説明

阻害性オリゴヌクレオチドを送達するための組成物および方法

本発明は、1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチド、ここでターゲティングポリペプチドが細胞表面レセプターのリガンドを構成する、を含む複合体であって前記複合体を利用する組成物および方法を特徴とする。組成物は細胞中で遺伝子発現をサイレンシングする方法、標的細胞への剤の送達、および対象における疾患または障害の治療または予防に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願および参照による組込み
本出願は、米国仮出願第61/045,088号、出願日2008年4月15日、の利益を主張する。前記出願の全内容はここにおいて、参照により本明細書に組込まれる。
本テキストにおいて参照されている各出願および特許、ならびに該出願および特許において参照されている各文書または参考文献(各登録された特許の審査経過におけるものを含む;「出願が参照した文書」)、およびこれらの出願および特許のいずれかに対応するおよび/またはいずれかの優先権を主張する各PCTおよび外国出願または特許、および各出願が参照した文書において参照されたまたは参考文献とされた各文書は、ここにおいて、本明細書に参照として明示的に組込まれる。より一般的に、文書または参考文献を、特許請求の範囲の前の参考文献リスト中でまたはテキスト内で、本テキストにおいて参照し、各文書または参考文献(「本明細書で参照した参考文献」)、ならびに各本明細書で参照した参考文献中で参照された各文書または参考文献(任意の製造者の仕様書、取扱説明書などを含む)は、ここにおいて、本明細書に参照として明示的に組込まれる。
【0002】
合衆国が出資するリサーチの下になされた発明に対する権利の陳述
本出願をサポートするリサーチは、保険社会福祉省長官(Secretary, Department of Health and Human Services)によって代表されるものとして、アメリカ合衆国によってされたものである。このリサーチは国立衛生研究所(National Institute of Health)から助成NCI K08118416としてサポートされている。政府は、本発明における一部の権利を有し得る。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
RNA干渉は、標的メッセンジャーRNAの一部と配列において相同な二本鎖RNA(dsRNA)である短鎖阻害性核酸分子(siRNA)により媒介される、動物における配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングのプロセスをいう。Fire, et al., Nature 391:806, 1998、およびHamilton, et al., Science 286:950-951, 1999参照。これらのdsRNAは、内因性の同族mRNA(すなわち、導入されたdsRNAと同一の配列を共有するmRNA)を分解する細胞内の多成分ヌクレアーゼ機構のためのガイド配列としての役割を果たす。
【0004】
転写後遺伝子サイレンシングのプロセスは、外来遺伝子の発現を防ぐのに用いられる進化的に保存された細胞防衛メカニズムであると考えられており、多種多様な動植物に一般的に共有されている。Fire, et al., Trends Genet. 15:358, 1999。外来遺伝子発現からのかかる防御は、ウィルス感染または、相同な一本鎖RNAもしくはウィルス性ゲノムRNAを特異的に破壊する細胞応答を介した、転移因子の宿主ゲノムへの無作為な統合に由来する二本鎖RNA(dsRNA)の産生に応答して発展し得る。
【0005】
RNAiは多様なシステムにおいて研究されてきた。Fire et al.は、最初に線虫(C. elegans)においてRNAiを観察した(Nature 391:806, 1998)。Bahramian&ZarblおよびWianny&Goetzは、哺乳類システムにおいてdsRNAによって媒介されるRNAiを記載する。それぞれMolecular and Cellular Biology 19:274-283, 1999、およびNature Cell Biol. 2:70, 1999。Hammond et al.は、dsRNAでトランスフェクトされたショウジョウバエ(Drosophila)細胞中でのRNAiを記載する。Nature 404:293, 2000。Elbashir et al.は、ヒト胚性腎細胞およびHeLa細胞を含む培養哺乳類細胞において、合成21核酸RNAのデュプレックスの導入によって誘導されるRNAiを記載する。Nature 411:494, 2001。
【0006】
今日まで、siRNAは顕著に臨床的な意味合いを有する新規で新興の分野である。しかしながら、技術は、in vivoにおけるその送達の困難性および非現実性など、数々の制限によって妨げられている。ウィルス性ベクターベースのsiRNA送達システムが広範に用いられているけれども、その特異性および安全性は依然として重要な問題である。核酸の送達が、内在化前の低減した毒性など、細胞毒性タンパク質の送達を超える利点を提示する一方で、現在のシステムではこれまでのところ実現不可能な、送達の高い特異性に対するニーズがある。
遺伝子治療に伴ういくつかの問題の観点から、より効果的でかかる不利点を伴わない、改善された治療のニーズがある。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
本出願の発明者らは、阻害性オリゴヌクレオチドを、標的を絞り、効率的なやり方で細胞に送達するための新規な組成物および方法を開発した。該組成物および方法は、例えば、ケモカイン、および阻害性オリゴヌクレオチドに結合するドメインなど、細胞表面レセプターターゲティングリガンドを利用して、該細胞表面レセプターターゲティングリガンドを発現する細胞に、阻害性オリゴヌクレオチドを効果的に送達することに基づいている。したがって、本発明は、1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチド、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを構成する、を含む複合体を使用する組成物および方法を特徴とする。該組成物は、細胞内の遺伝子発現サイレンシングの方法、標的細胞へ剤を送達する方法、および対象において疾患または障害を処置または予防する方法に用いることができる。
【0008】
第1の側面において、本発明は1または2以上の核酸およびターゲティングポリペプチド、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを含む、を含む複合体を特徴とする。
1つの態様において、ターゲティングポリペプチドは、核酸結合部分をさらに含む。さらなる態様において、核酸結合部分は、核酸結合ドメインを含む。
【0009】
別の態様において、核酸結合ドメインは、プロタミンまたはその断片を含む。関連する態様において、プロタミンは、ヒトプロタミンである。
別のさらなる態様において、核酸結合部分は、ウィルス抗原を含む。関連する態様において、ウィルス抗原は、ウィルスカプシド抗原である。関連するさらなる態様において、ウィルスカプシド抗原は、gp120、gp160およびgp41からなる群から選択される。
【0010】
別の態様において、阻害性核酸が、一本鎖DNAまたはRNAである。さらなる関連する態様において、阻害性核酸が二本鎖DNAまたはRNAである。さらに別の関連する態様において、核酸結合部分およびターゲティングポリペプチドは、スペーサーペプチドによって分離されている。1つの特定の態様において、スペーサーペプチドは、配列番号5(SDGGGSGGGGSLE)を含む。別の特定の態様において、スペーサーペプチドは、配列番号6(DGGGSGGGGSL)を含む。
【0011】
別の態様において、二本鎖RNAは、RNA干渉の標的と相補的な1つの鎖および、RNA干渉の標的と同一の別の鎖を含む。
さらなる態様において、阻害性核酸は、短鎖干渉核酸(siNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)および短鎖ヘアピンRNA(shRNA)からなる群から選択される。
【0012】
別のさらなる態様において、細胞表面レセプターリガンドは、サイトカイン、ケモカイン、抗体および成長因子からなる群から選択される。
1つの態様において、阻害性核酸は、少なくとも2つの二本鎖RNAを含む。
別の態様において、阻害性核酸は、剤をさらに含む。関連する態様において、剤は、標識である。別の関連する態様において、標識は、放射線標識または蛍光標識から選択される。さらに別の態様において、剤は、治療剤である。
【0013】
別の側面において、本発明は、1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチド、ここでターゲティングポリペプチドは、核酸結合部分をさらに含む、を含む、配列番号1または配列番号3として記載されたヌクレオチド配列によってコードされる複合体を特徴とする。
さらに別の側面において、本発明はターゲティングポリペプチドおよび核酸結合部分を含む、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチドによってコードされる複合体を特徴とする。
【0014】
上記側面の1つの態様において、複合体は、さらに阻害性核酸を含む。
上記の側面の関連する態様において、1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチドは、リンカーによって連結されている。
別の側面において、本発明は、1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチド、ここでターゲティングポリペプチドは、細胞表面レセプターリガンドを含む、を含む融合分子を特徴とする。
【0015】
1つの態様において、ターゲティングポリペプチドは、リンカーをさらに含む。関連する態様において、リンカーは、核酸結合ドメインを含む。さらに関連する態様において、核酸結合ドメインは、プロタミン、またはその断片を含む。さらに別の態様において、プロタミンは、ヒトプロタミンである。
別の態様において、リンカーは、ウィルス抗原を含む。さらなる態様において、ウィルス抗原は、ウィルスカプシド抗原である。別の関連する態様において、ウィルスカプシド抗原は、gp120、gp160およびgp41からなる群から選択される。
【0016】
別の態様において、阻害性核酸は、一本鎖DNAまたはRNAである。さらに関連する態様において、阻害性核酸は、二本鎖DNAまたはRNAである。さらに別の関連する態様において、核酸結合部分およびターゲティングポリペプチドは、スペーサーペプチドによって分離されている。1つの特定の態様において、スペーサーペプチドは、配列番号5(SDGGGSGGGGSLE)を含む。別の特定の態様において、スペーサーペプチドは、配列番号6(DGGGSGGGGSL)を含む。さらに別の態様において、スペーサーペプチドは、配列番号7(GGGSGGGG)を含む。別の態様において、スペーサーペプチドは、配列番号8(GGGGSGGGG)を含む。
【0017】
別の態様において、二本鎖RNAは、、RNA干渉の標的と相補的な1つの鎖および、RNA干渉の標的と同一の別の鎖を含む。
さらなる態様において、阻害性核酸は、短鎖干渉核酸(siNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)および短鎖ヘアピンRNA(shRNA)からなる群から選択される。
別のさらなる態様において、細胞表面レセプターリガンドは、サイトカイン、ケモカイン、抗体および成長因子からなる群から選択される。
【0018】
好ましい態様において、ケモカインは、TARC/CCL17、MCP−1/CCL2およびRANTES/CCL5からなる群から選択される。
1つの態様において、阻害性核酸は、少なくとも2つの二本鎖RNAを含む。
別の態様において、阻害性核酸は、剤をさらに含む。関連する態様において、剤は、標識である。別の関連する態様において、標識は、放射線標識または蛍光標識から選択される。さらに別の態様において、剤は、治療剤である
【0019】
別の側面において、本発明は、ターゲティングポリペプチドおよび核酸結合部分を含む融合分子であって、ここでターゲティングポリペプチドおよび核酸結合ドメインが、配列番号1または配列番号3として記載されたヌクレオチド配列によってコードされる、前記融合分子を特徴とする。
別の側面において、本発明は、ターゲティングポリペプチドおよび核酸結合部分を含む、配列番号2、配列番号4、配列番号9、配列番号10および配列番号11からなる群から選択されるポリペプチドによってコードされる融合分子を特徴とする。
【0020】
1つの態様において、融合分子は、阻害性核酸をさらに含む。
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の融合分子を含むベクターを特徴とする。ベクターは、アデノウィルス、レンチウィルス、または任意のタイプのウィルスベクターであり得る。本発明の他のある好ましい態様において、ベクターは、哺乳類細胞中での発現に好適なプロモーターを含む。
他の態様において、本発明は、本明細書に記載のベクターを含む細胞を特徴とする。
【0021】
さらに別の側面において、本発明は、細胞中の遺伝子発現のレベルを減少させる方法であって、1または2以上の標的遺伝子の発現を減少させる1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチド、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを含む、を含む複合体と細胞とを接触させ、それにより細胞中の遺伝子発現のレベルを減少させることを含む、前記方法を特徴とする。
【0022】
別の側面において、本発明は、阻害性RNA分子を細胞内に送達する方法であって、該方法が、1または2以上の二本鎖RNAおよびターゲティングポリペプチド、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを含む、を含む複合体と細胞とを接触させ、それにより阻害性RNA分子を細胞内に送達することを含む、前記方法を特徴とする。
【0023】
さらに別の側面において、本発明は、遺伝子発現のレベルを減少させることによって、対象における疾患または障害を治療または予防する方法であって、1または2以上の標的遺伝子の発現を低減させる1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチド、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを含む、を含む複合体と細胞とを接触させ、それにより対象における疾患または障害を治療または予防することを含む、前記方法を特徴とする。
【0024】
1つの態様において、方法は、追加の剤による治療をさらに含む。関連する態様において、剤は、治療剤である。
さらに別の側面において、本発明は、1または2以上の剤を標的細胞に送達する方法であって、1または2以上の阻害性核酸、ここで1または2以上の阻害性核酸は剤とカップリングされている、およびターゲティングポリペプチド、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを含む、を含む複合体と細胞とを接触させ、それにより剤を標的細胞に送達することを含む、前記方法を特徴とする。
【0025】
1つの態様において、剤は、治療剤である。
別の態様において、剤は、標識である。
別の側面において、本発明は、イメージング剤を標的細胞に送達する方法であって、1または2以上の阻害性核酸、ここで1または2以上の阻害性核酸はイメージング剤とカップリングされている、およびターゲティングポリペプチド、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを構成する、を含む複合体と細胞とを接触させ、剤を標的細胞に送達することを含む、前記方法を特徴とする。
【0026】
1つの態様において、方法は、予後を決定するために用いられる。
別の態様において、方法は、治療コースを決定するために用いられる。
上記側面のいずれか1つの一態様において、ターゲティングポリペプチドは、核酸結合部分をさらに含む。関連する態様において、核酸結合部分は、核酸結合ドメインを含む。
さらに関連する態様において、核酸結合ドメインは、プロタミンまたはその断片を含む。さらに別の態様において、プロタミンは、ヒトプロタミンである。
【0027】
別の態様において、リンカーは、ウィルス性抗原を含む。さらなる態様において、ウィルス性抗原は、ウィルスカプシド抗原である。別の関連する態様において、ウィルスカプシド抗原は、gp120、gp160およびgp41からなる群から選択される。
別の態様において、阻害性核酸は、一本鎖DNAまたはRNAである。さらに関連する態様において、阻害性核酸は、二本鎖DNAまたはRNAである。さらに別の関連する態様において、核酸結合部分およびターゲティングポリペプチドは、スペーサーペプチドによって分離されている。1つの特定の態様において、スペーサーペプチドは、配列番号5(SDGGGSGGGGSLE)を含む。別の特定の態様において、スペーサーペプチドは、配列番号6(DGGGSGGGGSL)を含む。別の態様において、スペーサーペプチドは、配列番号7(GGGSGGGG)を含む。さらに別の態様において、スペーサーペプチドは、配列番号8(GGGGSGGGG)を含む。
【0028】
別の態様において、二本鎖RNAは、RNA干渉の標的と相補的な1つの鎖および、RNA干渉の標的と同一の別の鎖を含む。
さらなる態様において、阻害性核酸は、短鎖干渉核酸(siNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)および短鎖ヘアピンRNA(shRNA)からなる群から選択される。
