説明

離型用積層ポリエチレンテレフタレートフィルム

【課題】ピンホールの発生が少ないセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを製造し得る、離型用積層ポリエチレンテレフタレートフィルムを提供する。
【解決手段】少なくとも2層以上からなる二軸配向積層ポリエチレンテレフタレートフィルムであって、離型剤を塗布する面と反対面を形成する層(表面層B)の三次元中心面平均表面粗さ(SRa)が10〜50nmであり、離型剤を塗布する面を形成する層(表面層A)は、粒子を実質的に含有せず、少なくとも表面層Aを構成するポリエチレンテレフタレートにおけるヒドロキシル(OH)末端量が70eq/ton以下かつ、環状三量体含有量が0.45質量%以下である離型用積層ポリエチレンテレフタレートフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型用積層ポリエチレンテレフタレートフィルムに関するものであり、詳しくはピンホールの発生が少なくセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを製造し得る、離型用積層ポリエチレンテレフタレートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とする離型フィルムが積層セラミックコンデンサー、セラミック基板等のセラミック成型用に使用されている。近年、積層セラミックコンデンサーの小型化・大容量化が進むに伴い、セラミックグリーンシートの厚みも益々薄膜化する傾向にある。グリーンシートのさらなる薄膜化に伴い、特に厚みが1μm以下の薄膜グリーンシートを成型しようとした場合、離型フィルムの離型面側の表面に粗大突起があると、離型フィルム上にセラミックスラリーを塗布する時にスラリーのはじき、あるいは、ピンホールの発生、グリーンシート剥離時にはグリーンシート破断等の不具合を生じる場合があり、その結果積層セラミックコンデンサーとしての不良率が悪化するといった問題を引き起こす場合がある。
【0003】
この問題を解決するために、離型剤を塗布する面に、実質的に滑剤を含まないフィルムにより、ピンホールの発生を好適に低減しうることが報告されている(特許文献1)。
【0004】
一方、従来から公知のポリエチレンテレフタレートは、数%の環状三量体等の環状オリゴマーを含有している。このような環状三量体等の環状オリゴマーは、ポリエチレンテレフタレートフィルムを加熱処理すると、フィルム表面にオリゴマーが析出し、フィルムが白化するという問題がある。そこでポリエチレンテレフタレートフィルム中オリゴマーを低減させるため、固相重合法によりポリエチレンテレフタレート原料の環状オリゴマー量を提言することが提案されている(特許文献2〜5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−62179号公報
【特許文献2】特開平9−99530号公報
【特許文献3】特開2000−141570号公報
【特許文献4】特開2003−191413号公報
【特許文献5】特開2003−301057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
離型フィルムとして使用する場合は、後工程において、基材フィルムの片面に、例えば熱付加型シリコーンを主成分とする離型層が設けられる。近年、生産性の向上から離型層付与において従来よりも高温/長時間での熱処理が施されるようになってきた。そのため、加熱処理によりフィルム表面へのオリゴマーの析出という問題が顕在化してきつつある。加えて、基材フィルムの平滑性が向上するにつれ、フィルム表面へのオリゴマーの析出により生じる表面凹凸がピンホール発生の要因となる問題が生じてきた。環状三量体などのオリゴマーはフィルム表面で硬い結晶構造を形成するため、薄膜グリーンシートを作成した際にピンホールが発生し、不良率が向上するのである。
【0007】
そのため、基材フィルムとしてオリゴマーを低減したポリエチレンテレフタレートを用いることは好適であるが、特許文献2〜5に提案の方法では、固相重合によりポリエチレンテレフタレート中の環状オリゴマー量の低減は図れるものの、その後の溶融時に環状オリゴマーが再生する問題があった。すなわち、フィルム製膜において原料ポリエステルを溶融する必要があり、従来公知の方法によりフィルム原料中の環状オリゴマー量の低減を行なっても、フィルム溶融製膜での熱履歴により副生成物として環状オリゴマーが生成することは避けられなかった。そのため、フィルム製膜時の溶融押出し工程での環状オリゴマーの再生成により、十分な低オリゴマーフィルムを実現するには至っていなかった。
【0008】
本発明は、上記従来の方法の有する問題点を解決し、加熱加工後においてもピンホールの発生の少ない離型用積層ポリエチレンテレフタレートフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリエステルの溶融時に再生される環状オリゴマーは、分子鎖のヒドロキシル(OH)末端の量に依存することを見出した。その理由に付いて次のように考えている。環状オリゴマーの主成分たる環状三量体は、ポリエステル分子鎖末端からの分解反応により生じるが、ヒドロキシル(OH)末端においてはヒドロキシル(OH)基による求核反応により環状三量体が生成しやすい。そこで、本発明では、離型層側のポリエチレンテレフタレートのヒドロキシル(OH)末端量を所定量以下にすることにより、溶融時の環状オリゴマー量の再生を抑制し、加熱処理後においても好適にピンホールの発生を抑制する平滑性にすぐれたフィルムを得るに至ったのである。
