説明

難燃性クレー−ポリオレフィンコンポジットの形成方法

オレフィン重合による難燃剤として使用可能なポリオレフィン/クレーコンポジットの形成方法であって、前記難燃剤中では、少なくとも一つの充填剤が、前周期あるいは後周期遷移金属であり前記処理された充填剤と接触した際にオレフィン重合のために活性化される第1の触媒成分と混合されている。(a)アルキルアルミニウムである第2の触媒成分の非存在下または(b)前記第1の触媒成分が前周期遷移金属触媒である場合にはアルキルアルミニウムである第2の触媒成分の存在下で、オレフィンを前記活性化された触媒−充填剤混合物と接触させ、それにより前記充填物の小板を取り込んだ難燃特性を有する充填剤−ポリオレフィンコンポジットを形成する。前記充填剤は好ましくはクレーであり、その例としてはモンモリロナイトおよびクロライトが挙げられる。第1の触媒成分は好ましくは非メタロセン触媒である。所定量の1種類または2種類以上のオレフィン系ポリマーをマスターバッチと混合することで所望の充填量を有するコンポジットを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2006年6月12日出願の米国特許出願第11/451,199号および2006年10月6日出願の米国特許出願第11/544,129号(これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に基づく利益を主張する。
【0002】
本発明は、難燃性クレー−ポリオレフィンコンポジットの形成に関するものであり、より詳細には、非メタロセン触媒を用いた難燃性クレー−ポリオレフィンコンポジットの形成に関する。
【背景技術】
【0003】
ナノコンポジットとは、複数の化学的に異なる相を含む素材であり、少なくとも一つの相がナノスケールの大きさにある。有機ポリマーマトリックス中に分散した層剥離クレー薄板(lamellae)から成るナノコンポジットは、バージンポリマーまたは別の無機充填剤(例えば、グラスファイバー、タルク、雲母、カーボンブラック)を含有する従来のマクロコンポジットもしくはマイクロコンポジットと比べて、向上した物理学的特性を示す[1]。このような特性の向上には、引っ張り特性および曲げ特性の改善、貯蔵弾性率の増大、熱変形温度の上昇、燃焼性の低下[32]、ガス透過性の低下、視覚的欠陥の減少および光透過性の改善が含まれうる[2]。
【0004】
クレー充填物は、非常に少ないクレー充填量(≦5重量%)でこれらの向上を達成し、従って、前記素材は、軽量性、低コスト、溶液/融解加工性およびリサイクル性等の望ましいポリマー特性を保持している。これらナノコンポジット素材の用途には、成形された自動車用および設備用(appliance)部材(例えば、ボディーパネル、ボンネット下部分、電気/電子部品および絶縁体、動力工具の格納(housing)等)ならびに調度品(例えば、シート部材、コンソール等)、医療用チューブ、耐摩耗コーティングおよび耐薬品コーティング、食品包装用素材(例えば、透明ストレッチフィルム等)ならびに飲料用ボトルの障壁層が含まれる。
【0005】
カオリナイト、ヘクトライトおよびモンモリロナイト(MMT)等のクレーは、シングルサイトエチレン重合触媒のための機械的支持体として検討されている[3]。通常は、前記支持体は例えば、吸着された水を取り除いてクレー表面を不動態化する、トリアルキルアルミニウムまたはアルキルアルミノキサン等の有機アルミニウム共触媒によっても処理される。アルキルアルミニウム化合物によってカオリナイトを層剥離できることも示唆されている[4]。一般的に、前記触媒は共触媒で修飾されたクレー上に吸着され、その場で共触媒表層によって活性化される[5]、[6]。担持される触媒によるオレフィンの取り込みにより、重合反応炉工学における望ましい挙動である制御された粒子成長が起こる。
【0006】
クレー上にメタロセン触媒を担持させることにより、アルキルアルミニウム共触媒の不存在下であっても[8]、エチレン重合のための適度な活性が得られる[7]。しかしながら、これらの触媒系は、高品質なナノコンポジットを作り出すものではない;これらによって作り出されるポリエチレンには、層剥離されていないクレーの小さな凝集塊が含まれる。
【0007】
ナノコンポジットに望ましい物理学的特性は、クレーシートがポリオレフィンマトリックス中に十分に分散した場合にのみ観察される。層剥離クレー−ポリオレフィンナノコンポジットの製造の困難性は、強力に結合した親水性のクレーシートと疎水性のポリオレフィン鎖との非混和性に起因する。種々のクレーにおいて、クレー層は骨格部のイオン(通常はカチオン)の同形置換により負に帯電している。層間に存在するカチオンにより、電荷補償が起こり、単にポリオレフィンと混合しただけでは効果的に壊すことができない、強力な層間接着が促進される。
【0008】
ナノコンポジットの成分を相溶させる1つの方法としては、長鎖アルキルアンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオンまたはアルキルホスホニウムカチオン(典型的には炭素数18)等の界面活性剤で層間イオンを置換することにより、クレーを疎水性にすることが挙げられる。このやり方により、有機的に修飾された層状ケイ酸塩(organically-modified layered silicate:OMLS)が生じる。ポリオレフィンナノコンポジットの調製でOMLSを用いる方法には、以下のものが含まれる:
・OMLS上に吸着した触媒がモノマーの添加によって自発的な層剥離を引き起こす、インサイチュ層間重合(in situ intercalative polymerization)。この方法は、メチルアルミノキサン(MAO)で処理したOMLS上に担持されるジルコノセン触媒を用いたプロピレン重合[9]、およびOMLS上に担持されるBrookhart Pd触媒を用いたエチレン重合[10]に成功裏に用いられている。MMT内にインターカレートされたヒドロキシル基を含有する界面活性剤上にグラフトされたZiegler触媒TiCl4が、トリエチルアルミニウムを用いた活性化によるインサイチュでのエチレン重合に用いられている[11]。ゾルゲル法によりOMLSの層間空間に合成されたシリカナノ粒子またはチタニアナノ粒子をアルキルアルミニウムとメタロセンで処理することで、インサイチュ重合用の触媒系が作り出されている[12]。インサイチュ重合の充填は、クレーの界面活性剤修飾有り[13]および無し[14]、[15]の状態で、MAO処理したクレーとメタロセンまたはクレー上の束縛形状触媒(constrained geometry catalyst)とを用いて達成された。界面活性剤が存在しない場合には、有機溶媒を用いてクレーを膨張させた。
・高温のキシレン/ベンゾニトリル混合物中に溶解した高密度ポリエチレン(HDPE)が、分散されたOMLSと共に撹拌される、溶液インターカレーション[16];
・OMLSが、ポリマーの軟化点より高い温度で、静的にまたは剪断の下でポリマーとアニールする融解インターカレーション。ポリマーとクレーとの相互作用によって混合が促進されることから、この方法では、典型的には、極性の側鎖もしくは末端基で修飾されたポリマーまたはオリゴマーから成る相溶化剤(compatibilizer)が必要とされる。例えば、ナノコンポジット形成は、プロピレンオリゴマーのテレキリック(telechelic;両端官能性)なOH基との融解インターカレーションと、これに続く非修飾PPとの融解混合により達成される[17]。PPとOMLSの融解ブレンドは、相溶化剤としてのマレイン酸化PP(即ち、無水マレイン酸側鎖で官能化されているPP-g-MA)の存在下で、ツインスクリュー押出し機を用いることで達成されている[18, 19, 20, 21]。同様の方法を用いて、PE-g-MA[22]、[23]またはEPR-g-MA[23]をOMLSと融解ブレンドさせてナノコンポジットが作製されている。部分フッ素化界面活性剤を用いることで、クレー−界面活性剤間の相互作用が弱められ、非修飾PPがインターカレートされ易くなったOLMSが作り出されている[24]。反応によりマレイン酸化相溶化剤と化学結合を形成する官能化界面活性剤を用いる方法が記載されている[25]。恐らく、クレーを界面活性剤で中間的に官能化させることなく、直接カチオン交換することにより、非修飾MMTへのアンモニウム官能化ポリプロピレン鎖の直接融解インターカレーションが達成されている[26]。
【0009】
近年において、非修飾クレーを用いたナノコンポジットの形成が、ポリオレフィン成分をより疎水性にすることにより達成されている。界面活性剤であるセチルトリメチルアンモニウムブロミドの存在下で、スチレン含有ミセルが形成され、溶液から分散されたクレー上へと吸着されている[27]。
【0010】
また近年において、メタロセン重合触媒の溶液で処理された、酸処理層状ケイ酸塩の懸濁液に、オレフィンを添加して、オレフィン重合を生じさせてナノコンポジットポリマーを形成することによりナノコンポジット素材が作製されている[28]。非常に包括的な用語で記載されてはいるものの、前記参考文献に記載される具体的な調製方法は、全て、4−テトラデシルアニリニウム交換されたまたはHCl処理されたクレーを乾燥トルエンに混合することにより形成したスラリーに、トリプロピルアルミニウム共触媒を添加して用いることを必要とする。
【0011】
難燃剤は、燃焼の開始を遅らせるかまたは燃焼の伝搬速度を低下させる材料である[30, 31]。大量(約50重量%)の無機充填剤(例えばMg(OH)2)または有機充填剤(例えば臭素化ポリスチレン)を取り込ませることにより、有機ポリマーを難燃化することが可能である。難燃特性は、ナノコンポジットを用いた場合には、はるかに低い充填剤含有率で達成できる。難燃性ナノコンポジット素材の可能な用途としては、成形調度品、自動車部品(例えば、ボディーパネル、ボンネット下部分等)およびアプライアンス部分(例えば、電気/電子部品、動力工具の格納等)が挙げられる。
【0012】
ポリマー−クレーコンポジットでの熱安定性の向上に関する最初の報告では、ポリメチルメタクリレート(PMMA)−モンモリロナイト(MMT)クレー系が用いられていた。10重量%のクレー充填量では、この素材は、純粋なPMMAと比較すると、その熱分解温度において40〜50℃の上昇を示した。モンモリロナイトを含有する(10重量%)シラノール末端ポリジメチルシロキサン(PDMS)の超音波処理により調製したナノコンポジットは、純粋なPDMSの場合よりも140℃高温で分解する[34]。脂肪族ポリイミド(PEI−10)のクレー内へのメルトインターカレーションによる分解温度の上昇も観察された[35]。対応する純粋ポリマーとの比較における熱分解温度の上昇は、ポリプロピレン−グラフト−無水マレイン酸(polypropylene−graft−maleic anhydride:PP-g-MA)[30,37]、PP[38]およびポリスチレン(PS)[39,40]を含む有機的に修飾された層状ケイ酸塩(OMLS)ナノコンポジットでも観察されている。特に、N2下で行われた熱重量分析(TGA)実験では、ポリエチレン(PE)/OMLSナノコンポジットの分解開始温度が、純粋PEの場合と比べて約20〜30℃高くなることが示された[41]。
【0013】
難燃特性:コーンカロリメトリー法(Cone calorimetry)による測定では、多くの種類のポリマー−クレーナノコンポジットで燃焼性の低下が示されている。発熱速度(HRR)、特にピークHRRは、火災安全性の評価における重要なパラメーターとなる[42,43]。数多くのポリマー−クレーナノコンポジットで示されたHRRとピークHRRの低下は、これらの燃焼性が純粋なポリマーの場合に比べて低下していることを示す。層剥離されたクレー−ナイロン6およびクレー−ナイロン12のナノコンポジット、ならびにインターカレートしたクレー−PSおよびクレー−PPのナノコンポジットでは、HRRがかなり低下したことが示されている[44]。いくつかのPPおよびPP-g-MAナノコンポジットも、コーンカロリメトリーによる測定においてHRRの低下を示している[30,37,38,45]。PEナノコンポジットのピークHRRは、54%低下した[41]。米国連邦航空局は、直線状の加熱勾配での熱分解-燃焼流カロリメーターにおけるミリグラム単位のサンプルの熱分解によりポリマーの燃焼性を評価している。発熱速度は、熱分解ガスの完全燃焼により求められる。温度上昇率(K/秒)に対する具体的な発熱速度(W/g)の比率が、発熱容量(heat-release capacity)である。この方法で測定した発熱容量は、強制火炎燃焼における発熱速度(火災危険性の主な指標である)と直接的に相関関係を有することが示された(R. N. Walters, R. E. Lyon, J. Appl. Polym. Sci., 2002, 87, 548-563)。
【0014】
不燃性のより条件の厳しい試験としては、燃焼している素材の自己消火能がある。PEI−クレーナノコンポジットの自己消火特性が報告されているが[36]、しかしながら、ポリオレフィン−クレーナノコンポジットの自己消火特性については報告がない。同様に、ポリオレフィン/クレーナノコンポジットが、Underwriter's Laboratory の火災試験プロトコルで実用的な難燃性素材とされる、UL94 VOの評価を達成したことも報告されていない[46]。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、難燃性コンポジットと、充填剤を含む難燃性コンポジット素材の形成方法を提供し、これらは、前周期または後周期遷移金属である第1の触媒成分を用いるが、充填剤の層を分離させるためにアルキルアンモニウム調節剤を用いることなく、そしてアルキルアルミニウムである第2の触媒成分を用いることなく達成される。別の態様では、アルキルアルミニウムである第2の触媒成分を前周期遷移金属である第1の触媒成分と共に用いることができる。
【0016】
