に透明である。
【0082】
なんらかの理論によって束縛しようとするものではないが、積層工程中に多層IRフィルムにしわが形成されないことの理由として、1)第1の光学層、第2の光学層、および非光学層で弾性率がことなること、2)第2のポリマー層が非晶質であること、ならびに3)光学フィルムスタックが複数の界面を有することを挙げることができる。フィルムのこれらすべての性質がエネルギーの分散を促進し、そのため非平面基材に対する積層およびニップロール工程で好ましい挙動が得られる。本発明の好ましい実施態様では、本発明のフィルムは乗り物用の非平面積層ガラス物品に使用される。
【0083】
安全ガラス積層体などの乗り物用非平面グレージング物品に多層IRミラーフィルム実質的にしわが形成されないように積層するために、積層工程中の加熱/冷却手順および条件は注意深く制御する必要がある。使用される温度は、フィルムのポリマー成分のTg、ならびにPVB、ポリウレタン(PUR)、およびSurlynなどの機械的エネルギー吸収層の粘度およびフィルムに対する接着性に依存する。好ましい力学的エネルギー吸収層はPVBである。好ましくは、予備加熱および脱気工程中にフィルムが収縮する前に、PVB、フィルム、および非平面グレージングシーの間である程度の接着性が得られるべきである。しかしながらPVBは、フィルム収縮前に流動するほど軟質にはならないことが好ましい。フィルムが収縮して積層体形状を形成する間にPVBはIRフィルムの端部に粘着してフィルムをそのままの状態に維持するべきである。IRフィルムの熱膨張からの回復によるしわ形成および端部の層間剥離を防止するために、オートクレーブから出した後の積層体は制御された速度で冷却すべきである。
【0084】
図2Aを参照すると、1枚以上の平面または非平面グレージングシートに接合して乗り物用安全ガラス積層体を製造することができる二重予備積層構造110を示している。予備積層体110は、本発明の防皺性ポリマー多層IRミラーフィルムでできた赤外阻止機能層112を有する。機能層112は、機械的エネルギー吸収層の少なくとも1層118(好ましくは可塑化PVB)の少なくとも一面上に接合させて、二重積層体110を形成することができる。図2Bに示されるように機能層112は、PVBの第2の層120と接合させて、三重予備積層構造体140を形成することができる。PVB層118、120の一方または両方は、PVB層120中のシェードバンド層122などの追加の機能向上層を有することができる。
【0085】
図3を参照すると、予備積層構造体110(図2A)または140(図2B)を作製してから、ガラス130、132などのグレージング材料の少なくとも1枚、好ましくは2枚の平面または非平面シートと合わせて、安全ガラス積層体134を形成することができる。
【0086】
PVB層とIRフィルム層または予備積層体110または140をグレージングシート130、132と接合させるために、予備積層体のPVB層およびIRフィルムとグレージング層とを互いに重ねて配置して組み立てることによって、一体積層構造体134が形成される。続いて積層体134の層が互いに接合され、構造体から空気が除去される。この工程中、IRフィルム112の主ポリマーのTgより低温までオーブンで積層構造体を加熱することが好ましい。これによって、PVB層118、120がフィルム112またはガラス130、132とある程度接着し、フィルム112は積層体構造から収縮する。
【0087】
積層体134は、いくつかの異なる方法で接合し脱気することができる。方法の1つでは、減圧脱気工程を使用し、この工程では、可撓性バンドを積層体縁端部のまわりに配置し、減圧装置と接続し、同時にガラスとPVBの間を一時的に接合させるために積層体を加熱する。別の方法も減圧脱気工程を使用するが、この場合積層体は減圧装置に接続されたバッグに入れられる。さらに別の方法では、積層体に圧力を加えて脱気し粗間の接合を促進する加圧ローラー装置(本明細書ではニップローラーと呼ぶ)を使用する。
【0088】
乗り物用安全ガラスを製造するためのニップロール装置は公知であり、代表例は米国特許第5,085,141号に見ることができる。一般に、ニップロール装置は、1組の下部ローラー、と1組の上部ローラーとの2組の加圧ローラーを備える。積層体134は上部ローラーと下部ローラーの間を通過する。上部ローラーと下部ローラーは空気圧またはその他の力で互いに押し付け合っており、積層体がこれらの間を通過すると、この力によって積層体の層間の空気が除去され、層が互いに接合する。積層するグレージングの曲率に対応した曲率が得られるように、ローラーの位置は独立に調整可能である。2組のローラーは、水平軸にそって支持フレーム内で回転可能なキャリッジにそれぞれ取り付けられている。積層体が加工されるときにキャリッジが回転することによって、ローラーは積層体に対して直角に維持されることでガラスの破壊を防止することができる。
