説明

隙間調整用シム

【課題】シムを変形させることなく簡単確実にシム取り付け作業が行える隙間調整用シムを提供する。
【解決手段】隙間調整用シム1は、被取付け部2の一面2a側に配置されるシム部6と、このシム部6の一端面6aから所定量オフセットして突設された後に上方へ折り返されて被取付け部2の他面側2bに配置される第1折り返し部7と、この第1折り返し部7の先端に、更に上方へ折り返されて前記シム部6とで被取付け部2を挟み込む第2折り返し部8と、を備える。第1折り返し部7は、シム部6の両端に設けられた2つの折曲部7A、7Aと、各折曲部7A、7Aからそれぞれ前記シム部6の他端面6b側へ向かって延在する2つの折返し片部7B、7Bとからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隙間調整用シムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ディスクロータとブレーキパッド間の隙間を調整するシムは、ブレーキパッドの裏面に配置された金属プレートからなる裏板に対して係止爪を引っ掛けることで、前記裏板に取り付けられている(例えば、特許文献1などに記載)。
【特許文献1】特開2002−364685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、裏板に係止爪を引っ掛けてシムを固定する構造であるため、シム取り付け時の作業がやり難く、不用意に取り付けるとシムが変形することも考えられる。
【0004】
そこで、本発明は、シムを変形させることなく簡単確実にシム取り付け作業が行える隙間調整用シムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の隙間調整用シムは、被取付け部材の一面側に配置されるシム部の一端面から上方へ折り返されて該被取付け部材の他面側に配置される第1折り返し部を有する。そして、この隙間調整用シムは、その第1折り返し部の先端に、更に上方へ折り返されて前記シム部とで被取付け部材を挟み込む第2折り返し部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の隙間調整用シムによれば、被取付け部材をシム部と第1及び第2折り返し部とで挟み込んで取り付けるので、シム部の変形を起こさずにシムの組み付け作業を容易なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0008】
図1は本実施形態の隙間調整用シムの斜視図、図2は本実施形態の隙間調整用シムをフードヒンジの被取付け部に取り付けた状態を示す斜視図である。
【0009】
本実施形態は、本発明に係る隙間調整用シムを、フードヒンジを組み付ける際の車体との隙間調整に適用した例である。
【0010】
本実施形態の隙間調整用シム1は、図1及び図2に示すように、被取付け部材であるフードヒンジの被取付け部2に取り付けられ、ワッシャ3を介してこの被取付け部2に形成されたボルト貫通孔4に挿入されるボルト5にて固定される。
【0011】
隙間調整用シム1は、被取付け部2の一面2a側に配置されるシム部6と、このシム部6の一端面6aから上方へ折り返されて前記被取付け部2の他面2b側に配置される第1折り返し部7と、この第1折り返し部7の先端に更に上方へ折り返されて前記シム部6とで被取付け部2を挟み込む第2折り返し部8と、を備えている。
【0012】
シム部6は、隙間を調整するに適した厚みを有した平面視矩形状をなす板とされ、被取付け部2の一面2aに密着して設けられる。そして、シム部6には、被取付け部2に形成されたボルト貫通孔4と連通する孔部9が形成されている。この孔部9には、前記したボルト5が挿通される。
【0013】
第1折り返し部7は、シム部6の一端面6aから前方へ延在した後に上方へ略垂直に立ち上がるようにして折り曲げられた2つの折曲部7A、7Aを当該シム部6の両端に有すると共に、各折曲部7A、7Aの先端からそれぞれシム部6の他端面6b側へ向かって延在する2つの折返し片部7B、7Bを有している。
【0014】
折曲部7A、7Aは、シム部6の一端面6aと平行な位置における断面積S1よりも小さい断面積S2の縮小断面とされている。そして、この折曲部7A、7Aは、シム部6の一端面6aから所定量Lだけ突出して折り返されている。シム部6の一端面6aから折曲部7A、7Aを突出させる量Lとしては、この折曲部7A、7Aを折り曲げ易くするために、約2mm以上とすることが望ましい。
【0015】
折返し片部7B、7Bは、略垂直に立ち上がった折曲部7A、7Aの先端からシム部6の他端面6b側へ向かって延在すると共に、その先端部をシム部6と接触或いは近接するように傾斜されている。この2つの折返し片部7B、7Bは、細長いアーム形状とされ、前記折曲部7A、7Aで弾発付与されることにより被取付け部2を把持するクランプ力を発揮するようになっている。
【0016】
この2つの折返し片部7B、7Bの間には、前記シム部6に形成された孔部9と対応する開放部10が形成されている。この開放部10は、ボルト5と接触することなく且つワッシャ3を脱落させない程度の平面視矩形状をなす開口とされている。
【0017】
第2折り返し部8は、2つの折返し片部7B、7Bの先端同士を連結して設けられている。この第2折り返し部8は、前記2つの折返し片部7B、7Bの先端から更に斜め上方へ折り返されることにより、被取付け部2を前記シム部6とで挟み込むクリップ部として機能する。開放部10の先端部10aは、第2折り返し部8の折れ曲がり位置である折れ線11に対して所定量だけ前記シム部6の一端面6a側へオフセットした位置とされている。つまり、開放部10の先端部10aと折れ線11との間には、所定幅の平坦部12が設けられている。オフセット量としては、第2折り返し部8を折り返すときに成形安定性と折れ線付近の曲げ剛性を考慮して約1mm以上とすることが望ましい。
【0018】