充填剤は、ケイ酸塩および非ケイ酸化合物から成る群から選択される。本発明は、充填剤を、該充填剤と接触した際にオレフィン重合のための活性を示す第1の触媒成分と混合することにより行われる。オレフィンを、アルキルアルミニウムである第2触媒成分の非存在下で、活性化された触媒−充填剤混合物と接触させ、それによって前記充填剤を含む複合ポリマーを形成する。第1の触媒成分は、高融点または低融点ポリマーを提供するように選択できる。特にアルキルアルミニウムである第2触媒成分を必要とせずまたは使用せずに用いられる好ましい第1触媒成分の1種類に、非メタロセン触媒があるが、最も好ましくは、α−イミノカルボキサミダト配位子を含むニッケル錯体である。アルキルアルミニウム第2触媒成分の存在下または不存在下で使用可能な別の好ましい第1触媒成分は、テトラベンジルジルコニウムである。
【0017】
特定の態様では、前記コンポジットの少なくとも30重量%を構成するような十分量のケイ酸塩を用いて、高ケイ酸充填コンポジットのマスターバッチが調製される。次いで、1種類または2種類以上のポリオレフィンを所定の量で前記マスターバッチとブレンドして所望のケイ酸充填量を有する複合ポリマーを得る。本発明においては、前記マスターバッチを所定の量のポリオレフィンとブレンドすることによりコンポジットを調製する方法を「マスターバッチ法」と定義する。
【0018】
具体的な態様では、前記ケイ酸塩素材は、クレーである。更に具体的な態様では、本発明は、エチレンまたはプロピレンのインサイチュ(in situ)重合により、ポリエチレンマトリックスまたはポリプロピレンマトリックス中にモンモリロナイトクレー小板を十分に分散させる。クレーを最初に酸処理して、その層状構造を破壊してもよい。次に、酸処理したクレーを、Ni、α−イミノカルボキサミダト配位子およびアルキル配位子を含む重合触媒の有機溶媒溶液で処理する。オレフィンへの暴露により、ポリオレフィンマトリックスが形成され、その内部に埋め込まれるクレー層は殆どが分離した状態にある。
【0019】
特定の態様では、キャッピングされたクレーを用いて、有機アルミニウムである第2の触媒成分の存在下または非存在下でオレフィンを重合させることができる。クレーのブレンステッド酸部位をキャッピングすることにより、触媒が分解する前にクレー表面が実質的に不動態化される。
【0020】
本発明により、新たな難燃性コンポジットおよび点火後に自己消火する難燃性クレー−ポリオレフィンコンポジットの調製法が提供され、時間を要する充填素材の有機的修飾や高価な界面活性剤の使用を必要としない、簡潔で安価なケイ酸塩−ポリマーコンポジットのワンポット作製方法が提供される。本発明における難燃性コンポジットは、ナノコンポジットに限定されるものではなく、分散した充填剤の大きさがナノスケールではなくマイクロスケールである難燃性コンポジットも許容される。
【0021】
本発明によれば、クレーを膨張させ、および/またはポリマーを溶解させるための有機溶媒の使用は、大幅に削減されるかまたは省略される。ポリオレフィン成分と比べて分子量が小さく安定性も低いためにコンポジットの性能を低下させる可能性のあるマレイン酸化ポリマー等の相溶化剤[1]も必要としない。コンポジット素材は、追加的な難燃剤を添加して、または添加無しで調製することができる。後周期遷移金属触媒を用いた場合、層状充填剤そのものが触媒活性化剤として機能するため、有機アルミニウム活性化剤もしくは他の助触媒の修飾または層状充填剤の表面の不動態化を必要としない。本明細書に記載された改良により、より高品質でより安価な難燃性複合ポリマーが提供される。
【0022】
本発明をより完全に理解するため、添付した図面に関する以下の記載を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】空気中でのPE/クレーコンポジットの分解を示すTGAグラフである。
【図2】PE−クレーコンポジットに対する燃焼試験(char test)の表を示す。
【図3】点火から1分20秒後に記録したPE−クレーコンポジットに対する燃焼試験の写真を示す。サンプル番号は、図2の試験番号に相当する。
【図4】PP−クレーコンポジットに対する燃焼試験の表を示す。
【図5】点火から1分50秒後に記録したインサイチュ重合により調製したPP−クレーコンポジットに対する燃焼試験の写真を示す。サンプル番号は、図4の試験番号に相当する。
【図6】点火から3分00秒後に記録したPP−クレーコンポジットに対する燃焼試験の写真を示す。サンプル番号は、図4の試験番号に相当する。
【図7】インサイチュ重合により調製した5.4重量%LiMMT/PEコンポジットの透過型電子顕微鏡画像を示す。
【図8】インサイチュ重合により調製した15重量%LiMMT/PPコンポジットの透過型電子顕微鏡画像を示す。
【図9】酸処理したモンモリロナイトのX線回折パターンを示す。
【図10】(A)2.6重量%のクレーを有するポリエチレン−クレーコンポジット、(B)10.6重量%のクレーを有するポリエチレン−クレーコンポジット、及び(C)2.4重量%のクレーを有するエチレン/1−ヘキセン共重合体の透過型電子顕微鏡画像を示す。
【図11】トリメチルアルミニウム修飾クレーを用いて作製した11.1重量%クレー−ポリエチレンコンポジットの透過型電子顕微鏡画像を示す。
【図12】図12には、5.4重量%LiMMT/PEコンポジットの発熱容量が示されている。
【図13】図13には、5重量%TIBA−LIMMT/PPマスターバッチ混合コンポジットの発熱容量が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、難燃性コンポジットを提供し、この難燃性コンポジットは少なくともポリオレフィン、層状のケイ酸塩および非ケイ酸化合物から成る群から選択される層状充填剤、ならびに金属イオンとヘテロ原子含有配位子を含む錯体から誘導される成分(即ち、前記錯体そのものまたは前記錯体が何らかの化学反応を経ることで形成された生成物)、または式MRx(Mは前周期遷移金属であり、Rはアルキル配位子または置換アルキル配位子であり、xは3〜6である)を有する錯体を含む。
【0025】
また本発明は、少なくともポリオレフィン、層状のケイ酸塩および非ケイ酸化合物から成る群から選択される層状充填剤、ならびに熱分解その他の分解過程によりラジカルを形成可能な有機化合物を含む、難燃性コンポジットを提供する。
【0026】
本発明は、充填剤の存在下でのオレフィン重合による難燃性クレー−ポリオレフィンコンポジットの形成方法を提供する。2006年6月12日に出願した米国特許出願第11,451,199号(参照によりその全文が本明細書に組み込まれる)に開示されるように、層剥離度の高いナノコンポジットも形成できる。しかしながら、本発明の難燃性コンポジットの製造には、層剥離は必要ではない。
【0027】
充填剤は、非層状または層状のケイ酸塩および非ケイ酸化合物から成る群から選択され、該充填剤と接触した際にオレフィン重合のための活性を示す触媒と混合される。次いで、前記活性化した触媒−充填剤混合物がオレフィンと接触し、これによって、前記充填剤の小板が取り込まれたポリオレフィンコンポジット素材が形成される。重合工程は、アルキルアルミニウムである第2の触媒成分を用いることなく達成できる。別の態様では、アルキルアルミニウムである第2の触媒成分は、前周期遷移金属である第1の触媒成分と共に使用できる。
【0028】
より詳細には、前記充填剤と後周期遷移金属である第1の触媒成分が反応容器に添加され、その後にオレフィンが反応容器に添加される。上記で述べたように、当該技術分野の水準と比べた優位な差異として、重合反応は、アルキルアルミニウムである第2の触媒成分の非存在下で行うことが可能である。これにより、製造方法に要するコストが大幅に抑えられ、工程が簡潔になる。実際に、後周期遷移金属である第1の触媒成分がα−イミノカルボキサミダト配位子を含むニッケル錯体である場合には、充填剤と第1の触媒成分を添加した後にスカベンジャーとしてトリメチルアルミニウム(第2の触媒成分、第1の触媒成分の60倍過剰量で存在する)を反応容器に添加した場合には、反応容器が汚染されてしまう。大量な過剰量のトリメチルアルミニウム(触媒に対し350倍量)は、重合を阻害する。更に、後周期遷移金属である第1の触媒成分の添加よりも先に第2の触媒成分がクレーに添加された場合、ポリマーマトリックス内へのクレーの取り込みが低下し、得られる素材は、層剥離度の高いナノコンポジットではなくなってしまう。
【0029】
特定の態様では、コンポジット素材の少なくとも30重量%を構成するような十分量の層状充填素材を用いて、高充填量コンポジットのマスターバッチが調製される。1種類又は2種類以上のオレフィンポリマーを所定の量で前記マスターバッチとブレンドして所望の充填量を有するコンポジットポリマーを得る。
【0030】
充填素材としては、クレー、粘土鉱物、または例えば六方稠密充填型、アンチモニー型、CdCl2型もしくはCdl2型等の層状結晶構造を有する化合物を用いてもよい。充填剤として有用なクレー、粘土鉱物および層状化合物の具体例としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、がいろめ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、タルク、マイカ類、モンモリロナイト類、バーミキュライト、クロライト類、パリゴルスカイト、カオリナイト、ネークライト、ディッカイトおよびハロイサイトが挙げられる。
【0031】
本発明で充填剤として使用されるケイ酸塩は、合成品または天然の鉱物であってもよい。ケイ酸塩の具体例としては、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウムおよびケイ酸カリウム等のアルカリケイ酸塩、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウムおよびケイ酸バリウム等のアルカリ土類ケイ酸塩、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸チタンおよびケイ酸ジルコニウム等の金属ケイ酸塩、ならびに天然ケイ酸塩、例えば、フォルステライトおよびファヤライト等のオリビン類、ガーネット(ざくろ石)等のガーネット類、フェナサイトおよびケイ酸亜鉛鉱等のフェナサイト類、ジルコン、ケイ酸三カルシウム、メリールライト、ゲーレナイト(ゲーレン石)、ベニトアイト(ベニト石)、緑桂石、コーディエライト、例えば、エンスタタイト、紫蘇輝石、透輝石、リシア輝石(spondumene)、ロードナイトおよび珪灰石等の輝石類、ならびに直閃石、透角閃石および陽起石等の角閃石類が挙げられる。
【0032】
充填剤としてはクレーまたは粘土鉱物が特に好ましく、モンモリロナイトおよびクロライトが最も好ましい。充填剤は、単一でも、複数の混合物として組み合わせて用いてもよい。難燃性ナノコンポジットは、モンモリロナイトを用いて形成可能であり、マイクロコンポジットは、クロライトを用いて形成可能である。
【0033】
本発明で用いる充填剤には酸処理を施してもよい。充填剤は、何らの処理に付することなくそのまま使用してもよく、または使用前にボールミル粉砕、篩分けまたは酸処理等による処理を行ってもよい。更に、充填剤には、使用前に水を添加および吸着させる処理を施してもよく、または加熱によって脱水してもよい。充填剤は、脂肪族鎖を有するオニオムカチオン等の有機カチオンでその層間カチオンを交換するように処理されてもよい。オナオムカチオンの具体例としては、第1級〜第4級アンモニウムカチオンおよびホスホニウムカチオンが挙げられる。脂肪族鎖の具体例としては、例えば、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル等の炭素数6〜20の脂肪族鎖に加え、これらの混合物、例えば硬化脂肪(hydrogenated tallow)等が挙げられる。有機カチオンの具体例としては、ヘキシルアンモニウム、オクチルアンモニウム、2−エチルヘキシルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、トリオクチルアンモニウム、ジオクタデシルジメチルアンモニウム、トリオクタデシルアンモニウム等が挙げられる。これらは、単一でも、2種以上の混合物として組み合わせて用いてもよい。
【0034】
一つの実施形態では、充填素材は、ブロンステッド酸(塩酸や硫酸等)又は強酸水溶液を生じる任意の物質と接触させることにより酸性化される。酸はクレー内に存在するアルミニウムの一部を溶解し、それによって層構造を部分的に破壊する。
【0035】
酸処理された充填剤は、少量の溶媒(トルエン等)で分散されるが、これは、任意の適切な技術によって行うことが可能であり、所望又は必要とされる場合には音波処理、高せん断混合又はウェットボールミル粉砕等の機械的手段を用いてもよい。
【0036】
既に示したように、第1の触媒成分は、好ましくは非メタロセン触媒である。非メタロセン触媒は、遷移金属イオンとシクロペンタジエニル環を含まない配位子とを含む。前記非メタロセン触媒の配位子は、好ましくは、少なくとも1つのヘテロ原子を含む。好ましいヘテロ原子は、周期表の第15族および/または第16族に含まれる原子である。より詳細には、窒素、酸素、硫黄、リン、ヒ素およびセレン原子が、前記配位子に含まれるヘテロ原子として好ましい。遷移金属イオンについては、該金属イオンを基礎とする前記錯体がα−オレフィンを重合する機能を有する限り、限定されるものではない。本発明では、前周期遷移金属または後周期遷移金属を用いることができる。本発明では、非メタロセン触媒の混合物を用いることもできる。
【0037】
特定の実施態様では、第1の触媒成分は、後周期金属触媒(late transition metal catalyst)、α−イミノカルボキサミダト配位子を有するニッケル錯体である。酸処理されたクレーにより、α−イミノカルボキサミダト配位子を含む後周期遷移金属触媒、即ち、LNi(R)(S)ファミリー(ここで、Lはα−イミノカルボキサミダト配位子であり、Rはアルキル基(例えば、CH2Ph)であり、そしてSは補助配位子(例えば、PMe3)である)由来の触媒が活性化される[28]。
【0038】
最も好ましくは、前記ニッケル触媒は、下記の一般式I、II、III、IV又はVを有する錯体である:
【化1】

