説明

防眩性反射防止フィルムの製造方法、防眩性反射防止フィルム及び画像表示装置

【課題】透明支持体フィルムの上にハードコート層と、反射防止層とを順次積層し防眩性反射防止フィルムのハードコート層の凹凸形状の表面に、均一の膜厚と、反射色相にムラがなく、耐擦傷性を有する反射防止層を形成した防眩性反射防止フィルムの製造方法、この製造方法により製造する防眩性反射防止フィルム及び画像表示装置の提供。
【解決手段】透明支持体フィルムの上に凹凸表面のハードコート層を有する防眩性フィルムの前記ハードコート層の上に反射防止層を設ける防眩性反射防止フィルムの製造方法において、反射防止層形成用塗布液を前記ハードコート層の凹凸表面に塗布し反射防止層形成用塗膜を形成した後、その後の乾燥処理工程が終了する間は、重力方向を下方向とした時搬送方向が上方向、又は下方向であり、且つ反射防止層形成用塗膜に風を吹き付け反射防止層を形成することを特徴とする防眩性反射防止フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防眩性反射防止フィルムの製造方法、防眩性反射防止フィルム及びそれを用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコン、携帯電話等のフルカラー化或いはディスプレイの高精細化等に伴って反射防止機能、帯電防止機能等の付与された高機能の光学フィルムが求められている。例えば、視認性向上のために反射防止層を設けたり、又、写り込みを防いだり、ギラツキの少ない表示性能を得るために反射光を散乱させる防眩層を付与した、コンピュータやワープロ等の液晶画像表示装置(液晶ディスプレイとも言う)が求められている。
【0003】
一方動画を表示する大型TV用途の液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイといった画像表示装置などでは、防眩層の表面に反射防止層を積層する防眩性反射防止フィルムを低コストに提供する事が求められてきている。これに対して、凹凸表面のハードコート層を有する防眩性フィルムに反射防止層を塗布法により形成する技術が提案されている。防眩性付与の凹凸は光の波長より大きい凹凸(400nm以上であり、10μ以下が一般的)であるのに対して、反射防止層は光の干渉により反射を防止するためその膜厚は50〜200nm程度であり、大きな凹凸に対して薄膜を均一に設けることが要求される。
【0004】
この要求に対して、凹凸形状表面に均一に反射防止層を形成する方法として、例えば反射防止層形成用塗布液を塗布し反射防止層形成用塗膜を形成した後、反射防止層形成用塗膜を下向きにして搬送し、乾燥・硬化させる方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載のの技術を用いた場合にも、反射防止層の膜厚均一性は不十分であり、且つ、視認的な反射色相にムラがある問題、耐擦傷性のスチールウールによる評価試験での結果が不十分である問題がある。
【0006】
この様な状況から、透明支持体フィルムの上にハードコート層と、反射防止層とを順次積層し防眩性反射防止フィルムを製造する時、ハードコート層の凹凸形状の表面に均一の膜厚と、視認的な反射色相にムラがなく、耐擦傷性の硬度を有する反射防止層を形成した防眩性反射防止フィルムの製造方法、この製造方法により製造する防眩性反射防止フィルム及び防眩性反射防止フィルムを使用した画像表示装置の開発が要望されている。
【特許文献1】特開2004−24967号公報
【特許文献2】特開2005−70435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記状況に鑑みなされたものであり、その目的は透明支持体フィルムの上にハードコート層と、反射防止層とを順次積層し防眩性反射防止フィルムを製造する時、ハードコート層の凹凸形状の表面に均一の膜厚と、視認的な反射色相にムラがなく、耐擦傷性の硬度を有する反射防止層を形成した防眩性反射防止フィルムの製造方法、この製造方法により製造する防眩性反射防止フィルム及び防眩性反射防止フィルムを使用した画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
1.透明支持体フィルムの上に凹凸表面のハードコート層を有する防眩性フィルムを、連続搬送して前記ハードコート層の上に反射防止層を塗布方式により設ける防眩性反射防止フィルムの製造方法において、反射防止層形成用塗布液を前記ハードコート層の凹凸形状の表面に塗布し反射防止層形成用塗膜を形成した後、その後の乾燥処理工程が終了する間は、重力方向を下方向とした時に搬送方向が上方向、又は下方向であり、且つ反射防止層形成用塗膜に風を吹き付け反射防止層を形成することを特徴とする防眩性反射防止フィルムの製造方法。
2.前記反射防止層形成用塗布液は有機溶媒を含有していることを特徴とする前記1に記載の防眩性反射防止フィルムの製造方法。
3.前記乾燥処理工程の後に硬化処理工程を有しており、該硬化処理工程は、紫外線照射装置と、透明支持体フィルムを巻き回すローラとを有し、該ローラの上で該紫外線照射装置により紫外線が照射されることを特徴とする前記1または2に記載の防眩性反射防止フィルムの製造方法。
4.前記反射防止層形成用塗布液を塗布する前に、ハードコート層の凹凸形状の表面にプラズマ処理を行なうことを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載の防眩性反射防止フィルムの製造方法。
5.前記1〜4の何れか1項に記載の防眩性反射防止フィルムの製造方法により製造されたことを特徴とする防眩性反射防止フィルム。
6.前記5に記載の防眩性反射防止フィルムを有することを特徴とする画像表示装置。
【発明の効果】
【0009】
透明支持体フィルムの上にハードコート層と、反射防止層とを順次積層し防眩性反射防止フィルムを製造する時、ハードコート層の凹凸形状の表面に均一の膜厚と、視認的な反射色相にムラがなく、耐擦傷性の硬度を有する反射防止層を形成した防眩性反射防止フィルムの製造方法、この製造方法により製造する防眩性反射防止フィルム及び防眩性反射防止フィルムを使用した画像表示装置を提供することが出来、優れた防眩性を示す防眩性反射防止フィルムの製造が容易となり、フラットパネルデイスプレイ、特に大型TV用の防眩性反射防止フィルムの対応が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態を図1〜図8を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0011】
図1は防眩性反射防止フィルムの概略断面図である。
【0012】
図中、1は防眩性反射防止フィルムを示し、101は透明支持体フィルムを示し、102はハードコート層を示し、103は反射防止層を示す。101aは透明支持体フィルム101の凹凸形状の表面を示す。ハードコート層102の表面102aは透明支持体フィルム101の表面101aの凹凸形状を反映した形状となっている。本図に示す防眩性反射防止フィルム1は凹凸形状の表面101aを有する透明支持体フィルム101を使用した場合を示している。
【0013】
ハードコート層102の表面に凹凸形状を形成して防眩性フィルムとする方法として、例えば、1)透明支持体フィルム表面またはハードコート層表面にエンボス型ローラによる型押し加工等によりに凹凸形状を形成する方法、2)ハードコート層102に0.1〜20μm程度の微粒子を添加することで形成する方法、3)透明支持体フィルム表面またはハードコート層102の表面にフレキソ印刷法、インクジェット法で複数の凸部を設ける等が挙げられる。
【0014】
反射防止層103は低屈折率層のみの単層構成でも、又多層の屈折率層でもどちらでも構成することが出来る。通常、反射防止層はハードコート層102の表面上に光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層することが可能となっている。反射防止層は、例えば透明支持体フィルム101よりも屈折率の高い高屈折率層と、透明支持体フィルム101よりも屈折率の低い低屈折率層を組合せた2層構成、透明支持体フィルム101側から屈折率の異なる、中屈折率層(透明支持体フィルム101又はハードコート層102よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に組合せてた3層構成の多層構成が挙げられる。ハードコート層102が高屈折率層を兼ねてもよい。
【0015】
本発明に係わる反射防止層の層構成の例を下記に示す。ここで/は積層配置されていることを示している。
【0016】
透明支持体フィルム/ハードコート層/低屈折率層
透明支持体フィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
透明支持体フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
透明支持体フィルム/帯電防止層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
透明支持体フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
透明支持体フィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
これらの反射防止層の組合せの中で、透明支持体フィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層の組合せが、反射防止能、反射色相ムラ、製造コスト等の点から特に好ましい。本発明は、凹凸形状の表面を有するハードコート層の上に反射防止層を設けた、防眩性反射防止フィルムの製造方法と、この方法により製造した防眩性反射防止フィルム及びこの防眩性反射防止フィルムを使用した画像表示装置に関するものである。
【0017】
図2は図1に示す防眩性反射防止フィルムの製造工程の模式図である。図2(a)は塗布工程から乾燥処理工程の終了まで透明支持体フィルムのハードコート層の上に形成された反射防止層形成用塗膜を上方向に搬送して防眩性反射防止フィルムを製造する場合を示す防眩性反射防止フィルムの製造工程の模式図である。図2(b)は図2(a)に示される乾燥処理工程の中の反射防止層形成用塗膜を形成した透明支持体フィルムの搬送状態を示す模式図である。
【0018】
図中、2aは製造工程を示す。製造工程2aは、ハードコート層が透明支持体フィルムの表面に形成された防眩性フィルム301の供給工程3と、塗布工程4と、乾燥処理工程5と、硬化処理工程6と、巻き取り工程7とを有している。302は供給工程3に供給された巻芯に巻き取られたロール状防眩性フィルムを示す。防眩性フィルム301のハードコート層の塗布面側は凹凸形状をしている。
【0019】
尚、本図は塗布面に予め凹凸形状を形成した透明支持体フィルムを使用し、ハードコート層を形成した場合を示している。凹凸形状としては、直円錐、斜円錐、角錐、斜角錐、楔型,凸多角体、半球状等から選ばれる構造、並びにそれらの部分形状を有する構造が挙げられる。尚、半球状とは、必ずしもその表面形状は真球形状である必要はなく、楕円体形状や、より変形した凸曲面形状であってもよい。又、凹凸形状の稜線が線状に伸びた、プリズム形状、レンチキュラーレンズ形状、フレネルレンズ形状も挙げられる。その稜線から谷線にかけての斜面は平面状、曲面状、若しくは両者の複合的形状であってもよい。
【0020】
ハードコート層の凹凸表面は、防眩性を考慮しJIS B 0601−2001に準じて測定した表面平均粗さRaが0.1〜20μmが好ましく、更には0.15〜1.0μmが好ましい。表面の微細な凹凸の平均山谷間隔Smが1〜80μmであることが好ましく、更に好ましくは、10〜40μmである。ハードコート層102(図1を参照)の平均膜厚は、耐擦傷性、防眩性、取扱い性、耐屈曲性、透明性等を考慮し、3〜30μmの範囲が好ましく、更に5〜15μmがより好ましい。
【0021】
塗布工程4は、塗布装置401と供給工程3から繰り出された防眩性フィルム301を保持するバックアップロール402とを有している。塗布工程4では反射防止層形成用塗布液が塗布装置401によりバックアップロール402により保持された防眩性フィルム301の凹凸形状の表面に塗布される。
【0022】
反射防止層を30〜200nmの膜厚に均一に形成するためには、有機溶媒で希釈して粘度を低下させて塗布時にレベリング効果と均一供給により全領域に塗布液を均一供給して均一膜厚とさせる。使用される有機溶媒として、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン、)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中でもから適宜選択し、或いはこれらを混合し利用出来る。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)又はプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。有機溶媒の塗布液中の含有量は、塗布液質量比で80〜96%であり、固形分の比率で表すと、有機溶媒中に固形成分が3〜20%含まれる状態となっている。本発明は、流れ易くレベリングされ易い反射防止層塗膜において、有機溶媒が蒸発して流動性を失っていく中で、凹凸表面形状に沿って均一膜厚とさせ、本発明目的を達成するための製造法を提供するものである。
【0023】
塗布装置401としては特に限定はなく、例えば、グラビアコータ、スピナーコータ、ワイヤーバーコータ、ロールコータ、リバースコータ、押出コータ、エアードクターコータ等公知の方法を用いることが出来る。本図は押出コータを使用した場合を示している。防眩性フィルム301の搬送速度は、1〜100m/分が一般的であり、量産性等を考慮し、10〜60m/分が好ましい。
【0024】
塗布装置401で反射防止層形成用塗布液がハードコート層(不図示)上に塗布され反射防止層形成用塗膜が形成された防眩性フィルム301は上方向(図中の矢印A方向)に搬送される。
【0025】
θ1反射防止層形成用塗膜が形成された防眩性フィルム301の重力方向(図中の矢印B方向)に対する角度を示す。角度θ1は、塗膜厚の均一性を考慮し、0〜30°が好ましく、更には0〜15°が好ましい。θ2反射防止層形成用塗膜が形成された防眩性フィルム301の重力方向(図中の矢印B方向)に対する角度を示す。角度θ2は、塗膜厚の均一性を考慮し、0〜30°が好ましく、更には0〜15°が好ましい。本発明で乾燥処理工程5が終了するまでの間、反射防止層形成用塗膜が形成された防眩性フィルム301を上方向に搬送するとは、本図に示す如く重力方向(図中の矢印B方向)に対する角度が、角度θ1〜角度θ2の範囲で上方向に搬送することを意味する。尚、本図は重力方向(図中の矢印B方向)に対する角度θ1(θ2)が0°の場合を示している。
【0026】
乾燥工程5は、乾燥用風の供給口501aと、ヘッダー501bと、排気口501cとを有する乾燥装置501を有している。501b1はヘッダー501bに供給された乾燥用の風の吹き出し口を示す。乾燥装置501では、塗布工程4で防眩性フィルム301のハードコート層(不図示)凹凸形状の表面に塗布された反射防止層形成用塗膜に向けて吹き出し口501b1から乾燥用の風が吹き付けられることで反射防止層形成用塗膜の溶媒が除去される。
【0027】
乾燥装置501における乾燥条件としては、吹き出し口501b1からの反射防止層形成用塗膜中の有機溶媒の蒸発促進を行う風の吹き付けは0.5m/sec以上で吹き付けられていることが必要であり、風の風速は2m/sec以上、吹き付け角度5〜90°であることが好ましい。より好ましくは、風速3〜20m/sec、吹き付け角度10〜90°の範囲である。最も好ましくは、風速5〜20m/sec、吹き付け角度30〜90°の範囲である。温度は反射防止層形成用塗布液に使用している溶媒に合わせ適宜選択することが好ましい。乾燥処理工程5で乾燥が終了した後、反射防止層が形成された防眩性フィルム301は硬化処理工程6に搬送され、反射防止層を構成している活性エネルギー線硬化樹脂の硬化処理が行われる。
【0028】
硬化処理工程6は硬化処理装置601を有している。硬化処理装置601の内部にはハードコート層面に照射する活性エネルギー線の照射装置602と、ハードコート層上に形成された反射防止層を有する防眩性フィルム301を巻回し保持する保持ロール603とを有している。照射装置602は保持ロール603と対向する位置に配設されており、保持ロール603上のハードコート層の上に形成された反射防止層を有する防眩性フィルム301の反射防止層に対して活性エネルギー線を照射する様になっている。反射防止層面に活性エネルギー線を照射することで更に硬化処理が行われる。活性エネルギー線の照射時間は0.5秒〜5分が好ましく、活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化効率、作業効率等から更に好ましくは、3秒〜2分である。
【0029】
活性エネルギー線としては、活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させるエネルギー源であれば特に限定はなく、例えば、紫外線、電子線、γ線等が挙げられる。これらの活性エネルギー線の中でも紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られると言う点で紫外線が最も好ましい。紫外線の光源としては、紫外線を発生する光源であれば何れも使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。又、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、又はエキシマランプ等も用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20mJ/cm2以上が好ましく、更に好ましくは、50mJ/cm2〜10000mJ/cm2であり、特に好ましくは、50mJ/cm2〜2000mJ/cm2である。
【0030】
