説明

難燃性樹脂組成物およびそれを用いた成形物品

【課題】 高度の難燃性と優れた機械特性を有する難燃樹脂組成物とそれを用いた成形物品を提供する。
【解決手段】 (a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)、(c)非芳香族系ゴム用軟化剤からなる熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対して、架橋剤0.01〜0.6質量部、架橋助剤0〜1.8質量部、並びに、所定量がシランカップリング剤で前処理された金属水和物(B)50〜300質量部の割合で含有し、前記熱可塑性樹脂成分(A)の溶融温度以上で加熱・混練してなる難燃性樹脂組成物。及び、その難燃性樹脂組成物を架橋処理し、被覆又は成形する成形物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた機械特性、さらに耐熱性に優れた難燃性樹脂組成物と該組成物を被覆材とする配線材、光ファイバコードその他の成形物品に関するものである。
より詳しくは、本発明は、電気・電子機器の内部ないしは外部配線に使用される絶縁電線、圧接性に優れた絶縁電線、電気ケーブル、電気コードや光ファイバ心線、光ファイバコードなどの被覆材として好適な難燃性樹脂組成物およびそれを用いた配線材その他の成形物品に関し、特に燃焼時に腐食性ガスの発生がなく、耐油性、耐摩耗性、使用後のリサイクル処理に適し、環境問題対応の難燃性樹脂組成物とそれを用いた配線材その他の成形物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気・電子機器の内部および外部配線に使用される絶縁電線・ケーブル・コードや光ファイバ心線、光ファイバコードには、難燃性、耐熱性、機械特性(例えば、引張特性、耐摩耗性)など種々の特性が要求されている。
このため、これらの配線材に使用される被覆材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC)コンパウンドや、分子中に臭素原子や塩素原子を含有するハロゲン系難燃剤を配合したポリオレフィンコンパウンドが主として使用されていた。
しかし、これらを燃焼した場合には、被覆材料に含まれるハロゲン化合物から腐食性ガスが発生することがあり、近年、この問題が議論されており、ハロゲン系ガスなどの発生の恐れがないノンハロゲン難燃材料で被覆した配線材の検討がおこなわれている。
ノンハロゲン難燃材料は、ハロゲンを含有しない難燃剤を樹脂に配合することで難燃性を発現させており、例えばエチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体などのエチレン系共重合体に、難燃剤として水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水和物を多量に配合した材料が配線材に使用されている。
【0003】
電気・電子機器の配線材に求められる難燃性、耐熱性、機械特性(例えば引張特性、耐摩耗性)などの規格は、UL、JISなどで規定されている。特に、難燃性に関しては、要求水準(その用途)などに応じてその試験方法が変わってくる。したがって実際は、少なくとも要求水準に応じた難燃性を有すればよい。例えば、UL1581(電線、ケーブルおよびフレキシブルコードのための関連規格(Reference Standard for Electrical Wires,Cables and Flexible Cords))に規定される垂直燃焼試験(Vertical Flame Test)(VW−1)や、JIS C 3005(ゴム・プラスチック絶縁電線試験方法)に規定される水平試験や傾斜試験に合格する難燃性などがそれぞれ挙げられる。
この中で、これまで、ノンハロゲン難燃材料に、VW−1や傾斜試験に合格するような高度の難燃性を付与する場合、エチレン系共重合体などの樹脂成分100質量部に対して、難燃剤である金属水和物を120質量部以上配合する必要があり、この結果として、被覆材料の引張特性や耐摩耗性などの機械特性が著しく低下するという問題があった。この問題を解決するために、金属水和物の配合量を減少させ(例えば、樹脂100質量部に対して、難燃剤である金属水和物を120質量部程度)、赤リンを配合する方法がとられている。
【0004】
ところで、現在、電気・電子機器に使用されているポリ塩化ビニルコンパウンドやハロゲン系難燃剤を配合したポリオレフィンコンパウンドを被覆材料とする配線材は、配線材の種類や接続部を区別することを目的として、電線・電気ケーブル・電気コードの表面に印刷をおこなったり、数種類の色に着色して使用されている。
ところが、高度の難燃性と機械特性を両立させるために金属水和物と赤リンを配合したノンハロゲン被覆材料は、赤リンの発色のため、その上に印刷することやまたは任意の色に着色することができず、容易に種類や接続部を区別することができる配線材が得られないという問題がある。さらに、リンを含む難燃材料から廃棄後に放出されるリンについても、環境への影響、例えば富栄養化による水資源の汚染などが問題となっている。
【0005】
また、電気・電子機器に使用される配線材については、連続使用の状態で80℃〜105℃の耐熱性が要求される場合がある。
このような場合、配線材に高耐熱性を付与することを目的として、被覆材料を電子線架橋法や化学架橋法などによって架橋する方法がとられている。
【0006】
しかしながら、架橋処理された配線材は、被覆材料の耐熱性が向上している反面、その再溶融が不可能であるため、再利用が難しく、リサイクル性が悪いことが指摘されている。例えば、導体に使用されている金属を回収する場合にも、被覆材を燃焼するなどしなければならない場合が多く、従来のハロゲン又はリンを含有する被覆材に伴う前記環境への問題を避けることができない。
また一般に難燃性の高いノンハロゲン電線の場合耐油性に乏しく、耐油性が求められる部分への使用が困難であった。
さらに自動車用途などに使用される電線においては、非常に高い摩耗特性が求められており、従来のノンハロゲン電線は耐摩耗性に乏しく、自動車等の摩耗が求められる分野への使用は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−114878号公報
【特許文献2】特開2002−302573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高度の難燃性と優れた機械特性を有し、任意の色に着色でき、かつ、廃棄時の埋立による重金属化合物やリン化合物の溶出や、焼却による多量の煙、腐食性ガスの発生などの問題がなく、マテリアルリサイクル可能であり、量産性に優れ、耐熱性に優れ、耐摩耗性、耐油性、圧接加工性に優れた難燃樹脂組成物及び絶縁電線、光ファイバケーブル、成形部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記の課題は以下の発明によって達成された。
(1)(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂10〜75質量%、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂25〜90質量%(ただし、(b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含み、(f)は(A)において5〜50質量%を占める)及び(c)非芳香族系ゴム用軟化剤0〜40質量%からなる熱可塑性樹脂成分(A)に、(d)架橋剤、及び、熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対し金属水和物(B)50〜300質量部の割合で含有し、並びに、前記金属水和物(B)は、
(i)前記金属水和物(B)が50質量部以上100質量部未満の場合は、前記熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対してシランカップリング剤で前処理された金属水和物が50質量部以上;
(ii)前記金属水和物(B)が100質量部以上300質量部以下の場合は、金属水和物(B)の少なくとも半量が、シランカップリング剤で前処理された金属水和物である
組成の混合物であって、前記熱可塑性樹脂成分(A)の溶融温度以上で加熱・混練してなることを特徴とする難燃性樹脂組成物、
(2)(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂10〜75質量%、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂25〜90質量%(ただし、(b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含み、(f)は(A)において5〜50質量%を占める)、及び(c)非芳香族系ゴム用軟化剤0〜40質量%からなる熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対して、(d−1)有機パーオキサイド0.01〜0.6質量部、(e)架橋助剤0.03〜1.8質量部、及び、金属水和物(B)50〜300質量部の割合で含有し、並びに、前記金属水和物(B)は、
(i)前記金属水和物(B)が50質量部以上100質量部未満の場合は、前記熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対してシランカップリング剤で前処理された金属水和物が50質量部以上;
(ii)前記金属水和物(B)が100質量部以上300質量部以下の場合は、金属水和物(B)の少なくとも半量が、シランカップリング剤で前処理された金属水和物である
組成の混合物であって、前記熱可塑性樹脂成分(A)の溶融温度以上で加熱・混練してなることを特徴とする難燃性樹脂組成物、
【0010】
(3)(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂10〜75質量%、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂25〜90質量%(ただし、(b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む、(f)は(A)において5〜50質量%を占める)、及び(c)非芳香族系ゴム用軟化剤0〜40質量%からなる熱可塑性樹脂成分(A)に、成分(f)100質量部に対して、(d−2)フェノール系架橋剤1〜20質量部、及び、熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対して、金属水和物(B)を50〜300質量部の割合で含有し、並びに、前記金属水和物(B)は、
(i)前記金属水和物(B)が50質量部以上100質量部未満の場合は、前記熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対してシランカップリング剤で前処理された金属水和物が50質量部以上;
(ii)前記金属水和物(B)が100質量部以上300質量部以下の場合は、金属水和物(B)の少なくとも半量が、シランカップリング剤で前処理された金属水和物である
組成の混合物であって、前記熱可塑性樹脂成分(A)の溶融温度以上で加熱・混練してなることを特徴とする難燃性樹脂組成物、
【0011】
(4)(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂10〜75質量%、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂25〜90質量%(ただし、(b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含み、(f)は(A)において5〜50質量%を占める)、及び(c)非芳香族系ゴム用軟化剤0〜40質量%からなる熱可塑性樹脂成分(A)に、成分(f)100質量部に対して、(d−2)フェノール系架橋剤1〜20質量部、及び熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対して、(d−1)有機パーオキサイド0.01〜0.6質量部、(e)架橋助剤0.03〜1.8質量部、及び、金属水和物(B)50〜300質量部の割合で含有し、並びに、前記金属水和物(B)は、
(i)前記金属水和物(B)が50質量部以上100質量部未満の場合は、前記熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対してシランカップリング剤で前処理された金属水和物が50質量部以上;
(ii)前記金属水和物(B)が100質量部以上300質量部以下の場合は、金属水和物(B)の少なくとも半量が、シランカップリング剤で前処理された金属水和物である
組成の混合物であって、前記熱可塑性樹脂成分(A)の溶融温度以上で加熱・混練してなることを特徴とする難燃性樹脂組成物、
【0012】
(5)(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)の一部を、(g)芳香族ビニル化合物をその構成成分の主体とした少なくとも2個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物をその構成成分の主体とした少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体、および/またはこれを水素添加して得られる水添ブロック共重合体とし、前記ブロック共重合体、および/またはこれを水素添加して得られる水添ブロック共重合体の量が熱可塑性樹脂成分(A)中40質量%以下であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物、