【0039】
式中、
Mは、Ni、Pt、Pdであり;
Aは、π−アリル配位子、置換π−アリル配位子、π−ベンジル配位子、置換π−ベンジル配位子、ベンゾイル配位子又はピコリノ配位子であり;
Xは、N、P又はCHであり;
Yは、O、CH2又はSであり;
Zは、O又はSであり;
Lは、N若しくはP、又は中性の2電子供与体配位子になり得る構造であり;
L1は、中性単座配位子であり、かつL2は、モノアニオン性単座配位子であるか、又は、L1及びL2は、一緒になってモノアニオン性二座配位子であり、但し、前記モノアニオン性単座配位子若しくは前記モノアニオン性二座配位子は、前記オレフィンに付加可能であり;
Bは、不飽和炭素とLを共有結合で連結する橋であり;
R1、R2、R3A及びR3Bは、同じもしくは異なっており、それぞれ独立して、水素、ヒドロカルビル基又は官能基を含む置換ヒドロカルビル基であり;
【化2】

の表示は、単結合又は2重結合であり;そして
Bが2重結合でLに結合している場合には、R3Bは、存在しない。
【0040】
特に好ましい触媒は、 (N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-(2,6-ジイソプロピルフェニルイミノ)プロパンアミダト)Ni(η3-CH2Ph)である。
【0041】
ニッケル錯体触媒等の後周期遷移金属錯体を用いる場合には、30℃で1時間当たりに触媒1モルで1000〜15,000kgのポリエチレンを合成する通常の合成活性を達成するために第2の触媒成分を必要としない。減圧下で100℃にて12時間乾燥させた充填剤を用いればより高い活性が得られるが、充填剤は乾燥されている必要はない。典型的な方法では、トルエンまたはヘキサン中の8μmolの触媒の溶液が、N2雰囲気下で85mgの乾燥充填剤と共に撹拌される。この触媒懸濁液は、反応容器に直接加えてもよく、または使用前に濾過し、洗浄して新しい乾燥溶媒に再懸濁してもよい。クレーが典型的な充填剤の一つであることから、以下においては、クレーを充填剤として用いた場合について説明する。
【0042】
別の態様では、前周期遷移金属触媒を第1の触媒成分としてコンポジットを作製することが可能であり、この場合、触媒の金属成分は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデンおよびタングステン等の任意の前周期遷移金属でもよい。種々のアルキル配位子または置換アルキル配位子を用いることが可能であり、特に、MRx(ここで、Mは金属であり、Rはアルキル配位子であり、xはアルキル配位子の数(3〜6、通常は4)である)の形態で安定なネオペンチル基、ネオシリル基、ベンジル基およびアダマンチル基等のα−水素を欠く配位子を用いることができる。
【0043】
好ましい態様では、クレー上に支持された場合にオレフィン重合において活性を有する、アルキルアルミニウムである第2の触媒成分を、上記の前周期遷移金属である第1の触媒成分と好適に併用できる。好ましい第2の触媒成分は、トリアルキルアルミニウムまたはアルキルアルミノキサンである。特に好ましい第2の触媒成分は、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)である。第2の触媒成分を最初に充填剤に添加して吸着した水分を除去し、クレー表面を不動態化することもできる。第2の触媒成分は、クレー表面上のシラノール基の多く(これらは、キャップされない場合にはポリマー分解を触媒し、前周期遷移金属触媒を不活性化させる)をキャップすることもできる。
【0044】
シラノール基をトリメチルシリル基に変換してTMS−被キャップ−LiMMT(TMS−クレー)を得ることで、シラノール基のより広範囲でより強力なキャッピングが可能になる。これは、純粋なクロロトリメチルシラン中のLiMMTの懸濁液をN2下で2時間撹拌することにより達成される。揮発成分は、100℃の減圧状態で16時間、または新たな溶媒で洗浄することにより取り除くことができる。第2触媒成分非TMS修飾LiMMTの代わりに第2の触媒成分で処理されたTMS−LiMMTを用いた場合でも、同程度のエチレン重合活性およびプロピレン重合活性が保持される。TMS−LiMMTと前周期または後周期遷移金属である第1の触媒成分とを用いた重合は、活性は同程度には高くないにしても、第2の触媒成分を用いることなく進行可能である。また、クレーは、他のシリル化剤を用いてキャップすることも可能であり、またはブレンステッド塩基(例えば、3級アミン類またはホスフィン類)で処理することも可能である。
【0045】
オレフィンが活性化された第1の触媒−充填剤混合物と接触させられると、オレフィンは重合して、ポリオレフィンマトリックス中に分散する酸処理された充填剤の小板を含有するコンポジット素材を形成する。酸処理された層状充填剤のルイス酸部位が触媒を活性化させて、層状充填剤の層間にポリマーを生じさせ、それによって、このような層が成長中のポリマーマトリックス中により大規模に分割又は層剥離されることになると考えられる。
【0046】
好ましくは、本発明で用いられるオレフィンは、炭素数2〜10のオレフィンから成る群から選択される。このようなオレフィンには、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、ノルボルネン、エチレン、プロピレン、ヘキセン、オクテン、ブタジエン及びこれらの混合物が含まれる。従って、本発明の又は本発明によるポリマー生成物は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、熱可塑性エラストマー又は合成ゴムであってもよい。また、より大きなモノマー(マクロモノマー)をインサイチュで形成して、前記ポリマー中に取り込ませることも可能である。
【0047】
好ましい態様では、前記オレフィンは、エチレン又はプロピレンである。別の好ましい態様では、オレフィンは、エチレンと、例えば1−ヘキセン等のα−オレフィンとの混合物である。
【0048】
好ましくは、コンポジット素材中の層状充填物の重量%は、少なくとも0.5%である。好ましい態様では、コンポジットの少なくとも30重量%を構成するような十分量のケイ酸塩が用いられることで、高ケイ酸塩充填量コンポジットのマスターバッチが調製される。1種類又は2種類以上のオレフィンポリマーを所定の量で前記コンポジットのマスターバッチとブレンドして所望のケイ酸塩充填量、例えば、0.1〜20重量%のケイ酸塩充填量を有するコンポジット素材を得ることができる。
【0049】
特に好ましい態様では、難燃性ポリエチレンコンポジットはモンモリロナイトをアルキルアルミニウムである第2の触媒成分で処理し、次に、クレーと接触した際にエチレン重合のために活性化される第1の触媒成分(テトラベンジルジルコニウム)で処理し、さらにエチレンを前記活性化された触媒−クレー混合物と接触させることで形成される。
【0050】
エチレンの重合又はエチレンと1−ヘキセン等のα−オレフィンとの共重合は、10〜70℃の温度で生じ、好ましくは、20〜50℃の温度で生じる。重合は、発熱性が高いため、熱交換器を用いて温度を調節して70℃を超える温度での過熱と触媒の分解を防ぐことが好ましい。重合は、モノマーの消耗、未反応モノマーの排出又は水素ガス、一酸化炭素若しくは極性コモノマー等の連鎖停止剤による反応のクエンチングにより停止させることができる。
【0051】
ポリオレフィン−クレーコンポジットの熱安定性:
ポリエチレン(PE)−クレーコンポジットの熱安定性を、熱重量分析(TGA)により評価した。TGA実験は、空気中にて、20℃/分の速度で25℃から600℃の温度勾配で行った(図1)。コンポジットの分解の開始は、クレーの非存在下で均一なルイス酸B(C65)3で活性化させた同一の触媒を用いて作製した純粋なPEと同程度の温度で起こった。TGAグラフには、ポリマーの空気中での分解が少なくとも2段階で起こることが示されている。純粋なPEの場合、第1の段階はほとんど検出できない;質量損失の大部分が第2の段階で起こる。コンポジットの場合、第1の段階がより高温まで広がり、10重量%未満のクレーを含む素材では僅かに質量損失が増加し、10重量%超のクレーを含む素材では質量損失はかなり増加する。分解の第2の段階は、全てのPE−クレーコンポジットで、実質的により高温で起こっており、これは、例えクレー充填量が低くとも、これらのコンポジットが純粋なPEよりも熱安定性が高いことを示している。
【0052】
ポリオレフィン−クレーコンポジットの燃焼性:
変更を加えた燃焼試験を用いて燃焼性を評価した。圧縮成形バー(60 x 6 x 3 mm)を垂直に固定し、上端にブタンライターを用いて7秒間着火した。自己消火するまでにまたは完全に燃焼するまでに要した時間を記録した。
【0053】
PE−クレーコンポジットを用いた燃焼試験の結果が図2に示されており、種々のTMS−クレー含有PEサンプルの燃焼試験の写真が図3に示されている。サンプル1〜5は、インサイチュ重合で調製したコンポジットであり、サンプル7〜10は、マスターバッチブレンド法によって作製したコンポジット素材である。サンプル7〜8は、52.8重量% LiMMT/PEマスターバッチからブレンドし、サンプル9は、TIBA処理したTMS−LiMMTを含有する57.0重量%のマスターバッチを用いて作製し、サンプル10は、TMS−LiMMTのみを含有する50.8重量%のマスターバッチ(TIBA含有せず)からブレンドした。
【0054】
インサイチュ重合またはマスターバッチ法のいずれで作製したかにかかわらず、全てのPEコンポジットは、クレーを含有しないPEと比較して着火に対する抵抗性を示した。TMSキャッピング有りまたは無しでインサイチュ重合で作製した素材(サンプル1〜5)は、自己消火した。サンプル1〜4では、バーの表面上にチャーが形成された。チャーの形成により、燃焼を支える燃焼性揮発成分の拡散が防がれる[2]。最もクレー充填量の少ない素材(サンプル1)が、最短の自己消火時間を示した。しかしながら、ブレンドにより作製した素材(サンプル7〜10)は、PEのみの場合(サンプル6)よりも早く燃焼し、大量の黒煙を生じた。
【0055】