【0089】
積層体134は、1つのニップローラーに通して接合し脱気することができるし、あるいは好ましくは積層体の温度を徐々に上昇させながら一連のニップローラーに通して接合し脱気することができる。積層体134温度が上昇すると、フィルム112とPVB層118、120が非平面ガラス板130、132の形状に適合し始める。またフィルム112は局所的に収縮および/または延伸して、構造体の形状に適合する。
【0090】
次に、積層体134はPVBの粘度特性に依存して最大温度約138℃〜約149℃までオートクレーブ中で加熱され、それによってPVB層118、120および機能層112がガラス板130、132の輪郭に適合し、光学構造体が形成される。最高圧力(通常は約165psiを超える)がこのときに加えられる。これによってPVBが流動して空隙を満たし、均一なサンドイッチ構造体が形成され、積層体の成分が互いにしっかりと接合され、同時にPVBに空気が溶解する時間が最小限となる。
【0091】
製造元次第でオートクレーブサイクルは大きく変動するが、代表的なオートクレーブサイクルの1つは、(1)約15分以内に温度および圧力を周囲条件から約93℃および80psiまで上昇させ、(2)圧力を約80psiに維持しながら約40分以内で温度を約143℃まで上昇させ、(3)温度を約143℃に維持しながら約10分以内に圧力を約200psiまで上昇させ、(4)最高温度および圧力で約20分間維持し、(5)約15分以内温度および圧力を約38℃および150psiまで低下させ、(6)約4分以内に周囲圧力まで低下させることを含む。全体のオートクレーブサイクル全体は通常約60分間〜120分間である。
【0092】
好ましくは、構造体中のIRフィルムを有する積層体134は、特にフィルムの主ポリマーのTg付近では制御された速度でゆっくりと冷却される。これによってIRフィルムの熱膨張からの回復によるしわの発生が軽減され、積層構造体の応力が緩和する。このサイクル中の温度低下が速すぎると、フィルムまたはPVBの水平方向の力によって層間剥離が起こる場合があり、特に積層体端部で起こりうる。積層体に形成された構造が保持されるようにするため、フィルムの主材料のTgより十分低い温度になるまで圧力は維持すべきである。好ましくは、フィルムの主ポリマーのTg付近での冷却は、約7℃/分未満の冷却速度のオーブン空気温度で行われる。
これより、以下の非限定的実施例を参照しながら本発明を説明する。
【実施例】
【0093】
実施例1
第1のポリマーの3M製coPEN(90%PEN/10%PET)と第2のポリマーのIneos Acrylics製PMMA CP71の224層の交互微細層から厚さ2ミル(0.005cm)の多層ポリマーIRミラーフィルムを作製した。このフィルムは、多層スタックの外部のcoPENスキン層とPBL内部層も含んだ。スキンとPBLの全体の厚さは、全フィルム構造体の約37%であった。このフィルムを最初に長手方向延伸機を使用し延伸比約3.3:1でMD方向に延伸し、次にテンターを使用して延伸比約4.0:1でTD方向に延伸した。テンターの温度は、予備加熱ゾーン135℃、延伸ゾーン138℃、および冷却ゾーン49℃であった。ヒートセットゾーンの滞留時間は約10秒間であった。ヒートセット温度およびトーイン条件は、フィルムの収縮特性とともに以下の表1に記載した。
【0094】
プライマー処理していない多層IRフィルム試料を、複合的な湾曲を有するガラス/PVB/フィルム/PVB/ガラスフロントガラス積層体中に配置した。DW 1224 フロントガラスは、Diamler−Chrysler Corporation(ミシガン州Auburn Hills)製造の1999年モデルミニバンへの使用が意図されたものであり、寸法は43インチ(109cm)×60インチ(152cm)である。フィルムのTD方向は、フロントガラスの高さ方向と一致させた。減圧脱気工程を使用して積層試験を実施した。各積層体はクリーンルームで作製した。これらの積層体Ace bandagesで包みプラスチック袋に入れた。袋を密封してから、室温で袋を約63.5cmHgの減圧下に15分間おくことによって積層体の脱気を行った。次に積層体を104℃のオーブンで約45分間加熱接合させた。オーブンから取り出して、Dow Chemical(ミシガン州Midland)より商品名Dowanolで入手可能なグリコールエーテルシーラントで端部を封止し、積層体をオートクレーブに入れた。オートクレーブの開始温度は約38℃であり、約17分以内に温度を約135℃まで上昇させ、その温度で約15分間維持した。温度上昇時に、オートクレーブ内の圧力も室内圧から約19分以内で約200psiまで上昇させ、その圧力を維持した。加熱均熱終了後、約10〜15分以内に約38℃まで温度を低下させた。ほぼ同じ時間で、圧力を大気圧まで低下させた。