硬化処理工程6で反射防止層の硬化処理が終了した後、巻き取り工程7で巻芯に巻き取られ図1に示される層構成を有するロール状反射防止層形成済み透明支持体フィルム(ロール状防眩性反射防止フィルム)701として回収される。
【0031】
尚、反射防止層が高屈折率層/低屈折率層の2層から構成されている場合は本図に示される製造工程で、高屈折率層を形成した後、本図に示される製造工程で低屈折率層形成用塗布液を高屈折率層の上に塗布し、乾燥工程、硬化処理工程を経ることで形成することが可能である。
【0032】
防眩性フィルム301のハードコート層の凹凸形状の表面に塗布され形成された反射防止層形成用塗膜は塗布直後から、反射防止層形成用塗膜の中の溶媒がある程度除去されるまでは流動性を有している。反射防止層形成用塗膜は上方向に搬送されることで、次の効果が挙げられる。
【0033】
1)乾燥の初期段階では重力よりハードコート層(不図示)の表面の凹凸形状部に沿って反射防止層形成用塗膜が下方向に流動するため、凸形状部の頂部での薄膜化、凹形状部の底部での厚膜化の発生がなくなり、均一な厚さの反射防止層が得られることが可能になった。
【0034】
2)ハードコート層(不図示)の表面の凹凸形状が、防眩性フィルムの透明支持体フィルムに形成されている場合、ハードコート層形成用塗布液の中に微粒子を添加して形成した場合でも同じように均一な厚さの反射防止層が得られることが可能になり、防眩性付与手段が広がり防眩性反射防止フィルムの製造方法の選択肢が広がった。
【0035】
反射防止層の膜厚均一化は、上方向に搬送される時の反射防止層形成用塗膜の流動速度に影響を受け易いため、流動速度に影響を与える要因として例えば、上方向に搬送する時の角度、使用する反射防止層形成用塗布液の粘度、ハードコート層の凹凸形状、搬送速度、塗布量等を考慮し適宜最適な条件を組合せて行うことが好ましい。
【0036】
図3は図1に示す防眩性反射防止フィルムの他の製造工程の模式図である。図3(a)は塗布工程から乾燥処理工程の終了まで透明支持体フィルムのハードコート層の上に形成された反射防止層形成用塗膜を下方向に搬送して防眩性反射防止フィルムを製造する場合を示す防眩性反射防止フィルムの製造工程の模式図である。図3(b)は図3(a)に示される乾燥処理工程の中の反射防止層形成用塗膜を形成した透明支持体フィルムの搬送状態を示す模式図である。
【0037】
図中、2bは製造工程を示す。本図で示される製造工程2bは、塗布工程4の塗布装置401で反射防止層形成用塗布液がハードコート層(不図示)上に塗布され反射防止層形成用塗膜が形成された防眩性フィルム301が下方向(図中の矢印C方向)に搬送される他は図2に示される製造工程2aと同じであり、符号も同義であるため詳細な説明は省略する。
【0038】
θ3反射防止層形成用塗膜が形成された防眩性フィルム301の重力方向(図中の矢印B方向)に対する角度を示す。角度θ3は、塗膜厚の均一性を考慮し、0〜30°が好ましく、更には0〜15°が好ましい。θ4反射防止層形成用塗膜が形成された防眩性フィルム301の重力方向(図中の矢印B方向)に対する角度を示す。角度θ4は、塗膜厚の均一性を考慮し、0〜30°が好ましく、更には0〜15°が好ましい。本発明で乾燥処理工程5が終了するまでの間、反射防止層形成用塗膜が形成された防眩性フィルム301を下方向に搬送するとは、本図に示す如く重力方向(図中の矢印B方向)に対する角度が、角度θ3〜角度θ4の範囲で下方向に搬送することを意味する。尚、本図は重力方向の軸Bに対する角度θ3(θ4)が0°の場合を示している。
【0039】
防眩性フィルム301のハードコート層の凹凸形状の表面に塗布され形成された反射防止層形成用塗膜は塗布直後から、反射防止層形成用塗膜の中の溶媒がある程度除去されるまでは流動性を有している。反射防止層形成用塗膜は下方向に搬送される得られる効果は図2に示す反射防止層形成用塗膜を上方向に搬送する場合と同じ効果が挙げられる。
【0040】
反射防止層の膜厚均一化は、下方向に搬送される時の反射防止層形成用塗膜の流動速度に影響を受け易いため、流動速度に影響を与える要因として例えば、下方向に搬送する時の角度、使用する反射防止層形成用塗布液の粘度、ハードコート層の凹凸形状、搬送速度、塗布量等を考慮し適宜最適な条件を組合せて行うことが好ましい。
【0041】
図4は図1に示す防眩性反射防止フィルムのその他の製造工程の模式図である。
図中、2cは製造工程を示す。本図で示す製造工程2cは、塗布工程4から乾燥処理工程5終了まで透明支持体フィルムのハードコート層の上に形成された反射防止層形成用塗膜を図2に示す製造工程2aと同じように上方向(図中の矢印D方向)に搬送し、更に硬化処理工程6′も乾燥処理工程5と同じように上方向に搬送して防眩性反射防止フィルムを製造する場合を示す。硬化処理工程6′は、図2に示される硬化処理工程6と異なり、ハードコート層上に形成された反射防止層を有する防眩性フィルム301を巻回し保持する保持ロール603(図2を参照)を有していない。照射装置602による活性エネルギー線の照射は、上方向に搬送している過程で行われる。図中の他の符号は図2と同義であるため説明は省略する。得られる効果も図2に示す製造工程2aの場合と同じである。
【0042】
図2〜図4に示す様に塗布工程で防眩性フィルムのハードコート層の凹凸形状の表面に反射防止層形成用塗布液を塗布し、反射防止層形成用塗膜を形成した後、塗布工程から硬化工程での硬化処理終了までの間で、少なくとも一部の工程で、反射防止層形成用塗膜を形成した防眩性フィルムを上方向又は下方向に搬送する方法で反射防止層を形成した防眩性反射防止フィルムを製造することで次の効果が挙げられる。
【0043】
1)乾燥の初期段階では重力よりハードコート層(不図示)の表面の凹凸形状部に沿って反射防止層形成用塗膜が下方向に流動するため、凸形状部の頂部での薄膜化、凹形状部の底部での厚膜化の発生がなくなり、均一な厚さの反射防止層が得られるため干渉ムラ、輝点の発生がなくなり高品質の防眩性反射防止フィルムの製造が可能となった。
【0044】
2)大型サイズの液晶表示装置への対応が可能となった。
【0045】
3)ハードコート層(不図示)の表面の凹凸形状が、防眩性フィルムの透明支持体フィルムに形成されている場合、ハードコート層形成用塗布液の中に微粒子を添加して形成した場合でも同じように均一な厚さの反射防止層が得られることが可能になり、防眩性付与手段が広がり防眩性反射防止フィルムの製造方法の選択肢が広がった。
【0046】
4)ハードコート層(不図示)の表面の凹凸形状に影響されずに均一な反射防止層が得られることが可能になり、必要に応じた防眩性を付与する凹凸形状の形成が可能になり、必要に応じた防眩性反射防止フィルムの製造が可能となった。
【0047】
図5は、本発明に係る凹凸形状面を有する透明支持体フィルムの製造する製造工程の模式図である。尚、本図は透明支持体フィルムとしてセルローストリアセテートフィルムを流延方式で製造する場合を示している。
【0048】
図中、8は製造工程を示す。製造工程8は、流延工程8Aと、凹凸形状成形工程8Bと、延伸工程8Cと、乾燥工程8Dと、巻き取り工程8Eとを有している。
流延工程8Aは、2つの支持ロール8A1に保持され、2つの支持ロール8A1の間を連続的に移動(図中の矢印方向)する流延用ベルト8A2と、ダイス8A3とを有している。凹凸形状成形工程8Bは、凹凸形状成形用ローラ8B1と、バックロール8B2とを有している。延伸工程8Cは、延伸装置としてテンター(不図示)を有している。乾燥工程8Dは、乾燥用空気の供給口8D2と、排気口8D3とを有する乾燥装置8Dを有している。次に本図に示される製造工程8を使用して、表面に凹凸形状を有するセルローストリアセテートフィルムを製造する概要を説明する。
【0049】
予め調液されたセルローストリアセテート溶液(ドープとも言う)を流延工程8Aのダイス8A3より流延用ベルト8A2上に流延し、ウェブ(金属支持体上にドープを流延した以降の残留溶媒を含むフィルムをウェブと言う)を形成し、必要とする残留溶媒量になるまで溶媒を蒸発させる。この後、流延用ベルト8A2からウェブを剥離し、凹凸形状成形工程8Bでバックロール8B2上で凹凸形状成形用ローラ8B1で押厚されることにより凹凸形状成形用ローラ8B1の凹凸形状パターンがウェブの表面に転写され凹凸形状が形成される。尚、必要に応じて凹凸形状成形用ローラ8B1と、バックロール8B2との位置を逆にして裏面側にも凹凸形状を形成することが可能である。その後、延伸工程8Cの延伸装置のテンター(不図示)によりウェブは延伸される。尚、延伸工程8CではTD方向(フィルムの搬送方向と直交する方向)に熱をかけて延伸し、次の乾燥工程8Dの乾燥装置8D1により乾燥され、表面に凹凸形状を有するセルローストリアセテートフィルム801が出来、巻き取り工程8Eで巻き芯に巻き取られ、ロール状として保管される。尚、乾燥終了後に必要とする幅にスリットするスリット工程を設けてもよいし、セルローストリアセテートフィルム801の両端にナーリング加工を施すナーリング加工を設けることも可能である。
【0050】
又、凹凸形状成形工程8Bは、延伸工程8Cと、乾燥工程8Dとの間又は乾燥工程8Dの中、乾燥工程8Dの後で行うことも可能である。又、凹凸形状成形用ローラ8B1と、バックロール8B2の数も必要に応じて複数の凹凸型ローラとバックロールを用いることも可能である。凹凸形状も凹凸形状成形用ローラ8B1の凹凸形状パターンを変えることで変化することが可能である。尚、本図に示される製造工程の凹凸形状成形工程8Bで凹凸形状を形成する場合は、ウェブの剥離直後であるため、ウェブ中の残留溶媒量は通常20〜180質量%での範囲であり、好ましい残留溶媒量は60〜150質量%で、特に好ましくは80〜140質量%である。尚、残留溶媒量は下記の式で計算で求めた値である。残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
【0051】
凹凸形状成形用ローラ8B1としては、凹凸が細かいもの、粗いものまで、適宜選択して適用出来、模様、マット状、レンチキュラーレンズ状、球面の一部からなる凹部又は凸部、プリズム状の凹凸を形成するためのエンボスが規則正しく若しくはランダムに配列されたものが使用出来る。例えば、凸部又は凹部の直径が5〜100μm、高さが0.1〜2.0μmの球の一部からなる凹部又は凸部等が挙げられるが、これらは大きな凹凸と小さな凹凸を組合せてもよい。
【0052】
凹凸形状成形用ローラ8B1及びバックロール8B2の材質は、金属、ステンレス、炭素鋼、アルミニウム合金、チタン合金、セラミック、硬質ゴム、強化プラスチック、ガラス又はこれらを組合せた素材などが使用出来るが、強度の点や加工のし易さの点から凹凸型ローラは金属が好ましい。特に洗浄のし易さ、耐久性も重要であり、ステンレス製の凹凸型ローラを使用することが好ましい。特に好ましくは、視認側用は金属材料、セラミック材料で表面凹凸形状を形成し、裏面側用はゴム材料で表面凹凸形状を形成することである。材質が異なる凹凸形状成形用ローラを用いることで、凹凸形状(山、谷、稜線等の形状)が微妙に異なる凹凸が形成出来、ギラツキを効果的に防止することが出来る。
【0053】
又、表面に撥水若しくは撥水加工を施してもよい。凹凸形状成形用ローラに所望の凹凸面を形成する方法としてはエッチングによる方法、サンドブラストによる方法、機械的に加工する方法又は金型等を使用して形成することが出来る。凹凸形状成形用ローラに対向するバックロールとしては硬質ゴム又は金属が好ましく用いられる。特に凹凸形状成形用ローラにサンドブラスト処理又はエッチング処理を行うことが好ましい。
【0054】
(サンドブラスト処理)
サンドブラスト処理においては、平均粒径10μm以下のブラスト粒子を200kPa以下のブラスト圧力(ゲージ圧)で使用することが好ましい。ブラスト粒子の平均粒径が10μmを超える場合、又はブラスト圧力が200kPaを超える場合には、初期の微細傷の深さが深くなり過ぎ、好ましくない。又、ブラスト粒子の粒径分布は出来るだけシャープであることが好ましい。粒径分布がブロードな場合、得られる防眩性光学フィルムの均質性が低下するため、好ましくない。ブラスト粒子としては、例えば、住友化学工業(株)製のスミコランダムAA−5(平均粒径5μm)、スミコランダムAA−18(平均粒径18μm)が挙げられる。
【0055】
揺動させている凹凸型ローラの表面の全面にわたって、圧搾空気等の力で噴射ノズルの先端から、ブラスト粒子が吹き付けられ、該ブラスト処理により、凹凸型ローラの表面の全面に微細な凹凸が砂目状に形成される。ロールの回転と揺動の量、ブラスト粒子の吹き付け量、吹き付け時間は所望の凹凸形状に合わせて適宜選択すればよい。
【0056】
(エッチング処理)
フッ化水素処理によるエッチングにおいて、用いるフッ化水素を含む水溶液は1〜10質量%程度の濃度のフッ化水素酸(フッ化水素の水溶液)が適当であり、より好ましくは5〜10質量%濃度のフッ化水素酸である。フッ化水素の濃度が10質量%を超える場合、エッチングにより生成する粗面の面内均一性が低下するため、好ましくない。フッ化水素の濃度が1質量%を下回る場合、エッチング速度が極端に遅くなるので、実用的でない。エッチングの温度は20〜50℃程度が好ましく、30〜40℃がより好ましい。エッチング温度が20℃を下回ると、実用的なエッチング速度が得られないため、好ましくない。又、エッチング温度が40℃を超える場合、エッチングにより生成する粗面の面内均一性が低下するため好ましくない。
【0057】
尚、表面凹凸化のためには、サンドブラスト処理にて微小な傷を金属やガラス表面に生成させ、その後にフッ化水素を含む水溶液によるエッチングを行って、微細な凹凸を形成させてもよい。
【0058】
図6は本発明に係わる防眩性フィルムの製造工程の模式図である。図6(a)はハードコート層の上にインクジェット法にて凹凸形状を形成し防眩性フィルムを製造する製造工程の模式図である。図6(b)は図6(a)のVで示される部分の概略平面図である。
【0059】
図中、9aは製造工程を示す。製造工程9aは、透明支持体フィルム901の供給工程9Aと、塗布工程9Bと、乾燥工程9Cと、第1硬化処理工程9Dと、凹凸形状形成工程9Eと、第2硬化処理工程9Fと、巻き取り工程9Gとを有している。902は供給工程9Aに供給された巻芯に巻き取られたロール状透明支持体フィルムを示す。
【0060】
塗布工程9Bは、塗布装置9B1と供給工程4から繰り出された透明支持体フィルム901を保持するバックアップロール9B2とを有している。塗布工程9Bではハードコート層形成用塗布液が塗布装置9B1によりバックアップロール9B2により保持された透明支持体フィルム901の表面に塗布される。
【0061】
塗布装置9B1としては特に限定はなく、例えば、グラビアコータ、スピナーコータ、ワイヤーバーコータ、ロールコータ、リバースコータ、押出コータ、エアードクターコータ等公知の方法を用いることが出来る。本図は押出コータを使用した場合を示している。塗布量はウェット膜厚で5μm〜30μmが好ましく、更に、好ましくは10μm〜20μmである。ドライ膜厚は0.1〜20μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。塗布速度は10m/分〜60m/分が好ましい。
【0062】
ハードコート層形成用塗布液としては、活性エネルギー線硬化樹脂、各種添加剤等を有機溶媒に溶解・分散した溶液が使用される。使用される有機溶媒として、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン、)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中でもから適宜選択し、或いはこれらを混合し利用出来る。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)又はプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
【0063】
乾燥工程9Cは、乾燥用の風の供給口9C2と、ヘッダー9C3と、排気口9C4とを有する乾燥装置9C1を有している。9C5はヘッダー9C3に供給された乾燥用の風の吹き出し口を示す。乾燥工程9Cで乾燥が終了した後、ハードコート層が形成され透明支持体フィルム901は第1硬化処理工程9Dに搬送され、ハードコート層を構成している活性エネルギー線硬化樹脂の硬化処理が行われる。
【0064】
第1硬化処理工程9Dは硬化処理装置9D1を有している。硬化処理装置9D1の内部にはハードコート層面に照射する活性エネルギー線の照射装置9D2を備えており、ハードコート層面に活性エネルギー線を照射することで硬化処理が行われる。活性エネルギー線の照射時間は0.5秒〜5分が好ましく、活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化効率、作業効率等から更に好ましくは、3秒〜2分である。
【0065】
活性エネルギー線としては、活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させるエネルギー源であれば特に限定はなく、例えば、紫外線、電子線、γ線等が挙げられる。これらの活性エネルギー線の中でも紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られると言う点で紫外線が最も好ましい。紫外線の光源としては、紫外線を発生する光源であれば何れも使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。又、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、又はエキシマランプ等も用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20mJ/cm2以上が好ましく、更に好ましくは、50mJ/cm2〜10000mJ/cm2であり、特に好ましくは、50mJ/cm2〜2000mJ/cm2である。
【0066】
第1硬化処理工程9Dで硬化処理が終了した後、凹凸形状形成工程9Eでハードコート層の上に凹凸形状が形成される。9E1はインクジェット記録装置を示す。9E11〜9E15はインクジェットヘッドを示す。インクジェットヘッドの配設方法は特に限定はなく、例えば、インクジェットヘッドを透明支持体フィルム901の幅手方向に移動する方法、ラインヘッドを使用する方法、複数のインクジェットヘッドを千鳥状に配置方法等が挙げられる。本図は、複数のインクジェットヘッドを千鳥状に配置した場合を示している。
