説明

障害物検知装置、自律移動体、障害物検知方法

【課題】細い棒や細い柱、人間の脚といった細物を確実に検知可能な技術を提供する。
【解決手段】障害物検知装置は、画像データを記憶するメモリA10と、前記画像データに基づいて画像を投影するプロジェクタ4と、映し出された画像を撮影して画像データを生成するカメラ5と、生成された前記画像データを記憶するメモリB12と、メモリA10に記憶されている前記画像データと、メモリB12に記憶されている前記画像データと、を比較する比較部13と、を備える。自律移動型ロボット100は、ロボット本体3と、ロボット本体3を移動させるための駆動回路16と、駆動回路16を制御する制御部9と、上記の障害物検知装置と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は障害物検知装置、及びそれを備えた自律移動体、障害物検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、特許文献1は、移動領域に存在する物体の位置・形状を示す環境情報を取得するレーザレンジファインダを備えた自律移動体を開示している。ここで、レーザレンジファインダとは、所定の広がり角度でレーザ光を照射し、照射したレーザ光の反射光を受光するまでに要した時間と、照射角度と、に基づいて物体検知する装置とされる。特許文献1の段落番号0027を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−223757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記レーザレンジファインダにおいては、レーザ光の照射角度を水平にスイープさせる際、(1)スイープ範囲や(2)検知の頻度、(3)一回の検知に要する時間を考慮して、例えば図9に示すように照射角度を例えば2度ずつ変化させるようにしている。なぜなら、照射角度の変化幅Δθと上記(1)〜(3)とは、トレードオフの関係にあるからである。これが故に、物体の検知に際し、図9に示すように必然的にある種の検知の歯抜けなるものが認められる。要するに、上記レーザレンジファインダを用いた物体検知では、細い棒や細い柱、人間の脚といった細物を全く検知できない場合があった。
【0005】
本願発明の目的は、細い棒や細い柱、人間の脚といった細物を確実に検知可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の第1の観点によれば、以下のように構成される障害物検知装置が提供される。即ち、障害物検知装置は、画像データを記憶する第1画像データ記憶手段と、前記画像データに基づいて画像を投影する画像投影手段と、映し出された画像を撮影して画像データを生成する画像撮影手段と、生成された前記画像データを記憶する第2画像データ記憶手段と、前記第1画像データ記憶手段に記憶されている前記画像データと、前記第2画像データ記憶手段に記憶されている前記画像データと、を比較する画像データ比較手段と、を備える。◆以上の構成は、上記特許文献1に開示のレーザレンジファインダと比較して検知の原理がまるで異なるので、上記で指摘した問題点が全くない。即ち、上記の構成によれば、細い棒や細い柱、人間の脚といった細物を確実に検知することができる。
【0007】
本願発明の第2の観点によれば、以下のように構成される障害物検知装置が提供される。即ち、障害物検知装置は、画像データを記憶する第1画像データ記憶手段と、前記画像データに基づいて画像を投影する画像投影手段と、映し出された画像を撮影して画像データを生成する画像撮影手段と、生成された前記画像データを記憶する第2画像データ記憶手段と、前記第2画像データ記憶手段に記憶されている前記画像データの変化の有無を判定する画像データ変化判定手段と、を備える。◆以上の構成は、上記特許文献1に開示のレーザレンジファインダと比較して検知の原理がまるで異なるので、上記で指摘した問題点が全くない。即ち、上記の構成によれば、細い棒や細い柱、人間の脚といった細物を確実に検知することができる。
【0008】
本願発明の第3の観点によれば、以下のように構成される自律移動体が提供される。即ち、自律移動体は、自律移動体本体と、前記自律移動体本体を移動させるための駆動手段と、前記駆動手段を制御する制御手段と、上記の障害物検知装置と、を備える。◆以上の構成によれば、優れた障害物検知装置を備えた自律移動体が提供される。
