説明

除塵装置

【課題】 ノズルから吹き出したエアの勢いを強めて到達距離を伸ばし塵埃の除去効率を高めるとともに、ノズル長手方向全長にわたって安定した強い均一なエアを噴出して被清掃体全面をむらなく確実に除塵可能な除塵装置を提供する。
【解決手段】
高圧エアが供給される給気チャンバ20と、被清掃体Pが搬送される搬送通路60と、該搬送通路60の搬送方向とほぼ直角な方向を長手方向として前記給気チャンバ20に連通するスリット状のノズル16と、前記給気チャンバ20とノズル16間を連通するエア通路15とを有する除塵装置2において、前記エア通路15は、長手方向に直角な断面において、前記給気チャンバ20側の開口部14からエア通路15端部の前記ノズル16までの間で複数段に縮流される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレート(液晶基板用ガラス板、樹脂板、プリント基板等)あるいはウェブ(可撓性のフィルムや紙等)の製造ラインに設置される除塵装置に関し、特にノズルから噴射された高速気流で被清掃体表面に付着した塵埃を吹き飛ばす除塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶基板などのプレート製造ラインにおいて、搬送されるプレート表面に塵埃が付着したまま後の工程に送られると、その塵埃が原因で不良品となる可能性があり、歩留りを悪化させる。そこでプレート搬送工程においてプレート表面をクリーニングして付着した塵埃を表面から取り除き、清浄な状態でプレートを後の工程に送ることが必要である。
【0003】
この除塵装置としては、送りローラによって搬送されるプレートの上面側及び下面側に、スリット状の吹出しノズルをプレート幅方向に延設し、さらに吹出しノズルに、ブロアからの高圧エアが流入する給気チャンバを接続し、吹出しノズルを介して高速エアをプレート表面に吹き付け、プレート上に付着した塵埃を吹き飛ばすようにしたプレート清掃装置が既に知られている。(例えば特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、このプレート清掃装置は、給気チャンバから吹出しノズルへの空気の流入過程で大きな圧力損失があり、吹出しノズルから吹き出したエアの勢いが弱くなるとともに、到達距離が短くなる。このため、塵埃の除去効率が低下する。また、ノズル長手方向(プレート幅方向)に沿った噴出圧力の分布ムラが生じやすくなって、均一で安定したクリーニング作用が得られない。
【0005】
【特許文献1】特公平4−6432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来装置のこのような現状に鑑み、ノズルから吹き出したエアの勢いを強めて到達距離を伸ばし塵埃の除去効率を高めるとともに、ノズル長手方向全長にわたって安定した強い均一なエアを噴出してプレート全面をむらなく確実にクリーニング可能な除塵装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、高圧エアが供給される給気チャンバと、被清掃体が搬送される搬送通路と、該搬送通路の搬送方向とほぼ直角な方向を長手方向として前記給気チャンバに連通するスリット状のノズルと、前記給気チャンバとノズル間を連通するエア通路とを有する除塵装置において、前記エア通路は、長手方向に直角な断面において、前記給気チャンバ側の開口部からエア通路端部の前記ノズルまでの間で複数段に縮流されることを特徴とする除塵装置を提供する。
【0008】
請求項2の発明は請求項1の発明において、前記ノズルの噴射方向は、被清掃体面に対し垂直方向であることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記長手方向に沿って前記ノズルの両側に吸込チャンバに連通する吸込口を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの発明において、前記ノズルは、前記搬送通路の上下両側に設けられたことを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項3又は4の発明において、前記吸込チャンバはその側面に形成された複数の連通孔を通して前記吸込口と連通し、該吸込チャンバに吸込ダクトが接続され、前記複数の連通孔は該吸込ダクトの接続口から遠いほど間隔が密に又は開口面積が大きく形成