【0067】
インク液滴としては、0.1〜100plが好ましく、0.1〜50plがより好ましく、0.1〜10plが特に好ましい。又、インク液滴の粘度は、25mPa・s以下であることが好ましく、10mPa・s以下であることが更に好ましい。
【0068】
インクジェット記録装置で用いるインクは、活性エネルギー線硬化型樹脂又は熱硬化性樹脂であることが好ましく、ハードコート層に用いられる活性エネルギー線硬化型樹脂と同じ樹脂を用いることが出来、紫外線硬化型樹脂であることが好ましい。紫外線硬化型樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることが出来る。
【0069】
又、インクには、二酸化ケイ素等の微粒子やSnO2、ITO、ZnO等の導電性微粒子や架橋カチオンポリマー粒子等の帯電防止剤を含有させることも好ましい。
【0070】
インクジェット記録装置9E1としては特に限定はなく、例えば、特開2001−260368に記載のインクジェット式記録ヘッド、特開2004−58505記載の静電吐出型インクジェットヘッド、特開2004−58532記載の液体吐出ヘッド、特開2004−54271記載のインクジェットパターニング装置、特開2004−55520記載の噴射ヘッド、登録3,5000,636号記載のインクジェットヘッド等が挙げられる。又、登録3,501,583号記載のインクジェット記録システム、特開2003−、特開2003−154671記載のクリーニング機構を備えたインクジェット記録装置、特開2003−154671記載のクリーニング機構を備えたインクジェット記録装置136740記載のインクジェットプリンタ及びインクジェット記録方法、特開2003−213183記載の放射線硬化性インクジェット用インク及びインクジェット記録方法、特開2003−231267記載のインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法、特開2003−237061記載の画像形成方法、インク、記録装置、特開2003−251796記載の画像形成方法等を凹凸形状の形成に用いることも出来る。
凹凸形状形成工程9Eでハードコート層の上に凹凸形状形成用パターンが塗布された後、第2硬化処理工程9Fで硬化処理が行われ、硬化処理が終了した後、巻き取り工程9Gで巻芯に巻き取られロール状として回収される。9F1は硬化処理装置を示し、9F2は硬化処理装置9D1の内部に設けられたハードコート層面に照射する活性エネルギー線の照射装置を示す。
【0071】
図7はハードコート層の上にフレキソ印刷法にて凹凸形状を形成し防眩性フィルムを製造する製造工程の模式図である。
【0072】
図中、9bは製造工程を示す。製造工程9bは、透明支持体フィルム901の供給工程9Aと、塗布工程9Bと、乾燥工程9Cと、第1硬化処理工程9Dと、凹凸形状形成工程9Hと、第2硬化処理工程9Iと、巻き取り工程9Jとを有している。本図では、透明支持体フィルム901の供給工程9Aと、塗布工程9Bと、第1乾燥工程9Cと、第1硬化処理工程9Dは図6sと同じであるため説明は省略する。
【0073】
硬化処理工程9Dで硬化処理が終了した後、凹凸形状形成工程9Hでハードコート層の上に凹凸形状が形成される。9H1はフレキソ印刷装置を示す。フレキソ印刷装置9H1は、圧胴9H12と、樹脂版ロール(不図示)と、微細凹凸構造を形成するシームレス樹脂版(不図示)とを有する版胴9H13、アニロックスロール9H14と、インクバット9H15とを有している。フレキソ印刷装置9H1では、インクバット9H15のインクがアニロックスロール9H14に過剰に供給され、ドクターブレード(不図示)で必要量に制御され版胴9H13に供給された後、版胴9H13がハードコート層と接触することでハードコート層の上にシームレス樹脂版(不図示)に形成された微細凹凸構造が転写される。版胴9H13へのインク転移量は、アニロックスロール9H14の彫刻線数とセルの形状で決まりインク転移量としては安定出来るものである。アニロックスロールの材質は、鉄シリンダー表面に銅メッキ等を行ったタイプ、又はセラミックコーテイングしたタイプがあるが、耐摩耗性及び、彫刻線数の細線化が容易な点からセラミックコーテイングしたタイプが好ましい。樹脂版ロール(不図示)の材質は特に限定されるものではなく、強度を維持出来るものであればよく、鉄、ステンレス、アルミ等の金属、又は合成又は天然ゴムであることが好ましく、金属とゴムの複合部材でもよい。シームレス樹脂版(不図示)に用いる樹脂版は、光反応物質であるポリマーとモノマーとの光重合を応用した感光性樹脂版を用いることが好ましい。この感光性樹脂版は、フォトポリマー、紫外線の露光により光重合するモノマー、ポリマーとモノマー間とで光重合を開始する増感剤、及び版材の物理的性状を調整する可塑剤等の組成物から構成され、感光性樹脂版上に従来のマスク製版により凹凸パターンを刻印するか、又は、シリンダー(軸芯)の全面に塗布等により設けた感光性樹脂層にレーザー光を照射することにより直接凹凸パターンを彫刻することも出来る。ハードコート層上に好ましい微細凹凸形状を印刷作製出来るように上記感光性樹脂版上に版を作製することが好ましい。
【0074】
フレキソ印刷のインクとして用いられる活性エネルギー線硬化型樹脂は、ハードコート層に用いられる活性エネルギー線硬化型樹脂と同じ樹脂を用いることが出来、紫外線硬化型樹脂であることが好ましい。紫外線硬化型樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることが出来る。
【0075】
又、インクには、二酸化ケイ素等の微粒子やSnO2、ITO、ZnO等の導電性微粒子や架橋カチオンポリマー粒子等の帯電防止剤を含有させることも好ましい。
【0076】
凹凸形状形成工程9Hのフレキソ印刷装置9H1でハードコート層の上に凹凸形状形成用パターンが塗布された後、第2硬化処理工程9Fで硬化処理が行われ、硬化処理が終了した後、巻き取り工程9Jで巻芯に巻き取られロール状として回収される。第2硬化処理工程9Iは、硬化処理装置9I1と、硬化処理装置9I1の内部に設けられたハードコート層面に照射する活性エネルギー線の照射装置9I2とを有し、第1硬化処理工程9Dと同じ機能を有しており、同じ活性エネルギー線が照射可能となっている。活性エネルギー線照射の時の雰囲気中の酸素濃度は10%以下、特に1%以下であることが好ましい。又、活性エネルギー線の硬化反応を効率的に進めるため、透明支持体フィルム等を加熱することも好ましい。加熱方法としては、特に制限はないが、ヒートプレート、ヒートロール、サーマルヘッド、或いは転移印刷したインク表面に熱風を吹き付ける等の方法を使用するのが好ましい。又、フレキソ印刷部の透明支持体フィルムを挟んで反対側に用いられる圧胴9H12を、ヒートロールとして、連続的に加熱を施してもよい。
【0077】
加熱温度としては、使用する活性エネルギー線硬化型樹脂の種類により一概には規定出来ないが、基材フィルムへの熱変形等の影響を与えない温度範囲であることが好ましく、30〜200℃が好ましく、更に50〜120℃が好ましく、特に好ましくは70〜100℃である。
【0078】
フレキソ印刷に用いるインクが熱硬化性樹脂の場合は、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリアミドイミドなどを挙げることが出来る。フレキソ印刷により形成した微細凹凸構造が熱硬化性樹脂を含む場合、加熱方法としては、インクを透明支持体フィルム上に転移印刷させた直後に、加熱処理を行うことが好ましい。インクを透明支持体フィルム上に転移印刷させた直後とは、具体的にはインクが転移印刷と同時又は5秒以内に加熱が開始されることが好ましく、予め透明支持体フィルムの温度を上げておくことが出来る。例えば、透明支持体フィルムをヒートロール上に巻き付けて、これにインクを転移印刷させることが出来、より好ましくは転移印刷と同時又は2.0秒の間である。又、ノズル部と加熱部の距離が接近し過ぎて、熱がヘッド部に伝達すると、ノズル部での硬化によりノズル詰まりを起こすため注意が必要である。又、必要に応じて加熱間隔が5.0秒を超えることによって、転移印刷したインクの流動、変形させなだらかな微細凹凸構造を得ることも出来る。
【0079】
加熱方法としては、特に制限はないが、ヒートプレート、ヒートロール、サーマルヘッド、或いは転移印刷したインク表面に熱風を吹き付ける等の方法を使用するのが好ましい。又、フレキソ印刷部の透明支持体フィルムを挟んで反対側に設けるバックロールを、ヒートロールとして、連続的に加熱を施してもよい。加熱温度としては、使用する熱硬化性樹脂の種類により一概には規定出来ないが、透明基材への熱変形等の影響を与えない温度範囲であることが好ましく、30〜200℃が好ましく、更に50〜120℃が好ましく、特に好ましくは70〜100℃である。
【0080】
又、図2〜図4に示される製造工程で防眩性フィルム301のハードコート層の上に、反射防止層形成用塗布液を塗布して防眩性反射防止フィルムを製造するとき、ハードコート層の表面を大気圧プラズマ処理した後反射防止層形成用塗布液を塗布することが好ましい。又、高屈折率層及び/または中屈折率層を形成した後、大気圧プラズマ処理し、低屈折率層形成用塗布液を塗布することが好ましい。
【0081】
大気圧プラズマ処理とは、低屈折率層の形成前に大気圧またはその近傍の圧力下で、対向する電極の間に周波数が50kHz〜150MHzの高周波電圧を印加して放電を形成し、放電により形成された励起ガスを防眩性フィルム301のハードコート層、またはさらにその上に高屈折率層及び/または中屈折率層の表面に接触させることを言う。特に、周波数は50kHz〜27MHzであることが好ましい。
【0082】
対向する電極は、第1電極と第2電極とで構成され、何れか一方の電極に印加する高周波電圧の周波数が50kHz〜150MHzであることが好ましい。また、前記第1電極に印加する高周波電圧の周波数が1〜200kHzであり、かつ前記第2電極に印加する高周波電圧の周波数が800kHz〜150MHzであることが好ましい。
【0083】
具体的な処理として、ハードコート層、またはその上に高屈折率層及び/または中屈折率層を有する透明支持体フィルムを、大気圧もしくはその近傍の圧力下、第1電極と第2電極とで構成する対向電極間に、第1電極には第1の周波数ω1電圧成分の高周波電圧を印加し、第2電極には第2の周波数ω2の電圧成分の高周波電圧を印加して放電を形成し、放電により形成された励起ガスに透明支持体フィルムの表面を接触させることであるる。
【0084】
本発明に適用できる大気圧プラズマ処理としては、特開平11−133205号公報、特開2000−185362号公報、特開平11−61406号公報、特開2000−147209号公報、同2000−121804号公報等に開示されている技術を参考にすることができる。
【0085】
最初に、本発明に有用な大気圧プラズマ処理方法及びその装置に付いて説明する。大気圧もしくはその近傍の圧力下で、放電空間(対向電極間)にガスを供給し、放電空間に高周波電圧を印加し、ガスを励起してプラズマ状態とし、この励起したプラズマ状態のガスに透明支持体フィルムの表面を晒すものである。対向電極間で形成する放電空間に印加する高周波電圧は、一つの周波数の高周波であってもよいし、二つあるいはそれ以上の周波数の高周波であってもよい。
【0086】
大気圧プラズマ処理は、大気圧もしくはその近傍の圧力下で行われるが、大気圧もしくはその近傍の圧力とは20〜110kPa程度であり、更には、93〜104kPaが好ましい。
【0087】
対向電極間(放電空間)に供給するガスは、少なくとも、高周波電圧により励起する励起ガス、または、高周波電圧により励起する励起ガスとそのエネルギーを受け取ってプラズマ状態あるいは励起状態になるガスとを含んでいる。高周波とは、少なくとも0.5kHzの周波数を有するものを言う。
【0088】
一つの周波数の高周波電圧でプラズマ放電処理する場合(1周波数高周波電圧印加方式という場合がある)、または二つの周波数の高周波電圧でプラズマ放電処理する場合(2周波数高周波電圧印加方式という場合がある)の電極は全く同じものが使用でき、装置自体は大きな違いはない。異なる点は、高周波電源が二つ、それに付随するフィルターがあること、さらに対向電極の両方の電極から高周波電圧を印加することである。次に、図4で2周波数高周波電圧印加方式の大気圧プラズマ処理装置を説明する。
【0089】
図8は2周波数高周波電圧印加方式の大気圧プラズマ処理装置の一例を示す概略図である。
【0090】
図中、10は大気圧プラズマ処理装置を示す。10aはプラズマ放電容器を示し、プラズマ放電容器10aの内部には、高周波電圧を印加する印加電極(角筒型電極・第1電極)10a1とその下側にあるフィルムFを巻き回すロール型アース電極(第2電極)10a2とを有し、印加電極(角筒型電極・第1電極)10a1とロール型アース電極(第2電極)10a2とで対向電極を形成している。印加電極(角筒型電極・第1電極)10a1は何個並べてもよい。ガス発生装置10dで発生したガスGは、プラズマ放電容器10aのガス供給口10a3から供給され、ガスGを均一化するメッシュ(不図示)を通り、印加電極(角筒型電極・第1電極)10a1の間及び印加電極(角筒型電極・第1電極)10a1とプラズマ放電容器10aの内壁に沿って通り、対向電極の間の放電空間10a4をガスGで満たした後、排気口10e1(10e2)から排気される。10f1(10f2)は、放電空間10a4にガスGを満たすための仕切り板を示す。10g1(10g2)は、フィルムFのガイドロールを示し、10h1(10h2)はニップロールを示す。
【0091】
ロール型アース電極(第2電極)10a2と第1電源10b1との間には、第1電源10b1からの電流がロール型アース電極(第2電極)10a2に向かって流れるように第1フィルター10b11が設置されており、第1フィルター10b11は第1電源10b1からの電流を通過し難くし、第2電源10b2からの電流を通過し易くするように設計されている。また、印加電極(角筒型電極・第1電極)10a1と第2電源10b2との間には、第2電源10b2からの電流が印加電極(角筒型電極・第1電極)10a1に向かって流れるように第2フィルター10b21が設置されており、第2フィルター10b21は、第2電源10b2からの電流を通過し難くし、第1電源10b1からの電流を通過し易くするように設計されている。ここで、通過し難いとは、好ましくは、電流の20%以下、より好ましくは10%以下しか通さないことをいう。逆に通過し易いとは、好ましくは電流の80%以上、より好ましくは90%以上を通すことをいう。
【0092】
使用する第1フィルター、第2フィルターとしては、上記の様な性質のあるフィルターであれば制限なく使用できる。例えば、第1フィルターとしては、第2電源の周波数に応じて数10〜数万pFのコンデンサー、もしくは数μH程度のコイルを用いることができる。第2フィルターとしては、第1電源の周波数に応じて10μH以上のコイルを用い、これらのコイルまたはコンデンサーを介してアース接地することでフィルターとして使用できる。
【0093】
ロール型アース電極10a2と印加電極(角筒型電極・第1電極)10a1との間の放電空間(対向電極間)10a4に、ロール型アース電極(第2電極)10a2には印加電極(角筒型電極・第1電極)10b1から周波数ω1であって高周波電圧V1を、また印加電極(角筒型電極・第1電極)10a1には第2電源10b2から周波数ω2であって高周波電圧V2をかけるようになっている。
【0094】
放電空間10a4で励起したガスGにフィルムFが晒される。印加する高周波電圧の周波数が50kHz以上であることが好ましい。より好ましくは、処理効果、放電形成、設備等を考慮し、50kHz〜150MHzの範囲である。また、前記第1電極に印加する高周波電圧の周波数が1〜200kHzであり、かつ前記第2電極に印加する高周波電圧の周波数が800kHz〜150MHzであることが好ましい。
【0095】
励起したガスGに基材Sが晒される間、電極温度調節手段10cから配管10c1を経て電極を加熱または冷却する。プラズマ放電処理の際の基材の温度によっては、得られる薄膜の物性や組成は変化することがあり、これに対して適宜制御することが望ましい。温度調節の媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、幅手方向あるいは長手方向での基材の温度ムラができるだけ生じないように電極の内部の温度を均等に調節することが望まれる。
【0096】
本図で基材Sは、図2〜図4に示される製造工程で使用される防眩性フィルム301、またはその上に高屈折率層及び/または中屈折率層を有する防眩性反射防止フィルムフィルム等が挙げられる。
【0097】
次に本発明に係わる防眩性フィルム、防眩性反射防止フィルムを構成している材料に付き説明する。
【0098】
〔透明支持体フィルム〕
一般に光学フィルムに用いられる透明支持体フィルムとしては、セルロースエステルフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム又はアクリルフィルム等を挙げることが出来るが、本発明では、製造が容易であること、活性エネルギー線硬化樹脂層への接着性がよいこと、光学的に等方性であること、光学的に透明性であることから、透明支持体フィルムとしてセルロースエステルフィルムが好ましい。セルロースエステルフィルムの内では、セルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルムが、製造上、コスト面、透明性、等方性、接着性等の面から好ましい。具体的には、例えば、コニカミノルタタックKC8UX2M、KC4UX2M、KC4UY、KC8UT、KC5UN、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4(以上、コニカミノルタオプト(株)製)が好ましく用いられる。
【0099】
(セルロースエステルフィルム)