別のさらなる態様において、細胞表面レセプターリガンドが、サイトカイン、ケモカイン、抗体および成長因子からなる群から選択される。
【0029】
好ましい態様において、ケモカインは、TARC/CCL17、MCP−1/CCL2およびRANTES/CCL5からなる群から選択される。
1つの態様において、阻害性核酸は、少なくとも2つの二本鎖RNAをさらに含む。
別の態様において、阻害性核酸は、剤をさらに含む。関連する態様において、剤は、標識である。別の関連する態様において、標識は、放射線標識または蛍光標識から選択される。さらに別の態様において、剤は、治療剤である。
【0030】
上記側面のいずれか1つの一態様において、ターゲティングポリペプチドおよび核酸結合部分は、配列番号1および配列番号3からなる群から選択されるヌクレオチド配列によってコードされる。
上記側面のいずれか1つの別の態様において、細胞は、培養細胞である。
上記側面のいずれか1つの別の態様において、細胞は、対象動物の一部である。
上記側面のいずれか1つの別の態様において、細胞が、免疫細胞、上皮細胞、内皮細胞、心臓細胞、神経細胞、肝細胞、リンパ球および筋細胞からなる群から選択される。
【0031】
上記側面のいずれか1つの別の態様において、細胞は、悪性細胞である。上記側面のいずれか1つのさらに別の態様において、細胞は、幹細胞である。
上記側面のいずれか1つの別の態様において、対象は、哺乳類である。上記側面のいずれか1つのさらに別の態様において、対象は、ヒトである。上記側面のいずれか1つのさらに別の態様において、対象は、新生組織形成に罹患している。上記側面のいずれか1つの別のさらなる態様において、対象は、免疫疾患または免疫障害に罹患している。
【0032】
特定の態様において、新生組織形成は、白血病である。他の態様において、新生組織形成は、乳癌である。
上記側面のいずれか1つの別の態様において、方法は、転移の診断に用いられる。
別の側面において、本発明は、対象における疾患または傷害を治療または予防するための医薬組成物であって、1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチド、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを含む、を含み、それにより対象における疾患または障害を治療または予防する、前記医薬組成物を特徴とする。
【0033】
1つの態様において、ターゲティングポリペプチドおよび核酸結合部分は、配列番号1および配列番号3からなる群から選択されるヌクレオチド配列によってコードされる。
別の態様において、医薬組成物は、追加の剤をさらに含む。
別の側面において、本発明は、1または2以上の剤を標的細胞に送達するための医薬組成物であって、1または2以上の阻害性核酸、ここで1または2以上の阻害性核酸は剤とカップリングされている、およびターゲティングポリペプチド、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを含む、を含み、それにより対象における疾患または障害を治療または予防する、前記医薬組成物を特徴とする。
【0034】
1つの態様において、剤は、治療剤である。
別の側面において、本発明は、本明細書に記載されたいずれか1つの側面の複合体、および使用説明書を含むキットを特徴とする。
別の側面において、本発明は、本明細書に記載されたいずれか1つの側面の融合分子、および使用説明書を含むキットを特徴とする。
本発明の他の特徴および利点は、詳細な説明から、および請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1A】図1Aは、本発明の複合体がケモカインCCR4(TARC−ARP)(胸腺および活性化調節ケモカイン/TARC)を標的とし、ケモカインTARC/CCL17に対するsiRNA(siTARC)を送達することができ、乳癌4T1細胞からのTARC/CCL17の産生/分泌を効果的に無効化することを示すグラフである。パネル1Aは、LPS処理していない4T1.WT細胞からの上清中のmTARCの検出を示すグラフである。
【図1B】図1Bは、本発明の複合体がケモカインCCR4(TARC−ARP)(胸腺および活性化調節ケモカイン/TARC)を標的とし、ケモカインTARC/CCL17に対するsiRNA(siTARC)を送達することができ、乳癌4T1細胞からのTARC/CCL17の産生/分泌を効果的に無効化することを示すグラフである。パネル1Bは、100ng/mlのLPSで処理した4T1.WT細胞からの上清中のmTARCの検出を示すグラフである。
【図1C】図1Cは、本発明の複合体がケモカインCCR4(TARC−ARP)(胸腺および活性化調節ケモカイン/TARC)を標的とし、ケモカインTARC/CCL17に対するsiRNA(siTARC)を送達することができ、乳癌4T1細胞からのTARC/CCL17の産生/分泌を効果的に無効化することを示すグラフである。パネル1Cは、TARC−ARP複合体がsiRNAを、CCR4を発現する乳癌細胞に効果的に送達できることを実証する免疫蛍光実験の結果を示す。
【0036】
【図2】図2は、配列番号1および配列番号2を表す。配列番号1(上)で表される配列は、プロタミン断片に付随するTARCを含む本発明の複合体のDNA配列である。配列番号2で表される配列は、プロタミン断片に付随するTARCを含む本発明の複合体のタンパク質配列である。配列番号2(下)で表される配列は、Met(イタリック体、下線)およびプロタミン断片(イタリック体)を含むヒトTARC/CCL17の成熟配列である。スペーサーペプチド断片(下線小文字)はプロタミンからのケモカインを分離するために用いられる。構築物はまた、分析的使用およびタンパク質精製目的のためのc−mycタグおよび6つのHis残基を含む。c−mycタグおよび6つのHis残基は必須ではなく、いくつかの構築物はこれらを有さない。
【0037】
【図3】図3は、配列番号3および配列番号4を表す。配列番号3(上)で表される配列は、HBcAgのRNA結合ドメインに付随するTARCを含む本発明の複合体のDNA配列である。配列番号4で表される配列は、HBcAgのRNA結合ドメインに付随するTARCを含む本発明の複合体のタンパク質配列である。配列番号4(下)で表される配列は、Met(イタリック体、下線)およびHBcAgのRNA結合ドメイン(イタリック体)を含むヒトTARC/CCL17の成熟配列である。スペーサーペプチド断片(下線小文字)はHBcAgのRNA結合ドメインからのケモカインを分離するために用いられる。構築物はまた、分析的使用およびタンパク質精製目的のための5つのHis残基を含む。5つのHis残基は必須ではなく、いくつかの構築物はこれらを有さない。
【0038】
【図4】図4は、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8を表す。配列番号5〜8で表される配列は、核酸結合部分およびターゲティングポリペプチドを分離する代表的なスペーサー配列に対応する。
【0039】
【図5】図5は、配列番号9、配列番号10および配列番号11を表す。配列番号9で表される配列は、HBVウィルスの仮想的RNA結合ドメイン(下線)と融合したヒトTARC/CCL17である、TARC−Arpに対応する複合体のタンパク質配列である。配列番号9において、スペーサー配列がTARC/CCL17およびHBVウィルスの仮想的RNA結合ドメインの間に挿入されている(イタリック体)。配列番号10で表される配列は、HBVウィルスの仮想的RNA結合ドメイン(下線)と融合したヒトRANTES/CCL5である、RANTES−Arpに対応する複合体のタンパク質配列である。配列番号10において、スペーサー配列がRANTESおよびHBVウィルスの仮想的RNA結合ドメインの間に挿入されている(イタリック体)。配列番号11で表される配列は、HBVウィルスの仮想的RNA結合ドメイン(下線)と融合したヒトMCP1/CCL2である、MCP1−Arpに対応する複合体のタンパク質配列である。配列番号11において、スペーサー配列がMCP1およびHBVウィルスの仮想的RNA結合ドメインの間に挿入されている(イタリック体)。
【0040】
【図6】図6は、TARC−ARPが、ヒトT細胞腫瘍細胞におけるCCR4の発現をノックダウンすることを示す実験の結果を示す。
【図7】図7は、TARC−ARPが、腫瘍細胞によるIL−6の発現を一時的に阻害することができることを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
詳細な説明
本発明は、細胞表面レセプターのリガンドを利用して、阻害性オリゴヌクレオチド、例えばsiRNAなど、を細胞に送達する新規組成物および方法を記載する。本発明の組成物は、阻害性オリゴヌクレオチドを、細胞表面レセプターを発現する標的細胞に、有効にかつ直接的なやり方で、効果的に送達することが可能である。本発明の好ましい側面において、組成物は、2つの主要な部分:細胞表面レセプター−ターゲティングリガンド、例えば阻害性核酸に結合するドメインに付随するケモカイン、からなる組換タンパク質を含む。したがって、該組成物は、如何なる種からの如何なる細胞表面レセプター、例えばヒト、マウス、ラットおよびウィルス細胞表面標的、をも包含することができる。阻害性核酸結合ドメインは、RNAに結合することができる如何なるペプチドでもあり得、プロタミンのポリアルギニン領域およびウィルス抗原からのRNA結合ペプチドを含む。
【0042】
定義
以下の定義は、以下の明細書中に用いられている特定の単語について提供されている。
別に定義されない限り、本明細書で用いられる全ての技術的および科学的用語は、本発明の所属する分野の当業者に通例的に理解される意味を有する。以下の参照文献は、本発明で用いられる多くの用語の一般的な定義の1つの能力を提供するものである:Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (2nd ed. 1994); The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed., 1988); The Glossary of Genetics, 5th Ed., R. Rieger et al. (eds.), Springer Verlag (1991);およびHale & Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology (1991)。本明細書で用いられる場合、以下の用語は、他に特定されない限り、以下のそれとして帰属する意味を有する。
【0043】
本明細書および特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に別のことを規定していない限り、複数の参照を含む。
本開示において、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」「含む(containing)」および「有する(having)」などは、米国特許法中にそれとして帰属する意味を有することができ、「含む(includes)」、「含む(including)」などを意味することができる;「から本質的になる(consisting essentially of)」または「本質的になる(consists essentially)」も同様に米国特許法中に帰属する意味を有し、この用語はオープンエンドであり、記載されたもの以外の存在によって記載されたその基本的または新規な特徴が変化しない限り、記載されたもの以外の存在を認めるが、先行技術の実施例は除くものである。用語「投与(administration)」または「投与すること(administrating)」は、本発明の化合物または医薬組成物を処置が必要な対象に提供する活動を含むと定義される。
【0044】
熟語「組み合わせて(in combination with)」は、阻害性核酸分子と化学治療剤とを一緒に提供する投与の全ての形態をいうことを意図し、任意の順番での連続投与を含むことができる。
「対象(subject)」により、脊椎動物、好ましくは哺乳類、を含むことを意図する。哺乳類は、これに限定するものではないが、ヒトを含む。
【0045】
本明細書で用いられる場合、「細胞表面レセプター特異的リガンド(cell surface receptor specific ligand)」によって、細胞表面レセプターまたは細胞表面抗原に結合する分子をいうことを意味する。好ましい例において、リガンドはそこで阻害性核酸にカップリングする。
「断片(fragment)」により、ポリペプチドまたは核酸分子の一部分を意味する。この一部分は、好ましくは、参照核酸分子またはポリペプチドの全長の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%を含む。断片は10、20、30、40、50、60、70、80、90または100、200、300、400、500、600、700、800、900または1000ヌクレオチドまたはアミノ酸を含み得る。好ましい例において、断片は配列番号1または配列番号3の断片である。
【0046】
「阻害性核酸(inhibitory nucleic acid)」により、一本鎖または二本鎖RNA、siRNA(短鎖干渉RNA)、shRNA(短鎖ヘアピンRNA)、もしくはアンチセンスRNA、またはその一部分、あるいはその模倣物を意味し、哺乳類細胞に投与された場合、標的遺伝子の発現の減少(例えば10%の、25%の、50%の、75%のまたは実に90〜100%の)をもたらす。典型的には、核酸阻害剤は、標的核酸分子もしくはそのオルソログの少なくとも一部分を含むかまたはそれに対応し、あるいは標的核酸分子の相補鎖の少なくとも一部分を含む。
【0047】
本発明の方法に有用な核酸分子は、配列番号1または配列番号3あるいはその断片をコードする核酸分子を含む。かかる核酸分子は、内因性ヌクレオチド配列と100%同一である必要はないが、典型的には実質的な同一性を示すだろう。内因性配列と「実質的な同一性」を有するポリヌクレオチドは、典型的には、二本鎖核酸分子の少なくとも一本の鎖とハイブリダイズすることができる。「ハイブリダイズする(hybridize)」により、様々なストリンジェンシーの条件下において、組み合わさって相補的ポリヌクレオチド配列(例えば本明細書に記載の遺伝子)もしくはその一部分との間に二本鎖を形成することを意味する(例えばWahl, G. M. and S. L. Berger (1987) Methods Enzymol. 152:399; Kimmel, A. R. (1987) Methods Enzymol. 152:507参照)。
【0048】
例えば、ストリンジェントな塩濃度は、通常約750mMのNaClおよび75mMのクエン酸三ナトリウム未満であり、好ましくは約500mMのNaClおよび50mMのクエン酸三ナトリウム未満であり、より好ましくは約250mMのNaClおよび25mMのクエン酸三ナトリウム未満であろう。低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは有機溶媒、例えばホルムアミド、の非存在下で得ることができる一方、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは少なくとも約35%のホルムアミドの存在下、より好ましくは少なくとも約50%のホルムアミドの存在下で得ることができる。ストリンジェントな温度条件は、通常少なくとも約30℃、より好ましくは少なくとも約37℃、最も好ましくは少なくとも約42℃の温度を含むだろう。ハイブリダイゼーション時間、例えばドデシル硫酸ナトリウムなどのデタージェントの濃度、および担体DNAの介在または排除など、追加のパラメータの変化は、当業者には周知である。これらの様々な条件を必要に応じて組み合わせることにより、様々なレベルのストリンジェンシーを達成することができる。好ましい態様において、ハイブリダイゼーションは30℃、750mMのNaCl、75mMのクエン酸三ナトリウム、および1%のSDS中で起こるだろう。より好ましい態様において、ハイブリダイゼーションは、37℃、500mMのNaCl、50mMのクエン酸三ナトリウム、1%のSDS中、35%のホルムアミド、および100μg/mlの変性サケ精子DNA(ssDNA)中で起こるだろう。最も好ましい態様において、ハイブリダイゼーションは、42℃、250mMのNaCl、25mMのクエン酸三ナトリウム、1%のSDS中、50%のホルムアミド、および200μg/mlのssDNA中で起こるだろう。これらの条件の有用なバリエーションは、当業者にはすぐに明らかであろう。
【0049】
ほとんどの適用において、ハイブリダイゼーションに続く洗浄ステップもまたストリンジェンシーを変化させるだろう。洗浄ストリンジェンシー条件は塩濃度および温度によって定義することができる。上述のように、洗浄ストリンジェンシーは、塩濃度を減少させることによってまたは温度を増大させることによって増大させることができる。例えば、洗浄ステップについてのストリンジェントな塩濃度は、好ましくは約30mMのNaClおよび3mMのクエン酸三ナトリウム未満、最も好ましくは15mMのNaClおよび1.5mMのクエン酸三ナトリウムであろう。洗浄ステップについてのストリンジェントな温度条件は、通常少なくとも約25℃、より好ましくは少なくとも約42℃、さらにより好ましくは少なくとも約68℃の温度を含む。好ましい態様において、洗浄ステップは、25℃、30mMのNaCl、3mMのクエン酸三ナトリウム、および0.1%のSDS中で行われる。より好ましい態様において、洗浄ステップは、42℃、15mMのNaCl、1.5mMのクエン酸三ナトリウム、および0.1%のSDS中で行われる。より好ましい態様において、洗浄ステップは、68℃、15mMのNaCl、1.5mMのクエン酸三ナトリウム、および0.1%のSDS中で行われる。これらの条件の追加のバリエーションは、当業者にはすぐに明らかであろう。ハイブリダイゼーション技術は当業者には周知であり、例えばBenton and Davis (Science 196:180, 1977); Grunstein and Hogness (Proc. Natl. Acad. Sci., USA 72:3961, 1975); Ausubel et al. (Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience, New York, 2001); Berger and Kimmel (Guide to Molecular Cloning Techniques, 1987, Academic Press, New York); and Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New Yorkに記載されている。