(6)(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)がメタロセン触媒を用いて合成されたポリエチレン樹脂を必須成分とすることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物、
(7)(e)架橋助剤が多官能性(メタ)アクリレート系および/または多官能性ビニルアリル系であることを特徴とする(1)〜(6)いずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物、
(8)成分(f)がオレフィンとポリエン化合物との共重合体であることを特徴とする(1)〜(7)項いずれか1項に記載の難燃樹脂組成物、
(9)成分(f)がエチレン、炭素原子数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムであることを特徴とする(1)〜(7)項いずれか1項に記載の難燃樹脂組成物、
【0013】
(10)(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)及び、(c)非芳香族系ゴム用軟化剤、(d−1)有機パーオキサイド、(e)架橋助剤、並びに、金属水和物(B)の全部を(a)及び(b)の溶融温度以上で加熱・混練し、架橋処理することを特徴とする(2)項記載の難燃性樹脂組成物の製造方法、
(11)第一工程で(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)、並びに、(c)非芳香族系ゴム用軟化剤を加熱・混練して熱可塑性樹脂成分(A)を得た後に、第二工程でこの樹脂成分(A)と(d−1)有機パーオキサイド、(e)架橋助剤、並びに、金属水和物(B)の全部を(a)及び(b)の溶融温度以上で加熱・混練し、架橋処理することを特徴とする(2)項記載の難燃性樹脂組成物の製造方法、
(12)(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)、及び(c)非芳香族系ゴム用軟化剤、(d−1)有機パーオキサイドの一部、並びに、(e)架橋助剤の一部を(a)及び(b)の溶融温度以上で加熱・混練し、架橋処理行った後に、(d−1)有機パーオキサイドの残分、(e)架橋助剤の残分、並びに、金属水和物(B)の全部を(a)及び(b)の溶融温度以上で再度加熱・混練し、架橋処理することを特徴とする(2)項記載の難燃性樹脂組成物の製造方法、
(13)(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)、及び(c)非芳香族系ゴム用軟化剤、(d−2)フェノール系架橋剤、並びに、金属水和物(B)の全部を(a)及び(b)の溶融温度以上で加熱・混練し、架橋処理することを特徴とする(3)項記載の難燃性樹脂組成物の製造方法、
【0014】
(14)第一工程で(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)、並びに、(c)非芳香族系ゴム用軟化剤を加熱・混練して熱可塑性樹脂成分(A)を得た後に、第二工程でこの樹脂成分(A)と(d−2)フェノール系架橋剤、並びに、金属水和物(B)の全部を(a)及び(b)の溶融温度以上で加熱・混練し、架橋処理することを特徴とする(3)項記載の難燃性樹脂組成物の製造方法、
(15)(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)、及び(c)非芳香族系ゴム用軟化剤、並びに、(d−2)フェノール系架橋剤の一部を(a)及び(b)の溶融温度以上で加熱・混練し、架橋処理行った後に、(d−2)フェノール系架橋剤の残分、並びに、金属水和物(B)の全部を(a)及び(b)の溶融温度以上で再度加熱・混練し、架橋処理することを特徴とする(3)項記載の難燃性樹脂組成物の製造方法、
【0015】
(16)(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)、及び(c)非芳香族系ゴム用軟化剤、(d−1)有機パーオキサイド、(d−2)フェノール系架橋剤、(e)架橋助剤、並びに、金属水和物(B)の全部を(a)及び(b)の溶融温度以上で加熱・混練し、架橋処理することを特徴とする(4)項記載の難燃性樹脂組成物の製造方法、
(17)第一工程で(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)、及び(c)非芳香族系ゴム用軟化剤を加熱・混練して熱可塑性樹脂成分(A)を得た後に、第二工程でこの樹脂成分(A)と(d−1)有機パーオキサイド、(d−2)フェノール系架橋剤、(e)架橋助剤、並びに、金属水和物(B)の全部を(a)及び(b)の溶融温度以上で加熱・混練し、架橋処理することを特徴とする(4)項記載の難燃性樹脂組成物の製造方法、
【0016】
(18)(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)、及び(c)非芳香族系ゴム用軟化剤、(d−1)有機パーオキサイドの一部、(d−2)フェノール系架橋剤の一部及び(e)架橋助剤の一部を(a)及び(b)の溶融温度以上で加熱・混練し、架橋処理行った後に、(d−1)有機パーオキサイドの残分、(d−2)フェノール系架橋剤の残分、(e)架橋助剤の残分、並びに、金属水和物(B)の全部を(a)及び(b)の溶融温度以上で再度加熱・混練し、架橋処理することを特徴とする(4)項記載の難燃性樹脂組成物の製造方法、
(19)(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)、(c)非芳香族系ゴム用軟化剤、及び(d−2)フェノール系架橋剤を(a)及び(b)の溶融温度以上で加熱・混練し、架橋処理行った後に、(d−1)有機パーオキサイド、(e)架橋助剤、並びに、金属水和物(B)を(a)及び(b)の溶融温度以上で再度加熱・混練し、架橋処理することを特徴とする(4)項記載の難燃性樹脂組成物の製造方法、
【0017】
(20)(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)、及び(c)非芳香族系ゴム用軟化剤、(d−1)有機パーオキサイド、並びに、(e)架橋助剤を(a)及び(b)の溶融温度以上で加熱・混練し、架橋処理行った後に、(d−2)フェノール系架橋剤、並びに、金属水和物(B)の全部を(a)及び(b)の溶融温度以上で再度加熱・混練し、架橋処理することを特徴とする(4)項記載の難燃性樹脂組成物の製造方法、
(21)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の難燃性熱可塑性組成物を導体、光ファイバ素線又は光ファイバ心線の外側に被覆層として有することを特徴とする成形物品、及び、
(22)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形物品。
【0018】
本発明においては、樹脂成分と同時に含有される架橋剤の量、架橋助剤の量および種類を上記の範囲に適切に設定して、架橋密度の低いルーズな架橋構造としうるとともに、特定の金属水和物を選択することにより多量の金属水和物を配合することが可能になる。さらにルーズな架橋構造と特定の金属水和物の選定によって、架橋後においても再押し出し可能であり、マテリアルリサイクル可能な難燃樹脂組成物及び成形体が得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の難燃樹脂組成物は、高度の難燃性と優れた機械特性を有している。また、赤リンを含まないので、任意の色に着色することができる。
さらに本発明の難燃樹脂組成物を被覆又は成形することにより得られた絶縁電線、光ファイバケーブル、成型部品等の成形物品は、任意の色に着色でき、廃棄時の埋立による重金属化合物やリン化合物の溶出や、焼却による多量の煙、腐食性ガスの発生などの問題がなく、マテリアルリサイクル可能であり、量産性に優れ、耐熱性に優れ、耐摩耗性、耐油性、圧接加工性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の難燃性樹脂組成物からなる被覆層を設けた光ファイバ心線の一例の断面図である。
【図2】本発明の難燃性樹脂組成物の被覆層を形成した光ファイバコードの一例の断面図である。
【図3】本発明の難燃性樹脂組成物を被覆した光ファイバコードの一例の断面図である。
【図4】アタクチックポリプロピレン重合体の示差走査熱量計チャートを示す図である。
【図5】耐摩耗性の試験装置の正面図である。
【図6】図5に示した耐摩耗性の試験装置中のブレードの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の難燃性樹脂組成物の各成分について説明する。
(A)熱可塑性樹脂成分
熱可塑性樹脂成分は(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)、及び(c)非芳香族系ゴム用軟化剤からなるものである。ただし、(c)非芳香族系ゴム用軟化剤は含有しなくとも良い場合がある。
【0022】
(a)成分 パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂及び/又はそれを含む共重合体
本発明の成分(a)は、得られる組成物中のゴム分散を良好にし、成形品の外観を良好にする効果を有する。
本発明の成分(a)として好ましいパーオキサイド分解型オレフィン系樹脂は、13C−核磁気共鳴吸収法によるペンタッド分率においてrrrr/l−mmmmが20%以上であり、かつ示差走査熱量測定法により求められる融解ピーク温度(Tm)が140℃以上及び融解エンタルピー(△Hm)100J/g以下のものである。
【0023】
パーオキサイド分解型のポリオレフィン樹脂としては、ホモポリプロピレン、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体や、プロピレンと他の少量のα−オレフィン(例えば1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等)との共重合体、アタクチックポリプロピレン等、またこれらの樹脂を不飽和カルボン酸で変性した樹脂等が挙げられる。ここでプロピレン・エチレンランダム共重合体はエチレン成分含量が1〜4質量%程度のものをいい、プロピレン・エチレンブロック共重合体はエチレン成分含量が5〜20質量%程度のものをいう。
【0024】
また、アタクチックポリプロピレン樹脂とは、示差走査熱量計により測定された融点(Tm)が163℃以下であり、かつ結晶融解熱量(△Hm)が55J/g以下であるアタクチックポリプロピレン重合体を主成分とする。ここで「主成分とする」とは好ましくは50質量%以上含有することをいう。
【0025】
ここで、図4を参照して、融点(Tm)および結晶融解熱量(△Hm)の測定方法について説明する。アタクチックポリプロピレン重合体の示差走査熱量計(以下、DSCと略す)測定は、通常の条件に従い、昇温速度10℃/分、窒素雰囲気下で行う。アタクチックポリプロピレン重合体が単独重合体の場合には、温度の上昇とともに、大きな吸熱ピークが1つ観測される。アタクチックポリプロピレン重合体がプロピレン成分とその他のオレフィン成分との共重合体である場合には、吸熱ピークは2つ以上観測される。図4に示すDSCチャートは、ブテン−1成分とプロピレン成分からなるアタクチックポリプロピレン重合体のものであるが、2つの大きな吸熱ピークがみられる。図4において温度の低いほうのピークがブテン−1成分に起因する吸熱ピーク、温度の高いほうのピークがプロピレン成分に起因する吸熱ピークであり、T1、T2はそれぞれの吸熱のピークトップ温度を示す。T2は一般に138〜160℃に現れる。吸熱ピークが観察される前後はほとんど熱量−温度曲線は平準であり、吸熱後の熱量−温度曲線が平準な部分Dから温度が低いほうへ向かって、熱量が一定となるような直線、すなわちベースラインを引く。そのベースラインと温度T2にピークを有する吸熱曲線から延長した曲線が交わる点をBとする。このベースラインと温度T2にピークを有する吸熱曲線(及びその延長線)とで囲まれる面積から、プロピレン成分の結晶融解熱量(ΔHm)を求めることができる。(なお、Aはブテン−1成分に起因する吸熱ピークについての熱量−温度曲線の平準部であり、これを基準として引いたブテン−1成分についてのベースラインと温度T1にピークを有する吸熱曲線から延長した曲線が交わる点をCとして示した。)単独重合体の場合は、ピークが1つであるので、吸熱曲線とベースラインとで囲まれる面積が結晶融解熱量(ΔHm)となる。
【0026】
本発明で用いることのできるアタクチックポリプロピレン重合体としては、非晶性のポリプロピレンやプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体を挙げることができる。非晶性ポリプロピレンの場合は、結晶性ポリプロピレン樹脂製造時に副生する樹脂を用いてもよいし、原料から生産してもよい。また、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体は、所定のプロピレン成分を含有するように原料から製造することができる。この場合、例えば、塩化マグネシウムに担持したチタン担持型触媒とトリエチルアルミニウムを用いて水素の存在下/または水素の不存在下で原料モノマーを重合して得ることができる。
このアタクチックポリプロピレン重合体の市販品としては、CAP2880、ATF−207(いずれも商品名、宇部興産社製)などを用いることもできる。