本発明に用いられるセルロースエステルは、セルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等や、特開平10−45804号、同8−231761号、米国特許第2,319,052号等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることが出来る。上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルはセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは単独又は混合して用いることが出来る。
【0100】
セルロースエステルの分子量が小さ過ぎると引裂強度が低下するが、分子量を上げ過ぎるとセルロースエステルの溶解液の粘度が高くなり過ぎるため生産性が低下する。セルロースエステルの分子量は数平均分子量(Mn)で70000〜200000のものが好ましく、100000〜200000のものが更に好ましい。
【0101】
セルローストリアセテートの場合には、平均酢化度(結合酢酸量)54.0〜62.5%のものが好ましく用いられ、更に好ましいのは、平均酢化度が58.0〜62.5%のセルローストリアセテートである。平均酢化度が小さいと寸法変化が大きく、又偏光板の偏光度が低下する。平均酢化度が大きいと溶剤に対する溶解度が低下し生産性が下がる。
【0102】
セルローストリアセテート以外で好ましいセルロースエステルは炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルを含むセルロースエステルである。
【0103】
式(I) 2.6≦X+Y≦3.0
式(II) 0≦X≦2.5
この内、特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられ、中でも1.9≦X≦2.5、0.1≦Y≦0.9であることが好ましい。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することが出来る。
【0104】
セルロースエステルは綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等を原料として合成されたセルロースエステルを単独又は混合して用いることが出来る。特に綿花リンター(以下、単にリンターとすることがある)から合成されたセルロースエステルを単独又は混合して用いることが好ましい。
【0105】
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムは、溶液流延法で製造されるものでも、溶融流延法で製造されるものでもよいが、少なくとも幅手方向に延伸されたものが好ましく、特に溶液流延工程で剥離残留溶媒量が3〜40質量%である時に幅手方向に1.01〜1.5倍に延伸されたものであることが好ましい。より好ましくは幅手方向と長手方向に2軸延伸することであり、剥離残留溶媒量が3〜40質量%である時に幅手方向及び長手方向に、各々1.01〜1.5倍に延伸されることが望ましい。こうすることによって、視認性に優れた反射防止フィルムを得ることが出来る。このときの延伸倍率としては1.01〜1.5倍が好ましく、特に好ましくは、1.03〜1.45倍である。
【0106】
本発明においては長尺フィルムを用いることが好ましく、長尺とは具体的には100〜5000m程度のものを言う。又、フィルムの幅は1.3m以上が好ましく、1.3〜4m、好ましくは1.3〜2mであることがより好ましい。本発明に用いられるセルロースエステルフィルムは、光透過率が90%以上、より好ましくは93%以上であることが好ましい。
【0107】
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムは、その厚さが10〜100μmのものが好ましく、透湿性は、25℃、90±2%RHにおいて、200g/m2・24時間以下であることが好ましく、更に好ましくは、10〜180g/m2・24時間以下であり、特に好ましくは、160g/m2・24時間以下である。特には、膜厚20〜70μmで透湿性が上記範囲内であることが好ましい。ここで、支持体の透湿性は、JIS Z 0208に記載の方法に準じて、各試料の透湿性を測定することが出来る。
【0108】
(可塑剤)
セルロースエステルフィルムには、下記のような可塑剤を含有するのが好ましい。可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤等を好ましく用いることが出来る。
【0109】
リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤では、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤では、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコレート系可塑剤では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤では、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を好ましく用いることが出来る。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。
【0110】
ポリエステル系可塑剤として脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマーを用いることが出来る。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸等を用いることが出来る。グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール等を用いることが出来る。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0111】
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる。好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることが出来る。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールであることが好ましい。多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては特に制限はなく公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることが出来る。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれに限定されるものではない。脂肪族モノカルボン酸としては炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることが出来る。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。好ましい脂肪族モノカルボン酸としては酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることが出来る。好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることが出来る。好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることが出来る。特に安息香酸であることが好ましい。多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、分子量300〜1500の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。保留性向上の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
【0112】
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は一種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。又、多価アルコール中のOH基はカルボン酸で全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
【0113】
これらの可塑剤は単独又は併用するのが好ましい。これらの可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、セルロースエステルに対して1〜20質量%が好ましく、特に好ましくは、3〜13質量%である。
【0114】
(紫外線吸収剤)
本発明では、透明支持体フィルムに紫外線吸収剤が好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては下記一般式(A)で示される化合物が好ましく用いられる。
【0116】
【化1】

【0117】
式中、R1、R2、R3、R4及びR5は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシル基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基、アシルアミノ基又は5〜6員の複素環基を表し、R4とR5は閉環して5〜6員の炭素環を形成してもよい。又、上記記載のこれらの基は、任意の置換基を有していてよい。
【0118】
以下に本発明に用いられる紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0119】
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171、チバスペシャルティケミカルズ製)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN109、チバスペシャルティケミカルズ製)
又、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては下記一般式(B)で表される化合物が好ましく用いられる。
【0120】
【化2】

【0121】
式中、Yは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、及びフェニル基を表し、これらのアルキル基、アルケニル基及びフェニル基は置換基を有していてもよい。Aは水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基又は−CO(NH)n-1−D基を表し、Dはアルキル基、アルケニル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。m及びnは1又は2を表す。
【0122】
上記において、アルキル基としては、例えば、炭素数24までの直鎖又は分岐の脂肪族基を表し、アルコキシル基としては例えば、炭素数18までのアルコキシル基を表し、アルケニル基としては例えば、炭素数16までのアルケニル基でアリル基、2−ブテニル基等を表す。又、アルキル基、アルケニル基、フェニル基への置換基としてはハロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等、ヒドロキシル基、フェニル基(このフェニル基にはアルキル基又はハロゲン原子等を置換していてもよい)等が挙げられる。
【0123】
以下に一般式(B)で表されるベンゾフェノン系化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0124】
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
本発明で好ましく用いられる上記記載の紫外線吸収剤としては、透明性が高く、偏光板や液晶の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
【0125】
又、特開平6−148430号の一般式(1)又は一般式(2)、特願2000−156039の一般式(3)、(6)、(7)記載の高分子紫外線吸収剤(又は紫外線吸収性ポリマー)も好ましく用いられる。高分子紫外線吸収剤としては、PUVA−30M(大塚化学(株)製)等が市販されている。
【0126】
(微粒子)
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムには、基材フィルム表面に凹凸面を形成するため、或いは内部散乱効果を持たせるために微粒子を含有することが好ましい。本発明に使用することの出来る無機粒子としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、ITO、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム或いはこれらの複合酸化物等を挙げることが出来る。
【0127】
微粒子の一次粒子の平均径は5nm〜5μmが好ましく、更に好ましいのは5nm〜1μmである。これらは主に粒径0.05〜1μm好ましくは0.05〜0.3μmの2次凝集体を含有することが好ましい。セルロースエステルフィルム中のこれらの微粒子の含有量は0.05〜10質量%であることが好ましく、特に0.1〜1質量%が好ましい。共流延法による多層構成のセルロースエステルフィルムの場合は、表層にこの含有量でこれらの微粒子を含有することが好ましい。
【0128】
有機粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコーン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、或いはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等をセルロースエステルフィルムに加えることが出来る。
【0129】
市販の有機粒子の具体例としては、架橋アクリル単分散粒子(MX−150、MX−180、MX−300、MX−500、MX−1000)、架橋アクリル粒子(MR−2HG、MR−7HG、MR−10HG、MR−3GSN、MR−5GSN、MR−2G、MR−7G、MR−10G)、アクリル単分散粒子(MP−1451、MP−2200、MP−1000、MP−2701、MP−5000、MP−5500、MP−1600、MP−1400)、架橋スチレン粒子(SX−130H、SX−200H、SX−350H、SH−130H、SH−350H)、ポリメチルメタクリレート系粒子(MX150、MX300、以上、綜研化学(株)製)などが挙げられる。
【0130】
これらの内でも、本発明の目的である防眩性を達成するには、シリカなどの酸化ケイ素粒子、架橋アクリル粒子、架橋スチレン粒子、或いは酸化錫、ITO、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化インジウムを主成分とする導電性微粒子が特に好ましく用いられる。ここで好ましく用いられる酸化ケイ素粒子は、合成非晶質シリカの中でも湿式法によって作られる超微粉含水ケイが光沢度を下げる効果が大きく好ましい。湿式法とはケイ酸ソーダと鉱酸及び塩類を水溶液中で反応させる方法で、例えば富士シリシア化学(株)製のサイリシア(310、350、430、431、435、540、450、702、704、770等)や日本シリカ(株)製のNipsil Eなどがある。
【0131】
(有機溶媒)
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムを溶液流延法で製造する場合のドープを形成するのに有用な有機溶媒は、セルロースエステル、芳香族環を少なくとも2つ有し、かつ少なくとも2つの芳香族環が平面構造を有する化合物、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることが出来る。例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、蟻酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。特に酢酸メチルが好ましい。
【0132】
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、又、アルコールの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒系でのセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることが出来る。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよく、かつ毒性がないこと等からエタノールが好ましい。
【0133】
ドープ中のセルロースエステルの濃度は15〜40質量%、ドープ粘度は10〜50Pa・sの範囲に調整されることが良好なフィルム面品質を得る上で好ましい。
【0134】
〔ハードコート層〕
ハードコート層形成用塗布液としては、活性エネルギー線硬化樹脂、各種添加剤等を有機溶媒に溶解・分散した溶液が使用される。使用される有機溶媒として、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン、)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中でもから適宜選択し、或いはこれらを混合し利用出来る。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)又はプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
【0135】
又、ハードコート層の表面に凹凸形状を形成するために無機微粒子、有機微粒子を添加することも可能である。使用される無機微粒子としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、ITO、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることが出来る。特に、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等が好ましく用いられる。
