説明

難分解性有機物処理方法

【課題】生物処理が困難な高分子有機物を含有する排液をオゾン処理と生物処理とを組み合わせた複合処理により効率的かつ経済的に処理する。
【解決手段】GPC法による測定で重量平均分子量Mwが1500以上、数平均分子量Mnが300以上の高分子有機化合物を含有する被処理排液をオゾン処理と生物処理とで複合処理する。オゾン処理後に高分子有機化合物の重量平均分子量Mwが1000以下、数平均分子量Mnが250以下となるオゾン注入量でオゾン処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)といった生物処理が困難な高分子有機物を含有する排液の処理に用いられる難分解性有機物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工業原料として多くの種類の高分子有機化合物が使用されている。代表的な高分子有機化合物は、潤滑剤、医薬品等の原料に使用されるポリエチレングリコール(PEG)、ポリウレタン等の原料として使用されるポリプロピレングリコール(PPG)、ビニロン、フィルム等の原料として使用されるポリビニルアルコール(PVA)、成形品、フィルム等の原料として使用されるポリプロピレン、更にはフィルム、各種成形品等の原料として使用されるポリエチレン、芳香族、ニトロ化合物、クロロ化合物などがある。
【0003】
工業排水は一般に生物処理後に放流される。しかし、これらの高分子有機化合物の重量平均分子量は小さいもので数百以上、通常は数千以上あり、重量平均分子量が大きいものほど生物処理は困難とされている。このため、これらの高分子有機化合物の処理には、通常は単体での焼却処理が用いられるが、処理設備、ランニングコストともに高価であり、ダイオキシン類の発生を伴う問題もある。また、希釈して生物処理を行う場合もあるが、非常に長い処理時間がかかり、非効率である。更に、オゾン酸化、更にはこれよりも強力なOHラジカルによる促進酸化処理も考えられているが、処理のための投入エネルギーが大きく、コスト的な制約が大きい。
【0004】
このような事情を背景として最近考えられているのが、オゾン処理と生物処理とを組み合わせた複合処理である(非特許文献1)。これらは、生物処理が困難な難分解性高分子有機物を含有する排水に対して、一次処理としてオゾン処理を行い、二次処理として生物処理を行う方法であり、一次処理としてのオゾン処理で難分解性高分子有機物を生物処理が可能な低分子有機物に分解することにより、生物処理が困難な難分解性高分子有機物の処理を可能とする。
【0005】
【非特許文献1】資源環境技術研究所NIREニュース1997年12月「難分解性物質含有排水の処理」独立行政法人産業技術総合研究所
【0006】
しかしながら、本発明者らの見るところ、この方法にも問題がないわけではない。大きな問題は、生物処理で処理困難な物質の処理をオゾン処理に依存することから、いきおいオゾン処理の負担を大きくする傾向があり、オゾン処理のための投入エネルギーがオゾン単独処理の場合と比べて顕著に低下していないことである。このため、オゾン処理と生物処理とを組み合わせた複合処理は、期待するほどの経済性を発揮できていないのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、生物処理が困難な高分子有機物を含有する排液をオゾン処理と生物処理とを組み合わせた複合処理により効率的かつ経済的に処理できる難分解性有機物処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明者らはオゾン処理と生物処理とを組み合わせた複合処理でのオゾン処理の負担を軽減する方法について検討し、その一つの方向性として、生物処理が困難な高分子有機物の分子量とオゾン処理でのオゾン注入量との関係に着目した。
【0009】
高分子有機化合物は、通常、分子量が異なる複数種類の単位分子が集まった単位集合体が繰り返し重合することより構成されている。そして、この高分子有機化合物の分子量は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)で表される。
【0010】
図2はGPC法により測定された高分子有機化合物の分子量分布を模式的に示している。ここでは、便宜的に3個の小分子量単位分子、7個の中分子量単位分子、1個の高分子量単位分子により、単位集合体が構成されている。単位集合体における単位分子の個数をNi、各単位分子の分子量をMi、各単位分子の分子量Miと個数Niの積(各単位分子の重量に相当)をWiとすると、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は化学式1で表される。