【0027】
加熱混練前に(A)に配合した(a)成分のパーオキサイド分解型のポリオレフィン樹脂は、その後の加熱混練で、(d−1)有機パーオキサイドを用いる場合には、その存在により熱分解して適度に低分子量化する。
【0028】
例えばポリプロピレン樹脂としては、MFR(ASTM‐D‐1238、L条件、230℃)が好ましくは0.1〜15g/10分、より好ましくは0.1〜10g/10分のものを用いる。
ポリプロピレン樹脂の場合、MFRが0.1g/10分未満では、熱処理後でもポリプロピレン樹脂の分子量が低下せず、得られる樹脂組成物(エラストマー)の成形性が悪くなることがあり、一方、MFRが25g/10分を越えると、低分子量となりすぎて、得られる樹脂組成物の熱衝撃性が著しく低下することがある。
【0029】
このパーオキサイド分解型のポリオレフィン樹脂は加熱混練によりパーオキサイド存在下で低分子量化することにより、難燃性樹脂組成物に対して流動性を付与し、パーオキサイドと架橋助剤の制御により(b)成分が架橋により高分子量化しても、架橋後においても難燃樹脂組成物を押し出し等の成形加工が問題なく可能となる。
【0030】
パーオキサイド分解型のポリオレフィン樹脂は熱可塑性樹脂成分100質量%中、10〜75質量%、好ましくは12〜70質量%、さらに好ましくは15〜60質量%含まれる。
この(a)成分が下限未満では押し出し等の成形加工がいちじるしく困難になり、またこの成分が上限を超えると、フィラーのローディング性が著しく低下し、伸びが著しく低下したり、低温性が低下したり、折り曲げ白化が著しく低下し、得られた成形品も非常に硬いものとなる。
【0031】
(b)成分 パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)
本発明のパーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)とは、パーオキサイドの存在下で加熱処理することによって架橋反応を起こし、その流動性が低下する樹脂をいう。
パーオキサイド架橋型のポリオレフィン樹脂及び/又はそれを含む共重合ゴム成分としては、エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂やエチレン・α−オレフィン共重合体ゴム、エチレン系共重合体やエチレン−αオレフィン共重合体、エチレン系共重合体等が挙げられる。
また、(b)成分は後述の(f)成分を必須とし、また、後述の(g)成分を含む場合には、これを含むものである。
【0032】
エチレン・α−オレフィン共重合体は、好ましくは、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体であり、α−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。エチレン・α−オレフィン共重合体成分において、α−オレフィンがプロピレンの場合、プロピレン成分の含有量は60%未満である。
エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂としては、例えばLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、VLDPE(超低密度ポリエチレン)、及びメタロセン触媒存在下に合成されたエチレン・α−オレフィン共重合体等がある。このなかでも、充填されるフィラー受容性および本発明の目的とする樹脂組成物の柔軟性を考慮すると、メタロセン触媒存在下に合成されたエチレン・α−オレフィン共重合体が好ましい。密度は耐油性、耐摩耗性を考慮すると、0.895g/cm3以上が好ましく、さらに好ましくは密度0.900g/cm3、さらに好ましくは0.905g/cm3以上である。また柔軟性を考慮すると0.93g/cm3以下が好ましく、さらに好ましくは0.925g/cm3以下、特に好ましくは0.92g/cm3以下である。この密度の下限には特に制限はないが、通常0.850g/cm3を下限とする。
また、エチレン・α−オレフィン共重合体としては、メルトフローインデックス(ASTM D−1238)が0.5〜30g/10分のものが好ましい。
【0033】
本発明に好ましく用いられるメタロセン触媒の存在下に合成されたエチレン・α−オレフィン共重合体の製法としては、特開平6−306121号公報や特表平7−500622号公報などに記載されている方法を用いることができる。
メタロセン触媒は、重合活性点が単一であり、高い重合活性を有するものであり、カミンスキー触媒とも呼ばれており、この触媒を用いて合成したエチレン・α−オレフィン共重合体は、分子量分布と組成分布が狭いという特徴がある。
このようなメタロセン触媒存在下に合成されたエチレン・α−オレフィン共重合体が、高い引張強度、引裂強度、衝撃強度などを有することから、金属水和物を高充填する必要があるノンハロゲン難燃材料(配線材の被覆材料)に使用した場合、高充填された金属水和物による機械特性の低下を小さくすることができるという利点がある。
反面、メタロセン触媒を用いて合成したエチレン・α−オレフィン共重合体を用いる場合、通常のエチレン・α−オレフィン共重合体を用いる場合と比べて、溶融粘度の上昇や溶融張力の低下がおこり、成形加工性に問題が生ずる系もある。この点については、メタロセン触媒として非対称な触媒を用いて長鎖分岐を導入し(Constrained Geometory Catalystic Technology)、または合成の際に2つの重合槽を連結することで分子量分布に2つのピークをつくる(Adavnced Performance Terpolymer)ことで、その成形加工性を改良したものもある。
【0034】
本発明において用いられるメタロセン触媒の存在下に合成されたエチレン・α−オレフィン共重合体としては前記成形加工性を改良したものが好ましく、このようなものとしては、デュポン ダウ エラストマージャパン社から「アフィニティー(AFFINITY)」、「エンゲージ(ENGAGE)」、エクソンケミカル(Exxon Chemical)社から、「エグザクト(EXACT)」、宇部興産(株)からは「ユメリット」(いずれも商品名)、日本ポリケム社から「カーネル」、三井住友ポリオレフィン「エボリュー」が上市されている。
【0035】
エチレン系共重合体としてはエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体(例えばエチレン−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体など)等が挙げられる。
エチレン系共重合体を使用することにより、難燃性を向上させることができる。
エチレン−αオレフィンゴムとしてはエチレン−プロピレンゴム、エチレン−プテンゴム等が挙げられ、特にエチレン−プロピレンゴムが好ましい。エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPM)はエチレンとプロピレンのゴム状共重合体である。ここでエチレン・プロピレン共重合体ゴムとはエチレン成分含量が通常40〜75質量%程度のものをいう。
【0036】
また、(b)成分のパーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)は不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性したポリオレフィン樹脂であってもよい。不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されるポリオレフィン樹脂としては、直鎖状ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂が挙げられる。変性に用いられる不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられ、不飽和カルボン酸の誘導体としては、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、無水マレイン酸、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、無水イタコン酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル、無水フマル酸などを挙げることができる。
【0037】
上記の(b)成分パーオキサイド架橋型のポリオレフィン樹脂((f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)は、好ましくは構造中に反応性基を有することができる。導入される反応性基は、好ましくはニトリル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、グリシジル基及びオキサゾリル基より成る群から選ばれる。本発明において該反応性基を有するパーオキサイド架橋型のポリオレフィン樹脂は、樹脂の架橋反応と同時にシラン処理された金属水和物表面と化学結合を形成し、多量に金属水和物を加えても強度の低下が生じず、樹脂により大量にフィラーを配合することが可能となる。
パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂は、熱可塑性樹脂成分100質量%中25〜90質量%、好ましくは30〜88質量%、さらに好ましくは40〜85質量%に含まれる。これが下限未満では強度が低下するだけでなく耐外傷性が著しく低下し、多すぎると押し出し特性が著しく低下し、得られる成形品も非常に硬いものとなる。
【0038】
(f)成分 ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマー
(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーは、成分(b)の必須成分であり、ポリエン化合物含有オレフィンコポリマーともいわれ、オレフィンとポリエン化合物との共重合体が好ましく、より好ましくはエチレン、炭素原子数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムである。さらに具体的には、残基の不飽和度が低い、不飽和ゴムであることが好ましくさらに好ましくはエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)タイプのゴムのようなオレフィンゴムである。EPDMタイプのゴムは、一般に、2乃至10の炭素原子、好ましくは2乃至8の炭素原子を有する、二つ以上のモノオレフィンモノマー及び5乃至20の炭素原子を有する、一つ以上のポリエン化合物との重合に由来するターポリマーである。前記モノオレフィンは、好ましくは式CH2=CH−Rを有する(式中、RはH又は1乃至12の炭素原子のアルキル)ものであり、さらに好ましくはエチレン及びプロピレンである。好ましくは、エチレン及びプロピレンはポリマー中に5:95乃至95:5(エチレン/プロピレン)の質量比で存在し、ポリマーの約80乃至約99.9質量%を構成するものである。
【0039】
また、ポリエン化合物はジエン化合物、トリエン化合物、テトラエン化合物等が挙げられ、なかでもジエン化合物が好ましい。また、前記ポリエン化合物は、直鎖、分枝、環状、架橋環、二環式、縮合環二環式化合物などであり得る。前記ポリエン化合物の例は、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB);1,4−ヘキサジエン;5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB);5−ビニルノルボルネン(VNB);1,6−オクタジエン;5−メチル−1,4−ヘキサジエン;3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン;1,3−シクロペンタジエン;1,4-シクロヘキサジエン及びジシクロペンタジエン(DCPD)が含まれる。好ましくは非共役ジエン化合物である。好ましくは前記ポリエン化合物に由来する繰り返し単位は、ゴムの0.1〜15質量%である。好ましくは、0.1〜10質量%である。0.1質量%未満の場合、充分な耐外傷性や引張強さが得られず、15質量%以上の場合伸びが低下したり、押出し加工性、耐候性が著しく低下する。
【0040】
(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーは単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーの配合量は熱可塑性樹脂成分(A)中、5〜50質量%であり、好ましくは10〜40質量%である。
(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマー成分を加えることにより、柔軟性が著しく向上し、金属水和物を大量に加えることが可能となり、難燃性をより向上させることが可能となる。この(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを50質量部より多く加えると、押し出し加工性が著しく低下する。
またこの(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーが5質量%より少ないと柔軟性が低下したり、耐外傷性が著しく低下する。
【0041】
(c)成分 非芳香族系ゴム用軟化剤
本発明の成分(c)としては、非芳香族系の鉱物油または液状もしくは低分子量の合成軟化剤を用いることができる。
