説明

陸上競技シミュレーションゲーム装置

【課題】遊戯者が全速力に近い激しい走行運動を安全に行うことができる走行部を備え、該走行部の上で走行運動をしながら、陸上競技を擬似的に楽しむことができる陸上競技シミュレーションゲーム装置を提供する。
【解決手段】陸上競技シミュレーションゲーム装置において、走行ベルトの上で遊戯者が走行運動することにより走行ベルトが摺動回転する走行部と、走行ベルトの回転状態情報に基づいてゲーム処理を行うゲーム処理部と、該ゲーム処理部から出力される表示情報に基づいて画像を表示する表示部と、走行ベルトの回転にブレーキをかけるブレーキ機構と、遊戯者が走行運動中に把持するために左右対称に配設された把持部と、遊戯者による把持部の把持状態を検知する把持検出手段と、左右対称に配設された把持部の間に配設され、遊戯者が操作情報を入力する操作手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1人または複数人で陸上競技を擬似的に楽しむことができる陸上競技シミュレーションゲーム装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遊園地等のアミューズメント施設には、各種スポーツなどを擬似的に楽しむことができるゲーム機が設置されている。
【0003】
しかしながら、それらのスポーツシミュレーションゲーム装置の大半は、野球やサッカーなどの球技スポーツであったため、近年、球技スポーツ以外のスポーツとして、例えば走行運動をしながら陸上競技を擬似体験して楽しむことができるようなシミュレーションゲーム装置が求められていた。
【0004】
このような走行運動をしながらゲームを楽しむことができる装置ではないが、歩行運動をしながら様々な犬種との散歩を疑似体験することができるゲーム機能を搭載した歩行装置は、例えば特許文献1に開示されている。この歩行装置は、歩行者の人力で摺動回転する歩行ベルトと、歩行者の手動操作に対応する操作情報を出力する操作手段と、歩行ベルトの回転状態および操作手段から出力される歩行者の操作情報に応じてゲーム処理を行うゲーム処理手段とを備え、遊戯者が歩行運動をしながらゲームを楽しめるようにしたものである。
【0005】
【特許文献1】特開2002−248262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される歩行装置のベルト手段は、歩行運動を目的とした構造になっているため、ベルト手段の上で全速力に近い走行運動を行う場合、遊戯者の体は前傾姿勢になるため、ベルト手段にはその遊戯者の前傾姿勢を支持する構造が備えられている必要があるが、特許文献1に開示される歩行装置には、そのような支持構造は備えられていなかった。そのため、特許文献1に開示された歩行装置で擬似的な陸上競技を行うには、走行ベルトの耐久性や遊戯者の姿勢支持に課題があった。
【0007】
また、通常、平面上で人間が立ち止まっている状態から突発的に全速力で走行運動を行うとすると、地面等に圧接する足の圧力中心と走行者の身体重心とが同軸上にあるため、前方への推進力をあまり得ることができない。そこで、従来のランニングマシンにおいては、走行面に傾斜を与え、半強制的に圧力中心と身体重心とを離した姿勢にし、前方への推進力を与えるか、もしくは、平坦な走行面の下部に連続的に転動ローラを配置し、走行ベルト等の回転を付勢していた。
【0008】
ところが、走行ベルトに対する転動ローラによる付勢は、全速力に近い走行状態に入ると、走行ベルトの回動に勢いが付き過ぎる状態になり、走行者が走行ベルト上で突然停止した場合に回転する走行ベルトに足を取られ、転倒し、怪我をする危険性があった。
【0009】
また、走行面に対して傾斜を与えるようにした装置では、走行者は平坦な状態で走行をしないため、継続的に走行する場合に平坦な走路を走る場合に比べて違和感を抱くことが多かった。