【0009】
上記の自律移動体は、更に、以下のように構成される。即ち、前記画像投影手段は、前記画像を水平よりも下向きに投影する。◆以上の構成によれば、前記画像を水平に投影した場合と比較して、前記自律移動体の近傍に前記画像が映し出されるので、この点、前記画像撮影手段が映し出された前記画像を問題なく撮影することができるようになる。
【0010】
上記の自律移動体は、更に、以下のように構成される。即ち、前記制御手段は、前記自律移動体本体の移動方向に応じて異なる画像データを前記第1画像データ記憶手段に記憶させる。◆以上の構成によれば、前記自律移動体の周囲にいる人達に、前記自律移動体の移動方向を知らせることができる。
【0011】
上記の自律移動体は、更に、以下のように構成される。即ち、前記第1画像データ記憶手段に記憶される前記画像データの画像は、矢印模様である。
【0012】
本願発明の第4の観点によれば、障害物の検知は、以下のような方法で行われる。即ち、画像を投影するステップと、映し出された画像を撮影するステップと、投影した画像と、映し出された画像と、を比較するステップと、を含む方法で行われる。◆以上の方法によれば、上記特許文献1に開示のレーザレンジファインダと比較して検知の原理がまるで異なるので、上記で指摘した問題点が全くない。即ち、上記の方法によれば、細い棒や細い柱、人間の脚といった細物を確実に検知することができる。
【0013】
本願発明の第5の観点によれば、障害物の検知は、以下のような方法で行われる。即ち、画像を投影するステップと、映し出された画像を撮影するステップと、映し出された画像の変化の有無を判定するステップと、を含む方法で行われる。◆以上の方法によれば、上記特許文献1に開示のレーザレンジファインダと比較して検知の原理がまるで異なるので、上記で指摘した問題点が全くない。即ち、上記の方法によれば、細い棒や細い柱、人間の脚といった細物を確実に検知することができる。
【発明の効果】
【0014】
本願発明によれば、細い棒や細い柱、人間の脚といった細物を確実に検知することができる技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本願発明の第1実施形態に係る自律移動型ロボットの斜視図
【図2】自律移動型ロボットの機能ブロック図
【図3】画像DBに格納された画像データの画像を例示する図
【図4】自律移動型ロボットの制御フロー
【図5】図5(a)は投影される画像を示し、図5(b)は映し出された画像を示し、図5(c)は補正後の画像を示す。
【図6】本願発明の第2実施形態に係る自律移動型ロボットの機能ブロック図
【図7】自律移動型ロボットの制御フロー
【図8】自律移動型ロボットの制御フロー
【図9】関連技術の問題点を指摘するための平面図
【図10】関連技術の問題点を指摘するための斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、図1〜図5を参照しつつ、本願発明の第1実施形態に係る自律移動型ロボットを説明する。
【0017】
図1には、本実施形態に係る自律移動型ロボット100(自律移動体)が紙面左下に向かって前進走行している様子を示している。図1及び図2に示すように、自律移動型ロボット100は、頭部1と胴部2から成るロボット本体3(自律移動体本体)と、頭部1の側面に設けられたプロジェクタ4(画像投影手段)と、胴部2の側面に設けられたカメラ5(画像撮影手段)と、胴部2の側面に取り付けられた4つの車輪6と、車輪6を回転駆動するための4つのモータ7と、制御ユニット8と、を主たる構成として備えている。
【0018】
図1に示すように、上記の頭部1は胴部2上に搭載されたかたちとなっており、プロジェクタ4とカメラ5は、自律移動型ロボット100の平面視で同一方向に向けられている。従って、図1の斜視図において、プロジェクタ4はカメラ5の略上方に配置されることになる。この構成で、自律移動型ロボット100がプロジェクタ4やカメラ5の向いている方向に向かって前進又は後進できるよう、上記の車輪6は自律移動型ロボット100の正面視でカメラ5を挟む位置に設けられている。更に言えば、カメラ5を挟んで片側の車輪6の回転数と、他側の車輪6の回転数と、を違わせることで、自律移動型ロボット100は、問題なく右折や左折ができるようになっている。
【0019】
