説明

雪庇防止構造

【課題】 屋上パラペット上に、柵を立設して、積雪時の軒先に発生する雪庇の成長を抑制し、雪庇落下事故を防止する。

【解決手段】 上端横桟材3Uと下端横桟材3Dとを、多数の雪仕切用の縦桟材3Pでの並列接続によって、各縦桟材3P間に、雪の吹き抜けを許容し、且つ雪庇の形成・成長を抑制する縦長の開口部Waを保って一体化した柵3を、柵3に間隔配置した支持金具5に固定し、支持金具5群を屋上パラペット上面PTに立設固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋上外縁上部に雪庇防止柵を配置するものであって、建築の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
多雪地域では、雪降し作業の軽減や、落雪によるトラブルを回避するため、屋根の雪を下に落さない陸屋根などのフラットな屋根形状を採用する建物が多い。
そして、この種の屋根形状の建物では、季節風などの、一定方向の風を伴なう降雪によって、屋根の軒先に雪庇が発生する。
雪庇は、風下軒先の雪の吹き溜まりが成長して、パラペットの高さを超えた場合に始まり、軒先部の吹き溜まりが飽和状態になると水平方向に急激に成長し、軒先への局所荷重の増大、崩落による人身事故等を招く。
そして、雪庇除去作業も危険、且つ困難であるため、近年、雪庇を抑制する手段の開発が望まれている。
【0003】
雪庇防止装置としては、図7に示す従来例1、図8に示す従来例2、図9に示す従来例3、等が提案されている。
図7(A)は、特許文献1として挙げた従来例1の縦断面図であり、図7(B)は従来例1の分解斜視図であって、従来例1は、図7に示す如く、建造物の外縁部(パラペット)上に、ホルダを、一定間隔でボルト固定し、ホルダ上に笠木を冠着し、笠木上に台座をホルダと整合して配置し、外側の垂直板と底板を係合した雪庇防止部材の底板を、台座を介してホルダに締着し、雪庇防止部材の傾斜板を、垂直板の上受け部から底板の下受け部に亘って配置するものである。
【0004】
そして、断面略三角形状の雪庇防止装置は、垂直板と底板と傾斜板との3部材で構成することにより、大型の雪庇防止装置であっても、製造上のサイズ制限を受けることなく、容易、且つ安価に製造出来るものであって、雪庇防止装置は、主要部材の垂直板、底板、傾斜板が分離しているため、運搬、施工が容易であり、笠木と底板とは台座によって空気流通空間が形成出来、該空間から屋上面に沿って流れる風を外側に誘導し、屋上の積雪を軽減出来るものである。
【0005】
また、従来例2(図8)は特許文献2として挙げたものであって、図8の断面図に示す如く、笠木と一体のブラケットをパラペット上に固定し、垂直の外壁板と傾斜した内壁板とを補強板部で一体化した断面略三角形の雪庇切笠木をブラケットに係合止着して、パラペットの全長に亘って笠木と一体化したものであり、雪庇切笠木を支持するブラケットを笠木と一体形成しておくことにより、雪庇切笠木の取付けの作業性の工場、及びコストダウンを図ったものである。
【0006】
また、従来例3(図9)は、特許文献3として挙げた雪庇防止笠木であって、風切立上り部と笠木とを単一材で一体作成し、風切立上り部に風抜け孔を穿設したものであり、形状の単純化、小型化、軽量化、取付工事の省力化を図ったものであって、風切立上り部の頂部で風の乱れを起して雪の付着を防いで雪庇を抑制するものである。
【特許文献1】特開2004−27754号公報
【特許文献2】特開2007−321331号公報
【特許文献3】特開2006−328926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来例1(図7)の雪庇防止装置は、全長に亘って断面三角形状構築物となるため、製品は高コストである。
そして、降雪の初期段階では底板と笠木との間の空間から雪を吹き飛ばすが、積雪が進行すれば、雪庇防止装置は雪溜まりのダム機能を奏し、大荷重を受けるため、高強度、高剛性の構築物とする必要があり、設置コストが大となる。
そして、雪庇防止装置は、屋上に壁形態で存在するため、建物の軒高は雪庇防止装置の頂部となり、建物の設計上、各階の階高を圧迫することとなる。
しかも、積雪が高くなれば、該雪庇防止装置は、単にパラペットを高くした機能を奏するのみであるため、雪庇防止装置の頂部での雪庇の形成、及び落下を生ずる。
【0008】
また、従来例2(図8)の雪庇切笠木にあっては、従来例1(図7)と同様に、断面三角形の壁状構築物が屋上に延展する形態となり、該雪庇切笠木は建物の階高の増大となり、各階の階高設計に制約を与える。
そして、該雪庇切笠木は、単に屋上にダムを形成した機能を奏するだけであるので、高い雪溜まりを形成し、該ダム(雪庇切笠木)を超える積雪にあっては、従来例1同様、頂部での雪庇形成、及び雪庇の落下を生ずる。
しかも、雪庇切笠木は、雪溜まりを支承するため、高強度、高剛性に構築する必要があり、構築コストが大となる。
【0009】
また、従来例3(図9)の雪庇防止笠木にあっては、笠木との単一材で成型加工し、板材の風切立上り部を笠木から垂直に立設形成したものであるため、風力を伴なった積雪の水平方向荷重に、構造上、対応困難である。