【0050】
本明細書で用いられる場合、「アンチセンス核酸」という語は、RNA−RNAまたはRNA−DNAまたはRNA−PNA(タンパク質核酸、Egholm et al., 1993 Nature 365, 566)相互作用により標的RNAに結合し、標的RNAの活性を変化させる非酵素性核酸分子をいう(概説については、Stein and Cheng, 1993 Science 261, 1004およびWoolf et al., 米国特許番号第5849902号参照)。典型的には、アンチセンス分子は、アンチセンス分子の単一連続配列に沿って、標的配列に相補的である。しかしながら、ある態様において、アンチセンス分子は、基質分子がループを形成するように基質に結合することができ、および/またはアンチセンス分子はアンチセンス分子がループを形成するように結合することができる。したがって、アンチセンス分子は2つ(またはそれ以上)の非連続基質配列に相補的であることができるか、または2つ(またはそれ以上)のアンチセンス分子の非連続配列部分が標的配列に相補的であることができるか、あるいはその両方である。アンチセンス戦略の概説については、Schmajuk et al., 1999, J. Biol. Chem., 274, 21783-21789, Delihas et al., 1997, Nature, 15, 751-753, Stein et al., 1997, Antisense N. A. Drug Dev., 7, 151, Crooke, 2000, Methods Enzymol., 313, 3-45; Crooke, 1998, Biotech. Genet. Eng. Rev., 15, 121-157, Crooke, 1997, Ad. Pharmacol., 40, 1-49参照。加えて、アンチセンスDNAは、DNA−RNA相互作用によってRNAをターゲティングし、それによりRNAseHを活性化し、デュプレックス中の標的RNAを消化するために用いることができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1または2以上のRNAseH活性化領域を含むことができ、標的RNAのRNAseH開裂を活性化することができる。アンチセンスDNAは化学的に合成することができ、または一本鎖DNA発現ベクターもしくはその等価物の使用を介して発現することができる。
【0051】
「胸腺および活性化制御ケモカイン(TARC)」により、ケモカインレセプターCCR4の高親和性リガンドのひとつであるTh2型CCケモカインをいうことを意味する。
「小分子」阻害剤により、特定標的に対するアンタゴニスト活性を有する、約3000ダルトン未満の分子を意味する。
【0052】
「RNA」により、少なくとも1つのリボヌクレオチド残基を含むポリヌクレオチド分子を含むことを意味する。用語「リボヌクレオチド」は、ベータ−D−リボ−フラノース部分の2’位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドを含むことを意味する。用語RNAは、例えば、二本鎖RNA、一本鎖RNA、ならびに部分的に精製されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組み換え的に産生されたRNAおよび1または2以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または改変により天然RNAと異なる改変RNAなどの単離RNAを含む。かかる改変は、siRNAの末端へのまたは内部的な、例えば1または2以上のRNAのヌクレオチドにおけるなどの、非ヌクレオチド物質の付加を含むことができる。本明細書において詳細を記載するように、本発明のsiRNA分子中のヌクレオチドは、非天然ヌクレオチドまたは化学的に合成されたヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドなどの非標準的なヌクレオチドもまた含むことができる。これらの変更RNAは、アナログまたは天然RNAのアナログということができる。
【0053】
用語「siRNA」は短鎖干渉RNAをいい、siRNAは、参照または標的遺伝子配列に「対応」するまたはマッチする二本鎖RNAである。このマッチングは、siRNAの各鎖が標的配列の少なくとも一部分に結合することができる限り、完全なものである必要はない。siRNAは遺伝子発現を阻害するのに用いることができる、例えばBass, 2001, Nature, 411, 428 429; Elbashir et al., 2001, Nature, 411, 494 498; and Zamore et al., Cell 101:25-33 (2000)参照。
【0054】
「核酸結合ドメイン」(NABD)により、DNAまたはRNAなどの核酸に結合する分子、例えばタンパク質、ポリペプチド、またはペプチド、をいうことを意味する。NABDは、RNAもしくはDNAまたは混合RNA/DNAハイブリッドの一本鎖または二本鎖に結合し得る。核酸結合ドメインは、特定の配列に結合してよく、または配列にかかわりなく結合してよい。
【0055】
「核酸」により、リボ核酸もしくはデオキシリボ核酸またはそのアナログのオリゴマーまたはポリマーを意味する。この用語は、天然の塩基、当および糖間(骨格)結合からなるオリゴマーならびに同様に機能する非天然部分を有するオリゴマーを含む。好ましい態様において、「核酸」は細胞内への内在化を意図するRNAまたはDNAをいう。
本明細書で用いられる場合、用語「薬学的に許容可能な賦形剤」は、人への投与に好適な、1または2以上の共存可能な固体または液体の充填剤、希釈剤または封入剤を意味する。
【0056】
組成物
本明細書で用いられる場合、本発明は、1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチド、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを含む、を含む複合体を使用する組成物および方法を特徴とする。該組成物は、サイレンシングまたはノックダウン、細胞中での遺伝子発現、標的細胞への剤の送達、および対象における疾患または障害を処置または予防する方法に使用することができる。
【0057】
1つの側面において、複合体は1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチド、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを含む、を含む。ある例において、ターゲティングポリペプチドは、核酸結合部分をさらに含む。
【0058】
本明細書で用いられる場合、細胞表面レセプター特異的リガンドは、細胞性レセプターまたは細胞表面抗原に結合する任意の分子と定義される。そこでリガンドは、適切な阻害性核酸、例えばdsRNA結合タンパク質、とカップリングする。リガンドは、商業的に入手可能なもの(Antibodies by Design, MorphoSys, Martinsried, Germany)などの、天然または人工ペプチドまたはタンパク質である(米国特許番号第5,514,548号、米国特許番号第6,653,068 B2、米国特許番号第6,667,150 B1、米国特許番号第6,696,245号、米国特許番号第6,753,136 B1、US 2004/017291 A1)。
【0059】
好ましい態様において、細胞表面レセプターリガンドは、サイトカイン、ケモカイン、抗体、成長因子からなる群から選択される。
サイトカインは、免疫、炎症、および造血を媒介および制御する小分泌タンパク質である。サイトカインは、免疫刺激に応答して新たに産生される。サイトカインは一般名であり、他の名称として、リンフォカイン(リンパ球で作られるサイトカイン)、モノカイン(単球で作られるサイトカイン)、ケモカイン(遊走能を有するサイトカイン)、およびインターロイキン(1つの白血球で作られ、他の白血球に作用するサイトカイン)を含む。サイトカインはそれを分泌する細胞(オートクリン活性)、近傍の細胞(パラクリン活性)、またはいくつかの例において離れた細胞(エンドクリン活性)に作用し得る。サイトカインは、その標的細胞に、特異的膜レセプターに結合することにより作用する。レセプターおよびその対応するサイトカインは、その構造および活性に基づいていくつかのファミリーに分割される。ヘマトポエチンファミリーレセプターはその細胞外ドメインに保存されたシステインを、および保存されたTrp−Ser−X−Trp−Ser配列を有する、ダイマーまたはトリマーである。例は、IL−2からIL−7までおよびGM−CSFのレセプターである。インターフェロンファミリーレセプターは、保存されたシステイン残基を有するが、Trp−Ser−X−Trp−Ser配列は有さず、IFNa、IFNbおよびIFNgの受容体を含む。腫瘍壊死因子ファミリー受容体は、4つの細胞外領域を有し、可溶性TNFaおよびTNFb、ならびに膜結合CD40(B細胞およびマクロファージ活性に重要)およびFas(アポトーシスを受けるように細胞にシグナルする)を含む。ケモカインファミリーレセプターは、7回膜貫通へリックスを有し、Gタンパク質と相互作用する。このファミリーは、IL−8、MIP−1およびRANTESの受容体を含む。ケモカインレセプターCCR5およびCXCR4は、マクロファージまたはT細胞に優先的に入るために、HIVに利用される。
【0060】
ケモカインは、細胞によって分泌される小サイトカインのファミリーである。ケモカインレセプターは、白血球表面に見出される、7回膜貫通ドメインを含むGタンパク質カップリングレセプターである。約19の異なるケモカインレセプターが今日までに特性化されており、それらはそれらが結合するケモカインのタイプに依存して、CXCケモカインに結合するCXCR、CCケモカインに結合するCCR、CX3Cケモカイン(CX3CL1)ただ1つに結合するCX3CR1、および2つのXCケモカイン(XCL1およびXCL2)に結合するXCR1という、4つのファミリーに分割されている。それらは多くの構造的特徴を共有しており、それらはサイズも類似しており(約350アミノ酸)、短い、酸性N末端、3つの細胞内および3つの細胞外親水性ループを有する7回のへリックス状膜貫通ドメイン、およびレセプター制御に重要なセリンおよびスレオニン残基を含む細胞内C末端を有する。ケモカインレセプターの最初2つの細胞外ループはそれぞれ、これらのループ間のジスルフィド架橋を形成することができる保存されたシステイン残基を有する。Gタンパク質は、ケモカインレセプターのC末端にカップリングし、レセプター活性化後の細胞内シグナリングを可能にし、一方ケモカインレセプターのN末端ドメインはリガンド結合特異性を決定する。
【0061】
したがって、ある代表的な態様において、本発明は1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチドを含む複合体を特徴とし、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを含む。ターゲティングポリペプチドは、ケモカインを含み得る。50以上のケモカインが知られており、そのいずれもがクレームされた本発明に用いるのに好適であり得る。
ある例において、代表的なケモカインは、これに限定される必要はないが、TARC/CCL17、MCP−1/CCL2およびRANTES/CCL5から選択される。
約18のケモカインレセプターが知られている。したがって本発明は18のケモカインレセプターそれぞれをターゲティングする複合体を考慮に入れている。
【0062】
人工のリガンドが免疫グロブリンである場合、分子のカルボキシ末端はタンパク質の可変末端にあり、アミノ末端は、dsRNAが吸収されるRNA結合タンパク質と共有結合することができる。免疫グロブリン分子の相対的に大きなサイズのため、好ましくは免疫グロブリン全体よりむしろFab断片をリガンドとして用いる。より好ましくは、(Fab’)断片は、免疫グロブリン全体の場合に起こるであろうFcコンポーネントの妨害なしに二価結合することができる。細胞表面レセプターを二価の(Fab’)断片で架橋することは、シグナリング経路の活性化および後続するいくつかの内在化プロセスにおけるレセプター−リガンド結合物の内在化を促進する。
【0063】
上述のように、ある例において、ターゲティングポリペプチドはさらに核酸結合部分を含む。核酸結合部分はターゲティングポリペプチドと阻害性核酸とを結びつけるのに用いられる。
ある例において、核酸結合ドメインはプロタミンまたはその断片を含む。プロタミンは、小さい、アルギニンリッチな核タンパク質である。
【0064】
他のある例において、核酸結合ドメインは、ウィルス抗原を含む。ウィルス抗原は、ある例において、ウィルスカプシド抗原であり得る。任意のウィルスカプシド抗原が、阻害性核酸に結合する限り、本発明に用いるのに好適であるが、ある例において、ウィルスカプシド抗原は、これに限定するものではないが、gp120、gp160、gp41から選択される。ある例において、1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチドがリンカーによって連結されている。
【0065】
本発明はまた、融合分子を特徴とすることができる。融合分子は1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチドを含み得、ここでターゲティングポリぺプチドは細胞表面レセプターリガンドを含む。ある例において、ターゲティングポリペプチドはさらにリンカーを含むことができる。
代表的な本発明の融合分子は、1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチドを含み得、ここでターゲティングポリペプチドが核酸結合部分をさらに含み、配列番号1または配列番号3として記載されたヌクレオチド配列によってコードされる。
【0066】
代表的な本発明の融合分子は、ターゲティングポリペプチドおよび核酸結合部分を含み得、配列番号2、配列番号4、配列番号9、配列番号10または配列番号11のアミノ酸配列を含むポリペプチドによりコードされる。
リンカーは、核酸結合ドメインを含み得る。記載されたように、核酸結合ドメインは、プロタミンまたはその断片を含むことができる。あるケースにおいて、プロタミンはヒトプロタミンである。他のあるケースにおいて、リンカーはウィルス抗原を含み、例えば、これに限定するものではないが、ウィルス抗原、例えばウィルスカプシド抗原(例えばgp120、gp160またはgp41など)、であってよい。
【0067】
ターゲティングポリペプチドおよび阻害性核酸を接続するまたは繋げるのに、任意のリンカーを用いることができる。ある例において、ターゲティングポリペプチドは、単純に親水性ポリマーと阻害性核酸に由来する残基とを共有結合する共有結合により、阻害性核酸と繋げることができる。
【0068】
用語「共有結合」は、ポリペプチドおよび非ポリペプチド部分、例えば核酸部分、が互いに直接共有的に連結されているか、リンカー、または架橋、またはスペーサー部分(単数または複数)などの介在部分(単数または複数)を通じて互いに間接的に共有的に連結されていることを意味する。好ましくは、抱合ポリペプチドは、関連する濃度および条件において可溶である、すなわち、生理学的液体に可溶である。親水性ポリマーおよび阻害性核酸に由来する残基の末端基の間の共有結合を媒介するリンカーに制限はない。あるケースにおいて、リンカーは、必要な場合、予め決定された条件下で分解性であることが好ましい。他のあるケースにおいて、リンカーはポリアルキレングリコールであり得る。例えば、リンキング部分はポリエチレングリコール(PEG)である。他のあるケースにおいて、リンカーはジスルフィド結合である。
【0069】
1つの態様において、ターゲティングポリペプチドおよび阻害性核酸は、核酸組成物の一次構造が直線的配置であり、ターゲティングポリペプチドがPEGリンキング部分の第一の末端に繋がり、核酸がPEGリンキング部分の第二の末端に繋がるように、PEGリンキング部分により繋げられている。
【0070】
その全体が参照により本明細書に組込まれる米国特許出願20070231392は、in vitroおよびin vivoの核酸用非ウィルス性担体を記載する。記載されたポリカチオンポリマーは、生体分子と複合体を形成し得、したがって細胞への生体分子の送達用担体として有用である。式Iの化合物と複合体を形成する生体分子の例は、核酸、タンパク質、ペプチド、脂質および炭化水素を含む。核酸の例は、DNA、一本鎖RNA、二本鎖RNA、リボザイム、DNA−RNAハイブリダイザー、および例えばアンチセンスオリゴなどのアンチセンスDNAを含む。好ましい核酸は、siRNAである。
【0071】
RNA結合タンパク質としてプロタミンおよびHIVエンベロープタンパク質gp160に特異的なFab断片を含む、本明細書に記載された、複合体に吸収されて標的細胞に輸送されたRNAiの機能的RNA干渉能は、すでに実証されている(Song et al. 2005)。同様に、HIV−1転写活性化因子(TAT)ペプチド47〜57に取り付けられた、カーゴ分子として標的細胞に輸送された干渉RNAの機能的RNA干渉能は実証されている(Chiu Y-L et al. 2004)。ペントラチンに取り付けられた、カーゴ分子として標的細胞に輸送された干渉RNAの機能的RNA干渉能もまた実証されている(Muratovska and Eccles 2004)。