積層結果を表1に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
表1に示されるフロントガラス積層結果は、約227℃より低温、好ましくは約210℃以下のより低いテンターヒートセット温度で作製したフィルム試料は、フィルムの収縮が増加し、積層体のしわがより少ないか、あるいは全くしわがなくなったことを示している。MDとTDの両方で収縮が少なくとも約0.7%、好ましくは約1%を超える場合に、しわのない積層体を得ることができる。
【0097】
実施例2
224層の微細層を有する多層IRミラーフィルムを作製した。これらの層は、第1のポリマーの3M製coPEN(90%PEN/10%PET)と第2のポリマーのIneos Acrylics製PMMA CP80が交互に配列したものであった。このフィルムは多層スタックの外部にcoPENスキン層も含んだ。積層前の全フィルム構造体のパーセンテージとしてのスキンとPBLの厚さを表2に示す。フィルムは、最初に長手方向延伸機を使用し延伸比約3.3:1でMD方向に延伸し、次にテンターを使用して延伸比約4.0:1でTD方向に延伸した。テンターの温度は、予備加熱ゾーン135℃、延伸ゾーン138℃、および冷却ゾーン49℃であった。ヒートセットゾーンの滞留時間は約10秒間であった。ヒートセット温度およびトーイン条件は、フィルム試料の収縮特性とともに以下の表2に記載している。計画された実験で選択されプライマー処理されていないフィルム試料を、Ford Motor Company(ミシガン州Dearborn)製造の自動車1999年モデルTaurusへの使用が意図されたフロントガラス(DW1218)に積層した。このフロントガラスは複合的な湾曲を有し、寸法は40インチ(102cm)×63インチ(160cm)であった。標準的製造条件で試料を清浄にし作製した。2層の15ミル(0.038cm)Dupont B14 PVBでIRフィルムをはさみ、各外面上に1枚ずつガラスを配置した。全体の構造体を積層しトリミングした後に、リングシールガスケットをフロントガラス縁端部の周囲に配置し、減圧して、構造体の脱気を行った。減圧中、積層体を温度約100℃の加温オーブンに約11分間入れた。加温オーブンから取り出し、リングシールを取り外し、試料を保持ラックに置いた。
【0098】
次に、ラック上の積層体をオートクレーブに入れた。開始から約23分以内に温度を約38℃から約143℃まで上昇させ、同時に約42分以内に圧力を大気圧から約165psiまで上昇させた。温度を143℃で約34分間維持した後、約50分間かけて徐々に温度を約32℃まで低下させ、さらに約8分間かけて約21℃まで低下させた。圧力は165psiで約15分間維持し、約50分間かけて徐々に圧力を125psiまで低下させ、さらに約8分間かけて大気圧まで低下させた。
以下の表2は、試験した試料、それらの性質、および積層結果を示している。
【0099】
【表2】

【0100】
すべての試料の収縮は両方の面内方向で0.8%を超え、積層フロントガラスにおける試料のしわは見られなかった。収縮が増加すると縁端部引き込みが増加し、したがって縁端部引き込みならびに後の層間剥離や水蒸気透過を軽減するために収縮を制限すべきである。試験範囲内のスキン+PBL厚さは、収縮特性および積層結果にほとんど影響しなかった。フィルム厚さを変化させることで収縮特性を制御でき、それによって積層を向上させることができる。
【0101】
実施例3
120層の微細層を有する多層IRミラーフィルムを作製した。これらの層は、第1のポリマーの3M製coPEN(90%PEN/10%PET)と第2のポリマーのIneos Acrylics製PMMA CP80が交互に配列したものであった。このフィルムは多層スタックの外部にcoPENスキン層も含んだ。全フィルム構造体のパーセンテージとしてのスキンとPBLの厚さを表3に示す。フィルムは、最初に長手方向延伸機を使用し延伸比約3.3:1でMD方向に延伸し、次にテンターを使用して延伸比約4.0:1でTD方向に延伸した。テンターの温度は、予備加熱ゾーン135℃、延伸ゾーン138℃、および冷却ゾーン49℃であった。ヒートセットゾーンの滞留時間は約10秒間であった。ヒートセット温度およびトーイン条件は、フィルム試料の収縮特性とともに以下の表3に記載している。γ−アミノプロピルトリメトキシシランプライマーの4重量%溶液をフィルム試料の両面にコーティングした。
以下の表3に積層体に使用したフィルムとPVBのパラメータを示す。
