説明

防眩性フィルム

【課題】防眩性と表示コントラストを両立し、耐擦傷性にも強い防眩性フィルムを提供する。
【解決手段】透明基材フィルム上に防眩層と低屈折率層とが積層されている。防眩層中には、活性エネルギー線硬化型樹脂60〜94wt%、ポリマー成分1〜35wt%、光重合開始剤1〜10wt%含まれており、表面凹凸を積極的に形成する微粒子は含まれていない。低屈折率層は屈折率1.35〜1.47であり、無機微粒子55〜86wt%、フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂9〜40wt%含有する。低屈折率層中の無機微粒子は、シリカ微粒子又は中空シリカ微粒子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイや液晶ディスプレイ等の電子画像表示装置に使用される防眩性フィルムに関し、特に、防眩性と表示コントラストを両立し、耐擦傷性に強い防眩性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイや液晶ディスプレイ等の電子画像表示装置は、その視認性を高めるために、蛍光灯などの外部光源から照射された光線の反射が少ないことが求められる。それは、外部からの光がその表面(表示面)で反射すると、そこには前方の像が映り込み、内部の画像が非常に見難くなるからである。そこで、従来から、ディスプレイ表面には外部からの光の反射を低減するために防眩処理が施されてきた。従来は、透明基材フィルムの表面にサンドブラスト、エンボスロール、又は化学エッチング等の方式で粗面化処理して表面に微細凹凸構造を付与したり、別途透明基材フィルム表面に設けられたハードコート層に微粒子を分散含有させて微細凹凸構造を付与する方法等で防眩処理を行ってきた。
【0003】
中でも、現在最も使用されている防眩処理の一つである、透明基材フィルムに防眩処理を行なった防眩性フィルムは、通常、熱硬化型樹脂や、紫外線硬化型樹脂等の活性エネルギー線硬化型樹脂に粒径が数μmの球形又は不定形の無機又は有機微粒子を分散した防眩層(ハードコート層)を、透明基材上に形成して得られる。この方法で作製した防眩性フィルムは、室内の蛍光灯や視聴者の像がディスプレイ表面に写りこむことを防止する防眩性には優れているが、明所でのコントラスト、特に黒表示時における黒の色の濃さが不足する課題があった。これは、活性エネルギー線硬化型樹脂と微粒子の屈折率差による内部散乱に起因するものであり、従来の微粒子を使用した方法では表示コントラスト低下の課題解決が困難であった。
【0004】
この様な防眩性フィルムに於ける表示コントラストの低下に対し、特許文献1には、防眩層に微粒子を用いずに表面凹凸を形成することで内部散乱を低減し、防眩性と表示コントラストに対応した防眩性フィルムが記載されている。具体的には、少なくとも1つのポリマーと少なくとも1つの硬化性樹脂前駆体とを均一に溶解した溶液から溶媒を蒸発させて防眩層を形成する際に、適当な条件で特定のポリマーをスピノーダル分解させ、その後硬化性樹脂前駆体を硬化させることで、相分離構造に対応した表面凹凸構造を形成している。すなわち、表面凹凸構造は、相分離構造においてポリマーが島状ドメインを形成した液滴相構造ないし海島構造によって形成される。さらに、このような規則性を有する相分離構造を有する防眩層に屈折率1.35〜1.49、膜厚0.05〜2μm、フッ素含有化合物を使用した低屈折率層を積層することで、入射光を等方的に透過して散乱し、かつ散乱光強度の極大値を示す散乱角が0.1〜10°であるとともに、全光線透過率が70〜100%であり、ヘーズ1〜30%及び0.5mm幅の光学櫛を用いた写像性測定器で測定した透過像鮮明度10%以上70%未満である防眩性フィルムを得ている。このような防眩性フィルムを液晶ディスプレイなどに装着することで、映り込みを防止している。特に、最表層に低屈折率層を配設することで、大型ディスプレイであっても黒表示の映像における白浮きを抑制でき、黒色が引き締まったコントラスト感の強い画像を表示できるとされている。
【0005】
また、特許文献2には、特許文献1と同様の方法にて防眩層を形成し、その上に低屈折率樹脂及び中空シリカ微粒子で構成された低屈折率層を積層することで、内部ヘイズが0〜1%、ヘイズが5〜6.5%である防眩フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−103070号公報
【特許文献2】特開2008−58723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の防眩性フィルムでは、低屈折率層にフッ素含有化合物を使用していることで、耐擦傷性に劣る課題があった。一方、特許文献2の防眩性フィルムでは、表面凹凸形状の制御が不十分であり、ヘイズが5〜6.5%と高く、防眩性が不必要に強く表示コントラストの向上には至っていない。
【0008】