【0072】
ある態様において、阻害性核酸はレセプターの内在化により、細胞内に送達される。
とにかく、標的される細胞レセプターは自然に内在化しない固有レセプターであり、にもかかわらずレセプターは、アルギニンリッチ膜透過性ペプチドなどの内在化部分をリガンド内に組込むことにより、またはアルギニンリッチ膜透過性ペプチド、ペントラトイン、または米国特許番号第6692935号または米国特許番号第6294353号に詳述されるトランスポータンなどをリガンドに取り付けることにより、標的として好適となる。
【0073】
阻害性核酸
本明細書に記載されるように、本発明は、1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチドを含む複合体であって、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを含む、前記複合体を記載する。
複合体は、標的遺伝子発現に対してRNA干渉(RNAi)を媒介することができる、短鎖干渉核酸(siNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)、および短鎖ヘアピンRNA(shRNA)分子などの小核酸分子であり得る阻害性核酸を含む。かかる小核酸分子は、ある例において、対象や生物における、遺伝子発現の調節に応答し得る体質、疾患および状態を処置するための組成物を提供するのに有用である。
【0074】
RNA干渉は、短鎖干渉RNA(siRNAs)によって媒介される、動物における配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングのプロセスをいう(Zamore et al., 2000, Cell, 101, 25-33; Fire et al., 1998, Nature, 391, 806; Hamilton et al., 1999, Science, 286, 950-951; Lin et al., 1999, Nature, 402, 128-129; Sharp, 1999, Genes & Dev., 13:139-141;およびStrauss, 1999, Science, 286, 886)。植物における対応するプロセス(Heifetz et al.、国際公開公報WO 99/61631)は通常転写後遺伝子サイレンシングまたはRNAサイレンシングと言われ、また菌類においてクエリングとも言われる。転写後遺伝子サイレンシングのプロセスは、外来性遺伝子の発現を妨げるために用いられる進化的に保存された細胞性防御メカニズムと考えられており、様々な動植物(flora and phyla)に共有されている(Fire et al., 1999, Trends Genet., 15, 358)。かかる外来遺伝子発現からの保護は、ウィルス感染または宿主ゲノムへのトランスポゾン因子の無作為な融合に由来し、同種性一本鎖RNAまたはウィルスゲノムRNAを特異的に破壊する細胞性応答を介した二本鎖RNA(dsRNAs)の産生に応答して進化してきたものであろう。細胞におけるdsRNAの存在は、未だ完全に特徴付けられていないメカニズムを通じて、RNAi応答を引き起こす。このメカニズムは、プロテインキナーゼPKRおよび2’,5’−オリゴアデニル酸シンセターゼのdsRNA媒介性活性化によりもたらされ、リボヌクレアーゼLによるmRNAの非特異的開裂をもたらすインターフェロン応答など、二本鎖RNA特異的リボヌクレアーゼを伴う他の知られたメカニズムとは異なるようである(例えば米国特許番号第6107094号、第5898031号、Clemens et al., 1997, J. Interferon & Cytokine Res., 17, 503-524; Adah et al., 2001, Curr. Med. Chem., 8, 1189参照)。
【0075】
その全体が本明細書に参照として組込まれるHaeberli et al.、米国特許出願第20070042983号は、短鎖干渉核酸分子(siNA)を用いた、遺伝子発現を調節するのに有益な化合物、組成物および方法を記載する。
【0076】
例えば、本発明の阻害性核酸は、RNAiを媒介する能力を維持しているが修飾されたヌクレオチドを含んでもよい。修飾されたヌクレオチドは、安定性、活性、および/またはバイオアベイラビリティなど、in vitroまたはin vivo特性を改善するのに使用できる。例えば、本発明のsiNA分子は、siNA分子中に存在するヌクレオチドの総数のパーセンテージとして修飾ヌクレオチドを含むことができる。それのようなものとして、本発明のsiNA分子は、一般的に約5%から100%の修飾ヌクレオチドを含むことができる(例えば約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%の修飾されたヌクレオチド)。所与のsiNA分子中に存在する修飾ヌクレオチドの実際のパーセンテージは、siNA中に存在するオリゴヌクレオチドの総数に依存するだろう。siNA分子が一本鎖である場合、修飾のパーセントは一本鎖siNA分子中に存在するヌクレオチドの総数に基づくことができる。同様に、siNA分子が二本鎖である場合、修飾のパーセントはセンス鎖、アンチセンス鎖、またはセンス鎖およびアンチセンス鎖両方に存在するヌクレオチドの総数に基づくことができる。
【0077】
例えば、本発明の阻害性核酸は、標的遺伝子の発現を下方調節するかまたは標的RNAを開裂に導く二本鎖短鎖干渉核酸分子(siNA)を含んでよい。1つの態様において、二本鎖siNA分子は、1または2以上の化学修飾を含み、二本鎖siNAの各鎖は約21ヌクレオチド長である。1つの態様において、二本鎖siNA分子は如何なるリボヌクレオチドも含まない。別の態様において、二本鎖siNA分子は1または2以上のリボヌクレオチドを含む。1つの態様において、二本鎖siNA分子の各鎖は、独立して約15から約30(例えば、約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30)のヌクレオチドを含み、ここで各鎖は約15から約30(例えば、約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30)の、他の鎖のヌクレオチドと相補的なヌクレオチドを含む。1つの態様において、二本鎖siNA分子の鎖の1つは、遺伝子のヌクレオチド配列またはその一部分に対して相補的なヌクレオチド配列を含み、二本鎖siNA分子の第2の鎖は、遺伝子またはその一部分のヌクレオチド配列と実質的に類似のヌクレオチド配列を含む。
【0078】
例えば、本発明の阻害性核酸は、標的遺伝子の発現を下方調節するかまたは標的RNAを開裂に導く、アンチセンス領域、ここで該アンチセンス領域は、前記遺伝子またはその一部分のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含む、およびセンス領域、ここで該センス領域は、前記遺伝子またはその一部分のヌクレオチド配列と実質的に類似であるヌクレオチド配列を含む、を含む二本鎖短鎖干渉核酸分子(siNA)を含んでよい。1つの態様において、アンチセンス領域およびセンス領域は、独立して約15から約30(例えば、約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30)のヌクレオチドを含み、ここでアンチセンス領域は約15から約30(例えば、約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30)の、センス領域のヌクレオチドと相補的なヌクレオチドを含む。
【0079】
例えば、本発明の阻害性核酸は、標的遺伝子の発現を下方調節するかまたは標的RNAを開裂に導く、アンチセンス領域およびセンス領域を含む二本鎖短鎖干渉核酸分子(siNA)を含んでよく、ここで該アンチセンス領域は、前記遺伝子またはその一部分のヌクレオチド配列によってコードされるRNAと相補的であるヌクレオチド配列を含み、ここで該センス領域は、アンチセンス領域と相補的であるヌクレオチド配列を含む。
【0080】
例えば、本発明の阻害性核酸は、標的遺伝子の発現を下方調節するかまたは標的RNAを開裂に導く二本鎖短鎖干渉核酸分子(siNA)を含んでよく、ここでsiNA分子は、独立して約15から約30(例えば、約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30)の塩基対を含み、ここでsiNA分子の各鎖は1または2以上の化学修飾を含む。別の態様において、二本鎖siNA分子の1つの鎖は、遺伝子またはその一部分のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を含み、二本鎖siNA分子の第2の鎖は遺伝子またはその一部分のヌクレオチド配列と実質的に類似なヌクレオチド配列を含む。別の態様において、二本鎖siNA分子の1つの鎖は、遺伝子またはその一部分のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を含み、二本鎖siNA分子の第2の鎖は遺伝子またはその一部分のヌクレオチド配列と実質的に類似なヌクレオチド配列を含む。別の態様において、二本鎖siNA分子の各鎖は、約15から約30(例えば、約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30)のヌクレオチドを含み、各鎖は少なくとも約15から約30(例えば、約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30)の、他の鎖のヌクレオチドと相補的なヌクレオチドを含む。
【0081】
例えば、本発明の阻害性核酸は、標的遺伝子の発現を下方調節するかまたは標的RNAを開裂に導くセンス領域およびアンチセンス領域を含む二本鎖短鎖干渉核酸分子(siNA)を含んでよく、ここでアンチセンス領域は標的遺伝子またはその一部分によりコードされるRNAの核酸配列と相補的な核酸配列を含み、センス領域はアンチセンス領域に相補的な核酸配列を含み、ここでsiNA分子は1または2以上の修飾ピリミジンおよび/またはプリンヌクレオチドを有する。1つの態様において、センス領域中のピリミジンヌクレオチドは、2’−O−メチルピリミジンヌクレオチドまたは2’−デオキシ−2’−フルオロピリミジンヌクレオチドであり、センス領域中に存在するプリンヌクレオチドは2’−デオキシプリンヌクレオチドである。別の態様において、センス領域中のピリミジンヌクレオチドは、2’−デオキシ−2’−フルオロピリミジンヌクレオチドであり、センス領域中に存在するプリンヌクレオチドは2’−O−メチルプリンヌクレオチドである。別の態様において、センス領域中のピリミジンヌクレオチドは、2’−デオキシ−2’−フルオロピリミジンヌクレオチドであり、センス領域中に存在するプリンヌクレオチドは2’−デオキシプリンヌクレオチドである。1つの態様において、アンチセンス領域中のピリミジンヌクレオチドは、2’−デオキシ−2’−フルオロピリミジンヌクレオチドであり、アンチセンス領域中に存在するプリンヌクレオチドは2’−O−メチルまたは2’−デオキシプリンヌクレオチドである。任意の上記siNA分子の別の態様において、センス鎖の非相補的領域(例えばオーバーハング領域)中に存在するの任意のヌクレオチドは、2’−デオキシヌクレオチドである。
【0082】
例えば、本発明の阻害性核酸は、標的遺伝子の発現を下方調節するかまたは標的RNAを開裂に導く二本鎖短鎖干渉核酸分子(siNA)を含んでよく、ここでsiNA分子は、二つの分離したオリゴヌクレオチド断片から組み立てられ、1つの断片はsiNA分子のセンス領域を含みおよび第2の断片はアンチセンス領域を含み、ここで断片は、断片の5’−末端、3’−末端または5’および3’末端の両方にターミナルキャップ分子を含むセンス領域を含む。
【0083】
ある例において、複合体中の阻害性核酸は一本鎖DNAまたはRNAであり、2または3以上の一本鎖DNAまたはRNAを含んでよい。したがって、本発明は、ある例において、対象または生物中の1以上の標的遺伝子の発現を調節するのに好適である。
【0084】
代表的な本発明の複合体は、ターゲティングポリペプチドおよび核酸結合部分を含んでよく、ここでターゲティングポリペプチドおよび核酸結合ドメインは、配列番号1または配列番号3に記載の核酸配列によりコードされている。
代表的な本発明の複合体は、ターゲティングポリペプチドおよび核酸結合部分を含んでよく、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチドによりコードされている。
【0085】
他のある例において、核酸結合部分およびターゲティングポリペプチドはスペーサーペプチドにより分離されていることができる。代表的なスペーサーペプチドは、配列番号5(SDGGGSGGGGSLE)または配列番号6(DGGGSGGGGSL)を含んでよい。
【0086】
標的遺伝子の核酸配列に相補的であるsiRNA配列を有するdsRNAを調製する。siRNA核酸配列は、National Center for Biotechnology Informationのウェブサイト(www.ncbi.nlm.nih.gov)から受託番号またはGI番号を提供した後、siRNA Selection Program, Whitehead Institute for Biomedical Research, Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, Mass.(http://jura.wi.mit.edu)から得られる。The Genome Database(www.gdb.org)は、National Center for Biotechnology Information受託番号として用いられる核酸配列リンクを提供する。発注するRNAの調製は、商業的に利用可能である(Ambion Inc., Austin, Tex.; GenoMechanix, LLC, Gainesville, Flaなど)。適した配列の決定は、USPHS, NIH genetic sequence data bankを用いて達成されるだろう。代替的に、適したsiRNA配列を含むdsRNAはMiyagishi and Taira(2003)の戦略を用いて確認される。dsRNAは、800塩基対長までであり得る(Diallo M et al. 2003)。dsRNAは、ショートヘアピン構造を任意に有する(米国特許出願公報第2004/0058886号)。商業的に利用可能なRNAiデザイナーアルゴリズムもまた存在する(http://maidesigner.invitrogen.com/rnaiexpress/)。
【0087】
本発明は、本明細書に記載の複合体をコードするベクターを特徴とする。ベクターは、これに限定するものではないが、例えばレトロウィルス、アデノウィルス、アデノ随伴ウィルスまたはレンチウィルスベクターなど、任意のベクターであってよい。
ある好ましい例において、ベクターは哺乳類細胞における発現に好適なプロモーターを含む。
【0088】
リガンド−阻害性核酸結合複合体は、現存するプラスミド技術を用いて調製される(Caron et al. 2004; He et al. 2004)。RNA結合タンパク質は、実例的にヒストン(Jacobs and Imani 1988)、RDE−4(Tabara et al. 2002; Parrish and Fire 2001)、およびプロタミン(Warrant and Kim 1978)を含む。RNA結合タンパク質cDNAは、Gene Bank database(www.ncbi.nlm.nih.gov/IEB/Research/Acembly)を用いて決定される。例えば、RDE−4のcDNAのGene Bank受託番号はAY07926およびy1L832c2.3である(www.ncbi.nlm.nih.gov/IEB/Research/Acembly)。RDE−4は、dsRNAをダイサーに提示することにより、RNA干渉を開始する(Tabara et al.)。
【0089】
ある例において、得られたリガンド−dsRNAのダイサーの基質としての好適さは、組換えダイサーを用いて、in vitroにおいて最初に決定することができる(Zhang H 2002, Provost 2002, Myers J W 2003)。最適なリガンド分子サイズおよびdsRNA長は、それによって同定される。
ある好ましい例において、本発明は、対象における疾患または障害を処置または予防する医薬組成物であって、1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチドを含み、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドからなり、それにより対象における疾患または障害を治療または予防する、前記医薬組成物を特徴とする。
【0090】
ある態様において、医薬組成物は、追加の剤による処置を含む。
他のある態様において、本発明は、1または2以上の剤を標的細胞に送達するための医薬組成物であって、1または2以上の阻害性核酸、ここで1または2以上の阻害性核酸は剤とカップリングされている、およびターゲティングポリペプチド、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドからなる、を含み、それにより対象における疾患または障害を治療または予防する、前記医薬組成物を特徴とする。
【0091】