図2に示す制御ユニット8は、中央演算処理器としてのCPU(Central Processing Unit)と、読み書き自在のRAM(Random Access Memory)、読み出し専用のROM(Read Only Memory)を備えている。そして、CPUがROMに記憶されている制御プログラムを読み出して実行することで、制御プログラムは、CPUなどのハードウェアを、制御部9(制御手段、投影画像作成手段)、メモリA10(第1画像データ記憶手段)、補正部11(画像処理手段)、メモリB12(第2画像データ記憶手段)、比較部13(画像データ比較手段、障害物検出手段)、行動パターンDB14、画像DB15、として機能させる。制御ユニット8は、更に、駆動回路16(駆動手段)を備えている。
【0020】
(DB関連)
行動パターンDB14は、自律移動型ロボット100の行動パターンデータを複数、記憶している。行動パターンデータとは、例えば、A地点からB地点へと移動する2点間パターンデータなどが挙げられる。そして、各行動パターンデータは、「go straight by one unit of length(前進)」、「turn right while going by one unit of length(右折)」、「turn left while going by one unit of length(左折)」といった行動命令信号の組み合わせで構成されている。画像DB15には、図3に示すように、連番のインデックスと関連付けられたかたちで、複数の青色矢印模様(進行方向指示マーク)が画像データとして蓄積されている。例えばインデックス0の画像は、前進移動をイメージしている。同様に、インデックス1の画像は右折移動をイメージし、インデックス2の画像は左折移動をイメージしている。
【0021】
(基本動作)
制御部9は、駆動回路16を制御する。具体的には、制御部9は、行動パターンDB14に行動パターンデータ要求信号を送信することで、行動パターンDB14から所望の行動パターンデータを受信する。そして、制御部9は、受信した行動パターンデータに含まれる多数の行動命令信号を先頭から末尾に向かって順番に駆動回路16に送信する。駆動回路16は、ロボット本体3を移動させるためのものである。具体的には、駆動回路16は、制御部9から受信した行動命令信号に基づいて各モータ7を駆動制御し、これにより、ロボット本体3を前進させたり右折又は左折させたり、或いは停止させたりする。
【0022】
(画像生成)
制御部9は、駆動回路16に送信しようとする行動命令信号に基づいて画像DB15に画像データ要求信号を送信し、画像DB15から所望の画像データを受信する。具体的には、例えば駆動回路16に送信しようとする行動命令信号が「go straight by one unit of length」であるとき、制御部9は、画像DB15に「get index 0」などといった画像データ要求信号を送信し、画像DB15からインデックス0の画像データを受信する(図3、図5(a)も併せて参照)。制御部9は、画像DB15から受信した画像データをメモリA10へ送信して記憶させる。従って、別の言葉で言えば、制御部9は、ロボット本体3の移動方向に応じて異なる画像データを画像DB15から取得すると共にメモリA10に記憶させる。
【0023】
(投影)
メモリA10は、制御部9から受信した画像データを記憶する。このメモリA10に記憶されている画像データは、プロジェクタ4によって随時読み出される。プロジェクタ4は、メモリA10から読み出した画像データに基づいて画像を生成すると共にその画像を自律移動型ロボット100の正面方向に投影する。具体的には、プロジェクタ4は、上記画像を図1に示すように若干斜め下向き、少なくとも水平よりも下向きに投影する。
【0024】
(撮影及び補正)
カメラ5は、プロジェクタ4によって投影されることで主として地面G(図1を併せて参照)に映し出された画像を撮影して画像データを生成し、生成した画像データを補正部11に送信する。補正部11は、カメラ5が生成した画像データを補正する。具体的には、補正部11は、カメラ5によって生成された画像データから、矢印模様相当部分Pのみを抽出すると共に、投影に伴って発生した間延びを相殺する形状補正をする。更に具体的には、補正部11は、カメラ5が撮影した風景の色合いや明暗などを十分に加味しつつ、矢印模様相当部分Pとそれ以外の部分との違いを強調できるようなフィルタリング処理を画像データに対して実行する。