ポリプロピレン(PP)−クレーコンポジットの燃焼試験の結果を図4にまとめる。この燃焼試験の代表的な写真が図5および6に示されている。サンプル11aと11bでは、クレーを含有しないアイソタクチックPPのバーを用いて行った。20重量%のLiMMT/TIBA(サンプル12)と30重量%のTMS−LiMMT(サンプル13)の高クレー充填量を有する2種類のバーをインサイチュ重合によって作製した。マスターバッチ法により、アイソタクチックPPを5重量%クレーにブレンドして、3種類のバーを作製した:サンプル14は、42.3重量%LiMMT/TIBA/PPコンポジットからブレンドした:サンプル15は、76.9重量%TMS−LiMMT/PPコンポジットからブレンドした:サンプル16は、35.1重量%TMS−LiMMT/TIBA/PPコンポジットからブレンドした。
【0056】
着火した後、サンプル11aは溶け始め、液体状のポリマーが側面をしたたり落ちた。このサンプルは、連続して炎が基底部に到達するまで1分44秒かけて燃焼し、手作業で消化された。LiMMT/TIBA含有コンポジット(サンプル12)は、滴ることはなかったが、基底部に炎が到達するのにほんの僅かに長い時間(2分38秒)を要し、基底部に炎が到達した時点で手作業で消化された。一方で、TMS−LiMMT/TIBA/PPコンポジット(サンプル13)は、着火より1分04秒後に自己消火した。実験の終了時に、インサイチュ重合で形成した両方のコンポジットの上端を覆うチャーが観察された。ブレンステッド酸部位のTIBAまたはTMSによるキャッピングにより、触媒によってポリマーがより低分子の炭化水素フラグメントへ分解するのが遅くなる。図6に示すサンプル11bおよび14〜16のうち、アイソタクチックPPバー(サンプル11b)は、基底部まで燃焼する時間が最短であった。
【0057】
ブレンドPEコンポジットとは異なり、ブレンドPPコンポジットは、燃焼遅延特性を示した。全てのPPマスターバッチブレンド(サンプル14〜16)は、クレーを含有しないPPよりも燃焼が遅かった。加えて、TMS−LiMMT/TIBAを含有する素材は、3分22秒後に自己消火した。
【0058】
上記から明白なように、難燃性コンポジットは、直接作製することも可能であり、または高クレー充填量(例えば、50重量%超)を有するマスターバッチを用いて、これを次に純粋なポリマー(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンと他のα−オレフィンとの共重合体等)とブレンドして所望のクレー充填量を有するコンポジットを作製することもできる。この方法は、ポリエチレンおよびポリプロピレン等のホモポリマー、エチレンと他のα−オレフィンの共重合体またはスチレンもしくはノルボルネン等の官能化モノマーとの共重合体のコンポジットに使用可能である。
【0059】
本明細書中に開示される方法を用いて、種々の対象に難燃特性を付与することが可能である。これらの対象としては、前記化合物が付与した基材および前記化合物を含有する成形品が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
基材としては、以下に限定されないが、家具の部品、自動車のボディーパネルおよびボンネット下部分の部品、使用される電子機器(例えば、テレビ、コンピューター等)の部品、動力工具の格納部品、子供用玩具、建築(建設)用材料ならびに閉鎖空間(例えば、航空機のキャビンおよび自動車の内装)用の備品が挙げられる。難燃特性を示す化合物は、種々の方法によって基材に添加することが可能であり、例えば、これらに限定されないが、スプレー、浸漬、塗布、注入および押し出し等が挙げられる。これらの方法の詳細は当業者によく知られている。
【実施例】
【0061】
以下の実施例は、本発明の最良の実施形態を例示するものである。
【0062】
実施例1
第2の触媒成分であるTIBAの溶液(ヘキサン中に1.0Mを2.0g)を15gのトルエン中のLiMMT(1.3g)に添加し、空気感受性の第1の触媒成分Zr(Ch2Ph)4の黄色の溶液(10gのトルエン中に50mg)を、LiMMT/TIBAスラリーと20℃で15分間混合した。このスラリーを過剰な溶媒の除去により2回洗浄し、新たなトルエン20gに再懸濁して15分間撹拌した。過剰な溶媒を最後に除去した後、スラリーを70gの新たなトルエンに再懸濁し、バッチ重合反応容器内に静置した。容器を25℃において100psiのエチレンで加圧し、プレ重合を15分間行った。温度を40℃に上昇させ、重合を更に45分間進行させた。この反応により、5.4重量%のクレー含有率を有するPEが23.9g得られた。
【0063】
典型的な重合活性は、40℃で1時間当たりに触媒1モルで150kgのPEおよび50℃で1時間当たりに触媒1モルで30kgのPPを合成する。エチレンの重合は25と60℃の間、好ましくは40と50℃の間で行われる。重合は、発熱性が高いため、熱交換器を用いて反応容器の温度を調節して70℃を超える温度での過熱と触媒の分解を防ぐことが好ましい。温度が平衡になったら所望により100psiのエチレンを加える。40℃で30分間重合を行った後の典型的なクレーの充填量は、15重量%である。より低いクレー充填量(10重量%未満)を有する素材を実現するため、プレ重合を行う。エチレンを25℃で15分間添加し、次いで温度を40℃に45分間上昇させることで5重量%のPE−クレーコンポジットが得られる。図7において、クレー層の層剥離が、透過型電子顕微鏡(TEM)に示されている。個々のクレーシートは、明るいグレーで示されるPEのバックグラウンドに対して暗い線の輪郭として見える。
【0064】
実施例2
実施例1の方法を、重合がプロピレンを用いて行われるという点以外において、繰り返すことができる。重合は、30と60℃の間、好ましくは40と50℃の間で行われる。重合は、発熱性が高いため、熱交換器を用いて反応容器の温度を調節して70℃を超える温度での過熱と触媒の分解を防ぐことが好ましい。50℃で30分間重合を行った後の典型的なクレーの充填量は40重量%であるが、15重量%という低い充填量も得られている。15重量%の充填量でのクレー層の部分的な層剥離が、図8の透過型電子顕微鏡画像に示されている。
【0065】
実施例3
LiMMT(2.5g)をクロロトリメチルシラン(10mL)に懸濁し、20℃で2時間撹拌した。動的減圧下(10-4Torr以下で16時間)にて100℃で加熱することにより揮発成分を除去し、次いで固形成分をN2で満たしたグローブボックスへと移した。TIBAの溶液(ヘキサン中に1.0Mを2.0g)を15gのヘキサン中のTMSキャップされたクレー(1.3g)に添加し、空気感受性の第1の触媒成分Zr(Ch2Ph)4の黄色の溶液(10gのヘキサン中に200mg)を、TMSキャップされたクレー/TIBAスラリーと20℃で15分間混合した。このスラリーを過剰な溶媒の除去、新たなヘキサン20gへの再懸濁および15分間の撹拌により2回洗浄した。過剰な溶媒を最後に除去した後、スラリーを70gの新たなヘキサンに再懸濁し、温度が50℃で平衡状態にあるバッチ重合反応容器内に静置した。反応容器を140psiのプロピレンで加圧し、重合を60分間進行させた。この反応により、30重量%のクレー含有率を有するポリプロピレンが8.9g得られた。
【0066】
実施例5
マスターバッチブレンド法で調製したPP−クレーコンポジットは、難燃性素材である。マスターバッチは、上記のPP/LiMMTコンポジットについて記載した方法を用いて作製したが、TIBAで処理したTMS−クレーを用い30分の重合時間とした。35.1重量%のTMS−クレー−TIBA/PPコンポジット(0.57g)と純粋PP(3.43g)の物理的混合物を、ツインスクリュー押出機で170℃にて8分間ブレンドし、その後押し出した。
【0067】
実施例6
クレーは、Li以外のカチオンでイオン交換することも可能である。従って、クレーをNaでカチオン交換する点以外では、実施例1の方法を繰り返すことも可能である。
【0068】
実施例7
酸処理は、モンモリロナイト以外のクレーまたは層状非クレー素材に適用することもできる。従って、酸処理を層状リン酸アルミニウムに適用できる点以外では、実施例1の方法を繰り返すことも可能である。
【0069】
実施例8
実施例6と同様に、酸処理をリン酸ジルコニウムに適用できる点以外では、実施例1の方法を繰り返すことも可能である。
【0070】
実施例9
本方法は、エチレンと他のα−オレフィンもしくは官能化モノマーとの共重合体のコンポジットにも使用できる。従って、オレフィンがスチレンである点以外では、実施例1の方法を繰り返すことも可能である。
【0071】
実施例10
実施例7と同様に、オレフィンがノルボルネンである点以外では、実施例1の方法を繰り返すことも可能である。
【0072】
実施例11
ポリマーの分枝含有率を変化させるためにエチレンの圧力を変化させることができる。従って、エチレンの圧力を3500kPaに上昇させる点以外では、実施例1の方法を繰り返すことも可能である。
【0073】
実施例12
クロライト(1.3g)をTIBA(ヘキサン中に1.0Mを2.0g)で処理し、次いでテトラベンジルジルコニウム(10gのトルエン中に10mg)と共に撹拌した。スラリーをバッチ重合反応容器内に静置し、反応容器を100psiのエチレンで加圧した。40℃で30分間の後、反応により、12.9%のクレー充填量を有するポリエチレンが10.1g得られた。記載した垂直燃焼テスト(下記の実施例13を参照)では、この素材は1分28秒後に自己消火した(図2のサンプル5を参照)。
【0074】
実施例13
η−3Ni触媒を用いてインサイチュ重合により作製した5.7重量%のPE/LiMMTコンポジットも、自己消火することが示された。3分51秒後に自己消火した(図示せず)。コンポジットを作製するため、触媒溶液(1gのトルエン中に9.6マイクロモル)を100gのトルエン中の200mgのLiMMTのスラリーに添加した。スラリーをバッチ重合反応容器内に静置した。温度を40℃に平衡化させ、必要に応じてエチレン(100psi)を30分間添加した。この反応により、5.7重量%のクレー含有量を有するPEが5.3g得られた。