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかの発明において、前記給気チャンバに給気ダクトが接続され、該給気ダクトの接続口から給気チャンバ内へのエア導入方向は、前記エア通路の開口部以外の方向であることを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項6の発明において、クリーンルーム内に設置された除塵装置であって、前記給気ダクトは給気ブロアに接続され、前記吸込ダクトは前記給気ブロアより送風量が大きい還気ブロアに接続され、クリーンルーム内のエアを前記給気ブロアによりHEPAフィルタを介して前記給気チャンバに圧送し、前記吸込チャンバ内のエアを前記還気ブロアによりHEPAフィルタを介してクリーンルーム内に戻すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、給気チャンバとノズルとの間を連通するエア通路は、給気チャンバ側の開口部とノズルとの間で複数段で縮流されるため、給気チャンバ内の高圧エアはノズルに向かうにつれて大きな圧力損失を伴うことなく徐々に整流されるとともに縮流されて圧力が高まり、吹出しノズル出口では高い噴射圧を確保することができる。このような多段縮流型の吹出しノズルを用いることにより、ノズルから被清掃体表面に向けて噴射されるエアの勢いが強くなり、塵埃の除去作用が高まる、また、噴出の勢いが強いため到達距離が長くなる。この結果、被清掃体表面に対する噴射エアの圧力分布がノズルの長手方向に沿って全体的に強くなるとともに均一化し、被清掃体の全表面にわたって安定してムラなく高い除去効率をもって塵埃を除去できる。
【0015】
請求項2の発明によれば、被清掃体面に対し垂直方向からエアを吹き付けるため、吹き付け力がさらに強くなり塵埃除去効率がさらに高まるとともに、斜めに吹き付けた場合に比べ吹き付け下流側の乱流や負圧誘引作用による被清掃体のバタつきや吸込作用が抑制され安定した状態で塵埃を除去できる。
【0016】
請求項3の発明によれば、被清掃体面に対する垂直吹出しノズルの両側に吸込み口を設けたため、エアにより吹き飛ばされた塵埃粒子を周囲に飛散させることなく噴射したエアとともに効率よく吸引して処理できる。
【0017】
請求項4の発明によれば、搬送通路に沿って搬送中の被清掃体に対し、上下両面を同時に効率よく清掃できる。
【0018】
請求項5の発明によれば、吸込チャンバに設けた連通孔が吸込ダクトの接続口から遠いほど間隔が密に又は開口面積が大きく形成されるため、接続口に近い位置と遠い位置との間での吸込量が均一化し被清掃体の全面にわたって均一な除塵効果が得られる。
【0019】
請求項6の発明によれば、給気ダクトの接続口から給気チャンバ内に吹き込まれる高圧エアは、その流入方向が直接ノズル方向に向かずに給気チャンバ内に一旦滞留した後開口部を通してノズルに流れる。従って、給気ブロアから圧送される給気の流速による動圧がノズルの一部に向って局部的に強くならず給気チャンバ内で動圧が抑えられ、チャンバ内が高い静圧となった均一な状態でノズルに向かって流れる。このため、ノズルからの噴出圧力が局部的に強くなることはなく、ノズル全長にわたって均一な勢いでエアが噴出され、被清掃体の全面にわたって均一な除塵効果が得られる。
【0020】
請求項7の発明によれば、高圧の給気ブロアからHEPAフィルタを通して給気チャンバにクリーンエアが導入されノズルから高圧エアを吹き出すことにより高い除塵効率で被清掃体を清掃できる。また、吸込側に低圧、大風量の還気ブロアを設けたため、被清掃体面に噴射された高圧エアを塵埃粒子とともに周囲に飛散させることなく効率よく回収できる。
【0021】
また、高圧給気ブロアと別に吸込側に大風量の低圧還気ブロアを設けて吸引したエアを一旦クリーンルーム内に戻すことにより、高圧給気ブロア側のエアの圧縮熱及びモータ排熱による吹出しエアの温度上昇を抑え被清掃体への熱的影響を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明に係る装置の実施例を説明する。図1は、搬送される清掃対象(被清掃体)であるプレートの上下に清掃部を配置した除塵装置の気流系統図である。図1において、1はクリーンルーム、2はクリーンルーム1内に設置される除塵装置、Pは、清掃対象となる例えば液晶基板等のプレートである。搬送通路60に沿って矢印A方向に搬送されるプレートPに対し、その上下に清掃部3、3’が対向して配置される。搬送通路60はローラコンベア(不図示)からなり、プレート上下両面を同時に清掃可能である。清掃部3、3’はその配置を上下逆にしただけで基本的に同一構造ではあるが、相違点は後述する。