しかも、風切立上り部の寸法、風抜け孔の形状、構造に関する具体的開示が無いため、風切立上り部は、風抜け孔が小さくて表面の着雪が多くなり、ダム機能を発揮して上端で雪庇を形成するものか、或いは風抜け孔が大きくて風抜け孔自体が雪庇を形成するものかも不明であり、従来例3の雪庇防止笠木は、構造面及び機能面から見て、欠陥があり、多雪地域では到底採用出来ない。
【0010】
本願発明は、これら従来の雪庇防止装置の問題点を解決、又は改善するものであり、雪庇の形成・成長現象を分析し、着雪を抑制し、且つ雪庇の形成も抑制出来る柵を、しかも製作、施工容易に立設する、画期的な雪庇防止構造を開発し、多雪地域での有効な雪庇防止装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、例えば図1に示す如く、建物の屋上外縁上面PTに、支持金具5によって柵3を立設した雪庇防止構造であって、柵3は上端横桟材3Uと下端横桟材3Dとを、多数の雪仕切用の縦桟材3Pでの並列接続によって、各縦桟材3P間に、雪の吹抜けを許容し、且つ雪庇の形成、成長を抑制する縦長の開口部Waを保って一体化したものであり、該柵3を間隔配置した支持金具5に固定し、該支持金具5群を屋上外縁上面PTに立設固定した雪庇防止構造である。
【0012】
この場合、屋上外縁上面PTは、パラペットPを備えた建物にあっては、パラペット上面PTを指し、陸屋根建物にあっては、屋上の外縁上面PTを指すものであり、雪庇発生の軒先部の上面PTを指すものである。
また、上端横桟材3U及び下端横桟材3Dは、雪仕切用の縦桟材3P群を強固に、且つ簡便に取付ければ良く、典型的には、上端横桟材3Uの幅(Wu)及び下端横桟材3Dは、共に幅(Wd)30mmの板材である。
【0013】
また、縦長の開口部Waの幅a1、及び縦桟材3Pの幅a2は、雪庇の形成・成長の抑制に重大な影響を有する要素であり、雪質(乾雪、湿雪)、積雪量等で適正に選択決定すれば良いが、典型的には、開口部Waの幅a1は50mm、縦桟材3Pの幅a2は15mmであり、上端横桟材3Uの上端から下端横桟材3Dの下端までの高さh3、即ち、柵3自体の高さh3は370mmである。
尚、支持金具5は、柵3内への定間隔配置となるため、雪の吹き溜まり発生要因とならないような構造とするのが望ましく、典型的には、雪吹抜け用の開口部Waを、柵3の開口部Waと同一形態で配置したものである。
【0014】
雪庇の形成・成長及び防止の基礎的事項に関しては、北海道立北方建築総合研究所(旭川市)に於いて、最近研究、実験された結果、雪庇は、風下側のパラペットに雪の吹き溜まりが発生し、吹き溜まりがパラペット高を超えると、吹き溜まりの成長と共に風下側へ積雪面が庇状に張出して自重によって垂れ下がり、更なる降雪によって、初期雪庇上に堆積と張出しが重なって雪庇が成長すること。
形成された雪庇は、自重によるクリープ(一定の荷重による変形が時間の経過と共に進行する現象)により垂れ下がること。
降雪時の風向きが一定の地域では、吹き溜まりとクリープが雪庇の成長要因となること。
風上、風下側の雪の吹き溜まりが雪庇形成の主要因である場合は、吹き溜まりが飽和しないように、フェンスを設置するなどして、雪の堆積容量を増大するか、吹き溜まり量を減らす工夫が必要であること。
フェンスを設置する場合は、吹き溜まりがフェンスの高さを超えないようにすること。
雪庇は、屋根上の積雪と結合していると、落下せず成長を続けるため、雪庇と屋根上積雪との結合面積を減らすこと。
等の重要事項が発表された。
【0015】
従って、本発明の雪庇防止構造は、柵3が縦長の開口部Waを備えているため、雪の吹抜けを許容して、柵3の風上側及び屋下側の雪の吹き溜まりを抑制すると共に、各開口部Wa間の縦桟材3Pが、屋上の風上側の積雪層と柵3の風下側、即ち外方の雪の張出し部との結合を雪切り遮断するため、雪庇の形成が抑制出来ると共に、雪庇の成長も抑制出来る。
そして、例え雪庇が生じても、雪仕切板としての各縦桟材の幅a2(標準:15mm)で分割された開口部Waの幅a1(標準:50mm)での各細幅の張出し雪層からの雪庇に過ぎなく、落下の衝撃の大きな、危険な雪庇の形成は抑制出来る。
【0016】
また、本発明の雪庇防止構造にあっては、柵3は、図2に示す如く、下端横桟材3Dが、雪の吹抜けを許容する下方の開口部Wbを形成して配置するのが好ましい。
この場合、開口部Wbは、柵3の風上側と風下側とを連通するため、開口部Wbの高さhbは、大きくて危険な雪庇の形成を抑制する高さとすべきであって、図1に示す如く、笠木2と干渉する場合は、笠木天端水平板2Tからの高さとすべきであり、典型的には、下方の開口部Wbは、高さhbが30mmである。
【0017】
従って、柵3下方の開口部Wbは、降雪の初期段階では、風の吹抜け窓として機能するため、柵3の内側(屋上側)の雪の吹き溜まりの成長を抑制し、例え開口部Wbから積雪層を軒先側に張出しても、薄い層(標準:30mm)の雪庇であって、危険ではない。