【0010】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、遊戯者が全速力に近い激しい走行運動を安全に行うことができる走行部を備え、該走行部の上で走行運動をしながら、陸上競技を擬似的に楽しむことができる陸上競技シミュレーションゲーム装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、遊戯者が走行運動をしながら陸上競技を擬似的に体験する陸上競技シミュレーションゲーム装置において、複数の支持ローラによって回転自在に支持された走行ベルトを有し、該走行ベルトの上で前記遊戯者が走行運動することにより前記走行ベルトが摺動回転する走行部と、前記走行ベルトの回転状態情報に基づいてゲーム処理を行うゲーム処理部と、前記ゲーム処理部から出力される表示情報に基づいて画像を表示する表示部と、前記走行部に配設され、前記走行ベルトの回転にブレーキをかけるブレーキ機構と、前記遊戯者が走行運動中に把持するために左右対称に配設された把持部と、前記遊戯者による前記把持部の把持状態を検知する把持検出手段と、前記左右対称に配設された把持部の間に配設され、前記遊戯者が操作情報を入力する操作手段とを備え、前記操作手段は、前記遊戯者が走行運動をしながら入力できる位置に配され、かつ、前記ブレーキ機構は、前記把持検出手段が前記把持部の左右両方とも把持されていない状態であることを検知した場合にのみ、前記走行ベルトの回転にブレーキをかけることにより、達成される。
【0012】
また、上記目的は、前記走行部が、前記遊戯者が前記把持部を把持したときに前傾姿勢になるように配設されるとともに、その前傾姿勢を支持するサポートバーを備えていることにより、効果的に達成される。
【0013】
また、上記目的は、前記サポートバーの両基板部が、支持固定角度を調整可能なロック機構に連結されていることにより、効果的に達成される。
【0014】
また、上記目的は、前記サポートバーが、走行運動時に前記遊戯者の身体の前面側が当接する部位に、遊戯者支持部材を備え、かつ、前記遊戯者支持部材の両端部の径方向高さ(直径)が、中央部の径方向高さ(直径)よりも大きくなっていることにより、効果的に達成される。
【0015】
また、上記目的は、前記複数の支持ローラが、前方支持ローラと、該前方支持ローラと水平になるように配設された後方支持ローラと、前記前方支持ローラおよび前記後方支持ローラより下方に配設された少なくとも1つの下方支持ローラとから構成されることにより、効果的に達成される。
【0016】
また、上記目的は、前記走行ベルトが、裏面両側端部の長手方向に沿って形成された凸条部を有し、かつ、前記支持ローラが、外周面の円周方向に沿って形成され、前記凸条部に係合する溝部を有することにより、効果的に達成される。
【0017】
また、上記目的は、前記走行ベルトの走行面が、下面に複数の転動ローラが敷設された走行エリアと、下面に前記転動ローラが敷設されていない緩衝エリアとからなり、かつ、前記緩衝エリアが、前記走行面の全長に対して、前縁から65%〜80%の位置を起点として、前記走行面の後縁まで設けられていることにより、効果的に達成される。
【0018】
また、上記目的は、前記走行ベルトの走行面が、平坦であり、前記転動ローラが、所定の間隔を空けて敷設され、かつ、前記所定の間隔内に50mm〜70mmの幅を有する緩衝部材が配設されていることにより、効果的に達成される。
【0019】
さらに、上記目的は、前記走行部が、前記走行ベルトの後方折返部に、該後方折返部を通過する巻込物を検知する巻込防止センサを備え、かつ、前記巻込防止センサが前記巻込物を検知した場合に、前記ブレーキ機構が前記走行ベルトの回転にブレーキをかけることにより、効果的に達成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置によれば、走行ベルトの上で遊戯者が走行運動可能な走行部、該走行部の走行ベルトの回転状態情報に基づいてゲーム処理を行うゲーム処理部、および該ゲーム処理部から出力される表示情報に基づいて画像を表示する表示部が設けられている。これにより、遊戯者は、走行部の走行ベルト上で走行運動をしながら、擬似的な陸上競技をよりリアルに体験して楽しむことができる。
【0021】
また、本発明に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置によれば、走行部の把持部には、遊戯者による把持状態を検知する把持検出手段が設けられ、把持部の左右両方とも把持されていない場合には、ブレーキ機構によって走行ベルトの回転がロックされるようになっている。これにより、遊戯者が両手を把持部から離している状態では、走行ベルトが回転しないため、安全性の向上を図ることができる。
【0022】