【0023】
清掃部3、3’は、高速エアをプレートPに対して吹き出し、プレートP上に付着している塵埃をそのプレート表面から剥離させるための高圧の吹出し部4と、塵埃と共にプレート周囲の空気を装置内に取り込むための負圧の吸込み部5から構成される。
【0024】
クリーンルーム1内の空気を給気ブロア6から、給気ダクト7及びそこから分岐した給気ダクト7a,7bを介して上下の吹出し部4に圧送する。高圧エアは、給気ダクト7上に設けたHEPAフィルタ8によりクリーンエアの状態で両清掃部3、3’の吹出し部4に供給される。吹出し部4によりプレートPに向かって噴射された高速エアは、プレートPに付着した塵埃をその風圧で剥離させた後、塵埃と共に吸込み部5に吸い込まれる。吸込み部5は吸込ダクト9を介して還気ブロア10に接続され、吸込み部5を負圧状態にして、プレートP周囲のエアを吸引する。給気ブロア6として、例えば高静圧リングブロア(商品名)を用い、ノズル圧力を高めて微細ダストの除去効率の向上を図る。還気ブロア10としては、低消費電力で効率よく運転可能な低圧ターボブロアを用いる。尚、11は吸引された空気より塵埃を除去するプレフィルタ、12は同様にクリーンルーム1に空気を放出するにあたり、さらに細かい微粒子を除去するためのHEPAフィルタである。この除塵装置2は、吹出・吸引側夫々にブロア6、10を備えたオールフレッシュタイプである。
【0025】
図2は、図1の清掃部3、3’の構造を示す断面図である。以下、上側の清掃部3について説明するが、下側の清掃部3’についても同様である。各清掃部3、3’に共通な構成要素は同一番号を付す。
【0026】
分岐した給気ダクト7aは、長箱状の給気チャンバ13に接続される。給気チャンバ13は、図2の紙面と垂直を成すプレート幅方向(搬送方向とほぼ直角な方向)を長手方向として延設される。
給気チャンバ13の下面に開口部14が形成される。この開口部14の下側にエア通路15が形成される。エア通路15の下端にノズル16が備わる。ノズル16は清掃対象のプレート幅方向を長手方向としてスリット状に形成される。エア通路15も同様にプレート幅方向を長手方向として延設される(図はエア通路15の長手方向に直角な断面形状を示している)。なお、このエア通路15及びその先端部のノズル16の長手方向は、搬送方向と完全に直角な方向でなくてもよく、幾分斜めに設けてもよい。
【0027】
エア通路15は、図2及び図3の断面図で示されるように、長手方向とほぼ直角な方向(プレート搬送方向)の幅寸法(間隔)が一定となる等間隔部17a,17bを介してノズル16の部分を含めると3段階で縮流される。ノズル16とこれに連続する等間隔部17bの間、等間隔部17aと17bの間及び等間隔部17bと給気チャンバ13の間(エア通路15の開口部14)には、エア通路幅を徐々に狭めて縮流し圧力損失を抑えるためのテーパ部18が形成される。ノズル16の噴射方向はプレートPの表面に対し垂直である。ノズル16の長手方向に沿って、両側に吸込口19が形成される。給気チャンバ13の両側に吸込チャンバ20が備わる。吸込口19は、吸込チャンバ20の側面に設けた連通孔21を通して吸込チャンバ20と連通する。吸込チャンバ20の長手方向両端部に前述(図1)の吸込ダクト9が接続される。連通孔21は前記長手方向に沿って複数個形成され、後述(図4参照)のように、吸込ダクトの接続口(吸込チャンバ20の両端面)から遠いほど(すなわち、中央部に近いほど)間隔が密に形成される。尚、図中RはプレートPを搬送するローラであり、図示しない駆動手段によって回転される。
【0028】
図3は、エア通路周囲の拡大図である。矢印Bは、給気チャンバ13から開口部14を通してノズル16へと流れる高速エアの吹出し方向である。矢印Cは前記長手方向に直角なエア通路幅方向を示す。
【0029】
給気チャンバ13は、開口部14のテーパ部18を介して1段目の等間隔部17aと連通する。1段目の等間隔部17aは、テーパ部18を介して2段目の等間隔部17bと連通する。2段目の等間隔部17bは、テーパ部18を介してノズル16と連通する。
【0030】
図4は、プレート搬送方向から見た除塵装置の断面図であり、図2のIV−IV線に沿った断面を示す。矢印DはプレートPの幅方向を示す。
【0031】