【0102】
【表3】

【0103】
この積層試験は、複合的な湾曲を有する1999 DW 1224 Chryslerミニバン(NS)フロントガラスを使用して行った。ニップロール脱気工程を利用した。積層体は、湿度および温度が制御されたクリーンルーム中で作製した。積層体はオーブンに通され、ガラス表面温度約57℃で約1分間IR加熱され、第1の組のニップロールに通され、次に第2オーブンガラス表面温度約99℃で約50秒間IR加熱され、もう1つの組のニップロールに通された。次に積層体をラックに置き、以下のサイクルでオートクレーブ処理した。(1)約15分以内に周囲条件から約93℃および80psiまで温度および圧力を上昇させ、(2)圧力を約80psiに維持しながら約40分以内で温度を約143℃まで上昇させ、(3)温度を約143℃に維持しながら約10分以内に圧力を約200psiまで上昇させ、(4)最高温度および圧力で約20分間維持し、(5)約15分以内温度および圧力を約38℃および150psiまで低下させ、(6)約4分以内に室内圧力まで低下させる。
結果を表4に示す。
【0104】
【表4】

【0105】
収縮および厚さの異なる試験試料のすべてについて、折り目、亀裂、またはオレンジピールの問題は生じなかった。フィルムの収縮特性がより低い1つの試料を除けば、ほとんどの試料はしわの問題がなかった。試験範囲内で全体のフィルム厚さ、スキン厚さ、およびPVB厚さの積層結果に対する有意な影響は見られなかった。
【0106】
実施例4
Eastman Chemical Companyより入手可能な0.74 IV PETの第1のポリマーと、Ineos Acrylics Inc.より入手可能なcoPMMA CP63の第2のポリマーの576層の交互微細層を有する厚さ1.6ミル(0.004cm)の多層ポリマーIRミラーフィルムを作製した。また、このフィルムは、光学スタックに使用したものと同じPETのスキン層を微細層スタック外部の上に有した。スキン層およびPBLの厚さは全フィルム厚さの約30%であった。この光学スタックは、6層交互繰り返し単位の相対的光学的厚さが約0.778A、0.111B、0.111A、0.778B、0.111A、0.111Bである第1のポリマー材料(A)と第2のポリマー材料(B)との交互層を含んだ。フィルムは、最初に長手方向延伸機を使用し延伸比約3.4:1でMD方向に延伸し、次にテンターを使用して延伸比約4.0:1でTD方向に延伸した。予備加熱ゾーン、延伸ゾーン、ヒートセットゾーン、および冷却ゾーンのテンター温度はそれぞれ99℃、99℃、232℃、および38℃であった。ヒートセットゾーンの滞留時間は約10秒間であった。トーインは、約177.8cmの最大幅から約1.5インチ(3.8cm)であった。フィルムの収縮は、MDで1.448%、TDで2.883%であった。
【0107】
次に、これらの未プライマー処理多層IRフィルム試料を、複合的な湾曲を有する3枚の1999 DW 1224 Chryslerミニバン(NS)フロントガラスに積層した。この積層体は、ガラス、15ミル(0.04cm)のPVB(DuPont B14)、多層IRフィルム、15ミル(0.04cm)のPVB、ガラスの層状構造を有した。この積層体について実施例1と同じ方法を実施した。3つすべての積層体にしわは見られなかった。
【0108】
実施例5
224層の微細層を有する厚さ2ミル(0.005cm)の多層IRミラーフィルムを作製した。これらの層は、Eastman Chemical Companyより入手可能な0.74 IV PETの第1のポリマーと、Ineos Acrylics Inc.より入手可能なcoPMMA CP63の第2のポリマーのが交互に配列したものであった。また、このフィルムは光学的に同じPETのスキン層を多層スタックの外部の上に有した。スキン層およびPBLの厚さの全フィルム構造体に対するパーセンテージは約37%であった。
【0109】
このフィルムを、最初に長手方向延伸機を使用し延伸比約3.3:1でMD方向に延伸し、次にテンターを使用して延伸比約4.0:1でTD方向に延伸した。テンターの温度は、予備加熱ゾーン99℃、延伸ゾーン99℃、および冷却ゾーン38℃であった。ヒートセットゾーンの滞留時間は約10秒間であった。
【0110】
ヒートセット温度およびトーイン条件を以下の表5に示す。フィルム試料の収縮特性も表5に示す。γ−アミノプロピルトリメトキシシランプライマーの4重量%溶液をフィルム試料の両面にコーティングした。
【0111】
多層IRフィルム試料を、複合的な湾曲を有するChryslerミニバン1999(DW1224)フロントガラスに積層した。これらの積層体は、ガラス/15ミル(0.04cm)のPVB(DuPont B14)/多層IRフィルム/15ミルのPVB/ガラスで構成される。積層は、実施例2に記載の方法と同じ方法を使用して行った。積層結果も表5に示す。