そして、下方開口部Wbの上方の下端横桟材3Dはダム機能を奏するため、柵3の縦長開口部Waから雪仕切用の縦桟材3Pで分割された各分割雪層が張出しても、下方開口部Wbの張出し雪と上下間隔を保つ形態となるため、上方の開口部Waが小幅(標準:50mm)であることと相俟って、落下によって人身事故を引き起こすような、危険な雪庇の形成・成長は抑制出来る。
【0018】
また、本発明に用いる柵は、柵3の開口部Waの幅a1が45〜55mmであり、柵3を屋上外縁上面PTに立設した状態での全面積に対し、開口部Wa,Wbの全面積が45〜65%であるのが好ましい。
この場合、柵全面積は、高さh30(標準:420mm)が柵支持金具5の下端から、即ち屋上外縁上面PTから上端横桟材3Uの上端縁までの高さである。
また、縦長の開口部(開口窓)Waの幅a1は、大きくなれば、柵3の風上側と風下側との雪層の結合を生じて張出し雪層の成長を来たす危険があり、小さくなれば、雪庇(張出し雪層)防止効果は大となるが、柵3の風上側での着雪が多くなる。
また、湿雪は落雪よりも、柵3への着雪が大となり、雪層結合も生じ易い。
また、開口率が大であれば、風上側の吹き溜まり抑制効果はあるが、風下側にも雪積層を生ずる。
【0019】
従って、柵3の、雪吹抜け孔として機能し、雪層張出しを生ずる開口部Waの幅a1が45〜55mmであり、且つ柵3の開口率を45〜65%としたため、柵3が降雪の吹き溜まりを生起するダム機能は、通常の風(平均:4m/sec)を伴なう降雪時では、湿雪、乾雪を問わず、開口部の存在しない壁フェンスの場合より大幅に抑制出来、風上側の吹き溜まりを抑制しつつ、風下側での堆雪も実用可能範囲内に抑制出来る。
そして、柵3からの張出し雪層は、例え成長しても、危険な雪庇とならない幅に抑制出来る。
【0020】
即ち、本発明の雪庇防止構造は、風上側での、吹き溜まりによる雪の堆積量が抑制出来ると共に、柵3の開口部Waから張出して発生する雪庇と、屋上積雪との雪の結合面積も減らし、且つ柵の風下側の雪の吹き溜まり層も抑制出来、柵3の外側での、落下すれば人身事故を来たすような、危険な雪庇の形成・成長は抑制出来る。
しかも、柵3の全体形状は、開口率(45〜65%)が高いため、建築上は、柵3は軒高の算定に入ることなく、従来例1や2の如く、壁と見做されることがなく、建物の設計に制約を及ぼすことはない。
【0021】
また、本発明の雪庇防止構造では、柵3は、図6(A)に示す如く、上端横桟材3Uが、ねじ孔H3を備えた垂直横板3Vと上辺3Tと立下り片3Fとで係合溝3Gを構成した板材であり、下端横桟材3D及び縦桟材3Pがねじ孔H3を備えた平板材であり、縦桟材3Pの上端Ptを上端横桟材3Uの係合溝3G内に嵌入して、上端横桟材3Uと、縦桟材3Pと、下端横桟材3Dとを対応ねじ孔H3を介したねじ3N締着により、開口部Waを保って一体化するのが好ましい。
【0022】
この場合、上端横桟材3U及び下端横桟材3Dは、幅寸法が雪止めダム機能を奏するため、上下の枠材としての強度が担保出来れば、幅は小さい方が好ましく、縦桟材3Pは、積雪層を水平方向に分離区分して柵3の風上側と風下側との雪の結合を遮断する機能を奏し、且つ着雪を少なくする幅寸法とすべきであり、典型的には、各桟材3U,3D,3P共、5mm厚のアルミ合金製板材であって、上端横桟材3Uの垂直横板3Vの幅Wv、及び下端横桟材3Dの幅Wdは、共に30mmであり、縦桟材3Pの幅a2は15mmである。
【0023】
従って、上端横桟材3U、下端横桟材3D、及び縦桟材3Pは、板材であるため、製作及び準備が容易であり、各桟材相互のねじ3Nによる組立ても、各板材の面当接でのねじ締着であるため、作業も容易であり、上端横桟材3Uの、係合溝3Gは縦桟材3Pの組付け作業を容易とすると共に、支持金具5の嵌入部を提供し、上辺3T及び立下り片3Fが柵3の上面の補強部を提供すると共に、意匠効果も発揮する。
そのため、製作容易な板材製の柵でありながら、雪庇防止に必要な開口部Wa(標準幅a1:50mm)を備えた、デザイン性に富む雪庇防止柵が得られる。
【0024】
また、本発明の雪庇防止構造に採用する支持金具5は、図5に示す如く、前面の立上り板5Aと、固定用の底板5Bと、両側の傾斜側板5Sとを備え、立上り板5Aが、上端に横上辺5Uを、下端に横下辺5Dを、両側に縦仕切5Pを備えて、中央部には、柵3の開口部Waと整合する縦長開口部Waを形成したものであるのが好ましい。
【0025】
この場合、支持金具5の各板材5A,5B,5Sは、一般肉厚5mmのアルミ合金板で形成すれば良い。
また、支持金具5は、柵3に付設しても、柵3の重要機能、即ち開口部Waによる雪の吹飛ばし機能、及び雪層の、柵3の前後での縦桟材3Pによる雪の結合阻止機能(仕切機能)を阻害しないようにすべきであり、典型的には、縦長開口部Waが幅50mm、高さ(長さ)hwが310mmで、柵3の開口部Waと、同寸、同形状であり、縦仕切5Pの幅WPは、縦桟材3Pの幅a2と同一の15mmである。
また、傾斜側板5Sは、ブレース(斜材)機能の観点から決定すれば良く、典型的には、高さ390mm、底辺長(L5)200mmで、高さ:底辺長は、略2:1であり、底面長さL5を抑えてブレース機能を発揮するものである。
【0026】