ある例において、剤は、治療剤であり得る。当業者によって使用を想定されている任意の治療剤が、本発明に用いるのに好適である。好ましい態様において、治療剤は抗癌化合物である。抗癌化合物の例は、これに限定するものではないが、アシビシン、アクラルビシン、塩酸アコダゾール、アクロニン、アドゼレシン、アルデスロイキン、アルトレタミン、アンボマイシン、酢酸アメタントロン、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アンスラマイシン、アスパラギナーゼ、アスペルリン、アザシチジン、アゼテパ(azetepa)、アゾトマイシン、バチマスタット、ベンゾデパ(benzodepa)、ビカルタミド、塩酸ビサントレン、ビスナフィドジメシレート、ビゼレシン、硫酸ブレオマイシン、ブレキナルナトリウム、ブロピリミン、ブスルファン、カクチノマイシン、カルステロン、カラセミド、カルベチマー(carbetimer)、カルボプラチン、カルムスチン、塩酸カルビシン、カルゼレシン、セデフィンゴール、クロラムブシル、シロレマイシン(cirolemycin)、シスプラチン、クラドリビン、クリスナトールメシレート、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、デシタビン、デキソルマプラチン、デザグアニン、デザグアニンメシレート、ジアジクオン、ドセタキセル、ドキソルビシン、塩酸ドキソルビシン、ドロロキシフェン、クエン酸ドロロキシフェン、プロピオン酸ドロモスタノロン、ズアゾマイシン(duazomycin)、エダトレキセート、塩酸エフロルニチン、エルサミトルシン、エンロプラチン、エンプロマート、エピプロピジン、塩酸エピルビシン、エルブロゾール、塩酸エソルビシン、エストラムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、エタニダゾール、エトポシド、リン酸エトポシド、エトプリン、塩酸ファドロゾール、ファザラビン(fazarabine)、フェンレチニド、フロクスウリジン、リン酸フルダラビン、フルオロウラシル、フルロシタビン(flurocitabine)、フォスキドン(fosquidone)、フォストリエシンナトリウム、ゲムシタビン、塩酸ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、塩酸イダルビシン、イホスファミド、イルモホシン、インターロイキンII(組換えインターロイキンIIまたはrIL2を含む)、インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、インターフェロンα−n1、インターフェロンα−n3、インターフェロンβ−Ia、インターフェロンγ−Ib、イプロプラチン、塩酸イリノテカン、酢酸ランレオチド、レトロゾール、酢酸ロイプロリド、塩酸リアロゾール、ロメトレキソールナトリウム(lometrexol sodium)、ロムスチン、塩酸ロソキサントロン、マソプロコール、マイタンシン、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、塩酸レタミン、酢酸メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルカプトプリン、メトトレキセート、メトトレキセートナトリウム、メトプリン、メツレデパ(meturedepa)、ミチンドミド、ミトカルシン(mitocarcin)、ミトクロミン、ミトジリン(mitogillin)、ミトマルシン(mitomalcin)、ミトマイシン、ミトスペル(mitosper)、ミトタン、塩酸ミトキサントロン、ミコフェノール酸、ノコダゾール、ノガラマイシン、オルマプラチン、オキシスラン、パクリタキセル、ペグアスパラガーゼ、ペリオマイシン(peliomycin)、ペンタムスチン、硫酸ペプロマイシン、ペルホスファミド、ピポブロマン、ピポスルファン、塩酸ピロキサントロン、プリカマイシン、プロメスタン、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニムスチン、塩酸プロカルバジン、ピューロマイシン、塩酸ピューロマイシン、ピラゾフリン、リボプリン(riboprine)、ログレチミド(rogletimide)、サフィンゴール、塩酸サフィンゴール、セムスチン、シムトラゼン、スパルホサートナトリウム(sparfosate sodium)、スパルソマイシン、塩酸スピロゲルマニウム、スピロムスチン、スピロプラチン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スロフェヌール(sulofenur)、タリソマイシン、テコガランナトリウム、テガフール、塩酸テロキサントロン(teloxantrone hydrochloride)、テモポルフィン、テニポシド、テロキシロン(teroxirone)、テストラクトン、チアミプリン、チオグアニン、チオテパ、チアゾフリン、チラパザミン、クエン酸トレミフェン、酢酸トレストロン(trestolone acetate)、リン酸トリシリビン、トリメトレキサート、グルクロン酸トリメトレキサート、トリプトレリン、塩酸ツブロゾール(tubulozole hydrochloride)、ウラシルマスタード、ウレデパ、バプレオチド、ベルテポルフィン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、硫酸ビンデシン、硫酸ビネピジン、硫酸ビングリシナート、硫酸ビンロイロシン、酒石酸ビノレルビン、硫酸ビンロシジン、硫酸ビンゾリジン、ボロゾール、ゼニプラチン、ジノスタチン、塩酸ゾルビシン、インプロスルファン、ベンゾデパ、カルボクオン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、トリメチロロメラミン、クロルナファジン、ノベンビチン(novembichin)フェネステリン(phenesterine)、トロホスファミド、エストラムスチン(estermustine)、クロロゾトシン、ジェムザール、ニムスチン、ラニムスチン、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、アクラシノマイシン、アクチノマイシンF(1)、アザセリン、ブレオマイシン、カルビシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダウノルビシン、ダウノマイシン、6−ジアゾ−5−オキソ−1−ノルロイシン、ドキソルビシン、オリボマイシン、プリカマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ツベルシジン、ゾルビシン、デノプテリン、プテロプテリン、6−メルカプトプリン、アンシタビン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、エノシタビン、プルモザイム、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド(aldophophamide glycoside)、ベストラブシル(bestrabucil)デフォファミド(defofamide)、デメコルシン、エルフォルニチン(elfornitine)、酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate)、エトグルシド、フルタミド、ヒドロキシウレア、レンチナン、フェナメット(phenamet)、ポドフィリン酸、2−エチルヒドラジド、ラゾキサン、スピロゲルマニウム、タモキシフェン、タキソテール、テヌアゾン酸、トリアジクオン、2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン、ウレタン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよび関連する剤を含む。
【0092】
20−epi−1,25ジヒドロキシビタミンD3、5−エチニルウラシル、アビラテロン、アクラルビシン、アシルフルベン、アデシペノール(adecypenol)、アドゼレシン、アルデスロイキン、ALL−TKアンタゴニスト、アルトレタミン、アンバムスチン、アミドックス、アミフォスチン、アミノレブリン酸、アムルビシン、アムサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、アンドログラフォリド、血管形成阻害剤、アンタゴニストD、アンタゴニストG、アンタレリックス(antarelix)、抗背方化形態発生タンパク質−1(anti-dorsalizing morphogenetic protein-1)、抗アンドロゲン、前立腺癌、抗エストロゲン、アンチネオプラストン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アフィジコリングリシネート、アポトーシス遺伝子モジュレーター、アポトーシスレギュレーター、アプリン酸、ara−CDP−DL−PTBA、アルギニンデアミナーゼ、アスラクリン(asulacrine)、アタメスタン、アトリムスチン、アキシナスタチン(axinastatin)1、アキシナスタチン2、アキシナスタチン3、アザセトロン、アザトキシン、アザチロシン、バッカチンIII誘導体、バラノール(balanol)、バチマスタット、BCR/ABLアンタゴニスト、ベンゾクロリン、ベンゾイルスタウロスポリン、βラクタム誘導体、β−アレチン、β−クラマイシンB、ベツリン酸、bFGF阻害剤、ビカルタミド、ビサントレン、ビスアジリジニルスペルミン(bisaziridinylspermine)、ビスナフィド、ビストラテン(bistratene)A、ビゼレシン(bizelesin)、ブレフレート(breflate)、ブロピリミン、ブドチタン、ブチオニンスルホキシミン、カルシポトリオール、カルホスチンC、カンプトテシン誘導体、カナリア痘IL−2、カペシタビン、カルボキサミド−アミノ−トリアゾール、カルボキシアミドトリアゾール、CaRest M3、CARN 700、軟骨由来阻害剤、カルゼレシン(carzelesin)、カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS)、カスタノスペルミン、セクロピンB、セトロレリクス、クロルルン(chlorln)、クロロキノキサリンスルホンアミド、シカプロスト、シスポルフィリン、クラドリビン、クロミフェンアナログ、クロトリマゾール、コリスマイシンA、コリスマイシンB、コンブレタスタチンA4、コンブレタスタチンアナログ、コナゲニン、クランベシジン816、クリスナトール、クリプトフィシン8、クリプトフィシンA誘導体、キュラシンA、シクロペンタアントラキノン類、シクロプラタム(cycloplatam)、シペマイシン(cypemycin)、シタラビンオクホスフェート、細胞溶解因子、サイトスタチン、ダクリキシマブ(dacliximab)、デシタビン、デヒドロジデムニンB、デスロレリン、デキサメタゾン、デキシホスファミド、デキスラゾキサン、デキスベラパミル、ジアジクオン、ジデムニンB、ジドックス(didox)、ジエチルノルスペルミン、ジヒドロ−5−アザシチジン、ジヒドロタキソール、9−、ジオキサマイシン(dioxamycin)、ジフェニルスピロムスチン、ドセタキセル、ドコサノール、ドラセトロン、ドキシフルリジン、ドロロキシフェン、ドロナビノール、デュオカルマイシンSA、エブセレン、エコムスチン、エデルホシン、エドレコロマブ、エフロルニチン、エレメン、エミテフール、エピルビシン、エプリステリド、エストラムスチンアナログ、エストロゲンアゴニスト、エストロゲンアンタゴニスト、エタニダゾール、リン酸エトポシド、エキセメスタン、ファドロゾール、ファザラビン(fazarabine)、フェンレチニド、フィルグラスチム、フィナステリド、フラボピリドール、フレゼラスチン(flezelastine)、フルアステロン、フルダラビン、塩酸フルオロダウノルニシン(fluorodaunorunicin hydrochloride)、ホルフェニメクス、ホルメスタン、ホストリエシン、ホテムスチン、ガドリニウムテキサフィリン、硝酸ガリウム、ガロシタビン、ガニレリクス、ゼラチナーゼ阻害剤、ゲムシタビン、グルタチオン阻害剤、ヘプスルファム(hepsulfam)、ヘレグリン、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ヒペリシン、イバンドロン酸、イダルビシン、イドキシフェン、イドラマントン、イルモホシン、イロマスタット、イミダゾアクリドン類、イミキモド、免疫促進剤ペプチド、インシュリン様増殖因子−1受容体阻害剤、インターフェロンアゴニスト、インターフェロン、インターロイキン、イオベングアン、ヨードドキソルビシン、イポメアノール、4-、イロプラクト(iroplact)、イルソグラジン、イソベンガゾール、イソホモハリコンドリン(isohomohalicondrin)B、イタセトロン、ジャスプラキノリド、カハラリドF、ラメラリン−Nトリアセテート、ランレオチド、レイナマイシン、レノグラスチム、硫酸レンチナン、レプトルスタチン、レトロゾール、白血病抑制因子、白血球αインターフェロン、ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン、ロイプロレリン、レバミソール、リアロゾール、直鎖状ポリアミンアナログ、脂溶性二糖類ペプチド、脂溶性白金化合物、リソクリナミド(lissoclinamide)7、ロバプラチン、ロンブリシン、ロメトレキソール(lometrexol)、ロニダミン、ロソキサントロン、ロバスタチン、ロキソリビン、ルートテカン、ルテチウムテキサフィリン(lutetium texaphyrin)、リソフィリン、溶菌性ペプチド、マイタンシン、マンノスタチンA、マリマスタット、マソプロコール、マスピン、マトリリシン阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、メノガリル、メルバロン(merbarone)、メテレリン(meterelin)、メチオニナーゼ、メトクロプラミド、MIF阻害剤、ミフェプリストン、ミルテホシン、ミリモスチム、ミスマッチ二本鎖RNA、ミトグアゾン、ミトラクトール、マイトマイシンアナログ、ミトナフィド(mitonafide)、ミトトキシン線維芽細胞増殖因子−サポリン、ミトキサントロン、モファロテン、モルグラモスチム、モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、モノホスホリルリピドA+ミオバクテリウム細胞壁sk、モピダモール、多剤耐性遺伝子阻害剤、多発性腫瘍サプレッサー1ベースの治療、マスタード系抗癌剤、ミカペルオキシド(mycaperoxide) B、マイコバクテリア細胞壁抽出物、ミリアポロン(myriaporone)、N−アセチルジナリン、N−置換ベンズアミド、ナファレリン、ナグレスチプ(nagrestip)、ナロキソン+ペンタゾシン、ナパビン(napavin)、ナフテルピン、ナルトグラスチム、ネダプラチン、ネモルビシン、ネリドロン酸、中性エンドペプチダーゼ、ニルタミド、ニサマイシン(nisamycin)、酸化窒素モジュレーター、ニトロキシド酸化防止剤、ニトルリン(nitrullyn)、O6−ベンジルグアニン、オクトレオチド、オキセノン、オリゴヌクレオチド、オナプリストン、オンダンセトロン、オンダンセトロン、オラシン(oracin)、経口サイトカインインデューサー、オルマプラチン、オサテロン、オキサリプラチン、オキサウノマイシン、タキセル、タキセルアナログ、タキセル誘導体、パラウアミン、パルミトイルリゾキシン、パミドロン酸、パナキシトリオール、パノミフェン、パラバクチン、パゼリプチン(pazelliptine)、ペグアスパルガーゼ、ペルデシン、ポリ硫酸ペントサンナトリウム、ペントスタチン、ペントロゾール(pentrozole)、ペルフルブロン、ペルホスファミド(perfosfamide)、ペリリルアルコール、フェナジノマイシン、酢酸フェニル、ホスファターゼ阻害剤、ピシバニール、塩酸ピロカルピン、ピラルビシン、ピリトレキシム、プラセチンA、プラセチンB、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤、白金錯体、白金化合物、白金トリアミン錯体、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニゾン、プロピルビスアクリドン、プロスタグランジンJ2、プロテアソーム阻害剤、プロテインAベース免疫モジュレーター、プロテインキナーゼC阻害剤、プロテインキナーゼC阻害剤(微細藻類)、タンパク質チロシンホスファターゼ阻害薬、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤、プルプリン、ピラゾロアクリジン、ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレン抱合体、rafアンタゴニスト、ラルチトレキセド、ラモセトロン、rasファルネシルタンパク質転移酵素阻害剤、ras阻害剤、ras−GAP阻害剤、ジメチル化レテリプチン、エチドロン酸レニウムRe 186、リゾキシン、リボザイム、RIIレチンアミド、ログレチミド、ロヒツキン(rohitukine)、ロムルチド、ロキニメックス(roquinimex)、ルビギノンB1、ルボキシル(ruboxyl)、サフィンゴール、サイントピン(saintopin)、SarCNU、サルコフィトールA、サルグラモスチム、Sdi 1模倣体、セムスチン、老化由来阻害剤1(senescence derived inhibitor 1)、センスオリゴヌクレオチド、シグナル伝達阻害剤、シグナル伝達モジュレーター、単鎖抗原結合タンパク質、シゾフィラン、ソブゾキサン、ボロカプト酸ナトリウム(sodium borocaptate)、フェニル酢酸ナトリウム、ソルベロール(solverol)、ソマトメジン結合タンパク質、ソネルミン、スパルホス酸、スピカマイシンD、スピロムスチン、スプレノペンチン、スポンジスタチン1、スクアラミン、幹細胞阻害剤、幹細胞分裂阻害剤、スチピアミド(stipiamide)、ストロメリシン阻害剤、スルフィノシン(sulfinosine)、超活性血管作用性腸管ペプチドアンタゴニスト、スラジスタ(suradista)、スラミン、スワインソニン、合成グリコサミノグリカン、タリムスチン(tallimustine)、タモキシフェンメチオジド.、タウロムスチン(tauromustine)、タザロテン、テコガランナトリウム、テガフール、テルラピリリウム(tellurapyrylium)、テロメラーゼ阻害剤、テモポルフィン、テモゾロミド、テニポシド、テトラクロロデカオキシド、テトラゾミン(tetrazomine)、タリブラスチン(thaliblastine)、チオコラリン(thiocoraline)、トロンボポエチン、トロンボポイエチン模倣体、チマルファシン、チモポエチン受容体アゴニスト、チモトリナン、甲状腺刺激ホルモン、エチルエチオプルプリンスズ(tin ethyl etiopurpurin)、チラパザミン、二塩化チタノセン(titanocene bichloride)、トプセンチン(topsentin)、トレミフェン、分化全能性幹細胞因子、翻訳阻害剤、トレチノイン、トリアセチルウリジン、トリシリビン(triciribine)、トリメトレキサート、トリプトレリン、トロピセトロン(tropisetron)、ツロステリド(turosteride)、チロシンキナーゼ阻害剤、チルホスチン、UBC阻害剤、ウベニメックス、尿生殖洞由来増殖阻害因子、ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト、バプレオチド、バリオリンB、ベクターシステム、赤血球遺伝子治療、ベラレソール、ベラミン(veramine)、ベルジン(verdin)、ベルテポルフィン、ビノレルビン、ビンキサルチン、ビタキシン(vitaxin)、ボロゾール、ザノテロン(zanoterone)、ゼニプラチン、ジラスコルブ、およびジノスタチンスチマラマー。好ましい追加の抗癌剤は、5−フルオロウラシルおよびロイコボリンである。追加の癌治療薬は、リツキシマブ、トラスツズマブ、セツキシマブなどのモノクローナル抗体を含む。
