説明

防眩フィルムの製造方法および防眩フィルム作製のための金型の製造方法

【課題】高い防眩効果を示しながら、白ちゃけを防止し、画像表示装置に配置してギラツキが発生せず、コントラストの低下がない防眩フィルムの凹凸形状を有する金型を製造し、その金型を用いて、優れた防眩フィルムを製造する。
【解決手段】金型用基材1の表面を研磨する研磨工程と、研磨された面に平坦部と凹部3からなる第1凹凸面4を形成する第1凹凸面形成工程と、第1凹凸面をエッチング処理によって鈍らせて第2凹凸面11を形成する第2凹凸面形成工程と、形成された第2凹凸面にクロムめっきを施すめっき工程とを含み、第1凹凸面における平坦部の占める面積をA(%)とし、凹部の平均深さをB(μm)とし、凹部の中心間直線距離の平均値をC(μm)とし、第2凹凸面形成工程におけるエッチング深さをD(μm)としたときに、特定の条件を満たすことを特徴とする防眩フィルム製造用金型の製造方法ならびに当該金型を用いた防眩フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低ヘイズでありながら防眩特性に優れた防眩(アンチグレア)フィルムの製造方法、かかる防眩フィルムを得るための金属金型の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイパネル、ブラウン管(陰極線管:CRT)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイなどの画像表示装置は、その表示面に外光が映り込むと視認性が著しく損なわれてしまう。このような外光の映り込みを防止するために、画質を重視するテレビやパーソナルコンピュータ、外光の強い屋外で使用されるビデオカメラやデジタルカメラ、反射光を利用して表示を行う携帯電話などにおいては、従来から画像表示装置の表面に外光の映り込みを防止するフィルム層が設けられている。このフィルム層は、光学多層膜による干渉を利用した無反射処理が施されたフィルムからなるものと、表面に微細な凹凸を形成することにより入射光を散乱させて映り込み像をぼかす防眩処理が施されたフィルムからなるものとに大別される。このうち、前者の無反射フィルムは、均一な光学膜厚の多層膜を形成する必要があるため、コスト高になる。これに対して後者の防眩フィルムは、比較的安価に製造することができるため、大型のパーソナルコンピュータやモニタなどの用途に広く用いられている。
【0003】
このような防眩フィルムは従来から、たとえば微粒子を分散させた樹脂溶液を基材シート上に塗布し、塗布膜厚を調整して微粒子を塗布膜表面に露出させることでランダムな凹凸をシート上に形成する方法などによって製造されている。しかしながら、このような微粒子を分散させることにより製造された防眩フィルムは、樹脂溶液中の微粒子の分散状態や塗布状態などによって凹凸の配置や形状が左右されてしまうため、意図したとおりの凹凸を得ることが困難であり、ヘイズが低いものでは十分な防眩効果が得られないという問題があった。さらに、このような従来の防眩フィルムを画像表示装置の表面に配置した場合、散乱光によって表示面全体が白っぽくなり、表示が濁った色になる、いわゆる「白ちゃけ」が発生しやすいという問題があった。また、最近の画像表示装置の高精細化に伴って、画像表示装置の画素と防眩フィルムの表面凹凸形状とが干渉し、結果として輝度分布が発生して見えにくくなる、いわゆる「ギラツキ」現象が発生しやすいという問題もあった。ギラツキを解消するために、バインダー樹脂と分散微粒子との間に屈折率差を設けて光を散乱させる試みもあるが、そのような防眩フィルムを画像表示装置の表面に配置した際には、微粒子とバインダー樹脂界面における光の散乱によって、コントラストが低下しやすいという問題もあった。
【0004】
一方、微粒子を含有させずに、透明樹脂層の表面に形成された微細な凹凸だけで防眩性を発現させる試みもある。たとえば、特開2007−237541号公報(特許文献1)には金属基材の表面に銅めっきまたはニッケルめっきを施し、そのめっき表面を研磨し、その研磨面に微粒子をぶつけて凹凸を形成し、その凹凸形状を鈍らせる加工を施した後、その凹凸面にクロムめっきを施すことによって表面に微細な凹凸を有するロールを製造し、かかるロールの凹凸形状を透明樹脂フィルムに転写することによって表面に微細な凹凸形状を有する防眩フィルムを作製することが記載されている。このようなロールの凹凸形状を転写することによってランダムな凹凸をシート上に形成する方法は、微粒子を含有していないためにコントラストが高くなり、また、再現性良くランダムな凹凸をシート上に形成できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−237541号公報
【特許文献2】特開2010−76385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ロールの凹凸形状を転写することによる防眩フィルムの作製法では、ロールの凹凸形状が防眩フィルムの特性を決定するため、精度良く所望の凹凸形状をロール上に作製する必要がある。しかしながら、特許文献1に記載された方法は、サンドブラスト加工によって凹凸形状を形成するため、ブラスト粒子の粒径分布に起因する凹凸径の分布が生じるとともに、ブラストにより得られるくぼみの深さを制御することが困難であり、防眩機能に優れた凹凸の形状を再現性よく得ることに課題があった。すなわち、十分な防眩効果、白ちゃけの抑制、高コントラスト、およびギラツキの抑制を全て達成することは難しかった。特に、表面凹凸形状に50μm以上の周期を持つ比較的大きい凹凸形状も作製されてしまい、結果として、それらの大きい凹凸形状と画像表示装置の画素が干渉し、輝度分布が発生して見にくくなる、いわゆるギラツキが発生しやすいという問題があった。
【0007】
また特開2010−76385号公報(特許文献2)には金型用基材の表面に銅めっきまたはニッケルめっきを施し、そのめっき面を研磨し、その研磨面に感光性樹脂膜を塗布形成した後、感光性樹脂膜上にパターンを露光し、露光された感光性樹脂膜を現像し、現像された感光性樹脂膜をマスクとして用いてエッチング処理を行うことによって研磨されためっき面に凹凸を形成した後、感光性樹脂膜を完全に除去し、さらにエッチング処理を行うことによって先に形成された凹凸面を鈍らせ、鈍らせた凹凸面にクロムめっきを施すことによって表面に微細な凹凸を有するロールを製造する方法が記載されている。この方法によれば、表面凹凸形状の周期を精度よく制御することが可能であるが、各工程間の関係が具体的には記載されていないため、防眩フィルムに必要とされる凹凸形状の高低差と傾斜角度を得ることは困難であった。
【0008】
よって、本発明の目的は、高い防眩効果を示しながら、白ちゃけによる視認性の低下が十分に防止され、高精細の画像表示装置の表面に配置したときにギラツキが発生せず、コントラストの低下しない防眩フィルムの製作に有用な、表面に微細な凹凸形状を有する金型を精度良く製造しうる方法を提供し、さらに、その金型を用いて、優れた防眩フィルムを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の金型の製造方法は、金型用基材の表面を研磨する研磨工程と、研磨された面に平坦部と凹部からなる第1凹凸面を形成する第1凹凸面形成工程と、第1凹凸面をエッチング処理によって鈍らせて第2凹凸面を形成する第2凹凸面形成工程と、形成された第2凹凸面にクロムめっきを施すめっき工程とを含み、第1凹凸面における平坦部の占める面積をA(%)とし、凹部の平均深さをB(μm)とし、凹部の中心間直線距離の平均値をC(μm)とし、第2凹凸面形成工程におけるエッチング深さをD(μm)としたときに、以下の条件を満たすことを特徴とする。
【0010】
【数1】