ゴム用として用いられる鉱物油軟化剤は、芳香族環、ナフテン環およびパラフィン鎖の三者の組み合わさった混合物であって、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものをパラフィン系とよび、ナフテン環炭素数が30〜40%のものはナフテン系、芳香族炭素数が30%以上のものは芳香族系と呼ばれて区別されている。
【0042】
本発明の成分(c)として用いられる鉱物油系ゴム用軟化剤は上記区分でパラフィン系およびナフテン系のものである。芳香族系の軟化剤は、その使用により成分(f)やブロック共重合体(g)が可溶となり、架橋反応を阻害し、得られる組成物の物性の向上が図れないので好ましくない。成分(c)としては、パラフィン系のものが好ましく、更にパラフィン系の中でも芳香族環成分の少ないものが特に好ましい。
【0043】
これらの非芳香族系ゴム用軟化剤の性状は、37.8℃における動的粘度が20〜500cSt、流動点が−10〜−15℃、引火点(COC)が170〜300℃を示すものが好ましい。
【0044】
成分(c)の配合量は、熱可塑性樹脂成分(A)中0〜40質量%、好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%である。これが40質量%より多いと、力学的強度が大きく低下するだけでなく、難燃性や加熱変形性も大きく低下する。成分(b)の一部を、有機パーオキサイド又はフェノール系架橋剤存在下での熱処理の後に配合することもできるが、ブリードアウトを生じる要因となることがある。
成分(c)は、質量平均分子量が100〜2,000のものが好ましい。
【0045】
(d)成分 架橋剤
本発明で用いられる架橋剤は、好ましくは、(d−1)有機パーオキサイド、又は、(d−2)フェノール系架橋剤である。
【0046】
(d−1)成分 有機パーオキサイド
本発明で用いられる有機パーオキサイドとしては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert‐ブチルクミルパーオキサイドなどを挙げることができる。
【0047】
これらのうち、臭気性、着色性、スコーチ安定性の点で、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3が最も好ましい。
【0048】
有機パーオキサイドの配合量は、熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対して、0.01〜0.6質量部の範囲であり、好ましくは0.05〜0.6質量部である。有機パーオキサイドをこの範囲内に選定することにより、前述のように熱可塑性樹脂成分(A)の溶融温度以上で加熱・混練することによっても、架橋が進みすぎることがないので、ブツも発生することなく押し出し性に優れた部分架橋組成物が得られる。少なすぎると充分な架橋が得られず、引張強さや耐外傷性が低下する。多すぎると架橋が進みすぎ熱可塑性を失ったり、ブツが発生する。
【0049】
(d−2)フェノール系架橋剤
本発明で使用されるフェノール系架橋剤の基本的成分は、アルカリ媒体中で、ハロゲンで置換されたフェノール、C1〜C10アルキルで置換されたフェノールもしくは非置換のフェノールとアルデヒド、好ましくはホルムアルデヒドとの縮合により、又は二官能性フェノールジアルコール類の縮合により製造されるフェノール系硬化樹脂である。p位でC5〜C10アルキル基で置換されたジメチロールフェノール類が好ましい。アルキルで置換されたフェノール硬化樹脂のハロゲン化により製造されるハロゲン化アルキルで置換されたフェノール硬化樹脂も特に適している。メチロールフェノール系樹脂、ハロゲン供与物質及び金属化合物を含むフェノール系硬化剤系は特に推奨され、それらの詳細は、Gillerによる米国特許第3,287,440号及びGerstinらによる米国特許第3,709,840号に記載されている。
【0050】
非ハロゲン化フェノール硬化樹脂は、ハロゲン供与物質と組み合わせて、好ましくはハロゲン化水素掃去剤とともに用いられる。通常、ハロゲン化、好ましくは臭素化された、2乃至10質量%の臭素を含有するフェノール系樹脂は、ハロゲン供与物質を必要としないが、酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、珪酸マグネシウム、二酸化珪素のような金属酸化物のようなハロゲン化水素掃去剤と組み合わせて用いられ、その掃去剤の存在は、フェノール系樹脂の架橋機能を促進するが、フェノール系樹脂を用いて容易に硬化しないゴムでは、ハロゲン供与物質と酸化亜鉛との組み合わせた使用が推奨される。ハロゲン化フェノール樹脂の製造及び、硬化系における酸化亜鉛の組み合わせての使用は、米国特許第2,972,600号明細書及び3,093,613号明細書に記載されており、それらの開示を先きに記載したGiller及びGerstinらの特許の開示とともに援用により本明細書に組み込む。適するハロゲン供与物質の例は、塩化第一錫、塩化第二鉄又は、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン及びポリクロロブタジエン(ネオプレンゴム)のようなハロゲン供与ポリマーである。本明細書中で用いられている「活性剤」という用語は、フェノール系硬化樹脂の架橋効率を著しく増大させるいずれかの物質を意味し、単独で又は組み合わせて用いられる金属酸化物及びハロゲン供与物質を含む。フェノール系硬化剤系のさらなる詳細は、W. Hoffmanによる「加硫及び加硫剤(Vulcanization and Vulcanizing Agents(Parmerton Pubishing Company)」を参照。適するフェノール系硬化樹脂及び臭素化フェノール系硬化樹脂は市販されており、例えば、そのような樹脂は、SP−1045、CRJ−352、SP−1055及びSP−1056(いずれも商品名)でシェネクタディーケミカル社(Schenectady Chemicals, Inc.)から購入し得る。同様の機能的に同等のフェノール系硬化樹脂は、他の供給先から入手できる。先きに説明したように、ゴムの本質的に完全な硬化を行うために、十分な量の硬化剤が用いられる。
【0051】
用いることができる他の硬化系は、プラチナ又はロジウム誘導体で触媒作用を受けた水素化珪素硬化剤の使用から成るヒドロシリル化系である。そのような系は、例えば欧州特許出願公開第0776937号に開示されている。
【0052】
フェノール系架橋剤の配合量は、成分(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマー100質量部に対して、1〜20質量部の範囲である。
1質量部未満では充分な架橋が得られず、引張強さや耐外傷性が低下する。20質量部を超えると架橋が進みすぎ熱可塑性を失ったり、ブツが発生する。
【0053】
ハロゲン化水素掃去剤(例えば酸化亜鉛等)をさらに用いても良い。配合量は成分(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマー100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましい。
また、本発明においては(d−1)有機パーオキサイドと(d−2)フェノール系架橋剤を同時に用いることもできる。
【0054】
(e)成分 架橋助剤
本発明の一つの好ましい実施形態における難燃性樹脂組成物、またはそれに用いる熱可塑性樹脂成分(A)の製造においては、有機パーオキサイドの存在下で架橋助剤を介してビニル芳香族系熱可塑性エラストマーおよびエチレン・α−オレフィン共重合体との間で部分架橋構造を形成する。
【0055】
架橋助剤としては、多官能性(メタ)アクリレート系及び/又は多官能性ビニル系架橋助剤が好ましく、具体的には、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレートのような多官能性ビニルモノマー、又はエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマーが挙げられる。このような化合物を用いることにより、均一かつ効率的な架橋反応が期待できる。
その際使用される架橋助剤としては、一般式
【0056】
【化1】

【0057】
(ここで、RはH又はCH3であり、nは1〜9の整数である。)
で表される多官能性(メタ)アクリレート系架橋助剤が挙げられる。ここで多官能性(メタ)アクリレート系架橋助剤とはアクリレート系およびメタアクリレート系架橋助剤をさす。具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0058】
その他にもジビニルベンゼン、ジアリルフマレート、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレートのような末端にビニル基を有するものを使用することができる。
以上の中でも特にnが1〜6の多官能性(メタ)アクリレート系架橋助剤が好ましく、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0059】
特に、本発明においては、トリエチレングリコールジメタクリレートが、取扱いやすく、他の成分との相溶性が良好であり、かつパーオキサイド可溶化作用を有し、パーオキサイドの分散助剤として働くため、加熱混練時の架橋効果が均一かつ効果的で、硬さとゴム弾性のバランスのとれた部分架橋熱可塑性樹脂が得られるため、最も好ましい。このような化合物を使用することにより、架橋不足にも架橋過度にもならず、加熱混練時に均一かつ効率的な部分架橋反応が期待できる。
【0060】
本発明で用いられる架橋助剤の添加量は、熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対して、上限は1.8質量部が好ましく、さらに好ましくは1.2質量部である。架橋助剤を添加することにより、架橋が進みすぎることなくゆるやかな架橋となり、ブツも発生することなく押し出し性に優れた組成物が得られる。架橋助剤の配合量は、質量比で有機パーオキサイドの添加量の約1.5〜4.0倍とすることが好ましい。
【0061】
(g)成分 ブロック共重合体
本発明の成分(g)は、芳香族ビニル化合物をその構成成分の主体とした少なくとも2個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物をその構成成分の主体とした少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体又はこれを水素添加して得られるもの、あるいはこれらの混合物であり、例えば、A−B−A、B−A−B−A、A−B−A−B−Aなどの構造を有する芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体、あるいはこれらの水素添加されたもの等を挙げることができる。上記(水添)ブロック共重合体(以下、(水添)ブロック共重合体とは、ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体を意味する)は、芳香族ビニル化合物を5〜60質量%、好ましくは、20〜50質量%含む。
【0062】
芳香族ビニル化合物をその構成成分の主体とする重合体ブロックAは好ましくは、芳香族ビニル化合物のみから成るか、または50質量%より多い、好ましくは70質量%以上のビニル芳香族化合物と(水素添加された)共役ジエン化合物(以下、(水素添加された)共役ジエン化合物とは、共役ジエン化合物及び/又は水素添加された共役ジエン化合物を意味する)との共重合体ブロックである。(水素添加された)共役ジエン化合物をその構成成分の主体とする重合体ブロックBは好ましくは、(水素添加された)共役ジエン化合物のみから成るか、または50質量%より多い、好ましくは70質量%以上の(水素添加された)共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体ブロックである。これらの芳香族ビニル化合物をその構成成分の主体とする重合体ブロックA、(水素添加された)共役ジエン化合物をその構成成分の主体とする重合体ブロックBのそれぞれにおいて、分子鎖中の芳香族ビニル化合物または(水素添加された)共役ジエン化合物由来の繰り返し単位の分布がランダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増加または減少するもの)、一部ブロック状またはこれらの任意の組合せでなっていてもよい。芳香族ビニル化合物をその構成成分の主体とする重合体ブロックA或いは(水素添加された)共役ジエン化合物をその構成成分の主体とする重合体ブロックBが2個以上ある場合には、それぞれが同一構造であっても異なる構造であってもよい。
【0063】
(水添)ブロック共重合体を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレンなどのうちから1種または2種以上が選択でき、中でもスチレンが好ましい。また共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどのうちから1種または2種以上が選ばれ、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組合せが好ましい。
【0064】
共役ジエン化合物をその構成成分の主体とする重合体ブロックBにおけるミクロ構造は任意に選ぶことができる。例えばポリブタジエンブロックにおいては、1,2−ミクロ構造が20〜50%、特に25〜45%であるものが好ましく、ブタジエンに基づく脂肪族二重結合の少なくとも90%が水素添加されたものが好ましい。ポリイソプレンブロックにおいては、該イソプレン化合物の70〜100質量%が1,4−ミクロ構造を有し、かつ該イソプレン化合物に基づく脂肪族二重結合の少なくとも90%が水素添加されたものが好ましい。