プレートPの上側の給気チャンバ13に対し、その両端面に給気ダクト7aが接続される。この給気チャンバ13の両端面の接続口22からの給気流出方向は水平方向である。したがって、給気ダクト7aから導入される給気は、直接チャンバ下面のノズル16に連通する開口部14に向かうことはない。したがって、給気ダクト7aから噴出する動圧の大きい給気がそのままノズルに達して局部的にノズルの噴出圧力を強くすることはない。
【0032】
一方、プレートPの下側の給気チャンバ13に対しては、給気ダクト7bは給気チャンバ13の端部下面からチャンバ内部に導入される。これは、チャンバ両端部外側でのダクト同士の干渉を避けるためである。給気チャンバ内に導入された各給気ダクト7bの端部は内側に屈曲したエルボダクトである。したがって、この給気ダクト7bからチャンバ内に供給される給気は、上記上側の給気ダクト7aと同様に、直接チャンバ上面のノズル16に連通する開口部14に向かうことはない。
【0033】
吸込チャンバ20(図2参照)の両端面に吸込ダクト9が接続される。吸込みチャンバ20の側面には、プレート幅方向Dに沿って多数の連通孔21が形成される。これらの連通孔21は、チャンバ両端面の吸込ダクト9の接続口23から離れるにしたがって、すなわち中央部に近いほど、間隔が密に形成される。これにより、プレート幅方向全体にわたって均一な吸込力が得られる。なお、このように接続口23から離れるにしたがって間隔を密に形成する構造に代えて、接続口23から離れるにしたがって連通孔21の開口面積を大きくしてもよい。
【0034】
図5は、除塵装置における給気チャンバ13の端部近傍の外観斜視図であり、上述した給気ダクト7a、7bの位置関係を示している。
【0035】
上記図4で説明したとおり、プレートPの上下の給気チャンバ13,13には、それぞれその両端部に給気ダクト7a,7bが接続される。上側の給気チャンバ13には給気ダクト7aがチャンバ端面に接続される。下側の給気チャンバ13には給気ダクト7bがチャンバ下面から内部に導入され接続される。各給気チャンバ13の両側には吸込チャンバ20が設けられる。各吸込みチャンバ20の給気チャンバ側の側面に複数の連通孔21が形成される。連通孔21は、前述のように吸込チャンバ20の端面から中央に向かうほど間隔が密に形成される。
【0036】
図6は本発明の別の実施形態の図1に対応する全体系統図である。
この例は、1台の循環ブロア62により高圧エアが給気ダクト7及び吸込ダクト9内を循環するクローズドタイプの除塵装置である。尚、本図において、図1と同様な構成要素は同一番号を付す。このクローズドタイプでは吸込み側のブロアが省略され、清掃部3、3’の吸込み部5に接続された吸込ダクト9は、循環ブロア62の吸込側にそのまま接続される。給気の一部は、HEPAフィルタ8の下流側で、給気ダクト7から分岐した開放ダクト7c上の吸込量調整弁61を介してクリーンルーム1内に放出される。これにより、プレートPの上下両面において、給気量より吸込量が大きくなる。したがって、プレートPに噴射された高速エア及び除去された塵埃が周囲に飛散することなく吸込側に吸引される。循環ブロア62は、図1の給気ブロア6と同じ高静圧給気ブロアである。
【0037】
図7は本発明のさらに別の実施形態の図1に対応する全体系統図である。
この例は、1台の循環ブロア63により、エアが給気ダクト7及び吸込ダクト9内を循環するクローズドタイプの除塵装置である。循環ブロア63は、図1の還気ブロア10と同じ低圧ターボブロアである。
【0038】
この例では、2個のノズル64を備え、ノズル同士を相互に斜め内側に向けて斜め方向からプレートP上に高速エアを吹きつけるとともに、両ノズル64,64の間に吸込口65を設けて吸込ダクト9に連通させている。ノズル64は、前述の図2、図3で説明したとおり、複数段の等間隔部及びテーパ部からなる多段縮流型のノズルである。また、吹出し部4や吸込み部5を構成する給気チャンバ及び吸い込みチャンバの構成についても、前述の図4及び図5のものと同様である。
【0039】
図8は本発明のさらに別の実施形態の要部構成図である。
この例は、清掃対象として可撓性の連続帯状材からなるウェブ材に対し本発明の除塵装置を適用したものである。プラスチックフィルムあるいは紙材等のウェブ材67がドラム66の円弧外表面の搬送通路に沿って矢印Eのように搬送される。ドラム66の上側に本発明の除塵装置2が備わり、ウェブ材67の上面から塵埃を除去する。除塵装置2の構成は、前述の例と同様である。すなわち、多段縮流型のノズル16から高速エアを吹出し、ノズル両側の吸込口19,19から吹出したエア及び周囲のエアとともに塵埃粒子を吸引にして吸込チャンバ20に送る。
