説明

電力ケーブル用接続装置及びその組立方法

【課題】低コストで造れて、外径寸法を小さく抑えられ、接続作業を容易に行う事ができ、接続部の抵抗を低く抑える事ができ、しかも、接続部の機械強度を十分に確保する。
【解決手段】それぞれが導電材製である、第一の接続端子2bと、第二の接続端子3bと、接続筒10aと、ロックナット11と、1対のばね座金12a、12bとから成る。前記第一の接続端子2b側に設けた先端側円柱部25と、前記第二の接続端子3b側に設けた位置決め凹孔26との嵌合に基づいて、これら両接続端子2b、3b同士の心合わせを行う。そして、このうちの第一の接続端子2bに設けた雄ねじ部15a及び第二の接続端子3bに設けたねじ杆部19aを、前記接続筒10aに設けたねじ孔21aに螺合し更に締め付ける。更に、このねじ杆部19aに螺合した前記ロックナット11も締め付ける。この状態で、前記両ばね座金12a、12bを強く圧縮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種機械装置に電力を供給する為の電力ケーブルの端部同士を、電気的且つ機械的に接続する為の接続装置及びその組立方法の改良に関する。具体的には、外径寸法を小さく抑えられる構造で、接続作業を容易に行え、且つ、接続部の抵抗を低く抑える事ができ、しかも、接続部の機械強度を十分に確保できる電力ケーブル用接続装置及びその組立方法を実現するものである。
【背景技術】
【0002】
各種工場や各種工事現場等で各種機械装置に電力を供給する為の、或は大規模ビルディングの配線として利用される電力ケーブルの端部同士は、銅系合金等の電気抵抗の低い金属により造った接続端子を備えた接続装置により接続する必要がある。電力ケーブルは、例えば工場のライン変更や工事等の進捗状況、或はビルディングの改装等に応じて接続状態を変更する必要がある為、接続作業を容易に行える構造である事が好ましい。又、送電ロスを低く抑える為に接続部の電気抵抗を低く抑える必要がある事は勿論、前記電力ケーブルに引っ張り方向の力が加わった場合にも外れない様に、十分な機械的強度(特に引っ張り強度)を有する事が必要である。この様な要求を満たす電力ケーブル用接続装置として、例えば特許文献1に記載された構造が知られている。
【0003】
[従来技術の説明]
図6〜7は、この特許文献1に記載された、従来から知られている電力ケーブル用接続装置の1例を示している。この従来構造は、1対の電力ケーブル1a、1b同士を、第一、第二の接続端子2、3と袋ナット4とにより接続するものである。これら両接続端子2、3は、それぞれ圧縮端子と呼ばれるもので、それぞれの基半部に前記両電力ケーブル1a、1bを構成する導体5a、5bを挿入した状態でこの基半部の直径を縮め、前記両電力ケーブル1a、1bの端部と前記両接続端子2、3とを、電気的且つ機械的に接続している。これら両接続端子2、3は、それぞれの先半部に形成した挿入孔6と挿入杆部7とを嵌合させた状態で組み合わせ、前記袋ナット4により、互いに非分離に結合している。前記挿入杆部7の基部にはゴム製のスペーサを外嵌して、温度変化に伴う寸法変化を吸収可能としている。更に、接続部の周囲を、環状の絶縁ゴム8a、8b、及び、絶縁シート9により覆って、この接続部を絶縁している。
【0004】
上述の様な従来構造の場合、前記袋ナット4を締め付けたとしても、前記両接続端子2、3の表面同士が強く押し付けられる事はない。これら両接続端子2、3同士の間で電力を送る部分は、主として前記挿入孔6と前記挿入杆部7との嵌合部に存在する接触子の弾性によるが、この嵌合部に組み込まれる接触子の弾性に依存して大きな電力を送る為には、この嵌合部、延いては前記両接続端子2、3の直径を大きくする必要があり、電力ケーブル用接続装置の小型化の面から不利になる。
【0005】
[先発明の説明]