このようなフィルタリング処理の一例としては、画像データの各ピクセルの三原色のうち青成分に対して閾値を設け、この閾値を下回るピクセルは白とし、反対に上回るピクセルは黒とする、などが挙げられる。次に、補正部11は、フィルタリング処理された画像データに対して形状補正のフィルタリング処理を実行する。このフィルタリング処理の一例としては、自律移動型ロボット100の側面視で特定できるプロジェクタ4の投影角度、プロジェクタ4に対するカメラ5の相対的な位置関係、などを加味しつつ、プロジェクタ4による投影によって発生した間延びを相殺する、などが挙げられる(図5(b)及び(c)も併せて参照)。そして、補正部11は、各種のフィルタリング処理後の画像データから矢印模様相当部分Pのみを抽出し、上記抽出によって生成した画像データ(図5(c)参照)をメモリB12に送信して記憶させる。
【0025】
(パターンマッチング)
比較部13は、メモリA10に記憶されている画像データと、メモリB12に記憶されている画像データと、を比較する。具体的には、比較部13は、メモリA10から読み込んだ画像データの画像と、メモリB12から読み込んだ画像データの画像と、の一致不一致を公知のパターンマッチング技術を利用して比較判定する。このパターンマッチングによる一致不一致の判定の閾値は、自律移動型ロボット100が走行する環境に応じて適宜に調整すればよい。そして、比較判定の結果が不一致であった場合は、比較部13は、障害物を検知したとして、制御部9に対してアラーム信号を送信する。一方、比較判定の結果が一致であった場合は、比較部13は、障害物を検知しなかったとして、制御部9に対してアラーム信号を送信しない。
【0026】
制御部9は、アラーム信号を受信すると、待機命令信号を駆動回路16に対して送信する。
【0027】
本実施形態において、障害物検知装置は、少なくとも、メモリA10と、プロジェクタ4と、カメラ5と、メモリB12と、比較部13を含んで構成されている。
【0028】
(作動)
次に、自律移動型ロボット100の作動について説明する。
【0029】
先ず、オペレータが自律移動型ロボット100の電源を投入し(S300)、続いて図略の入力手段を用いて行動パターンデータを指定する(S310)。
【0030】
オペレータが行動パターンデータを指定すると(S310)、制御部9は、行動パターンデータ要求信号を行動パターンDB14に送信することで、行動パターンDB14から所望の行動パターンデータを受信する(S320)。
【0031】
次いで、制御部9は、受信した行動パターンデータの先頭の行動命令信号から末尾の行動命令信号に向かって順に実行していく。概略的に言えば、制御部9は、先頭の行動命令信号から末尾の行動命令信号に向かって一つずつ順に、S330で行動命令信号を取得し、S460で行動命令信号を実行し、すべての行動命令信号を実行したら(S470:YES)、処理を終了させる(S450)。
【0032】
詳しくは、制御部9は、実行しようとする行動命令信号を取得する。(S330)。そして、制御部9は、取得した行動命令信号に基づいて(S340)画像DB15に画像データ要求信号を送信することで、所望の画像データを画像DB15から受信して取得する(S350〜S352)。具体的には、制御部9が実行しようとする行動命令信号が「go straight by one unit of length」であったとき、画像データ要求信号は「get index 0」となり、この画像データ要求信号が制御部9から画像DB15に送信される。これを受けて、画像DB15は、インデックス0の画像データを制御部9に送信する。この画像データの画像は、従って、図5(a)で示すものとなる。
【0033】
制御部9は、画像DB15から受信した画像データをメモリA10に記憶させる(S360)。
【0034】
プロジェクタ4は、メモリA10から読み込んだ画像データに基づいて画像を自律移動型ロボット100の正面側に、若干斜め下向きに投影する(S370)。このとき、地面や障害物に映し出された画像は、例えば図5(b)のようになる。
【0035】
カメラ5は、プロジェクタ4によって投影されることで図5(b)のように映し出された画像を撮影して画像データを生成し(S380)、生成した画像データを補正部11に送信する。
【0036】