【0010】
すなわち、前記課題を解決することができる、本発明における第1の発明は、少なくとも2層以上からなる二軸配向積層ポリエチレンテレフタレートフィルムであって、離型剤を塗布する面と反対面を形成する層(表面層B)の三次元中心面平均表面粗さ(SRa)が10〜50nmであり、離型剤を塗布する面を形成する層(表面層A)は、粒子を実質的に含有せず、少なくとも表面層Aを構成するポリエチレンテレフタレートにおけるヒドロキシル(OH)末端量が70eq/ton以下かつ、環状三量体含有量が0.45質量%以下である離型用積層ポリエチレンテレフタレートフィルムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の離型用積層ポリエチレンテレフタレートフィルムによれば、加熱処理を経ても表面オリゴマーの析出が少ないため、離型層表面の平滑性が高度に維持され、ピンホールの発生が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の離型用積層ポリエチレンテレフタレートフィルムは、少なくとも2層以上のポリエチレンテレフタレート層からなる積層フィルムであり、離型剤を塗布する面を形成する層をA層、その反対面を形成する層をB層、これら以外の芯層をC層とすると、厚み方向の層構成はA/B、あるいはA/C/B等の積層構造が挙げられる。
【0013】
本発明では、離型層を設ける層(A層)を構成するポリエチレンテレフタレートのヒドロキシル(OH)末端量が70eq/ton以下かつ、環状三量体含有量が0.45質量%以下であることを特徴とする。A層を構成するポリエチレンテレフタレートの環状三量体量を低減することにより、加熱処理によるオリゴマーの析出に抑え、ピンホールの発生を防ぐことができる。なお、より好適にオリゴマーの析出を抑えるためには、A層以外の層のポリエチレンテレフタレートも上記特性を有してもよい。
【0014】
本発明のフィルムを170℃、20分間加熱したときのフィルムヘイズ変化量△Hz(△Hz=加熱後ヘイズ−加熱前ヘイズ)は0.5未満であることが好ましい。△Hzが0.5以上である場合には、フィルムの後加工工程において環状オリゴマーが析出し、ピンホールの要因となる表面オリゴマーの結晶が生じやすくなる。逆に、△Hzが0.5未満である場合は、後加工での熱処理においても表面オリゴマーの析出が抑制され、好適にピンホールの発生を抑制することができる。発明における好ましい△Hzの上限は0.3であり、より好ましくは0.1である。△Hzは小さいことが好ましいく、△Hzの下限は0である。
【0015】
本発明のA層を構成するポリエチレンテレフタレートのヒドロキシル(OH)末端量は70eq/ton以下であることが重要である。A層を構成するポリエチレンテレフタレートはヒドロキシル(OH)末端量が上記範囲に低減されることから、環状三量体の生成を好適に低減することができる。そのため、フィルム製膜時の溶融工程における環状三量体の再生を抑制することができ、フィルム原料の低オリゴマー量を好適に保持しやすい。上記ヒドロキシル(OH)末端量は68eq/ton以下がより好ましく、65eq/ton以下がよりさらに好ましい。上記ヒドロキシル(OH)末端量は少ないことが好ましいが、少なすぎる場合はA層を構成するポリエチレンテレフタレートの加水分解が生じやすくなる。よって、フィルムの耐久性の点からは、上記ヒドロキシル(OH)末端量の下限は40eq/ton以上が好ましく、50eq/ton以上がより好ましい。本発明はポリエステル樹脂中のヒドロキシル(OH)末端の環状オリゴマー再生に及ぼす影響を見出したことが重要であり、ポリエチレンテレフタレートのヒドキシル(OH)末端量を制御する方法は特に問わないが、フィルム原料を水雰囲気下で熱処理を施すことにより好適にヒドキシル(OH)末端量を制御することができる。
【0016】
本発明のA層を構成するポリエチレンテレフタレートの環状三量体含有量は0.45質量%以下である必要がある。環状三量体含有量が0.45質量%以上である場合には、加熱処理によってピンホール発生の要因となる表面オリゴマーが析出しやすくなる場合がある。ポリエチレンテレフタレートの環状三量体量を上記範囲にするためには、樹脂原料に熱処理などを施すことが好ましいが、本発明ではヒドロキシル(OH)末端量を低減させることにより、フィルム中の環状三量体量を上記範囲に好適に低減することができる。本発明における好ましい環状三量体含有量の上限は0.40質量%である。環状三量体量は少ないことが好ましいが、生産性の点を考えると、上記環状三量体量の下限は0.05質量%が好ましく、0.10質量%がより好ましく、0.20質量%よりさらに好ましい。
【0017】
本発明のフィルムの固有粘度は、0.40dl/gから0.68dl/gの範囲が好ましい。固有粘度が0.40dl/gよりも低いと、フィルムが裂けやすくなり、0.70dl/gより大きいと濾圧上昇が大きくなって高精度濾過が困難となる。PETの固有粘度の上限は0.65dl/gが好ましく、0.63dl/gがより好ましい。さらに、上記下限は0.50dl/gが好ましく、0.55dl/gがより好ましい。