【0075】
LNi(η3−CH2Ph)(ここでL=(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−(2,60ジイソプロピルフェニルイミノ)プロパナミダト)触媒を用いて、インサイチュ重合により、5.7重量%のPE/LiMMTのコンポジットを作製した。触媒の溶液(1gのトルエン中に9.6μmol)を100gのトルエン中の200mgのLiMMTのスラリーに添加した。スラリーをバッチ重合反応容器内に静置した。温度を40℃に平衡化させ、必要に応じてエチレン(100psi)を30分間添加した。反応により、5.7重量%のクレー含有量を有するポリエチレンが5.3g得られた。この素材を60x6x3mmのバーに成形して垂直に固定し、上端に着火した。このバーは3分51秒後に自己消火し、対象的に、同じサイズのクレーを含有しない高密度ポリエチレンのバーは、7分32秒で完全に燃焼した。
【0076】
実施例14
Li2SO4の溶液中の未処理クレーの懸濁液と濃H2SO4を5時間撹拌することにより酸処理リチウムモンモリロナイトを調製した。図9に示すように、この素材は、そのシート状構造を保持していたが、2θ=7°でのXRD(001)反射が認められないことにより示されるとおり、層間の結合が大きく破損していた。
【0077】
動的減圧下(10-4Torr以下で12時間)にて100℃で加熱することにより、85mgの酸処理リチウムモンモリロナイトを部分的に脱水し、次いでN2が充満したグローブボックスへと移した。25℃に温度調節されたバッチ重合反応容器内で、空気感受性の触媒LNi(η3−CH2Ph)(ここで、L=N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−(2,6−ジイソプロピルフェニルイミノ)プロパナミダト)の濃いオレンジ色の溶液(1gのトルエン中に4mg)を26gのトルエンに懸濁された85mgのクレーのスラリーと室温で30分間混合した。この反応容器を689kPaのC24で加圧し、重合を70分間進行させた。この反応により、Mw=1,089,000g/mol、多分散指数が2.8、クレー含有率が2.6重量%のポリエチレンが3.2g得られた。
【0078】
ナノコンポジット形成の証拠が、図10Aの透過型電子顕微鏡(TEM)画像に示されている。個々のクレーシートは、明るいグレーで示されるポリエチレンのバックグラウンドに対する暗い線として図中に見える。
【0079】
実施例15
酸処理したリチウムモンモリロナイト500mgを用いた点を除いて、実施例14の方法を繰り返した。その結果、Mw=1,146,000g/mol、多分散性指数が2.7、クレー含有率が10.6重量%のポリエチレンが4.7g得られた。ナノコンポジット形成の証拠が、図10Bの透過型電子顕微鏡(TEM)画像に示されている。
【0080】
実施例16
4gのトルエンの溶媒を4gの1−ヘキセンに換え、重合を30分間進行させた点を除いては、実施例14の手順を繰り返した。この反応により、クレー含有率が2.4重量%のポリエチレンが3.6g得られた。ナノコンポジット形成の証拠が、図10Cの透過型電子顕微鏡(TEM)画像に示されている。
【0081】
図2の画像は、クレーの大部分が層剥離していることを示している。結合した、恐らくはインターカレートされた、5枚未満のクレーシートのグループも存在している。クレーの高い分散性は、充填量が11重量%までの範囲とコモノマーの存在下において観察された。
【0082】
実施例17
クレーは、Li以外のカチオンでカチオン交換することも可能である。従って、クレーをNaでカチオン交換する点を除いて実施例14の手順を繰り返すことも可能である。
【0083】
実施例18
酸処理は、モンモリロナイト以外のクレー又は層状非クレー素材に適用することもできる。従って、酸処理を層状リン酸アルミニウムに適用できる点を除いて実施例14の手順を繰り返すことも可能である。
【0084】
実施例19
実施例18と同様に、酸処理をリン酸ジルコニウムに適用できる点を除いて実施例14の手順を繰り返すことも可能である。
【0085】
実施例20
触媒の構造は、ドナー原子並びに配位子L、開始基(initiating group)R及び補助配位子S上の置換基の特性を通じて変化させることが可能である。従って、後周期遷移金属Niに代わって後周期遷移金属Pdを用いることができる点を除いて実施例14の手順を繰り返すことも可能である。
【0086】
実施例21
実施例20と同様に、後周期遷移金属Niに代わって後周期遷移金属Ptを用いることができる点を除いて実施例14の手順を繰り返すことも可能である。
【0087】
実施例22
実施例20と同様に、後周期遷移金属Niに代わって後周期遷移金属Feを用いることができる点を除いて実施例14の手順を繰り返すことも可能である。
【0088】
実施例23
実施例20と同様に、後周期遷移金属Niに代わって後周期遷移金属Coを用いることができる点以外では、実施例14の手順を繰り返すことも可能である。
【0089】
実施例24
本方法は、ポリエチレン以外のホモポリマーのコンポジットにも使用できる。従って、オレフィンがプロピレンであり、触媒がLNi(η1−CH2Ph)(PMe3)(ここで、L=2−メチレン−3−(2,6−ジイソプロピルフェニルイミノ)プロポキシド)であった点を除いて、実施例14の手順を繰り返した。触媒(1gのトルエン中に8mg)とビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(2gのトルエン中に30mg)との混合物を55gのトルエン中に懸濁される450mgのクレーのスラリーに添加した。反応容器を937kPaのC36で加圧し、重合を180分間進行させた。この反応により、32%のクレー充填量を有するポリプロピレンコンポジットが1.4g得られた。
【0090】
実施例25
本方法は、エチレンと他のα−オレフィン若しくは官能化モノマーとの共重合体であるコンポジットにも使用できる。従って、オレフィンがスチレンである点を除いて実施例14の手順を繰り返すことも可能である。
【0091】
実施例26
実施例25と同様に、オレフィンがノルボルネンである点を除いて実施例14の手順を繰り返すことも可能である。
【0092】
実施例27
ポリマーの分枝含有率を変化させるためにエチレンの圧力を変化させることができる。従って、エチレンの圧力を3500kPaに上昇させる点を除いて実施例14の手順を繰り返すことも可能である。
【0093】
実施例28
実施例14の手順を用いて、高クレー充填量のマスターバッチを作製することが可能であり、その後、このマスターバッチを純粋なポリマー(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンと他のα−オレフィンとの共重合体等)とブレンドして所望のクレー充填量を有するコンポジットを作り出すことも可能である。従って、40gのトルエンに懸濁させた0.25gのクレーのスラリーを実施例14の触媒1mg(トルエン1g中)で処理できる点を除き実施例14の手順を繰り返すことも可能である。反応容器を689kPaのC24で加圧し、重合を4分間進行させることで、クレー含有率が少なくとも40重量%のポリエチレンを得ることができる。
【0094】
実施例29
急速に撹拌されている10gのトルエン中の3gの酸処理モンモリロナイトの懸濁液に500mgの純粋なトリメチルアルミニウム(TMA、第2の触媒成分)を滴下により添加した。次いで、クレーをろ過して、新たなトルエンで3回洗浄することで未反応TMAを取り除いた。クレーの一部(626mg)を70gのトルエン中に再懸濁し、300mLのパール反応容器に移した。1gの触媒溶液(3gのトルエン中に16mgのLNi(η3−CH2Ph)触媒(ここで、L=N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−(2,6−ジイソプロピルフェニルイミノ)プロパナミダト))を添加し、反応容器を密封してグローブボックスから取り出した。撹拌しながら40℃に温度平衡させた後、所望によりエチレンを100psiで35分間添加した。同一の反応容器内での同様の条件下では、活性は、非修飾クレー上に担持される触媒の活性と同程度であった。5.6gの素材(11.1重量%のクレーを含有)を回収した。先にTMA修飾無しでクレーを用いて作製した素材と比べてふわふわしている(即ち、比較的粒状ではない)ものと思われた。
【0095】
図11は、TMA修飾クレー触媒を用いて作製した11.1重量%クレーポリエチレンコンポジットのTEM画像を示す。クレーは、ポリマーマトリックス中に十分に分散しているが、層剥離度は高くない。これは、TMAに誘導された触媒の浸出により、クレーの表面上と表面から離れた両方の場所で重合が起こった結果であろう。ふわふわしたポリマーの外観は、均一酸活性化触媒により生成された素材に類似しているので、上記の説明と一致している。
【0096】
実施例30
動的減圧下(10-4Torr以下で12時間)にて200℃で加熱することにより、31.1gの酸処理リチウムモンモリロナイトを部分的に脱水した。次いで、クレーをトルエン(100g)に懸濁し、N2下で、1Lのトルエンを含む2Lオートクレーブ反応容器へと移した。触媒の溶液(5gのトルエン中に16mgのLNi(η3−CH2Ph)(ここで、L=N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−(2,6−ジイソプロピルフェニルイミノ)プロパナミダト))を反応容器のバーストバルブ(burst valve)に移した。反応容器の温度を40℃に調節した。1800kPaのエチレンで触媒溶液を反応容器内に押し込み、インサイチュでクレーに支持された触媒を作製した。重合は、等温状態で30分間進行させた。この反応により13.2重量%のクレー含有率を有するポリエチレンが242g得られた。
【0097】
実施例31
