説明

防着剤組成物及びそれを使用したゴム成形体の架橋方法

【課題】有機過酸化物含有ゴム中の有機過酸化物及び/あるいは有機過酸化物の分解から生成するラジカルが架橋時に隣接するポリマー材中に移行してポリマー材を劣化させることを防止する。
【解決手段】離型作用を有する化合物及びラジカル反応性部位を少なくとも一つ有する化合物を含む防着剤組成物及びそれを用いてゴム成形体を架橋する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防着剤組成物及びそれを使用したゴム成形体の架橋方法に関し、更に詳しくは有機過酸化物配合ゴムとホース用マンドレルやシース材などのポリマー材との間に介在させて架橋時に有機過酸化物及び/あるいは有機過酸化物の分解から生成するラジカルがポリマー材表面へ移行するのを防止する防着剤組成物及びそれを使用したゴム成形体の架橋方法に関する。
【背景技術】
【0002】
4−メチルペンテン−1−コポリマー(TPX)は高い融点(230℃)、高いビカット軟化点を有するため高温での使用が可能であり、現在の市販樹脂の中で表面張力がフッ素樹脂に次いで小さく(24dyne/cm)、剥離性に優れているので、現在、ホース製造用のマンドレルやホース製造時のシース材として使われている。しかしながら、TPXは分子鎖に3級炭素を含む側鎖を有するため、TPX表面で有機過酸化物配合ゴムを架橋時にゴム層からの有機過酸化物及び/あるいは有機過酸化物の分解から生成するラジカルの移行によりTPX表面がラジカルによって攻撃されて架橋・分解反応が起こり、マンドレルとしての耐久性が極端に低下するという問題があった。従って、イオウ加硫によってゴムを架橋する場合に比較して、使用回数が著しく少なくなるという欠点があった。また、ホース製造時にシース材として使用したTPXをクラッシュし、溶融押出ししてリサイクル使用しようとしても、押出し面に肌荒れが起こり、再利用が難しくなる。
【0003】
前記問題を解決すべく、特許文献1にはゴムの有機過酸化物架橋後のシース材TPX表面に生ずる肌荒れをなくすため、不飽和カルボン酸変性TPXにフェノールアクリレート化合物を配合することが提案された。また特許文献2及び3にはエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムの有機過酸化物架橋時に表面にイオウ分散液をスプレーし、表面に存在するイオウによって高温での酸素の攻撃反応からゴム表面を保護して、空気中での加硫によって表面平滑性を有するゴムを得る方法が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−69256号公報
【特許文献2】特開2005−133090号公報
【特許文献3】特開2005−139293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、有機過酸化物含有ゴムの有機過酸化物及び/あるいは有機過酸化物の分解から生成するラジカルが隣接する、例えばホース用マンドレルやシース材などのポリマー材表面へ架橋時に移行してポリマー材が例えば架橋されたり、分解されたりすることを効果的に防止する防着剤組成物及びそれを使用したゴム成形体の架橋方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従えば、離型作用を有する化合物及びラジカル反応性部位を少なくとも一つ有する化合物を含んでなる防着剤組成物並びにそれを用いてゴム成形体とそれを隣接するポリマー材とを架橋するゴム成形体の架橋方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、マンドレルと有機過酸化物配合ゴムとの間やシース材と有機過酸化物配合ゴムとの間などの有機過酸化物配合ゴムとポリマー材(例えばTPX)との間に、前記防着剤組成物を塗布することにより、有機過酸化物配合ゴム層から移行してくる有機過酸化物及び/あるいは有機過酸化物の分解から生成するラジカルによるポリマー材に対する架橋・分解反応を防ぐことができ、マンドレル又はシース材などのポリマー材の耐久性を効果的に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明者らは前記課題を解決すべく研究を進めた結果、離型作用を有する化合物と、ラジカル発生部位を有する化合物を含む本発明の防着剤をTPXなどのポリマー材の表面に適用することにより、有機過酸化物ゴムから移行してくる有機過酸化物及び/あるいは有機過酸化物の分解から生成するラジカルを防着剤層でトラップし、TPXなどのポリマー材の架橋、分解などによる劣化を防止することができることを見出した。ゴム素材としては、特に限定されず、例えば天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−プロピレンゴム(EPR,EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、アクリルゴム(AR)、フッ素ゴム(FKM)、ヒドリンゴム(CO,ECO)、クロルスルホン化ポリエチレンゴム(CSR)、シリコンゴム(Q)等から選ばれる少なくとも一種類をゴム成分として含む有機過酸化物配合ゴムの有機過酸化物による架橋時に発生するTPXなどのポリマー材の劣化を効果的に改善し、例えばホース製造時におけるマンドレルの使用回数を増加させることができ、またシース材表面の肌荒れを防ぎ、生産コストを低下させるのに寄与することができる。
【0009】
なおTPXは4−メチルペンテン−1のポリマーで以下の構造式(I)で表示される。
【化1】