【0040】
図9は本発明に係る多段縮流ノズルの圧力測定試験の結果を示す。試験体のノズルは、長手方向の長さ(スリット長)が700mmで、(1)縮流なしノズル及び(2)1段縮流ノズルを比較例とし、(3)3段縮流ノズルを本発明の実施例として測定した。
【0041】
試験方法は、各試験体(1)(2)(3)のノズル出口部(距離0mm)の圧力を揃え(11.1kPa)、ノズルから吹出されたエアの動圧をピトー管で測定した。各試験体についてノズルからの距離1.5mm及び3mmにおける動圧を測定した。各試験体のノズル長手方向においてa,b,cの3箇所で測定した。
【0042】
(A)は3ヶ所の測定結果の表であり、(B)はその平均値の表である。(C)は(B)をグラフ化したものである。(A)から分かるように、(3)の実施例は(1)(2)の比較例に比べ3箇所の測定位置a,b,cについて圧力分布が均一化している。
【0043】
(B)及び(C)から分かるように、(3)の3段縮流とすることにより、ノズルからの距離が1.5mm及び3mmのいずれの場合についても、(1)の縮流なし及び(2)の1段縮流に比べ圧力が高いことが確認できた。これにより、3段縮流のノズルは到達距離が長くなることが分かる。すなわち、(C)に示すように、縦軸の動圧をある一定に揃えて、横軸のノズルからの距離(到達距離)についてみると、(3)3段縮流が(2)1段縮流及び(1)縮流なしよりも長いことが分かる。
【0044】
図10は本発明に係る多段縮流ノズルの除塵試験の結果を示す。
試験方向は、予め純水で洗浄したガラス素基板上に粒径5μmのガラスビーズを散布し、ノズルによる素基板のクリーニングの前後でのビーズの数をカウントして除去率を算出する。これを(1)従来型ノズルと(2)本発明ノズルについて行って比較した。従来型ノズル(1)は、1段縮流ノズルであり、このノズルを図7に示すように、基板面中央に対し斜め方向両側に設け、中央の吸込口からエアを吸引する構成である。本発明ノズル(2)は、3段縮流ノズルであり、このノズルを図1に示すように、基板面中央に対し垂直に設け、その両側からエアを吸引する構成である。
【0045】
まず、ガラスビーズ散布前の素基板上にあるガラスビーズに相当する傷等の数aをカウントする。これは、素基板上の一定範囲を画像検査装置で検査することにより行う。
【0046】
その後、素基板上にガラスビーズを散布する。そして散布したガラスビーズ数bを画像検査装置でカウントする。
その後、ガラスビーズを散布した基板をクリーンルーム内に10時間放置する。その後、ノズルからエアを吹付けて基板面をクリーニングする。そして、クリーニング後の基板面上のガラスビーズ数cを画像検査装置でカウントする。
【0047】
ビーズ除去率Qは以下の式で表される。
Q={1−(c−a)/(b−a)}×100
【0048】
(A)は測定結果を示す。この測定結果は、多数回行った試験の代表的な測定結果である。この測定条件は、吹出圧力が6.0kPaで、ノズルと基板間の距離が3.0mmである。表から分かるように、本発明ノズルは従来型ノズルに比べ除去率Qが向上している。
【0049】
(B)は(A)と同じ測定条件で多数回行った試験結果の平均値のグラフである。グラフが示すように、ビーズ散布直後及びビーズ散布10時間後いずれの場合も、本発明ノズル(2)の除去率が高い。
【0050】
(C)は本発明ノズル(2)の測定条件を吹出圧力12kPa、ノズル‐基板間距離1.5mmとしたときの測定結果である。本発明の多段縮流ノズルは、ノズル全長に沿って圧力分布が均一で安定してムラなくエアを噴出できるため、従来型ノズルではできない高圧まで吹出圧力を高められる。そこで本発明の3段縮流ノズルを用いて吹出圧力を12kPaにするとともに、ノズル−基板間距離を1.5mmとして除塵試験を行った。その結果が(C)である。なお、従来型ノズルの測定条件は(A)(B)ともに同じである。
【0051】