この様な従来技術が有する問題を解決し、外径寸法を小さく抑えられる構造で、接続作業を容易に行え、且つ、接続部の抵抗を低く抑える事ができる電力ケーブル用接続装置として、特願2009−123885に開示された発明がある。本発明は、この先発明を改良したものであり、この先発明と共通する部分が多い為、先ず、この先発明に係る電力ケーブル用接続装置及びその組立方法に就いて、図8〜13により説明する。この先発明に係る電力ケーブル用接続装置は、図8に示す様に、第一、第二の接続端子2a、3aと、接続筒10と、ロックナット11と、それぞれが弾性環状部材である、1対のばね座金12a、12bとから成る。これら各部材2a、3a、10、11、12a、12bは、それぞれが、銅又は銅系合金等の電気抵抗の低い金属製である。又、前記両ばね座金12a、12bは、或る程度の弾性を有する合金製としている。この為に、必要に応じて、これら両ばね座金12a、12bを、燐青銅製、或いは、鉄系合金製とする事もできる。
【0006】
このうちの第一の接続端子2aは、図9に示す様に、第一の接続部13と、挿入杆部14と、雄ねじ部15と、第一の係止部16とを備える。
このうちの第一の接続部13は、図8に鎖線で示した、互いに接続すべき1対の電力ケーブル1a、1bのうちの一方の電力ケーブル1aを構成する導体5aの端部を接続固定する為のものである。図示の先発明の構造の場合、前記第一の接続部13は、前述した従来構造に於ける第一、第二の接続端子2、3の基半部と同様、圧縮端子と呼ばれるもので、中心部に、基端面{図9の(B)の左端面}の中央部に開口する、有底の円孔17aを有する。この様な第一の接続部13と前記導体5aの端部とを接続するには、予め前記電力ケーブル1aの絶縁層の端部を除去する事により露出させた前記導体5aの端部を、前記円孔17a内に挿入する。そして、前記第一の接続部13を、その外径側から圧縮方向の力を加える事により、塑性変形させつつ直径を縮めて、前記導体5aと前記第一の接続端子2aとを、電気的且つ機械的に接続する。
【0007】
又、前記挿入杆部14は、前記第一の接続端子2aの先半部{図9の(B)の右半部}に設けられたもので、図示の先発明の構造の場合には、円杆状に形成している。
又、前記雄ねじ部15は、前記挿入杆部14の軸方向中間部で、前記第一の接続部13に近い基端寄り{図9の(B)の左端寄り}部分を除いた部分に設けられている。前記雄ねじ部15の外径(山径及び谷径)は、前記挿入杆部14の外径よりも大きい。
更に、前記第一の係止部16は、前記第一の接続端子2aの回転を阻止する為の工具であるスパナ或はパイプレンチ等を係止する為、前記第一の接続部13の先端部{図9の(B)の右端部}外周面に設けられている。
【0008】
又、前記第二の接続端子3aは、図10に示す様に、第二の接続部18と、ねじ杆部19と、第二の係止部20とを備える。
このうちの第二の接続部18は、互いに接続すべき前記両電力ケーブル1a、1bのうちの他方の電力ケーブル1bの導体5bの端部を接続固定する為のもので、前記第二の接続端子3aの基端部{図10の(A)の右端部}に設けられている。この様な前記第二の接続部18も、前記第一の接続部13と同様の、圧縮端子と呼ばれる構造を採用している。即ち、この第二の接続部18の中心部に円孔17bを形成し、この円孔17b内に、前記導体5bの端部で絶縁層から露出した部分を挿入可能としている。
又、前記ねじ杆部19は、中間部乃至先半部に設けられている。このねじ杆部19の外周面に形成した雄ねじ部の仕様(ピッチ円直径、ピッチ)は、前記雄ねじ部15の仕様と同じである。
更に、前記第二の係止部20は、前記第二の接続端子3aの回転を阻止する為の工具であるスパナ、パイプレンチ等を係止する為、前記第二の接続部18の基端部{図10の(A)の左端部}外周面に設けられている。
【0009】