【0010】
本発明に係る防着剤組成物に配合する離型作用を有する化合物としては、例えば膨潤系マイカ類(ナトリウム四珪素雲母類)、シリコーン類、フッ素樹脂類、鉱物油類、植物油類、脂肪酸金属塩類、脂肪酸類などをあげることができ、これらを含むゴム・プラスチック成形体用離型剤が市販されており、本発明においてもこれらを使用することができる。かかる離型剤は本発明の防着剤組成物において水又は有機溶剤に溶解又は分散させて使用することができ、その配合量には特に制限はないが、防着剤組成物中の含有量が0.2〜30重量%であるのが加工性、安定性、コストの観点から好ましく、1〜15重量%であるのが更に好ましい。
【0011】
本発明に係る防着剤組成物に配合するラジカル反応性部位を少なくとも一つ有する化合物としては、例えばイオウ、イオウ含有化合物(例えば粉末イオウ、不溶性イオウ、コロイドイオウ:テトラアルキルチウラムジスルフィド(アルキル基は、メチル、エチル、ブチル又はジペンタメチレン基)、ジモルフォリルジスルフィド、2−(4−モルフォリノジチオ)ベンゾチアゾール、アルキルフェノールポリスルフィド、ジメチルジフェニルチウラムジスルフィド、ノルボルネントリサルファイド;環状又は鎖状のポリスルフィド、例えば式(II):
【0012】
【化2】

【0013】
式(II)において、xは平均2〜6、好ましくは3〜5の数であり、nは1〜15、好ましくは1〜10の整数であり、そしてRは置換もしくは非置換のC2〜C20のアルキレン基、置換もしくは非置換のC2〜C20のオキシアルキレン基又は芳香族環を含むアルキレン基、好ましくは前記置換もしくは非置換のC2〜C16、更に好ましくはC4〜C10のアルキレン基を示し、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、1,2−プロピレンなどの直鎖又は分岐鎖のアルキレン基があげられ、これらのアルキレン基はフェニル基、ベンジル基、アルキル基、エポキシ基、シリル基、イソシアネート基、ビニル基などの置換基で置換されていてもよい。Rとしては更にオキシアルキレン基を含むアルキレン基、例えば基(CH2CH2O)p及び基(CH2)q(式中、pは1〜5の整数であり、qは0〜2の整数である)が任意に結合したオキシアルキレン基を含むアルキレン基とすることができる。基Rの好ましい具体例をあげれば以下の通りである。
−CH2CH2OCH2CH2−,−(CH2CH2O)2CH2CH2−,
−(CH2CH2O)3CH−CH2−,−(CH2CH2O)4CH2CH2−,
−(CH2CH2O)3CH2CH2−,−(CH2CH2O)2CH2−,
−CH2CH2OCH2OCH2CH2
【0014】
ポリスルフィドゴムは液状の硫黄含有ポリマーで、例えば参考著書「ゴム工業便覧(第四版)」(日本ゴム協会、平成6年)表18−1(p348)から選ぶことができる。)、ラジカル反応性の単量体(例えばアクリレート類、例えば、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、n−プロピルメタアクリレート、n−ブチルメタアクリレート、イソブチルメタアクリレート、n−ペンチルメタアクリレート、イソアミルメタアクリレート、n−ヘキシルメタアクリレート、2−メチルペンチルメタアクリレート、n−オクチルメタアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレート、n−デシルメタアクリレート、n−ドデシルメタアクリレート、イソデシルメタアクリレート、イソデシルアクリレート、シクロヘキシルメタアクリレート、n−オクタデシルメタアクリレート、イソボルニルメタアクリレート、イソボルニルアクリレート、ベンジルメタアクリレート、トリメチルシクロヘキシルメタアクリレート、イソトリデシルメタアクリレート、ステアリルメタアクリレート、ステアリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−ジメチルアミノエチルメタアクリレート、3−ジメチルアンモニオプロピルメタアクリレート、2−tert.ブチルアミノエチルメタアクリレート、メタアクリルアミド、N−メチロールメタアクリルアミド、エチルトリグリコールメタアクリレート、メトキシポリエチレンメタアクリレート、ブチルジグリコールメタアクリレート、N−ブトキシメチルメタアクリルアミド、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、アリルメタアクリレート、エチレングリコールジメタアクリレート、ジエチレングリコールジメタアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレンジオールジメタアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,12−ドデカンジオールジメタアクリレート、グリセロールジメタアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、ジウレタンジメタアクリレート、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレン尿素、メタクリロニトリル、メタアクリル酸、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、トリデシルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、エトキシ化ノニルフェニルアクリレート、アルコキシ化ノニルフェニルアクリレート、アルコキシ化ヘキサンジオールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、アルコキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、アルコキシ化脂肪族ジアクリレート、ラウリルメタアクリレート、エトキシ化(n)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(n)ビスフェノールAジメタアクリレート、2−フェノキシエチルメタアクリレート、イソボルニルメタアクリレート、トリデシルメタアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化(n)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化(3)グリセリルアクリレート、高プロポキシ化(5.5)グリセリルアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトレアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、2−メトキシエチルメタアクリレート、2−エトキシエチルメタアクリレート、2−(n−プロポキシ)エチルメタアクリレート、2−(n−ブトキシ)エチルメタアクリレート、3−メトキシプロピルメタアクリレート、3−エトキシプロピルメタアクリレート、2−(n−プロポキシ)プロピルメタアクリレート、2−(n−ブトキシ)プロピルメタアクリレート、ペンタアクリレートエステル)、ラジカル反応性の重合体(オリゴマー、ポリマー類)(例えばジエン系モノマーから得られるオリゴマー、ポリマーで、例えば、イソプレンオリゴマー、ブタジエンオリゴマー、スチレンブタジエン共重合体オリゴマー等であり、特にビニル基の多い方が好ましい。その重量平均分子量が500〜50000、特に1000〜10000が好ましい。)、並びにTEMPO及びその誘導体(例えば2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)とその誘導体で、例えば以下のものを例示できる。
【0015】
【化3】