【0112】
【表5】

【0113】
本発明の多数の実施態様について説明してきた。それにもかかわらず、本発明の意図および範囲から逸脱することなく種々の修正を行うことが可能であることは理解できるであろう。したがって、その他の実施態様は請求項の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光を少なくとも50%反射する複屈折性誘電性多層フィルムを提供する工程と、
複合的な湾曲を有する基材に対して、実質的にしわが形成されずに適合するように前記フィルムが収縮できるように前記フィルムのヒートセットが行われる工程と、
を含むフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記対象となる波長領域が約700nm〜約2000nmである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィルムが第1のポリマーと第2のポリマーの交互層を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のポリマーがPENおよびcoPENからなる群より選択され、前記第2のポリマーがPMMAおよびco−PMMAからなる群より選択される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のポリマーがcoPETであり、前記第2のポリマーがPETおよびco−PMMAからなる群より選択される請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒートセット温度が約10秒間で約199℃〜約204℃である請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒートセット温度が約10秒間で約227℃〜約243℃である請求項5に記載の方法。
【請求項8】
フィルム収縮を制御するために選択されたトーインを有するテンターで前記フィルムが延伸される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記テンターが、最大テンター幅約177.8cmで約0cm〜約5.08cmのトーインを有する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光を少なくとも50%反射する複屈折性誘電性多層フィルムを提供する工程と、
加熱によって両方の面内方向で前記フィルムが少なくとも約0.4%収縮するのに十分な温度で前記フィルムのヒートセットを行う工程と、
を含むフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記温度が、加熱によって少なくとも1つの面内方向で前記フィルムが少なくとも約0.7%収縮するのに十分である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記温度が、加熱によって少なくとも1つの面内方向で前記フィルムが少なくとも約1.0%収縮するのに十分である請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記対象となる波長領域が約700nm〜約2000nmである請求項10に記載の方法。
【請求項14】
対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光を少なくとも50%反射する複屈折性誘電性多層フィルムであって、複合的な湾曲を有する基材に対して、実質的にしわが形成されずに適合するように前記フィルムを収縮させるのに十分な温度で前記フィルムのヒートセットが行われるフィルム。
【請求項15】
前記対象となる波長領域が約700nm〜約2000nmである請求項14に記載のフィルム。
【請求項16】
前記フィルムが実質的にしわが形成されないように2つの基材の間に積層することができ、前記基材が複合的な湾曲を有する請求項14に記載のフィルム。
【請求項17】
前記フィルムが第1のポリマーと第2のポリマーの交互層を含む請求項14に記載のフィルム。
【請求項18】
前記第1のポリマーがPENおよびcoPENからなる群より選択され、前記第2のポリマーがPMMAおよびco−PMMAからなる群より選択される請求項17に記載のフィルム。
【請求項19】
前記第1のポリマーがcoPETであり、前記第2のポリマーがPETおよびco−PMMAからなる群より選択される請求項17に記載のフィルム。
【請求項20】