このように構成された隙間調整用シム1は、シム部6と第1折り返し部7及び第2折り返し部8との隙間にフードヒンジの被取付け部2を差し込むことにより取り付けられる。このとき、第2折り返し部8は、斜め上方に傾斜していることから被取付け部2の前記隙間への挿入を容易なものとする。また、第1折り返し部7及び第2折り返し部8は、前記隙間に被取付け部2が進入することで上方へ持ち上がり、その反力で被取付け部2を押さえ付ける。この第1折り返し部7及び第2折り返し部8による弾発力によって、前記隙間調整用シム1は、被取付け部2に対して挟持される。そして、この隙間調整用シム1は、ワッシャ3を介してボルト5で締め付けられることにより被取付け部2に固定される。
【0019】
本実施形態の隙間調整用シム1によれば、シム部6と、このシム部6の一端面6aから折り返して形成された第1折り返し部7及び該第1折り返し部7の先端に更に上方へ折り返された第2折り返し部8とで、フードヒンジの被取付け部2を挟み込んで固定するので、被取付け部2に差し込むだけの簡単な作業で取り付けることができ、また、係止爪を引っ掛けて被取付け部2に取り付ける従来構造のようにシム部6の変形を生じさせない。
【0020】
また、本実施形態の隙間調整用シム1によれば、第1折り返し部7の折曲部7A、7Aをシム部6の断面積S1よりも小さい縮小断面としたので、折曲部7A、7Aの曲げ剛性が下がり折返し易くなる。そのため、本実施形態によれば、折曲部7A、7Aの安定した形状を確保することができる。これに対して、断面積S1の部位で折り曲げた場合には、曲げ剛性が高くなることで曲げ難くなる。
【0021】
また、本実施形態の隙間調整用シム1によれば、折曲部7A、7Aをシム部6の一端面6aから所定量突出して折り返して形成しているので、シム部6の一端面6a側における端部の平面度を確保することができる。これにより、シム部6と被取付け部2とを密着させることができ、浮き上がってシム厚以上となるのを防止できる。
【0022】
また、本実施形態の隙間調整用シム1によれば、2つの第1折り返し部7、7の先端を第2折り返し部8の両端に接続させることで、被取付け部2への取り付け時に2つの第1折り返し部7が安定した状態で開くようになる。そのため、この隙間調整用シム1では、装着作業性が良くなると共に安定したクリップ保持効果が得られる。
【0023】
また、本実施形態の隙間調整用シム1によれば、開放部10の先端を第2折り返し部8の折れ曲がり位置である折れ線11に対して所定量オフセットした位置としているので、第2折り返し部8の折り曲げ時に、折れ線11付近の曲げ剛性が高まることで、当該第2折り返し部8の形状が安定する。この安定した第2折り返し部8の形状によって、前記シム部6とで被取付け部2を挟み込む挟持強度を安定させることができる。
【0024】
また、本実施形態の隙間調整用シム1によれば、シム部6の開放部10と対応する部位に孔部9を設けたので、ワッシャ3を開放部10を通して孔部9に置くことができ、開放部10が、ワッシャ3を孔部9に導くガイド機能を果たすことで、この孔部9に挿通するボルト5の締結作業性が良くなると共にワッシャ3の組付性が向上する。
【0025】
以上、本発明を適用した具体的な実施の形態について説明したが、上述の実施の形態は、本発明の一例に過ぎず、前記した実施の形態に制限されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は本実施形態の隙間調整用シムの斜視図である。
【図2】図2は本実施形態の隙間調整用シムをフードヒンジの被取付け部に取り付けた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1…隙間調整用シム
2…被取付け部
3…ワッシャ
4…ボルト貫通孔
5…ボルト
6…シム部
6a…シム部の一端面
6b…シム部の他端面
7…第1折り返し部
8…第2折り返し部
9…孔部
10…開放部
11…折れ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付け部材の一面側に配置されるシム部と、
前記シム部の一端面から上方へ折り返されて前記被取付け部材の他面側に配置される第1折り返し部と、
前記第1折り返し部の先端に、更に上方へ折り返されて前記シム部とで前記被取付け部材を挟み込む第2折り返し部と、を備えた
ことを特徴とする隙間調整用シム。
【請求項2】
請求項1に記載の隙間調整用シムであって、
前記第1折り返し部は、前記シム部の一端面に当該シム部の断面積よりも小さい縮小断面とされた折曲部を有し、
前記折曲部は、前記シム部の一端面から所定量突出して折り返されている
ことを特徴とする隙間調整用シム。
【請求項3】
請求項2に記載の隙間調整用シムであって、
前記第1折り返し部は、前記シム部の両端に設けられた2つの折曲部と、各折曲部からそれぞれ前記シム部の他端面側へ向かって延在する2つの折返し片部とからなり、
前記2つの折返し片部の間には開放部を形成すると共に各折返し片部の先端を前記第2折り返し部の両端に接続させた
ことを特徴とする隙間調整用シム。
【請求項4】
請求項3に記載の隙間調整用シムであって、
前記開放部の先端は、前記第2折り返し部の折れ曲がり位置である折れ線に対して所定量オフセットした位置とされている
ことを特徴とする隙間調整用シム。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の隙間調整用シムであって、
前記シム部の前記開放部と対応する部位に孔部を設けた
ことを特徴とする隙間調整用シム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−303935(P2008−303935A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150336(P2007−150336)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】