【0136】
又有機粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコーン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、或いはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等紫外線硬化性樹脂組成物に加えることが出来る。特に好ましくは、架橋ポリスチレン粒子(例えば、綜研化学製SX−130H、SX−200H、SX−350H)、ポリメチルメタクリレート系粒子(例えば、綜研化学製MX150、MX300)が挙げられる。
【0137】
これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.01〜5μmが好ましく0.1〜5.0μm、更には、0.1〜4.0μmであることが特に好ましい。又、粒径の異なる2種以上の微粒子を含有することが好ましい。紫外線硬化樹脂組成物と微粒子の割合は、樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜30質量部となるように配合することが望ましい。
【0138】
本発明のハードコート層は、活性エネルギー線硬化樹脂層であることが好ましく、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層を言う。活性エネルギー線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて活性エネルギー線硬化樹脂層が形成される。活性エネルギー線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が好ましい。
【0139】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。中でも紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましい。
【0140】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、又はプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る。例えば、特開昭59−151110号に記載の、ユニディック17−806(大日本インキ(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)一部との混合物等が好ましく用いられる。
【0141】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステル末端の水酸基やカルボキシル基に2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸のようなのモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば、特開昭59−151112号)。
【0142】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂は、エポキシ樹脂の末端の水酸基にアクリル酸、アクリル酸クロライド、グリシジルアクリレートのようなモノマーを反応させて得られる。
【0143】
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂としては、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
【0144】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシ樹脂の例として、用いられるエポキシ系活性エネルギー線反応性化合物を示す。
【0145】
(a)ビスフェノールAのグリシジルエーテル(この化合物はエピクロルヒドリンとビスフェノールAとの反応により、重合度の異なる混合物として得られる)
(b)ビスフェノールA等のフェノール性OHを2個有する化合物に、エピクロルヒドリン、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを反応させ末端にグリシジルエーテル基を有する化合物
(c)4,4′−メチレンビスフェノールのグリシジルエーテル
(d)ノボラック樹脂又はレゾール樹脂のフェノールフォルムアルデヒド樹脂のエポキシ化合物
(e)脂環式エポキシドを有する化合物、例えば、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)オキザレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−シクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルピメレート)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチル−シクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシ−1′−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシ−6′−メチル−1′−シクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5′,5′−スピロ−3″,4″−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン
(f)2塩基酸のジグリシジルエーテル、例えば、ジグリシジルオキザレート、ジグリシジルアジペート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジグリシジルフタレート
(g)グリコールのジグリシジルエーテル、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、コポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル
(h)ポリマー酸のグリシジルエステル、例えば、ポリアクリル酸ポリグリシジルエステル、ポリエステルジグリシジルエステル
(i)多価アルコールのグリシジルエーテル、例えば、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、グルコーストリグリシジルエーテル
(j)2−フルオロアルキル−1,2−ジオールのジグリシジルエーテルとしては、前記低屈折率物質のフッ素含有樹脂のフッ素含有エポキシ化合物に挙げた化合物例と同様のもの
(k)含フッ素アルカン末端ジオールグリシジルエーテルとしては、上記低屈折率物質のフッ素含有樹脂のフッ素含有エポキシ化合物等を挙げることが出来る。
【0146】
上記エポキシ化合物の分子量は、平均分子量として2000以下で、好ましくは1000以下である。
【0147】
上記のエポキシ化合物を活性エネルギー線により硬化する場合、より硬度を上げるためには、(h)又は(i)の多官能のエポキシ基を有する化合物を混合して用いると効果的である。
【0148】
エポキシ系活性エネルギー線反応性化合物をカチオン重合させる光重合開始剤又は光増感剤は、活性エネルギー線照射によりカチオン重合開始物質を放出することが可能な化合物であり、特に好ましくは、照射によりカチオン重合開始能のあるルイス酸を放出するオニウム塩の一群の複塩である。
【0149】
活性エネルギー線反応性化合物エポキシ樹脂は、ラジカル重合によるのではなく、カチオン重合により重合、架橋構造又は網目構造を形成する。ラジカル重合と異なり反応系中の酸素に影響を受けないため好ましい活性エネルギー線反応性樹脂である。
【0150】
本発明に有用な活性エネルギー線反応性エポキシ樹脂は、活性エネルギー線照射によりカチオン重合を開始させる物質を放出する光重合開始剤又は光増感剤により重合する。光重合開始剤としては、光照射によりカチオン重合を開始させるルイス酸を放出するオニウム塩の複塩の一群が特に好ましい。
【0151】
係る代表的なものは下記一般式(a)で表される化合物である。
【0152】
一般式(a)
〔(R1a(R2b(R3c(R4dZ〕w+〔MeXvw-
式中、カチオンはオニウムであり、ZはS、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、ハロゲン(例えばI、Br、Cl)、又はN=N(ジアゾ)であり、R1、R2、R3、R4は同一であっても異なっていてもよい有機の基である。a、b、c、dはそれぞれ0〜3の整数であって、a+b+c+dはZの価数に等しい。Meはハロゲン化物錯体の中心原子である金属又は半金属(metalloid)であり、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Co等である。Xはハロゲンであり、wはハロゲン化錯体イオンの正味の電荷であり、vはハロゲン化錯体イオン中のハロゲン原子の数である。
【0153】
上記一般式(a)の陰イオン〔MeXvw-の具体例としては、テトラフルオロボレート(BF4-)、テトラフルオロホスフェート(PF4-)等を挙げることが出来る。
【0154】
又、その他の陰イオンとしては過塩素酸イオン(ClO4-)、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CF3SO3-)、トルエンスルホン酸イオン等を挙げることが出来る。
【0155】
この様なオニウム塩の中でも特に芳香族オニウム塩をカチオン重合開始剤として使用するのが有効であり、中でもVIA族芳香族オニウム塩、オキソスルホキソニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、チオピリリュム塩等が好ましい。又、アルミニウム錯体や光分解性ケイ素化合物系重合開始剤等を挙げることが出来る。上記カチオン重合開始剤と、ベンゾフェノン、ベンゾインイソプロピルエーテル、チオキサントン等の光増感剤を併用することが出来る。
【0156】
又、エポキシアクリレート基を有する活性エネルギー線反応性化合物の場合は、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の光増感剤を用いることが出来る。この活性エネルギー線反応性化合物に用いられる光増感剤や光開始剤は、紫外線反応性化合物100質量部に対して0.1質量部〜15質量部で光反応を開始するには十分であり、好ましくは1質量部〜10質量部である。この増感剤は近紫外線領域から可視光線領域に吸収極大のあるものが好ましい。
【0157】
本発明に有用な活性エネルギー線硬化樹脂組成物において、重合開始剤は、一般的には、活性エネルギー線硬化性エポキシ樹脂(プレポリマー)100質量部に対して0.1質量部〜15質量部の使用が好ましく、更に好ましくは、1質量部〜10質量部の範囲の添加が好ましい。
【0158】
又、エポキシ樹脂を上記ウレタンアクリレート型樹脂、ポリエーテルアクリレート型樹脂等と併用することも出来、この場合、活性エネルギー線ラジカル重合開始剤と活性エネルギー線カチオン重合開始剤を併用することが好ましい。
【0159】
又、本発明に係る活性エネルギー線硬化樹脂層には、オキセタン化合物を用いることも出来る。
【0160】
本発明に係る活性エネルギー線硬化樹脂層には、公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又はゼラチン等の親水性樹脂等のバインダーを上記記載の活性エネルギー線硬化樹脂に混合して使用することが出来る。これらの樹脂は、その分子中に極性基を持っていることが好ましい。極性基としては、−COOM、−OH、−NR2、−NR3X、−SO3M、−OSO3M、−PO32、−OPO3M(ここで、Mは水素原子、アルカリ金属又はアンモニウム基を、Xはアミン塩を形成する酸を、Rは水素原子、アルキル基を表す)等を挙げることが出来る。
【0161】
本発明に使用する活性エネルギー線は、紫外線、電子線、γ線等で、化合物を活性化させるエネルギー源であれば制限なく使用出来るが、紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られると言う点で紫外線が最も好ましい。紫外線反応性化合物を光重合させる紫外線の光源としては、紫外線を発生する光源であれば何れも使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。又、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、又はエキシマランプ等も用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20mJ/cm2以上が好ましく、更に好ましくは、50mJ/cm2〜10000mJ/cm2であり、特に好ましくは、50mJ/cm2〜2000mJ/cm2である。
【0162】
又、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよい。
【0163】
本発明に使用する上記活性エネルギー線硬化樹脂を光重合又は光架橋反応を開始させるには、上記活性エネルギー線硬化樹脂のみでも開始するが、重合の誘導期が長かったり、重合開始が遅かったりするため、光増感剤や光開始剤を用いることが好ましく、それにより重合を早めることが出来る。
【0164】
(光反応開始剤、光増感剤)
本発明に係る活性エネルギー線硬化樹脂は、活性エネルギー線の照射時において光反応開始剤、光増感剤を用いることが出来る。
【0165】
具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。又、エポキシアクリレート系樹脂の合成に光反応剤を使用する際に、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。塗布乾燥後に揮発する溶媒成分を除いた紫外線硬化性樹脂組成物に含まれる光反応開始剤及び/又は光増感剤の使用量は、組成物の1質量%〜10質量%が好ましく、特に好ましくは2.5質量%〜6質量%である。
【0166】
又、活性エネルギー線硬化樹脂として、紫外線硬化性樹脂を用いる場合、前記紫外線硬化性樹脂の光硬化を妨げない程度に、後述する紫外線吸収剤を紫外線硬化性樹脂組成物に含ませてもよい。
【0167】
(酸化防止剤)
活性エネルギー線硬化樹脂層の耐熱性を高めるために、光硬化反応を抑制しないような酸化防止剤を選んで用いることが出来る。例えば、ヒンダードフェノール誘導体、チオプロピオン酸誘導体、ホスファイト誘導体等を挙げることが出来る。具体的には、例えば、4,4′−チオビス(6−tert−3−メチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)メシチレン、ジ−オクタデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジルホスフェート等を挙げることが出来る。
【0168】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、アデカオプトマーKR、BYシリーズのKR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(以上、旭電化工業(株)製)、コーエイハードのA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(以上、広栄化学工業(株)製)、セイカビームのPHC2210(S)、PHCX−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(以上、大日精化工業(株)製)、KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(以上、ダイセル・ユーシービー(株))、RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製)、サンラッド H−601(三洋化成工業(株)製)、SP−1509、SP−1507(以上、昭和高分子(株)製)、RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(以上、東亞合成(株)製)、又はその他の市販のものから適宜選択して利用することが出来る。
【0169】
活性エネルギー線硬化樹脂を含む塗布組成物は、固形分濃度は10質量%〜95質量%であることが好ましく、塗布方法により適当な濃度が選ばれる。
【0170】
(界面活性剤)
本発明に係る活性エネルギー線硬化樹脂層は界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、シリコーン系又はフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0171】
シリコーン系界面活性剤としては、疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン界面活性剤が好ましい。
【0172】
非イオン面活性剤は、水溶液中でイオンに解離する基を有しない界面活性剤を総称して言うが、疎水基のほか親水性基として多価アルコール類の水酸基、又、ポリオキシアルキレン鎖(ポリオキシエチレン)等を親水基として有するものである。親水性はアルコール性水酸基の数が多くなるに従って、又ポリオキシアルキレン鎖(ポリオキシエチレン鎖)が長くなるに従って強くなる。本発明に係わる非イオン界面活性剤は疎水基としてジメチルポリシロキサンを有することに特徴がある。
【0173】
疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン界面活性剤を用いると、活性エネルギー線硬化樹脂層や低屈折率層のムラや膜表面の防汚性が向上する。ポリメチルシロキサンからなる疎水基が表面に配向し汚れにくい膜表面を形成するものと考えられる。他の界面活性剤を用いることでは得られない効果である。
【0174】