動的減圧下(10-4Torr以下で12時間)にて100℃で加熱することにより、0.5gの酸処理リチウムモンモリロナイトを部分的に脱水し、次いでN2で満たされたグローブボックスへと移した。55℃に温度調節されたバッチ重合反応容器内で、触媒テトラベンジルジルコニウムの溶液(2gのトルエン中に140mg)を80gのトルエンに懸濁された2.5gのクレーのスラリーと室温で30分間混合した。この反応容器を965kPaのC36で加圧し、重合を60分間進行させた。この反応により、クレー含有率が28.9重量%で融点が148℃のポリプロピレンが8.65g得られた。
【0098】
実施例32
動的減圧下(10-4Torr以下で12時間)にて100℃で加熱することにより、430mgの酸処理リチウムモンモリロナイトを部分的に脱水させ、次いでN2が充満したグローブボックスへと移した。触媒であるLNi(η1−CH2Ph)(PMe3)(ここで、L=3−(2,6−ジイソプロピルフェニルイミノ)ブタン−2−オン)(2gのトルエン中に16mg)とNi(COD)2(1.5gのトルエン中に38mg)との溶液を、40gのトルエンに懸濁された430mgのクレーのスラリーと室温で30分間混合した。クレーに支持される触媒が沈降し、溶媒をデカンテーションした。次いで、60gの新たなトルエンと追加のNi(COD)2(1.5gのトルエン中に38mg)を添加した。次いで、触媒懸濁液をバッチ重合反応容器に移し、温度を25℃に調節した。この反応容器を965kPaのC36で加圧し、重合を180分間進行させた。この反応により、クレー含有率が33.1重量%のポリプロピレンが1.3g得られた。
【0099】
実施例33
第2の触媒成分であるTIBAの溶液(ヘキサン中に1.0Mを2.0g)を15gのトルエン中のLiMMT(1.3g)に添加した。第1の触媒成分Zr(Ch2Ph)4の溶液(10gのトルエン中に50mg)を、TIBA/LiMMTスラリーと20℃で15分間混合した。固形成分は、ろ過して、新しいトルエン20gに再懸濁し、15分間撹拌してろ過することにより洗浄を2回行った。最後のろ過の後、固形成分を新しいトルエン70gに再懸濁し、バッチ重合反応容器内に静置した。容器を25℃にて100psiのエチレンで加圧し、プレ重合を15分間行った。温度を40℃に上昇させ、重合を更に45分間進行させた。この反応により、5.4重量%のクレー含有率を有するポリエチレンが23.9g得られた。[0001]に記載される垂直燃焼テストでは、この素材は0分40秒で自己消火することが判明した(図2のサンプル1を参照)。
【0100】
先の段落に記載した素材の1.5mgのサンプルをセラミック製のるつぼ内に入れ、熱分解−燃焼流カロリメーターに75℃の充填温度で挿入した。温度を1℃/秒の加熱速度で750℃まで勾配させると空気(80%のN2と20%のO2)中で熱分解した。熱分解ガスを900℃の燃焼器内へと送りこんだ。ピーク発熱速度を加熱速度で割ることにより発熱容量を計算すると、640J/g℃であり、これに比べ、クレーを含まない高密度ポリエチレンでは1475J/g℃であった。発熱特性を図12に示す。
【0101】
実施例34
第2の触媒成分であるTIBAの溶液(ヘキサン中に1.0Mを1.0g)を第1の触媒成分Zr(Ch2Ph)4の溶液(10gのトルエン中に50mg)に添加した。得られた溶液を15gのトルエン中のLiMMT(1.3g)のスラリーに添加し、20℃で5分間撹拌した。固形成分は、ろ過して、新しいトルエン20gに再懸濁し、10分間撹拌して溶媒を除去することにより洗浄を2回行った。最後のろ過の後、固形成分を新しいトルエン70gに再懸濁し、バッチ重合反応容器内に静置した。反応容器を25℃にて100psiのエチレンで加圧し、プレ重合段階を15分間行った。温度を40℃に上昇させ、重合を更に45分間進行させた。この反応により、11.5重量%のクレー含有率を有するポリエチレンが11.3g得られた。実施例13に記載する垂直燃焼テストでは、この素材は1分12秒で自己消火することが判明した(図2のサンプル2を参照)。
【0102】
実施例35
LiMMT(2.5g)をクロロトリメチルシラン(10mL)に懸濁し、20℃で2時間撹拌した。動的減圧下(10-4Torr以下で16時間)にて100℃で加熱することにより揮発成分を除去し、次いで固形成分をグローブボックスへと移した。第2の触媒成分であるTIBAの溶液(ヘキサン中に1.0Mを1.0g)と第1の触媒成分Zr(Ch2Ph)4の溶液(1gのヘキサン中に50mg)を15gのヘキサン中のTMSキャップされたクレー(1.3g)のスラリーと共に20℃で15分間撹拌した。このスラリーは、ろ過して、新しいヘキサン20gに再懸濁し、15分間撹拌して溶媒を除去することにより洗浄を2回行った。最後のろ過の後、固形成分を新しいトルエン70gに再懸濁し、温度が40℃に平衡化されたバッチ重合反応容器内に静置した。反応容器を100psiのエチレンで加圧し、重合を60分間進行させた。この反応により、9.3重量%のクレー含有率を有するポリエチレンが14.1g得られた。実施例13に記載する垂直燃焼テストでは、この素材は1分00秒後に自己消火した(図2のサンプル3を参照)。
【0103】
実施例36
LiMMT(2.5g)をクロロトリメチルシラン(10mL)に懸濁し、20℃で2時間撹拌した。動的減圧下(10-4Torr以下で16時間)にて100℃で加熱することにより揮発成分を除去し、次いで固形成分をグローブボックスへと移した。第1の触媒成分Zr(Ch2Ph)4の溶液(1gのヘキサン中に50mg)を15gのヘキサン中のTMSキャップされたクレー1.3gのスラリーと共に20℃で15分間攪拌した。固形成分を、ろ過して、新しいヘキサン20gに再懸濁し、15分間撹拌して溶媒を除去することにより洗浄を2回行った。最後のろ過の後、固形成分を新しいトルエン70gに再懸濁し、バッチ重合反応容器内に静置した。100psiのエチレンで加圧することにより、室温(約20℃)で重合を開始させた。外部の加熱器を用いて反応容器の温度を20分間かけて40℃にした。重合は全体で60分間進行させた。反応により、14.9重量%のクレー含有率を有するポリエチレンが8.71g得られた。実施例13に記載する垂直燃焼テストでは、この素材は1分52秒後に自己消火した(図2のサンプル4を参照)。
【0104】
実施例37
LiMMT(2.5g)をクロロトリメチルシラン(10mL)に懸濁し、20℃で2時間撹拌した。動的減圧下(10-4Torr以下で16時間)にて100℃で加熱することにより揮発成分を除去し、次いで固形成分をグローブボックスへと移した。第2の触媒成分であるTIBAの溶液(ヘキサン中に1.0Mを2.0g)と第1の触媒成分Zr(Ch2Ph)4の溶液(10gのヘキサン中に200mg)を15gのヘキサン中のTMSキャップTIBA修飾クレーの懸濁液に添加し、20℃で15分間撹拌した。スラリーを、ろ過して、新しいヘキサン20gに再懸濁し、15分間撹拌して溶媒を除去することにより洗浄を2回行った。最後のろ過の後、固形成分を新しいヘキサン70gに再懸濁し、温度が50℃に平衡化されたバッチ重合反応容器内に静置した。容器を140psiのプロピレンで加圧し、重合を60分間進行させた。この反応により、30重量%のクレー含有率を有するポリエチレンが8.9g得られた。実施例13に記載する垂直燃焼テストでは、この素材は1分04秒後に自己消火し、一方同じサイズのアイソタクチックポリプロピレンのバーは、3分22秒以内に完全に燃焼した(図4のサンプル13を参照)。
【0105】
実施例38
ポリプロピレン−クレーマスターバッチ(76.9重量%のクレー)を、[0008]に記載する方法で、TMSでキャップされたLiMMTを用い60分の重合時間で調製した。マスターバッチ(0.26g)とアイソタクチックポリプロピレン(3.74g)の物理的混合物をマイクロツインスクリュー押出機で170℃にて8分間ブレンドし、その後に押し出すことでポリプロピレン中に5重量%のLiMMTを含む素材を作製した。
【0106】
実施例13に記載する垂直燃焼テストでは、先の段落の記載で調製したマスターバッチブレンドは、自己消火することはなかったが、その完全燃焼には、クレーを含有しないアイソタクチックポリプロピレンの場合(3分22秒)と比べてずっと長い時間を要した(11分56秒)。(図4のサンプル15を参照)。
【0107】
実施例39
(CYHM)ポリプロピレン−クレーマスターバッチ(42.3重量%のクレー)を、[0008]に記載する方法で、TIBA修飾LiMMTを用い60分の重合時間で調製した。マスターバッチ(0.47g)とアイソタクチックポリプロピレン(3.53g)の物理的混合物をマイクロツインスクリュー押出機で170℃にて8分間ブレンドし、その後に押し出すことでポリプロピレン中に5重量%のLiMMTを含む素材を作製した。
【0108】
実施例13に記載する垂直燃焼テストでは、先の段落の記載で調整したマスターバッチブレンドは、自己消火することはなかったが、その完全燃焼には、クレーを含有しないアイソタクチックポリプロピレンの場合(3分22秒)と比べてずっと長い時間を要した(13分36秒)。マスターバッチブレンドの発熱容量は、[0003]に記載するように測定したところ575J/g℃であり、一方クレーを含有しないアイソタクチックポリプロピレンの場合は959J/g℃であった。発熱特性を図13に示す(図4のサンプル14を参照)。
【0109】
実施例40
(CYHM)ポリプロピレン−クレーマスターバッチ(35.1重量%のクレー)を、[0008]に記載する方法で、TIBA修飾TMS修飾LiMMTを用い60分の重合時間で調製した。マスターバッチ(0.57g)とアイソタクチックPP(3.43g)の物理的混合物をマイクロツインスクリュー押出機で170℃にて8分間ブレンドし、その後に押し出すことでポリプロピレン中に5重量%のLiMMTを含む素材を作製した。
【0110】
実施例13に記載する垂直燃焼テストでは、先の段落の記載で調整したマスターバッチブレンドは、3分22秒後に自己消火した(図4のサンプル16を参照)。
【0111】
[参考文献]
以下の文献は、参照により本明細書に組み込まれる:
1. T.G. Gopakumar, J.A. Lee, M. Kontopoulou and J. S. Parent. Polymer 43 (2002) 5483-5491.