【0011】
【数2】

【0012】
【数3】

【0013】
【数4】

【0014】
本発明の金型の製造方法においては、第2めっき工程により形成されたクロムめっき層が1〜10μmの厚みを有することが好ましい。
【0015】
本発明の金型の製造方法における第1凹凸面形成工程は、以下の(1)〜(3)のいずれかの方法によって第1凹凸面を形成することが好ましい。
【0016】
(1)研磨された面に感光性樹脂膜を塗布形成する感光性樹脂膜塗布工程と、感光性樹脂膜上にパターンを露光する露光工程と、パターンが露光された感光性樹脂膜を現像する現像工程と、現像された感光性樹脂膜をマスクとしてエッチング処理を行い、研磨されためっき面に凹凸を形成するエッチング工程と、エッチング処理後に感光性樹脂膜を剥離する感光性樹脂膜剥離工程とを含む方法(第1の好ましい第1凹凸面形成工程)。
【0017】
(2)研磨された面に凹部を切削加工によって形成する切削工程からなり、該切削加工は金型用基材の表面と平行な方向に相対的に直線移動し、かつ直線移動と同時に金型用基材の表面と垂直な方向に微小往復移動する切削工具によって行われる、方法(第2の好ましい第1凹凸面形成工程)。
【0018】
(3)研磨された面に着色塗料を塗布し、着色塗膜を形成する着色塗料塗布工程と、着色塗膜上にレーザーによってパターンを描画するレーザー照射工程と、パターンが描画された着色塗膜をマスクとしてエッチング処理を行い、研磨されためっき面に凹凸を形成するエッチング工程と、エッチング処理後に着色塗膜を剥離する着色塗膜剥離工程とを含む方法(第3の好ましい第1凹凸面形成工程)。
【0019】
本発明はまた、上述した金型を作製し、前記金型の凹凸面を透明基材上に転写し、次いで凹凸面が転写された透明基材を金型から剥がす、防眩フィルムの製造方法についても提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の金型の製造方法によれば、表面に微細な凹凸形状が精度良く形成されていることから、高い防眩機能を示す防眩フィルムの製造に有用なものとなる金型を再現性よく、殆ど欠陥が存在しない状態で製造できる。さらに、本発明の防眩フィルムの製造方法によれば、ヘイズが低く、表示画像の明るさを保ちながら、映り込み防止や反射防止、白ちゃけの抑制、ギラツキ発生防止、コントラスト低下防止など、防眩性能に優れた防眩フィルムを工業的有利に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の金型の製造方法の好ましい一例を模式的に示す図である。
【図2】第1凹凸面を上方から観察した状態を模式的に示す図である。
【図3】第1凹凸面の断面を模式的に示す図である。
【図4】第1凹凸面を上方から顕微鏡で観察した結果を示す図である。
【図5】図4の第1凹凸面の顕微鏡画像から計算された自己相関関数R(x,y)のy=0における断面を示す図である。
【図6】第1凹凸面形成工程の好ましい一例を模式的に示す図である。
【図7】感光性樹脂膜上に露光されるパターンを模式的に示す図である。
【図8】第1凹凸面形成工程の好ましい一例を模式的に示す図である。
【図9】金型用基材の表面と平行な方向に相対的に直線移動し、かつ直線移動と同時に金型用基材の表面と垂直な方向に微小往復移動する切削工具の様子を模式的に示す図である。
【図10】平板状の金型用基材に微細凹部を切削加工するための装置を模式的に示す図である。
【図11】円筒状の金型用基材に微細凹部を切削加工するための装置を模式的に示す図である。
【図12】第1凹凸面形成工程の好ましい一例を模式的に示す図である。
【図13】第1凹凸面がエッチング処理によって鈍化し、第2凹凸面となる様子を模式的に示す図である。
【図14】実施例1の金型作製の際に使用したパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<金型の製造方法>
図1は、本発明の金型の製造方法の好ましい一例を模式的に示す図である。図1には各工程での金型の断面を模式的に示している。本発明の金型の製造方法は、〔1〕研磨工程と、〔2〕第1凹凸面形成工程と、〔3〕第2凹凸面形成工程と、〔4〕めっき工程とを基本的に含む。以下、図1を参照しながら、本発明の金型の製造方法の各工程について詳細に説明する。
【0023】
〔1〕研磨工程
本発明の金型の製造方法ではまず、金型に用いる基材の表面を研磨する。当該工程を経て、基材表面は、鏡面に近い状態に研磨されることが好ましい。これは、基材となる金属板や金属ロールは、所望の精度にするために、切削や研削などの機械加工が施されていることが多く、それにより基材表面に加工目が残っているためである。また、後述するように金型に用いる基材が表面に銅めっきまたはニッケルめっきが施された状態であっても、上述した加工目が残ることがあるし、また、めっきした状態で、表面が完全に平滑になるとは限らないためである。すなわち、このような深い加工目などが残った表面に後述する工程を施したとしても、各工程を施した後に形成される凹凸よりも加工目などの凹凸の方が深いことがあり、加工目などの影響が残る可能性があり、そのような金型を用いて防眩フィルムを製造した場合には、光学特性に予期できない影響を及ぼすことがある。図1(a)には、平板状の金型用基材1が研磨工程によって鏡面研磨された表面2を有するようにされた状態を模式的に示している。
【0024】
金型に用いる基材の表面を研磨する方法については特に制限されるものではなく、機械研磨法、電解研磨法、化学研磨法のいずれも使用できる。機械研磨法としては、超仕上げ法、ラッピング、流体研磨法、バフ研磨法などが例示される。また、研磨工程において切削工具を用いて鏡面切削することによって、金型用基材1の表面2を鏡面としてもよい。その際の切削工具の材質や形状などは特に制限されるものではなく、超硬バイト、CBNバイト、セラミックバイト、ダイヤモンドバイトなどを使用することができるが、加工精度の観点からダイヤモンドバイトを用いることが好ましい。研磨工程後の表面粗度は、JIS B 0601の規定に準拠した中心線平均粗さRaが0.1μm以下であることが好ましく、0.05μm以下であることがより好ましい。研磨後の中心線平均粗さRaが0.1μmより大きいと、最終的な金型表面の凹凸形状に研磨後の表面粗度の影響が残る可能性があるので好ましくない。また、中心線平均粗さRaの下限については特に制限されず、加工時間や加工コストの観点から、おのずと限界があるので、特に指定する必要性はない。
【0025】
なお、本発明の金型の製造方法において、基材の形成に好適に用いられる金属材料としては、コストの観点からアルミニウム、鉄などが挙げられる。さらに取扱いの利便性から、軽量なアルミニウムがより好ましい。ここでいうアルミニウムや鉄は、それぞれ純金属であることができるほか、アルミニウムまたは鉄を主体とする合金であってもよい。
【0026】
また、基材の形状は、当分野において従来より採用されている適宜の形状であれば特に制限されず、平板状であってもよいし、円柱状または円筒状のロールであってもよい。ロール状の基材を用いて金型を作製すれば、防眩フィルムを連続的なロール状で製造することができるという利点がある。
【0027】
さらに、本発明の金型の製造方法においては、研磨工程の前に金型に用いる基材の表面に、めっきを施すことも好ましい。金型に用いる基材の表面に施されるめっきの種類は、第1凹凸面形成工程において良好な加工性を有するものであれば特に制限されず、銅めっき、ニッケルめっき、亜鉛めっきなどが挙げられる。この中でも加工性、被覆性、および平滑化作用の観点から銅めっきまたはニッケルめっきが好ましい。銅めっきまたはニッケルめっきは、被覆性が高く、また平滑化作用が強いことから、金型用基材の微小な凹凸や鬆などを埋めて平坦で光沢のある表面を形成するためである。
【0028】
ここでいう銅またはニッケルとしては、それぞれの純金属であることができるほか、銅を主体とする合金、またはニッケルを主体とする合金であってもよく、したがって、本明細書でいう「銅」は、銅および銅合金を含む意味であり、また「ニッケル」は、ニッケルおよびニッケル合金を含む意味である。銅めっきおよびニッケルめっきは、それぞれ電解めっきで行っても無電解めっきで行ってもよいが、銅めっきであれば通常は電解めっきが採用され、ニッケルめっきであれば通常無電解めっきが採用される。
【0029】
金型用基材の表面にめっきを施す際には、めっき層が余り薄いと、下地表面の影響が排除しきれないことから、その厚みは50μm以上であるのが好ましい。めっき層厚みの上限は臨界的でないが、コストなどとのからみから、一般的には500μm程度までで十分である。
【0030】
以下では、金型に用いる基材の表面にめっきを施していない場合および金型に用いる基材の表面にめっきを施している場合ともに金型用基材もしくは基材と呼ぶ。
【0031】
〔2〕第1凹凸面形成工程
続く第1凹凸面形成工程では、上述した研磨工程によって鏡面研磨を施した基材1の表面2に、平坦部と凹部からなる第1凹凸面を形成する。図1(b)には、基材1の表面2に凹部3が形成され、平坦部5と凹部3からなる第1凹凸面4が形成された状態を模式的に示している。
【0032】
本発明の金型の製造方法においては、第1凹凸面の平坦部の占める面積の割合をA(%)とし、凹部の深さをB(μm)とし、凹部の中心間直線距離の平均値をC(μm)としたとき、上述した式(1)〜(3)の条件を満たすことが好ましい。
【0033】
ここで平坦部5の占める面積の割合Aとは、第1凹凸面を上方から観察した際の金型用基材投影面に対する平坦部の面積の割合のことを指している。図2は、第1凹凸面を上方から観察した状態を示す模式図である。図2において凹部3を灰色で示し、平坦部5を白色で示した。図2に示す場合では、平坦部5の占める面積の割合Aは次の式で表すことができる。
【0034】
(平坦部の占める面積の割合A)=(白色領域の面積)/[(白色領域の面積)+(灰色領域の面積)]×100 式(5)
本発明の金型の製造方法において、第1凹凸面において形成される平坦部5の占める面積の割合Aは式(1)を満たすことが好ましい。図3は、第1凹凸面の断面を模式的に示す図である。図3に示すように第1凹凸面において形成されるある一つの平坦部5の直線距離およびある一つの凹部3の直線距離をそれぞれXおよびYとしたとき、精度良く第1凹凸面を形成するためにはXの平均値XAVEおよびYの平均値YAVEはともに10μm以上であることが好ましい。それぞれの平均値XAVEもしくはYAVEが10μm未満である場合には、直線距離XもしくはYのわずかな変動の及ぼす影響が大きくなり、結果として得られる表面形状に予期せぬムラなどが発生するためである。ここである一つの平坦部の直線距離Xの平均値XAVEおよびある一つの凹部の直線距離Yの平均値YAVEは平坦部の占める面積の割合Aと後述する凹部間の中心間直線距離の平均値Cを用いて次のように表すことができる。
【0035】
【数5】

【0036】
【数6】

【0037】
これらの直線距離の平均値XAVEおよびYAVEがともに10μm以上であることから、式(1)の条件が得られる。
【0038】
凹部の深さBは図3に示したように平坦部と凹部最深部の高低差を意味している。本発明の金型の製造方法においては、凹部の深さBは式(2)を満たすことが好ましい。凹部の深さBが2μmを下回る場合には、第1凹凸面が略平坦な状態となってしまい、第2凹凸面形成工程において表面形状を鈍らせた際に、表面凹凸形状が十分に形成されないこととなる。このような金型から作製された防眩フィルムもまた表面凹凸形状が十分に形成されず防眩効果が不十分となる。一方、凹部の深さBが10μmを超える場合には、続く第2凹凸面形成工程において、凹部と平坦部のエッチング速度が異なる結果となり、適切な第2凹凸面を形成することが困難となるため好ましくない。すなわち、凹部最深部が十分にエッチングされない結果となり、第1の表面凹凸形状が効果的に鈍化せず、第2の表面凹凸形状に傾斜角度の急峻な箇所が残ることとなる。このような金型から作製された防眩フィルムもまた表面凹凸形状に傾斜角度が急峻な箇所が存在することとなり、白ちゃけが発生する。
【0039】
また、凹部の中心間直線距離の平均値Cは最近接の凹部の底面における中心点間の直線距離(間隔)の平均値を意味しており、第1凹凸面を上方から観察した顕微鏡画像もしくは後述するパターンの画像解析によって求めることができる。すなわち、まず顕微鏡画像もしくはパターンを凹部と平坦部が区別できるように2階調の二値化画像データに変換する。得られた画像データの階調を二次元関数h(x,y)で表し、得られた二次元関数h(x,y)をフーリエ変換して二次元関数H(fx,fy)を計算する。次に、得られた二次元関数H(fx,fy)を二乗することによって求められるパワースペクトルを逆フーリエ変換して自己相関関数R(x,y)を計算する。この自己相関関数R(x,y)において原点から最も近い極大値が凹部の中心間直線距離の平均値である。ここで本発明の金型の製造方法において形成される第1凹凸面は、後述するように凹部がランダムに形成されているため、自己相関関数R(x,y)は原点を中心に対称となる。よって、自己相関関数R(x,y)において原点を通る断面から、原点から最も近い極大値を求めることができる。ここで、xおよびyは画像データ面内の直交座標を表し(例えばx方向が画像データの横方向、y方向が画像データの縦方向である)、fxおよびfyはx方向の周波数およびy方向の周波数を表している。
【0040】
実際には、画像データの階調を示す二次元関数h(x,y)は各画素毎の階調が離散的なデータ点の集合として得られるため離散関数である。よって、式(8)で定義される離散フーリエ変換によって離散関数H(fx,fy)を計算し、離散関数H(fx,fy)を二乗することによってパワースペクトルH2(fx,fy)が求められる。このパワースペクトルH2(fx,fy)と式(9)で定義される逆離散フーリエ変換によって自己相関関数R(x,y)が求められる。ここで式(8)および式(9)中のπは円周率、iは虚数単位である。また、Mはx方向の画素数であり、Nはy方向の画素数であり、jは0以上M−1以下の整数であり、kは0以上N−1以下の整数であり、lは0以上M−1以下の整数であり、mは0以上N−1以下の整数である。さらに、ΔfxおよびΔfyはそれぞれx方向およびy方向の周波数間隔であり、式(10)および式(11)で定義される。ここで式(10)および式(11)中のΔxおよびΔyはそれぞれ、x方向、y方向の画素の間隔である。
【0041】
【数7】