これらの非イオン活性剤の具体例としては、例えば、日本ユニカー(株)製、シリコーン界面活性剤 SILWET L−77、L−720、L−7001、L−7002、L−7604、Y−7006、FZ−2101、FZ−2104、FZ−2105、FZ−2110、FZ−2118、FZ−2120、FZ−2122、FZ−2123、FZ−2130、FZ−2154、FZ−2161、FZ−2162、FZ−2163、FZ−2164、FZ−2166、FZ−2191等が挙げられる。
【0175】
又、SUPERSILWET SS−2801、SS−2802、SS−2803、SS−2804、SS−2805等が挙げられる。
【0176】
又、これら、疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン系の界面活性剤の好ましい構造としては、ジメチルポリシロキサン構造部分とポリオキシアルキレン鎖が交互に繰り返し結合した直鎖状のブロックコポリマーであることが好ましい。主鎖骨格の鎖長が長く、直鎖状の構造であることから、優れている。親水基と疎水基が交互に繰り返したブロックコポリマーであることにより、シリカ微粒子の表面を1つの活性剤分子が、複数の箇所で、これを覆うように吸着することが出来るためと考えられる。
【0177】
これらの具体例としては、例えば、日本ユニカー(株)製、シリコーン界面活性剤 ABN SILWET FZ−2203、FZ−2207、FZ−2208等が挙げられる。
【0178】
フッ素系界面活性剤としては、疎水基がパーフルオロカーボンチェインを持つ界面活性剤を用いることが出来る。種類としては、フルオロアルキルカルボン酸、N−パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−(フルオロアルキルオキシ)−1−アルキルスルホン酸ナトリウム、3−(ω−フルオロアルカノイル−N−エチルアミノ)−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、N−(3−パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベタイン、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキルスルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル−N−エチルスルホニルグリシン塩、リン酸ビス(N−パーフルオロオクチルスルホニル−N−エチルアミノエチル)等が挙げられる。本発明では非イオン界面活性剤が好ましい。
【0179】
これらのフッ素系界面活性剤はメガファック、エフトップ、サーフロン、フタージェント、ユニダイン、フローラード、ゾニール等の商品名で市販されている。
【0180】
好ましい添加量は活性エネルギー線硬化樹脂層の塗布液に含まれる固形分当たり0.01〜3.0%であり、より好ましくは0.02〜1.0%である。
【0181】
しかしながら、他の界面活性剤も併用して用いてもよく、適宜、例えばスルホン酸塩系、硫酸エステル塩系、リン酸エステル塩系等のアニオン界面活性剤、又、ポリオキシエチレン鎖親水基として有するエーテル型、エーテルエステル型等の非イオン界面活性剤等を併用してもよい。
【0182】
本発明に係る活性エネルギー線硬化樹脂層の屈折率は、低反射性フィルムを得るための光学設計上から屈折率が1.5〜2.0、特に1.6〜1.7であることが好ましい。活性エネルギー線硬化樹脂層の屈折率は添加する微粒子或いは無機バインダーの屈折率や含有量によって調製することが出来る。
【0183】
又、活性エネルギー線硬化樹脂層組成物塗布液には、特にシリコーン化合物を添加することが好ましい。例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイル等が好ましく添加される。ポリエーテル変性シリコーンオイルの数平均分子量は、例えば、1,000〜100,000、好ましくは、2,000〜50,000が適当であり、数平均分子量が1,000未満では、塗膜の乾燥性が低下し、逆に、数平均分子量が100,000を越えると、塗膜表面にブリードアウトしにくくなる傾向にある。
【0184】
シリコーン化合物の市販品としては、DKQ8−779(ダウコーニング社製商品名)、SF3771、SF8410、SF8411、SF8419、SF8421、SF8428、SH200、SH510、SH1107、SH3749、SH3771、BX16−034、SH3746、SH3749、SH8400、SH3771M、SH3772M、SH3773M、SH3775M、BY−16−837、BY−16−839、BY−16−869、BY−16−870、BY−16−004、BY−16−891、BY−16−872、BY−16−874、BY22−008M、BY22−012M、FS−1265(以上、東レ・ダウコーニングシリコーン社製商品名)、KF−101、KF−100T、KF351、KF352、KF353、KF354、KF355、KF615、KF618、KF945、KF6004、シリコーンX−22−945、X22−160AS(以上、信越化学工業社製商品名)、XF3940、XF3949(以上、東芝シリコーン社製商品名)、ディスパロンLS−009(楠本化成社製)、グラノール410(共栄社油脂化学工業(株)製)、TSF4440、TSF4441、TSF4445、TSF4446、TSF4452、TSF4460(GE東芝シリコーン製)、BYK−306、BYK−330、BYK−307、BYK−341、BYK−344、BYK−361(ビックケミ−ジャパン社製)日本ユニカー(株)製のLシリーズ、Yシリーズ、FZシリーズ等が挙げられ、好ましく用いられる。
【0185】
これらの成分は基材や下層への塗布性を高める。積層体最表面層に添加した場合には、塗膜の撥水、撥油性、防汚性を高めるばかりでなく、表面の耐擦傷性にも効果を発揮する。これらの成分は、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0186】
本発明の活性エネルギー線硬化樹脂層には導電性を有する金属酸化物微粒子を含有することも出来る。導電性を有する金属酸化物微粒子としては、Zr、Sn、Sb、As、Zn、Nb、In、Alから選択される金属酸化物微粒子が好ましく、具体的には、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、ITO(インジウムティンオキサイド)、酸化亜鉛、ケイ酸アルミニウムを挙げることが出来る。特に、ITO等が好ましく用いられる。
【0187】
又、活性エネルギー線硬化樹脂層は、2層以上の重層構造を有していてもよく、その中の1層は例えば前記導電性微粒子、或いは、イオン性ポリマーを含有する所謂帯電防止層としてもよいし、又、種々の表示素子に対する色補正用フィルタとして色調調整機能を有する色調調整剤を含有させてもよいし、又電磁波遮断剤或いは赤外線吸収剤等を含有させそれぞれの機能を有するようにすることも出来る。
【0188】
〈低屈折率層〉
本発明に用いられる低屈折率層では以下の中空シリカ系微粒子が好ましく用いられる。
【0189】
(中空シリカ系微粒子)
中空微粒子は、(I)多孔質粒子と該多孔質粒子表面に設けられた被覆層とからなる複合粒子、又は(II)内部に空洞を有し、かつ内容物が溶媒、気体又は多孔質物質で充填された空洞粒子である。尚、低屈折率層には(I)複合粒子又は(II)空洞粒子の何れかが含まれていればよく、又双方が含まれていてもよい。
【0190】
尚、空洞粒子は内部に空洞を有する粒子であり、空洞は粒子壁で囲まれている。空洞内には、調製時に使用した溶媒、気体又は多孔質物質等の内容物で充填されている。この様な中空球状微粒子の平均粒子径が5〜300nm、好ましくは10〜200nmの範囲にあることが望ましい。使用される中空球状微粒子は、形成される透明被膜の厚さに応じて適宜選択され、形成される低屈折率層等の透明被膜の膜厚の2/3〜1/10の範囲にあることが望ましい。これらの中空球状微粒子は、低屈折率層の形成のため、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。分散媒としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)及びケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ケトンアルコール(例えばジアセトンアルコール)が好ましい。
【0191】
複合粒子の被覆層の厚さ又は空洞粒子の粒子壁の厚さは、1〜20nm、好ましくは2〜15nmの範囲にあることが望ましい。複合粒子の場合、被覆層の厚さが1nm未満の場合は、粒子を完全に被覆することが出来ないことがあり、後述する塗布液成分である重合度の低いケイ酸モノマー、オリゴマー等が容易に複合粒子の内部に進入して内部の多孔性が減少し、低屈折率の効果が十分得られないことがある。又、被覆層の厚さが20nmを越えると、前記ケイ酸モノマー、オリゴマーが内部に進入することはないが、複合粒子の多孔性(細孔容積)が低下し低屈折率の効果が十分得られなくなることがある。又空洞粒子の場合、粒子壁の厚さが1nm未満の場合は、粒子形状を維持出来ないことがあり、又厚さが20nmを越えても、低屈折率の効果が十分に現れないことがある。
【0192】
複合粒子の被覆層又は空洞粒子の粒子壁は、シリカを主成分とすることが好ましい。又、シリカ以外の成分が含まれていてもよく、具体的には、Al23、B23、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P23、Sb23、MoO3、ZnO2、WO3等が挙げられる。複合粒子を構成する多孔質粒子としては、シリカからなるもの、シリカとシリカ以外の無機化合物とからなるもの、CaF2、NaF、NaAlF6、MgF等からなるものが挙げられる。この内特にシリカとシリカ以外の無機化合物との複合酸化物からなる多孔質粒子が好適である。シリカ以外の無機化合物としては、Al23、B23、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P23、Sb23、MoO3、ZnO2、WO3等との1種又は2種以上を挙げることが出来る。この様な多孔質粒子では、シリカをSiO2で表し、シリカ以外の無機化合物を酸化物換算(MOX)で表した時のモル比MOX/SiO2が、0.0001〜1.0、好ましくは0.001〜0.3の範囲にあることが望ましい。多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が0.0001未満のものは得ることが困難であり、得られたとしても細孔容積が小さく、屈折率の低い粒子が得られない。又、多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が、1.0を越えると、シリカの比率が少なくなるので、細孔容積が大きくなり、更に屈折率が低いものを得ることが難しいことがある。
【0193】
この様な多孔質粒子の細孔容積は、0.1〜1.5ml/g、好ましくは0.2〜1.5ml/gの範囲であることが望ましい。細孔容積が0.1ml/g未満では、十分に屈折率の低下した粒子が得られず、1.5ml/gを越えると微粒子の強度が低下し、得られる被膜の強度が低下することがある。尚、この様な多孔質粒子の細孔容積は水銀圧入法によって求めることが出来る。又、空洞粒子の内容物としては、粒子調製時に使用した溶媒、気体、多孔質物質等が挙げられる。溶媒中には空洞粒子調製する際に使用される粒子前駆体の未反応物、使用した触媒等が含まれていてもよい。又多孔質物質としては、前記多孔質粒子で例表した化合物からなるものが挙げられる。これらの内容物は、単一の成分からなるものであってもよいが、複数成分の混合物であってもよい。
【0194】
この様な中空球状微粒子の製造方法としては、例えば特開平7−133105号公報の段落番号[0010]〜[0033]に開示された複合酸化物コロイド粒子の調製方法が好適に採用される。
【0195】
この様にして得られた中空微粒子の屈折率は、内部が空洞であるので屈折率が低く、それを用いた本発明に用いられる低屈折率層の屈折率は、1.30〜1.50であることが好ましく、1.35〜1.44であることが更に好ましい。
【0196】
外殻層を有し、内部が多孔質又は空洞である中空シリカ系微粒子の低屈折率層塗布液中の含量(質量)は、10〜80質量%が好ましく、更に好ましくは20〜60質量%である。
【0197】
(テトラアルコキシシラン化合物又はその加水分解物)
本発明に用いられる低屈折率層には、ゾルゲル素材としてテトラアルコキシシラン化合物又はその加水分解物が含有されることが好ましい。
【0198】
本発明に用いられる低屈折率層用の素材として、前記無機ケイ素酸化物以外に有機基を有するケイ素酸化物を用いることも好ましい。これらは一般にゾルゲル素材と呼ばれるが、金属アルコレート、オルガノアルコキシ金属化合物及びその加水分解物を用いることが出来る。特に、アルコキシシラン、オルガノアルコキシシラン及びその加水分解物が好ましい。これらの例としては、テトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等)、アルキルトリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等)、アリールトリアルコキシシラン(フェニルトリメトキシシラン等)、ジアルキルジアルコキシシラン、ジアリールジアルコキシシラン等が挙げられる。
【0199】
本発明に用いられる低屈折率層は前記ケイ素酸化物と下記シランカップリング剤を含むことが好ましい。
【0200】
具体的なシランカップリング剤の例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン等が挙げられる。
【0201】
又、ケイ素に対して2置換のアルキル基を持つシランカップリング剤の例として、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0202】
シランカップリング剤の具体例としては、信越化学工業株式会社製KBM−303、KBM−403、KBM−402、KBM−403、KBM−1403、KBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503、KBM−603、KBE−603、KBM−903、KBE−903、KBE−9103、KBM−802、KBM−803等が挙げられる。
【0203】
これらシランカップリング剤は予め必要量の水で加水分解されていることが好ましい。シランカップリング剤が加水分解されていると、前述のケイ素酸化物粒子及び有機基を有するケイ素酸化物の表面が反応し易く、より強固な膜が形成される。又、加水分解されたシランカップリング剤を予め塗布液中に加えてもよい。
【0204】
又、低屈折率層は、5〜50質量%の量のポリマーを含むことも出来る。ポリマーは、微粒子を接着し、空隙を含む低屈折率層の構造を維持する機能を有する。ポリマーの使用量は、空隙を充填することなく低屈折率層の強度を維持出来るように調整する。ポリマーの量は、低屈折率層の全量の10〜30質量%であることが好ましい。ポリマーで微粒子を接着するためには、(1)微粒子の表面処理剤にポリマーを結合させるか、(2)微粒子をコアとして、その周囲にポリマーシェルを形成するか、或いは(3)微粒子間のバインダーとして、ポリマーを使用することが好ましい。
【0205】
バインダーポリマーは、飽和炭化水素又はポリエーテルを主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることが更に好ましい。バインダーポリマーは架橋していることが好ましい。飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーは、エチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることが好ましい。架橋しているバインダーポリマーを得るためには、二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを用いることが好ましい。2以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの例としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼン及びその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例えば、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミドが挙げられる。
【0206】
又、本発明に用いられる低屈折率層が、熱又は電離放射線により架橋する含フッ素樹脂(以下、「架橋前の含フッ素樹脂」とも言う)の架橋からなる低屈折率層であってもよい。
【0207】
架橋前の含フッ素樹脂としては、含フッ素ビニルモノマーと架橋性基付与のためのモノマーから形成される含フッ素共重合体を好ましく挙げることが出来る。上記含フッ素ビニルモノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えば、ビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられる。架橋性基付与のためのモノマーとしては、グリシジルメタクリレートや、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルグリシジルエーテル等のように分子内に予め架橋性官能基を有するビニルモノマーの他、カルボキシル基やヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基等を有するビニルモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル等)が挙げられる。後者は共重合の後、ポリマー中の官能基と反応する基ともう1つ以上の反応性基を持つ化合物を加えることにより、架橋構造を導入出来ることが特開平10−25388号、同10−147739号に記載されている。架橋性基の例には、アクリロイル、メタクリロイル、イソシアナート、エポキシ、アジリジン、オキサゾリン、アルデヒド、カルボニル、ヒドラジン、カルボキシル、メチロール及び活性メチレン基等が挙げられる。含フッ素共重合体が、加熱により反応する架橋基、若しくは、エチレン性不飽和基と熱ラジカル発生剤若しくはエポキシ基と熱酸発生剤等の組合せにより、加熱により架橋する場合、熱硬化型であり、エチレン性不飽和基と光ラジカル発生剤若しくは、エポキシ基と光酸発生剤等の組合せにより、光(好ましくは紫外線、電子ビーム等)の照射により架橋する場合、電離放射線硬化型である。