従って、支持金具5は、底板5Bを介した屋上外縁部P(パラペット)のコンクリートへの、ボルト5Nによる強固な固定が可能であり、立上り板5Aと両側の傾斜側板5S及び底板5Bの一体化構造によって剛構造体となり、傾斜側板5Sがブレース機能を奏して柵3を強固に支持する。
しかも立上り板5Aの、縦長開口部Waが、柵3の開口部Waと同寸同形状であり、縦仕切5Pが柵の縦桟材3Pと同幅で縦桟材3Pに重合形態で柵3を固定支持するため、支持金具5の付設によって柵3の雪庇防止機能を低減させることがない。
【0027】
そして、該支持金具5を採用すれば、必要に応じて、図6(B)に示す如く、高さh6(標準:600mm)が柵3の高さh30(標準:420mm)より高い角筒のポール6(標準高さh6:600mm)を、図1の如く、支持金具5内に立設して、支持金具5の両側板5Sとねじ6Nで固定し、各ポール上端の丸環6F間にロープを張れば、予想外の多量の降雪があった場合に、柵3より高いポールが建物の外縁の目印となり、墜落事故防止となる。
尚、この場合、角筒のポールには空気孔H6を適切に配置し、支持金具5の開口部Waが、空気吹き抜け機能を喪失しないようにすべきである。
【0028】
また、支持金具5は、図2に示す如く、立上り板5Aの横上辺5Uを上端横桟材3Uの係合溝3Gに嵌入し、両側の縦仕切5Pを柵3の縦桟材3Pに整合当接して、横上辺5Uのねじ孔H3及び横下辺5Dのねじ孔H3を介して柵3と止着保持するのが好ましい。
この場合、立上り板5Aの柵3への付設螺着は、支持金具5の縦仕切5Pを重合する縦桟材3Pの上下のねじ3Nを取外して、縦桟材3Pと縦仕切5Pを重ねて、再度、縦桟材3Pと縦仕切5Pとを、上端横桟材3U及び下端横桟材3Dと、ねじ3Nで積層締着すれば良い。
【0029】
従って、所定の柵3を予め準備しておき、柵の立設の必要な時に、予め準備した支持金具5で簡便に柵3の立設配置が可能となり、柵の保守、管理も容易となる
そして、一定の中心間間隔a3(標準:455mm)で配置する支持金具5の配置部では、支持金具の立上り板5Aが柵3の縦桟材3Pへの積層ねじ締着となるため、十分な強度を発揮し、柵3の重要機能を奏する、雪吹抜け用の縦長の開口部Wa、及び雪層の結合を遮断する雪仕切用縦桟材3Pの機能に支障を生ずること無く、柵3が簡便に立設固定出来る。
【0030】
また、支持金具5は、図5に示す如く、両側板5S底辺に前後の溝5Gを形成し、底板5Bでは、溝5G対応部を段差上辺5Eとし、段差上辺5Eに配置したボルト挿入用孔H5を介して外縁上面PTにボルト締着するのが好ましい。
この場合、前後の段差上辺5E自体は、前後幅30mm、高さ5mmであって、前後段差上辺5E間の中心間距離90mmであり、先端側、即ち屋上内側の段差5Eは、底板前端から30mm位置に配置すれば良い。
【0031】
従って、支持金具5は、慣用の屋上防水層7Aを備えた屋上外縁上面PTへの底板5Bによる固定となるが、側板5Sの下端縁には前後の溝5Gが、底板5Bの溝5G対応部には段差上辺5Eが存在するため、支持金具5の防水層7A上面への全面当接は避けられて、屋上外縁上面PT、即ち防水層7A上面に不陸が存在していても、支持金具底板5Bは不陸を吸収して着座出来、ボルト締着も段差上辺5Eからの弾性変位を伴なった強固な締着固定となる。
しかも、屋上外縁上面PT上の防水層7Aの損傷も少なく実施出来る。
尚、支持金具の一方の側板5Sの下端に、図5(C)に示す如く、水抜き孔5Wを配置しておけば、支持金具5内の水抜きが出来る。
【0032】
また、本発明の柵3は、縦長の開口部Waの幅a1が45〜55mmであって、縦桟材3Pの幅a2が10〜20mmであり、下方の開口部Wbの高さh2を25〜35mmで立設するのが好ましい。
この場合、柵3の縦長の開口部Wa、及び柵3下方の横方向に延展した開口部Wbは、共に強風(平均:4m/sec)を伴なった雪が吹き抜け、柵3の風上での雪溜まりを抑制するものであるが、下方の開口部Wbは、柵3の風上側の雪層と風下側の雪層とを結合する形態であるため、危険な厚い積層張出しは抑制する必要がある。
また、柵3の縦長の開口部Waは、開口部幅a1で、風上側の雪層と風下側の雪層とを結合する形態であるため、柵3からの広幅の積雪張出しを抑制する必要がある。
【0033】
従って、下方開口部Wbは、横方向に各支持金具5間に亘って柵3の前後を連通してはいるが、高さhbが25〜35mmであるため、風を伴なった降雪の初期段階では、雪を外方に吹き飛ばして柵3の内側(風上側)の雪溜まりの形成を抑制し、例え、下方開口部Wbから雪層が柵外へ張出しても、開口部Wbの高さhbで抑制された薄い積雪層であるため、危険な雪庇の形成とならない。
また、雪が堆積して柵3の縦長の開口部Waから、例え雪層が張出しても、張出し雪層は開口部Waの幅の規制の下での張出しであり、各張出し雪層は、幅10〜20mmの縦桟材3Pで分割された形態であるため、危険な雪庇の形成・成長とならない。
【0034】
そして、下方の横長の開口部Wb、及び上方の縦長の開口部Waからの積雪の張出しは、下方開口部Wb上面を規定する幅Wd(標準:30mm)の下端横桟材3D、及び縦長開口部Wa間の幅a2(標準:15mm)の定間隔並列の縦桟材3Pが、柵3の内側(風上側)の雪溜まりと柵3の外側(軒先側)の張出し雪との結合を遮断しているため、柵3の外側への張出し雪の危険な雪庇への成長は抑制される。