【0042】
【数8】

【0043】
【数9】

【0044】
【数10】

【0045】
図4には第1凹凸面を上方から観察した顕微鏡画像の一例を示した。また、図5には図4の顕微鏡画像より計算された自己相関関数R(x,y)におけるy=0の断面を示した。図5より凹部の中心間平均距離の平均値Cは31μmであることが分かる。
【0046】
ここで、防眩フィルムの微細凹凸表面は、防眩フィルムの微細凹凸表面によって発生するギラツキを抑制するという観点から、50μm以上の長周期成分を含まないことが好ましい。しかしながら、10μm以下の短周期成分のみを含む微細凹凸表面では優れた防眩性能が発現しない。よって、防眩フィルムの微細凹凸表面は、十分な防眩効果を発現しつつ、ギラツキを十分に防止するために、10〜50μmの周期を持つ表面形状を主成分として含むことが好ましい。よって、十分な防眩効果を発現しつつ、ギラツキを十分に防止する防眩フィルムを製造するための金型は、10〜50μmの周期を持つ表面形状を主成分として含むことが好ましい。凹部間の中心間直線距離の平均値Cが35μmを上回る場合には、得られる金型に周期が50μm以上である微細凹凸表面形状が形成されやすくなり、結果として、得られる防眩フィルムを高精細の画像表示装置の表面に配置したときにギラツキが発生することとなる。また、凹部間の中心間直線距離の平均値Cが15μmを下回る場合には、得られる金型に周期が10μm以下の短周期成分が多く含まれるようになり、得られる防眩フィルムに優れた防眩性能が発現しない。よって、凹部間の中心間直線距離の平均値Cは式(3)の条件を満たすことが好ましい。
【0047】
第1凹凸面形成工程は平坦部と凹部が精度良く形成される工程であれば特に制限されないが、平坦部と凹部を精度よく、かつ、再現性よく製造するために、以下のいずれかの方法を用いることが好ましい。
【0048】
〔2−1〕第1の好ましい第1凹凸面形成工程
第1の好ましい第1凹凸面形成工程は、〔2−1−1〕感光性樹脂膜塗布工程と、〔2−1−2〕露光工程と、〔2−1−3〕現像工程と、〔2−1−4〕エッチング工程と、〔2−1−5〕感光性樹脂膜剥離工程とを基本的に含む。図6は、本発明の金型の製造方法における第1の好ましい第1凹凸面形成工程を模式的に示す図である。図6には各工程での金型の断面を模式的に示している。
【0049】
〔2−1−1〕感光性樹脂膜塗布工程
感光性樹脂膜塗布工程では、上述した研磨工程によって鏡面研磨を施した基材1の表面2に、感光性樹脂を溶媒に溶解した溶液として塗布し、加熱・乾燥することにより、感光性樹脂膜を形成する。図6(a)には、基材1の表面2に感光性樹脂膜6が形成された状態を模式的に示している。
【0050】
感光性樹脂としては従来公知の感光性樹脂を用いることができる。たとえば、感光部分が硬化する性質をもったネガ型の感光性樹脂としては分子中にアクリル基またはメタアクリル基を有するアクリル酸エステルの単量体やプレポリマー、ビスアジドとジエンゴムとの混合物、ポリビニルシンナマート系化合物などを用いることができる。また、現像により感光部分が溶出し、未感光部分だけが残る性質をもったポジ型の感光性樹脂としてはフェノール樹脂系やノボラック樹脂系などを用いることができる。また、感光性樹脂には、必要に応じて、増感剤、現像促進剤、密着性改質剤、塗布性改良剤などの各種添加剤を配合してもよい。
【0051】
これらの感光性樹脂を基材1の表面2に塗布する際には、良好な塗膜を形成するために、適当な溶媒に希釈して塗布することが好ましく、セロソルブ系溶媒、プロピレングリコール系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、高極性溶媒などを使用することができる。
【0052】
感光性樹脂溶液を塗布する方法としては、メニスカスコート、ファウンティンコート、ディップコート、回転塗布、ロール塗布、ワイヤーバー塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、カーテン塗布、リングコートなどの公知の方法を用いることができるが、これらの方法の中でも、塗布条件の調整が容易である回転塗布、ロール塗布、ワイヤーバー塗布、リングコートなどの方法が好ましく用いられる。
【0053】
感光性樹脂膜塗布工程において形成される感光性樹脂膜の厚さは乾燥後で1〜6μmの範囲とすることが好ましい。また、感光性樹脂膜の厚さの変動係数は10%未満であることが好ましい。ここで感光性樹脂膜の厚さの変動係数とは感光性樹脂膜の厚さの標準偏差を感光性樹脂膜の平均厚さで割ったもので定義される。感光性樹脂膜の厚さの変動係数が10%以上であることは、すなわち感光性樹脂膜の厚さの変動が大きいことを示している。感光性樹脂膜の厚さが異なると露光工程における感度が変化し、また、現像工程における現像時間も変化する。よって、感光性樹脂膜の厚さの変動が大きい場合には、現像工程後に金型用基材表面に残存する感光性樹脂膜に感光性樹脂膜の厚さ変動に依存するムラが発生する。このムラによって最終的な金型にもムラが発生することとなる。感光性樹脂膜の厚さの変動係数は金型用基材1の表面2に形成された感光性樹脂膜6の厚さを3箇所以上測定し、その平均値と標準偏差を計算することによって求めることができる。ここで精度良く変動係数を求めるためには感光性樹脂膜6の厚さは10箇所以上測定することが好ましい。
【0054】
感光性樹脂膜の厚さの変動係数を10%未満とするためには、感光性樹脂を溶媒に溶解した溶液のレベリング性をレベリング剤で調整したり、溶媒による希釈率を調整したり、塗布する際の塗布方法および塗布条件を調整したりすることによって達成することができる。
【0055】
感光性樹脂を溶媒に溶解した溶液に添加するレベリング剤としては、アルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、両末端変性シリコーンオイル、ポリエステル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、アクリル系シリコーンオイルなどの有機変性されたシリコーンオイルが好ましく使用することができる。このような有機変性シリコーンオイルとしては、たとえば、東レダウコーニング社製のアルキル変性シリコーンオイル「SH203」、「SH230」、「SF8416」、「BY16−846」、「FZ−49」、ポリエーテル変性シリコーンオイル「FZ−77」、「FZ−2105」、「SH 3746」、「FZ−2118」、「FZ−7604」、「FZ−2161」、「SH 3771」、「FZ−2162」、「FZ−2203」、「FZ−2207」、「FZ−2208」、エポキシ変性シリコーンオイル「FZ−3720」、「BY 16−839」、「SF 8411」、「SF 8413」、「SF 8421」、「BY 16−876」、「FZ−3736」、「BY 16−855D」、アミノ変性シリコーンオイル「FZ−3707」、「FZ−3504」、「BY 16−205」、「FZ−3760」、「FZ−3705」、「BY 16−209」、「FZ−3710」、「SF 8417」、「BY 16−849」、「BY 16−850」、「BY 16−879 B」、「BY 16−892」、「FZ−3501」、「FZ−3785」、「BY 16−872」、「BY 16−213」、「BY 16−203」、「BY 16−898」、「BY 16−890」、「BY 16−878」、「BY 16−891」、「BY 16−893」、「FZ−3789」、カルボキシ変性シリコーン「BY 16−880」、カルビノール変性シリコーンオイル「SF 8428」、アルコキシ変性シリコーンオイル「FZ−3704」、「BY 16−606」、両末端変性シリコーンオイル「BY 16−871」、「BY 16−853」、「BY 16−201」、「BY 16−004」、「SF−8427」、「BY 16−799」、「BY 16−752」、ビックケミー・ジャパン株式会社製のポリエーテル変性シリコーンオイル「BYK−300/302」、「BYK−306」、「BYK−307」、「BYK−320」、「BYK−325」、「BYK−330」、「BYK−331」、「BYK−333」、「BYK−337」、「BYK−341」、「BYK−344」、「BYK−345/346」「BYK−347」、「BYK−348」、「BYK−375」、「BYK−377」、「BYK−378」、「BYK−UV3500」、「BYK−UV3510」、ポリエステル変性シリコーンオイル「BYK−310」、「BYK−315」、「BYK−370」、「BYK−UV3570」、アラルキル変性シリコーンオイル「BYK−322」、「BYK−323」、アクリル系シリコーンオイル「BYK−350」、「BYK−352」、「BYK−354」、「BYK−355」、「BYK−358N/361N」、「BYK−380N」、「BYK−381」、「BYK−392」などが挙げられる。これらの表面調整剤は、単独で用いても2種以上を併用しても良い。また、感光性樹脂を溶媒に溶解した溶液に添加するレベリング剤の添加量は、感光性樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部であることが好ましい。
【0056】
感光性樹脂を溶媒に溶解した溶液における感光性樹脂の重量分率は5〜50重量%であることが好ましく、10〜30重量%であることがより好ましい。重量分率が50重量%を上回る場合には、感光性樹脂溶液を塗布し、乾燥させる際のレベリング性が不十分となり、感光性樹脂膜の厚さの変動係数が大きくなる虞がある。一方、重量分率が5重量%を下回る場合には、感光性樹脂溶液を塗布し、乾燥させる際に液垂れなどが発生し、感光性樹脂膜の厚さの変動係数が大きくなる虞がある。感光性樹脂を溶解するための溶媒としては上述したものが好ましく用いられる。
【0057】