2. S.S. Ray and M. Okamoto. Prog. Polym. Sci 28 (2003) 1539-1641.

3. K. Weiss, C. Wirth-Pfeifer, M. Hofmann, S. Botzenhardt, H. Lang, K. Bruning and E. Meichel. J. MoI. Catal. A: Chem. 182/183 (2002) 143-149.

4. E.G. Howard, R.D. Lipscomb, R.N. MacDonald, B.L. Glazar, C.W. Tullock and J.W. Collette. Ind. Eng. Chem. Prod. Res. Dev. 20 (1981) 421-428.

5. G.G. Hlatky. Chem. Rev. 1000 (2000) 1347-1376.

6. J. Tudor, L. Willington, D. O'Hare and B. Royan. Chem. Commun. (1996) 2031-2032.

7. Y. Suga, Y. Maruyama, E. Isobe, T. Suzuki and F. Shimizu. 米国特許第5,308,811号 (1994年)。

8. Y. Ishihama, E. Isobe, Y. Maruyama, T. Sagae, Y. Suga and Y. Uehara. 欧州特許第0683180号 (1995年)。

9. T. Sun and J. M. Garces. Adv. Mater. 14 (2002) 128-130.

10. J. S. Bergman, H. Chen, E. P. Giannelis, M. G. Thomas and G.W. Coates. Chem. Commun. (1999) 2179-2180.

11. Y.-H. Jin, H. -J. Park, S.-S. Im, S. -Y. Kwak and S. Kwak. Macromol. Rapid Commun. 23 (2002) 135-140.

12. T. Tang, L Wei and B. Huang. 米国特許第6,649,713号 (2003年)。

13. J. Heinemann, P. Reichart, R. Thomann and R. Mulhaupt. Macromol. Rapid Commun. 20 (1999) 423-430.

14. P. Dubois, M. Alexandre and R. Jerome. Macromol. Symp. 194 (2003) 13-26.

15. M. Alexandre, P. Dubois, R. Jerome, M. Gareia-Marti, T. Sun, J. M. Garces, D. M. Millar and A. Kuperman. 国際公開公報WO 99/47598 (1999年).