【0018】
ポリエチレンテレフタレート(以下、単にPETという)の重合法としては、テレフタル酸とエチレングリコール、および必要に応じて他のジカルボン酸成分およびジオール成分を直接反応させる直接重合法、およびテレフタル酸のジメチルエステル(必要に応じて他のジカルボン酸のメチルエステルを含む)とエチレングリコール(必要に応じて他のジオール成分を含む)とをエステル交換反応させるエステル交換法等の任意の製造方法が利用され得る。
【0019】
また、前記ポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、0.45dl/gから0.70dl/gの範囲が好ましい。固有粘度が0.45dl/gよりも低いと、フィルムが裂けやすくなり、0.70dl/gより大きいと濾圧上昇が大きくなって高精度濾過が困難となる。PETの固有粘度の上限は0.68dl/gが好ましく、0.65dl/gがより好ましい。さらに、上記下限は0.48dl/gが好ましく、0.50dl/gがより好ましい。
【0020】
粗製ポリエチレンテレフタレート調製時の触媒として、従来公知のMn、Mg、Ca、Ti、Ge、Al、Sb、Co化合物、リン化合物、アンチモン化合物などが使用される。ポリエステル溶融時に環状オリゴマーの再生を抑制する方法として触媒を失活させる方法が提案されているが、本発明では係る工程を経ることなく好適に環状オリゴマーの再生を抑制することができる。なお、ここで「粗製ポリエチレンテレフタレート」とは後述の熱処理前のポリエステルを区分して表現するものである。
【0021】
上記ジカルボン酸成分とグリコール成分とを含む組成物には、ポリエステルの最終用途に応じて、安定剤、顔料、染料、核剤、充填剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、抗菌剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤などの添加剤が含有され得る。
【0022】
次に、得られた粗製ポリエチレンテレフタレートをシートカット法、ストランドカット法などにより、適宜、チップ状(例えば、円柱状)、粒子状などに成形する。例えば、チップの成形は、粗製ポリエステルの溶融体をギヤーポンプでダイスから押出しストランドを形成し、このストランドをカッターで切断して、長軸×短軸×長さが約2.2×3.1×3.4mmの楕円柱状のチップを成形する。係るチップ形状に成型することにより、後述の熱処理により好適にフィルム原料のオリゴマー量の低減を図りつつ、チップ内部まで調湿効果を好適に及ぼすことができる。
【0023】
ポリエチレンテレフタレートのヒドロキシル(OH)末端量を低減させる方法としては、分子量を大きくして単位当たりの末端量を低減させる方法や、原料チップを水飽和させる方法などが挙げられる。なかでも、本発明ではフィルム原料となる粗製ポリエチレンテレフタレートを水雰囲気下で熱処理を施すことにより、環状オリゴマー含有量を好適に低減させるとともに、ヒドロキシル(OH)末端量を好適に低減させることができるので好ましい。係る熱処理は、水含有の湿調不活性ガスの流量下で190〜260℃での高温の熱処理を施すことを特徴とする。熱処理を不活性ガスの流量下で行うことにより、PET固有粘度を必要以上に上昇させることなく、好適に環状オリゴマーの低減を図ることができる。この点が従来の固相重合と相違する点である。また、従来、バッチ法で行なわれる固相重合法と異なり、流量下で連続的に処理ができる点で生産性にも優れる。
【0024】
さらに、係る熱処理を所定の水雰囲気下で行うことにより、ポリエチレンテレフタレート樹脂中のヒドロキシル(OH)末端量を好適に低減させることができる。水雰囲気下でヒドロキシル(OH)末端量が低減する理由については、以下のように考えている。すなわち、加熱処理によりヒドロキシル(OH)末端同士が脱エチレングリコール反応により結合し、ヒドロキシル(OH)末端が消費される。一方、水雰囲気下によりエステル反応の逆反応が生じ、ポリエステル分子量が低減し、新たな分子鎖末端が生じる。これらの反応が混合して生じるため、結果としてヒドロキシル(OH)末端が低減することになると考えられる。
【0025】
以下に、本発明における粗製ポリエチレンテレフタレートの熱処理条件について詳細に述べる。
【0026】
熱処理においては不活性ガス中の含水量は好ましくは3.5〜30.0g/Nmであり、より好ましくは4.0〜20.0g/Nmである。調湿不活性ガス中の含水量が3.5g/Nm未満の場合には、得られるポリエチレンテレフタレートの固有粘度の上昇が著しい。調湿不活性ガス中の含水量が過剰である場合には、加水分解反応が起こり、得られるポリエチレンテレフタレートの固有粘度が低下するおそれがある。
【0027】
不活性ガスとしては、ポリエチレンテレフタレートに対して不活性なガスが用いられ、例えば、窒素ガス、炭酸ガス、ヘリウムガスなどが挙げられる。特に、窒素ガスが安価であるため好ましい。
【0028】
加熱処理装置としては、上記粗製ポリエチレンテレフタレートと不活性ガスとを均一に接触し得る装置が望ましい。このような加熱処理装置としては、例えば、静置型乾燥機、回転型乾燥機、流動床型乾燥機、攪拌翼を有する乾燥機などが挙げられる。