【0208】
架橋前の含フッ素共重合体を形成するために用いられる上記各モノマーの使用割合は、含フッ素ビニルモノマーが好ましくは20〜70モル%、より好ましくは40〜70モル%、架橋性基付与のためのモノマーが好ましくは1〜20モル%、より好ましくは5〜20モル%、併用されるその他のモノマーが好ましくは10〜70モル%、より好ましくは10〜50モル%の割合である。
【0209】
本発明に用いられる低屈折率層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号)により、塗布により形成することが出来る。又、2以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2,761,791号、同2,941,898号、同3,508,947号、同3,526,528号及び原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
【0210】
本発明に用いられる低屈折率層の膜厚は50〜200nmであることが好ましく、60〜150nmであることがより好ましい。
【0211】
〈高屈折率層及び中屈折率層〉
本発明においては、反射率の低減のために凹凸形状の透明支持体、ハードコート層と低屈折率層との間に、高屈折率層を設けることが好ましい。又、該透明支持体と高屈折率層との間に中屈折率層を設けることは、反射率の低減のために更に好ましい。高屈折率層の屈折率は、1.55〜2.30であることが好ましく、1.57〜2.20であることが更に好ましい。中屈折率層の屈折率は、透明支持体の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.55〜1.80であることが好ましい。高屈折率層及び中屈折率層の厚さは、5nm〜1μmであることが好ましく、10nm〜0.2μmであることが更に好ましく、30nm〜0.1μmであることが最も好ましい。高屈折率層及び中屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。高屈折率層及び中屈折率層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度でH以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0212】
本発明に用いられる中、高屈折率層は下記一般式(1)で表される有機チタン化合物のモノマー、オリゴマー又はそれらの加水分解物を含有する塗布液を塗布し乾燥させて形成させた屈折率1.55〜2.5の層であることが好ましい。
【0213】
一般式(1) Ti(OR14
式中、R1としては炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基がよいが、好ましくは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基である。又、有機チタン化合物のモノマー、オリゴマー又はそれらの加水分解物は、アルコキシド基が加水分解を受けて−Ti−O−Ti−のように反応して架橋構造を作り、硬化した層を形成する。
【0214】
本発明に用いられる有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーとしては、Ti(OCH34、Ti(OC254、Ti(O−n−C374、Ti(O−i−C374、Ti(O−n−C494、Ti(O−n−C374の2〜10量体、Ti(O−i−C374の2〜10量体、Ti(O−n−C494の2〜10量体等が好ましい例として挙げられる。これらは単独で、又は2種以上組合せて用いることが出来る。中でもTi(O−n−C374、Ti(O−i−C374、Ti(O−n−C494、Ti(O−n−C374の2〜10量体、Ti(O−n−C494の2〜10量体が特に好ましい。
【0215】
本発明に用いられる有機チタン化合物のモノマー、オリゴマー又はそれらの加水分解物は、塗布液に含まれる固形分中の50.0質量%〜98.0質量%を占めていることが望ましい。固形分比率は50質量%〜90質量%がより好ましく、55質量%〜90質量%が更に好ましい。この他、塗布組成物には有機チタン化合物のポリマー(予め有機チタン化合物の加水分解を行って架橋したもの)或いは酸化チタン微粒子を添加することも好ましい。
【0216】
本発明に好ましく用いられる高屈折率層及び中屈折率層は、金属酸化物微粒子を固形成分として20〜90%(質量比率)の範囲で含有し、更にバインダーポリマーを含むことが好ましい。微粒子として金属酸化物粒子を含み、更にバインダーポリマーを含むことが好ましい。
【0217】
上記塗布液調製法で加水分解/重合した有機チタン化合物と金属酸化物粒子を組合せると、金属酸化物粒子と加水分解/重合した有機チタン化合物とが強固に接着し、粒子の持つ硬さと均一膜の柔軟性を兼ね備えた強い塗膜を得ることが出来る。
【0218】
高屈折率層及び中屈折率層に用いる金属酸化物粒子は、屈折率が1.80〜2.80であることが好ましく、1.90〜2.80であることが更に好ましい。金属酸化物粒子の一次粒子の質量平均径は、1〜150nmであることが好ましく、1〜100nmであることが更に好ましく、1〜80nmであることが最も好ましい。層中での金属酸化物粒子の質量平均径は、1〜200nmであることが好ましく、5〜150nmであることがより好ましく、10〜100nmであることが更に好ましく、10〜80nmであることが最も好ましい。金属酸化物粒子の平均粒径は、20〜30nm以上であれば光散乱法により、20〜30nm以下であれば電子顕微鏡写真により測定される。金属酸化物粒子の比表面積は、BET法で測定された値として、10〜400m2/gであることが好ましく、20〜200m2/gであることが更に好ましく、30〜150m2/gであることが最も好ましい。
【0219】
金属酸化物粒子の例としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも1種の元素を有する金属酸化物であり、具体的には二酸化チタン(例、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化ジルコニウムが挙げられる。中でも、酸化チタン、酸化錫及び酸化インジウムが特に好ましい。金属酸化物粒子は、これらの金属の酸化物を主成分とし、更に他の元素を含むことが出来る。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。他の元素の例としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びS等が挙げられる。
【0220】
金属酸化物粒子は表面処理されていることが好ましい。表面処理は、無機化合物又は有機化合物を用いて実施することが出来る。表面処理に用いる無機化合物の例としては、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム及び酸化鉄が挙げられる。中でもアルミナ及びシリカが好ましい。表面処理に用いる有機化合物の例としては、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が挙げられる。中でも、シランカップリング剤が最も好ましい。
【0221】
高屈折率層及び中屈折率層中の金属酸化物粒子の割合は、5〜95体積%であることが好ましく、より好ましくは20〜90体積%であり、更に好ましくは40〜85体積%である。
【0222】
上記金属酸化物粒子は、媒体に分散した分散体の状態で、高屈折率層及び中屈折率層を形成するための塗布液に供される。金属酸化物粒子の分散媒体としては、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散溶媒の具体例としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びブタノールが特に好ましい。
【0223】
又金属酸化物粒子は、分散機を用いて媒体中に分散することが出来る。分散機の例としては、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター及びコロイドミルが挙げられる。サンドグラインダーミル及び高速インペラーミルが特に好ましい。又、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例としては、ボールミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダーが挙げられる。
【0224】
本発明に用いられる高屈折率層及び中屈折率層は、架橋構造を有するポリマー(以下、架橋ポリマーとも言う)をバインダーポリマーとして用いることが好ましい。架橋ポリマーの例として、ポリオレフィン等の飽和炭化水素鎖を有するポリマー、ポリエーテル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミド及びメラミン樹脂等の架橋物が挙げられる。中でも、ポリオレフィン、ポリエーテル及びポリウレタンの架橋物が好ましく、ポリオレフィン及びポリエーテルの架橋物が更に好ましく、ポリオレフィンの架橋物が最も好ましい。
【0225】
前記バインダーポリマーに用いられるモノマーとしては、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーが最も好ましいが、その例としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼン及びその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミド等が挙げられる。アニオン性基を有するモノマー、及びアミノ基又は4級アンモニウム基を有するモノマーは市販のモノマーを用いてもよい。好ましく用いられる市販のアニオン性基を有するモノマーとしては、KAYAMARPM−21、PM−2(日本化薬(株)製)、AntoxMS−60、MS−2N、MS−NH4(日本乳化剤(株)製)、アロニックスM−5000、M−6000、M−8000シリーズ(東亞合成化学工業(株)製)、ビスコート#2000シリーズ(大阪有機化学工業(株)製)、ニューフロンティアGX−8289(第一工業製薬(株)製)、NKエステルCB−1、A−SA(新中村化学工業(株)製)、AR−100、MR−100、MR−200(第八化学工業(株)製)等が挙げられる。又、好ましく用いられる市販のアミノ基又は4級アンモニウム基を有するモノマーとしてはDMAA(大阪有機化学工業(株)製)、DMAEA,DMAPAA(興人(株)製)、ブレンマーQA(日本油脂(株)製)、ニューフロンティアC−1615(第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
【0226】
ポリマーの重合反応は、光重合反応又は熱重合反応を用いることが出来る。特に光重合反応が好ましい。重合反応のため、重合開始剤を使用することが好ましい。例えば、活性エネルギー線硬化樹脂層のバインダーポリマーを形成するために用いられる熱重合開始剤、及び光重合開始剤が挙げられる。
【0227】
重合開始剤として市販の重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤に加えて、重合促進剤を使用してもよい。重合開始剤と重合促進剤の添加量は、モノマーの全量の0.2〜10質量%の範囲であることが好ましい。
【0228】
反射防止層の各層又はその塗布液には、前述した成分(金属酸化物粒子、ポリマー、分散媒体、重合開始剤、重合促進剤)以外に、重合禁止剤、レベリング剤、増粘剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、帯電防止剤や接着付与剤を添加してもよい。
【0229】
本発明に用いられる中〜高屈折率層及び低屈折率層の塗設後、金属アルコキシドを含む組成物の加水分解又は硬化を促進するため、活性エネルギー線を照射することが好ましい。より好ましくは、各層を塗設するごとに活性エネルギー線を照射することである。
【0230】
前記活性エネルギー線は、紫外線、電子線、γ線等で、化合物を活性させるエネルギー源であれば制限なく使用出来るが、紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られると言う点で紫外線が好ましい。紫外線反応性化合物を光重合させる紫外線の光源としては、紫外線を発生する光源であれば何れも使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。又、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプ又はシンクロトロン放射光等も用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20mJ/cm2〜10,000mJ/cm2が好ましく、更に好ましくは、100mJ/cm2〜2,000mJ/cm2であり、特に好ましくは、400mJ/cm2〜2,000mJ/cm2である。
【0231】
〔偏光板〕
本発明に用いられる偏光板は一般的な方法で作製することが出来る。本発明に係る防眩性反射防止フィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面には該フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KV8UY−HA、KV8UX−RHA、以上コニカミノルタオプト(株)製)が好ましく用いられる。本発明に係る防眩性反射防止フィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは面内リターデーションRoが590nmで、20〜70nm、Rtが100〜400nmの位相差を有していることが好ましい。これらは例えば、特開2002−71957、同2003−170492記載の方法で作製することが出来る。又は、更にディスコチック液晶等の液晶化合物を配向させて形成した光学異方層を有している光学補償フィルムを兼ねる偏光板保護フィルムを用いることが好ましい。例えば、特開2003−98348記載の方法で光学異方性層を形成することが出来る。本発明に係る防眩性反射防止フィルムと組合せて使用することによって、平面性に優れ、安定した視野角拡大効果を有する偏光板を得ることが出来る。
【0232】
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。該偏光膜の面上に、本発明に係る防眩性反射防止フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
【0233】
従来の防眩性反射防止フィルムを使用した偏光板は平面性に劣り、反射像を見ると細かい波打ち状のムラが認められ、60℃、90%RHの条件での耐久性試験により、波打ち状のムラが増大したが、これに対して本発明に係る防眩性反射防止フィルムを用いた偏光板は、平面性に優れていた。又、60℃、90%RHの条件での耐久性試験によっても波打ち状のムラが増加することはなかった。
【0234】
〔画像表示装置〕
本発明の防眩性反射防止フィルム若しくは偏光板を画像表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた画像表示装置を作製することが出来る。本発明に係る防眩性反射防止フィルムは反射型、透過型、半透過型LCD又はTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。又、本発明に係る防眩性反射防止フィルムは平面性に優れ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー等の各種表示装置にも好ましく用いられる。特に画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の表示装置では、画面周辺部での白抜け等もなく、その効果が長期間維持され、特にMVA型画像表示装置では顕著な効果が認められる。又、色ムラ、ギラツキや波打ちムラが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないと言う効果があった。
【実施例】
【0235】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0236】
実施例1
(透明支持体フィルムの作製)
透明支持体フィルムとして、セルローストリアセテートフィルムを図5に示す製造工程を使用し以下に示す方法で、厚さ80μm、幅1500mm×1000mを作製した。尚、凹凸形状成形工程で凹凸形状成形用ローラは使用しなかった。下記に示すドープを調製し、次に、このドープ組成物を濾過し、冷却して33℃に保ちステンレス製の流延用ベルト上に均一に流延した。流延用ベルトの上で、残留溶媒量が100%になるまで溶媒を蒸発させ、流延用ベルトの上から剥離し、その後、テンターでTD方向(フィルムの搬送方向と直交する方向)に120℃で1.1倍に延伸した。テンターで延伸を始めた時の残留溶剤量は20%であった。更に乾燥工程で搬送しながら残留溶剤量が0.1%になるまで高温処理した後、1.5m幅にスリットし、フィルム両端にナーリング加工を施して巻き取り、平均膜厚80μmのセルローストリアセテートフィルムを作製した。ウェブの搬送速度は45m/minで行った。
【0237】
尚、残留溶媒量は下記の式で計算で求めた値である。
【0238】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
【0239】
〈ドープ組成物〉
セルローストリアセテート(平均酢化度62.0%) 100質量部