16. H. G. Jeon, H.-T. Jung, S.W. Lee and S. D. Hudson. Polymer Bull. 41 (1998) 107-113.

17. A. Usuki, M. Kato, A. Okada and T. Kurauchi. J. Appl. Polym. Sci. 63 (1997) 137-139.

18. M. Kawasumi, N. Hasegawa, M. Kato, A. Usuki and A. Okada. Macromolecules 30 (1997) 6333-6338.

19. N. Hasegawa, M. Kawasumi, M. Kato, A. Usuki and A. Okada. J. Appl. Polym. Sci. 67 (1998) 87-92.

20. D. Kaempfer, R. Thomann and R. Mulhaupt. Polymer 43 (2002) 2909-2916.

21. P.H. Nam, P. Maiti, M. Okamoto, T. Kotaka, N. Hasegawa and A. Usuki. Polymer 42 (2001) 9633-9640.

22. K.H. Wang, M.H. Choi, CM. Koo, Y.S. Choi and I.J. Chung. Polymer 42 (2001) 9819-9826.

23. N. Hasegawa, M. Okamoto, M. Kawasumi, M. Kato, A. Tsukigase and A. Usuki. Macromol. Mater. Eng. 280/281 (2000) 76-79.

24. E. Manias, A. Touny, L. Wu, K. Strawhecker, B. Lu and T.C. Chung. Chem. Mater. 13 (2001) 3516-3523.

25. M.-S. Hsiao, G.-Y. Chang, S.-Y. Lee and S.-J. Jong. 米国特許第6,838,508号 (2005年)。

26. Z.M. Wang, H. Nakajima, E. Manias and T.C. Chung. Macromolecules 36 (2003) 8919-8922.

27. S.-S. Hou and K. Schmidt-Rohr. Chem. Mater. 15 (2003) 1938-1940.

28. T. Sun, J. M. Garces and Z.R. Jovanovic. 国際公開公報WO 01/30864 (2001年)。

29. B. Y. Lee, G. C. Bazan, J. Vela, Z.J.A. Komon and X. Bu. J. Am. Chem. Soc. 123 (2001) 5323-5353.

30. Bartholmai, M.; Schartel, B. Polym. Adv. Technol. 2004, 15, 355.

31. Beyer, G. Plastics Additives & compounding, 2002, 22.

32. Ray, S.S.; Okamoto, M. Prog. Polym. Sci. 2003, 28, 1539.

33. Blumstein, A. J. Polym. Sci. 1965, A 3, 2665.

34. Burnside, S.D.; Giannelis, E.P. Chem. Mater., 1995, 7, 1597.

35. Giannelis, E. Adv. Mater. 1996, 8, 29.

36. Lee, J.; Takekoshi, T.; Giannelis, E. Mater. Res. Soc. Symp. Proc. 1997, 457, 513.

37. Zanetti, M.; Camino, G.; Reichart, P.; Mulhaupt, R. Macromol. Rapid Commun. 2001, 22, 176.

38. Qin, H.; Zhang, S.; Zhao, C; Feng, M.; Yang, M.; Shu, Z.;Yang, S. Polym. Degrad. Stab. 2004, 85, 807.

39. Morgan, A. B.; Harris, R. H., Jr.; Kashiwagi, T.; Chyall, L.J.;Gilman, J. W. Fire Mater. 2002, 26, 247.

40. Zhu, J.; UhI, F.M.; Morgan, A.B.; Wilkie, C.A. Chem. Mater.2002, 14, 881.

41. Zhao, C.; Qin, H.; Gong, F.; Feng, M.; Zhang S.; Yang, M. Polym. Degrad. Stab. 2005, 87, 183.

42. Gilman, J.W. Appl. Clay Sci. 1999, 15, 31.

43. Babrauskas, V.; Peacock, R.D. Fire Safety Journal 1992, 18, 255-261.

44. Gilman, J.; Kashiwagi, T.; Lomakin, S.; Giannelis, E.; Manias, E.; Lichtenhan J.; Jones, P. Fire Retardancy of Polymers: the Use of Intumescence. The Royal Society of Chemistry, Cambridge, 1998.

45. Gilman, J.W.; Jackson, C.L.; Morgan, A.B.; Harris, R., Jr.; Manias, E.; Giannelis, E. P.; Wuthenow, M.; Hilton, D.; Phillips, S. H. Chem. Mater. 2000, 12, 1866.

46. Yang, F.; Yngard, R.; Nelson, G. L. J. Fire Sci. 2005, 23, 209.
【0112】
本発明は好ましい態様との関連で記載したが、当業者に直ちに理解されるように、本発明の原理と範囲から逸脱することなく改変と変更を用いることが可能なことが理解されるべきである。従って、このような改変も、以下の請求項の範囲内で行われてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象を提供すること;および
前記対象に化合物を添加すること
を含む、対象に難燃特性を付与する方法であって、ここで前記化合物は、
層状のケイ酸塩および非ケイ酸化合物から成る群から選択される少なくとも1種類の充填剤を処理すること;
前記充填剤を、該充填剤と接触した際にオレフィン重合のための活性を示す前周期または後周期遷移金属である第1の触媒成分と混合すること;および
(a)アルキルアルミニウムである第2の触媒成分の非存在下または(b)前記第1の触媒成分が前周期遷移金属触媒である場合にはアルキルアルミニウムもしくはアルキルアルミノキサンである第2の触媒成分の存在下で、オレフィンを前記活性化された触媒−充填剤混合物と接触させ、それにより前記充填物の小板を取り込んだ難燃特性を有する充填剤−ポリオレフィンコンポジットを形成すること
を含むプロセスにより形成される、対象に難燃特性を付与する方法。
【請求項2】
前記充填剤が層状の充填剤である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記充填剤がクレーである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記クレーがクロライトまたはモンモリロナイトである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記モンモリロナイトを、その層状構造を部分的に破壊するように酸で処理する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記充填剤をブロンステッド塩基またはシリル化剤で処理する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記オレフィンが、a)エチレン、b)プロピレン、またはc)エチレンおよびα−オレフィンの混合物である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記コンポジットの0.5重量%を超える量を構成するよう十分量の充填剤を用いる、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記コンポジットの少なくとも30重量%を構成するよう十分量の充填剤を用いることで、前記層状充填剤の小板を取り込んだ高クレー充填コンポジットのマスターバッチを調製する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
所定の量の1種類または2種類以上のオレフィンポリマーを前記マスターバッチとブレンドして所望の充填量を有するコンポジットを得る工程を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記前周期または後周期遷移金属触媒が、非メタロセン触媒である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記触媒が、α−イミノカルボキサミダト配位子を含むニッケル錯体である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記錯体が、下記の一般式I、II、III、IVまたはVを有する、請求項12記載の方法:
【化1】

式中、
Mは、Ni、Pt、Pdであり;
Aは、π−アリル、置換π−アリル、π−ベンジル、置換π−ベンジル、ベンゾイルまたはピコリノ配位子であり;
Xは、N、PまたはCHであり;
Yは、O、CH2またはSであり;
Lは、NもしくはP、または中性の2電子供与配位子になり得る構造体であり;
1は中性単座配位子でありかつL2はモノアニオン性単座配位子であるか、またはL1およびL2は一緒になってモノアニオン性二座配位子であり、但し前記モノアニオン性単座配位子もしくは前記モノアニオン性二座配位子は、前記オレフィンに付加可能であり;
Bは、不飽和炭素とLを共有結合的に連結させる橋であり;
1、R2、R3AおよびR3Bは、同じであるか異なっており、それぞれ独立して、水素、ヒドロカルビル基または官能基を含む置換ヒドロカルビル基であり;
【化2】

の表示は、単結合または2重結合であり;そして
Bが2重結合でLに結合している場合には、R3Bは存在しない。
【請求項14】
前記α−イミノカルボキサミダト触媒が、(N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-(2,6-ジイソプロピルフェニルイミノ)プロパンアミダト)Ni(η3-CH2Ph)である、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記α−イミノカルボキサミダト配位子が、N-フェニル-2- (2,6-ジメチルフェニルイミノ)プロパンアミデート(N-phenyl-2-(2,6-dimethylphenylimino)propanamidate)である、請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記触媒が式MRxを有しており、式中、Mは前周期遷移金属であり、Rはアルキル配位子または置換アルキル配位子であり、xは3〜6である、請求項11記載の方法。
【請求項17】
前記金属成分が、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデンおよびタングステンから選択され、前記アルキル配位子または置換アルキル配位子がα−水素を欠いており、xが4である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記アルキル配位子または置換アルキル配位子が、ネオペンチル基、ネオシリル基、ベンジル基およびアダマンチル基から選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記触媒が、テトラベンジルジルコニウムである、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記充填剤がプロピレンであり、該充填材の使用量が前記コンポジットの少なくとも30重量%を構成することにより、前記クレーの小板を取り込んだ高クレー充填コンポジットのマスターバッチを調製する、請求項1記載の方法。
【請求項21】
請求項1記載の方法により調製される難燃性ポリマーコンポジット。
【請求項22】
少なくともポリオレフィン、ケイ酸塩および非ケイ酸化合物から成る群から選択される層状充填剤、および金属イオンとヘテロ原子含有配位子とを含む錯体から誘導される成分を含む、難燃性コンポジット。
【請求項23】
少なくともポリオレフィン、ケイ酸塩以外の層状化合物およびケイ酸塩から成る群から選択される層状充填剤、ならびに熱分解または別の分解プロセスによりラジカルを形成可能な有機化合物を含む、難燃性コンポジット。
【請求項24】
前記対象が、表面に前記化合物を付与した基材である、請求項1記載の方法。
【請求項25】
前記対象が、前記化合物を含む成形品である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記基材が成形品である、請求項1記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公表番号】特表2010−501645(P2010−501645A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515452(P2009−515452)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/013774
【国際公開番号】WO2008/108790
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】