【0029】
また、熱処理を実施する前にポリエチレンテレフタレートの水分は適度に除去しておくことと、熱処理時におけるポリマー同士の融着を防止するためにもポリマーを一部結晶化させておくのがより好ましい。
【0030】
熱処理において、加熱処理温度は好ましくは190℃〜260℃であり、より好ましくは200℃〜250℃である。加熱処理温度が190℃未満の場合には、粗製ポリエチレンテレフタレート中の環状オリゴマーの減少速度が小さくなる場合がある。加熱処理温度がポリエチレンテレフタレートの融点を越える温度の場合には、ポリエチレンテレフタレートが融解してしまい、接着が起こりやすい。そのため、得られるポリエチレンテレフタレートを加熱処理装置から取り出すことが困難となり、また、成形操作も困難となる場合がある。
【0031】
加熱処理時間は、通常、1〜70時間が好ましく、さらに好ましくは2〜60時間、さらに好ましくは、4〜50時間である。1時間未満の場合には、粗製ポリエチレンテレフタレート中の環状オリゴマーが充分に減少せず、70時間を越える場合には、粗製ポリエステル中の環状オリゴマーの減少速度が小さく、逆に熱劣化などの問題が生じるおそれがあり、色調が損なわれる。
【0032】
不活性気体の流量は、ポリエチレンテレフタレートの固有粘度と密接な関係がある。また、調湿不活性気体中に含まれる含水量もポリエチレンテレフタレートの固有粘度の変化に影響する。そのため、不活性気体の流量は、含水量および所望のポリエチレンテレフタレートの固有粘度、加熱処理温度などに応じて適宜選択されるべきである。
【0033】
例えば、調湿不活性気体の含水量が高い場合、水による加水分解などの悪影響を回避するために、流量は多くすることが好ましい。また、加熱処理温度を高温とする場合、ポリエチレンテレフタレートの固有粘度の上昇を抑制するために、不活性気体の流量は少なくすることが好ましい。
【0034】
不活性気体の流量は、好ましくはポリエチレンテレフタレート1kg当たり毎時1リットル以上、より好ましくは5リットル以上である。不活性気体の流量がポリエステル1kg当たり毎時1リットルより少ない場合には、酸素の混入などにより、得られる樹脂が黄色味を帯びるなどの悪影響が生じるおそれがある。不活性気体の流量の上限は、不活性気体中に含まれる含水量および加熱処理温度によって決定されるが、ポリエチレンテレフタレート1kg当たり毎時10,000リットル以下、好ましくは5,000リットル以下、さらに好ましくは2,000リットル以下である。不活性気体の流量を、10,000リットル以上としても、本発明の目的から逸脱するようなことはないが、経済的な面を考慮すれば、むやみに流量を多くする必要はない。
【0035】
本発明の熱処理は、常圧から微加圧状態下で不活性ガスを流通させながら、加熱処理することにより実施される。
【0036】
この場合、加圧は、加熱処理中に大気中の水分や酸素が反応機に混入するのを抑制することが目的であるから、加圧条件は5.0kg/cm以下で充分である。加圧条件が5.0kg/cmを越える場合でも、本発明の目的を逸脱することはないが、設備にコストがかかるため、必要以上に圧力を高くすることは意味がない。
【0037】
さらに、色調の面から流通させる不活性ガス中の酸素濃度は、50ppm以下、好ましくは25ppm以下が必要である。酸素濃度が50ppm以上では、本発明のポリエステルの劣化による色調悪化、具体的には黄変が激しく製品品質上問題となる。
【0038】
このようにして得られたポリエチレンテレフタレートは、好適には次式を満たすことが好ましい。
−0.05dl/g≦加熱処理前の極限粘度−加熱処理後の極限粘度≦0.05dl/g
【0039】
従来の固相重合法では、ポリエチレンテレフタレートの固有粘度が上昇し、押し出し成形を行う際の負荷が大きくなったり、剪断発熱によりポリエステルの温度が上昇し、熱分解を起こしたりする。これに対して、上記方法では固有粘度の上昇を抑制し、好適にフィルム製膜を行なうことができる。
【0040】
これらの処理によって、加熱処理後のポリエステル組成物の固有粘度(B)は0.50dl/g以上、0.70dl/g以下が好ましく、さらに加熱処理前のポリエステル組成物(粗製ポリエステル)の固有粘度(A)との間に、−0.05dl/g≦{(A)−(B)}≦0.05dl/gを満足することが好ましく、さらに、−0.02dl/g≦{(A)−(B)}≦0.02dl/gを満足することが好ましい。加熱処理後の固有粘度(B)を0.50dl/g以上とすることで製膜時の膜破れなどの発生が軽減され有利である。また、0.70dl/g以下とすることで、溶融成形時の剪断発熱で温度が上昇するのを軽減でき、製品中の環状オリゴマー量を抑えるのに有利である。
【0041】
また、−0.05dl/g≦{(A)−(B)}≦0.05dl/gを満足することで、フィルム成形時の不必要な温度上昇が無く、ポリエステルの環状オリゴマー量が少なく色調の良好なフィルムが得られる他、加熱処理前のポリエステル組成物(粗製ポリエステル)に関して、特別に低粘度又は高粘度の銘柄を新たに設ける必要が無く、他の製品として利用可能な既存のポリマーを用いて環状オリゴマー量を低くすることが可能となり、経済的に有利である。
【0042】