【0011】
【化1】

【0012】
数平均分子量Mnは単位分子1個あたりの平均分子量であり、重量平均分子量Mwは重量分率による分子量の平均値(単位重量あたりの平均分子量)である。単位集合体における単位分子が1個の場合、数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwは等しく、Mw/Mnは1となる。Mw/Mnは分散比と呼ばれており、この値が1に近いほど分子量分布が狭く、大きくなると分子量分布は広がる。
【0013】
本発明者らによる調査の結果、高分子有機化合物を生物処理する場合の難度は、その有機化合物の分子量に対応しており、具体的には、重量平均分子量Mwが1500以上になると生物処理は容易でなくなり、3000以上、特に4000以上ではその処理はより困難となる。しかしながら、オゾン処理と生物処理とを組み合わせた実際の複合処理では、オゾン注入量は他の処理と同様に専ら被処理液のCOD(Mn)の値により決定されており、その結果、必要以上にオゾンが使用されていることが判明した。
【0014】
すなわち、オゾン処理と生物処理とを組み合わせた複合処理でのオゾン処理の目的は、難分解性の高分子有機化合物を完全分解することではなく、その単位集合体を生物処理で処理可能な小分子量の単位集合体に切断分離することにある。すなわち、ここにおけるオゾン処理では、高分子有機化合物の分解除去の必要はなく、生物処理が可能な最低限の分子量レベルまで単位集合体を切断分離すればよいのである。このため、被処理液のCOD(Mn)の値に基づいてオゾン注入量を一義的に決定することは合理的でなく、処理対象である高分子有機化合物の分子量によってオゾン注入量を決定するのが合理的となり、特に重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの両方を所定レベルまで下げることができれば、それ以上のオゾンの注入は不要であることが判明した。
【0015】
本発明かかる知見を基礎として完成されたものであり、GPC法による測定で重量平均分子量Mwが1500以上、数平均分子量Mnが300以上の高分子有機化合物を含有する被処理排液をオゾン処理と生物処理とで複合処理するにあたり、オゾン処理後に高分子有機化合物の重量平均分子量Mwが1000以下、数平均分子量Mnが250以下となるオゾン注入量でオゾン処理を行う難分解性有機物処理方法を要旨とする。
【0016】
本発明の難分解性有機物処理方法において、対象とする被処理排液中の高分子有機化合物の重量平均分子量Mwを1500以上、数平均分子量Mnを300以上としたのは、このレベルから高分子有機化合物の生物処理が困難になるからであり、より生物処理が困難な重量平均分子量Mwが3000以上、特に4000以上、数平均分子量Mnが500以上の高分子有機化合物を含有する被処理排液に対して本発明の難分解性有機物処理方法はより有効である。
【0017】
オゾン処理でのオゾン注入量をオゾン処理後に高分子有機化合物の重量平均分子量Mwが1000以下、数平均分子量Mnが250以下となるレベルとしたのは、このレベルで高分子有機化合物の生物処理が容易になるからであり、このレベルを満足させることができればそれ以上のオゾンは不必要であり、これによりオゾンを効率的、経済的に使用することができる。
【0018】
すなわち、高分子有機化合物の重量平均分子量Mwが1000超、数平均分子量Mnが250超の場合は、高分子が多く、生物分解に時間のかかる分子の数が多い。重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnの一方が満足されない場合、例えば重量平均分子量Mwが1000超で数平均分子量Mnが250以下の場合は、生物分解に時間のかかる高分子状態の分子がある程度存在するため、生物処理をしても基準を満足するCOD(Mn)まで処理するのに相当の時間がかかる。逆に、重量平均分子量Mwが1000以下で数平均分子量Mnが250超の場合は、高分子状態の分子の存在は少ないが、中程度の分子量の分子が多く存在しており、やはり生物処理をしても基準を満足するCODまで処理するのに相当の時間がかかる。重量平均分子量Mwが1000以下、数平均分子量Mnが250以下の場合は、生物分解に時間のかかる高分子状態の分子が殆ど存在せず、中程度の分子量の分子も多くないため、始めて短時間での生物処理が可能となる。
【0019】