【0093】
他の態様において、剤は毒素であってよい。例えば、毒素は、これに限定するものではないが、以下のものから選択されてよい:アプリジン、アザリビン、アナストロゾール、アザシチジン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブリオスタチン−1、ブスルファン、カリケアマイシン、カンプトテシン、10−ヒドロキシカンプトテシン、カルムスチン、セレブレックス、クロラムブシル、シスプラチン、イリノテカン(CPT−11)、SN−38、カルボプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、デカルバジド、ドセタキセル、ダクチノマイシン、グルクロン酸ダウノマイシン、ダウノルビシン、デキサメタゾン、ジエチルスチルベストロール、ドキソルビシン、2−ピロリノドキソルビシン(2P−DOX)、シアノ−モルホリノドキソルビシン、グルクロン酸ドキソルビシン、グルクロン酸エピルビシン、エチニルエストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、グルクロン酸エトポシド、リン酸エトポシド、フロクスウリジン(FUdR)、3’,5’−O−ジオレオイル−FudR(FUdR−dO)、フルダラビン、フルタミド、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、ゲムシタビン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、L−アスパラギナーゼ、ロイコボリン、ロムスチン、メクロレタミン、酢酸メドロキシプロゲステロン(medroprogesterone acetate)、酢酸メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、6−メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミスラマイシン、ミトマイシン、ミトタン、酪酸フェニル、プレドニソン、プロカルバジン、パクリタキセル、ペントスタチン、PSI−341、セムスチン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、タキサン類、タキソール、プロピオン酸テストステロン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、テニポシド、トポテカン、ウラシルマスタード、ベルケード、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンクリスチン、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ、オンコナーゼ、ラップLR1、DNase1、ブドウ球菌エンテロトキシンA、ヤマゴボウ抗ウィルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリアトキシン、緑膿菌外毒素、緑膿菌内毒素、およびそれらの組み合わせ。
抗炎症剤を含む他の剤を用いることができる。
【0094】
方法
本出願の発明者らは、阻害性オリゴヌクレオチドをターゲティングされた細胞に効果的に送達するための新規な組成物および方法を開発した。組成物および方法は、例えばケモカインなどの、細胞表面レセプターターゲティングリガンド、および阻害性オリゴヌクレオチドを細胞表面レセプターターゲティングリガンドを発現する細胞に効果的に送達するための、阻害性オリゴヌクレオチドと結合するドメインの利用に基づくものである。本発明は、従来の方法に対して非常に効果的で標的性の高い複合体を提供するという利点を提供する。
【0095】
したがって本発明は、本明細書に記載された複合体を利用した、細胞中でのサイレンシングまたはノックダウン、遺伝子発現の方法を特徴とする。ある例において、本発明は、1または2以上の標的遺伝子の発現を低減させる1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチドを含む複合体と細胞とを接触させることを含む、細胞中での遺伝子発現をサイレンシングする方法を特徴とし、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターリガンドを含み、それにより細胞中の遺伝子発現をサイレンシングする。
【0096】
本発明はまた、阻害性RNA分子を細胞に送達する方法を特徴とし、方法は1または2以上の標的遺伝子の発現を低減させる1または2以上の二本鎖RNAおよびターゲティングポリペプチドを含む複合体と細胞とを接触させることを含み、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターリガンドを含み、それにより細胞中に阻害性RNA分子を送達する。
【0097】
本発明はまた、1または2以上の標的遺伝子の発現を低減させる1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチドを含む複合体であって、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを含む、前記複合体と細胞とを接触させ、それにより対象における疾患または障害を治療または予防することを含む、遺伝子発現をサイレンシングすることによって対象における疾患または障害を処置または予防する方法を特徴とする。
【0098】
あり例において、方法はがんの処置に用いられる。より特定の例において、白血病を処置するためのクレームされた方法において、本複合体は有用である。
治療され得る他のがんは、これに限定するものではないが、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、基底細胞癌、膀胱癌、骨癌、脳腫瘍、子宮頸癌、慢性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、食道癌、ユーイングファミリー腫瘍、網膜芽種、胃癌、胃腸腫瘍、グリオーマ、頭頸部癌、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、膵島腫瘍(内分泌性膵臓)、腎臓(腎細胞)癌、咽頭癌、非小細胞性肺癌、小細胞性肺癌、リンパ腫、髄芽種、メラノーマ、膵臓癌、前立腺癌、腎癌、直腸癌、甲状腺癌を含む。
【0099】
本明細書に記載されるように、本方法はまた、追加の剤での処置を含むことができる。
あるケースにおいて、本明細書に記載されるように、追加の剤は治療剤であることができる。
【0100】
本発明はまた、1または2以上の剤を標的細胞に送達する方法であって、1または2以上の阻害性核酸、ここで1または2以上の阻害性核酸は剤とカップリングされている、およびターゲティングポリペプチド、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを含む、を含む複合体と細胞とを接触させ、それにより剤を標的細胞に送達することを含む、前記方法を特徴とする。
【0101】
他のあるケースにおいて、剤はイメージング剤であることができる。イメージング剤は診断または予後的な目的、および治療コースを決定するために用いることができる。
代表的なイメージング剤は、これに限定するものではないが、造影剤、MRI CT造影剤、放射性医薬品、X線造影剤、心臓イメージング剤、テクネチウムtc−99m、超音波造影剤を含む。
【0102】
したがって、本発明は、イメージング剤を標的細胞に送達する方法であって、1または2以上の阻害性核酸、ここで1または2以上の阻害性核酸はイメージング剤とカップリングされている、およびターゲティングポリペプチド、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを構成する、を含む複合体と細胞とを接触させ、剤を標的細胞に送達することを含む、前記方法を特徴とする。
【0103】
1つの態様において、本発明の阻害性核酸、例えばsiNA分子、はex vivoアプリケーション用の試薬として用いることができる。例えば、siNA試薬は、治療効果のための対象に移植される組織または細胞に導入される。細胞および/または組織は、後に外殖片を受け取る生物または対象由来であることができ、または移植前の別の生物または対象からのものであることができる。siNA分子は、細胞または組織がin vivoで移植された時にきのうをはっきすることができるように、細胞または組織中の1または2以上の標的遺伝子の発現を調節するために用いることができる。1つの態様において、患者からの標的細胞が抽出される。これらの抽出細胞と、細胞内の特定の核酸配列をターゲティングするsiNAとを、これらの細胞によるsiNAの取り込みに好適な条件下(例えば、カチオン性脂質、リポソームなどの送達剤の使用またはsiNAの細胞への送達を促進するエレクトロポレーションなどの技術の使用)で接触する。細胞はそこで、同じ患者または他の患者に再導入される。したがって、1つの態様において、本発明は、組織外殖片における標的遺伝子の発現を調節する方法であって、(a)本発明の複合体、例えば1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチドを含み、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを含み、ここで1つのsiNA鎖が標的遺伝子のRNAと相補的な配列を含む複合体、を合成すること、および(b)複合体を特定の生物由来の組織外殖片の細胞内に、組織外殖片中の標的遺伝子の発現を調節するのに好適な条件下で導入することを含む方法を特徴とする。別の態様において、本発明は、組織外殖片を組織が由来する生物または別の生物に、その生物内で標的遺伝子の発現を調節するのに好適な条件下で、再導入することをさらに含む。
【0104】
ある例において、細胞は培養細胞である。別のある例において、細胞は対象動物の一部である。細胞は、これに限定するものではないが、免疫細胞、上皮細胞、内皮細胞、心臓細胞、神経細胞、肝細胞、リンパ球および筋細胞であることができる。
細胞は、転移細胞であることができる。
細胞は、幹細胞であることができる。
【0105】
対象は哺乳類であることができ、ある好ましい態様において、対象はヒトである。ある態様において、対象は、免疫学的疾患または障害、過剰増殖性の新生組織形成疾患または障害に罹患している。
新生組織形成疾患および過剰増殖性疾患の処置の主なゴールは、正常細胞には触れずに、異常に増殖した細胞を除去することである。処置を提供するための様々な方法が開発されているが、不可欠な特異性の程度を提供するものはない。本明細書に記載の方法、1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチドを含み、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを含む複合体の使用は、疾患、例えば新生組織形成疾患、免疫学的疾患および過剰増殖性疾患など、の処置のための増強されたターゲティングおよび特異性を提供する。
あるケースにおいて、本発明の方法は、転移の診断に用いられる。
【0106】
癌または過剰増殖性の疾患の処置への本方法の利用は、ある態様において好適である。特定の細胞型、例えばがん細胞、への化合物の送達は特定の細胞型に伴うレセプターを利用することにより達成することができる。特定のレセプターは、ある癌性細胞に過剰発現しており、高親和性フォレートレセプターを含む。例えば、高親和性フォレートレセプターは、乳腫瘍、卵巣腫瘍、頸部腫瘍、直腸結腸腫瘍、腎腫瘍および鼻咽頭腫瘍などの様々な新生組織形成組織に過剰発現している腫瘍マーカーであるが、正常組織には非常に限定的に発現している。細胞膜を横切る外因性化合物の輸送への葉酸ベースの抱合体の使用は、疾患の処置および診断に標的化送達的アプローチを提供することができ、治療化合物の所望投与量の低減を提供することができる。さらに、フォレートバイオコンジュゲートを含むバイオコンジュゲートの使用を通じて、治療的バイオアベイラビリティ、薬物動力学および薬物動態学的パラメーターを調節することができる。Godwin et al., 1972, J. Biol. Chem., 247, 2266-2271は、生物学的に活性なプテロイルオリゴ−L−グルタメートの合成を報告する。Habus et al., 1998, Bioconjugate Chem., 9, 283-291は、あるオリゴヌクレオチド−フォレート抱合体の固相合成の方法を記載する。Cook、米国特許番号第6,721,208号、は、特定の抱合体群で修飾されたあるオリゴヌクレオチドを記載する。外因性分子の膜貫通輸送の増強のためのビオチンおよびフォレート抱合体の使用は、Low et al.、米国特許番号第5,416,016号、5,108,921号、および国際公開公報第WO90/12096号に報告されている。Manoharan et al.、国際公開公報第WO99/66063号は、特定の核酸フォレートを含むあるフォレート抱合体が、抱合体の核酸コンポーネントに取り付けられたホスホルアミダイト部分と抱合すること、およびこれらのフォレート抱合体の合成方法を記載する。Nomura et al., 2000, J. Org. Chem., 65, 5016-5021は、あるタイプのフォレート−ヌクレオシド抱合体の合成に有用な、中間体α−[2−(トリメチルシリル)エトキシカルボニル]葉酸の合成を記載する。Guzaev et al.、米国特許番号第6,335,434号は、あるフォレートオリゴヌクレオチド抱合体の合成を記載する。
【0107】
投与量および投与
本発明の組成物は、全身的に投与してよい。本明細書で使用する場合、用語「全身的投与」は、in vivoでの血流への薬剤の全身吸収または全身蓄積、続く身体全体への拡散を含むことを意図する。全身吸収へと導く投与経路は、限定することなく、静脈内、皮下、腹腔内、鼻腔内、吸入、経口、肺内および筋肉内を含む。これら各投与ルートは、所望の負に帯電したポリマー、例えば核酸、を接近可能な疾患のある組織に曝露する。循環への薬剤の参入率は、分子量またはサイズの関数であるとみられる。
【0108】
本発明の組成物は、これに制限されるものではないが、リポソームへの封入、イオン導入により、またはハイドロゲル、シクロデキストリン、生分解性ナノカプセル、および生体接着性マイクロスフェアなどの他のビヒクルへの組込により、またはタンパク性ベクター(O'Hare and Normand, 国際公開公報第WO00/53722号)など当業者に知られた様々な方法によって細胞に投与することができる。代替的に、核酸/ビヒクルの組み合わせは、直接注射またはかん流ポンプの使用により、局所的に送達され得る。皮下、筋肉内または皮膚内の本発明の複合体の直接注射は、標準的な針およびシリンジ方法論により、またはConry, et al., Clin. Cancer Res. 5:2330-2337, 1999、およびBarry, et al., 国際公開公報第WO99/31262号に記載されているものなどの針なしの技術により行うことができる。
【0109】
本発明はまた、ポリ(エチレングリコール)脂質を含む表面修飾リポソーム(PEG−修飾または長期循環性リポソームまたはステルスリポソーム)を含む組成物の使用を特徴とする。これらの処方は、標的組織における薬剤の蓄積を増大させる方法を提供する。薬剤担体のこのクラスは、単核食細胞系(MPSまたはRES)によるオプソニン化および排出に抵抗し、それにより。長い血中循環時間および封入された剤についての増強された組織への曝露を可能にする。Lasic, et al., Chem. Rev. 95:2601-2627, 1995; Ishiwata, et al., Chem. Pharm. Bull. 43:1005-1011, 1995。かかるリポソームは、おそらく血管が新たに形成された標的組織内への溢出および捕捉により、腫瘍内に選択的に蓄積するように見える。Lasic, et al., Science 267:1275-1276, 1995; Oku, et al., Biochim. Biophys. Acta 1238:86-90, 1995。長期循環性リポソームは、DNAおよびRNAの薬物動態および薬物動力を、特に従来の、MPSの組織に蓄積することが知られている、カチオン性リポソームと比較して増強する。Liu, et al., J. Biol. Chem. 42:24864-24870, 1995; Choi, et al.、国際公開公報第WO96/10391号、Ansell, et al.、国際公開公報第WO96/10390号、およびHolland, et al.、国際公開公報第WO96/10392号。長期循環性リポソームはまた、ヌクレオチドを作用させた(nucleotided)カチオン性リポソームと比較して非常に大きな程度、肝臓や脾臓などの代謝的に攻撃性なMPS組織における蓄積を回避する能力による、ヌクレアーゼ分解から薬剤を保護する傾向にある。