又、前記接続筒10は、図11に示す様に、ねじ孔21と、第三の係止部22とを備える。このうちのねじ孔21は、前記雄ねじ部15及び前記ねじ杆部19を螺合させる為のもので、前記接続筒10の中心部に、この接続筒10を軸方向に貫通する状態で設けられている。又、前記第三の係止部22は、この接続筒10を回転させる為の工具であるスパナ、パイプレンチ等を係止する為、この接続筒10の中間部外周面に設けられている。
【0010】
又、前記ロックナット11は、前記ねじ杆部19に螺着されている。
又、前記両ばね座金12a、12bのうちの一方のばね座金12aは、図12に示す様に、前記挿入杆部14の基端寄り部分、即ち、前記第一の接続部13と前記雄ねじ部15との間部分に外嵌している。これに対して、他方のばね座金12bは、図13に示す様に、前記ねじ杆部19のうちで前記ロックナット11よりも先端寄り部分に外嵌している。
【0011】
そして、図8に示す様に、前記雄ねじ部15を前記ねじ孔21に螺合し更に締め付ける事により、前記第一の接続部13の先端面と前記接続筒10の一端面との間で、前記一方のばね座金12aを圧縮している。又、前記ねじ杆部19を前記ねじ孔21に、このねじ杆部19の先端面が前記挿入杆部14の先端面に突き当たる迄螺合し更に締め付けている。更に、前記ロックナット11を前記接続筒10の他端面に向けて締め付ける事により、これらロックナット11と接続筒10の他端面との間で、前記他方のばね座金12bを圧縮している。
【0012】
上述の様な構造を有する電力ケーブル用接続装置は、次の様な手順で組み立てる。即ち、図12に示す様に、予め前記第一の接続端子2aの前記挿入杆部14の基端寄り部分に前記一方のばね座金12aを外嵌しておく。且つ、図13に示す様に、予め前記第二の接続端子3aの前記ねじ杆部19の基端部に前記ロックナット11を、中間部乃至先端部に前記接続筒10を、それぞれ螺着すると共に、これらロックナット11と接続筒10との間に前記他方のばね座金12bを挟持しておく。図13に示す様に、前記各部材3a、10、11、5bを組み合わせた状態で、前記ねじ杆部19の先端部は、この接続筒10の端部開口から僅かに突出するか、或いは、この端部開口よりも内側(この接続筒10の軸方向中間寄りに凹んだ位置)に存在する(前記ねじ杆部19が図示の例よりも短い場合)。
【0013】
そこで、図12に示した第一のユニット28と図13に示した第二のユニット29とを、互いに同心に配置した状態のまま互いに近づけ合う。前記ねじ杆部19の外周面に形成したねじ山の位相と、前記雄ねじ部15を構成するねじ山の位相とを規制した場合には、前記挿入杆部14の先端面と前記ねじ杆部19の先端面とを突き当てる。そうでない場合には、これら両先端面同士を近接対向させる。次いで、これら両先端面同士を突き当てた状態、或いは近接対向させた状態から、前記接続筒10を回転させ、この接続筒10を前記挿入杆部14に向けて移動させる。更に、前記ねじ孔21と前記雄ねじ部15とを螺合させ、更に締め付ける。この締め付け作業は、前記第一の係止部16に係止したスパナにより前記第一の接続端子2aの回転を阻止しつつ、前記第三の係止部22に係止したスパナにより、前記接続筒10を回転させる事により行う。そして、前記接続筒10の一端面と前記第一の接続部13の先端面との間で、前記一方のばね座金12aを強く圧縮する。
【0014】
次いで、前記ロックナット11を回転させつつ前記接続筒10に向け移動させ、更に締め付ける。この締め付け作業は、前記第二の係止部20に係止したスパナにより前記第二の接続端子3aの回転を阻止しつつ、前記ロックナット11に係止したスパナにより、このロックナット11を回転させる事により行う。そして、このロックナット11と前記接続筒10の他端面との間で、前記他方のばね座金12bを強く圧縮する。
【0015】