尚、縦長開口部Waの幅a1、横長開口部Wbの高さhb及び縦桟材3Pの幅a2は、柵設置地域に応じて、即ち、降雪量、風の影響、雪質を総合勘案して、適宜規定範囲内で選択決定すれば良く、本発明は、日本の多雪地方での有効な雪庇防止技術を提供する。
【0035】
また、本発明は、図1に示す如く、建物の外壁Wが通気性外断熱複合パネル9を備え、前面の立下り板2Fと、天端水平板2Tと、天端水平板2Tから立下り辺2Pを介して後方に延出した下段水平板2Bとを備えた笠木2を、複合パネル9のセメント板9A上端に止着した固定金具4での前端係止と、下段水平板2Bの屋上外縁上面PTへのボルト2Nによる固定との、前後2点支持で配置し、柵3に取付けた支持金具5の底板5Bを、笠木2の下段水平板2B上から外縁上面PTの防水層7Aに亘って着座固定するのが好ましい。
【0036】
この場合、通気性外断熱複合パネル9は、笠木2の前端を係止する固定金具4が止着出来る通気性複合パネルであれば良く、典型的には、図3に示す如く、縦方向の通気用条溝ar群を内面に備えたセメント板(外装下地材)9Aと発泡プラスチック断熱層9Bとを層着した複合パネルである。
また、笠木2は、本出願人が出願(特願2002−246382)し、特許(特許第3727054号)された、図4の笠木を採用すれば良く、また、固定金具4は、複合パネルのセメント板9A上に固定して、笠木2を、複合パネル9の通気用条溝arからの外方への排気を担保して係止出来れば良く、典型的には、図4(C)に示す如く、下段水平片4Bと垂直片4Fと上段水平片4Tから成り、下段水平片4Bには、セメント板上端とねじ固定するためのねじ孔H4を備えた小片の金具である。
【0037】
従って、笠木2は、屋上外縁上面PTが、パラペットPでも、平坦な陸屋根でも、下段水平板2Bがコンクリート上面に載置出来れば、取付け可能であり、しかも前後の2点支持となるため、例え強風に煽られても、浮揚、変形、損傷を生じない強固な配置が可能となり、セメント板(外装下地材)を備えた、通気性外断熱複合パネルを張着した外断熱建物への適用が可能であり、本発明の雪庇防止構造は、該笠木2を備えた建物に好適に実施出来る。
【0038】
そして、柵3の立設固定は、笠木2の下段水平板2B上に載置した形態の固定となるため、笠木2に対する柵3の配置部位が自在となり、笠木2を配置した外断熱建物の、例えば屋上、風下側等、雪庇の生じ易い、屋上外縁上面PT上のみに雪庇防止柵3を立設しても、建物全周の、笠木2の外観の同一性が保てる。
そのため、本発明の雪庇防止構造は、現在普及しつつある、特許第3727054号の笠木を適用した外断熱建築物全てに適用出来、省エネルギー性に優れた外断熱建物に、簡単な施工による柵3の付設によって雪庇が防止出来るため、降雪地方での外断熱建物の普及に貢献出来る。
【発明の効果】
【0039】
本発明の雪庇防止構造は、柵3が縦長の開口部Waを備えているため、雪の吹き抜けを許容して、柵3の風上側及び風下側、即ち屋上側及び軒先側の、雪の吹き溜まりを抑制すると共に、各開口部Wa間の縦桟材3Pが屋上の積雪層と柵3の外方の雪の張出し部との結合を雪切り遮断するため、軒先での雪庇の形成が抑制出来、雪庇の成長も抑制出来る。
【0040】
そして、軒先に、例え雪庇が生じても、雪仕切板としての縦桟材3Pの幅(標準:15mm)で分割された開口部Waの幅(標準:50mm)での、各細幅の張出し雪層からの雪庇に過ぎなく、落下の衝撃の大きな、危険な雪庇の形成、及び成長は抑制出来る。
【0041】
また、柵は、上端横桟材3U、下端横桟材3D及び縦桟材3Pの組立て構造であるため、製作容易であり、柵3の立設も、支持金具5を柵3に取付け、該支持金具5を屋上外縁上面PTにボルト等で固定するだけであるため、雪庇防止構造は、建物の新築時での構築も、既設建物への構築も可能である。
【0042】
従って、本発明の雪庇防止構造は、多雪地方での実用性の高い、雪庇防止手段を提供する。
しかも、雪庇防止用の柵3は、細幅(標準:15mm)の縦桟材3P群間に、比較的広幅(標準:50mm)の縦長開口部Wa群を備えて開口率が高い(標準:55%)ため、建築設計上は階高に算定されず、雪庇防止柵3の施工設計が自由であるため、有効な雪庇防止手段としての普及が期待出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
〔柵3(図2、図6)〕
柵3は、上端横桟材3Uと下端横桟材3Dとを多数の縦桟材3Pの並列接続で形成するものであって、上端横桟材3U、下端横桟材3D及び縦桟材3Pは、共に一般肉厚が5mm厚のアルミ合金押出成形品である。
図6(A)に示す如く、上端横桟材3Uは、断面形状が幅(Wv)30mmの垂直横板3V、幅(wt)20.5mmの上辺3T、幅(Wf)12mmの立下り片3Fから成り、上辺3T下部に係合溝3Gを備えた長尺(標準:3000mm)板製品であり、下端横桟材3Dは、幅(Wd)が30mmの長尺(標準:3000mm)板製品であり、縦桟材3Pは、幅(a2)が15mm、長さ(高さ)hpが36.5mmの板製品である。