また、本発明に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置によれば、走行ベルト上で走行運動している遊戯者が把持部を把持したときに前傾姿勢になるように配設されるとともに、その前傾姿勢を支持するサポートバーが走行部に設けられ、このサポートバーが支持固定される両基端部には、その支持固定角度を調整可能なロック機構が連結されている。このロック機構は、サポートバーを所定の支持固定角度で固定し、固定解除後に、ガスダンパーなどによってサポートバーを初期位置へ戻すための付勢力を徐々に増すようにサポートバーを支持する構造になっているので、サポートバーによって遊戯者の体の大きさに応じた最適な前傾姿勢を保持することができる。
【0023】
また、本発明に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置によれば、走行運動時の遊戯者サポートバーの部位には、両端部の径方向高さ(直径)が中央部の径方向高さ(直径)より大きくなっている遊戯者支持部材が設けられている。これにより、サポートバーを介して伝達される遊戯者の腹部への衝撃などを軽減することができるとともに、遊戯者が激しい走行運動を行っても体が左右に流れないように抑制することができる。
【0024】
また、本発明に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置によれば、走行ベルトが前方支持ローラ、後方支持ローラおよび下方支持ローラによる少なくとも3点で支持される構造になっている。これにより、走行ベルトの各折返部における折返角度を2点支持よりも鈍角にすることができるので、走行ベルトの耐久性の向上を図ることができ、装置寿命の向上を図ることができる。
【0025】
また、本発明に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置によれば、走行ベルトの裏面両側端部に長手方向に沿って形成された凸条部が、支持ローラの外周面の円周方向に沿って形成された溝部に係合していることにより、遊戯者が走行ベルト上で激しい走行運動を行っても、走行ベルトが支持ローラから脱落しないようになっている。
【0026】
また、本発明に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置によれば、走行ベルトの走行面の後方に、下面に転動ローラが敷設されていない緩衝エリアが設けられているので、遊戯者が走行運動中に急に後方へ退いた場合には、この緩衝エリアに後退することで、遊戯者の自重で走行ベルトと緩衝エリアとの摩擦係数が高くなり、前記ブレーキ機構による走行ベルトの回転のロック以外にも走行ベルトの回転を静止することができるため、遊戯者の安全を確保できる。
【0027】
また、本発明に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置によれば、走行ベルトの走行面が平坦であるとともに、その走行面の下面に敷設された転動ローラの間に50mm〜70mmの幅を有する緩衝部材が配設されていることにより、走行者が全速力に近い走行状態になったときに、前方への推進力を与えつつ、過度に走行ベルトを回転させないようにすることができる。この結果、走行者は快適に全速力で走行運動を行うことができるとともに、走行者である遊戯者の安全を確保することができる。
【0028】
さらに、本発明に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置によれば、走行部の走行ベルトの後方折返部には、該後方折返部を通過する巻込物を検知する巻込防止センサが設けられ、巻込物が検知された場合には、ブレーキ機構によって走行ベルトの回転がロックされるようになっている。これにより、巻込物が走行ベルトの後方折返部から走行部の内部に侵入するのを防止することができるので、巻込物などによる故障を軽減することができ、装置寿命の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照にしながら本発明の実施形態について説明する。
【0030】