前述の様に構成する先発明に係る電力ケーブル用接続装置によれば、特殊な形状を有する部品を使用せず、低コストで造る事ができる。即ち、この電力ケーブル用接続装置を構成する第一の接続端子2aと、第二の接続端子3aと、接続筒10と、ロックナット11と、1対のばね座金12a、12bとは、何れも、単純な形状を有する為、何れも加工が容易であって、低コストで造れる。又、前記各部品2a、3a、10、11を、それぞれ円形を基本とする断面形状に構成する事により、必要な強度を確保しつつ、外径寸法を小さくできる。
【0016】
又、各部材2a、3a、10、11、12a、12bを組み合わせて電力ケーブル用接続装置を組み立てる作業は、第一〜第三の係止部16、20、22及びロックナット11の外周面にスパナを係止して、前記第一、第二の接続端子2a、3aの回転を阻止しつつ、接続筒10及びロックナット11を回転させる事により、容易に行える。又、接続作業に伴って電力ケーブル1a、1bが、問題となる程捩られる事もない。この為、接続作業を容易に行う事ができる。そして、組立作業を完了した状態では、雄ねじ部15及びねじ杆部19を構成する雄ねじ山の片側面と、ねじ孔21を構成する雌ねじ山の片側面とが、これら雄ねじ部15及びねじ杆部19とねじ孔21との締め付けに基づいて強く当接する。この様に、前記各ねじ山の側面同士が強く当接した状態では、前記第一、第二の両接続端子2a、3aと前記接続筒10とが、電気的に確実に接続された状態となり、接続部の抵抗を低く抑える事ができる。しかも、接続部の機械強度を十分に確保できる。
【0017】
又、前記ロックナット11の締め付け及び1対のばね座金12a、12bの弾力に基づいて、前記雄ねじ部15及び前記ねじ杆部19と前記ねじ孔21との螺合部が不用意に緩む事もない。この為、前記接続部の電気抵抗を低く抑え、しかも、接続部の機械強度を十分に確保した状態を、長期間に亙って安定して維持できる。
更に、図13に示した様に、組立作業に先立って、前記第二の接続端子3aと前記ロックナット11と前記ばね座金12bと前記接続筒10とを、電力ケーブル用接続装置の製造工場等で予め組み合わせておけば、この電力ケーブル用接続装置の組立現場での作業の容易化を図れる。又、部品を紛失する事で、組立作業が不能になる事もなくなる。
【0018】
上述の様な先発明に係る電力ケーブル用接続装置及びその組立方法は、外径寸法を小さくして小型・軽量化を図ると共に、接続部の抵抗を低く抑え、且つ、接続部の機械強度を確保する面からは十分な効果を得られる。但し、接続作業を容易に行う面からは改良の余地がある。又、小型・軽量化の面からも、軸方向寸法短縮に関しては、やはり改良の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、外径寸法を小さくして小型・軽量化を図ると共に、接続部の抵抗を低く抑え、且つ、接続部の機械強度を確保すると言った、先発明により得られる作用・効果を損なう事なく、接続作業を容易化し、しかも、軸方向寸法を短縮して、より一層の小型・軽量化を可能にすべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の電力ケーブル用接続装置及びその組立方法のうち、請求項1に記載した電力ケーブル用接続装置は、それぞれが、銅又は銅系合金等の電気抵抗の低い金属製である、第一の接続端子と、第二の接続端子と、接続筒と、ロックナットと、1対の弾性環状部材とから成る。
【0021】
このうちの第一の接続端子は、第一の接続部と接続杆部とを備える。
このうちの第一の接続端子は、基半部に設けられた、互いに接続すべき1対の電力ケーブルのうちの一方の電力ケーブルの端部を接続固定する為の第一の接続部と、先半部に設けられた接続杆部とを備える。
又、前記接続杆部は、少なくとも軸方向中間部に設けられた雄ねじ部と、この雄ねじ部から連続する状態で軸方向先端部に設けられた雄ねじ部と、この雄ねじ部よりも小径の先端側円柱部とを備える。
【0022】