グラフから分かるように、本発明ノズル(2)によれば、ビーズ散布直後及びビーズ散布10時間後ともに非常に高い除去率が得られる。通常は、従来型ノズルの測定結果に示されるように、ビーズ散布後10時間後には除去率が大きく低下する。これは、時間経過とともに、ビーズが大気中の水分や油分を吸収し、基板との密着性が高くなって除去しにくくなるためである。しかし、本発明の多段縮流ノズルを用いれば、吹出圧力を高められるため、基板に付着してから長時間経過した塵埃や微粒子であっても、高い除去率で確実に除去することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の利用例として、除塵装置以外にも、噴射される流体に高い噴射圧と指向性が要求されるような流体噴射装置の噴射ノズルに対しても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明による除塵装置の気流系統図。
【図2】図1の除塵装置の構造を示す部分的断面図。
【図3】除塵装置の吹出しノズル周囲の部分拡大断面図。
【図4】図2のIV−IV線に沿った断面図。
【図5】除塵装置の吹出しダクトの端部断面を含む外観斜視図。
【図6】本発明による除塵装置の別の実施形態の気流系統図。
【図7】本発明による除塵装置のさらに別の実施形態の気流系統図。
【図8】本発明による除塵装置のさらに別の実施形態の気流系統図。
【図9】本発明に係る除塵装置の圧力試験結果の図。
【図10】本発明に係る除塵装置の除塵試験結果の図。
【符号の説明】
【0054】
1:クリーンルーム、2:除塵装置、3,3’:清掃部、4:吹出し部、5:吸込み部、6:給気ブロア、7,7a,7b:給気ダクト、7c:開放ダクト、8:HEPAフィルタ、9:吸込ダクト、10:還気ブロア、11:プレフィルタ、12:HEPAフィルタ、13:給気チャンバ、14:開口部、15:エア通路、16:ノズル、17a,17b:等間隔部、18:テーパ部、19:吸込口、20:吸込チャンバ、21:連通孔、22,23:接続口、60:搬送通路、61:吸込量調整弁、62,63:循環ブロア、64:ノズル、65:吸込口、P:プレート、R:ローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧エアが供給される給気チャンバと、
被清掃体が搬送される搬送通路と、
該搬送通路の搬送方向とほぼ直角な方向を長手方向として前記給気チャンバに連通するスリット状のノズルと、
前記給気チャンバとノズル間を連通するエア通路とを有する除塵装置において、
前記エア通路は、長手方向に直角な断面において、
前記給気チャンバ側の開口部からエア通路端部の前記ノズルまでの間で複数段に縮流されることを特徴とする除塵装置。
【請求項2】
前記ノズルの噴射方向は、被清掃体面に対し垂直方向であることを特徴とする請求項1に記載の除塵装置。
【請求項3】
前記長手方向に沿って前記ノズルの両側に吸込チャンバに連通する吸込口を設けたことを特徴とする請求項2に記載の除塵装置。
【請求項4】
前記ノズルは、前記搬送通路の上下両側に設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の除塵装置。
【請求項5】
前記吸込チャンバはその側面に形成された複数の連通孔を通して前記吸込口と連通し、該吸込チャンバに吸込ダクトが接続され、前記複数の連通孔は該吸込ダクトの接続口から遠いほど間隔が密に又は開口面積が大きく形成されたことを特徴とする請求項3又は4に記載の除塵装置。
【請求項6】
前記給気チャンバに給気ダクトが接続され、該給気ダクトの接続口から給気チャンバ内へのエア導入方向は、前記エア通路の開口部以外の方向であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の除塵装置。
【請求項7】
クリーンルーム内に設置された除塵装置であって、前記給気ダクトは給気ブロアに接続され、前記吸込ダクトは前記給気ブロアより送風量が大きい還気ブロアに接続され、クリーンルーム内のエアを前記給気ブロアによりHEPAフィルタを介して前記給気チャンバに圧送し、前記吸込チャンバ内のエアを前記還気ブロアによりHEPAフィルタを介してクリーンルーム内に戻すことを特徴とする請求項6に記載の除塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−346515(P2006−346515A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172120(P2005−172120)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000222956)東洋熱工業株式会社 (35)
【Fターム(参考)】