対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光を少なくとも50%反射する複屈折性誘電性多層フィルムであって、加熱によって両方の面内方向で前記フィルムが少なくとも約0.4%収縮するのに十分な温度で前記フィルムのヒートセットが行われるフィルム。
【請求項21】
前記対象となる波長領域が約700nm〜約2000nmである請求項20に記載のフィルム。
【請求項22】
加熱によって少なくとも1つの面内方向で前記フィルムが少なくとも約0.7%収縮するのに十分である温度で、前記フィルムのヒートセットが行われる請求項20に記載のフィルム。
【請求項23】
加熱によって少なくとも1つの面内方向で前記フィルムが少なくとも約1.0%収縮するのに十分である温度で、前記フィルムのヒートセットが行われる請求項20に記載のフィルム。
【請求項24】
前記フィルムが、第1の面内方向における第1の収縮と、第2の面内方向における第2の収縮とを有し、前記第1の方向が前記第2の方向に対して垂直である請求項20に記載のフィルム。
【請求項25】
(a)第1の非平面グレージング材料層と、第1のエネルギー吸収層と、フィルム層と、第2のエネルギー吸収層と、第2の非平面グレージング材料層とを含む積層体であって、前記フィルム層が、対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光を少なくとも50%を反射する複屈折性誘電性多層フィルムを含む積層体を組み立てる工程と、
(b)前記積層体を加熱し、前記層の間の残留空気を除去し、前記層を接合させ、前記エネルギー吸収層と前記フィルム層を前記非平面ガラス層の形状に適合させる工程と、
(c)前記積層体をさらに加熱し圧力を加えて、前記層を互いに接合させ、光学的構造体を形成させる工程と、
(d)前記構造体を冷却させる工程と、を含み、前記構造体の前記フィルム層でしわが実質的に形成されない積層物品の製造方法。
【請求項26】
前記対象となる波長領域が約700nm〜約2000nmである請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ニップローラー、減圧リング、および減圧バッグの少なくとも1つによって、工程(b)中に前記積層体が接合され脱気される請求項25に記載の方法。
【請求項28】
工程(b)において、前記フィルム中の主ポリマーのTgよりも低温に前記積層体が加熱される請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記主ポリマーがcoPENであり、前記積層体が約116℃より低温に加熱される請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記主ポリマーがPETであり、前記積層体が約82〜約116℃に加熱される請求項28に記載の方法。
【請求項31】
工程(c)で前記積層体が、最大圧力約165〜約200psiで約135℃〜約146℃に加熱される請求項25に記載の方法。
【請求項32】
工程(d)の冷却速度が、前記フィルムの主ポリマーのTg付近で約7℃/分未満である請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記第2のエネルギー吸収層がシェードバンド層をさらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記グレージング層が、表面の少なくとも一部で形成された少なくとも1つの複合的な湾曲を有する請求項25に記載の方法。
【請求項35】
前記フィルムが、第1の面内方向における第1の収縮と、第2の面内方向における第2の収縮とを有し、前記第1の収縮は前記第2の収縮とは異なり、前記第1および第2の方向の前記収縮が、前記ガラス層の表面の複合的な湾曲形状に適合する請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記複合的な湾曲が、第1の方向の第1の湾曲と、第2の方向の第2の湾曲とを有し、前記第1の湾曲は前記第2の湾曲よりも大きく、前記フィルムの前記収縮は前記第1の湾曲の前記方向で最大となる請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記エネルギー吸収層がPVBを含む請求項25に記載の方法。
【請求項38】
(a)第1の非平面グレージング材料層と、第1のエネルギー吸収層と、非金属化フィルム層と、第2のエネルギー吸収層と、第2の非平面グレージング材料層とを含む積層体であって、前記フィルム層が、約700〜約2000nmの波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光を少なくとも50%を反射する積層体を組み立てる工程と、