感光性樹脂膜の厚さの変動係数を10%未満とするための、感光性樹脂溶液の塗布方法および塗布条件は、感光性樹脂溶液の物性によって変化するため、一概には言えないが、塗布方法としては塗布条件の調整が容易である回転塗布、ロール塗布、ワイヤーバー塗布、リングコートなどの方法が好ましく用いられる。その際の塗布ヘッドの相対移動速度は0.5〜300mm/secであることが好ましい。また、感光性樹脂溶液を塗布後の加熱もしくは乾燥温度は20〜80℃であることが好ましく、より好ましくは25〜40℃である。加熱もしくは乾燥温度が20℃を下回る場合には、乾燥時間が長くなり、乾燥中に液垂れが発生したりする可能性が高くなるため好ましくない。一方、加熱もしくは乾燥温度が80℃を上回る場合には、乾燥時間が短くなり、乾燥中のレベリング効果が発現せず、感光性樹脂膜の厚さの変動係数が大きくなる可能性がある。
【0058】
〔2−1−2〕露光工程
続く露光工程では、所定のパターンを上述した感光性樹脂膜形成工程で形成された感光性樹脂膜6上に露光する。露光工程に用いる光源は塗布された感光性樹脂の感光波長や感度等に合わせて適宜選択すればよく、たとえば、高圧水銀灯のg線(波長:436nm)、高圧水銀灯のh線(波長:405nm)、高圧水銀灯のi線(波長:365nm)、半導体レーザー(波長:830nm、532nm、488nm、405nmなど)、YAGレーザー(波長:1064nm)、KrFエキシマーレーザー(波長:248nm)、ArFエキシマーレーザー(波長:193nm)、F2エキシマーレーザー(波長:157nm)などを用いることができる。
【0059】
本発明の金型の製造方法において表面凹凸形状を精度良く形成するためには、露光工程において、所定のパターンを感光性樹脂膜上に精密に制御された状態で露光することが好ましい。本発明の金型の製造方法においては、上述したパターンを感光性樹脂膜上に精度よく露光するために、コンピュータ上でパターンを画像データとして作成し、その画像データに基づいたパターンを、コンピュータ制御されたレーザーヘッドから発するレーザー光によって描画することが好ましい。レーザー描画を行うに際しては、たとえばLaser Stream FX((株)シンク・ラボラトリー製)などの印刷版作成用のレーザー描画装置を好適に用いることができる。
【0060】
図6(b)には、感光性樹脂膜6にパターンが露光された状態を模式的に示している。感光性樹脂膜をネガ型の感光性樹脂で形成した場合には、露光された領域7は露光によって樹脂の架橋反応が進行し、後述する現像液に対する溶解性が低下する。よって、現像工程において露光されていない領域8が現像液によって溶解され、露光された領域7のみ基材表面上に残りマスクとなる。一方、感光性樹脂膜をポジ型の感光性樹脂で形成した場合には、露光された領域7は露光によって樹脂の結合が切断され、後述する現像液に対する溶解性が増加する。よって、現像工程において露光された領域7が現像液によって溶解され、露光されていない領域8のみ基材表面上に残りマスクとなる。
【0061】
ここで基材表面上にマスクのある領域は後述するエッチング工程によってエッチング処理が基本的には進行しない。よってマスクの存在する領域が第1凹凸面の平坦部となる。これより上述した平坦部の占める面積の割合Aが式(1)を満たすように第1凹凸面を形成するためには、マスクの存在する領域の基材表面に占める面積の割合Aが式(1)を満たすようにパターンを作成すればよい。すなわち、感光性樹脂膜をネガ型の感光性樹脂で形成する場合には、露光される領域の基材表面に占める面積の割合AMNが平坦部の占める面積の割合Aの式(1)を満たすようにパターンを作成する。また、感光性樹脂膜をポジ型の感光性樹脂で形成する場合には、露光されない領域の基材表面に占める面積の割合AMPが平坦部の占める面積の割合Aの式(1)を満たすようにパターンを作成する。
【0062】
また、マスクの存在しない領域が第1凹凸面の凹部となることから、凹部の中心間直線距離の平均値Cが式(3)を満たすように第1凹凸面を形成するためには、マスクの存在しない領域間の中心間直線距離の平均値Cが式(3)を満たすようにパターンを作成すればよい。すなわち、感光性樹脂膜をネガ型の感光性樹脂で形成する場合には、露光されない領域の中心間直線距離の平均値CMNが凹部の中心間直線距離の平均値Cの式(3)を満たすようにパターンを作成し、感光性樹脂膜をポジ型の感光性樹脂で形成する場合には、露光される領域の中心間直線距離の平均値CMPが凹部の中心間直線距離の平均値Cの式(3)を満たすようにパターンを作成する。
【0063】
露光工程において感光性樹脂膜上に露光されるパターンはランダムなパターンであることが好ましい。規則的なパターンを露光した場合には、得られる金型の最終的な微細凹凸表面が規則的なものとなり、このような金型を用いて製造される防眩フィルムの微細凹凸表面も規則的なものとなる。規則的な微細凹凸表面を有する防眩フィルムはその規則性に起因する干渉色が発生する可能性がある。よって、露光工程において露光されるパターンはランダムであることがより好ましい。
【0064】
露光工程において感光性樹脂膜上に露光されるパターンはランダムで、かつ、マスクの存在する領域の基材表面に占める面積の割合Aとマスクの存在しない領域の中心間直線距離の平均値Cが上述した条件を満たすものであれば特に制限されず、たとえば、ドット径が10μm以上20μm未満のドットをランダムかつ均一に配置したパターン、ドットをランダムに配置して作成したパターンから特定の空間周波数以下の成分を除去するハイパスフィルターを通過させて得られたパターン、ドットをランダムに配置して作成したパターンから特定の空間周波数以下の成分と特定の空間周波数以上の成分を除去するバンドパスフィルターを通過させて得られたパターン、乱数もしくは計算機によって生成された擬似乱数により濃淡を決定したランダムな明度分布を有するパターンから特定の空間周波数以下の成分を除去するハイパスフィルターを通過させて得られたパターン、乱数もしくは計算機によって生成された擬似乱数により濃淡を決定したランダムな明度分布を有するパターンから特定の空間周波数以下の成分と特定の空間周波数以上の成分を除去するバンドパスフィルターを通過させて得られたパターンなどを用いることができる。図7にランダムなパターンを模式的に示した。図7(a)は16μmのドット径を有するドットをランダムに配置したパターンであり、図7(b)はドットをランダムに配置して作成したパターンから、特定の空間周波数範囲のみを抽出するバンドパスフィルターを通過させて得られたパターンである。
【0065】
〔2−1−3〕現像工程
続く現像工程においては、感光性樹脂膜6にネガ型の感光性樹脂を用いた場合には、露光されていない領域8は現像液によって溶解され、露光された領域7のみ金型用基材上に残存し、続く第1エッチング工程においてマスクとして作用する。一方、感光性樹脂膜6にポジ型の感光性樹脂を用いた場合には、露光された領域7のみ現像液によって溶解され、露光されていない領域8が金型用基材上に残存して、続く第1エッチング工程におけるマスクとして作用する。
【0066】
現像工程に用いる現像液については従来公知のものを使用することができる。たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水などの無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミンなどの第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミンなどの第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミンなどの第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシドなどの第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジンなどの環状アミン類などのアルカリ性水溶液、キシレン、トルエンなどの有機溶剤などを挙げることができる。
【0067】
現像工程における現像方法については特に制限されず、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像などの方法を用いることができる。
【0068】
図6(c)には、感光性樹脂膜6にポジ型の感光性樹脂を用いて、現像処理を行った状態を模式的に示している。図6(b)において露光された領域7が現像液によって溶解され、露光されていない領域8のみ基材表面上に残りマスク9となる。
【0069】
〔2−1−4〕エッチング工程
続くエッチング工程では、上述した現像工程後に金型用基材表面上に残存した感光性樹脂膜をマスクとして用いて、主にマスクの無い箇所の金型用基材をエッチングする。図6(e)にはエッチング工程によって、主にマスクの無い箇所10の金型用基材1がエッチングされる状態を模式的に示している。
【0070】
エッチング工程におけるエッチング処理は、通常、塩化第二鉄(FeCl3)液、塩化第二銅(CuCl2)液、アルカリエッチング液(Cu(NH34Cl2)などを用いて、金属表面を腐食させることによって行われるが、塩酸や硫酸などの強酸を用いることもできるし、電解めっき時と逆の電位をかけることによる逆電解エッチングを用いることもできる。このエッチング処理によるエッチング量が第1凹凸面の凹部深さBとなるため、エッチング量Bは第1凹凸面の凹部深さBの式(2)を満たすように設定する。ここでいうエッチング量とは、エッチングにより削られる基材の厚みである。
【0071】
エッチング工程におけるエッチング処理は1回のエッチング処理によって行ってもよいし、エッチング処理を2回以上に分けて行ってもよい。ここでエッチング処理を2回以上に分けて行う場合には、2回以上のエッチング処理におけるエッチング量Bの合計が第1凹凸面の凹部深さBの式(2)を満たすことが好ましい。
【0072】
〔2−1−5〕感光性樹脂膜剥離工程