上記構造を有する本発明に用いる(水添)ブロック共重合体の質量平均分子量は好ましくは5,000〜1,500,000、より好ましくは10,000〜550,000、さらに好ましくは100,000〜550,000、特に好ましくは100,000〜400,000の範囲である。分子量分布(質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn))は好ましくは10以下、更に好ましくは5以下、より好ましくは2以下である。(水添)ブロック共重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状あるいはこれらの任意の組合せのいずれであってもよい。
【0065】
これらの(水添)ブロック共重合体の製造方法としては数多くの方法が提案されているが、代表的な方法としては、例えば特公昭40−23798号公報に記載された方法により、リチウム触媒またはチーグラー型触媒を用い、不活性溶媒中にてブロック重合させて得ることができる。また、例えば、上記方法により得られたブロック共重合体に、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下にて水素添加することにより水添ブロック共重合体が得られる。
【0066】
上記(水添)ブロック共重合体の具体例としては、SBS(スチレン・ブタジエンブロックコポリマー)、SIS(スチレン・イソプレンブロックコポリマー)、SEBS(水素化SBS)、SEPS(水素化SIS)等を挙げることができる。本発明において、特に好ましい(水添)ブロック共重合体は、スチレンをその構成成分の主体とする重合体ブロックAと、イソプレンをその構成成分の主体としかつイソプレンの70〜100質量%が1,4−ミクロ構造を有し、かつ該イソプレンに基づく脂肪族二重結合の少なくとも90%が水素添加されたところの重合体ブロックBとからなる質量平均分子量が50,000〜550,000の水添ブロック共重合体である。更に好ましくは、イソプレンの90〜100質量%が1,4−ミクロ構造を有する上記水添ブロック共重合体である。
【0067】
この(g)成分は(b)成分の一部を置き換えて使用することができ、その使用量は熱可塑性樹脂成分(A)中、40質量%以下、好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
この使用量が熱可塑性樹脂成分中多すぎると、押し出し負荷が著しく高くなったり、ヒートショック性が著しく低下したりする。
【0068】
(B)金属水和物
本発明において用いられる金属水和物としては、特に限定はしないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの水酸基あるいは結晶水を有する化合物を単独もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。これらの金属水和物のうち、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましい。金属水和物は少なくとも一部がシランカップリング剤で処理されていることが必要であるが、表面処理されていない無処理の金属水和物や脂肪酸等他の表面処理剤で処理した金属水和物を適宜併用することができる。
【0069】
また上記金属水和物の表面処理に用いられるシランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のビニル基またはエポキシ基を末端に有するシランカップリング剤、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基を末端に有するシランカップリング剤、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤などの架橋性のシランカップリング剤が好ましい。またこれらのシランカップリング剤は2種以上併用してもよい。
【0070】
このような架橋性のシランカップリング剤の中でも、末端にエポキシ基および/または末端に2重結合を有する上述のようなビニル基を有するシランカップリング剤がさらに好ましく、これらは1種単独でも、2種以上併用して使用してもよい。
【0071】
本発明で用いることができるシランカップリング剤表面処理水酸化マグネシウムとしては、表面無処理のもの(市販品としては、キスマ5(商品名、協和化学社製)など)、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸で表面処理されたもの(キスマ5A(商品名、協和化学社製)など)、リン酸エステル処理されたものなどを上記のビニル基又はエポキシ基を末端に有するシランカップリング剤により表面処理したもの、またはビニル基又はエポキシ基を末端に有するシランカップリング剤によりすでに表面処理された水酸化マグネシウムの市販品(キスマ5L、キスマ5P(いずれも商品名、協和化学社製)など)がある。
【0072】
また、上記以外にも、予め脂肪酸やリン酸エステルなどで表面の一部が前処理された水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムに、さらにビニル基やエポキシ基等の官能基を末端に有するシランカップリング剤を用い表面処理を行った金属水和物なども用いることができる。また同時に脂肪酸やリン酸エステルとビニル基やエポキシ基等の官能基を末端に有するシランカップリング剤を用い表面処理を行った金属水和物なども用いることができる。
【0073】
金属水和物をシランカップリング剤で処理する場合には、予めシランカップリング剤を金属水和物に対してブレンドして行うことが必要である。このときシランカップリング剤は、表面処理するに十分な量が適宜加えられるが、具体的には金属水和物に対し0.2〜2質量%が好ましい。シランカップリング剤は原液でもよいし、溶剤で希釈されたものを使用してもよい。
【0074】
金属水和物の配合量は、本発明の樹脂組成物中、熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対して、50〜300質量部であり、特に好ましくは100〜280質量部である。
少なすぎると引張強さが低下したり、難燃性が低下する。多すぎると耐外傷性や伸びが低下したり、また押し出し特性が著しく低下し、良好な外観の成形品が得られない。
本発明において(i)金属水和物が50質量部以上100質量部未満の場合は、熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対してその50質量部以上を、また(ii)金属水和物が100質量部以上の場合はその少なくとも50質量%をシランカップリング剤で前処理した金属水和物とすることにより、多量に金属水和物を加えても強度の低下が生じず、樹脂に大量にフィラーを配合することが可能となる。金属水和物のうち、少なくとも100質量部がシランカップリング剤で処理された水酸化マグネシウムであることが特に好ましい。この所定量よりシラン処理なされている金属水和物の量が少ない場合、力学的強度や耐摩耗性が低下する。また熱老化特性も低下する。さらに金属水和物を300質量部より多く加えると、力学的強度や伸びが著しく低下する。
【0075】
通常のポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂をベース樹脂として使用し、必要とされる難燃性を満足するために金属水和物を多量に加えてゆくと、機械強度の低下が非常に大きい。特に、(a)成分としてポリプロピレンや(b)成分としてエチレン−αオレフィン共重合体から構成される樹脂組成物の場合においては金属水和物を大量に加えて行くと、機械強度や伸びの低下が非常に大きい。それに対して、本発明における熱可塑性樹脂成分(A)は、架橋密度が低く樹脂成分同士が(d)成分を介した部分架橋状態になっており、さらに金属水和物上に表面処理されたシランカップリング剤と(b)成分のパーオキサイド架橋型のポリオレフィン樹脂がネットワーク構造を形成しているため、金属水和物を多量に配合しても、伸びの低下や強度の低下が生じにくい。さらに組成物成形体を屈曲させた際に白化を生じにくい。
【0076】
さらに本発明の樹脂組成物は(b)成分のパーオキサイド架橋型ポリオレフィン樹脂が(d)成分を介した部分架橋状態になっており、さらに金属水和物上に表面処理されたシランカップリング剤と(b)成分のパーオキサイド架橋型のポリオレフィン樹脂がネットワーク構造を形成しており、流動成分に非常に摩耗性の高いポリプロピレン樹脂などが使用されているため、外傷性にすぐれた成形体を得ることが出来る。
【0077】
本発明の樹脂組成物の加熱・混練時の反応機構は、以下のように考えられる。すなわち本発明における熱可塑性樹脂成分(A)は、加熱混練されると(d)成分の存在下、(e)成分を介して(b)成分が架橋される。一方、(d)成分の作用で、(a)成分は適度に低分子量化することにより樹脂組成物の溶融粘度は適度に調整され、組成物全体として押出性に優れた架橋物となる。本発明の組成物の架橋は、少量の(e)成分の存在下で行わせることもあり、通常の架橋と比較して架橋点が少ないことから、部分架橋と称することができる。
【0078】
この難燃性樹脂組成物の架橋度は、目安として、熱可塑性樹脂成分(A)のゲル分率によって表すことができる。ゲル分率は、試料1gを100メッシュ金網に包み、ソックスレー抽出機を用い、沸騰キシレン中で10時間抽出した後、試料1gに対する残留固形分の質量の割合で表すことができる。
本発明において架橋度は、ゲル分率で好ましくは30〜45質量%、さらに好ましくは40〜45質量%である。
【0079】
熱可塑性樹脂成分(A)に金属水和物を充填する場合には、(d)成分および(f)成分と同時に、シランカップリング剤で処理された金属水和物を特定量配合した場合に、成形時の押し出し加工性を損なうことなく金属水和物を多量に配合することが可能になり、優れた難燃性を確保しながらも耐熱性、および機械特性を併せ持つとともに、使用後の再押し出しができリサイクル可能な難燃性樹脂組成物を得ることができる。
【0080】
シランカップリング剤で処理された金属水和物が作用する機構についても、以下のように考えられる。すなわちシランカップリング剤で処理することにより金属水和物表面に結合したシランカップリング剤は、一方のアルコキシ基が金属水和物と結合し、もう一方の末端に存在するビニル基やエポキシ基をはじめとする各種の反応性部位は(b)成分のパーオキサイド架橋型の未架橋部分及び(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーと結合する。これにより、押し出し成形性を損なうことなく金属水和物を大量に配合することが可能になるとともに、樹脂と金属水和物の密着性が強固になり、機械強度および耐摩耗性が良好で、傷つきにくい難燃性樹脂組成物が得られる。
【0081】
本発明の難燃性樹脂組成物には、電線、電気ケーブル、電気コードにおいて、一般的に使用されている各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、金属不活性剤、難燃(助)剤、充填剤、滑剤、酸無水物及びその変性物などを本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0082】
酸化防止剤としては、4,4'−ジオクチル・ジフェニルアミン、N,N'−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物などのアミン系酸化防止剤、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のフェノール系酸化防止剤、ビス(2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル)スルフィド、2−メルカプトベンヅイミダゾールおよびその亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリル−チオプロピオネート)などのイオウ系酸化防止剤などが挙げられる。
金属不活性剤としては、N,N'−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1, 2, 4−トリアゾール、2,2'−オキサミドビス−(エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)などが挙げられる。
【0083】
さらに難燃(助)剤、充填剤としては、カーボン、クレー、錫酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ほう酸亜鉛、ホワイトカーボンなどが挙げられる。
滑剤としては、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石けん系などが挙げられる。
【0084】
表面平滑材としてシリコーン樹脂を使用することが出来る。シリコーン樹脂を使用することにより圧接加工性がさらに良好になる。
シリコーン化合物としては通常の直鎖のシロキサン構造を有しているシリコーンオイル、ポリジオルガノシロキサンを主原料としたシリコーンゴム、シリコーンゴムの主原料であるシリコーンガム、パウダー状のシリコーンレジン等が挙げられる。