補正部11は、カメラ5によって生成された画像データから、プロジェクタ4によって投影された矢印模様相当部分Pのみを抽出すると共に、投影に伴って間延びした画像を元に戻す形状補正を画像データに対して実行する(S390)。補正後の画像データの画像を図5(c)に示す。
【0037】
補正後の画像データはメモリB12に送信され、メモリB12に記憶される(S400)。
【0038】
次いで、比較部13は、メモリA10に記憶されている画像データの画像(図5(a)参照)と、メモリB12に記憶されている画像データの画像(図5(c)参照)と、の一致不一致を公知のパターンマッチング技術を利用して比較判定する(S410)。ここで、図4の「パターンマッチング(A,B)」の「(A,B)」は、メモリA10とメモリB12を示唆するものである。
【0039】
そして、比較部13による比較判定の結果が不一致であった場合(S420:NO)は、比較部13は、障害物を検知したとして、制御部9に対してアラーム信号を送信する(S430)。アラーム信号を受信した制御部9は、ロボット本体3と障害物との衝突を回避すべく、待機命令信号を駆動回路16に送信し(S440)、駆動回路16は待機制御を実行する。即ち、自律移動型ロボット100が移動状態から停止状態へと切り替わる。そして、処理を終了する(S450)。
【0040】
一方、比較部13による比較判定の結果が一致であった場合(S420:YES)は、比較部13は、障害物を検知しなかったとして、制御部9に対してアラーム信号を送信することなく、S330で取得した行動命令信号を駆動回路16に送信し(S460)、駆動回路16は受信した行動命令信号に基づいて各モータ7を駆動制御する。即ち、ここでは、行動命令信号は「go straight by one unit of length」であるから、自律移動型ロボット100は単位距離だけ前進する。
【0041】
次に、制御部9は、行動パターンDB14から受信して取得した行動パターンデータ内で、次に実行すべき行動命令信号の有無を判定する(S470)。そして、判定の結果、次に実行すべき行動命令信号が無い場合(S470:YES)は、処理は終了する(S450)。一方、判定の結果、次に実行すべき行動命令信号が有る場合(S470:NO)は、処理はS330へと戻り、制御部9は次の行動命令信号を取得することになる(S330)。
【0042】
(まとめ)
(1)以上説明したように上記実施形態において障害物検知装置は、画像データを記憶するメモリA10と、前記画像データに基づいて画像を投影するプロジェクタ4と、映し出された画像を撮影して画像データを生成するカメラ5と、生成された前記画像データを記憶するメモリB12と、メモリA10に記憶されている前記画像データと、メモリB12に記憶されている前記画像データと、を比較する比較部13と、を備える。◆以上の構成は、上記特許文献1に開示のレーザレンジファインダと比較して検知の原理がまるで異なるので、上記で指摘した問題点が全くない。即ち、上記の構成によれば、細い棒や細い柱、人間の脚といった細物を確実に検知することができる。
【0043】
(3)また、自律移動型ロボット100は、ロボット本体3と、ロボット本体3を移動させるための駆動回路16と、駆動回路16を制御する制御部9と、上記の障害物検知装置と、を備える。◆以上の構成によれば、優れた障害物検知装置を備えた自律移動型ロボット100が提供される。
【0044】
なお、上記の優れた障害物検知装置は、自律移動型ロボット100に限らず、他の自律移動体にも応用することができる。例えば、自立移動型であって倒立二輪機能を有するロボット車椅子にも上記障害物検知装置は適用することができる。
【0045】
(4)プロジェクタ4は、前記画像を水平よりも下向きに投影する。◆以上の構成によれば、前記画像を水平に投影した場合と比較して、自律移動型ロボット100の近傍に前記画像が映し出されるので、この点、カメラ5が映し出された前記画像を問題なく撮影することができるようになる。要するに、障害物の検知率の向上に寄与する。
【0046】
なお、プロジェクタ4が画像を投影する方向は、必ずしも斜め下向きである必要はなく、水平や斜め上方とすることは許容され得る。
【0047】
(5)制御部9は、図3や図4のS340に示すように、ロボット本体3の移動方向に応じて異なる画像データをメモリA10に記憶させる。◆以上の構成によれば、自律移動型ロボット100の周囲にいる人達に、自律移動型ロボット100の移動方向を知らせることができる。この技術は、ロボットと人との調和に貢献すると考えられる。