(b)前記積層体を加熱し、前記層の間の残留空気を除去し、ニップローラーで前記層を接合させる工程と、
を含み、前記エネルギー吸収層と前記フィルム層は、実質的に亀裂および/または折り目が形成されることなく前記非平面ガラス層の形状に適合する、グレージング物品のニップロール積層方法。
【請求項39】
(a)前記積層体をさらに加熱し圧力を加えて、前記層を互いに接合させ、光学的構造体を形成させる工程と、
(b)前記構造体を冷却する工程と、
をさらに含む請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記フィルム層が複屈折性誘電性多層フィルムを含む請求項38に記載の方法。
【請求項41】
エネルギー吸収材料層とフィルム層とを含む予備積層体であって、前記フィルム層が、対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光を少なくとも50%を反射する複屈折性誘電性多層フィルムを含み、複合的な湾曲を有する基材に対して、実質的にしわが形成されずに適合するように前記フィルムが収縮するのに十分な温度で前記フィルムのヒートセットが行われる予備積層体。
【請求項42】
エネルギー吸収材料層とフィルム層とを含む予備積層体であって、前記フィルム層が、対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光を少なくとも50%反射する複屈折性誘電性多層フィルムを含み、加熱によって両方の面内方向で前記フィルムが少なくとも約0.4%収縮するのに十分な温度で前記フィルムのヒートセットが行われる予備積層体。
【請求項43】
前記対象となる波長領域が約700nm〜約2000nmである請求項41に記載の予備積層体。
【請求項44】
前記対象となる波長領域が約700nm〜約2000nmである請求項42に記載の予備積層体。
【請求項45】
前記第1のエネルギー吸収材料層とは反対側の前記フィルム表面上に第2のエネルギー吸収材料層をさらに含む請求項41に記載の予備積層体。
【請求項46】
前記第2のエネルギー吸収材料層がシェードバンド層をさらに含む請求項45に記載の予備積層体。
【請求項47】
2つの非平面グレージング材料層の間に請求項45に記載の予備積層体を含む積層体。
【請求項48】
2つの非平面グレージング材料層の間に請求項46に記載の予備積層体を含む積層体。
【請求項49】
第1の非平面ガラス層と、第1のPVB層と、フィルム層と、第2のPVB層と、第2の非平面ガラス層とを含む光学的に透明な積層物品であって、前記フィルム層が、約700〜約2000nmの波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光を少なくとも50%を反射する複屈折性誘電性多層フィルムを含み、前記非平面ガラス層に対して、実質的にしわが形成されずに適合するように前記フィルムが収縮するのに十分な温度で前記フィルムのヒートセットが行われる積層物品。
【請求項50】
前記ガラス層が複合的な湾曲を有する請求項49に記載の積層物品。
【請求項51】
前記物品が乗り物用フロントガラスである請求項49に記載の積層物品。
【請求項52】
第1の非平面ガラス層と、第1のPVB層と、フィルム層と、第2のPVB層と、第2の非平面ガラス層とを含む光学的に透明な積層物品を含む乗り物であって、前記フィルム層が、約700〜約2000nmの波長の間にある少なくとも幅100nmの帯域の光を少なくとも50%を反射する複屈折性誘電性多層フィルムを含み、前記非平面ガラス層に対して、実質的にしわが形成されずに適合するように前記フィルムが収縮するのに十分な温度で前記フィルムのヒートセットが行われる乗り物。
【請求項53】
前記第1および第2のガラス層の少なくとも一部が複合的な湾曲を有する請求項52に記載の乗り物。
【請求項54】
前記物品がシェードバンド層をさらに含む請求項46に記載の乗り物。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−225445(P2011−225445A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−104540(P2011−104540)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【分割の表示】特願2002−510267(P2002−510267)の分割
【原出願日】平成13年5月8日(2001.5.8)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】