ちなみに、オゾン処理により高分子有機化合物を処理すると、重量平均分子量Mwの減少が顕著となり、分散比Mw/Mnは小さくなる。分散比Mw/Mnは分子量のばらつきの度合いであり、これが大きいと高分子の存在割合も大きいということなので、生物分解しにくい分子の存在も多いということになる。このため、生物処理での処理性はオゾン処理後の分散比Mw/Mnでも評価することができ、5以下が好ましく、3以下、なかでも2未満が特に好ましい。
【0020】
本発明の難分解性有機物処理方法においては又、被処理排液のCOD(Mn)も重要であり、100〜25000mg/Lが好ましい。なぜなら、COD(Mn)が100mg/L未満の場合は活性炭吸着による処理のほうが経済的である場合が多く、また25000mg/L超の場合は生物処理を先にして生物処理できる有機物を低減しないとオゾンで処理する場合の効率が悪くなるからである。つまり、この範囲内でないと、オゾン処理と生物処理を組み合わせた複合処理は有効でないのである。
【0021】
オゾン処理でのオゾン注入量についても被処理排液のCOD(Mn)を加味するのがよく、COD(Mn)〔mg/L〕に対して0.1〜1mg/Lの範囲内に管理するのが好ましい。オゾン注入量が対COD(Mn)比で0.1未満の場合は分子量低減効果が非常に低く、1を超える場合は分子量低減のためには過剰な場合が多く経済性が低下する。
【0022】
オゾン処理での被処理液のpHについては、6〜10の範囲内に管理するのが好ましい。なぜなら、オゾンは、酸性側ではオゾンのまま水に溶存していることが多く、有機物との反応性が低い。また、pH10を超えるとオゾンの自己分解が顕著となり、非効率である。
【0023】
オゾン処理の具体的な方法としては、反応塔内で被処理液にオゾンガスを所定時間接触させるのがよく、その接触時間は被処理液の塔内滞留時間で表して5〜120分が好ましい。塔内滞留時間が短すぎる場合はオゾンと有機物と反応が不足する。長すぎる場合は設備が必要以上に過大となり、経済性が低下する。
【0024】
オゾン処理後の生物処理は、具体的には標準活性汚泥法、嫌気・好気活性汚泥法、循環式硝化脱窒法、膜分離活性汚泥法、回分式活性汚泥法などである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の難分解性有機物処理方法は、生物処理が困難な高分子有機物を含有する排液をオゾン処理と生物処理とを組み合わせた複合処理にて浄化処理するにあたり、オゾン処理でのオゾン注入量を高分子有機物の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの両方に基づいて設定することにより、生物処理後の処理液の清浄度を低下させることなく、オゾン注入量を最小限に抑制することができる。これにより必要以上に大容量のオゾン発生装置を使用する必要がなくなり、その設備コスト及びランニングコストを効果的に節減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の難分解性有機物処理方法を実施するのに適した処理設備の構成図である。
【0027】
本実施形態では、ポリエチレングリコール(PEG)などの生物処理では分解が難しい高分子有機化合物を含有する排水を原水として浄化処理する。原水はオゾン反応槽1に上部から導入される。
【0028】
オゾン反応槽1は下部に散気装置2を備えており、散気装置2からバブリングされるオゾンガスにより槽内の被処理水を酸化処理する。槽内でのオゾンガスバブリングのために、散気装置2はオゾン発生機3と接続されている。
【0029】
オゾン発生機3はオゾナイザーと呼ばれる放電式オゾン発生機であり、コンプレッサー4で供給される酸素ガスを原料ガスとして放電に曝すことによりオゾンガスとし、これを槽内の散気装置2に供給する。槽内でオゾン処理された被処理水は、オゾン反応槽1の下部から配管5を介して逐次槽外へ導出され、生物処理槽6へ導入される。
【0030】
生物処理槽6は、ここでは膜分離活性汚泥法によるものである。生物処理槽6での処理を終えた原水は処理水として槽外へ逐次排出され、系外へ放流される。オゾン反応槽1及び配管5で生じる余剰のオゾンは排オゾン分解塔7で酸素に分解されて大気中へ放出される。
【0031】
本実施形態では、オゾン反応槽1内の原水に散気装置2から注入するオゾンガスの注入量が重要である。具体的には、原水中に難分解性物質として含有される高分子有機化合物の重量平均分子量Mwが1500以上、数平均分子量Mnが300以上の場合に、オゾン反応槽1でのオゾン処理後の被処理水、すなわちオゾン反応槽1から排出される被処理水中の高分子有機化合物の重量平均分子量Mwが1000以下、数平均分子量Mnが250以下となるようにオゾン注入量〔O3 mg/L〕が設定され、より詳しくは、これらの条件を満足する範囲内でできるだけ少なく設定される。