そこで、本発明の目的とするところは、5°正反射での可視領域における反射率が最低値となる最小反射率波長が450〜650nmの範囲に設定されており、且つ、ヘイズが5%未満、表面粗さRaが0.05〜0.35であり防眩性と表示コントラストを両立し、耐擦傷性に強い防眩性フィルムを提供することにある。なお、表面粗さRaとは、JIS B0601−1994で定義される算術平均粗さである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は次の手段を採る。第1の発明の防眩性フィルムは、透明基材フィルムの一面から順に、防眩層と、該防眩層上に直接または一層以上の層を介して積層された低屈折率層とが積層されている。前記防眩層は、活性エネルギー線硬化型樹脂と、ポリマー成分と、光重合開始剤とを含み、膜厚が1〜9μmである。当該防眩層において、活性エネルギー線硬化型樹脂60〜94wt%、ポリマー成分1〜35wt%、光重合開始剤1〜10wt%、活性エネルギー線硬化型樹脂とポリマー成分の和が99〜100wt%である。すなわち、防眩層は、表面凹凸を積極的に形成するような微粒子を含んでいない。
【0010】
前記低屈折率層は、無機微粒子と、フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂とを含み、屈折率1.35〜1.47、膜厚50〜130nmである。当該低屈折率層において、無機微粒子55〜86wt%、フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂9〜40wt%、無機微粒子とフッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂の和が90〜99wt%であり、前記無機微粒子は、シリカ微粒子、又は、中空シリカ微粒子であることを特徴とする。
【0011】
第2の発明の防眩性フィルムは、防眩層と低屈折率層との間に、低屈折率層よりも屈折率の高い高屈折率層が積層され、高屈折率層は、屈折率1.60〜2.10、膜厚54〜102nmであり、高屈折率層は、金属酸化物微粒子と活性エネルギー線硬化型樹脂とを含み、高屈折率層100wt%に対して、金属酸化物微粒子64〜86wt%、活性エネルギー線硬化型樹脂9〜31wt%、金属酸化物微粒子と活性エネルギー線硬化型樹脂の和が90〜99wt%であり、前記金属酸化物微粒子は、錫ドープ酸化インジウム、酸化チタン、又は、酸化ジルコニウムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、防眩層に微粒子を含んでいないので、内部散乱に起因する表示コントラストの低下を防止できる。そのうえで、防眩層を上記の組成且つ膜厚とすることでその表面に特定の凹凸形状が形成され、低屈折率層すなわち防眩性フィルムの表面にも当該防眩層の凹凸形状に起因した表面凹凸形状が形成されることで、ヘイズ値が5%未満となる適切な防眩性を有する。また、低屈折率層の屈折率が1.35〜1.47で且つ膜厚50〜130nmであることから、5°正反射での可視領域における反射率が最低値となる最小反射率波長が450〜650nmとなり、より黒表示時に於ける黒の濃さが向上され、表示コントラストが良好となる。更には、低屈折率層にフッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂を使用していることから、耐擦傷性に強い。
【0013】
第2の発明の防眩性フィルムは、防眩層と低屈折率層との間に、低屈折率層よりも屈折率の高い高屈折率層が適切に積層されていることから、上記効果に加えて、より黒表示時に於ける黒の色の濃さが向上され、表示コントラストに優れる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。本実施形態の防眩性フィルムは、透明基材フィルム上に防眩層と低屈折率層とが積層されている。低屈折率層は防眩層上へ直接積層してもよいし、好ましくは防眩層と低屈折率層との間に高屈折率層も積層されている。
【0015】
〔透明基材フィルム〕
透明基材フィルムは防眩性フィルムの基材(ベース材)となるものであって、透明樹脂フィルム等が用いられ、特に制限されない。防眩性フィルムを形成する樹脂材料として具体的には、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、トリアセテートセルロース(TAC)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリカーボネート(PC)系樹脂等が挙げられる。それらの中でも、汎用性などの観点からトリアセテートセルロース(TAC)系樹脂又はポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂が好ましい。透明基材フィルムの厚みは、通常10〜500μm、好ましくは25〜200μmである。
【0016】
〔防眩層〕
防眩層は透明基材フィルムの直上に積層される層であり、その表面に凹凸を有し、その凹凸に光が反射して拡散され(表面拡散性)、防眩性を発現することができる機能を備えている。さらに、黒の色の濃さが向上され、表示コントラストに優れる機能を備えている。このような機能を発現するために、防眩層の凹凸形状は、表面粗さRa(JIS B0601−1994)が0.05〜0.35μmである。防眩層の表面粗さが0.05μmより小さい場合、防眩性が弱く、室内の蛍光灯や視聴者の像がディスプレイ表面に写りこむことを防止することが困難となる。一方、0.35μmを超える場合、防眩性が必要以上に強くなりすぎ、具体的には、ヘイズ値が5%以上となり、表示コントラストが低下する。防眩層の表面粗さRaは、後述のポリマー成分の配合量及び防眩層の膜厚を調整することによって制御される。
【0017】