【0048】
(6)メモリA10に記憶される前記画像データの画像は、図3に示すように、矢印模様であることが好ましい。このように矢印模様を採用することで、自律移動型ロボット100の移動方向を自律移動型ロボット100の周囲にいる人達に強烈にアピールできるので、その人達には、投影された矢印模様から極力離れておこうとする心理的作用が生じ、ひいてはロボットと人との衝突回避に貢献する。
【0049】
(7)また、本実施形態では、障害物の検知は、画像を投影するステップ(S370)と、映し出された画像を撮影するステップ(S380)と、投影した画像と、映し出された画像と、を比較するステップ(S410)と、を含む方法で行われる。◆以上の方法によれば、上記特許文献1に開示のレーザレンジファインダと比較して検知の原理がまるで異なるので、上記で指摘した問題点が全くない。即ち、上記の方法によれば、細い棒や細い柱、人間の脚といった細物を確実に検知することができる。
【0050】
以上に本願発明の好適な第1実施形態を説明したが、以下、若干補足説明をする。
【0051】
自律移動体の分野における今後の傾向として、自律移動体には画像認識モジュールとしてのカメラが必須の構成として搭載されると考えられる。また、自律移動体自身の意思表示のために、自律移動体にはプロジェクタが搭載されるものと予測される。一方で、上記実施形態における障害物検知装置は、カメラ5やプロジェクタ4を利用するものである。この点、上記実施形態に係る障害物検知装置は、自律移動体の分野における今後の予測されるトレンドに乗り易い構成であると評価することができる。
【0052】
(第2実施形態)
以下、図6〜図8を参照しつつ、本願発明の第2実施形態に係る自律移動型ロボットを説明する。以下、本実施形態が上記第1実施形態と相違する点を中心に説明し、重複する説明は適宜割愛する。上記第1実施形態の構成要素と対応する構成要素には原則として同一の符号を付す。
【0053】
本実施形態の概要は次の通りである。即ち、上記第1実施形態では、投影した画像と、映し出された画像と、の一致不一致を判定することで障害物を検知している。これに対し、第2実施形態では、次に実行しようとする行動命令信号が前回実行した行動命令信号と違わない場合は、投影する画像も変化しないことから、映し出された画像に変化があったか否かを単に判定することで障害物を検知することとしている。
【0054】
詳しくは、図6に示すように、本実施形態に係る制御ユニット8は、メモリA10やメモリB12に加えて、メモリC17を備えている。
【0055】
そして、本実施形態において制御部9は、補正部11と比較部13の動作を制御できるようになっている。
【0056】
具体的には、補正部11は、補正後の画像データをメモリB12とメモリC17に送信して夫々に記憶させる場合と、補正後の画像データをメモリB12のみに送信して記憶させる場合と、の間で切替可能に構成されている。そして、制御部9は、補正部11の動作の切り替えを所定の切替信号を送信することで制御するようになっている。詳しくは、制御部9は、初回の場合と、前回実行した行動命令信号と今回実行しようとする行動命令信号とが異なる場合は、補正部11の動作を前者に切り替える。他方、制御部9は、前回実行した行動命令信号と今回実行しようとする行動命令信号とが同一である場合は、補正部11の動作を後者に切り替える。
【0057】
また、比較部13は、メモリA10に記憶されている画像データと、メモリB12に記憶されている画像データと、を比較する場合と、メモリB12に記憶されている画像データと、メモリC17に記憶されている画像データと、を比較する場合と、の間で切替可能に構成されている。そして、制御部9は、比較部13の動作の切り替えを所定の切替信号を送信することで制御するようになっている。詳しくは、制御部9は、初回の場合と、前回実行した行動命令信号と今回実行しようとする行動命令信号とが異なる場合は、比較部13の動作を前者に切り替える。他方、制御部9は、前回実行した行動命令信号と今回実行しようとする行動命令信号とが同一である場合は、比較部13の動作を後者に切り替える。
【0058】
本実施形態において、メモリB12に記憶されている画像データの変化の有無を判定する画像データ変化判定手段は、比較部13とメモリC17によって構成されている。
【0059】
(作動)
次に、自律移動型ロボット100の作動について説明する。
【0060】