図1は、本発明の実施形態に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置の外観を概略的に示す側面図であり、図2は、その正面図であり、図3は、その上面図である。本実施形態における陸上シミュレーションゲームとは、遊戯者であるプレイヤーが限られた範囲に設けられた無限軌道上を走ったり、ジャンプボタンを押したりすることより入力される走行状態情報やジャンプ操作情報に基づいて、現実世界での陸上競技を2次元画像表示装置を用いて表示される仮想3次元空間内で擬似的に生成された陸上競技コースにおいて、アスリートのキャラクタ画像の動作に反映させることをいう。
【0031】
これらの図において、本実施形態に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置1は、遊戯者Pが走行運動することにより摺動回転する走行ベルト2を有する走行部3と、該走行部3の前方に配され、画像などを表示する表示部4を備えている。なお、本実施形態に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置1では、表示部4が配されている側を前方とし、かつ、走行部3が配されている側を後方とする。
【0032】
走行部3の走行ベルト2の両側には、遊戯者Pの走行運動中に遊戯者P以外の第三者が横から侵入できないようにサイドフェンス5,5が立設されている。また、走行ベルト2の後方折返部の両側には、巻込物を検知する巻込防止センサ6,6が配設され、さらにその後方、すなわち走行部3の後端部には、遊戯者P以外の第三者が走行部3に接近したことを検知する後方センサ7が配設されている。この巻込防止センサ6は、赤外線などの光学センサによって構成され、後方センサ7は、マットスイッチなどの押圧センサによって構成されている。
【0033】
また、走行部3の走行ベルト2の前方には、フロントタワー部材8が立設され、該フロントタワー部材8の上部の左右両側には、遊戯者Pが走行運動中に把持するハンドグリップ9,9が取り付けられている。このハンドグリップ9,9には、遊戯者Pによる把持状態を検知するためのハンドグリップセンサ10,10が備えられている。このハンドグリップセンサ10は、上述した巻込防止センサ6と同様、赤外線などの光学センサによって構成され、各ハンドグリップ9の外側端部を支持する部材に配設された発光素子から発光される光量を、各ハンドグリップ9の内側端部を支持するフロントタワー部材内に配設された受光素子で受光することにより、左右のハンドグリップ9,9のそれぞれの把持状態を検知するようになっている。なお、左右のハンドグリップ9,9の把持状態を検出する手段として、光学センサの代わりに押圧センサを用いてもよい。
【0034】
フロントタワー部材8の上部背面には、ゲーム中の選択事項(例えば、遊戯者の性別選択等)を操作する選択ボタン11、およびゲーム中の決定事項(例えば、前記性別選択を男性、女性、子供のいずれかに決定する性別決定等)を操作する決定ボタン12が配設され、かつ、フロントタワー部材8の上面には、ゲーム中に遊戯者Pの対象キャラクタの動作(本実施形態では『ジャンプ(跳躍)』)を操作するアクションボタン13が配設されている。本実施形態に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置1の操作ボタン14は、これらの選択ボタン11、決定ボタン12、およびアクションボタン13によって構成されている。
【0035】
さらに、走行部3は、走行ベルト2の後部の両側に配された側板から走行ベルト2の上で走行運動中の遊戯者Pの前方を横切り、遊戯者の腹部を抱擁するように延びているサポートバー15を備えている。このサポートバー15は、走行ベルト2の上で走行運動中の前記ハンドグリップ9,9を把持した遊戯者Pが前傾姿勢になるように配設するとともに、その前傾姿勢を支持するためのものであり、このサポートバー15の両基端部には、後述する支持固定角度を調整可能な油圧ロック機構と、固定解除後にサポートバーが初期位置(図1のXの位置)に徐々に付勢力を増すように支持されたガスダンパーとが連結されている。遊戯者Pが、走行部3の走行ベルト2の上でハンドグリップ9.9を把持しながら激しい走行運動を行おうとすると、遊戯者Pの姿勢は前傾になる(図1のX´の位置)。そのため、この遊戯者Pの前傾姿勢を支持して安全性を向上させるために、このようなサポートバー15が設けられている。なお、本実施形態における『初期位置』とは、図1に示すサポートバー15がXの位置にあり、かつ、サポートバー15の両基端部がガスダンパーにより付勢されていない状態にあることを意味する。
【0036】