【0032】
このオゾン注入量〔O3 mg/L〕を更に具体的に説明すると、オゾン処理後の被処理水中の高分子有機化合物の重量平均分子量Mwが1000、数平均分子量Mnが250となるときのオゾン注入量をX(mg/L)としてX〜2Xが好ましく、X〜1.5Xが特に好ましい。過剰のオゾンは、生物処理での処理性に影響を与えず、いたずらに経済性を悪化させるだけである。
【0033】
これと合わせ、原水のCOD(Mn)〔mg/L〕に対して0.1〜1mg/Lの範囲内にオゾン注入量〔O3 mg/L〕を管理するのが好ましいこと、被処理液のpHを6〜10の範囲内に管理するのが好ましいことは前述したとおりである。
【実施例】
【0034】
図1に示す処理設備を使用してPEGを含む排水を複合処理した。原水であるPEG排水のCOD(Mn)は1400mg/Lである。GPC法により測定した重量平均分子量Mwは4410、数平均分子量Mnは564、分散比Mw/Mnは7.8である。オゾン処理でのオゾン注入量を様々に変更し、オゾン処理後の被処理水のCOD(Mn)〔mg/L〕を測定すると共に、被処理水中の高分子有機化合物の重量平均分子量Mw及び数平均分子量MnをGPC法により測定した。オゾン処理での被処理水の反応槽内滞留時間は60分に、pHは8に管理した。オゾン処理を終えた被処理水の生物処理後のCOD(Mn)〔mg/L〕を測定すると共に、PEG除去率を求めた。生物処理は膜分離活性汚泥法によりCOD汚泥負荷0.1kg/kg・日の共通条件で実施した。調査結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
生物処理後の処理水の排出基準はCOD(Mn)で20mg/L以下である。オゾン処理でのオゾン注入量が400(O3 mg/L)の場合、オゾン処理後の被処理水中の高分子有機化合物は重量平均分子量Mwが2215、数平均分子量Mnが315で、1000以下、250以下のいずれをも満足しない。その結果、生物処理後の処理水のCOD(Mn)は95mg/Lである。オゾン処理でのオゾン注入量が600(O3 mg/L)の場合、オゾン処理後の被処理水中の高分子有機化合物は重量平均分子量Mwが980、数平均分子量Mnが265で、1000以下、250以下の一方しか満足しない。その結果、生物処理後の処理水のCOD(Mn)は28mg/Lである。
【0037】
これに対し、オゾン処理でのオゾン注入量を800(O3 mg/L)とすると、オゾン処理後の被処理水中の高分子有機化合物は重量平均分子量Mwが680、数平均分子量Mnが238で、1000以下、250以下の両方を満足する。その結果、生物処理後の処理水のCOD(Mn)は15mg/Lである。オゾン処理でのオゾン注入量を1200(O3 mg/L)、2400(O3 mg/L)と増やすと、オゾン処理後の被処理水中の高分子有機化合物の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは更に小さくなるが、生物処理後の処理水のCOD(Mn)は既に20mg/Lを満足しており、その後の低下度も僅かである。
【0038】
したがって、本例ではオゾン処理でのオゾン注入量は800(O3 mg/L)でよく、それ以上は必要ないことになる。より厳密には、本例の場合、重量平均分子量Mw1000以下、数平均分子量Mn250以下を満足するオゾン注入量は650(O3 mg/L)以上であり、その1〜1.5倍が特に好ましく、800(O3 mg/L)は1.23倍に相当する。
【0039】
ちなみに、オゾン処理後の被処理水のCOD(Mn)は、オゾン注入量を増やしても原水からそれほど低下しない。これはオゾン処理により高分子有機化合物が分子量の小さい分子に分解されただけで、高分子有機化合物が除去されているわけではないことを示しており、オゾン処理だけでは高分子有機化合物の分解除去が難しく、仮に可能であっても多大のコストを要することが分かる。また、必ずしもオゾン処理後の被処理水のCOD(Mn)を小さくする必要はなく、COD(Mn)をオゾン注入量の指標とすることの有効性が低いことも分かる。むしろ、分散比Mw/Mnの低下が顕著であり、この方が有効な指標となり得ることが分かる。
【0040】