又、前記第二の接続端子は、基端部に設けられた、互いに接続すべき1対の電力ケーブルのうちの他方の電力ケーブルの端部を接続固定する為の第二の接続部と、中間部乃至先半部に設けられたねじ杆部と、このねじ杆部の先端部に、このねじ杆部の先端面中央部に開口する状態で設けられた、前記先端側円柱部を挿入可能な位置決め用凹孔とを備える。
【0023】
又、前記接続筒は、中心部に軸方向に貫通する状態で設けられた、前記雄ねじ部及び前記ねじ杆部を螺合させる為のねじ孔を備える。
又、前記ロックナットは、前記ねじ杆部に螺着されている。
又、前記両弾性環状部材は、ばね座金、皿板ばね等、それぞれが軸方向に弾性的に圧縮可能な部材である。この様な1対の弾性環状部材のうちの一方の弾性環状部材は、前記基端側円柱部の周囲部分に、他方の弾性環状部材は、前記ねじ杆部のうちで前記ロックナットよりも先端寄り部分に、それぞれ外嵌されている。
そして、前記位置決め用凹孔に前記先端側円柱部を挿入した状態で、前記雄ねじ部を前記ねじ孔に螺合し更に締め付ける事により、前記第一の接続部の先端面と前記接続筒の一端面との間で、前記一方の弾性環状部材を圧縮している。
更に、前記ねじ杆部を前記ねじ孔に螺合させた状態で、前記ロックナットを前記接続筒の他端面に向けて締め付ける事により、これらロックナットと接続筒の他端面との間で前記他方の弾性環状部材を圧縮している。
【0024】
又、請求項2に記載した電力ケーブル用接続装置の組立方法は、上述の様な請求項1に記載した電力ケーブル用接続装置を組み立てるのに、予め前記第一の接続端子の基端部分に、前記一方の弾性環状部材を外嵌しておく。且つ、予め前記第二の接続端子の前記ねじ杆部の基端部に前記ロックナットを、中間部乃至先端部に前記接続筒を、それぞれ螺着すると共に、これらロックナットと接続筒との間に前記他方の弾性環状部材を挟持しておく。
又、前記ねじ杆部の先端面と前記接続筒の軸方向端面との軸方向距離を、前記先端側円柱部の軸方向高さよりも小さくした状態で、この先端側円柱部を前記位置決め用凹孔に挿入する事により、前記第一の接続端子の中心軸と、前記第二の接続端子及び前記接続筒の中心軸とを一致させる。
その後、前記接続筒を回転させ、この接続筒を前記雄ねじ部に向けて移動させる事により、この接続筒の内周面の前記ねじ孔とこの雄ねじ部とを螺合させ更に締め付けて、この接続筒の一端面と前記第一の接続部の先端面との間で前記一方の弾性環状部材を圧縮する。
次いで、前記ロックナットを回転させつつ前記接続筒に向け移動させ更に締め付けて、これらロックナットと接続筒の他端面との間で前記他方の弾性環状部材を圧縮する。
【発明の効果】
【0025】
前述の様に構成する本発明の電力ケーブル用接続装置によれば、特殊な形状を有する部品を使用せず、低コストで造る事ができる。即ち、この電力ケーブル用接続装置を構成する第一の接続端子と、第二の接続端子と、接続筒と、ロックナットと、1対の弾性環状部材とは、何れも単純な形状を有する為、何れも加工が容易であって、低コストで造れる。又、各部品を、それぞれ円形を基本とする断面形状に構成する事により、必要な強度を確保しつつ、外径寸法を小さくできる。又、各部材を組み合わせて電力ケーブル用接続装置を組み立てる作業は、第一〜第三の係止部及びロックナットの外周面に、スパナ等の工具を係止して(これら第一〜第三の係止部の全部又は一部を省略した場合には、当該省略した部材の外周面にパイプレンチ等の工具を係止して)、前記第一、第二の接続端子の回転を阻止しつつ、前記接続筒及び前記ロックナットを回転させる事により、容易に行える。又、接続作業に伴ってケーブルが捩られる事もない為、接続作業を容易に行う事ができる。そして、組立作業を完了した状態では、雄ねじ部及びねじ杆部を構成する雄ねじ山の片側面と、ねじ孔を構成する雌ねじ山の片側面とが、これら雄ねじ部及びねじ杆部とねじ孔との締め付けに基づいて強く当接する。この様に、前記各ねじ山の側面同士が強く当接した状態では、前記第一、第二の接続端子と前記接続筒とが、電気的に確実に接続された状態となり、接続部の抵抗を低く抑える事ができる。しかも、この接続部の機械強度を十分に確保できる。又、前記ロックナットの締め付け及び前記両弾性環状部材の弾力に基づいて、前記雄ねじ部及び前記ねじ杆部と前記ねじ孔との螺合部が不用意に緩む事もない。この為、前記接続部の抵抗を低く抑え、しかも、この接続部の機械強度を十分に確保した状態を、長期間に亙って安定して維持できる。