また、加熱処理後のポリエステル組成物の環状三量体の含有量は0.4質量%以下とする必要がある。さらに好ましくは0.35質量%である。0.4質量%を超える場合は、フィルム成形時に環状オリゴマーが再生し、フィルム製造時やフィルム加工工程で環状オリゴマーがフィルム表面に析出して工程を汚しフィルム製品欠点となるなどの問題を生じる場合がある。
【0043】
さらに、加熱処理後のポリエステル組成物のヒドロキシル(OH)末端量は65eq/ton以下である必要がある。ヒドロキシル(OH)末端量が低いほど、ポリエステル原料のフィルム化工程における溶融押出し時のオリゴマー再生成を抑制できる。60eq/ton以下がさらに好ましい。
【0044】
ピンホールの発生は離型層表面の表面凹凸によるもたらされる。そのため、離型層側表面(表面層A)は平滑であることが好ましく、本発明の表面層Aの三次元中心面平均表面粗さ(SRa)は2〜10nmであることが望ましい。離型層側の表面の三次元中心面平均表面粗さ(SRa)が、10nmを超える場合、薄膜セラミックグリーンシート成型における品質の低下につながるので、好ましくない。また、この微小な凹凸に起因する三次元中心面平均表面粗さ(SRa)は、小さい程好ましいが、フィルムの厚みむらや測定時のフィルムのうねり等を考慮すると、2nmが下限である。
【0045】
これに対して、反離型面(表面層B)の三次元中心面平均表面粗さ(SRa)は10〜50nmであることが望ましい。表面層Bの三次元中心面平均表面粗さ(SRa)が40nmを超える場合、ロール状に巻き取った際に表面層Aに凹凸構造が転写し、上記柚肌状の微小な凹凸が形成され易く、薄膜セラミックグリーンシート成型における品質の低下につながるので、好ましくない。一方、表面層Bの三次元中心面平均表面粗さ(SRa)が10nm未満の場合は、ロール巻き出し時にブロッキングが発生しやすくなるので、好ましくない。これを防止するためには、反離型面の突起高さ、突起密度の設計及び異物がないことが望ましい。
【0046】
離型剤を塗布する面を形成する層(A層)には、ピンホール低減の観点から、滑剤等の粒子を含まず、再生原料を使用しないことが好ましい。
【0047】
なお、本発明の離型用積層ポリエチレンテレフタレートフィルムにおいて、離型剤を塗布する面を形成する層(表面層A)は、粒子を実質的に含有しない。この「粒子を実質的に含有しない」とは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。
【0048】
離型剤を塗布する面の反対面(表面層Bの表面)の突起高さ、突起密度は、フィルム中の滑剤粒子の含有量及び/又は平均粒径及び/又は粒度分布等によって制御するとともに、滑剤として添加する、シリカや炭酸カルシウムなどの不活性微粒子の、ポリエステル中での分散を良くすることで制御することが好ましい。
【0049】
離型剤を塗布する面の反対面を形成する層(B層)には、フィルムの滑り性や空気の抜けやすさの観点から、シリカ又は炭酸カルシウム粒子などの粒子を、その合計で1000〜15000ppm含有させることが好ましい。粒子濃度が1000ppm未満では、フィルムをロール状に巻き上げる際に、空気を均一に逃がすことが困難であり、粒子濃度が15000ppmを超える場合では、滑剤の凝集物が生じ易くなり、粗大突起によって、柚肌状の微小な凹凸が発生し、薄膜セラミックグリーンシート成型における品質の低下につながるので好ましくない。
【0050】
滑剤の添加量と三次元中心面平均表面粗さ(SRa)との関係を満足させるためには、シリカ又は炭酸カルシウムの平均粒子径は0.1〜2.0μmのものが、好適に用いられる。さらに、シリカは多孔質のコロイダルシリカが好ましく、炭酸カルシウムはポリアクリル酸系の高分子化合物で表面処理を施した軽質炭酸カルシウムが、滑剤の脱落防止の観点から、より好ましい。
【0051】
本発明の離型用積層ポリエチレンテレフタレートフィルムを構成する、二軸配向フィルムは、厚みが20〜50μmであることが好ましく、さらに好ましくは25〜38μmである。フィルムの厚みが20μmよりも薄い場合、フィルム生産時や加工工程、成型の時に、熱により変形しやすいので好ましくない。逆に、フィルムの厚みが50μmよりも厚いと、使用後に廃棄するフィルムの量が増加してしまい環境負荷が増大してしまい、好ましくない。
【0052】
また、離型層が設けられる側の層(A層)の厚み比率は、全層厚みの20%以上50%以下であることが好ましい。20%未満では、離型層が設けられる層の反対側の層に含まれる粒子の影響を、フィルム内部から受けやすくなり、三次元中心面平均表面粗さ(SRa)などが、上記の条件を満足することが難しくなり好ましくない。全層厚みの50%より厚くすると、再生原料の使用比率が低くなり、経済的でないため好ましくない。
【0053】
本発明の離型用積層ポリエチレンテレフタレートフィルムの製膜方法は、例えば以下の方法で製造することができる。すなわち、PETを溶融し、シート状に押出した後、縦方向に3〜5倍延伸後、横方向に3〜4倍延伸する、いわゆるMD・TD法、横方向に3〜4.5倍延伸した後、縦方向に3.5〜5.5倍延伸するTD・MD法、二軸に延伸した後に再度縦又は横に延伸する方法、同時二軸延伸法なども可能である。
【0054】