【0044】
また、上端横桟材3Uの垂直横板3Vには、下辺から10mm上方位置にねじ孔H3を65mm間隔で穿孔し、下端横桟材3Dには、幅中央にねじ孔H3を65mm間隔で穿孔し、縦桟材3Pには、幅中央で、下端から15mm上方位置と、上端から15mm位置、即ち、縦桟材3Pを上端横桟材3Uの係合溝3Gに嵌入した際に、上端横桟材のねじ孔H3と整合する位置、とに、ねじ孔H3を穿設する。
【0045】
そして、図2に示す如く、幅a2(15mm)の縦桟材3Pを、50mm(a1)のスペースを保って、上端を上端横桟材の係合溝3Gに嵌合して、相互のねじ孔H3を介してねじ3Nで固定し、下端を横桟材3Dに相互のねじ孔H3を介してねじ3Nで固定する。
従って、上端横桟材3U、下端横桟材3D、縦桟材3P相互がねじ3Nで固定一体化した、高さh3が370mm、長さが3000mmで、15mm幅(a2)の各縦桟材3P間に、幅(a1)が50mm、高さhwが310mmの縦長の開口部Waを備えた柵3が準備出来る。
【0046】
〔支持金具5(図5)〕
図5(A)は支持金具5の全体斜視図、図5(B)は、(A)の矢印B視正面図、図5(C)は縦断面図、図5(D)は上面図である。
支持金具5は一般肉厚5mmのアルミ合金成形品であり、全体形状は、高さh5が410mm、幅W5が80mm、前後長さL5が200mmである。
そして、幅W5(80mm)、高さh5(410mm)の立上り板5Aに、長さL5(200mm)の底板5Bが、同幅(80mm)のアングル板として延出し、立上り板5Aは、図5(B)に示す如く、両側に、柵の縦桟材3Pと同幅(15mm)の、縦仕切5Pと、柵3の開口部Waと同一形状の、幅50mm、高さ390mmの開口部Waを備え、上端に横上辺5Uを、下端に横下辺5Dを備え、横上辺5U及び横下辺5Dには、柵3の上端横桟材3U及び下端横桟材3Dのねじ孔H3対応位置に、ねじ孔H3を備えている。
【0047】
また、立上り板5Aと底板5Bとを、立上り板5Aの横上辺下端位置から底板5B先端に亘って接続補強する傾斜側板5Sを両側に備え、底板5Bは両側傾斜側板5Sに亘って前後幅30mm、高さ5mmの段差上辺5Eをスペース60mm保って、前後2個を前側、即ち底板5Bの延出先端側の段差上辺5Eが先端から30mmの位置で配置し、両側板5Sの段差上辺対応部は溝5Gとし、段差上辺5Eには横長のボルト挿入用孔H5を配置している。
また、図5(C)に示す如く、一方の傾斜側板の下部の、立上り板5Aと後側段差上辺5Eとの間、及び後側段差上辺5Eと前側段差上辺5Eとの間には、半円形の水抜き孔5Wを穿設し、両側板5Sの、立上り板5A近傍の下部、及び中間部には、各1対のボルト孔Hbを配置しておく。
【0048】
〔複合パネル9(図3)〕
複合パネル9は、本出願人が提案した特開2007−143690号(特許第4053561号)のパネルを採用する。
図3(A)は複合パネル9の斜視図であって、複合パネル9は、外装下地材としてのセメント板9Aが内面に多数の通気用条溝arを平行縦設し、発泡プラスチックの断熱層9Bに、セメント板9Aを、通気用条溝arが潰れないように層着一体化した通気性外断熱複合パネルである。
従って、該通気性外断熱複合パネル9を、外壁コンクリートの外型枠として外壁Wを形成すれば、外壁Wは、下端の水切から上端の笠木まで、ドラフト空気流の貫流する外断熱コンクリート壁Wとなる。
【0049】
〔笠木2(図4)〕
笠木2は、本出願人が特願2002−246382号として提案した、特許第3727054号の笠木を採用する。
図4(A)は、採用笠木2の全体斜視図であり、図4(B)は固定金具4の使用状態説明図であり、図4(C)は固定金具4の斜視図である。
笠木2は、一般肉厚が2mmのアルミ合金押出成形品の長尺物(標準:3000mm)であって、図4(A)に示す如く、高さh2が45mmの立下り板2Fと、上面の幅WTが75mmの天端水平板2Tと、天端水平板2Tの後部から高さd12が16mmの立下り辺2Pと、立下り辺2Pの下端から、前方に幅WB´(60mm)の突片が突出し、後方に幅WB(115mm)延びる下段水平板2Bとを備え、立下り板2Fは、下端では、前方に下傾する7mm幅の水切り斜片2Sと、後方への5mm幅の雨水上昇阻止及び補強の突片2Eを、上端では、天端水平板2Tの下面との間に係合溝2Gを形成する突片2Cを備えたものであり、全高h2が45mm、全幅W2が190mmである。
【0050】
また、該笠木2の係止用固定金具4は、2mm厚のアルミ合金製品であって、図4(C)に示す如く、幅(W4´)が12mmの上段水平片4Tと、高さ(h4)が18mmの垂直片4Fと、幅(W4)が35mmの下段水平片4Bを備えたものであって、長さ(L4)が30mmの屈曲板片である。
そして、下段水平片4Bの中央には、幅4mm、長さ8mmの長孔H4を前後方向に備えており、図4(B)に示す如く、複合パネル9のセメント板9A上端の複合パネル長手方向の適所にねじ4Nで固定し、上段水平片4Tの先端を笠木2の前端内側の係合溝2Gに嵌入して笠木2の前端縁を係止し、垂直片4Fで複合パネルの通気用条溝arからの上昇空気の、笠木立下り板2Fの内側から外方への排気スペースを担保するものである。