防眩層は、防眩層の膜厚が薄いと表面粗さRaが小さくなり、防眩層の膜厚が厚いと表面粗さRaが大きくなる傾向がある。従って、表面粗さRaが0.05〜0.35μmである本発明の防眩層を形成するには、上記組成において、防眩層の膜厚を調整することで達成できる。具体的には、防眩層の膜厚を1〜9μm、好ましくは2〜8μm、より好ましくは3μm〜7μmとする。防眩層の膜厚が1μmよりも薄い場合は、表面粗さRaが0.05μmより小さくなり、防眩性が弱く、室内の蛍光灯や視聴者の像がディスプレイ表面に写りこむことを防止することが困難となる。一方、9μmよりも厚い場合は、表面粗さRaが0.35μmを越え防眩性が必要以上に強くなりすぎ、具体的には、ヘイズ値が5%以上となり、表示コントラストが低下する。
【0018】
防眩層は、活性エネルギー線硬化型樹脂とポリマー成分と光重合開始剤とを含む防眩層用塗液を硬化させた硬化物により形成される。硬化後の防眩層100wt%に対して、活性エネルギー線硬化型樹脂とポリマー成分と光重合開始剤との和が、99〜100wt%であることが好ましく、その他の成分としては、レベリング剤等が配合される。また、防眩層用塗液中には、塗工性の観点から通常希釈溶剤等が含まれる。但し、本発明では凹凸を積極的に形成する微粒子を含まない。すなわち、防眩層としては、活性エネルギー線硬化型樹脂と微粒子からなるものが良く知られているが、所定の防眩特性を得るために微粒子の添加量を調整すると、活性エネルギー線硬化型樹脂と微粒子の屈折率差に起因した内部散乱により表示コントラストが低下するため、本願の目的を達成するには相応しくない。
【0019】
(活性エネルギー線硬化型樹脂)
活性エネルギー線硬化型樹脂は、防眩性を発現するための防眩層用塗液の主成分であり、任意に用いることができる。そのような活性エネルギー線硬化型樹脂としては、単官能単量体、多官能単量体の中から1種又は2種以上が選択して用いられる。単官能単量体として具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸(ポリ)エチレングリコール基含有(メタ)アクリル酸エステル等が好ましい。多官能単量体としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ウレタン変性アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を2個以上含む多官能重合性化合物等が挙げられる。なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。「(メタ)アクリロイル基」や「(メタ)アクリル系樹脂」も同様である。
【0020】
活性エネルギー線硬化型樹脂の配合量としては60〜94wt%が好ましい。60wt%よりも少ない際は、ポリマー成分の配合量を多くすると、凹凸が小さくなる傾向がみられると共に、塗膜強度が弱くなり好ましくない。一方、94wt%よりも多い場合は、光重合開始剤の配合量が少なくなり、塗膜強度が弱くなる傾向が見られる。
【0021】
(ポリマー成分)
ポリマー成分は、防眩層用組成物中に溶解する化合物であり、そのような化合物としては、重量平均分子量1000〜500,000の熱可塑性樹脂や(メタ)アクリロイル基を有する重合体等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、スチレン・(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、セルロース誘導体、などが挙げられる。(メタ)アクリロイル基を有する重合体としては、例えば(メタ)アクリルモノマーを重合または共重合した樹脂、(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとを共重合した樹脂、(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和二重結合およびエポキシ基を有するモノマーとを反応させた樹脂、(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和二重結合およびイソシアネート基を有するモノマーとを反応させた樹脂、などが挙げられる。中でも、スチレン・(メタ)アクリル系樹脂が防眩性を最適に発現する観点から好ましい。
【0022】
ポリマー成分の配合量としては、防眩層100wt%に対して1〜35wt%が好ましい。ポリマー成分の配合量は、配合量が少ないほど凹凸は大きくなる傾向を示すが、1wt%よりも少ない場合は、防眩層延いては防眩性フィルム表面に凹凸が発現せず防眩性が得られない。一方、35wt%よりも多い場合は、凹凸すなわちRaが小さくなるため防眩性が弱く、室内の蛍光灯や視聴者の像がディスプレイ表面に写りこむことを防止することが困難となる。
【0023】
(光重合開始剤)
光重合開始剤は紫外線(UV)硬化させて塗膜を形成する際の開始剤として用いられる。光重合開始剤としては、従来公知のものでよく、特に限定されない。光重合開始剤の配合量としては、防眩層100wt%に対して1〜10wt%が好ましい。光重合開始剤の配合量が1wt%よりも少ない場合は、紫外線(UV)を照射しても硬化が進まず好ましくない。一方、10wt%を越す配合量は、硬化に対して不必要に多くなり好ましくない。
【0024】
〔低屈折率層〕