また、塗布する離型剤との接着性を向上させるための易接着コートや、離型フィルムの離型剤を塗布する面の反対面(反離型面)に易滑性や耐熱性を付与するためのコートを、製膜工程内の延伸前又は一軸延伸後のシート又はフィルムに施してもよい。
【0055】
延伸後のフィルムは、190〜240℃での熱固定処理が必要である。また、離型剤を塗布、乾燥後のフィルム平面性が悪化しないように、熱収縮率を調整することが必要である。熱収縮率を調整するために、縦方向及び/又は横方向のリラックス処理を、熱固定処理と合わせて行なってもよい。その後、両端部をカットし全幅ロール(ミルロール)として巻き取った後、必要な幅にスリットし、スリットロールとして巻き上げることが一般的である。
【0056】
本発明の離型用フィルムに適用される離型層としてはシリコーン樹脂を主成分とする離型層が好適である。シリコーン樹脂としては、特に限定はなく、付加反応系、縮合反応系、紫外線硬化系もしくは電子線硬化系のシリコーン樹脂等の、硬化性シリコーン樹脂を使用することができる。
【0057】
付加反応系のシリコーン樹脂としては、例えば、末端にビニル基を導入したポリジメチルシロキサンとハイドロジエンシロキサンを白金触媒を用いて反応させ、3次元架橋構造を形成したものが挙げられる。
【0058】
縮合反応系のシリコーン樹脂としては、例えば、末端に−OH基をもつポリジメチルシロキサンとハイドロジエンシロキサンを、白金触媒を用いて反応させ、3次元架橋構造を形成したもの等が挙げられる。
【0059】
紫外線硬化系のシリコーン樹脂としては、例えば、最も基本的なタイプとして通常のシリコーンゴム架橋と同じラジカル反応を利用するもの、不飽和基を導入して光硬化させるもの、ビニルシロキサンへのチオールの付加反応で架橋するもの、紫外線でオニウム塩を分解して強酸を発生させ、これでエポキシ基を開裂させて架橋するもの等が挙げられる。
【0060】
離型層の形成方法は、特に限定されず、例えば硬化型シリコーン樹脂を溶媒に溶解あるいは分散させた塗布液を、ポリエステルフィルムの表面に塗布し、溶媒を乾燥除去した後加熱及び紫外線照射し、樹脂を硬化反応させる方法等が好適である。樹脂の熱硬化及び溶媒の乾燥除去の条件は、使用する樹脂の種類、離型層の厚み、セラミックシート製造用離型フィルムのサイズに応じて、速やかに反応するように、適時選択すればよい。本発明の離型用積層ポリエチレンテレフタレートフィルを用いれば、高温の熱負荷によってもオリゴマーの析出が抑制されるので、後加工時での生産性の向上に寄与することができる。
【0061】
離型加工における、主として硬化型シリコーン樹脂から構成される塗布液の塗布方法としては、例えばグラビアコート法やリバースコート法などのロールコート法、マイヤーバーなどのバーコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法などの公知の塗布方法を用いることができる。
【実施例】
【0062】
次に、実施例及び比較例を用いて、本発明を具体的に説明するが、本発明で用いた特性値は下記の方法を用いて評価した。また、実施例において、「%」は、特に断らない限り、質量%を意味する。
【0063】
(1)粒子平均粒径(μm)
粒子粉体をエチレングリコールスラリー中に高速撹拌によって十分に分散させ、得られたスラリー中の粒度分布を、光透過型遠心沈降式粒度分布測定機(島津製作所社製、商品名「SRA−CP3型」)を用いて測定し、この分布における積算50%の値を読み取って平均粒径とした。
【0064】
(2)表面層A、ポリエステル樹脂のヒドロキシル(OH)末端量
樹脂を細かく粉砕し、15mgを秤量した。0.1mlのヘキサフルオロイソプロパノールール(HFIP)−d2に完全に溶解させた後、重クロロホルム0.6mlで希釈した。さらに、HFIPのOH基ピークをシフトさせるために、ピリジン−d5を30μl添加し、H−NMR(BBO−5mmプローブ)で測定した。
なお、表面層Aの試料は、A層単独で押出したフィルムサンプルを作製し、それを試料とした。
【0065】
(3)環状三量体量
樹脂を細かく粉砕し、0.1gをヘキサフルオロイソプロパノールール(HFIP)/クロロホルム(2/3(容量比))の混合溶媒3mlに溶解した。得られた溶液にクロロホルム20mlを加えて均一に混合した。得られた混合液にメタノール10mlを加え、線状ポリエステルを再沈殿させた。次いで、この混合液を濾過し、沈殿物をクロロホルム/メタノール(2/1(容量比))の混合溶媒30mlで洗浄し、さらに濾過した。得られた濾液をロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。濃縮乾固物にジメチルホルムアミド10mlを加え、環状三量体測定溶液とした。この測定溶液を横河電機(株)社製LC100型の高速液体クロマトグラフィーを使用して定量した。
なお、表面層Aの試料は、A層単独で押出したフィルムサンプルを作製し、それを試料とした。
【0066】
(4)固有粘度
ポリエステル0.2gをフェノール/1,1,2,2−テトラクロルエタン(60/40(重量比))の混合溶媒50ml中に溶解し、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定した。なお、表面層Aの試料は、A層単独で押出したフィルムサンプルを作製し、それを試料とした。
【0067】