【0026】
更に、請求項2に記載した組立方法の様に、組立作業に先立って、第二の接続端子とロックナットと弾性環状部材と接続筒とを、電力ケーブル用接続装置の製造工場等で予め組み合わせておけば、この電力ケーブル用接続装置の組立現場での作業の容易化を図れる。又、部品を紛失する事で、組立作業が不能になる事もなくなる。
以上の作用・効果は、前述した先発明の場合と同様であり、本発明によれば、上述した先発明の場合と同様に得られる。
特に、本発明の電力ケーブル用接続装置及びその組立方法の場合には、前記雄ねじ部と前記ねじ筒とを螺合させるのに先立って、前記第二の位置決め用凹孔に前記先端側円柱部を挿入する事により、前記第一の接続端子の中心軸と、前記第二の接続端子及び前記接続筒の中心軸とを、容易に一致させる事ができる。
この為、それぞれを電力ケーブルの端部に接続した、前記第一、第二の両端子同士の接続作業を、前述した先発明に比べて、より容易化できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態の1例を、組み立て完了後の状態で示す、半部切断側面図。
【図2】第一の接続端子の半部切断側面図。
【図3】第二の接続端子の半部切断側面図。
【図4】接続筒の半部切断側面図。
【図5】構成各部材を組み合わせて組み立てる途中の状態を示す、半部切断側面図。
【図6】従来構造の1例を示す分解斜視図。
【図7】組み立てた状態で示す断面図。
【図8】先発明に係る構造の1例を示す側面図。
【図9】同じく第一の接続端子の端面図(A)及び側面図(B)。
【図10】同じく第二の接続端子の側面図(A)及び端面図(B)。
【図11】同じく接続筒の側面図(A)及び(A)のX−X断面図(B)。
【図12】同じく第一の接続端子とばね座金とを組み合わせた状態を示す側面図。
【図13】同じく第二の接続端子と、接続筒と、弾性環状部材であるばね座金と、ロックナットとを組み合わせた状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1〜5は、本発明の実施の形態の1例を示している。尚、本例の特徴は、第一、第二の両接続端子2b、3bの先半部の形状を工夫する事で、これら両接続端子2b、3b同士の接続作業をより容易にし、合わせて、接続筒10aの軸方向寸法の短縮化による、電力ケーブル用接続装置全体としての軸方向寸法の短縮化を可能にする点にある。その他の部分の構成及び作用に就いては、先に説明した先発明と同様であるから、同等部分に関する説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0029】
前記第一の接続端子2bの先半部に設けられた接続杆部23は、基端側円柱部24と、雄ねじ部15aと、先端側円柱部25とを備える。
このうちの基端側円柱部24は、圧縮端子である第一の接続部13寄り部分に設けられている。尚、この基端側円柱部24は、省略する事もできる。
又、前記雄ねじ部15aは、前記基端側円柱部24から連続する状態で軸方向中間部に設けられており、この基端側円柱部24よりも大径である。
更に、前記先端側円柱部25は、前記雄ねじ部15aから連続する状態で軸方向先端部に設けられており、前記基端側円柱部24よりも更に小径である。
【0030】