この中でもシリコーンゴムの主原料であるでシリコーンガムが望ましい。シリコーンガムの中でも側鎖にビニル基等の架橋基を有しているシリコーンガムが望ましい。シリコーンガムの基本的な分子構造はシロキサンの側鎖にメチル基、ビニル基、フェニル基を有しているものが挙げられるが、その他のアルキル基、アルケニル基等、芳香族基の選択も可能である。側鎖にビニル基等の架橋基を有しているシリコーンガムの使用により、コンパウンド時に行われる際の緩やかな架橋反応において、シリコーンガムと他のポリマーやシラン処理なされた金属水和物と結合し、ブリードがなく、しかも表面平滑性に優れ、さらに圧接の際のストレインリリーフにおける被覆材の形状変化が生じないで圧接加工を行うことが可能である。しかも電線の表面平滑性が優れているため、自動機の量産加工性も非常に優れている。
【0085】
このシリコーンガムにその他配合剤として、補強充填剤、可塑剤、増量充填剤、添加剤、架橋剤等を添加しても良い。シリコーンガムとしては重合度5000〜10000程度のものが好ましいが、重合度がこれより低いものも使用しても良い。
このシリコーン化合物の含有量は樹脂成分100質量部に対して0.5質量部〜12質量部がよい。これをあまり多く加えると、電線の量産性が著しく低下し、さらに圧接コネクタの電線保持力も著しく低下する為である。
またこのシリコーンガム等の代わりに、シリコーンでグラフトされた例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレンー酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合体、或いはシリコーンを予め混合したポリオレフィンやエチレン共重合体を加えてもよい。
【0086】
本発明の難燃性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で前記添加物や他の樹脂を導入することができるが、少なくとも前記熱可塑性樹脂成分(A)を主樹脂成分とする。ここで、主樹脂成分とするとは、本発明の難燃性樹脂組成物の樹脂成分中、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上を前記熱可塑性樹脂成分(A)が占めることを意味する。
【0087】
以下、本発明の好ましい実施形態における難燃性樹脂組成物、およびそれを被覆層に有する配線材の製造方法を説明する。
【0088】
成分(a)、成分(b)及び成分(c)、(d−1)、(e)並びに(B)の全量、場合により、更に充填剤、抗酸化剤、光安定剤、着色剤等の各種添加剤を、溶融混練する。混練温度は(a)及び(b)の溶融温度以上、好ましくは160〜240℃である。混練方法としては、ゴム、プラスチックなどで通常用いられる方法であれば満足に使用でき、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサーあるいは各種のニーダーなどが用いられる。この工程により、各成分が均一に分散された組成物を得ることができる。
【0089】
また、別の実施形態においては、第一工程において、まず成分(a)、(b)、(c)の全量、場合により、更に充填剤、抗酸化剤、光安定剤、着色剤等の各種添加剤を、予め溶融混練する。混練温度は、好ましくは160〜240℃である。混練方法としては、ゴム、プラスチックなどで通常用いられる方法であれば満足に使用でき、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサーあるいは各種のニーダーなどが用いられる。この工程により、各成分が均一に分散された組成物を得ることができる。
次に第二工程は、第一工程で得られた組成物に、成分(d−1)および成分(e)及び成分(B)の全部を加え、更に加熱下に混練して部分架橋を生じせしめる。このときの温度は(a)及び(b)の溶融温度以上、好ましくは180〜240℃である。このように成分(a)、(b)、(c)を予め溶融混練してミクロな分散を生じせしめてから、成分(d−1)、(e)、(B)を加えて混練を加熱処理下に行い、部分架橋物を生成させることが、特に好ましい物性をもたらす。この工程は、一般に、二軸押出機、バンバリーミキサー等を用いて混練する方法で行うことができる。
【0090】
また、別の実施形態においては、第一工程において、まず成分(a)、(b)、(c)の全量、(d−1)の一部、並びに(e)の一部、場合により、更に充填剤、抗酸化剤、光安定剤、着色剤等の各種添加剤を、予め溶融混練する。混練温度は(a)及び(b)の溶融温度以上、好ましくは160〜240℃である。混練方法としては、ゴム、プラスチックなどで通常用いられる方法であれば満足に使用でき、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサーあるいは各種のニーダーなどが用いられる。この工程により、各成分が均一に分散された組成物を得ることができる。
次に第二工程は、第一工程で得られた組成物に、成分(d−1)および成分(e)の残分及び成分(B)の全部を加え、更に加熱下に混練して部分架橋を生じせしめる。このときの温度は(a)及び(b)の溶融温度以上、好ましくは180〜240℃である。この工程は、一般に、二軸押出機、バンバリーミキサー等を用いて混練する方法で行うことができる。
【0091】
また、別の実施形態においては、成分(a)、成分(b)及び成分(c)、(d−2)並びに(B)の全量、場合により、更に充填剤、抗酸化剤、光安定剤、着色剤等の各種添加剤を、溶融混練する。混練温度は(a)及び(b)の溶融温度以上、好ましくは160〜240℃である。混練方法としては、ゴム、プラスチックなどで通常用いられる方法であれば満足に使用でき、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサーあるいは各種のニーダーなどが用いられる。この工程により、各成分が均一に分散された組成物を得ることができる。
【0092】
また、別の実施形態においては、第一工程において、まず成分(a)、(b)、(c)の全量、場合により、更に充填剤、抗酸化剤、光安定剤、着色剤等の各種添加剤を、予め溶融混練する。混練温度は(a)及び(b)の溶融温度以上、好ましくは160〜240℃である。混練方法としては、ゴム、プラスチックなどで通常用いられる方法であれば満足に使用でき、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサーあるいは各種のニーダーなどが用いられる。この工程により、各成分が均一に分散された組成物を得ることができる。
次に第二工程は、第一工程で得られた組成物に、成分(d−2)及び成分(B)の全部を加え、更に加熱下に混練して部分架橋を生じせしめる。このときの温度は(a)及び(b)の溶融温度以上、好ましくは180〜240℃である。このように成分(a)、(b)、(c)を予め溶融混練してミクロな分散を生じせしめてから、成分(d−2)、(B)を加えて混練を加熱処理下に行い、部分架橋物を生成させることが、特に好ましい物性をもたらす。この工程は、一般に、二軸押出機、バンバリーミキサー等を用いて混練する方法で行うことができる。
【0093】
また、別の実施形態においては、第一工程において、まず成分(a)、(b)、(c)の全量、(d−2)の一部、場合により、更に充填剤、抗酸化剤、光安定剤、着色剤等の各種添加剤を、予め溶融混練する。混練温度は(a)及び(b)の溶融温度以上、好ましくは160〜240℃である。混練方法としては、ゴム、プラスチックなどで通常用いられる方法であれば満足に使用でき、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサーあるいは各種のニーダーなどが用いられる。この工程により、各成分が均一に分散された組成物を得ることができる。
次に第二工程は、第一工程で得られた組成物に、成分(d−2)及び成分(B)の全部を加え、更に加熱下に混練して部分架橋を生じせしめる。このときの温度は、好ましくは180〜240℃である。この工程は、一般に、二軸押出機、バンバリーミキサー等を用いて混練する方法で行うことができる。
【0094】
また、別の実施形態においては、成分(a)、成分(b)及び成分(c)、(d−1)、(d−2)、(e)並びに(B)の全量、場合により、更に充填剤、抗酸化剤、光安定剤、着色剤等の各種添加剤を、溶融混練する。混練温度は(a)及び(b)の溶融温度以上、好ましくは160〜240℃である。混練方法としては、ゴム、プラスチックなどで通常用いられる方法であれば満足に使用でき、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサーあるいは各種のニーダーなどが用いられる。この工程により、各成分が均一に分散された組成物を得ることができる。
【0095】
また、別の実施形態においては、第一工程において、まず成分(a)、(b)、(c)の全量、場合により、更に充填剤、抗酸化剤、光安定剤、着色剤等の各種添加剤を、予め溶融混練する。混練温度は(a)及び(b)の溶融温度以上、好ましくは160〜240℃である。混練方法としては、ゴム、プラスチックなどで通常用いられる方法であれば満足に使用でき、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサーあるいは各種のニーダーなどが用いられる。この工程により、各成分が均一に分散された組成物を得ることができる。
次に第二工程は、第一工程で得られた組成物に、成分(d−1)、(d−2)、(e)及び成分(B)の全部を加え、更に加熱下に混練して部分架橋を生じせしめる。このときの温度は(a)及び(b)の溶融温度以上、好ましくは180〜240℃である。この工程は、一般に、二軸押出機、バンバリーミキサー等を用いて混練する方法で行うことができる。
【0096】
また、別の実施形態においては、第一工程において、まず成分(a)、(b)、(c)の全量、(d−1)の一部、(d−2)の一部、(e)の一部、場合により、更に充填剤、抗酸化剤、光安定剤、着色剤等の各種添加剤を、予め溶融混練する。混練温度は(a)及び(b)の溶融温度以上、好ましくは160〜240℃である。混練方法としては、ゴム、プラスチックなどで通常用いられる方法であれば満足に使用でき、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサーあるいは各種のニーダーなどが用いられる。この工程により、各成分が均一に分散された組成物を得ることができる。
次に第二工程は、第一工程で得られた組成物に、成分(d−1)の残分、(d−2)の残分、(e)の残分及び成分(B)の全部を加え、更に加熱下に混練して部分架橋を生じせしめる。このときの温度は(a)及び(b)の溶融温度以上、好ましくは180〜240℃である。この工程は、一般に、二軸押出機、バンバリーミキサー等を用いて混練する方法で行うことができる。
【0097】
また、別の実施形態においては、第一工程において、まず成分(a)、(b)、(c)、及び(d−2)の全量、場合により、更に充填剤、抗酸化剤、光安定剤、着色剤等の各種添加剤を、予め溶融混練する。混練温度は(a)及び(b)の溶融温度以上、好ましくは160〜240℃である。混練方法としては、ゴム、プラスチックなどで通常用いられる方法であれば満足に使用でき、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサーあるいは各種のニーダーなどが用いられる。この工程により、各成分が均一に分散された組成物を得ることができる。
次に第二工程は、第一工程で得られた組成物に、成分(d−1)、(e)及び成分(B)の全部を加え、更に加熱下に混練して部分架橋を生じせしめる。このときの温度は(a)及び(b)の溶融温度以上、好ましくは180〜240℃である。この工程は、一般に、二軸押出機、バンバリーミキサー等を用いて混練する方法で行うことができる。
【0098】
また、別の実施形態においては、第一工程において、まず成分(a)、(b)、(c)、(d−1)、及び(e)、場合により、更に充填剤、抗酸化剤、光安定剤、着色剤等の各種添加剤を、予め溶融混練する。混練温度は(a)及び(b)の溶融温度以上、好ましくは160〜240℃である。混練方法としては、ゴム、プラスチックなどで通常用いられる方法であれば満足に使用でき、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサーあるいは各種のニーダーなどが用いられる。この工程により、各成分が均一に分散された組成物を得ることができる。
次に第二工程は、第一工程で得られた組成物に、成分(d−2)及び成分(B)の全部を加え、更に加熱下に混練して部分架橋を生じせしめる。このときの温度は(a)及び(b)の溶融温度以上、好ましくは180〜240℃である。この工程は、一般に、二軸押出機、バンバリーミキサー等を用いて混練する方法で行うことができる。
【0099】
本発明の難燃性樹脂組成物は電気・電子機器の内部および外部配線に使用される配線材や光ファイバ心線、光ファイバコードなどの成形物品の被覆、製造に適する。
本発明の樹脂組成物を配線材の被覆材として使用する場合には、好ましくは押出被覆により、導体の外周に形成した少なくとも1層の前記本発明の難燃性樹脂組成物からなる被覆層を有すること以外、特に制限はない例えば、導体としては軟銅の単線又は撚線などの公知の任意のものを用いることができる。また、導体としては裸線の他に、錫メッキしたものやエナメル被覆絶縁層を有するものを用いてもよい。
【0100】
本発明の難燃性樹脂組成物を被覆層として有する配線材は、本発明の難燃性樹脂組成物を、汎用の押出被覆装置を用いて、導体周囲や絶縁電線周囲に押出被覆することにより製造することができる。このときの押出被覆装置の温度は、シリンダー部で約180℃、クロスヘッド部で約200℃程度にすることが好ましい。
本発明の難燃性樹脂組成物を被覆層として有する配線材においては、導体の周りに形成される絶縁層(本発明の難燃性樹脂組成物からなる被覆層)の肉厚は特に限定しないが通常0.15mm〜5mm程度である。