(5)離型剤を塗布する表面及びその反対面の三次元中心面平均表面粗さ(SRa)
50mm×50mmの面積のフィルムを切り出し、3次元表面形状測定装置(菱化システム社製、マイクロマップ550N(測定条件:waveモード、測定波長560nm、対物レンズ10倍))を用いて、フィルム面に対して垂直方向から測定し、400μm×400μmのCCDカメラ画像取り込み領域を指定し、次式により与えられるSRaを求めた。フィルム両面において、測定数をそれぞれ16とし、それらの平均値を求めた。また、小数点以下の端数は、四捨五入によりまるめた。
【0068】
【数1】

【0069】
ここで、SM =LX ×MY 、LX , MYは、x, y方向の範囲、f(x, y)は、測定点(x, y)の平均面からの高さである。
【0070】
(6)セラミックグリーンシート成型適性
(離型剤の調製)
熱硬化型シリコーン樹脂(東芝シリコーン社製、TPR6712)を、固形分濃度が1.0質量%となるように、溶剤(トルエン/MEK=50/50;質量比)に混合分散させ、さらに、前記シリコーン樹脂 100質量部に対し、硬化触媒として白金触媒1質量部を添加してコートする離型剤とした。
【0071】
(セラミックスラリーの調製)
下記の材料からなる組成物を攪拌・混合し、ペースト状にした後、ボールミルにて、2日間分散し、セラミックスラリーを得た。
・トルエン 15質量%
・エタノール 15質量%
・チタン酸バリウム(富士チタン社製) 50質量%
・ポリビニルブチラール(積水化学社製) 10質量%
【0072】
(離型フィルムの作製)
グラビアコーターを用いて、本発明の実施例及び比較例で得たポリエチレンテレフタレートフィルムのA層側に、離型剤を塗布した後、170℃、5分間の長時間高温条件にて乾燥を行い、厚さ0.5μmの離型層を設けた。
【0073】
(セラミックグリーンシート成型テスト)
離型フィルムの離型層の表面にドクターブレード法にて、上記セラミックスラリーを乾燥厚みが1μmとなるようにコートし、100℃、5分で乾燥してセラミックシートを得た。
【0074】
(セラミックシートのピンホール評価)
離型フィルムの離型層面にセラミックシート層を積層したフィルム積層体に、100cm2の範囲でセラミックシート層の反対面から光を当ててピンホールの発生状況を観察し
、下記基準で、目視判定、評価した。
○:ピンホールなし。
△:ピンホールはほとんどなし。
×:ピンホールが多数あり。
【0075】
(PET(A)I、PET(A)Vの作製)
ジメチルテレフタレート1,000部、エチレングリコール700部、および酢酸亜鉛・2水塩0.3部をエステル交換反応缶に仕込み、120〜210℃でエステル交換反応を行い、生成するメタノールを留去した。エステル交換反応が終了した時点で、リン酸0.13および三酸化アンチモン0.3部を加え、系内を徐々に減圧にし、75分間で1mmHg以下とした。同時に徐々に昇温し、280℃とした。同条件で70分間重縮合反応を実施し、溶融ポリマーを吐出ノズルより水中に押し出し、カッターによって、直径約3mm、長さ約5mmの円柱状チップとした。得られた粗製ポリエステルの固有粘度は0.610dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は70eq/tonであり、環状三量体の含有量は1.05質量%であった。なお、実施例中にある「部」とは全て質量部を表す。得られた粗製ポリエステルをポリエステル樹脂(PET(A)V)とする。
【0076】
ポリエステル樹脂(PET(A)V)を減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が6.4g/Nmに調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時70リットルの割合で流通し、207℃で48時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.631dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は59eq/tonであり、環状三量体の含有量は0.27質量%であった。
【0077】
(PET(A)IIの作製)
ポリエステル樹脂(PET(A)V)を減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が15.3g/Nmに調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時300リットルで流通し、230℃で12時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.617dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は63eq/tonであり、環状三量体の含有量は0.28質量%であった。
【0078】
(PET(A)IIIの作製)