図7のS300〜S390については、上記第1実施形態と同様であるからその説明を割愛する。
【0061】
補正部11による補正後の画像データはメモリB12とメモリC17に送信され、メモリB12とメモリC17に夫々記憶される(S700)。
【0062】
図7のS410〜S460については、上記第1実施形態と同様であるからその説明を割愛する。
【0063】
制御部9は、行動パターンDB14から受信して取得した行動パターンデータ内で、次に実行すべき行動命令信号の有無を判定する(S710)。そして、判定の結果、次に実行すべき行動命令信号が無い場合(S710:YES)は、処理は終了する(S450)。一方、判定の結果、次に実行すべき行動命令信号が有る場合(S710:NO)は、処理は図8のS720へと進み、制御部9は次の行動命令信号を取得することになる(S720)。
【0064】
制御部9は、S720の処理前後で行動命令信号に変化があったかを判定する(S730)。制御部9の判定の結果、S720の処理前後で行動命令信号に変化があった場合(S730:NO)は、制御部9は補正部11と比較部13に上記の切替信号を送信して、補正部11と比較部13の作動が前述した前者となるように切り替えると共に、処理を図7のS340へと戻す。一方、制御部9の判定の結果、S720の処理前後で行動命令信号に変化がなかった場合(S730:YES)は、制御部9は補正部11と比較部13に上記の切替信号を送信して、補正部11と比較部13の作動が前述した後者となるように切り替えると共に、処理をS740へと進める。
【0065】
即ち、行動命令信号に変化がなかったのであるから、メモリA10の記憶内容を変更する必要はない。従って、S720で制御部9が取得した行動命令信号に基づいて画像データを取得したり、取得した画像データを改めてメモリA10に記憶させることを要しない。
【0066】
プロジェクタ4による投影(S740)、カメラ5による撮影(S750)、補正部11による補正(S760)は、上記第1実施形態と同様であるから説明は割愛する。
【0067】
補正後の画像データはメモリB12にのみ送信され、メモリB12にのみ記憶される(S770)。
【0068】
次いで、比較部13は、メモリB12に記憶されている画像データと、メモリC17に記憶されている画像データと、の一致不一致を公知のパターンマッチング技術を利用して比較判定する(S780)。
【0069】
そして、比較部13による比較判定の結果が不一致であった場合(S790:NO)は、比較部13は、障害物を検知したとして、制御部9に対してアラーム信号を送信する(S800)。アラーム信号を受信した制御部9は、ロボット本体3と障害物との衝突を回避すべく、待機命令信号を駆動回路16に送信し(S810)、駆動回路16は待機制御を実行する。即ち、自律移動型ロボット100が移動状態から停止状態へと切り替わる。そして、処理を終了する(S820)。
【0070】
一方、比較部13による比較判定の結果が一致であった場合(S790:YES)は、比較部13は、障害物を検知しなかったとして、制御部9に対してアラーム信号を送信することなく、S720で取得した行動命令信号を駆動回路16に送信し(S830)、駆動回路16は受信した行動命令信号に基づいて各モータ7を駆動制御する。
【0071】
次に、制御部9は、行動パターンDB14から受信して取得した行動パターンデータ内で、次に実行すべき行動命令信号の有無を判定する(S840)。そして、判定の結果、次に実行すべき行動命令信号が無い場合(S840:YES)は、処理は終了する(S820)。一方、判定の結果、次に実行すべき行動命令信号が有る場合(S820:NO)は、処理はS720へと戻り、制御部9は次の行動命令信号を取得することになる(S720)。
【0072】
(まとめ)
(2)以上説明したように本実施形態において障害物検知装置は、画像データを記憶するメモリA10と、前記画像データに基づいて画像を投影するプロジェクタ4と、映し出された画像を撮影して画像データを生成するカメラ5と、生成された前記画像データを記憶するメモリB12と、メモリB12に記憶されている前記画像データの変化の有無を判定する画像データ変化判定手段(比較部13、メモリC17)と、を備える。◆以上の構成は、上記特許文献1に開示のレーザレンジファインダと比較して検知の原理がまるで異なるので、上記で指摘した問題点が全くない。即ち、上記の構成によれば、細い棒や細い柱、人間の脚といった細物を確実に検知することができる。