【0101】
また、本発明の難燃性樹脂組成物を被覆層として有する配線材においては、本発明の樹脂組成物を押出被覆してそのまま被覆層を形成することが好ましいが、さらに耐熱性を向上させることを目的として、押出後の被覆層を架橋させることも可能である。但し、この架橋処理を施すと、被覆層の押出材料としての再利用は困難になる。
架橋を行う場合の方法として、常法による電子線照射架橋法や化学架橋法が採用できる。
【0102】
電子線架橋法の場合は、樹脂組成物を押出成形して被覆層とした後に常法により電子線を照射することにより架橋をおこなう。電子線の線量は1〜30Mradが適当であり、効率よく架橋をおこなうために、被覆層を構成する樹脂組成物に、トリメチロールプロパントリアクリレートなどのメタクリレート系化合物、トリアリルシアヌレートなどのアリル系化合物、マレイミド系化合物、ジビニル系化合物などの多官能性化合物を架橋助剤として配合してもよい。
化学架橋法の場合は、樹脂組成物に有機パーオキサイドを架橋剤として配合し、押出成形して被覆層とした後に常法により加熱処理により架橋をおこなう。
【0103】
本発明の難燃性樹脂組成物を被覆層として有する光ファイバ心線または光コードは、汎用の押出被覆装置を使用して、本発明の難燃性樹脂組成物を、光ファイバ素線の周囲に、または抗張力繊維を縦添えもしくは撚り合わせた光ファイバ心線の周囲に押出被覆することにより、製造される。このときの押出被覆装置の温度は、シリンダー部で180℃、クロスヘッド部で約200℃程度にすることが好ましい。
本発明の難燃性樹脂組成物を被覆層として有する光ファイバ心線は、用途によってはさらに周囲に被覆層を設けないでそのまま使用される。
【0104】
なお、本発明の難燃性樹脂組成物を被覆層として有する光ファイバ心線またはコードは、特にその構造を制限するものではない。被覆層の厚さ、光ファイバ心線に縦添えまたは撚り合わせる抗張力繊維の種類、量などは、光ファイバコードの種類、用途などによって異なり、適宜に設定することができる。
【0105】
図1〜3に、本発明の難燃性樹脂組成物を被覆層として有する光ファイバ心線およびコードの構造例を示す。
図1は、光ファイバ素線1の外周に直接、難燃性樹脂組成物からなる被覆層2を設けた光ファイバ心線の一例の断面図である。
図2は、複数の抗張力繊維4を縦添えした1本の光ファイバ心線3の外周に被覆層5を形成した光ファイバコードの一例の断面図である。
図3は、2本の光ファイバ心線3および3の外周にそれぞれ複数の抗張力繊維4を縦添えし、さらにその外周に被覆層6を形成した光ファイバコード(光ファイバ2心コード)の一例の断面図である。
【0106】
本発明の成形物品としては、難燃性樹脂組成物を被覆層として用いられるものに限定されるものではなく、その形状は制限されず、例えば、電源プラグ、コネクター、スリーブ、ボックス、テープ基材、チューブ、シート等の成形部品を挙げることができる。本発明において成形部品は、通常の射出成形等の成形方法により本発明の難燃性樹脂組成物を成形することで製造することができる。
【0107】
また、本発明の難燃性樹脂組成物を導体、光ファイバ素線または光ファイバ心線の外側に被覆する場合、若しくは、成形部品等に成形する場合は、熱可塑性樹脂成分(A)の溶融温度以上で、混合物を加熱・混練し、架橋処理した後に、又は、架橋処理しながら、被覆若しくは成形することができる。
【実施例】
【0108】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、表1及び2に示す数字は特に記載がない場合、質量部を示すものである。
【0109】
表1及び2中に示す各化合物としては下記のものを使用した。
(a)成分として、
(a−1)プロピレン・エチレン・ブロック共重合体
製造会社:チッソ株式会社
商品名:P1075
融点(Tm):162℃
曲げ弾性率:1080MPa
MFR: 0.5 g/10分
(a−2)アタクチックポリプロピレン
製造会社:CAP2880
商品名:宇部興産(株)
融点(Tm):143℃
結晶融解熱量(ΔHm):25J/g
(b)成分として、
(b−1)エチレン−αオレフィン共重合体(メタロセン触媒で合成された)
製造会社:日本ポリケム(株)
商品名:カーネルKF360
密度:0.898g/cm3
MFR:3.5g/10分
コモノマー:ヘキセン−1
(b−2)マレイン酸変性ポリエチレン
製造会社:三井住友ポリオレフィン
商品名:アドマーXE−070
(b−3)エチレン−酢酸ビニル共重合体
製造会社:三井デユポンポリケミカル
商品名:EV−170
VA含有量:33質量%
(b−4)エチレン−プロピレンゴム
製造会社:JSR株式会社
商品名:EP07P
エチレン成分含有量:70質量%
(c)成分として:パラフィンオイル
製造会社:出光興産株式会社
商品名:ダイアナプロセスオイルPW−90
重量平均分子量:540
芳香族成分の含有量:0.1%以下
動的粘度(37.8℃):95cSt
流動点:−15℃
引火点(COC):270℃
(d)成分として、
(d−1)有機パーオキサイド
製造会社:日本油脂株式会社
商品名:パーヘキサ25B
種類:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−ヘキサン
(d−2)フェノール系架橋剤
製造会社:田岡化学株式会社
商品名:タッキロール25(ハロゲン化アルキルフェノールホルムアルデヒド付加重合物、アルキルフェノールのアルキル基の炭素数5,重合度4)
・ハロゲン化水素掃去剤としては酸化亜鉛を用いた。
(e)成分として:トリエチレングリコールジアクリレート
製造会社:新中村化学株式会社
商品名:NKエステル3G
(f)成分として、
(f)エチレン−プロピレン−ジエンゴム
製造会社:JSR株式会社
商品名:EP57P
エチレン成分含有量:66質量%
ポリエン化合物含有量:4.5質量%(5−エチリデン−2−ノルボルネン)
(g)成分として:スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)
製造会社:株式会社クラレ
商品名:セプトン4077
スチレン成分含有量:30質量%
イソプレン成分含有量:70質量%
重量平均分子量:320,000
分子量分布:1.23
水素添加率:90%以上
(B)成分として:水酸化マグネシウム
製造会社:協和化学社製
商品名:キスマ5L
種類:末端にビニル基を有するシランカップリング剤で表面処理した水酸化マグネシウム
又は、
製造会社:協和化学社製
商品名:キスマ5B
種類:オレイン酸で表面処理した水酸化マグネシウム
各成分を表1、表2に示すような配合量とし組成物を調製した。
【0110】
実施例及び比較例は、すべての成分を室温でドライブレンドし、200℃でバンバリーミキサーを用いて加熱混練して、排出し、難燃性樹脂組成物を得た。排出温度は200℃で行った。
【0111】
得られた樹脂組成物から、プレスにより、各実施例、参考例、比較例に対応する1mmシートを作成した。
次に、電線製造用の押出被覆装置を用いて、導体(導体径:1.14mmφ錫メッキ軟銅撚線 構成:30本/0.18mmφ)上に、あらかじめ溶融した絶縁被覆用の樹脂組成物を押出被覆して、外径3.2mmの絶縁電線を製造した。
得られた各シートについて、以下の物性を測定しその結果を表1、表2に併せて示した。
引張特性(伸び(%)及び強さ(MPa)は、JIS K 6723に基づいて評価を行った。
加熱変形試験は、JIS 6723 (121℃)に基づいて評価を行った。数値の単位は%である。
硬さは、JIS K 7215のAタイプに基づいて評価を行った。
シートの各特性については、伸びは150%以上、抗張力8MPa以上を合格とし、硬度は96以下を合格とした。
【0112】
また、外径3.2mmの絶縁電線の被覆層について、引張特性試験、水平燃焼試験、垂直燃焼試験、耐摩耗性試験、外観試験、押し出し性試験を行い各特性を評価し、その結果を表1、表2に併せて示した。
【0113】
引張特性は、各絶縁電線の絶縁体(被覆層)の抗張力(MPa)と破断伸び(%)を、JIS C 3005に基づき標線間隔20mm、引張速度200mm/分の条件で測定した。伸びは150%以上、強度は8MPa以上必要である。
水平燃焼試験は、各絶縁電線について、JIS C 3005に規定される水平燃焼試験をおこない、30秒以内で自消したものを合格としてカウントし、3個中の合格数を示した。
垂直燃焼試験は、各絶縁電線について、UL1581に規定される垂直燃焼試験(VW−1)を行い、5個中の合格数を示した。
【0114】
耐摩耗性は、図5に正面図を示した試験装置を用いて評価した。長さ75cmに切断して両端部の絶縁被覆層(7a)を剥いで導体(7b)を剥き出しにした絶縁電線(7)を水平な台(8)の上にクランプ(9)で固定し、絶縁電線の軸方向に10mm以上の長さにわたり、毎分50〜60回の速さで荷重(10)700gfを掛けながらブレード(11)を(図中の矢印の向きに)往復運動させて、絶縁被覆層が摩耗により除かれてブレードが電線の導体に接触するまでに要したブレードの往復回数を測定した。図6にブレードの正面図を示すが、ブレード(11)は、なす角が90°となるように2つの面(11a、11b)により巾3mmの刃部を形成してなり、刃部の先端部の曲率半径(R)は0.125mmである。前記ブレードが電線の導体に接触するまでのブレードの往復回数が300回以上であったものを○、300回未満であったものを不合格として×で示した。
【0115】
外観は、押し出し後の表面外観を目視で確認し評価し、外観が良好なものは○、押し出し外観が悪く製品レベルでないものは×として評価した。
押し出し性試験は、30mmφの押出機で押し出しを行い、モーター負荷が正常範囲内で押し出しが行えたもので外観良好なものを○、押し出し負荷がやや大きいものや外観がやや悪かったものを△、押し出し負荷が著しく大きく押し出し困難又は不可なものを×、押し出し機が不可過大で途中で止まってしまったものを××として評価した。△以上が実用上問題のないレベルであり合格である。
また、押し出し被覆ができないもの、又は、ブリードが生じたものは、表中の電線特性の最下欄にそれぞれ「押し出し不可」、「ブリード」と記した。
【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【0118】
表1及び2の結果から明らかなように、比較例1は、成分(f)を(A)中50質量%を超えて使用した場合であり、耐摩耗性が悪化していた。比較例2は、成分(c)を(A)中40質量%を超えて使用した場合であり、機械強度(引張り強さ、伸び)が悪化していた。比較例3は、成分(a)を含まない場合であり、押出特性が悪化していた。比較例4は、成分(a)を(A)中75質量%を超えて使用した場合であり、伸び及び柔軟性が悪化していた。比較例5は、成分(d)を含まない場合であり、引張り強さや耐外傷性が悪化していた。比較例6は、成分(d)を上限を超えて含んだ場合であり、押出成形が不可能であった。比較例7は、成分(b)が下限未満であり、引張強さや耐外傷性が悪化していた。比較例8は、(B)が下限未満であり、難燃性が悪化していた。比較例9は、(B)が上限を超えた場合であり、耐外傷性、伸び、押出特性が悪化していた。比較例10は、成分(f)が(A)中5質量%未満であり、耐摩耗性が悪化していた。比較例11は、シラン処理した金属水和物が下限未満である場合であり、力学特性と耐摩耗性が悪化していた。
一方、実施例1〜6で得られた難燃性樹脂組成物とこれを用いたシート、電線は、耐摩耗性、及び引張強さに優れ、かつ、通常、必要とされる伸び、外観特性を有し、燃焼試験、加熱試験の結果のいずれも良好で、さらに押し出し性にも優れていた。
【符号の説明】
【0119】
1 光ファイバ素線
2 被覆層
3 光ファイバ心線
4 抗張力繊維
5 被覆層
6 被覆層
7 絶縁電線
7a 絶縁被覆層
7b 導体
8 台
9 クランプ
10 荷重
11 ブレード
11a、11b ブレードの刃部の面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂10〜75質量%、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂25〜90質量%(ただし、(b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含み、(f)は(A)において5〜50質量%を占める)及び(c)非芳香族系ゴム用軟化剤0〜40質量%からなる熱可塑性樹脂成分(A)に、(d)架橋剤、及び、熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対し金属水和物(B)50〜300質量部の割合で含有し、並びに、前記金属水和物(B)は、
(i)前記金属水和物(B)が50質量部以上100質量部未満の場合は、前記熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対してシランカップリング剤で前処理された金属水和物が50質量部以上;
(ii)前記金属水和物(B)が100質量部以上300質量部以下の場合は、金属水和物(B)の少なくとも半量が、シランカップリング剤で前処理された金属水和物である
組成の混合物であって、前記熱可塑性樹脂成分(A)の溶融温度以上で加熱・混練してなることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【請求項2】