また、走行運動時の遊戯者Pの上半身前面側の所定の箇所が当接するサポートバー15の部位(走行ベルト2の上方に位置する部位)には、弾力性に優れたクッション部材16が設けられている。このクッション部材16は、両端部の直径が中央部の直径より大きく、走行部3で走行運動中の遊戯者Pの体が左右に流れない形状になっている。なお、サポートバー15が当接する箇所は、腹部周辺であることが望ましい。
【0037】
表示部4は、走行部3で走行運動中の遊戯者Pが正面を向いたままの状態で見ることができる位置に配され、画像を表示するプロジェクタ(スクリーン)17と、該プロジェクタ17の上方に配され、走行ベルト2の回転速度に応じた走行速度を表示するスピードメータ18とを備えている。また、スピードメータ18の両側には、遊戯者Pなどを照射するスポットライト19が配設されている。
【0038】
図4は、本実施形態に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置の走行部の内部構造を示す概略側面図である。
【0039】
同図において、走行部3の走行ベルト2は、前方支持ローラ20Aと、該前方支持ローラ20Aと水平になるように配設された後方支持ローラ20Bと、前方支持ローラ20Aおよび後方支持ローラ20Bより下方に配された下方支持ローラ20Cとからなる支持ローラ20に張架された無端ベルトであり、これら3つの支持ローラ20によって回転自在に支持されている。このように、走行ベルト2を3点以上で支持することにより、走行ベルト2の折返角度を2点支持の場合よりも鈍角にすることができるので、走行ベルト2の耐久性を向上させることができる。
【0040】
また、走行ベルト2の走行面(前方支持ローラ20Aと後方支持ローラ20Bとの間の面)は、ベルト2の下面に複数の転動ローラ21が敷設された走行エリアと、ベルト2の下面に転動ローラ21が敷設されずに平らな板が配されている緩衝エリアとからなる。この緩衝エリアは、走行ベルト2の走行面の全長に対して、前縁から65%〜80%の位置を起点として、走行ベルト2の走行面の後縁まで設けられている。すなわち、走行ベルト2の走行面の少なくとも後部1/5は、緩衝エリアになっている。遊戯者Pが走行運動中に急に走行エリアから後方へ退いた場合には、この緩衝エリアに後退することにより、後述するブレーキ機構による走行ベルトの回転のロック以外にも、遊戯者の自重で走行ベルトと緩衝エリアとの摩擦係数が高くなり、走行ベルト2の回転を静止することができるので、遊戯者の安全を確保することができる。
【0041】
また、走行ベルト2の走行面は平坦であり、設置面に対して水平になっている。さらに、走行エリアにおける走行面の下面に配された転動ローラ21は、所定の間隔Sを空けて配設され、その間隔S内には緩衝部材Mが配設されている。この緩衝部材Mは、走行ベルト2を過度に回転させないためのものである。
【0042】
なお、各転動ローラ21の間隔Sは、80mm〜120mmであることが好ましく、特に100mmであることが望ましい。また、緩衝部材Mの幅Wは、人間の足のつま先から前踏みまでの長さに該当する50mm〜70mmであることが好ましく、特に60mmであることが望ましい(図4中の足Fを参照)。
【0043】
このように走行エリアと緩衝エリアとを構成することで、遊戯者Pが全速力に近い走行状態になったとしても、走行ベルト2が過度に回転せず、遊戯者Pの自重で走行ベルト2を静止することもできるため、遊戯者Pの安全性を確保することができる。
【0044】
なお、本実施形態においては、転動ローラ21、緩衝部材Mなどを備えた走行エリアは、走行装置と一体になっているが、この走行エリアの構成とほぼ同じ(均等な)ものを枠部材内に設け、従来のランニングマシンの走行面(走行ベルト)の下部に備えてもよい。
【0045】
また、サポートバー15の両基端部には、該サポートバー15の支持角度を調整可能な油圧ロック機構22と、固定解除後にサポートバーが初期位置に戻るように徐々に付勢力を増すように支持されたガスダンパーとが連結されている。この油圧ロック機構22は、最下端に押し下げられたサポートバー15が初期位置に戻るように徐々に付勢力を増加させるように、その付勢力をサポートバー15の基端部に伝達する構造になっているので、サポートバー15によって遊戯者Pの体の大きさに応じた最適な前傾姿勢を保持することができる。
【0046】