【0110】
本開示は、薬学的に効果的な量の所望の化合物を薬学的に許容可能な担体または希釈剤中に含む、貯蔵または投与のために調製された組成物をまた含む。治療的使用のための許容可能な担体または希釈剤は、当該技術分野において周知であり、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., A. R. Gennaro ed., 1985に記載されている。例えば、保存料、安定化剤、線量およびフレーバー剤が提供され得る。これらはベンゼン酸ナトリウム、ソルビン酸およびp−ヒドロキシベンゼン酸のエステルを含む。加えて、抗酸化剤および懸濁剤もまた用いてよい。
【0111】
薬学的に効果的な投与量は、病状の発生を妨げる、病状の発生を阻害する、または病状を処置する(症状、好ましくは全ての症状をいくらか軽減する)のに必要な投与量である。ある例において、病状は癌であり得る。薬学的に効果的な投与量は疾患のタイプ、用いられる組成物、投与のルート、処置される哺乳動物のタイプ、考慮されている特定の哺乳動物の物理的特性、併用投薬、および医薬の分野の当業者が認識するであろう他の因子に依存する。一般的に、活性成分の0.1mg/kgおよび100mg/kg体重/日の間の量が、負に帯電したポリマーの有効性に依存して投与される。
【0112】
患者のモニタリング
病状または疾患または障害、例えば新生組織形成、を有する患者の処置は、本発明の方法および組成物を用いてモニタリングすることができる。
1つの態様において、患者の腫瘍の進行は本発明の方法および組成物を用いてモニタリングすることができる。かかるモニタリングは、例えば特定の薬剤の患者中での有効性を評価するのに有用であり得る。例えば、新生組織形成中で過剰発現する標的ポリペプチドの発現を変化させる治療剤は、本発明において特に有用であると受け止められる。
【0113】
キット
本発明はまた、遺伝子発現をサイレンシングすることにより、対象における疾患または障害を処置または予防するためのキットを提供する。好ましい例において、キットは1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチドを提供し、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターリガンドからなる。他の好ましい例において、キットは、本明細書に記載の融合分子および使用説明書を含む。
【0114】
他の態様において、キットは、阻害性核酸、ターゲティングポリペプチドおよび任意に追加の剤を含む無菌の容器を含み、かかる容器は箱、アンプル、ビン、バイアル、チューブ、バッグ、パウチ、ブリスターパック、または他の好適な当該技術分野に知られた容器形態であってよい。かかる容器はプラスチック、ガラス、ラミネート紙、金属ホイルまたは核酸の保持に好適な他の材料で作られていてよい。説明書は一般的に、本明細書に記載された阻害性核酸および追加の剤の使用についておよび本明細書に記載された方法におけるその使用についての情報を含む。好ましくは、キットは、本明細書に記載された診断アッセイに記載された、任意の1または2以上の試薬をさらに含む。他の態様において、使用説明書は、少なくとも1つの以下のものを含む:阻害性核酸の記載、本明細書に記載の診断および予後方法のための同封物の使用方法、安全上の注意、警告、指示、臨床的または調査研究、および/または参照。説明書は、容器(存在する場合)に直接または容器に貼付されるラベルとして、または容器内または容器とともに供給される別シート、パンフレット、カードまたはフォルダとして印刷されてもよい。
【0115】

細胞表面レセプターをターゲティングするリガンド、例えばケモカイン、は阻害性核酸、例えばsiRNA、を送達するために利用することが出来るだろうと仮定される。有利には、特定の細胞をターゲティングする方法において、ある細胞に特異に発現する細胞表面レセプターをターゲティングするリガンドと連結される阻害性ヌクレオチドの利用を可能にするだろう。例えば、ケモカインレセプターは、腫瘍を含むある細胞に特異に発現している。本明細書で報告されているのは、阻害性ヌクレオチドを、あるレセプターが発現している細胞に効果的に送達することが出来る、新規な組成物の開発である。ある好ましい側面において、組成物は、1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチドを含む複合体であって、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを含む、前記複合体を含む。代表的な態様において、新規組成物は、個別にケモカインレセプターを発現する細胞に効果的にsiRNAを送達する。
【0116】
組成物は生理食塩水中でいかなる追加の作業なしにsiRNAと結びつくので、技術は非常に単純である。したがって、様々なsiRNAの送達に単一の複合体を利用することができる。しかしながら、必要な場合、複合体はsiRNAと恒久的に架橋した後にも利用することができる。さらに、複合体は、様々な傾向色素で標識したオリゴヌクレオチドおよびsiRNAを送達することもできる。したがってこの技術は、in vitroおよびin vivo両方での、例えば様々な細胞を追跡または局在化させる、および腫瘍転移および異常増殖または免疫細胞のホーミングを決定するための、本明細書に記載の複合体の診断目的での使用を可能にするだろう。複合体は、癌および自己免疫と戦うために、siRNAを腫瘍細胞または様々な異常機能免疫細胞に送達することができる。
本発明を、以下の例によってさらに描写するが、これは限定と解釈されるべきではない。本明細書に記されたすべての文書は参照として本明細書に組み込まれる。
【0117】
例1
本発明は、一般的に、1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチドを含む複合体であって、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドからなる、前記複合体を特徴とする。
図1において、ケモカインCCR4をターゲティングする複合体を、TARC−ARPという。TARCは胸腺および活性化調節ケモカインの略記である。したがってTARK−ARPは阻害性ヌクレオチド、このケースでは、ケモカインTARC/CCL17に対するsiRNA、siTARCと略記される、を送達することができる。
【0118】
図1Aおよび図1Bは、ケモカインCCR4(TARC−ARP)をターゲティングする複合体が、ケモカインTARC/CCL17に対するsiRNA(siTARC)を送達でき、乳癌4T1細胞からのTARC/CCL17の産生/分泌を効果的に無効化することができることを実証する。4T1細胞は、TARCおよびそのケモカインレセプターCCR4の両方を発現する。複合体媒介性遺伝子「サイレンシング」の効率は、リポフェクチン媒介性トランスフェクション技術(Lipo+siTARC)に匹敵した。対照的に、siRNA単独(siTARC)またはコントロールTARCと混合したsiTARC(siRNA結合部位を有さないTARC−NFκB)が用いられたときは、遺伝子サイレンシングは検出されなかった。細胞は、siRNA送達後の様々な時間において、LPS活性化なし(図1A)またはあり(図1B)で試験された。
【0119】
図1Cは、TARC−ARPがsiRNAを、CCR4を発現する乳癌細胞に効果的に送達できることを示す。TARC−複合体またはコントロールTARC−NFタンパク質(1mop)をAlexa-488標識化siRNA(20pmol)と、生理食塩水中、30分間室温で、細胞への添加前に混合した。コントロール細胞もまた、Alexa-488標識化siRNA(20pmol)とともにインキュベートしたか、またはsiRNAをLipofectamine-2000(Invitrogen)を用いてトランスフェクトした。24時間のインキュベート後、細胞を可視光(上のパネル)または555nmの波長の励起下で分析した。
【0120】
例2
プロタミン断片と融合させたTARCを含む複合体のDNA配列を、図2に記載し、および以下の配列番号1に示す。
【化1】

【0121】
プロタミン断片と結びつけたTARCを含む複合体のタンパク質配列を以下の図2および配列番号2に示す。配列番号2において、ヒトTARC/CCL17の成熟配列は、Met(イタリック体、下線部)およびプロタミン断片(イタリック体)を含む。ケモカインとプロタミンとを分離するために用いたスペーサーペプチド断片(下線のある小文字)。構築物はまた、分析的利用およびタンパク質精製目的のためのc−mycタグおよび6つのHis残基を含む。c−mycおよび6つのHis残基は必要ではなく、いくつかの構築物はこれらを有しないことを注記する。
【0122】
【化2】

【0123】
HBAgのRNA結合ドメインと結びつけたTARC複合体のDNA配列を図3に記載し、以下の配列番号3に示す。
【化3】

【0124】
HBcAgのRNA結合ドメインと結びつけたTARCを含む複合体のタンパク質配列を以下の図3および配列番号4に示す。Met(イタリック体、下線部)およびプロタミン断片(イタリック体)を含むヒトTARC/CCL17の成熟配列。ケモカインとプロタミンとを分離するために用いたスペーサーペプチド断片(下線のある小文字)。構築物はまた、分析的利用およびタンパク質精製目的のための5つのHis残基を含む。5つのHis残基は必要ではなく、いくつかの構築物はこれらを有しないことを注記する。
【0125】
【化4】

【0126】
他の例において、複合体は修飾されている。例えば、複合体のRNA結合部分は、そのサイズを低減することおよび・または親和性を増大させることにより、修飾されている。本明細書で記載されるように、分析的使用およびタンパク質精製目的のため、His残基が構築物に含まれてよいが、His残基は必要ではない。したがって、ある構築物はHisタグを有しない。Hisタグの排除は、複合体のRNA結合親和性の増大を可能にする。
【0127】
TARC−Arp、HBVウィルスの仮想的RNA結合ドメインと融合したヒトTARC/CCL17複合体、のタンパク質配列を、図5および以下の配列番号9に示す。ある態様において、複合体は、例えばオリゴヌクレオチドおよびmiRNA/siRNAをCCR−4発現細胞に送達するために用いられる。スペーサー配列(GGGSGGG;配列番号7)をTARC/CCL17とHBVウィルスの仮想的RNA結合ドメインとの間に挿入した。
【0128】
ある好ましい態様において、TARC−Arpは、アレルギー性肺疾患において、CCR−4発現CD4 T細胞および制御性T細胞をターゲティングすることにより、遺伝子発現をノックオフ(knock off)するために用いられる。
【化5】

【0129】
RANTES−Arp、HBVウィルスの仮想的RNA結合ドメインと融合したヒトRANTES/CCL5複合体、のタンパク質配列を、図5および以下の配列番号10に示す。ある態様において、複合体は、例えばオリゴヌクレオチドおよびmiRNA/siRNAをCCR−5発現細胞に送達するために用いられる。スペーサー配列(GGGSGGG;配列番号7)をRANTESとHBVウィルスの仮想的RNA結合ドメインとの間に挿入した。
【0130】
ある好ましい態様において、RANTES−Arpは、感染CD4 T細胞におけるHIV遺伝子の不活性化について試験されるだろう。
【化6】

【0131】
MCP1−Arp、HBVウィルスの仮想的RNA結合ドメインと融合したヒトMCP1/CCL2複合体、のタンパク質配列を、図5および以下の配列番号11に示す。ある態様において、複合体は、例えばオリゴヌクレオチドおよびmiRNA/siRNAをCCR−2発現細胞に送達するために用いられる。スペーサー配列(GGGGSGGG;配列番号8)をMCP−1とHBVウィルスの仮想的RNA結合ドメインとの間に挿入した。
【0132】
ある好ましい態様において、MCP1−Arpは、癌の進行および転移と戦うために、M2マクロファージによって発現される免疫制御遺伝子の不活性化について試験されるだろう。
【化7】

【0133】
例3:インターロイキン−10のアンチセンスオリゴマーはIL−10発現を阻害する
本明細書に記載の複合体の一部としてインターロイキン−10(IL−10)に対するアンチセンスオリゴマーを用いた実験もまた行った。上述の同様のタイプの実験において、本明細書に記載の複合体中のIL−10に対するアンチセンスオリゴマーは、IL−10発現の阻害に効果的であることが見出された。
【0134】
例4:siRNAノックダウン
siRNAノックダウン実験を行った。CCR4発現はまた、ヒトT細胞白血球およびATLLにより発現され、疾患の不幸な転帰を伴う。図6に示されるように、上述のように、ヒトT細胞腫瘍におけるCCR4発現を不活性化するために、TARC−Arpを用いてsiRNAを送達した。
【0135】
IL−6は、様々なヒト疾患および癌に関連する制御性サイトカインである。腫瘍は、免疫学的監視から逃れるために、IL−6を発現することが知られている。図7は、TARC−Arpを用いたIL−6に対するsiRNAの送達はにより、乳癌細胞においてIL−6発現が無効化されることを実証する。
【0136】
好適には、記載された方法を用いて、すべてのケモカインレセプターをターゲティングする複合体が産生され、したがって目的の遺伝子、これに限定するものではないが、例えば、サイトカインおよびシグナリング分子、HIV、HCVまたはTB、サルモネラなどの細胞内病原体の遺伝子、の不活性化のために複合体を用いることができるだろう。かかる戦略は、癌、自己免疫疾患、および慢性の感染の処置および予防における臨床的意味合いを有するだろう。加えて、本明細書に記載の複合体は、siRNAを初代細胞に効果的に形質導入できるため、リサーチツールとして好適に用いられる。
【0137】
例5:製造
ある例において、複合体の製造を、酵母からの効果的な分泌を産生するために、酵母用に改変される。結果として、これは産生の簡易化および収量の増大を可能にする。
【0138】
他の態様
前述の記載から、本明細書に記載の発明に、様々な用途および状態に適応するように変化および改変を行ってよいことは明らかだろう。かかる例もまた以下のクレームの範囲内である。
本明細書の可変物の、任意の定義における要素の列挙の参照は、任意の単一の要素または列挙した要素の組み合わせ(またはサブコンビネーション)としてのその可変物の定義を含む。本明細書の態様の参照は、任意の単一の態様または任意の他の態様またはその一部分との組み合わせを含む。
本明細書におけるすべての特許および刊行物は、各独立した特許および刊行物が特異的におよび個々に参照として組み込まれるように、同様の範囲で参照として本明細書に組み込まれる

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチドを含む複合体であって、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを含む、前記複合体。
【請求項2】
ターゲティングポリペプチドが、核酸結合部分をさらに含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
核酸結合部分が、核酸結合ドメインを含む、請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
核酸結合ドメインが、プロタミンまたはその断片を含む、請求項2に記載の複合体。
【請求項5】
プロタミンが、ヒトプロタミンである、請求項4に記載の複合体。
【請求項6】
核酸結合部分が、ウィルス抗原を含む、請求項2に記載の複合体。
【請求項7】
ウィルス抗原が、ウィルスカプシド抗原である、請求項6に記載の複合体。
【請求項8】
ウィルスカプシド抗原が、gp120、gp160およびgp41からなる群から選択される、請求項7に記載の複合体。
【請求項9】
阻害性核酸が、一本鎖DNAまたはRNAである、請求項1に記載の複合体。
【請求項10】
阻害性核酸が、二本鎖DNAまたはRNAである、請求項1に記載の複合体。
【請求項11】
核酸結合部分およびターゲティングポリペプチドが、スペーサーペプチドによって分離されている、請求項2に記載の複合体。
【請求項12】
スペーサーペプチドが、配列番号5(SDGGGSGGGGSLE)を含む、請求項11に記載の複合体。
【請求項13】
スペーサーペプチドが、配列番号6(DGGGSGGGGSL)を含む、請求項11に記載の複合体。
【請求項14】
スペーサーペプチドが、配列番号7(GGGSGGGG)を含む、請求項11に記載の複合体。
【請求項15】
スペーサーペプチドが、配列番号8(GGGGSGGGG)を含む、請求項11に記載の複合体。
【請求項16】
二本鎖RNAが、RNA干渉の標的と相補的な1つの鎖および、RNA干渉の標的と同一の別の鎖を含む、請求項10に記載の複合体。
【請求項17】
阻害性核酸が、短鎖干渉核酸(siNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)および短鎖ヘアピンRNA(shRNA)からなる群から選択される、請求項1に記載の複合体。
【請求項18】
細胞表面レセプターリガンドが、サイトカイン、ケモカイン、抗体および成長因子からなる群から選択される、請求項1に記載の複合体。
【請求項19】
ケモカインが、CCL4、TARC/CCL17、MCP−1/CCL2およびRANTES/CCL5からなる群から選択される、請求項18に記載の複合体。
【請求項20】
阻害性核酸が、少なくとも2つの二本鎖RNAを含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項21】