続く感光性樹脂膜剥離工程では、エッチング工程でマスクとして使用した残存する感光性樹脂膜を完全に溶解し除去する。感光性樹脂膜剥離工程では剥離液を用いて感光性樹脂膜を溶解する。剥離液としては、上述した現像液と同様のものを用いることができ、pH、温度、濃度および浸漬時間などを変化させることによって、ネガ型の感光性樹脂膜を用いた場合には露光部の、ポジ型の感光性樹脂膜を用いた場合には非露光部の感光性樹脂膜を完全に溶解して除去する。感光性樹脂膜剥離工程における剥離方法についても特に制限されず、浸漬剥離、スプレー剥離、ブラシ剥離、超音波剥離などの方法を用いることができる。
【0073】
図6(e)は、感光性樹脂膜剥離工程によって、エッチング工程でマスクとして使用した感光性樹脂膜を完全に溶解し除去した状態を模式的に示している。感光性樹脂膜によるマスク9とエッチングによって、第1凹凸面4が金型用基材表面に形成される。
【0074】
〔2−2〕第2の好ましい第1凹凸面形成工程
第2の好ましい第1凹凸面形成工程は、上記研磨された面に凹部を切削加工によって形成する切削工程を基本的に含む。図8には、金型用基材の表面に凹部が形成された状態を模式的に示している。
【0075】
切削工程における凹部の切削加工は、研磨された金型用基材の表面と平行な方向に相対的に直線移動し、かつ直線移動と同時に金型用基材の表面と垂直な方向に微小往復移動する切削工具によって行われることが好ましい。図9に研磨された金型用基材1の表面と平行な方向12に相対的に直線移動し、かつ直線移動と同時に金型用基材の表面と垂直な方向13に微小往復移動する切削工具14の様子を模式的に示した。図9においては、金型用基材1を固定して図示したため、切削工具14のみが直線移動と垂直方向への微小往復移動を行っている。このような切削加工を行うことによって、金型用基材1上に所望のピッチ、深さで凹部3を高精度に形成することができる。
【0076】
このような切削加工を行うための装置を図10および図11に模式的に示した。図10は、金型用基材1が平板状である場合の装置であり、金型用基材1を設置し金型用基材1の表面と平行な第1の方向(以下、「X方向」とする)と、金型用基材1の表面と平行でX方向に垂直な第2の方向(以下、「Y方向」とする)に移動可能な加工テーブル15と、金型用基材1の表面と垂直な方向(以下、「Z方向」とする)に移動可能なZ軸駆動部16と、Z軸駆動部16に取り付けられた微小往復移動用駆動機構部17と、微小往復移動用駆動機構部に取り付けられた切削工具14を有する。この加工テーブル15に金型用基材1を設置し、加工装置のZ軸駆動部16を用いて微小往復移動用駆動機構部17をZ軸方向に移動させて、切削工具14と金型用基材1とを加工可能である所定量まで近づける。次に、加工テーブル15のX方向への駆動により金型用基材1を一定速度で移動させる。その際、微小往復移動用駆動機構部17を用いて切削工具14をZ方向に所定の微小量だけ往復移動させる。これによって、切削工具14の先端部14aは、金型用基材1に対して図9に示す工具移動軌跡18a,18bを描くように移動し、高精度に凹部3を形成することができる。
【0077】
図11には、金型用基材1が円筒状である場合の装置を模式的に示した。図11の装置は、円筒状の金型用基材1であるロールの両端を支持する支持機構19と、円筒状の金型用基材1であるロールをその長手方向軸線を中心に回転させるモータ20(回転方向を以下では「X方向」とする)と、その長手方向(以下、「Y方向」とする)に移動可能なY軸駆動部21と、Y軸駆動部21に取り付けられた金型用基材1の表面と垂直な方向(以下、「Z方向」とする)に移動可能なZ軸駆動部16と、Z軸駆動部に取り付けられた微小往復移動用駆動機構部17と、微小往復移動用駆動機構部17に取り付けられた切削工具14を有する。この支持機構19に円筒状の金型用基材1を設置し、加工装置のZ軸駆動部16を用いて微小往復移動用駆動機構部17をZ軸方向に移動させて、切削工具14と金型用基材1とを加工可能である所定量まで近づける。次に、モータ20の駆動により金型用基材1をX方向に一定速度で回転させる。その際、微小往復移動用駆動機構部17を用いて切削工具14をZ方向に所定の微小量だけ往復移動させる。これにより、切削工具14の先端部14aは金型用基材1に対して、図9に示す工具移動軌跡18a,18bを描くように移動し、高精度に凹部3を形成することができる。
【0078】
微小往復移動用駆動機構部の駆動源としては切削工具を微小駆動できるものであれば特に制限されず、圧電素子、磁歪素子、超音波発振機などを使用することができるが、加工精度、加工速度の観点から圧電素子を用いることが好ましい。微小往復移動用駆動機構部に取り付ける切削工具の材質は特に制限されるものではなく、超硬バイト、CBNバイト、セラミックバイト、ダイヤモンドバイトなどを使用することができるが、加工精度の観点からダイヤモンドバイトを用いることが好ましい。
【0079】
切削加工によって第1凹凸面を形成する場合にも、形成される凹部はランダムに配置されていることが好ましく、第1凹凸面の平坦部の占める面積の割合Aと凹部の深さBと凹部の中心間直線距離の平均値Cが上述した式(1)〜(3)を満たすことが好ましい。よって、切削加工によって第1凹凸面を形成する場合には、切削加工によって形成される凹部の深さは式(2)を満たすように設定した上で、〔2−1−2〕露光工程で述べたパターンに基づいて凹部を切削することが好ましい。すなわち、ネガ型の感光性樹脂膜を用いる場合のパターンにおいては露光されない領域を切削して凹部とすることが好ましく、ポジ型の感光性樹脂膜を用いる場合のパターンにおいては露光される領域を切削して凹部とすることが好ましい。
【0080】
〔2−3〕第3の好ましい第1凹凸面形成工程
第3の好ましい第1凹凸面形成工程は、〔2−3−1〕着色塗料塗布工程と、〔2−3−2〕レーザー照射工程と、〔2−3−3〕エッチング工程と、〔2−3−4〕着色塗膜剥離工程を基本的に含む。図12は、本発明の金型の製造方法における第3の好ましい第1凹凸面形成工程を模式的に示す図である。図12には各工程での金型の断面を模式的に示している。
【0081】
〔2−3−1〕着色塗料塗布工程
着色塗料塗布工程では、上述した研磨工程によって鏡面研磨を施した基材1の表面2に、着色塗料を塗布し、加熱・乾燥することにより、着色塗膜22を形成する。図12(a)には、基材1の表面2に着色塗膜22が形成された状態を模式的に示している。
【0082】
着色塗料塗布工程に用いられる着色塗料は続くレーザー照射工程においてレーザーアブレーションが可能であり、その後のエッチング工程において耐エッチング性を有するものであれば特に制限されないが、たとえば、ニトロセルロース、エチレン酢酸ビニル強重合体、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアセタール、天然ゴムなどの可燃性物質のいずれか一種または複数種と、硝酸アンモニウムや塩素酸化合物などの酸化剤と、カーボンブラック等の光吸収体をセロソルブ系溶媒、プロピレングリコール系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、高極性溶媒などの適当な溶媒で希釈したものを使用することができる。また、着色塗料には、必要に応じて、密着性改質剤、塗布性改良剤などの各種添加剤を配合してもよい。
【0083】
着色塗料を塗布する方法としては、メニスカスコート、ファウンティンコート、ディップコート、回転塗布、ロール塗布、ワイヤーバー塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、カーテン塗布、リングコートなどの公知の方法を用いることができるが、これらの方法の中でも、塗布条件の調整が容易である回転塗布、ロール塗布、ワイヤーバー塗布、リングコートなど方法が好ましく用いられる。また、着色塗料塗布工程において形成される着色塗膜の厚さは乾燥後で1〜6μmの範囲とすることが好ましい。
【0084】
着色塗料に添加するレベリング剤としては、感光性樹脂を溶媒に溶解した溶液に添加するレベリング剤と同様のものを使用することができて、アルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、両末端変性シリコーンオイル、ポリエステル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、アクリル系シリコーンオイルなどの有機変性されたシリコーンオイルが好ましく使用することができる。このような有機変性シリコーンオイルとしては、例えば、東レダウコーニング社製のアルキル変性シリコーンオイル「SH203」、「SH230」、「SF8416」、「BY16−846」、「FZ−49」、ポリエーテル変性シリコーンオイル「FZ−77」、「FZ−2105」、「SH 3746」、「FZ−2118」、「FZ−7604」、「FZ−2161」、「SH 3771」、「FZ−2162」、「FZ−2203」、「FZ−2207」、「FZ−2208」、エポキシ変性シリコーンオイル「FZ−3720」、「BY 16−839」、「SF 8411」、「SF 8413」、「SF 8421」、「BY 16−876」、「FZ−3736」、「BY 16−855D」、アミノ変性シリコーンオイル「FZ−3707」、「FZ−3504」、「BY 16−205」、「FZ−3760」、「FZ−3705」、「BY 16−209」、「FZ−3710」、「SF 8417」、「BY 16−849」、「BY 16−850」、「BY 16−879 B」、「BY 16−892」、「FZ−3501」、「FZ−3785」、「BY 16−872」、「BY 16−213」、「BY 16−203」、「BY 16−898」、「BY 16−890」、「BY 16−878」、「BY 16−891」、「BY 16−893」、「FZ−3789」、カルボキシ変性シリコーン「BY 16−880」、カルビノール変性シリコーンオイル「SF 8428」、アルコキシ変性シリコーンオイル「FZ−3704」、「BY 16−606」、両末端変性シリコーンオイル「BY 16−871」、「BY 16−853」、「BY 16−201」、「BY 16−004」、「SF−8427」、「BY 16−799」、「BY 16−752」、ビックケミー・ジャパン株式会社製のポリエーテル変性シリコーンオイル「BYK−300/302」、「BYK−306」、「BYK−307」、「BYK−320」、「BYK−325」、「BYK−330」、「BYK−331」、「BYK−333」、「BYK−337」、「BYK−341」、「BYK−344」、「BYK−345/346」「BYK−347」、「BYK−348」、「BYK−375」、「BYK−377」、「BYK−378」、「BYK−UV3500」、「BYK−UV3510」、ポリエステル変性シリコーンオイル「BYK−310」、「BYK−315」、「BYK−370」、「BYK−UV3570」、アラルキル変性シリコーンオイル「BYK−322」、「BYK−323」、アクリル系シリコーンオイル「BYK−350」、「BYK−352」、「BYK−354」、「BYK−355」、「BYK−358N/361N」、「BYK−380N」、「BYK−381」、「BYK−392」などが挙げられる。これらの表面調整剤は、単独で用いても2種以上を併用しても良い。また、着色塗料に添加するレベリング剤の添加量は、着色塗料の固形分100重量部に対して0.1〜5重量部であることが好ましい。