又、前記第二の接続端子3bの中間部乃至先半部に設けられたねじ杆部19aに位置決め用凹孔26を、このねじ杆部19aの先端面中央部に開口する状態で設けている。この位置決め用凹孔26の内径は、前記先端側円柱部25の外径よりも僅かに(例えば数十〜百数十μm程度)大きくして、この先端側円柱部25を前記位置決め用凹孔26内に、ほぼがたつきなく挿入可能としている。又、この位置決め用凹孔26の深さDは、前記先端側円柱部25の高さHよりも大きく(D>H)して、この先端側円柱部25を前記位置決め用凹孔26内に挿入し切れる様にしている。更に、挿入した状態で、前記第一、第二の両接続端子2b、3b同士が、ほぼ同心になる様にしている。尚、前記先端側円柱部25を前記位置決め用凹孔26内に挿入する作業を容易に行える様にする為、この先端側円柱部25の先端面外周縁部と前記位置決め用凹孔26の開口周縁部との少なくとも一方には、面取りを施している。
【0031】
又、前記接続筒10aは、前述した先発明を構成する接続筒10(図8、11、13参照)と同様に、中心部にねじ孔21aを、軸方向に貫通する状態で設けている。このねじ孔21aと、前記雄ねじ部15aと、前記ねじ杆部19aとの、ピッチ並びにピッチ円直径は、互いに同じとして、これら雄ねじ部15a及びねじ杆部19aを前記ねじ孔21aに螺合させられる様にしている。電力ケーブル用接続装置の組み立てを完了した状態では、前述した先発明の場合と同様、図1に示す様に、前記第一の接続端子2bの第一の接続部13の先端面と前記接続筒10aの軸方向片端面との間で一方のばね座金12aを弾性的に押し潰す。又、この接続筒10aの軸方向他端面とロックナット11との間で、他方のばね座金12bを弾性的に押し潰す。この状態で、前記雄ねじ部15a及び前記ねじ杆部19aを構成する雄ねじ山の軸方向側面と、前記ねじ孔21aを構成する雌ねじ山の軸方向側面とが強く当接する。そして、前記第一、第二の両接続端子2b、3bと前記接続筒10aとの当接部の電気抵抗を低く抑える。
【0032】
又、本例の場合、前記第一の接続端子2b側の前記先端側円柱部25を、前記第二の接続端子3b側の前記位置決め用凹孔26内に挿入し切った状態で、前記雄ねじ部15aと前記ねじ杆部19aとが、それぞれの軸方向端面同士で突き合わされる。前述した先発明の構造の様に、雄ねじ部15とねじ杆部19との間に挿入杆部14の先端部(図8参照)が存在する事はない。従って、本例の構造を構成する前記接続筒10aの軸方向長さは、前記先発明の構造を構成する接続筒10よりも短くできる。この為、この先発明の構造に比べて軸方向寸法の短縮化が可能になり、この先発明の構造に比べて、より小型・軽量化を図り易くなる。
【0033】
この様な本例の構造の組み立てる際には、先ず、前記第二の接続端子3bの先半部に設けた前記ねじ杆部19aを、前記接続筒10a内に螺入する。そして、図5に示す様に、このねじ杆部19aの先端面とこの接続筒10aの軸方向両端面のうち、前記第一の接続端子2b側の片端面(図5の左端面)との軸方向距離Lを、前記先端側円柱部25の軸方向高さHよりも十分に小さく(L≪H)する。好ましくは、前記ねじ杆部19aの先端面を、前記接続筒10aの片端面と同一平面上に位置させるか、この片端面よりも少し突出させる。そして、この状態で、前記先端側円柱部25を前記位置決め用凹孔26に挿入する。この挿入作業により、前記第一の接続端子2bの中心軸と、前記第二の接続端子3b及び前記接続筒10aの中心軸とを一致させる事ができる。これら各部材2b、3b、10aの中心軸を互いに一致させられる事により、この状態で未だ螺合していない、前記第一の接続端子2bの雄ねじ部15aと、前記接続筒10aのねじ孔21aとを、容易に螺合させられる状態になる。
【0034】