低屈折率層は防眩性フィルムの最表面に形成される層であり、無機微粒子とフッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂とを含み、例えば、無機微粒子とフッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂とを混合してなる低屈折率層用塗液を紫外線(UV)硬化させた硬化物により形成される。硬化後の低屈折率層100wt%に対して、無機微粒子とフッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂との和は、90〜99wt%であることが好ましく、その他の成分としては、光重合開始剤、レベリング剤等が配合される。また、低屈折率層用塗液中には、塗工性の観点から通常希釈溶剤等が含まれる。
【0025】
低屈折率層は、無機微粒子の屈折率とフッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂の屈折率との相対関係によって、屈折率が1.35〜1.47になるように調整されることが好ましい。乾燥硬化後の膜厚は好ましくは50〜130nm、より好ましくは80〜125nmである。屈折率と膜厚がこの範囲外では、5°正反射での可視領域における反射率が最低値となる最小反射率波長が450〜650nmの範囲外となり、防眩性フィルムとしての黒表示時に於ける黒の色の濃さが向上されず、表示コントラストの向上が見られない。
【0026】
低屈折率層に用いられる無機微粒子は、シリカ微粒子、又は、中空シリカ微粒子であり、無機微粒子の屈折率は、1.2〜1.5が好ましい。一方、無機微粒子に混合される活性エネルギー線硬化型樹脂としては、屈折率が1.3〜1.7であることが好ましい。無機微粒子の屈折率が1.5より大きい場合、フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂の混合量が少量となり、塗膜強度が弱くなる。即ち、耐擦傷性が悪くなる傾向が見られる。
【0027】
無機微粒子の配合量としては、低屈折率層100wt%に対して55〜86wt%が好ましい。55wt%より少ない場合は、低屈折率層の屈折率が1.47以上となるため相応しくない。一方、86wt%より多い場合は、活性エネルギー線硬化型樹脂の量が少なく、塗膜としての強度が弱くなるため好ましくない。
【0028】
また、無機微粒子の平均粒子径は低屈折率層の厚みを大きく超えないことが好ましく、特に0.1μm以下であることが好ましい。無機微粒子の平均粒子径が低屈折率層の厚みより大きくなると、光の散乱が生じる等、低屈折率層の光学性能が低下する傾向にある。なお、本明細書において「平均粒子径」とは、粒子径分布測定装置〔大塚電子(株)製、PAR−III〕を使用し、レーザー光を用いた動的光散乱法により平均粒子径を測定することで求めた値である。
【0029】
低屈折率層に用いられる中空シリカ微粒子は、例えば特開2006−21938号公報に開示された、外殻内部に空洞を有する中空で球状のシリカ系微粒子の製造方法により合成することもできる。すなわち、シリカ系微粒子は下記の工程(a)、(b)、(d)及び(e)を経て製造される。
工程(a):珪酸塩の水溶液又は酸性珪酸液と、アルカリ可溶の無機化合物水溶液とをアルカリ水溶液中に所定の比率で添加して複合酸化物微粒子分散液を調製する際に電解質塩を添加する工程。
工程(b):前記複合酸化物微粒子分散液に酸を加えてシリカ系微粒子分散液とする工程。
工程(d):前記シリカ系微粒子分散液を常温〜300℃の範囲で熟成する工程。
工程(e):50〜300℃の範囲で水熱処理する工程。
【0030】
更に、無機微粒子は、(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤等により表面が修飾されることが望ましい。(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤等で無機微粒子表面を修飾することにより、フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂との共有結合が生じ、塗膜強度は強くなる傾向が見られる。
【0031】
低屈折率層で用いられるフッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂としては、屈折率の低減を目的としたフッ素原子を含んでいない、活性エネルギー線硬化型樹脂が用いられる。そのような活性エネルギー線硬化型樹脂としては、単官能単量体、多官能単量体の中から1種又は2種以上が選択して用いられる。単官能単量体として具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸(ポリ)エチレングリコール基含有(メタ)アクリル酸エステル等が好ましい。多官能単量体としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ウレタン変性アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を2個以上含む多官能重合性化合物等が挙げられる。
【0032】
フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂の配合量としては、低屈折率層100wt%に対して9〜40wt%が好ましい。9wt%より少ない場合は、塗膜強度が弱くなる傾向があり好ましくない。一方、86wt%より多い場合は、低屈折率層の屈折率が1.47以上となるため相応しくない。
【0033】
〔防眩層、低屈折率層の形成〕