【0073】
(8)また、本実施形態では、障害物の検知は、画像を投影するステップ(S740)と、映し出された画像を撮影するステップ(S750)と、映し出された画像の変化の有無を判定するステップ(S780)と、を含む方法で行われる。◆以上の方法によれば、上記特許文献1に開示のレーザレンジファインダと比較して検知の原理がまるで異なるので、上記で指摘した問題点が全くない。即ち、上記の方法によれば、細い棒や細い柱、人間の脚といった細物を確実に検知することができる。
【0074】
以上に本願発明の好適な実施形態を説明したが、最後に、本願発明の技術思想と、公知の光切断法と、の違いについて詳しく説明しておく。図10として、特開2010-014505号公報から抜き出した図面を添付した。この図からも判る通り、光切断法とは、光を水平方向に放射すると共にスリットで幅狭に絞り、この幅狭の光を別角度から観察することで、被観察物体の形状を三次元的に把握するための手段である。この光切断法は三次元測定器の分野において特に重宝されるものである。しかし、図10に示すように、光切断法は、被観察物体を、光源から被観察物体を望む方角とは全く異なる方角から撮影することが理屈上必須である。従って、光切断法を自律移動体に適用しようとすると、自律移動体は幅広な、横長な形状となってしまい、スリムとは言い難く成る。この意味で、本願発明に係る障害物検知装置が如何に自律移動体に適しているか、容易に理解されよう。なお、言うまでもないが、自律移動体は、必ずしもスリムでなければならないわけではない。
【符号の説明】
【0075】
3 ロボット本体
4 プロジェクタ
5 カメラ
10 メモリA
12 メモリB
13 比較部
100 自律移動型ロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを記憶する第1画像データ記憶手段と、
前記画像データに基づいて画像を投影する画像投影手段と、
映し出された画像を撮影して画像データを生成する画像撮影手段と、
生成された前記画像データを記憶する第2画像データ記憶手段と、
前記第1画像データ記憶手段に記憶されている前記画像データと、前記第2画像データ記憶手段に記憶されている前記画像データと、を比較する画像データ比較手段と、
を備える、
障害物検知装置。
【請求項2】
画像データを記憶する第1画像データ記憶手段と、
前記画像データに基づいて画像を投影する画像投影手段と、
映し出された画像を撮影して画像データを生成する画像撮影手段と、
生成された前記画像データを記憶する第2画像データ記憶手段と、
前記第2画像データ記憶手段に記憶されている前記画像データの変化の有無を判定する画像データ変化判定手段と、
を備える、
障害物検知装置。
【請求項3】
自律移動体本体と、
前記自律移動体本体を移動させるための駆動手段と、
前記駆動手段を制御する制御手段と、
請求項1又は2に記載の障害物検知装置と、
を備えた、自律移動体。
【請求項4】
請求項3に記載の自律移動体であって、
前記画像投影手段は、前記画像を水平よりも下向きに投影する、
自律移動体。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の自律移動体であって、
前記制御手段は、前記自律移動体本体の移動方向に応じて異なる画像データを前記第1画像データ記憶手段に記憶させる、
自律移動体。
【請求項6】
請求項5に記載の自律移動体であって、
前記第1画像データ記憶手段に記憶される前記画像データの画像は、矢印模様である、
自律移動体。
【請求項7】
画像を投影するステップと、
映し出された画像を撮影するステップと、
投影した画像と、映し出された画像と、を比較するステップと、
を含む、障害物検知方法。
【請求項8】
画像を投影するステップと、
映し出された画像を撮影するステップと、
映し出された画像の変化の有無を判定するステップと、
を含む、障害物検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−186838(P2011−186838A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52077(P2010−52077)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】