可塑剤(トリメチロールプロパントリベンゾエート) 5質量部
可塑剤(エチルフタリルエチルグリコレート) 5質量部
紫外線吸収剤(2−〔5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル〕−4−メチル−6−(t−ブチル)フェノール) 1質量部
紫外線吸収剤(2−〔(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェノール) 1質量部
微粒子(アエロジルR972V、日本アエロジル(株)製) 0.3質量部
メチレンクロライド 430質量部
エタノール 90質量部
上記組成物を密閉容器に投入し、加圧下で80℃に保温し撹伴しながら完全に溶解してドープ組成物を得た。
【0240】
〔防眩性フィルムの作製〕
(ハードコート層の塗設)
準備したセルローストリアセテートフィルムに下記の防眩性を付与するハードコート層形成用塗布液をダイコーターにて硬化後の平均膜厚が8μmになるようにセルローストリアセテートフィルム上に塗布、乾燥、紫外線照射し、ハードコート層を塗設した。
表面の表面平均粗さRaは0.30μm、表面の凹凸の平均山谷間隔Smは30μmであった。尚、ハードコート層の表面の表面平均粗さRaは、JIS B 0601−2001に準じて測定した値を示す。
【0241】
(ハードコート層形成用塗布液)
下記材料を攪拌、混合しハードコート層形成用塗布液とした。
【0242】
アクリルモノマー;KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート) 226質量部
イルガキュア184(チバスペシャリティケミカルズ製) 25質量部
FZ−2222(日本ユニカー製、10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液) 1質量部
スチレン−ブチルメタクリレート樹脂ビーズ(4.5μm粒子) 100質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 101質量部
酢酸エチル 101質量部
(防眩性フィルムのハードコート層の表面処理)
準備した防眩性フィルムのハードコート層を、表1に示す処理法で処理し処理済み防眩性フィルムNo.1−1〜1−3とした。
【0243】
表面処理H1
図4に示す大気圧プラズマ処理装置を用い、プラズマ処理を行った。電極間隙を0.5mmとして、以下に示す放電ガスを放電空間に供給し、神鋼電機社製高周波電源を使用して、第1電極の周波数3kHz、印加電圧Vp=9.5kV及び出力密度1.5W/cm2、第2電極の周波数800kHz、印加電圧Vp=9.5kV及び出力密度1.5W/cm2として放電を形成させて表面処理を行った。
(放電ガス)
窒素ガス 80.0体積%
酸素ガス 20.0体積%
表面処理H2
ハードコート層を有する支持体を、50℃に加熱した1.5mol/lのNaOH水溶液に2分間浸漬しアルカリ処理を行い、水洗後、0.5質量%のH2SO4水溶液に室温で30秒間浸漬し中和させ、水洗、乾燥を行った。
【0244】
表面処理H3
ピラー社製ソリッドステートコロナ処理6KVAモデルを用い、ハードコートフィル
ムのハードコート層面を室温下において20m/分で処理した。この時の電流、電圧の読み取り値から、支持体には0.375kV・A・分/m2の処理がなされていることがわかった。この時の処理周波数は9.6kHz、電極と誘電体ロールのギャップクリアランスは1.6mmであった。
【0245】
【表1】

【0246】
〔防眩性反射防止フィルムの作製〕
準備した処理済み防眩性フィルムNo.1−1〜1−3を使用し、図2に示す製造工程で表2に示す条件で下記に示す高屈折率層形成用塗布液をハードコート層の上に塗布し高屈折率層形成用塗膜を形成した後、乾燥・硬化処理を行い高屈折率層を形成した後、再度図2に示す製造工程で表2に示す条件で下記に示す低屈折率層形成用塗布液を高屈折率層の上に塗布し低屈折率層形成用塗膜を形成した後、乾燥処理を行い低屈折率層を形成し防眩性反射防止フィルムを作製し、試料No.101〜118とした。
【0247】
比較試料No.119の作製
準備した処理済み防眩性フィルムNo.1−1を使用し、高屈折率層形成用塗布液をハードコート層の上に塗布し高屈折率層形成用塗膜を形成した後、高屈折率層形成用塗膜面を上にして水平に搬送し、乾燥工程で風速6m/sec、吹き付け角度90°で風を高屈折率層形成用塗膜面に吹き付け高屈折率層を形成した後、同じ方法で低高屈折率層を形成し防眩性反射防止フィルムを作製し比較試料とした。
【0248】
比較試料No.120の作製
準備した処理済み防眩性フィルムNo.1−1を使用し、高屈折率層形成用塗布液をハードコート層の上に塗布し高屈折率層形成用塗膜を形成した後、高屈折率層形成用塗膜面を上にして水平に搬送し、乾燥工程では熱のみで乾燥し高屈折率層を形成した後、同じ方法で低高屈折率層を形成し防眩性反射防止フィルムを作製し比較試料とした。
【0249】
比較試料No.121の作製
準備した処理済み防眩性フィルムNo.1−1を使用し、高屈折率層形成用塗布液をハードコート層の上に塗布し高屈折率層形成用塗膜を形成した後、高屈折率層形成用塗膜面を下にして水平に搬送し、乾燥工程で風速6m/sec、吹き付け角度90°で風を高屈折率層形成用塗膜面に吹き付け高屈折率層を形成した後、同じ方法で低高屈折率層を形成し防眩性反射防止フィルムを作製し比較とした。
【0250】
比較試料No.122の作製
準備した処理済み防眩性フィルムNo.1−1を使用し、高屈折率層形成用塗布液をハードコート層の上に塗布し高屈折率層形成用塗膜を形成した後、高屈折率層形成用塗膜面を下にして水平に搬送し、乾燥工程で風の吹き付けを行わずに熱のみで乾燥し高屈折率層を形成した後、同じ方法で低高屈折率層を形成し防眩性反射防止フィルムを作製し比較試料とした。
【0251】
比較試料No.123の作製
準備した処理済み防眩性フィルムNo.1−1を使用し、図2に示す製造工程で高屈折率層形成用塗布液をハードコート層の上に塗布し高屈折率層形成用塗膜を形成した後、重力方向に対して上方向に搬送し、乾燥工程で風の吹き付けを行わずに熱のみで乾燥し高屈折率層を形成した後、同じ方法で低高屈折率層を形成し防眩性反射防止フィルムを作製し比較試料とした。
【0252】
比較試料No.124の作製
準備した処理済み防眩性フィルムNo.1−1を使用し、図2に示す製造工程で高屈折率層形成用塗布液をハードコート層の上に塗布し高屈折率層形成用塗膜を形成した後、重力方向に対して上方向に搬送し、乾燥工程で風速5m/secで風を流し、高屈折率層形成用塗膜面に風を吹き付けずに高屈折率層を形成した後、同じ方法で低高屈折率層を形成し防眩性反射防止フィルムを作製し比較試料とした。
【0253】
尚、高屈折率層形成用塗膜の乾燥処理工程での温度は80℃、時間90秒で行い、低屈折率層形成用塗膜の乾燥処理工程での温度は100℃、時間90で行った。硬化処理工程では、高屈折率層、低屈折率層に対して活性エネルギー線として、高圧水銀灯を使用し、照射光量は120mJ/cm2、照射時間は2秒で硬化処理を行った。
【0254】
〈高屈折率層用塗布液の調製〉
下記材料を攪拌、混合し高屈折率層形成用塗布液とした。
【0255】
導電性アンチモン酸亜鉛微粒子分散液(セルナックスCX−Z610M−F2、日産化学社製、溶媒MeOH、固形分60%) 200質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(マトリックス) 50質量部
イルガキュア184(光重合開始剤) 3質量部
γ−メタクリロキシプロピルメトキシシラン(信越化学社製KBM503)
8質量部
ポリ−n−ブチルメタクリレート(マトリックス) 5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 720質量部
イソプロピルアルコール 1470質量部
メチルエチルケトン(MEK) 250質量部
高屈折率層1の厚さは78nm、屈折率は1.62であった。
【0256】
〈低屈折率層形成用塗布液の調製〉
下記材料を攪拌、混合し低屈折率層塗布液とした。
【0257】
下記テトラエトキシシラン加水分解物A 123質量部
下記中空シリカ系微粒子分散液 18質量部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、KBM503)
4質量部
FZ−2222(日本ユニカー製、10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液) 0.2質量部
イソプロピルアルコール(IPA) 425質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 425質量部
アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート 0.3質量部
低屈折率層の厚さは95nm、屈折率は1.37であった。
【0258】
〈テトラエトキシシラン加水分解物Aの調製〉
テトラエトキシシラン230gとエタノール440gを混合し、これに酢酸水溶液(10%)を100g添加した後に、25℃で28時間攪拌することでテトラエトキシシラン加水分解物Aを調製した。
【0259】
〈中空シリカ系微粒子分散液の調製〉
平均粒径5nm、SiO2濃度20%のシリカゾル100gと純水1900gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2として0.98%のケイ酸ナトリウム水溶液9000gとAl23として1.02%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは添加直後、12.5に上昇し、その後、ほとんど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20%のSiO2・Al23核粒子分散液を調製した。(工程(a))
この核粒子分散液500gに純水1700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、ケイ酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られたケイ酸液(SiO2濃度3.5%)3000gを添加して第1シリカ被覆層を形成した核粒子の分散液を得た。(工程(b))
次いで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13%になった第1シリカ被覆層を形成した核粒子分散液500gに純水1125gを加え、更に濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、第1シリカ被覆層を形成した核粒子の構成成分の一部を除去したSiO2・Al23多孔質粒子の分散液を調製した(工程(c))。上記多孔質粒子分散液1500gと、純水500g、エタノール1,750g及び28%アンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO228%)104gを添加し、第1シリカ被覆層を形成した多孔質粒子の表面をエチルシリケートの加水分解重縮合物で被覆して第2シリカ被覆層を形成した。次いで、限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20%の中空シリカ系微粒子分散液を調製した。
【0260】
この中空シリカ系微粒子の第1シリカ被覆層の厚さは3nm、平均粒径は47nm、MOx/SiO2(モル比)は0.0017、屈折率は1.28であった。ここで、平均粒径は動的光散乱法により測定した。
【0261】
評価
作製した試料No.101〜118に付き、反射率、目視ムラ、色度ムラ、耐擦傷性を下記に示す方法で評価し、下記に示す評価ランクに従って評価した結果を表2に示す。
【0262】
反射率の評価方法
試料の分光反射率を分光光度計U−4000型(日立製作所製)を用いて、5度正反射の条件で反射率の測定を行った。測定では、試料の観察面の裏面を、目の細かいサンドペーパーを用いて粗面化処理した後、黒色のスプレーを吹きつけ光吸収処理を行い、試料裏面での光の反射を防止した。観察面について、400nm〜700nmの波長での反射率の測定を行い平均反射率を求めた。
【0263】
目視ムラの評価方法
試料を5m間隔で5点の各5枚のフィルムの表面を目視で塗布ムラを観察した。
【0264】
目視ムラの評価ランク
◎:ムラが全く認められない
○:わずかにムラが認められる
△:ムラが認められる
×:明らかにムラが認められる
色度ムラの評価方法
試料を5m間隔で5点の各5枚のフィルムをサンプリングし、1枚について、分光光度計V−550(日本分光(株)製)を用い、標準C光源に20cm間隔で10ケ所の色度(x、y)を測定し、5枚で計50ケ所の測定値(x、y)を求め、中央値に対する平均値をΔ値で示した。
【0265】
色度ムラの評価ランク
◎:Δx、Δy共に0.02以下
○:Δx、Δyが0.02以上、0.04未満
△:Δx、Δyが0.04以上、0.06未満
×:Δx、Δyが0.06以上
耐擦傷性の評価方法
1cm2当たり200gの重りを載せた日本スチールウール(株)製:ボンスター#0000のスチールウールを用い、試料表面を10回擦って、発生する傷の本数を目視でカウントする。
【0266】
【表2】

【0267】
本発明の有効性が確認された。
【0268】
実施例2
市販の液晶表示パネル(NEC製 カラー液晶ディスプレイ MultiSync LCD1525J:型名 LA−1529HM)の最表面フィルムを注意深く剥がし、実施例1の試料No.104、106、110、111、113、114、117、118の防眩性反射防止フィルム(それぞれを幅方法100mm×進行方法200mmのサイズ)を貼り、動画表示下で、蛍光灯映りこみ、動画の視認性を目視で目視ムラ、色度ムラを実施例1と同じ方法で確認した結果、本発明の防眩性反射防止フィルム(試料No.104、106、110、111)は比較品に比べムラがなく良好であることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0269】
【図1】防眩性反射防止フィルムの概略断面図である。
【図2】図1に示す防眩性反射防止フィルムの製造工程の模式図である。
【図3】図1に示す防眩性反射防止フィルムの他の製造工程の模式図である。
【図4】図1に示す防眩性反射防止フィルムのその他の製造工程の模式図である。
【図5】本発明に係る凹凸形状面を有する透明支持体フィルムの製造する製造工程の模式図である。
【図6】本発明に係わる防眩性フィルムの製造工程の模式図である。
【図7】ハードコート層の上にフレキソ印刷法にて凹凸形状を形成し防眩性フィルムを製造する製造工程の模式図である。
【図8】2周波数高周波電圧印加方式の大気圧プラズマ処理装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0270】
1 防眩性反射防止フィルム
102 ハードコート層
101a、102a 表面
103 反射防止層
2a、2b、2c、8、9a、9b 製造工程
301 防眩性フィルム
3、9A 供給工程
4、9B 塗布工程
401、9B1 塗布装置
402、9B2 バックアップロール
5、8D、9C 乾燥工程
6 硬化処理工程
7、8E、9J 巻き取り工程
8A 流延工程
8A2 流延用ベルト
8A3 ダイス
8B、9E、9H 凹凸形状成形工程
8B1 凹凸形状成形用ローラ
9E1 インクジェット記録装置
8C 延伸工程
9D 第1硬化処理工程
9F、9I 第2硬化処理工程
9H1 フレキソ印刷装置
101、301 透明支持体フィルム
10 大気圧プラズマ処理装置
10a プラズマ放電容器
10a1 印加電極(角筒型電極・第1電極)
10a2 ロール型アース電極(第2電極)
θ1〜θ4 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体フィルムの上に凹凸表面のハードコート層を有する防眩性フィルムを、連続搬送して前記ハードコート層の上に反射防止層を塗布方式により設ける防眩性反射防止フィルムの製造方法において、反射防止層形成用塗布液を前記ハードコート層の凹凸形状の表面に塗布し反射防止層形成用塗膜を形成した後、その後の乾燥処理工程が終了する間は、重力方向を下方向とした時に搬送方向が上方向、又は下方向であり、且つ反射防止層形成用塗膜に風を吹き付け反射防止層を形成することを特徴とする防眩性反射防止フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記反射防止層形成用塗布液は有機溶媒を含有していることを特徴とする請求項1に記載の防眩性反射防止フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記乾燥処理工程の後に硬化処理工程を有しており、該硬化処理工程は、紫外線照射装置と、透明支持体フィルムを巻き回すローラとを有し、該ローラの上で該紫外線照射装置により紫外線が照射されることを特徴とする請求項1または2に記載の防眩性反射防止フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記反射防止層形成用塗布液を塗布する前に、ハードコート層の凹凸形状の表面にプラズマ処理を行なうことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の防眩性反射防止フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の防眩性反射防止フィルムの製造方法により製造されたことを特徴とする防眩性反射防止フィルム。
【請求項6】
請求項5に記載の防眩性反射防止フィルムを有することを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−240707(P2007−240707A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60757(P2006−60757)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】