まず、防眩層用塗液を透明基材フィルム上に塗布した後、活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、透明基材フィルム上に防眩層が積層される。続いて、低屈折率層用塗液を防眩性層上に塗布した後、活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、防眩層上に低屈折率層が積層される。
【0034】
上記各塗液の塗布方法は特に制限されず、通常行なわれている塗布方法、例えばロールコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ダイコート法、インクジェット法、グラビアコート法等公知のいかなる方法も採用される。塗布に際しては、密着性を向上させるために、予め透明基材フィルム表面にコロナ放電処理等の前処理を施すことができる。
【0035】
活性エネルギー線の照射に用いられる活性エネルギー線源としては、例えば高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、窒素レーザ、電子線加速装置、放射性元素等の線源等が使用される。この場合、活性エネルギー線の照射量は、紫外線の波長365nmでの積算光量として50〜5000mJ/cmであることが好ましい。照射量が50mJ/cm未満のときには、塗液の硬化が不十分となるため好ましくない。一方、5000mJ/cmを超えるときには、活性エネルギー線硬化型樹脂が着色する傾向を示すため好ましくない。
【0036】
低屈折率層の形成は、5°正反射での可視領域における反射率が最低値となる最小反射率波長が450〜650nmの範囲となるように、屈折率及び膜厚を上記のように調整することが好ましい。最小反射率波長が450nmよりも小さくなると、防眩フィルムが赤色に見え表示コントラストが低下する。一方、最小反射率波長が650nm大きくなると、防眩フィルムが青色に見え表示コントラストが低下する。
【0037】
〔高屈折率層〕
高屈折率層は、必要に応じて防眩層と低屈折率層との間に積層される層であり、金属酸化物微粒子と活性エネルギー線硬化型樹脂とを含み、例えば、金属酸化物微粒子と、活性エネルギー線硬化型樹脂とを混合してなる高屈折率層用塗液を紫外線(UV)硬化させた硬化物により形成される。硬化後の高屈折率層100wt%に対して、金属酸化物微粒子と活性エネルギー線硬化型樹脂との和は、90〜99wt%であることが好ましく、その他の成分としては、光重合開始剤、レベリング剤等が配合される。また、高屈折率層用塗液中には、塗工性の観点から通常希釈溶剤等が含まれる。高屈折率層は、金属酸化物微粒子の屈折率と活性エネルギー硬化型樹脂の屈折率との相対関係によって、屈折率が1.60〜2.10になるように調製されることが好ましい。乾燥硬化後の膜厚は54〜102nmが好ましい。屈折率と膜厚がこの範囲外では、5°正反射での可視領域における反射率が最低値となる最小反射率波長が450〜650nmの範囲外となり、防眩性フィルムとしての黒表示時に於ける黒の色の濃さが向上されず、表示コントラストの向上が見られない。
【0038】
高屈折率層と低屈折率層の屈折率の関係は、高屈折率層の屈折率>低屈折率層の屈折率となるように積層する。この関係を満たさない場合は、光の干渉を利用した、外光の映りこみ低減を達成することが出来ず、表示コントラストが低下する。
【0039】
高屈折率層に用いられる金属酸化物微粒子は、錫ドープ酸化インジウム、酸化チタンまたは酸化ジルコニウムであり、金属酸化微粒子の屈折率は、製法によって異なるが、1.7〜2.5が好ましい。一方、金属酸化物微粒子に混合される活性エネルギー線硬化型樹脂としては、屈折率が1.3〜1.7であることが好ましい。金属酸化物微粒子の屈折率が1.7未満の場合、活性エネルギー線硬化型樹脂の混合量が少量となり、塗膜強度が弱くなる。即ち、耐擦傷性が悪くなる傾向が見られる。
【0040】
また、金属酸化微粒子の平均粒子径は高屈折率層の厚みを大きく超えないことが好ましく、特に0.1μm以下であることが好ましい。金属酸化微粒子の平均粒子径が高屈折率層の厚みより大きくなると、光の散乱が生じる等、高屈折率層の光学性能が低下する傾向にある。
【0041】
金属酸化物微粒子の配合量としては、高屈折率層100wt%に対して64〜86wt%が好ましい。64wt%より少ない場合は、高屈折率層の屈折率が1.60未満となるため相応しくない。一方、86wt%より多い場合は、活性エネルギー線硬化型樹脂の量が少なく、塗膜としての強度が弱くなるため好ましくない。
【0042】
活性エネルギー線硬化型樹脂の配合量としては9〜31wt%が好ましい。9wt%よりも少ない際は、金属酸化物微粒子の配合量が多くなり、塗膜強度が弱くなる傾向が見られ好ましくない。一方、31wt%よりも多い場合は、高屈折率層の屈折率を1.60〜2.10へと調整することが出来ず好ましくない。
【0043】
〔防眩層、高屈折率層及び低屈折率層の形成〕
まず、防眩層用塗液を透明基材フィルム上に塗布した後、活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、透明基材フィルム上に防眩層が積層される。続いて、高屈折率層用塗液を防眩層上に塗布した後、活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、防眩層上に高屈折率層が積層される。更に、低屈折率層用塗液を高屈折率層上に塗布した後、活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、防眩層上に低屈折率層が積層される。
【0044】