重合時間を調整した以外はポリエステル樹脂(PET(A)V)と同様にして、固有粘度が0.648dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は64eq/tonであり、環状三量体の含有量が1.2質量%である粗製ポリエステルを得た。得られた粗製ポリエステルを、減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が15.3g/Nmに調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時300リットルで流通し、220℃で24時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.623dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は57eq/tonであり、環状三量体の含有量は0.27質量%であった。
【0079】
(PET(A)IVの作製)
ポリエステル樹脂(PET(A)V)を減圧下160℃にて乾燥し、窒素雰囲気下0.1kg/cmの微加圧に調整し、215℃で24時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.622dl/gであり、ヒドロキシル(OH)末端量は73eq/tonであり、環状三量体の含有量は0.30質量%であった。
【0080】
(PET(B)Iの作製)
PET(A)Vの作製において、エステル交換反応時に平均粒径が0.9μmの多孔質コロイダルシリカ0.2質量%と、ポリアクリル酸のアンモニウム塩を炭酸カルシウムあたり1質量%付着させた平均粒径が0.6μmの合成炭酸カルシウム0.4質量%とを、それぞれ10%のEGスラリーとして添加した。その後、重合反応時間を調整した以外はPET(A)Vと同様にしてPET(B)Iを作製した。得られたポリエステルの固有粘度は0.620dl/gであった。
【0081】
(PET(B)II、III、IVの作製)
粒子種、粒子濃度を表2のように変更した以外は、PET(B)Iと同様にしてPET(B)II、III、IVを作製した。
【0082】
(実施例1)
PET(A)I、PET(B)IIのチップを乾燥後、285℃で溶融し、別個の溶融押出し機押出機により290℃で溶融し、フィードブロック内で合流して、PET(B)IIをB層(反離型面側層)、PET(A)IをA層(離型面側層)となるように積層し、シート状に押出し、静電密着法により30℃のキャスティングドラム上に静電密着・冷却させ、未延伸ポリエチレンテレフタレートシートを得た。層比率は各押出機の吐出量計算でA/B=60%/40%となるように調整した。
【0083】
次いで、この未延伸シートをロール温度80℃でロール間のスピード差により縦方向に3.5倍延伸した。その後、テンターに導き、140℃で横方向に4.2倍の延伸を行なった。次いで、熱固定ゾーンにおいて、210℃で熱処理した。その後、横方向に170℃で2.3%の緩和処理をして、厚さ31μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0084】
(実施例2、3、比較例1、2)
実施例1においてA層(離型面側層)を構成するPETを表3のように変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ31μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0085】
(実施例4)
実施例1においてB層を構成するPETを表3のように変更し、層比率を各押出機の吐出量計算でA/B=80%/20%となるように調整したこと以外は実施例1と同様にして、厚さ31μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0086】
(実施例5、比較例3)
実施例1において、各層を構成するPETを表3のように変更し、フィルム層構成をA/C/Bとした。層比率は各押出機の吐出量計算でA/C/B=20%/40%/40%となるように調整して実施例1と同様にして、厚さ31μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の離型用積層ポリエチレンテレフタレートフィルムは、平滑性に優れ、高温での熱処理後においてもオリゴマーの析出が少なく、ピンホール発生の少ないため、セラミックグリーンシート成型用離型フィルムを製造する分野に利用することができ、産業界に寄与することが大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2層以上からなる二軸配向積層ポリエチレンテレフタレートフィルムであって、
前記の二軸配向積層ポリエチレンテレフタレートフィルムは表面層Aと表面層Bを有し、
離型剤を塗布する面と反対面を形成する層(表面層B)の三次元中心面平均表面粗さ(SRa)が10〜50nmであり、
離型剤を塗布する面を形成する層(表面層A)は、粒子を実質的に含有せず、
少なくとも表面層Aを構成するポリエチレンテレフタレートにおけるヒドロキシル(OH)末端量が70eq/ton以下かつ、環状三量体含有量が0.45質量%以下である、離型用積層ポリエチレンテレフタレートフィルム。

【公開番号】特開2011−255637(P2011−255637A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133791(P2010−133791)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】