【0016】
式(III)において、R1 〜R4 は独立にC1 〜C4 のアルキル基であり、R5 〜R10は独立にアルキル基又はフェニル基等の直鎖、又は分岐鎖、又は環状の炭化水素基であり、その炭化水素基はO,N,S,Pを含んでいて良い。ただし、R5 〜R10の少なくとも1種が、オキシラン基、チイラン基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ハロゲン、カルボニル基、イミノ基、ビニル基のいずれか少なくとも1種を有する。
【0017】
【化4】

【0018】
【化5】

【0019】
式(IV)において、R1 〜R4 は独立にC1 〜C4 のアルキル基であり、R5 〜R8 は独立にアルキル基又はフェニル基等の直鎖、又は分岐鎖、又は環状の炭化水素基であり、その炭化水素基はO,N,S,Pを含んでいて良い。ただし、R5 〜R8 の少なくとも1種が、オキシラン基、チイラン基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ハロゲン、カルボニル基、イミノ基、ビニル基のいずれか少なくとも1種を有する。
【0020】
【化6】

【0021】
【化7】

【0022】
【化8】

)などをあげることができる。
【0023】
前記TEMPO及びその誘導体に対しては、更に少なくとも一種類の前記ラジカル反応性の単量体あるいはラジカル反応性の重合体と併用して使われるのが好ましい。
【0024】
前記化合物は本発明の防着剤組成物において水又は有機溶剤に溶解又は分散させて使用することができ、その配合量には特に制限はないが、加工性、安定性、コストの観点から防着剤組成物中の含有量が0.1〜30重量%であるのが好ましく、0.1〜10重量%であるのが更に好ましい。
前記TEMPO及びその誘導体と前記ラジカル反応性の単量体あるいは前記ラジカル反応性重合体を併用する場合には、前記単量体あるいは重合体のラジカル反応性部位量に対して70〜140mol%が好ましく、防着剤組成物の含有量としてはTEMPO及びその誘導体、ラジカル反応性単量体或はラジカル反応性重合体を合わせて含有量が0.1〜30重量%であるのが好ましく、0.1%〜10重量%であるのが更に好ましい。
【0025】
前記防着剤組成物に使用することができる有機溶剤としては、例えば本発明に使用される溶媒は一般的に知られており、例えば松田種光らの著書−「溶剤ハンドパック」(産業図書株式会社 1963)に記載された溶剤から選ぶことができ、例えば同著書の表1.4−3に記載された炭化水素類、表1.4−22に記載されたハロゲン化炭化水素類、表1.4−26に記載されたアルコール類、表1.4−33に記載されたニトロ炭化水素類、表1.4−37に記載されたニトリル類、表1.4−38に記載されたアミン類、表1.4−39に記載されたケトン類、表1.4−42に記載されたエテル類、表1.4−43に記載されたエステル類、表1.4−45に記載されたアセタール類、表1.4−46に記載された酸類などがあげられる。好ましくは上記有機溶剤から選ばれる単成分有機溶媒、少なくとも二種類溶剤の混合物、或いは前記有機溶剤と水の混合物からなる溶媒で、その沸点が60〜120℃にあり、特に好ましくは沸点が70〜90℃、一定蒸発速度を有する有機溶媒である。
【0026】
本発明に係る防着剤組成物を用いて架橋成形することができる有機過酸化物を含むゴム成形体用ゴム組成物としては、例えばゴム素材としては、特に限定されず、例えば天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−プロピレンゴム(EPR,EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、アクリルゴム(AR)、フッ素ゴム(FKM)、ヒドリンゴム(CO,ECO)、クロルスルホン化ポリエチレンゴム(CSR)、シリコンゴム(Q)等から選ばれる少なくとも一種類などを含む。例えばシール材、ホース、ベルト、防振ゴムなどを挙げることができる。これらには有機過酸化物及びその他の一般的な添加剤を含むことができる。
【0027】