【0051】
〔ポール6(図6)〕
図6(B)はポール正面図、図6(C)はポール上面図である。
ポール6は、柵支持金具5の両傾斜側板5S間の前方に立設配置して、予測外の多量の降雪があった場合に、建物の端縁を示して墜落事故を防止するものである。
図6(B),(C)に示す如く、ポール6はアルミ製2mm厚の角パイプであって、前後側面6Rの幅L6が60mm、左右側面6Lの幅W6が45mmで、高さh6が600mmであり、上辺6Tは5mm厚板を、上辺6Tには、ロープ挿通用の径30mmの丸環6Fを備え、各側面6L,6Rには2列に空気孔H6を配置したものである。
【0052】
〔笠木2の取付け(図3(B))〕
図3(B)は外断熱コンクリート建物に笠木を取付けた状態説明図であって、外断熱建物は、外断熱複合パネル9を、慣用の手法でコンクリート外壁の型枠として採用して外壁Wと一体化する。
次いで、図4(B)に示す如く、固定金具4を、下段水平片4Bのねじ4Nによって、パネルセメント板9A上端に適宜間隔で配置固定し、笠木2は、前端内側の係合溝2Gを、固定金具4の上段水平片4Tに係止し、次いで笠木2の下段水平板2Bを、複合パネル9上端からパラペットPの上面の防水層7A上に亘って配置し、ボルト2NでパラペットPのコンクリートに固定する。
【0053】
〔柵3の立設(図2)〕
図2(A)は柵3の立設状態斜視図、図2(B)は柵3の立設状態正面図、図2(C)は柵3の立設状態上面図である。
図2(B),(C)に示す如く、長尺物(標準:3000mm)の柵3は、間隔a3(455mm)で配置した支持金具5で立設固定するため、予め準備した柵3の支持金具5の固定部では、縦桟材3Pの上下ねじ3Nを、一度取外して、支持金具5の縦仕切(幅:15mm)5Pを縦桟材3P(幅:15mm)と重ねて、再度ねじ3Nによって、上端横桟材3Uのねじ孔H3と、縦桟材3P上方のねじ孔H3と、支持金具5の縦仕切5P上方のねじ孔H3とを介して重合一体化し、下端横桟材3Dと縦桟材3P下端と支持金具5の縦仕切5P下端も、同様にねじ3Nで重合一体化する。
【0054】
次いで、支持金具5を、図2(A),(C)に示す如く、立上り板5Aの前面下部を笠木2の天端水平板2T後縁に当接して、図1に示す如く、支持金具5の底板を、段差上辺5Eのボルト挿入用孔H5からのボルト5NのパラペットPのコンクリートへの打込みで固定する。
この場合、ボルト5Nは、引張荷重340kgf/1本の、径5mmのサンコーテクノ(株)製のPレスアンカー(商品名)を採用する。
そして、支持金具底板5Bの載置取付けに際しては、傾斜側板5Sが溝5Gを、底板5Bが溝5G対応の段差上辺5Eを備えているため、取付面の若干の不陸には対応出来るが、必要に応じて、底板5B下面に、ゴム片7E等の小片を介在すれば良い。
【0055】
従って、得られた雪庇防止構造にあっては、柵3は、高さ(hw)310mmで、幅a1(50mm)の縦長の開口部Wa群を幅a2(15mm)の縦桟材3P群間に保持し、且つ、支持金具5の部位にあっても、同形状の開口部Waを縦桟材3Pと同一幅の縦仕切5P間に保持し、各支持金具5間では、下端横桟材3Dと笠木天端水平板2T上面との間に、高さhbが30mmの横長開口部Wbを備えた構造となり、柵3のパラペット上面の防水層7Aから上辺3Tまでの高さh30が420mmで立設されているため、屋上での積雪時に、雪の吹き溜まりの生ずる柵内側(風上側)から柵外側への積雪層の結合を遮断し、柵外側、即ち軒先、での雪庇の形成・成長が好適に抑制出来、本発明の所期の目的が達成出来た。
【0056】
尚、必要に応じて、図1に示す如く、ポール6を、支持金具5の両側板5S間に、立上り板5Aに当接形態で嵌入立設し、両側板5Sのボルト孔Hbを介してポール6の下部と中間部をねじ止めし、各ポール6の丸環6F間に亘ってロープ(図示せず)を張れば、ポール6が目印となって、屋上での除雪作業員の墜落事故防止にも役立つ。
また、支持金具5の傾斜側板5S下端には、水抜き孔5Wがあるため、支持金具底板5Bの段差上辺5E間に生ずる融雪水も側方に排除出来た。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の縦断側面図である。
【図2】柵の配置説明図であって、(A)は一部縦断斜視図、(B)は屋上側から見た正面図、(C)は上面図である。
【図3】複合パネル説明図であって、(A)は通気性外断熱複合パネルの斜視図、(B)は複合パネルに笠木を配置した状態の縦断側面図である。
【図4】笠木の説明図であって、(A)は笠木の斜視図、(B)は笠木固定金具の使用状態図、(C)は笠木固定金具の斜視図である。
【図5】柵支持金具の説明図であって、(A)は斜視図、(B)は正面図、(C)は縦断側面図、(D)は上面図である。
【図6】本発明の使用部材説明図であって、(A)は柵の分解斜視図、(B)はポールの正面図、(C)はポールの上面図である。
【図7】従来例1の説明図であって、(A)は縦断側面図、(B)は分解斜視図である。
【図8】従来例2の縦断側面図である。
【図9】従来例3の使用状態斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