図5は、本実施形態に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置の走行部の要部を概略的に示す斜視図である。また、図6は、図5に示した走行部の要部を拡大して示す上面図であり、図7は、図6中の矢印VII方向から側面図である。
【0047】
図5に示すように、走行ベルト2の前方には、走行ベルト2の回転にブレーキをかけるブレーキ機構23(例えば、無励磁ブレーキ等)が設けられている。このブレーキ機構23の駆動シャフト23Aの一端は、図6および図7に示すように、前方支持ローラ20Aの一端部(図6左側)に取り付けられたプーリ24に駆動ベルト23Bを介して接続され、ブレーキ機構23への供給電流を制御することにより、走行ベルト2のロック状態を制御することができる。
【0048】
また、ブレーキ機構23より外側(図6左側)のブレーキ機構23とプーリ24との間には、走行ベルト2の回転速度を検出するスピードユニット25が設けられている。このスピードユニット25は、前方支持ローラ20Aのプーリ24より外側の一端部に検出ベルト25Aを介して接続されたエンコーダからなり、該エンコーダが前方支持ローラ20Aの回転に連動して回転することにより、走行ベルト2の回転速度を検出するようになっている。
【0049】
また、走行ベルト2の裏面両側端部には、長手方向に沿って凸条部26が形成され、一方、各支持ローラ20の両端部には、円周方向に沿って溝部27が形成されている。そして、走行ベルト2は、裏面両側端部に形成された凸条部26が各支持ローラ20の溝部27に係合するように張架され、これにより、遊戯者Pが走行ベルト2の上で激しい走行運動を行っても、走行ベルト2が支持ローラ20から脱落しないようになっている。
【0050】
図8は、本実施形態に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置の制御機構を概略的に示すブロック図である。
【0051】
同図において、本実施形態に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置1の制御機構は、大別すると、異常検出用の各種センサ6,7,10、ブレーキ機構23、およびスピードユニット25を有する走行部3と、操作ボタン14やコイン投入センサ28を有する操作部29と、ゲーム処理部30およびブレーキ制御部31を有する制御部32と、プロジェクタ17やスピードメータ18などの表示部4と、該表示部4内に搭載された音響出力部33と、遊戯者Pを照射するスポットライト19とから構成されている。
【0052】
制御部32は、陸上競技シミュレーションゲーム装置1全体の制御処理、画像生成処理、音響信号生成処理などを行うモジュールであり、メインCPU、ビデオディスプレイプロセッサ、サウンドプロセッサ、ワークメモリ等の各種ハードウエア資源を備えている。
【0053】
この制御部32のブレーキ制御部31は、ハンドグリップセンサ10、巻込防止センサ6、および後方検知センサ7の何れかのセンサから異常検出信号が入力された場合に、直ちにブレーキ機構23に回転ロック信号を出力し、走行ベルト2の回転を停止するようになっている。なお、走行ベルト2の回転を停止するときには、回転を強制的に止めるのではなく、走行ベルト2の回転数を下げるように抵抗を与えるブレーキ制御が望まれる。このようにブレーキ制御することで、全速力に近い状態で走行している遊戯者Pの安全性を確保できる。
【0054】
また、制御部32のゲーム処理部30は、コイン投入センサ28の検出信号、あるいは操作ボタン14、もしくは別途設置されるアテンダント(係員)用の操作卓によるスタート信号に応じて、陸上競技シミュレーションゲームのゲーム処理を開始し、陸上競技場の背景画像や遊戯者の操作対象であるキャラクタ画像などを含む画像の表示情報を表示部4に出力するとともに、音響処理信号を音響出力部33に出力する。図9および図10は、表示部4のプロジェクタ17に表示される画像の一例を示すものである。
【0055】