前記有機過酸化物としては、例えば1,3−ビス(t−ブジルパーオキシ−iso−プロピル)ベンゼン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−iso−プロピルカルボナート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tーブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジイソブチルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジサクシン酸パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイドとベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイドとジベンゾイルパーオキサイドの混合物、ジベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどの一般的な有機過酸化物をあげることができ、これらの配合量には特に制限はなく、一般的なゴムの過酸化物の架橋に使用する量とすることができる。具体的にはゴム100重量部当り、1〜10重量部であるのが好ましく、2〜8重量部であるのが更に好ましい。
【0028】
本発明に係る防着剤組成物を用いて架橋成形に使用することができるポリマー材としては例えばナイロン、ポリエステル、ポリオレフィン系樹脂、特にポリメチルペンテン樹脂(TPX)、ポリプロピレン樹脂などをあげることができ、上記ゴム組成物の架橋に際し、ゴム組成物から移行する有機過酸化物及び/あるいは有機過酸化物の分解から生成するラジカルの移行を防着剤組成物を介在させることにより防止することができる。
【0029】
本発明において使用するゴムやポリマー材には、カーボンブラックやシリカなどのその他の補強剤(フィラー)、有機過酸化物架橋剤、架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのゴム組成物やポリマー組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、必要に応じて架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
【0031】
実施例1〜5及び比較例1
サンプルの調製
HSIANGTAI製ホモジナイザー(HG−200)で不溶性イオウ(クリステックス、アクゾノーベル(株)製不溶性イオウ)、液状ポリブタジエン(Sartomer製Ricon 152)、OH−TEMPO(伯東製ポリストップ 7300P)、ジトリメチロプロパンテトラアクリレート(Sartomer製S355)、及び前記ジトリメチロプロパンテトラアクリレートと前記OH−TEMPOを表Iに示す配合で市販の離型剤(McLube1775,MclubeDivision of McGee Ind.、有機溶媒に溶解したフッ素樹脂)(主成分:メチルエチルケトン、トルエン、フッ素樹脂)に均一に分散させて、本発明に係る(B)防着剤組成物、即ち離型剤+イオウ、(C)離型剤+液状ポリブタジエン及び(D)離型剤+OH−TEMPO、(E)ジトリメチロプロパンテトラアクリレート(F)ジトリメチロプロパンテトラアクリレート+OH−TEMPO(実施例1〜5)と(A)離型剤のみ(比較例1)の6種類の防着剤組成物を得た。この6種類の防着剤を、6枚のTPXシート(三井化学製TPX原料を230℃、5MPaにおいて5分間プレスにより15×15×0.15(cm×cm×cm)のTPXシートを得た。)の表面に塗布することにより均一に塗布し、その表面の揮発成分が完全になくなるまで常温乾燥した。乾燥したTPXシートと有機過酸化物配合ゴムシートとをモールドにいれ、153℃、1.25Mpa及び90minの加圧架橋反応をくり返して行ない、反応後のTPXシートの外観を観察し、比較例1との比較と表面変化で破壊程度を判断した。更に、8回目の繰返し架橋反応を終わったTPXシートに対しては、そのシートから大きさ15×1×0.15(cm×cm×cm)のシートをサンプリングして往復折り曲げ操作を行い、折り目でのき裂生成の折り曲げ回数と完全に切れる回数を比較例1と比べて破壊程度を判断した。同一サンプルの5つの異なる場所で折曲げ操作を行い、最少き裂生成回数と完全に切れる回数を結果として示した。TPX表面の裂化部分の融点測定には、架橋反応後のTPXシート表面から0.1mm厚さの裂化部分をサンプリングしてDSC測定を行い、融解ピークの頂点温度を結果として示した。結果を表Iに示す。
【0032】
【表1】