2 笠木
2B 下段水平板
2B´,2C,2E 突片
2F 立下り板
2G 係合溝
2N,5N,6N ボルト
2P 立下り辺
2S 水切り斜片
2T 天端水平板
3 柵
3D 下端横桟材
3F 立下り片
3G 係合溝
3N,4N ねじ
3P 縦桟材
3T 上辺
3U 上端横桟材
3V 垂直横板
4 固定金具
4B 下段水平片
4F 垂直片
4T 上段水平片
5 支持金具
5A 立上り板
5B 底板
5D 横下辺
5E 段差上辺(段差)
5G 溝
5P 縦仕切
5S 傾斜側板
5U 横上辺
5W 水抜き孔
6 ポール
6F 丸環
6L,6R 側面
6T 上辺
7A,7B,7C 防水層
7E ゴム片
8,9B 断熱層
9 通気性外断熱複合パネル(複合パネル)
9A セメント板
10 外装材
ar 通気用条溝
f 空気流
H3 ねじ孔
H5 ボルト挿入用孔
H6 空気孔
Hb ボルト孔
P パラペット
PT 屋上外縁上面(パラペット上面)
Pt 上端
S 屋上床スラブ
W コンクリート外壁(外壁)
Wa,Wb 開口部
Wf 壁表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋上外縁上面(PT)に、支持金具(5)によって柵(3)を立設した雪庇防止構造であって、柵(3)は上端横桟材(3U)と下端横桟材(3D)とを、多数の雪仕切用の縦桟材(3P)での並列接続によって、各縦桟材(3P)間に、雪の吹抜けを許容し、且つ雪庇の形成、成長を抑制する縦長の開口部(Wa)を保って一体化したものであり、該柵(3)を間隔配置した支持金具(5)に固定し、該支持金具(5)群を屋上外縁上面(PT)に立設固定した雪庇防止構造。
【請求項2】
柵(3)は、下端横桟材(3D)が、雪の吹抜けを許容する下方の開口部(Wb)を形成して配置した、請求項1の雪庇防止構造。
【請求項3】
柵(3)の開口部(Wa)の幅(a1)が45〜55mmであり、柵(3)を屋上外縁上面(PT)に立設した状態での柵全面積に対し、開口部(Wa,Wb)の全面積が45〜65%である、請求項2の雪庇防止構造。
【請求項4】
柵(3)は、上端横桟材(3U)が、ねじ孔(H3)を備えた垂直横板(3V)と上辺(3T)と立下り片(3F)とで係合溝(3G)を構成した板材であり、下端横桟材(3D)及び縦桟材(3P)がねじ孔(H3)を備えた平板材であり、縦桟材(3P)の上端(Pt)を上端横桟材(3U)の係合溝(3G)内に嵌入して、上端横桟材(3U)と、縦桟材(3P)と、下端横桟材(3D)とを対応ねじ孔(H3)を介したねじ(3N)締着により、開口部(Wa)を保って一体化した、請求項1乃至3のいずれか1項の雪庇防止構造。
【請求項5】
支持金具(5)は、前面の立上り板(5A)と、固定用の底板(5B)と、両側の傾斜側板(5S)とを備え、立上り板(5A)が、上端に横上辺(5U)を、下端に横下辺(5D)を、両側に縦仕切(5P)を備えて、中央部には、柵(3)の開口部(Wa)と整合する縦長開口部(Wa)を形成したものである、請求項1乃至4のいずれか1項の雪庇防止構造。
【請求項6】
支持金具(5)は、立上り板(5A)の横上辺(5U)を上端横桟材(3U)の係合溝(3G)に嵌入し、両側の縦仕切(5P)を柵(3)の縦桟材(3P)に整合当接して、横上辺(5U)のねじ孔(H3)及び横下辺(5D)のねじ孔(H3)を介して柵(3)と止着保持した、請求項5の雪庇防止構造。
【請求項7】
支持金具(5)は、両側板(5S)底辺に前後の溝(5G)を形成し、底板(5B)では、溝(5G)対応部を段差上辺(5E)とし、段差上辺(5E)に配置したボルト挿入用孔(H5)を介して外縁上面(PT)にボルト締着した、請求項5又は6の雪庇防止構造。
【請求項8】
柵(3)は、縦長の開口部(Wa)の幅(a1)が45〜55mmであって、縦桟材(3P)の幅(a2)が10〜20mmであり、下方の開口部(Wb)の高さ(h2)を25〜35mmで立設した、請求項2乃至7のいずれか1項の雪庇防止構造。
【請求項9】
建物の外壁(W)が通気性外断熱複合パネル(9)を備え、前面の立下り板(2F)と、天端水平板(2T)と、天端水平板(2T)から立下り辺(2P)を介して後方に延出した下段水平板(2B)とを備えた笠木(2)を、複合パネル(9)のセメント板(9A)上端に止着した固定金具(4)での前端係止と、下段水平板(2B)の屋上外縁上面(PT)へのボルト(2N)での固定との、前後2点支持で配置し、柵(3)に取付けた支持金具(5)の底板(5B)を、笠木(2)の下段水平板(2B)上から外縁上面(PT)の防水層(7A)に亘って着座固定した、請求項1乃至8のいずれか1項の雪庇防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−287366(P2009−287366A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144333(P2008−144333)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(396027108)株式会社テスク (68)
【Fターム(参考)】