また、ゲーム処理部30は、走行部3のスピードユニット25から走行ベルト2の回転状態情報が出力されると、その回転状態情報に基づいて、背景画像やキャラクタ画像などの画像の表示態様を変化させる処理を行い、その表示情報を表示部4に出力する。すなわち、本実施形態に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置1では、表示部4のプロジェクタ17に表示される画像が、遊戯者の走行運動に連動して変化するようになっている。遊戯者は、このプロジェクタ17に表示される画像を見ながら走行運動をすることにより、擬似的に陸上競技を体験して楽しむことができる。さらに、操作ボタン14のアクションボタン13を用いて、遊戯者の操作対象となるキャラクタをジャンプさせることにより、『100m走』などの競走種目だけではなく、『110mハードル』や『走り幅跳び』などのジャンプ動作を要する陸上競技種目も擬似的に体験することができる。
【0056】
以上のように、本実施形態に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置1によれば、遊戯者が走行部3の走行ベルト2の上で走行運動することにより、その走行ベルト2の回転状態に連動して変化する陸上競技ゲームの画像が、ゲーム処理部30の制御処理によって表示部4のプロジェクタ17に表示されるようになっている。これにより、遊戯者は、走行運動をしながら陸上競技を擬似的に体験することができ、ゲームを楽しむことができる。
【0057】
また、走行部3に設置されたハンドグリップセンサ10、巻込防止センサ6および後方検知センサ7の何れかのセンサによって異常が検出された場合には、直ちにブレーキ機構23によって走行ベルト2の回転がロックされるようになっているので、遊戯者は安心して陸上競技シミュレーションゲーム楽しむことができる。
【0058】
また、走行部3の走行ベルト2が、前方支持ローラ20A、後方支持ローラ20B、および下方支持ローラ20Cの3つの支持ローラ20によって回転自在に支持される構造になっていることにより、各支持ローラ20における走行ベルト2の折返角度を鈍角にすることができ、激しい走行運動にも耐えられる耐久性、および装置寿命の向上を図ることができる。
【0059】
さらに、走行部3には、走行ベルト2の上で走行運動中の遊戯者が前傾姿勢になるように促すとともに、その前傾姿勢を支持するサポートバー15が設けら、かつ、走行運動時の遊戯者の腹部が当接するサポートバー15の部位に、弾力性に優れ、両端部の直径が中央部の直径より大きくなっているクッション部材16が設けられているので、遊戯者の全速力に近い走行運動を安全に実現することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置の外観を概略的に示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置の外観を概略的に示す正面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置の外観を概略的に示す上面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置の走行部の内部構造を示す概略側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置の走行部の要部を概略的に示す斜視図である。
【図6】図5に示した走行部の要部を拡大して示す上面図である。
【図7】図6中の矢印VII方向から側面図である。
【図8】本実施形態に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置の制御機構を概略的に示すブロック図である。
【図9】本実施形態に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置の表示部のプロジェクタに表示される画像の一例を示すものである。
【図10】本実施形態に係る陸上競技シミュレーションゲーム装置の表示部のプロジェクタに表示される画像の一例を示すものである。
【符号の説明】
【0062】
1 陸上競技シミュレーションゲーム装置
2 走行ベルト
3 走行部
4 表示部
6 巻込防止センサ
9 ハンドグリップ
10 ハンドグリップセンサ
15 サポートバー
16 クッション部材
20 支持ローラ
20A 前方支持ローラ
20B 後方支持ローラ
20C 下方支持ローラ
21 転動ローラ
22 油圧ロック機構
23 ブレーキ機構
25 スピードユニット
26 凸条部
27 溝部
30 ゲーム処理
P 遊戯者
M 緩衝部材
X 初期位置
F 足