【0033】
表Iの結果から明らかなように、OH−TEMPO(D)単独の場合は効果が少し低下するが、イオウ(B)、液状ポリブタジエン(ビニル基の多いオリゴマー)(C)、ジトリメチロプロパンテトラアクリレート(E)、ジトリメチロプロパンテトラアクリレートとOH−TEMPO(F)を塗布した場合には、離型剤だけの比較例(A)の場合より、TPX表面の裂化部分融点の低下、折曲げテストのき裂生成回数と破壊回数の低下が抑えられ、TPXの繰り返し使用回数が明らかに増大した。
なお、繰り返し架橋反応5回目の有機過酸化物架橋後の外観を図1(A)〜(D)に示した。従来の離型剤のみの比較例1の状態(A)に比較して本発明の実施例1〜3の状態(B〜D)、特に実施例1及び2の状態(B及びC)が優れていることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上の通り、本発明に従えば、有機過酸化物含有ゴムとポリマー材との間に離型作用を有する化合物とラジカル反応性部位を有する化合物を含む防着剤組成物を介在させることによって架橋時に有機過酸化物及び/あるいは有機過酸化物の分解から生成するラジカルがゴムからポリマー材に移行してポリマー材を劣化させることを防止することができるので、例えばホース製造時のマンドレルやシース材として使用するポリマー材の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】比較例1(A)及び実施例1〜3(B〜D)の試験結果(5回リサイクル使用)を示す図面に代る写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型作用を有する化合物及びラジカル反応性部位を少なくとも一つ有する化合物を含んでなる防着剤組成物。
【請求項2】
前記ラジカル反応性部位を少なくとも一つ有する化合物がイオウ、イオウ含有化合物、ラジカル反応性の単量体、及びラジカル反応性の重合体(オリゴマー、ポリマー)、並びに2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の防着剤組成物。
【請求項3】
前記ラジカル反応性の単量体及びラジカル反応性の重合体(オリゴマー、ポリマー)から選ばれる少なくとも一種の化合物と前記TEMPO及びその誘導体から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む請求項1に記載の防着剤組成物。
【請求項4】
前記離型作用を有する化合物が膨潤系マイカ類、シリコーン類、フッ素樹脂類、脂肪酸類、鉱物油類などから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の防着剤組成物。
【請求項5】
前記ラジカル反応性部位を少なくとも一つ有する化合物と前記離型作用を有する化合物が水に溶解又は分散されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の防着剤組成物。
【請求項6】
前記ラジカル反応性部位を少なくとも一つ有する化合物と前記離型作用を有する化合物が有機溶剤に溶解又は分散されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の防着剤組成物。
【請求項7】
ラジカル反応性部位を少なくとも一つ有する化合物の含有量が防着剤組成物の0.1〜30重量%である請求項1〜6のいずれか1項に記載の防着剤組成物。
【請求項8】
有機過酸化物を含むゴム成形体用ゴム組成物とそれと隣接するポリマー材との間に請求項1〜7のいずれか1項に記載の防着剤組成物を存在させてゴム成形体を架橋することを特徴とするゴム成形体の架橋方法。
【請求項9】
前記ゴム成形体がホースであり、前記ポリマー材がホースのマンドレル及び/又はシース材である請求項8に記載のゴム成形体の架橋方法。
【請求項10】
前記ゴム成形体を有機過酸化物で架橋する請求項8又は9に記載のゴム成形体の架橋方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−290328(P2007−290328A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123720(P2006−123720)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】