原水をPEG排水からPVA排水に代えて同じ試験を行った。原水のCOD(Mn)は1200mg/Lである。GPC法により測定した重量平均分子量Mwは1950、数平均分子量Mnは689、分散比Mw/Mnは2.8である。オゾン処理での被処理水の反応槽内滞留時間は30分に、pHは8にそれぞれ管理した。生物処理は 膜分離活性汚泥法によりCOD汚泥負荷0.08kg/kg・日の共通条件で実施した。調査結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
オゾン処理でのオゾン注入量が100(O3 mg/L)の場合、オゾン処理後の被処理水中の高分子有機化合物は重量平均分子量Mwが1107、数平均分子量Mnが471で、1000以下、250以下のいずれをも満足しない。その結果、生物処理後の処理水のCOD(Mn)は260mg/Lである。オゾン処理でのオゾン注入量が250(O3 mg/L)の場合、オゾン処理後の被処理水中の高分子有機化合物は重量平均分子量Mwが650、数平均分子量Mnが320で、1000以下、250以下の一方しか満足しない。その結果、生物処理後の処理水のCOD(Mn)は45mg/Lである。
【0043】
これに対し、オゾン処理でのオゾン注入量を500(O3 mg/L)とすると、オゾン処理後の被処理水中の高分子有機化合物は重量平均分子量Mwが427、数平均分子量Mnが226で、1000以下、250以下の両方を満足する。その結果、生物処理後の処理水のCOD(Mn)は19mg/Lである。オゾン処理でのオゾン注入量を750(O3 mg/L)、1000(O3 mg/L)と増やすと、オゾン処理後の被処理水中の高分子有機化合物の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは更に小さくなるが、生物処理後の処理水のCOD(Mn)は既に20mg/L以下を満足しており、その後の低下度も僅かである。
【0044】
したがって、本例ではオゾン処理でのオゾン注入量は500(O3 mg/L)でよく、それ以上は必要ないことになる。より厳密には、重量平均分子量Mw1000以下、数平均分子量Mn250以下を満足するオゾン注入量は436(O3 mg/L)以下であり、500(O3 mg/L)はその1.15倍である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の難分解性有機物処理方法を実施するのに適した処理設備の構成図である。
【図2】GPC法により測定された高分子有機化合物の分子量分布を模式的に示すグラフである。
【符号の説明】
【0046】
1 オゾン反応槽
2 散気装置
3 オゾン発生機
4 コンプレッサー
5 配管
6 生物処理槽
7 排オゾン分解塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPC法による測定で重量平均分子量Mwが1500以上、数平均分子量Mnが300以上の高分子有機化合物を含有する被処理排液をオゾン処理と生物処理とで複合処理するにあたり、オゾン処理後に高分子有機化合物の重量平均分子量Mwが1000以下、数平均分子量Mnが250以下となるオゾン注入量でオゾン処理を行うことを特徴とする難分解性有機物処理方法。
【請求項2】
オゾン処理後の被処理水中の高分子有機化合物の重量平均分子量Mwが1000、数平均分子量Mnが250となるときのオゾン注入量をX(mg/L)として、X(mg/L)以上、2X(mg/L)以下のオゾン注入量でオゾン処理を行う請求項1に記載の難分解性有機物処理方法。
【請求項3】
オゾン処理後に高分子有機化合物の分散比(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が5以下となるオゾン注入量でオゾン処理を行う請求項1に記載の難分解性有機物処理方法。
【請求項4】
被処理排液のCOD(Mn)が100〜25000mg/Lの被処理排液に対して、オゾン注入量をCOD(Mn)1mg/Lあたり0.1〜1mg/Lの範囲内に管理する請求項1に記載の難分解性有機物処理方法。
【請求項5】
オゾン処理における被処理液の反応塔内滞留時間を5〜120分の範囲内に管理する請求項1に記載の難分解性有機物処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−237096(P2007−237096A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64137(P2006−64137)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000183369)住友精密工業株式会社 (336)
【Fターム(参考)】