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊戯者が走行運動をしながら陸上競技を擬似的に体験する陸上競技シミュレーションゲーム装置であって、
複数の支持ローラによって回転自在に支持された走行ベルトを有し、該走行ベルトの上で前記遊戯者が走行運動することにより前記走行ベルトが摺動回転する走行部と、
前記走行ベルトの回転状態情報に基づいてゲーム処理を行うゲーム処理部と、
前記ゲーム処理部から出力される表示情報に基づいて画像を表示する表示部と、
前記走行部に配設され、前記走行ベルトの回転にブレーキをかけるブレーキ機構と、
前記遊戯者が走行運動中に把持するために左右対称に配設された把持部と、
前記遊戯者による前記把持部の把持状態を検知する把持検出手段と、
前記左右対称に配設された把持部の間に配設され、前記遊戯者が操作情報を入力する操作手段とを備え、
前記操作手段は、前記遊戯者が走行運動をしながら入力できる位置に配され、かつ、
前記ブレーキ機構は、前記把持検出手段が前記把持部の左右両方とも把持されていない状態であることを検知した場合にのみ、前記走行ベルトの回転にブレーキをかけることを特徴とする陸上競技シミュレーションゲーム装置。
【請求項2】
前記走行部は、前記遊戯者が前記把持部を把持したときに前傾姿勢になるように配設されるとともに、その前傾姿勢を支持するサポートバーを備えている請求項1に記載の陸上シミュレーションゲーム装置。
【請求項3】
前記サポートバーの両基板部は、支持固定角度を調整可能なロック機構に連結されている請求項2に記載の陸上シミュレーションゲーム装置。
【請求項4】
前記サポートバーは、走行運動時に前記遊戯者の身体の前面側が当接する部位に、遊戯者支持部材を備え、かつ、
前記遊戯者支持部材の両端部の径方向高さは、中央部の径方向高さよりも大きくなっている請求項2または請求項3に記載の陸上シミュレーションゲーム装置。
【請求項5】
前記複数の支持ローラは、前方支持ローラと、該前方支持ローラと水平になるように配設された後方支持ローラと、前記前方支持ローラおよび前記後方支持ローラより下方に配設された少なくとも1つの下方支持ローラとから構成される請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の陸上競技シミュレーションゲーム装置。
【請求項6】
前記走行ベルトは、裏面両側端部の長手方向に沿って形成された凸条部を有し、かつ、
前記支持ローラは、外周面の円周方向に沿って形成され、前記凸条部に係合する溝部を有する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の陸上競技シミュレーションゲーム装置。
【請求項7】
前記走行ベルトの走行面は、下面に複数の転動ローラが敷設された走行エリアと、下面に前記転動ローラが敷設されていない緩衝エリアとからなり、かつ、
前記緩衝エリアは、前記走行面の全長に対して、前縁から65%〜80%の位置を起点として、前記走行面の後縁まで設けられている請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の陸上競技シミュレーションゲーム装置。
【請求項8】
前記走行ベルトの走行面は、平坦であり、
前記転動ローラは、所定の間隔を空けて敷設され、かつ、
前記所定の間隔内には、50mm〜70mmの幅を有する緩衝部材が配設されている請求項7に記載の陸上競技シミュレーションゲーム装置。
【請求項9】
前記走行部は、前記走行ベルトの後方折返部に、該後方折返部を通過する巻込物を検知する巻込防止センサを備え、かつ、
前記ブレーキ機構は、前記巻込防止センサが前記巻込物を検知した場合に、前記走行ベルトの回転にブレーキをかける請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の陸上競技シミュレーションゲーム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−212370(P2008−212370A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53525(P2007−53525)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000132471)株式会社セガ (811)
【Fターム(参考)】