上記の各塗液の塗布方法は特に制限されず、通常行なわれている塗布方法、例えばロールコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ダイコート法、インクジェット法、グラビアコート法等公知のいかなる方法も採用される。塗布に際しては、密着性を向上させるために、予め透明基材フィルム表面にコロナ放電処理等の前処理を施すことができる。
【0045】
活性エネルギー線の照射に用いられる活性エネルギー線源としては、例えば高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、窒素レーザ、電子線加速装置、放射性元素等の線源等が使用される。この場合、活性エネルギー線の照射量は、紫外線の波長365nmでの積算光量として50〜5000mJ/cmであることが好ましい。照射量が50mJ/cm未満のときには、塗液の硬化が不十分となるため好ましくない。一方、5000mJ/cmを超えるときには、活性エネルギー線硬化型樹脂が着色する傾向を示すため好ましくない。
【0046】
本発明の防眩性フィルムは、テレビ、ビデオカメラ、ワープロ、パソコン、携帯電話などの電子画像装置やタッチパネルにおける、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、無機ELディスプレイ、FED(フィールドエミッションディスプレイ)などの各種ディスプレイに適用できる。
【実施例】
【0047】
以下に、製造例、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。ここで、各実施例及び比較例の防眩性フィルムは、透明基材フィルムの一方の面に防眩層が積層された構成のものである。また、各例における屈折率、最小反射率波長、ヘイズ値、Ra、防眩性、黒のしまり、耐擦傷性については、下記に示す方法により測定した。
【0048】
<屈折率>
(1)屈折率1.63のPETフィルム〔商品名「A4100」、東洋紡績(株)製〕上に、バーコーターにより、各層用塗液をそれぞれ乾燥硬化後の膜厚で100〜500nmになるように層の厚さを調製して塗布した。乾燥後、紫外線照射装置〔岩崎電気(株)製〕により窒素雰囲気下で120W高圧水銀灯を用いて、400mJの紫外線を照射し硬化し作製した。
(2)作製したフィルムの裏面をサンドペーパーで荒らし、黒色塗料で塗りつぶしたものを反射分光膜厚計〔「FE-3000」、大塚電子(株)製〕により、反射スペクトルを測定した。
(3)反射スペクトルより読み取った反射率から、下記に示すn-Cauchyの波長分散式(式1)の定数を求め、光の波長589nmにおける屈折率を求めた。
N(λ)=a/λ+b/λ+c (式1)
a、b、c:波長分散定数
【0049】
<最小反射率波長>
作製したフィルムの裏面をサンドペーパーで粗し、黒色塗料で塗りつぶしたフィルムを分光光度計〔日本分光(株)製、商品名:U−best560〕により、光の波長380〜780nmの5°、−5°正反射スペクトルを測定した。得られたスペクトルより、反射率が最小となる波長を最小反射率波長とした。
【0050】
<ヘイズ値>
ヘイズメーター〔日本電色工業(株)製、NDH2000〕を用いてヘイズ値・全光線透過率を測定した。
【0051】
<Ra(表面粗さ)>
(2)Ra(表面粗さ)
表面粗さ測定器〔(株)小坂研究所製、型名 Surfcorder SE500〕を用い走査範囲4mm、走査速度0.2mm/sの条件で、JIS B0601−1994の規定に準拠して算術平均粗さRa(μm)を測定した。
【0052】
<防眩性>
防眩性フィルムの裏面を黒マジックインキで塗りつぶし、ルーバーなしのむき出し蛍光灯(2000 lx)を5度の角度から映し、−5度の方向から観察した場合と、45度の角度から映し、−45度の方向から観察した場合の反射像のボケの程度を目視による以下の基準で評価した。
◎:−5度でも、−45度でも蛍光灯の輪郭がわずかに観察される程度
○:−5度では蛍光灯の輪郭がわずかに観察される程度だが、−45度では輪郭が比較的明瞭に分かる程度
×:−5度でも、−45度でも蛍光灯の輪郭がはっきり見える。
<黒のしまり>
液晶表示装置の視認側表面に防眩性フィルムを粘着剤を介して貼合し黒しまり感を目視により官能評価した。評価法は、真正面から電源オフ時の黒味、電源オン時の黒味(黒い画像)をそれぞれのフィルムで比較し、以下の基準で評価した。黒味の強いほど画面のしまり感も強いという基準で評価した。
◎:黒味が強く、画面が非常に強くしまって見える。
○:黒味が強く、画面が強くしまって見える。
×:グレー味が強く、画面のしまり感がない。
【0053】
<耐擦傷性>
(株)本光製作所製の消しゴム摩耗試験機の先端に、#0000のスチールウールを固定し、2.5Nの荷重(250gfの荷重)及び1Nの荷重(100gfの荷重)の荷重をかけて、反射防止フィルム表面上を10回往復摩擦した後の表面の傷を目視で観察し、以下のA〜Eの5段階で評価した。
A:傷なし、B:傷1〜10本、C:傷11〜20本、D:傷21〜30本、E:傷31本以上
【0054】
〔防眩層用塗液の調製〕
防眩層用塗液として次の原料を使用し、各原料を表1に記載した組成で混合して、防眩層用塗液HC−1〜HC−6を調整した。なお、表1中の数値はwt%である。
活性エネルギー線硬化型樹脂:6官能ウレタンアクリレート(日本合成化学工業(株)製紫光UV−7600B)
ポリマー成分:スチレン・(メタ)アクリル系樹脂(三菱レイヨン(株)製BR−50)