阻害性核酸が、剤をさらに含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項22】
剤が、標識である、請求項21に記載の複合体。
【請求項23】
標識が、放射線標識または蛍光標識から選択される、請求項22に記載の複合体。
【請求項24】
剤が、治療剤である、請求項21に記載の複合体。
【請求項25】
1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチドを含む複合体であって、ここでターゲティングポリペプチドは、核酸結合部分をさらに含み、配列番号1または配列番号3として記載されたヌクレオチド配列によってコードされる、前記複合体。
【請求項26】
ターゲティングポリペプチドおよび核酸結合部分を含む、配列番号2、配列番号4、配列番号9、配列番号10および配列番号11からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドによってコードされる複合体。
【請求項27】
阻害性核酸をさらに含む、請求項25または26に記載の複合体。
【請求項28】
1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチドが、リンカーによって連結されている、請求項1に記載の複合体。
【請求項29】
1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチドを含む融合分子であって、ここでターゲティングポリペプチドは、細胞表面レセプターリガンドを含む、前記融合分子。
【請求項30】
ターゲティングポリペプチドが、リンカーをさらに含む、請求項29に記載の融合分子。
【請求項31】
リンカーが、核酸結合ドメインを含む、請求項29に記載の融合分子。
【請求項32】
核酸結合ドメインが、プロタミン、またはその断片を含む、請求項31に記載の融合分子。
【請求項33】
プロタミンが、ヒトプロタミンである、請求項32に記載の融合分子。
【請求項34】
リンカーが、ウィルス抗原を含む、請求項30に記載の融合分子。
【請求項35】
ウィルス抗原が、ウィルスカプシド抗原である、請求項34に記載の融合分子。
【請求項36】
ウィルスカプシド抗原が、gp120、gp160およびgp41からなる群から選択される、請求項35に記載の融合分子。
【請求項37】
阻害性核酸が、一本鎖DNAまたはRNAである、請求項29に記載の融合分子。
【請求項38】
阻害性核酸が、二本鎖DNAまたはRNAである、請求項29に記載の融合分子。
【請求項39】
核酸結合部分およびターゲティングポリペプチドが、スペーサーペプチドによって分離されている、請求項29に記載の融合分子。
【請求項40】
スペーサーペプチドが、配列番号5(SDGGGSGGGGSLE)を含む、請求項39に記載の融合分子。
【請求項41】
スペーサーペプチドが、配列番号6(DGGGSGGGGSL)を含む、請求項39に記載の融合分子。
【請求項42】
スペーサーペプチドが、配列番号7(GGGSGGGG)を含む、請求項39に記載の融合分子。
【請求項43】
スペーサーペプチドが、配列番号8(GGGGSGGGG)を含む、請求項39に記載の融合分子。
【請求項44】
二本鎖RNAが、RNA干渉の標的と相補的な1つの鎖および、RNA干渉の標的と同一の別の鎖を含む、請求項36に記載の融合分子。
【請求項45】
阻害性核酸が、短鎖干渉核酸(siNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)および短鎖ヘアピンRNA(shRNA)からなる群から選択される、請求項29に記載の融合分子。
【請求項46】
細胞表面レセプターリガンドが、サイトカイン、ケモカイン、抗体および成長因子からなる群から選択される、請求項29に記載の融合分子。
【請求項47】
ケモカインが、CCL4、CCL5、CCL2およびCCL17からなる群から選択される、請求項46に記載の融合分子。
【請求項48】
阻害性核酸が、少なくとも2つの二本鎖RNAを含む、請求項29に記載の融合分子。
【請求項49】
阻害性核酸が、剤をさらに含む、請求項29に記載の融合分子。
【請求項50】
剤が、標識である、請求項49に記載の融合分子。
【請求項51】
標識が、放射線標識または蛍光標識から選択される、請求項50に記載の融合分子。
【請求項52】
剤が、治療剤である、請求項50に記載の融合分子。
【請求項53】
ターゲティングポリペプチドおよび核酸結合部分を含む融合分子であって、ここでターゲティングポリペプチドおよび核酸結合ドメインが、配列番号1または配列番号3として記載されたヌクレオチド配列によってコードされる、融合分子。
【請求項54】
ターゲティングポリペプチドおよび核酸結合部分を含む融合分子であって、配列番号2、配列番号4、配列番号9、配列番号10および配列番号11からなる群から選択されるポリペプチドによってコードされる、前記融合分子。
【請求項55】
阻害性核酸をさらに含む、請求項53または54に記載の融合分子。
【請求項56】
請求項53に記載の融合分子を含むベクター。
【請求項57】
ベクターが、哺乳類細胞中での発現に好適なプロモーターを含む、請求項56に記載のベクター。
【請求項58】
請求項56に記載のベクターを含む細胞。
【請求項59】
細胞中の遺伝子発現のレベルを減少させる方法であって、1または2以上の標的遺伝子の発現を減少させる1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチドを含む複合体であって、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを含む、前記複合体と細胞とを接触させ、それにより細胞中の遺伝子発現のレベルを減少させることを含む、前記方法。
【請求項60】
阻害性RNA分子を細胞内に送達する方法であって、該方法が、1または2以上の二本鎖RNAおよびターゲティングポリペプチドを含む複合体であって、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを含む、前記複合体と細胞とを接触させ、それにより阻害性RNA分子を細胞内に送達することを含む、前記方法。
【請求項61】
遺伝子発現のレベルを減少させることによって、対象における疾患または障害を治療または予防する方法であって、1または2以上の標的遺伝子の発現を低減させる1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチドを含む複合体であって、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを含む、前記複合体と細胞とを接触させ、それにより対象における疾患または障害を治療または予防することを含む、前記方法。
【請求項62】
遺伝子発現のレベルを減少させることによって、対象における癌を治療または予防する方法であって、1または2以上の標的遺伝子の発現を低減させる1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチドを含む複合体であって、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを含む、前記複合体と細胞とを接触させ、それにより対象における癌を治療または予防することを含む、前記方法。
【請求項63】
癌が、白血病である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
癌が、乳癌である、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
追加の剤での治療をさらに含む、請求項61または62に記載の方法。
【請求項66】
1または2以上の剤を標的細胞に送達する方法であって、1または2以上の阻害性核酸、ここで1または2以上の阻害性核酸は剤とカップリングされている、およびターゲティングポリペプチド、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを含む、を含む複合体と細胞とを接触させ、それにより剤を標的細胞に送達することを含む、前記方法。
【請求項67】
剤が、治療剤である、請求項61〜66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
剤が、標識である、請求項61〜66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
イメージング剤を標的細胞に送達する方法であって、1または2以上の阻害性核酸、ここで1または2以上の阻害性核酸はイメージング剤とカップリングされている、およびターゲティングポリペプチド、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを構成する、を含む複合体と細胞とを接触させ、剤を標的細胞に送達することを含む、前記方法。
【請求項70】
方法が、予後を決定するために用いられる、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
方法が、治療コースを決定するために用いられる、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
ターゲティングポリペプチドが、核酸結合部分をさらに含む、請求項61〜66または69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
核酸結合部分が、核酸結合ドメインを含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
核酸結合ドメインが、プロタミンまたはその断片を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
プロタミンが、ヒトプロタミンである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
核酸結合部分が、ウィルス性抗原を含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
ウィルス性抗原が、ウィルスカプシド抗原である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
ウィルスカプシド抗原が、gp120、gp160およびgp41からなる群から選択される、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
阻害性核酸が、一本鎖DNAまたはRNAである、請求項61〜66または69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
阻害性核酸が、二本鎖DNAまたはRNAである、請求項61〜66または69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
二本鎖RNAが、RNA干渉の標的と相補的な1つの鎖および、RNA干渉の標的と同一の別の鎖を含む、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
阻害性核酸が、短鎖干渉核酸(siNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)および短鎖ヘアピンRNA(shRNA)からなる群から選択される、請求項80に記載の複合体。
【請求項83】
細胞表面レセプターリガンドが、サイトカイン、ケモカイン、抗体および成長因子からなる群から選択される、請求項61〜66または69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
ケモカインが、CCL17TARC/CCL17、MCP−1/CCL2およびRANTES/CCL5からなる群から選択される、請求項83に記載の複合体。
【請求項85】
阻害性核酸が、少なくとも2つの二本鎖RNAをさらに含む、請求項61〜66または69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
阻害性核酸が、剤をさらに含む、請求項61〜66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
1または2以上の二本鎖RNAが、剤をさらに含む、請求項60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
剤が、標識である、請求項86または87に記載の方法。
【請求項89】
標識が、放射線標識または蛍光標識から選択される、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
剤が、治療剤である、請求項86または87に記載の方法。
【請求項91】
剤が、細胞毒性剤である、請求項86または87に記載の方法。
【請求項92】
ターゲティングポリペプチドおよび核酸結合部分が、配列番号1および配列番号3からなる群から選択されるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項61〜66または69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
細胞が、培養細胞である、請求項61〜66または69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
細胞が、対象動物の一部である、請求項61〜66または69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
細胞が、免疫細胞、上皮細胞、内皮細胞、心臓細胞、神経細胞、肝細胞、リンパ球および筋細胞からなる群から選択される、請求項61〜66または69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
細胞が、悪性細胞である、請求項61〜66または69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
細胞が、白血病細胞である、請求項61〜66または69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
細胞が、幹細胞である、請求項61〜66または69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
対象が、哺乳類である、請求項61〜66または69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
対象が、ヒトである、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
対象が、新生組織形成に罹患している、請求項61〜66または69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
対象が、白血病に罹患している、請求項61〜66または69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
対象が、免疫疾患または免疫障害に罹患している、請求項61〜66または69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
方法が、転移の診断に用いられる、請求項61〜66または69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
対象における疾患または傷害を治療または予防するための医薬組成物であって、1または2以上の阻害性核酸およびターゲティングポリペプチドを含み、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを含み、それにより対象における疾患または障害を治療または予防する、前記医薬組成物。
【請求項106】
ターゲティングポリペプチドおよび核酸結合部分が、配列番号1および配列番号3からなる群から選択されるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項105に記載の医薬組成物。
【請求項107】
追加の剤をさらに含む、請求項105に記載の医薬組成物。
【請求項108】
1または2以上の剤を標的細胞に送達するための医薬組成物であって、1または2以上の阻害性核酸、ここで1または2以上の阻害性核酸は剤とカップリングされている、およびターゲティングポリペプチド、ここでターゲティングポリペプチドは細胞表面レセプターのリガンドを含む、を含み、それにより対象における疾患または障害を治療または予防する、前記医薬組成物。
【請求項109】
剤が、治療剤である、請求項106または108に記載の医薬組成物。
【請求項110】
請求項1〜28のいずれか一項に記載の複合体、および使用説明書を含むキット。
【請求項111】
請求項32〜55のいずれか一項に記載の融合分子、および使用説明書を含むキット。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1C】
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【公表番号】特表2011−520424(P2011−520424A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505154(P2011−505154)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/040607
【国際公開番号】WO2009/129281
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(507269131)アメリカ合衆国 (2)
【氏名又は名称原語表記】GOVERNMENT OF THE UNITED STATES OF AMERICA, as represented by THE SECRETARY, DEPARTMENT OF HEALTH AND HUMAN SERVICES
【Fターム(参考)】