【0085】
着色塗料における着色塗料の固形分率は重量分率で5〜50重量%であることが好ましく、10〜30重量%であることがより好ましい。重量分率が50重量%を上回る場合には、着色塗料を塗布し、乾燥させる際のレベリング性が不十分となり、乾燥後の着色塗膜の厚さが不均一になるなる虞がある。一方、重量分率が5重量%を下回る場合には、着色塗料を塗布し、乾燥させる際に液垂れなどが発生し、着色塗膜の厚さが不均一になる虞がある。着色塗料を溶解するための溶媒としては上述したものが好ましく用いられる。
【0086】
〔2−3−2〕レーザー照射工程
続くレーザー照射工程では、所定のパターンを上述した着色塗料塗布工程で形成された着色塗膜22上にレーザーアブレーションによって描画する。すなわち、レーザー光を着色塗膜22上に照射し、着色塗膜22中の光吸収体でレーザー光を吸収して熱に変換し、可燃物質を酸化剤の下で瞬間に加熱蒸発させ、後のエッチング工程の際にエッチング処理を行う領域の金型用基材表面を露出する。この際にレーザー光を照射しなかった領域は後のエッチング工程においてマスクとして作用する。レーザー照射工程に用いる光源は着色塗膜22をレーザーアブレーション可能であるものを適宜選択すればよく、たとえば、YAGレーザー(波長:1064nm)や波長が800nm前後の半導体レーザーなどを用いることができる。
【0087】
本発明の金型の製造方法において表面凹凸形状を精度良く形成するためには、レーザー照射工程において、上述したパターンを着色塗膜上に精密に制御された状態で描画することが好ましい。本発明の金型の製造方法においては、上述したパターンを着色塗膜上に精度よく描画するために、コンピュータ上でパターンを画像データとして作成し、その画像データに基づいたパターンを、コンピュータ制御されたレーザヘッドから発するレーザー光によって描画することが好ましい。レーザー描画を行うに際しては印刷版作成用のレーザー描画装置を使用することができる。このようなレーザー描画装置としては、たとえばLaser Stream FX((株)シンク・ラボラトリー製)、DIGILAS(シェパーズ・オハイオ社製)などが挙げられる。
【0088】
レーザー照射工程において着色塗膜上に描画されるパターンが、第1凹凸面の平坦部と凹部に対応することから、描画されるパターンの凹部はランダムに配置されていることが好ましく、レーザーアブレーションされない領域(第1凹凸面の平坦部に対応する)の占める面積の割合Aとレーザーアブレーションされる領域(第1凹凸面の凹部に対応する)の中心間直線距離の平均値Cが上述した式(1)および式(3)を満たすことが好ましい。よって、レーザー照射工程において描画されるパターンも、〔2−1−2〕露光工程で述べたパターンと同様のものであることが好ましい。すなわち、ネガ型の感光性樹脂膜を用いる場合のパターンにおいては露光されない領域をレーザーアブレーションによって露出させることが好ましく、ポジ型の感光性樹脂膜を用いる場合のパターンにおいては露光される領域をレーザーアブレーションによって露出させることが好ましい。
【0089】
図12(b)には、着色塗膜22にレーザー光を照射し、着色塗膜22の一部を加熱蒸発させ、金型用基材1の表面2を露出させた状態を模式的に示している。図12(b)において基材1の表面2上に残った着色塗膜22が後のエッチング工程におけるマスクとなる。
【0090】
〔2−3−3〕エッチング工程
続くエッチング工程では、上述したレーザー照射工程後に金型用基材表面上に残存した着色塗膜をマスクとして用いて、主にマスクの無い箇所の金型用基材をエッチングする。図12(c)にはエッチング工程によって、主にマスクの無い箇所の金型用基材1がエッチングされる状態を模式的に示している。
【0091】
エッチング工程におけるエッチング処理は、通常、塩化第二鉄(FeCl3)液、塩化第二銅(CuCl2)液、アルカリエッチング液(Cu(NH34Cl2)などを用いて、金属表面を腐食させることによって行われるが、塩酸や硫酸などの強酸を用いることもできるし、電解めっき時と逆の電位をかけることによる逆電解エッチングを用いることもできる。このエッチング処理によるエッチング量が第1凹凸面の凹部深さBとなるため、エッチング量Bは第1凹凸面の凹部深さBの式(2)を満たすように設定する。ここでいうエッチング量とは、エッチングにより削られる基材の厚みである。
【0092】
エッチング工程におけるエッチング処理は1回のエッチング処理によって行ってもよいし、エッチング処理を2回以上に分けて行ってもよい。ここでエッチング処理を2回以上に分けて行う場合には、2回以上のエッチング処理におけるエッチング量Bの合計が第1凹凸面の凹部深さBの式(2)を満たすことが好ましい。
【0093】
〔2−3−4〕着色塗膜剥離工程
続く着色塗膜剥離工程では、エッチング工程でマスクとして使用した残存する着色塗膜22を完全に溶解し除去する。着色塗膜剥離工程では剥離液を用いて着色塗膜22を溶解する。剥離液としては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水などの無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミンなどの第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミンなどの第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミンなどの第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシドなどの第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジンなどの環状アミン類などのアルカリ性水溶液、キシレン、トルエンなどの有機溶剤などを使用することができる。着色塗膜剥離工程における剥離方法についても特に制限されず、浸漬剥離、スプレー剥離、ブラシ剥離、超音波剥離などの方法を用いることができる。
【0094】
図12(d)は、着色塗膜剥離工程によって、エッチング工程でマスクとして使用した着色塗膜22を完全に溶解し除去した状態を模式的に示している。着色塗膜22によるマスクとエッチングによって、第1凹凸面4が金型用基材表面に形成される。
【0095】
〔3〕第2凹凸面形成工程
第2凹凸面形成工程では、第1凹凸面形成工程によって形成された第1凹凸面4の表面形状を、エッチング処理によって鈍らせる。このエッチング処理によって、第1凹凸面4の表面形状における表面傾斜の急峻な部分がなくなり、得られた金型を用いて製造された防眩フィルムの光学特性が好ましい方向へと変化する。図1(c)には、エッチング処理によって、基材1の第1凹凸面4の表面形状が鈍化し、表面傾斜が急峻な部分が鈍らされ、緩やかな表面傾斜を有する第2凹凸面11が形成された状態が示されている。
【0096】
本発明の金型の製造方法においては、第2凹凸面形成工程のエッチング処理のエッチング量Dは第1凹凸面形成工程によって形成された第1凹凸面4の表面形状に応じて決定されることが好ましい。すなわち、エッチング量Dは上述した式(4)を満たすことが好ましい。上述した式(4)を満たすエッチング量Dによって形成される第2凹凸面11の形状は後述するように防眩フィルムを製造するために好適なものとなる。ここでいうエッチング量も、エッチングにより削られる基材の厚みである。
【0097】
以下では、第1凹凸面4の表面形状に応じて決定されるエッチング量Dの好ましい範囲について説明する。図13には第1凹凸面4に対してエッチング処理を実施し、表面凹凸形状を鈍らせて第2凹凸面11を形成する様子を模式的に示した。図13(a)には第2凹凸面形成工程におけるエッチング量Dが平坦部の直線距離Xの半分未満である場合を模式的に示した。エッチング量Dが平坦部の直線距離Xの半分未満である場合には、第2凹凸面11に平坦な領域が残ることとなり、また、平坦部から凹部へと続く斜面の傾斜角度が略90°となる。このような表面凹凸形状を有する金型から作製された防眩フィルムもまた平坦な領域と傾斜角度が略90°の斜面を有することとなる。結果として、得られた防眩フィルムは白ちゃけが発生し、防眩効果が不十分なものとなる。よって、第2凹凸面形成工程におけるエッチング量Dは平坦部の直線距離Xの平均値XAVEの半分以上であることが好ましい。ここで平坦部の直線距離Xの平均値XAVEは上述した式(6)で表わすことができる。よって、第2凹凸面形成工程におけるエッチング量Dは以下の式(12)を満たすことが好ましい。
【0098】
【数11】