(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂10〜75質量%、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂25〜90質量%(ただし、(b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含み、(f)は(A)において5〜50質量%を占める)、及び(c)非芳香族系ゴム用軟化剤0〜40質量%からなる熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対して、(d−1)有機パーオキサイド0.01〜0.6質量部、(e)架橋助剤0.03〜1.8質量部、及び、金属水和物(B)50〜300質量部の割合で含有し、並びに、前記金属水和物(B)は、
(i)前記金属水和物(B)が50質量部以上100質量部未満の場合は、前記熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対してシランカップリング剤で前処理された金属水和物が50質量部以上;
(ii)前記金属水和物(B)が100質量部以上300質量部以下の場合は、金属水和物(B)の少なくとも半量が、シランカップリング剤で前処理された金属水和物である
組成の混合物であって、前記熱可塑性樹脂成分(A)の溶融温度以上で加熱・混練してなることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂10〜75質量%、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂25〜90質量%(ただし、(b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含み、(f)は(A)において5〜50質量%を占める)、及び(c)非芳香族系ゴム用軟化剤0〜40質量%からなる熱可塑性樹脂成分(A)に、成分(f)100質量部に対して、(d−2)フェノール系架橋剤1〜20質量部、及び、熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対して、金属水和物(B)を50〜300質量部の割合で含有し、並びに、前記金属水和物(B)は、
(i)前記金属水和物(B)が50質量部以上100質量部未満の場合は、前記熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対してシランカップリング剤で前処理された金属水和物が50質量部以上;
(ii)前記金属水和物(B)が100質量部以上300質量部以下の場合は、金属水和物(B)の少なくとも半量が、シランカップリング剤で前処理された金属水和物である
組成の混合物であって、前記熱可塑性樹脂成分(A)の溶融温度以上で加熱・混練してなることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂10〜75質量%、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂25〜90質量%(ただし、(b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含み、(f)は(A)において5〜50質量%を占める)、及び(c)非芳香族系ゴム用軟化剤0〜40質量%からなる熱可塑性樹脂成分(A)に、成分(f)100質量部に対して、(d−2)フェノール系架橋剤1〜20質量部、及び熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対して、(d−1)有機パーオキサイド0.01〜0.6質量部、(e)架橋助剤0.03〜1.8質量部、及び、金属水和物(B)50〜300質量部の割合で含有し、並びに、前記金属水和物(B)は、
(i)前記金属水和物(B)が50質量部以上100質量部未満の場合は、前記熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対してシランカップリング剤で前処理された金属水和物が50質量部以上;
(ii)前記金属水和物(B)が100質量部以上300質量部以下の場合は、金属水和物(B)の少なくとも半量が、シランカップリング剤で前処理された金属水和物である
組成の混合物であって、前記熱可塑性樹脂成分(A)の溶融温度以上で加熱・混練してなることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【請求項5】
(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)の一部を、(g)芳香族ビニル化合物をその構成成分の主体とした少なくとも2個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物をその構成成分の主体とした少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体、および/またはこれを水素添加して得られる水添ブロック共重合体とし、前記ブロック共重合体、および/またはこれを水素添加して得られる水添ブロック共重合体の量が熱可塑性樹脂成分(A)中40質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項6】
(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)がメタロセン触媒を用いて合成されたポリエチレン樹脂を必須成分とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項7】
(e)架橋助剤が多官能性(メタ)アクリレート系および/または多官能性ビニルアリル系であることを特徴とする請求項1、2、4、5又は6いずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項8】
成分(f)がオレフィンとポリエン化合物との共重合体であることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載の難燃樹脂組成物。
【請求項9】
成分(f)がエチレン、炭素原子数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムであることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載の難燃樹脂組成物。
【請求項10】
(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)及び、(c)非芳香族系ゴム用軟化剤、(d−1)有機パーオキサイド、(e)架橋助剤、並びに、金属水和物(B)の全部を(a)及び(b)の溶融温度以上で加熱・混練し、架橋処理することを特徴とする請求項2記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
第一工程で(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)、並びに、(c)非芳香族系ゴム用軟化剤を加熱・混練して熱可塑性樹脂成分(A)を得た後に、第二工程でこの樹脂成分(A)と(d−1)有機パーオキサイド、(e)架橋助剤、並びに、金属水和物(B)の全部を(a)及び(b)の溶融温度以上で加熱・混練し、架橋処理することを特徴とする請求項2記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)、及び(c)非芳香族系ゴム用軟化剤、(d−1)有機パーオキサイドの一部、並びに、(e)架橋助剤の一部を(a)及び(b)の溶融温度以上で加熱・混練し、架橋処理行った後に、(d−1)有機パーオキサイドの残分、(e)架橋助剤の残分、並びに、金属水和物(B)の全部を(a)及び(b)の溶融温度以上で再度加熱・混練し、架橋処理することを特徴とする請求項2記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)、及び(c)非芳香族系ゴム用軟化剤、(d−2)フェノール系架橋剤、並びに、金属水和物(B)の全部を(a)及び(b)の溶融温度以上で加熱・混練し、架橋処理することを特徴とする請求項3記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
第一工程で(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)、並びに、(c)非芳香族系ゴム用軟化剤を加熱・混練して熱可塑性樹脂成分(A)を得た後に、第二工程でこの樹脂成分(A)と(d−2)フェノール系架橋剤、並びに、金属水和物(B)の全部を(a)及び(b)の溶融温度以上で加熱・混練し、架橋処理することを特徴とする請求項3記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】
(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)、及び(c)非芳香族系ゴム用軟化剤、並びに、(d−2)フェノール系架橋剤の一部を(a)及び(b)の溶融温度以上で加熱・混練し、架橋処理行った後に、(d−2)フェノール系架橋剤の残分、並びに、金属水和物(B)の全部を(a)及び(b)の溶融温度以上で再度加熱・混練し、架橋処理することを特徴とする請求項3記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項16】
(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)、及び(c)非芳香族系ゴム用軟化剤、(d−1)有機パーオキサイド、(d−2)フェノール系架橋剤、(e)架橋助剤、並びに、金属水和物(B)の全部を(a)及び(b)の溶融温度以上で加熱・混練し、架橋処理することを特徴とする請求項4記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項17】
第一工程で(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)、及び(c)非芳香族系ゴム用軟化剤を加熱・混練して熱可塑性樹脂成分(A)を得た後に、第二工程でこの樹脂成分(A)と(d−1)有機パーオキサイド、(d−2)フェノール系架橋剤、(e)架橋助剤、並びに、金属水和物(B)の全部を(a)及び(b)の溶融温度以上で加熱・混練し、架橋処理することを特徴とする請求項4記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項18】
(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)、及び(c)非芳香族系ゴム用軟化剤、(d−1)有機パーオキサイドの一部、(d−2)フェノール系架橋剤の一部及び(e)架橋助剤の一部を(a)及び(b)の溶融温度以上で加熱・混練し、架橋処理行った後に、(d−1)有機パーオキサイドの残分、(d−2)フェノール系架橋剤の残分、(e)架橋助剤の残分、並びに、金属水和物(B)の全部を(a)及び(b)の溶融温度以上で再度加熱・混練し、架橋処理することを特徴とする請求項4記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項19】
(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)、(c)非芳香族系ゴム用軟化剤及び(d−2)フェノール系架橋剤を(a)及び(b)の溶融温度以上で加熱・混練し、架橋処理行った後に、(d−1)有機パーオキサイド、(e)架橋助剤、並びに、金属水和物(B)を(a)及び(b)の溶融温度以上で再度加熱・混練し、架橋処理することを特徴とする請求項4記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項20】
(a)パーオキサイド分解型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂、(b)パーオキサイド架橋型の熱可塑性ポリオレフィン樹脂((b)は、(f)ポリエン化合物含有オレフィンのコポリマーを含む。)、及び(c)非芳香族系ゴム用軟化剤、(d−1)有機パーオキサイド、並びに、(e)架橋助剤を(a)及び(b)の溶融温度以上で加熱・混練し、架橋処理行った後に、(d−2)フェノール系架橋剤、並びに、金属水和物(B)の全部を(a)及び(b)の溶融温度以上で再度加熱・混練し、架橋処理することを特徴とする請求項4記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項21】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の難燃性熱可塑性組成物を導体、光ファイバ素線又は光ファイバ心線の外側に被覆層として有することを特徴とする成形物品。
【請求項22】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−57989(P2011−57989A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224810(P2010−224810)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【分割の表示】特願2004−117378(P2004−117378)の分割
【原出願日】平成16年4月12日(2004.4.12)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(000250384)リケンテクノス株式会社 (236)
【Fターム(参考)】