光重合開始剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製I−184
透光性有機微粒子:積水化成品工業(株)製SSX−105TND
溶媒:メチルイソブチルケトン
【0055】
【表1】

【0056】
〔低屈折率層用塗液の調製〕
低屈折率層用塗液として次の原料を使用し、各原料を表2に記載した組成で混合して、低屈折率層用塗液L−1〜L−4を調整した。なお、表2中の数値はwt%である。
フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂:6官能アクリレート(日本化薬(株)製DPHA)
フッ素原子を含む活性エネルギー線硬化型樹脂:共栄社化学(株)製 LINC−162A
無機微粒子:次のようにして調整したシリカ1,2
シリカ1;フラスコにコロイダルシリカ〔屈折率:1.46、日産化学(株)製、商品名;XBA-ST、キシレン/ブタノール混合溶媒によるコロイダルシリカの30質量部分散液、平均粒子径:10〜15nm〕500質量部、γ-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン〔信越化学工業(株)製、商品名;KBM5103〕94質量部、及び蒸留水35質量部を混合した後、5時間加熱還流(反応温度80℃)を行い、加水分解反応及び縮合反応を行った。このような操作により、シリカ1を調製した。
シリカ2;中空シリカゾル〔触媒化成工業(株)製、商品名:ELCOM NY−1001SIV、イソプロピルアルコールによる中空シリカゾルの25質量%分散液、平均粒子径:60nm〕2000質量部、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン〔信越化学工業(株)製、KBM5103〕70質量部及び蒸留水80質量部を混合してシリカ2(平均粒子径:60nm)を調製した。
光重合開始剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製I−907
溶媒:イソプロピルアルコール
【0057】
【表2】

【0058】
〔高屈折率層用塗液の調製〕
高屈折率層用塗液として次の原料を使用し、各原料を表3に記載した組成で混合して、高屈折率層用塗液H−1〜H−4を調整した。なお、表3中の数値はwt%である。
活性エネルギー線硬化型樹脂:6官能ウレタンアクリレート(日本合成化学工業(株)製紫光UV−7600B)
金属酸化物微粒子:それぞれ平均粒径が0.02〜0.03μmの、酸化ジルコニウム微粒子、錫ドープ酸化インジウム微粒子、酸化チタン微粒子
光重合開始剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製I−184
溶媒:メチルエチルケトン
【0059】
【表3】

【0060】
(実施例1−1)
防眩層用塗液(HC−1)を、透明基材フィルムとして厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、硬化後の防眩層の膜厚が3.0μmとなるようにロールコーターにて塗布し、室温で10秒乾燥した。その後、120W高圧水銀灯〔日本電池(株)製〕により紫外線を照射し(積算光量200mJ/cm)、硬化させた。次に、防眩層上に低屈折率層用塗液(L−1)を硬化後の膜厚を102nmとなるようにロールコーターにて塗布し、乾燥後、120W高圧水銀灯〔日本電池(株)製〕により紫外線を照射し(積算光量400mJ/cm)、硬化させて防眩性フィルムを作製した。
【0061】
(実施例1−2)
防眩層用塗液をHC−2へと変更した以外は、実施例1−1と同様の方法にて、防眩性フィルムを作製した。
【0062】
(実施例1−3)
防眩層用塗液をHC−3へと変更し、防眩層の膜厚を1.0μとなるよう塗布した以外は、実施例1−1と同様の方法にて、防眩性フィルムを作製した。
【0063】
(実施例1−4)
低屈折率層用塗液をL−2へと変更した以外は、実施例1−1と同様の方法にて、防眩性フィルムを作製した。
【0064】
(実施例2−1)
防眩層用塗液(HC−2)を、透明基材フィルムとして厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、硬化後の防眩層の膜厚が3.0μmとなるようにロールコーターにて塗布し、室温で10秒乾燥した。その後、120W高圧水銀灯〔日本電池(株)製〕により紫外線を照射し(積算光量200mJ/cm)、硬化させた。次に、防眩層上に、高屈折率層用塗液(H−1)を膜厚が102nmとなるようにロールコーターにて塗布し、乾燥後、20W高圧水銀灯〔日本電池(株)製〕により紫外線を照射し(積算光量200mJ/cm)、硬化させた。続いて、低屈折率層用塗液(L−1)を硬化後の膜厚が102nmとなるようにロールコーターにて塗布し、乾燥後、120W高圧水銀灯〔日本電池(株)製〕により紫外線を照射し(積算光量400mJ/cm)、硬化させて防眩性フィルムを作製した。
【0065】
(実施例2−2)
高屈折率層用塗液をH−2へと変更し、高屈折率層の膜厚が83nmとなるように形成した以外は、実施例2−1と同様の方法にて、防眩性フィルムを作製した。
【0066】
(実施例2−3)
高屈折率層用塗液をH−3へと変更し、高屈折率層の膜厚が54nmとなるように形成した以外は、実施例2−1と同様の方法にて、防眩性フィルムを作製した。
【0067】
(実施例2−4)