【0099】
一方、第2凹凸面形成工程におけるエッチング量Dが平坦部の直線距離Xを超える場合には、図13(c)に示したように得られる第2凹凸面11の傾斜角度が小さくなりすぎる虞がある。このように傾斜角度の小さい表面凹凸形状を有する金型から作製された防眩フィルムもまた傾斜角度が小さくなりすぎる虞がある。結果として、得られた防眩フィルムは防眩効果が不十分なものとなる。よって、第2凹凸面形成工程におけるエッチング量Dは平坦部の直線距離Xの平均値XAVE以下であることが好ましい。よって、第2凹凸面形成工程におけるエッチング量Dは以下の式(13)を満たすことが好ましい。
【0100】
【数12】

【0101】
上述した式(12)および式(13)よりエッチング量Dの好ましい条件として式(4)が得られる。式(4)を満たすエッチング量Dによってエッチング処理を行なうことによって、第2凹凸面11は傾斜角度が好適に制御される。結果として、得られる防眩フィルムは白ちゃけが発生せず、防眩性に優れたものとなる。
【0102】
ここで第2凹凸面形成工程におけるエッチング処理は、通常、塩化第二鉄(FeCl3)液、塩化第二銅(CuCl2)液、アルカリエッチング液(Cu(NH34Cl2)などを用い、表面を腐食させることによって行われるが、塩酸や硫酸などの強酸を用いることもできるし、電解めっき時と逆の電位をかけることによる逆電解エッチングを用いることもできる。また、第2凹凸面形成工程におけるエッチング処理は、1回のエッチング処理によって行なってもよいし、エッチング処理を2回以上に分けて行なってもよい。エッチング処理を2回以上に分けて行なう場合には、2回以上のエッチング処理におけるエッチング量Dの合計が式(4)を満たすことが好ましい。
【0103】
〔4〕めっき工程
続くめっき工程において、金型の最表面に高い硬度と小さい摩擦係数を有するクロムめっき層を形成することによって金型の最表面を保護する。図1(d)には、上述したように第2凹凸面形成工程のエッチング処理によって形成された第2凹凸面11にクロムめっき層23を形成した状態が示されている。
【0104】
本発明では、平板やロールなどの表面に、光沢があって、硬度が高く、摩擦係数が小さく、良好な離型性を与え得るクロムめっきを採用する。クロムめっきの種類は特に制限されないが、いわゆる光沢クロムめっきや装飾用クロムめっきなどと呼ばれる、良好な光沢を発現するクロムめっきを用いることが好ましい。クロムめっきは通常、電解によって行われ、そのめっき浴としては、無水クロム酸(CrO3)と少量の硫酸を含む水溶液が用いられる。電流密度と電解時間を調節することにより、クロムめっきの厚みを制御することができる。
【0105】
なお、めっき工程において、クロムめっき以外のめっきを施すことは好ましくない。何故なら、クロム以外のめっきでは、硬度や耐摩耗性が低くなるため、金型としての耐久性が低下し、使用中に凹凸が磨り減ったり、金型が損傷したりする。そのような金型から得られた防眩フィルムでは、十分な防眩機能が得られにくい可能性が高く、また、フィルム上に欠陥が発生する可能性も高くなる。
【0106】
また、めっき後の表面を研磨することも、やはり本発明では好ましくない。研磨することにより、最表面に平坦な部分が生じるため、光学特性の悪化を招く可能性があること、また、形状の制御因子が増えるため、再現性のよい形状制御が困難になることなどの理由による。
【0107】
このように本発明では、クロムめっきを施した後、表面を研磨せず、そのままクロムめっき面を金型の凹凸面として用いることが好ましい。形成されるクロムめっき層の厚みはクロムめっきの厚みは1〜10μmの範囲内であるのが好ましく、3〜6μmの範囲内であるのがより好ましい。クロムめっきの厚みが薄いと、クロムめっき層による最表面を保護する効果が十分に得られないため好ましくない。一方で、めっき厚みが厚すぎると、生産性が悪くなるうえに、ノジュールと呼ばれる突起状のめっき欠陥が発生してしまうため好ましくない。
【0108】
当該めっき工程で形成されるクロムめっき層は、ビッカース硬度が800以上となるように形成されていることが好ましく、1000以上となるように形成されていることがより好ましい。クロムめっき層のビッカース硬度が800未満である場合には、金型使用時の耐久性が低下するうえに、クロムめっきで硬度が低下することはめっき処理時にめっき浴組成、電解条件などに異常が発生している可能性が高く、欠陥の発生状況についても好ましくない影響を与える可能性が高いためである。
【0109】
<防眩フィルムの製造方法>
本発明はまた、上述した本発明の金型の製造方法で得られた金型を用いた防眩フィルムの製造方法についても提供する。すなわち、本発明の防眩フィルムの製造方法は、本発明の金型の製造方法で製造された金型の凹凸面を透明樹脂フィルムに転写する工程と、金型の凹凸面が転写された透明樹脂フィルムを金型から剥がす工程とを含む。このような本発明の防眩フィルムの製造方法によって、好ましい光学特性を示す防眩フィルムが好適に製造される。
【0110】
金型形状のフィルムへの転写は、エンボスにより行うことが好ましい。エンボスとしては、光硬化性樹脂を用いるUVエンボス法、熱可塑性樹脂を用いるホットエンボス法が例示され、中でも、生産性の観点から、UVエンボス法が好ましい。
【0111】
UVエンボス法は、透明樹脂フィルムの表面に光硬化性樹脂層を形成し、その光硬化性樹脂層を金型の凹凸面に押し付けながら硬化させることで、金型の凹凸面が光硬化性樹脂層に転写される方法である。具体的には、透明樹脂フィルム上に紫外線硬化型樹脂を塗工し、塗工した紫外線硬化型樹脂を金型の凹凸面に密着させた状態で透明樹脂フィルム側から紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させ、その後金型から、硬化後の紫外線硬化型樹脂層が形成された透明樹脂フィルムを剥離することにより、金型の形状を紫外線硬化型樹脂に転写する。
【0112】
UVエンボス法を用いる場合、透明樹脂フィルムとしては、実質的に光学的に透明なフィルムであればよく、たとえばトリアセチルセルロースフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系化合物をモノマーとする非晶性環状ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂の溶剤キャストフィルムや押出フィルムなどの樹脂フィルムが挙げられる。
【0113】
またUVエンボス法を用いる場合における紫外線硬化型樹脂の種類は特に限定されないが、市販の適宜のものを用いることができる。また、紫外線硬化型樹脂に適宜選択された光開始剤を組み合わせて、紫外線より波長の長い可視光でも硬化が可能な樹脂を用いることも可能である。具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどの多官能アクリレートをそれぞれ単独で、あるいはそれら2種以上を混合して用い、それと、イルガキュアー907(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー184(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、ルシリンTPO(BASF社製)などの光重合開始剤とを混合したものを好適に用いることができる。
【0114】
一方、ホットエンボス法は、熱可塑性樹脂で形成された透明樹脂フィルムを加熱状態で金型に押し付け、金型の表面形状を透明樹脂フィルムに転写する方法である。ホットエンボス法に用いる透明樹脂フィルムとしては、実質的に透明なものであればいかなるものであってもよく、たとえば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ノルボルネン系化合物をモノマーとする非晶性環状ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂の溶剤キャストフィルムや押出フィルムなどを用いることができる。これらの透明樹脂フィルムはまた、上で説明したUVエンボス法における紫外線硬化型樹脂を塗工するための基材フィルムとしても好適に用いることができる。
【0115】
本発明の製造方法によって得られた金型を用いて製造される防眩フィルムは、微細凹凸表面を精度よく制御されて形成されるため、十分な防眩性を発現し、かつ、白ちゃけが発生せず、画像表示装置の表面に配置した際にもギラツキが発生せず、高いコントラストを示すものとなる。
【0116】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%および部は、特記ない限り重量基準である。
【0117】
〔1〕第1凹凸面の表面形状の評価
(平坦部の占める面積の割合A)
顕微鏡eclipse 80i((株)ニコン製)を用いて第1凹凸面を上方から観察した。測定の際、対物レンズの倍率は10倍として測定を行った。水平分解能ΔxおよびΔyはともに1.93μmであり、測定面積は1236μm×927μmであった。得られた顕微鏡観察画像の中央部から256個×256個(測定面積で494μm×494μm)のデータをサンプリングし、画像処理ソフトImageJ(アメリカ国立衛生研究所製)を用いて、平坦部が白表示で、凹部が黒表示である二階調の二値化画像に変換した。この二値化画像より白色の画素数と黒色の画素数を求め、以下の式で平坦部の占める面積の割合Aを求めた。
【0118】
(平坦部の占める面積の割合A)=[(白色の画素数)/(画像全体の画素数)]×100 式(12)
(凹部の深さB)
三次元顕微鏡PLμ2300(Sensofar社製)を用いて、防眩フィルムの表面形状を測定し、凹部の深さを求めた。測定の際、対物レンズの倍率は50倍として測定を行った。
【0119】
(凹部の中心間直線距離の平均値C)
平坦部の占める面積の割合Aを求める際に得られた二値化画像の階調を二次元関数h(x,y)として求めた。得られた二次元関数h(x,y)を離散フーリエ変換して二次元関数H(fx,fy)を求めた。二次元関数H(fx,fy)を二乗してパワースペクトルの二次元関数H2(fx,fy)を計算し、二次元関数H2(fx,fy)の逆フーリエ変換より自己相関関数R(x,y)を計算した。得られた自己相関関数R(x,y)のy=0の断面から、原点から最も近い極大値を求めることによって凹部の中心間直線距離の平均値Cを求めた。
【0120】
〔2〕防眩フィルムの光学特性の測定
(ヘイズ)
防眩フィルムのヘイズは、JIS K 7136に規定される方法で測定した。具体的には、この規格に準拠したヘイズメータHM−150型(村上色彩技術研究所製)を用いてヘイズを測定した。防眩フィルムの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。一般的にヘイズが大きくなると、画像表示装置に適用したときに画像が暗くなり、その結果、正面コントラストが低下しやすくなる。それ故に、ヘイズは低い方が好ましい。
【0121】
(透過鮮明度)
JIS K 7105に準拠したスガ試験機(株)製の写像性測定器「ICM−1DP」を用いて、防眩フィルムの透過鮮明度を測定した。この場合も、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて防眩層の微細な凹凸形状面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。この状態でガラス側から光を入射させ、測定を行なった。ここでの測定値は、暗部と明部との幅がそれぞれ0.125mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを用いて測定された値の合計値である。この場合の透過鮮明度の最大値は400%となる。一般的に透過鮮明度は低くなると、画像表示装置に適用した時に画像の鮮明性が低下する。それ故に、透過鮮明度は高い方が好ましい。
【0122】
(反射鮮明度)
JIS K 7105に準拠したスガ試験機(株)製の写像性測定器「ICM−1DP」を用いて、防眩フィルムの反射鮮明度を測定した。この場合も、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて防眩層の微細な凹凸形状面が表面となるように黒色アクリル基板に貼合してから、測定に供した。この状態で凹凸形状面側から光を45°で入射させ、測定を行なった。ここでの測定値は、暗部と明部との幅がそれぞれ0.5mm、1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを用いて測定された値の合計値である。この場合の反射鮮明度の最大値は300%となる。一般的に反射鮮明度は高くなると、防眩性が低下し、映り込みが発生しやすくなる。それ故に、反射鮮明度は低い方が好ましい。
【0123】
〔3〕防眩フィルムの防眩性能の評価
(映り込み、白ちゃけの目視評価)
防眩フィルムの裏面からの反射を防止するために、凹凸面が表面となるように黒色アクリル樹脂板に防眩フィルムを貼合し、蛍光灯のついた明るい室内で凹凸面側から目視で観察し、蛍光灯の映り込みの有無、白ちゃけの程度を目視で評価した。映り込み、白ちゃけは、それぞれ1から3の3段階で次の基準により評価した。
【0124】
映り込み 1:映り込みが観察されない。
2:映り込みが少し観察される。
【0125】
3:映り込みが明瞭に観察される。
白ちゃけ 1:白ちゃけが観察されない。
【0126】
2:白ちゃけが少し観察される。
3:白ちゃけが明瞭に観察される。
【0127】
(ギラツキの評価)
ギラツキは、以下の方法で評価した。すなわち、市販の液晶テレビ(LC−32GH3、シャープ(株)製)から表裏両面の偏光板を剥離した。それらオリジナル偏光板の代わりに、背面側および表示面側とも、偏光板(スミカラン SRDB31E、住友化学(株)製)を、それぞれの吸収軸がオリジナルの偏光板の吸収軸と一致するように粘着剤を介して貼合し、さらに表示面側偏光板の上には、以下の各例に示す防眩フィルムを凹凸面が表面となるように粘着剤を介して貼合した。この状態で、サンプルから約30cm離れた位置から、目視観察することにより、ギラツキの程度を7段階で官能評価した。レベル1はギラツキが全く認められない状態、レベル7はひどくギラツキが観察される状態に該当し、レベル3はごくわずかにギラツキが観察される状態である。
【0128】
<実施例1>
直径200mmのアルミロール(JISによるA5056)の表面に銅バラードめっきが施されたものを用意した。銅バラードめっきは、銅めっき層/薄い銀めっき層/表面銅めっき層からなるものであり、めっき層全体の厚みは、約200μmとなるように設定した。その銅めっき表面を鏡面研磨し、研磨された銅めっき表面に感光性樹脂を塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成した。ついで、図14に示すパターン(ランダムな明度分布を有するパターンから、0.039μm-1以下の低空間周波数成分と0.146μm-1以上の高空間周波数成分を除去するバンドパスフィルターを通過させて作成した)を繰り返し並べたパターンを感光性樹脂膜上にレーザー光によって露光し、現像した。レーザー光による露光、および現像はLaser Stream FX((株)シンク・ラボラトリー製)を用いて行った。感光性樹脂膜にはポジ型の感光性樹脂を使用した。
【0129】
その後、塩化第二銅液でエッチング処理を行った。その際のエッチング量は3μmとなるように設定した。その後、ロールから感光性樹脂膜を完全に除去して第1凹凸面を形成した。第1凹凸面の平坦部の占める面積の割合は48%であり、凹部の深さは2.8μmであり、凹部の中心間直線距離の平均値は16μmであった。
【0130】
次に、第1凹凸面に対して塩化第二銅液でエッチング処理を行った。その際のエッチング量は6μmとなるように設定した。その後、クロムめっき加工を行い、金型Aを作製した。このとき、クロムめっき厚みが4μmとなるように設定した。
【0131】
光硬化性樹脂組成物GRANDIC 806T(大日本インキ化学工業(株)製)を酢酸エチルにて溶解して、50重量%濃度の溶液とし、さらに、光重合開始剤であるルシリンTPO(BASF社製、化学名:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)を、硬化性樹脂成分100重量部あたり5重量部添加して塗布液を調製した。厚み80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に、この塗布液を乾燥後の塗布厚みが6μmとなるように塗布し、60℃に設定した乾燥機中で3分間乾燥させた。乾燥後のフィルムを、先に得られた金型Aの凹凸面に、光硬化性樹脂組成物層が金型側となるようにゴムロールで押し付けて密着させた。この状態でTACフィルム側より、強度20mW/cm2の高圧水銀灯からの光をh線換算光量で200mJ/cm2となるように照射して、光硬化性樹脂組成物層を硬化させた。この後、TACフィルムを硬化樹脂ごと金型から剥離して、表面に凹凸を有する硬化樹脂とTACフィルムとの積層体からなる、透明な防眩フィルムAを作製した。
【0132】
<実施例2〜5>
表1に示されるような特性(露光されない領域の基材表面に占める面積の割合AMPおよび露光される領域の中心間直線距離の平均値CMP)を有するパターンを感光性樹脂膜上に露光し、表1に示す製造条件で金型B〜Eを作製した。得られた金型B〜Eを用いたこと以外は、実施例1と同様にして防眩フィルムB〜Eを作製した。
【0133】
【表1】

【0134】
<比較例1〜5>
表2に示されるような特性(露光されない領域の基材表面に占める面積の割合AMPおよび光される領域の中心間直線距離の平均値CMP)を有するパターンを感光性樹脂膜上に露光し、表2に示す製造条件で金型F〜Jを作製した。得られた金型F〜Jを用いたこと以外は、実施例1と同様にして防眩フィルムF〜Jを作製した。
【0135】
【表2】

【0136】
<比較例6>
直径200mmの鉄ロール(JISによるSTKM13A)の表面に銅バラードめっきが施されたものを用意した。銅バラードめっきは、銅めっき層/薄い銀めっき層/表面銅めっき層からなるものであり、めっき層全体の厚さは、約200μmであった。その銅めっき表面を鏡面研磨し、さらにその研磨面に、ブラスト装置((株)不二製作所製)を用いて、東ソー(株)製のジルコニアビーズ“TZ−B125”(商品名、平均粒径:125μm)を、ブラスト圧力0.05MPa(ゲージ圧、以下同じ)、ビーズ使用量8g/cm2(ロールの表面積1cm2あたりの使用量、以下同じ)でブラストし、表面に凹凸をつけた。得られた凹凸つき銅めっき鉄ロールに対し、塩化第二銅液でエッチング処理を行った。その際のエッチング量は10μmとなるように設定した。その後、クロムめっき加工を行い、金型Kを作製した。このとき、クロムめっき厚みが6μmとなるように設定した。得られた金型Kを用いたこと以外は、実施例1と同様にして防眩フィルムKを作製した。
【0137】
結果を表3に示す。本発明の要件を全て満たす製造方法によって作製した金型から得られた防眩フィルムA〜Eは、ギラツキが発生せず、十分な防眩性を示し、白ちゃけも発生しなかった。また、ヘイズも低いため、画像表示装置に配置した際にもコントラストの低下を引き起こすことが無い。一方、本発明の要件を満たさない製造方法によって作製された金型から得られた防眩フィルムF〜Kはギラツキが発生したり、防眩性が不十分であったり、白ちゃけが発生したりする結果となった。
【0138】
【表3】

【符号の説明】
【0139】
1 金型用基材、2 基材の表面、3 凹部、4 第1凹凸面、6 感光性樹脂膜、7 露光された領域、8 露光されない領域、9 マスク、10 マスクの無い箇所、11 第2凹凸面、12 金型用基材の表面と平行な方向、13 金型用基材の表面と垂直な方向、14 切削工具、14a 切削工具の刃先、15 加工テーブル、16 Z軸駆動部、17 微小往復移動用駆動機構部、18a 切削工具の先端部の移動軌跡、18b 切削工具の移動軌跡、19 円筒状金型の支持機構、20 円筒状金型を回転させるためのモータ、21 Y軸駆動部、22 着色塗膜、23 クロムめっき層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型用基材の表面を研磨する研磨工程と、
研磨された面に平坦部と凹部からなる第1凹凸面を形成する第1凹凸面形成工程と、
第1凹凸面をエッチング処理によって鈍らせて第2凹凸面を形成する第2凹凸面形成工程と、
形成された第2凹凸面にクロムめっきを施すめっき工程とを含み、
第1凹凸面における平坦部の占める面積をA(%)とし、凹部の平均深さをB(μm)とし、凹部の中心間直線距離の平均値をC(μm)とし、第2凹凸面形成工程におけるエッチング深さをD(μm)としたときに、以下の条件を満たすことを特徴とする防眩フィルム製造用金型の製造方法。
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【請求項2】
前記めっき工程において、クロムめっき層の厚みが1〜10μmになるようにクロムめっきを施す請求項1に記載の防眩フィルム製造用金型の製造方法。
【請求項3】
前記第1凹凸面形成工程が、
研磨された面に感光性樹脂膜を塗布形成する感光性樹脂膜塗布工程と、
感光性樹脂膜上にパターンを露光する露光工程と、
パターンが露光された感光性樹脂膜を現像する現像工程と、
現像された感光性樹脂膜をマスクとしてエッチング処理を行い、研磨されためっき面に
凹凸を形成するエッチング工程と、
エッチング処理後に感光性樹脂膜を剥離する感光性樹脂膜剥離工程とを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の防眩フィルム製造用金型の製造方法。
【請求項4】
前記第1凹凸面形成工程が、金型用基材の表面と平行な方向に相対的に直線移動し、かつ直線移動と同時に金型用基材の表面と垂直な方向に微小往復移動する切削工具による切削加工によって行われることを特徴とする請求項1または2に記載の防眩フィルム製造用金型の製造方法。
【請求項5】
前記第1凹凸面形成工程が、
研磨された面に着色塗料を塗布し、着色塗膜を形成する着色塗料塗布工程と、
着色塗膜上にレーザーによってパターンを描画するレーザー照射工程と、
パターンが描画された着色塗膜をマスクとしてエッチング処理を行い、研磨されためっき面に凹凸を形成するエッチング工程と、
エッチング処理後に着色塗膜を剥離する着色塗膜剥離工程とを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の防眩フィルム製造用金型の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法により製造された金型の凹凸面を透明樹脂フィル
ムに転写した後、金型の凹凸面が転写された透明樹脂フィルムを金型から剥がすことを特
徴とする防眩フィルムの製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−51175(P2012−51175A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194346(P2010−194346)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】