防眩層用塗液をHC−3へと変更し、低屈折率層用塗液をL−2へと変更した以外は、実施例2−1と同様の方法にて、防眩性フィルムを作製した。
【0068】
(実施例2−5)
高屈折率層用塗液をH−2へと変更した以外は、実施例2−4と同様の方法にて、防眩性フィルムを作製した。
【0069】
(実施例2−6)
高屈折率層用塗液をH−3へと変更した以外は、実施例2−4と同様の方法にて、防眩性フィルムを作製した。
【0070】
(比較例1−1)
防眩層用塗液をHC−4へと変更した以外は、実施例1−1と同様の方法にて、防眩性フィルムを作製した。
【0071】
(比較例1−2)
防眩層用塗液をHC−5へと変更した以外は、実施例1−1と同様の方法にて、防眩性フィルムを作製した。
【0072】
(比較例1−3)
防眩層用塗液をHC−6へと変更し、硬化後の防眩層の膜厚が8.3μmとなるようにロールコーターにて塗布し、室温で60秒乾燥し、120W高圧水銀灯〔日本電池(株)製〕により紫外線を照射し(積算光量200mJ/cm)、硬化させた以外は、実施例1−1と同様の方法にて、防眩性フィルムを作製した。
【0073】
(比較例1−4)
低屈折率層用塗液をL−3へと変更した以外は、実施例1−2と同様の方法にて、防眩性フィルムを作製した。
【0074】
(比較例2−1)
高屈折率層の膜厚が45nmとなるように形成した以外は、実施例2−1と同様の方法にて、防眩性フィルムを作製した。
【0075】
(比較例2−2)
高屈折率層の膜厚が115nmとなるように形成した以外は、実施例2−1と同様の方法にて、防眩性フィルムを作製した。
【0076】
(比較例2−3)
高屈折率層用塗液をH−4へと変更し、高屈折率層の膜厚が110nmとなるように形成した以外は、実施例2−1と同様の方法にて、防眩性フィルムを作製した。
【0077】
(比較例2−4)
低屈折率層用塗液をL−3へと変更した以外は、実施例2−1と同様の方法にて、防眩性フィルムを作製した。
【0078】
各実施例の構成及び試験結果を表4に示し、各比較例の構成及び試験結果を表5に示す。
【表4】

【0079】
【表5】

【0080】
表4に示した結果より、実施例1−1〜4、2−1〜6では良好な防眩性を有し、且つ、黒表示時に於ける黒の色が濃く表示コントラストに優れている。一方、表5に示した結果より、比較例1−1,2では、表面粗さRaが低いことから防眩性が弱く、外部からの光がその表面(表示面)で反射すると、そこには前方の像が映り込み、内部の画像が非常に見難く視認性に劣る。微粒子を配合した比較例1−3では、グレー味が強く画像のしまり感がない。低屈折率層の材料としてフッ素化合物を含む活性エネルギー線硬化型樹脂を使用した比較例1−4,2−4は、耐擦傷性に劣ることがわかった。比較例2−1では、高屈折率層の膜厚が54nmよりも薄いことから、グレー味が強く画像のしまり感がない。比較例2−2では、高屈折率層の膜厚が102nmよりも厚いことから、グレー味が強く画像のしまりがない。比較例2−3では、高屈折率層の屈折率が1.60よりも低いことから、グレー味が強く画像のしまりがない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材フィルムの一面から順に、防眩層と、直接または一層以上の層を介して前記防眩層よりも屈折率の低い低屈折率層とが積層された防眩性フィルムであって、
前記防眩層は、活性エネルギー線硬化型樹脂と、ポリマー成分と、光重合開始剤とを含み、膜厚が1〜9μmであり、
前記防眩層において、前記活性エネルギー線硬化型樹脂60〜94wt%、前記ポリマー成分1〜35wt%、前記光重合開始剤1〜10wt%であり、且つ前記活性エネルギー線硬化型樹脂と前記ポリマー成分と前記光重合開始剤との和が99〜100wt%であり、
前記低屈折率層は、無機微粒子と、フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂とを含み、屈折率1.35〜1.47、膜厚50〜130nmであり、
前記低屈折率層において、前記無機微粒子55〜86wt%、前記フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂9〜40wt%であり、且つ前記無機微粒子と前記フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂との和が90〜99wt%であり、
前記無機微粒子は、シリカ微粒子又は中空シリカ微粒子である防眩性フィルム。
【請求項2】
前記防眩層と前記低屈折率層との間に、前記低屈折率層よりも屈折率の高い高屈折率層が積層されており、
前記高屈折率層は、屈折率1.60〜2.10、膜厚54〜102nmであり、
前記高屈折率層は、金属酸化物微粒子と活性エネルギー線硬化型樹脂とを含み、
前記高屈折率層において、前記金属酸化物微粒子64〜86wt%、活性エネルギー線硬化型樹脂9〜31wt%であり、且つ前記金属酸化物微粒子と前記活性エネルギー線硬化型樹脂との和が90〜99wt%であり、
前記金属酸化物微粒子は、錫ドープ酸化インジウム、酸化チタン、又は酸化ジルコニウムである請求項1に記載の防眩性フィルム。



【公開番号】特開2012−63504(P2012−63504A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206588(P2010−206588)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】