そこで、この接続筒10aを回転させつつ、前記雄ねじ部15aに向けて移動させる事により、この接続筒10aの内周面の前記ねじ孔21aとこの雄ねじ部15aとを螺合させ更に締め付ける。そして、この接続筒10aの軸方向片端面と、前記第一の接続部13の先端面との間で、前記一方のばね座板12aを弾性的に圧縮する。次いで、前記ロックナット11を回転させつつ前記接続筒10aに向け移動させ更に締め付けて、このロックナット11とこの接続筒10aの他端面との間で、前記他方のばね座板12bを弾性的に圧縮する。尚、図5には、説明の便宜上、前記軸方向距離Lを表しているが、実際に図5に示す状態を実現するには、L≒0としてから、前記接続筒10aを前記第一の接続端子2bに向けて移動させる。
上述の様にして行う本例の組立方法の場合には、前記第一の接続端子2bの中心軸と、前記第二の接続端子3b及び前記接続筒10aの中心軸とを、容易に一致させる事ができて、それぞれを電力ケーブルの端部に接続した、前記第一、第二の両端子2b、3b同士の接続作業を、前述した先発明に比べて、より容易化できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明を実施するに当たって、前記第一、第二の両接続端子2b、3bに設けた第一、第二の接続部13、18に電力ケーブル1a、1bの導体5a、5bを接続する際に、これら両第一、第二の接続部13、18を六角ダイスにより圧縮する場合がある。この場合に、圧縮後に於けるこれら両第一、第二の接続部13、18の外周面の形状は六角形となり、そのままスパナ等の工具を係止可能になる。そこで、この様な形状を有する前記第一、第二の接続部13、18の外周面を、そのまま、前記第一、第二の両接続端子2b、3bの回転を阻止する為の係止部として利用する事もできる。これに対して、前記接続筒10aの外周面には、前述の従来構造の第三の係止部22(図8、11参照)と同様の、複数の平坦面27、27を形成する等により、この接続筒10aを回転させる為の工具を係止する為の係止部とする事が好ましい。但し、各部材2b、3b、10aの回り止めを図ったり、或は回転させる為の工具として、パイプレンチを使用する場合には、前記各部材2b、3b、10aの外周面を、単なる円筒面のままとしても良い。
【0036】
又、前記第一、第二の両接続端子2b、3b及び前記接続筒10aの外周面には、必要に応じて錫(Sn)等のメッキを施す事もできる。
更に、図1に示した電力ケーブル用接続装置を組み立てた後、必要に応じてこの電力ケーブル用接続装置を、ゴム等の弾性材製の絶縁筒により覆う。この絶縁筒は、例えば特許文献2に記載される等により周知の様に、保持スリーブに外嵌した状態で、予め一方の電力ケーブルの周囲に配置しておく。そして、前記電力ケーブル用接続装置を組み立てた後、この電力ケーブル用接続装置の周囲に移動させてから、前記保持スリーブを抜き取る。この抜き取りに伴って前記絶縁筒の直径が弾性的に縮まり、前記電力ケーブル用接続装置が、前記導体5a、5bの端部で絶縁層から露出した部分と共に、周囲との絶縁が確保され、且つ、水密を確保した状態で覆われる。尚、前記電力ケーブル用接続装置の絶縁処理に就いては、前記絶縁筒を外嵌する以外にも、絶縁性の熱収縮チューブを密に外嵌したり、或は、絶縁テープを巻回する事によっても行える。熱収縮チューブによる絶縁処理は、狭い場所での処理に有効であり、絶縁テープによる絶縁処理は、コスト低減の面から有効である。
【符号の説明】
【0037】
1a、1b 電力ケーブル
2、2a、2b 第一の接続端子
3、3a、3b 第二の接続端子
4 袋ナット
5a、5b 導体
6 挿入孔
7 挿入杆部
8a、8b 絶縁ゴム
9 絶縁シート
10、10a 接続筒
11 ロックナット
12a、12b ばね座金
13 第一の接続部
14 挿入杆部
15、15a 雄ねじ部
16 第一の係止部
17a、17b 円孔
18 第二の接続部
19、19a ねじ杆部
20 第二の係止部
21、21a ねじ孔
22 第三の係止部
23 接続杆部
24 基端側円柱部
25 先端側円柱部
26 位置決め用凹孔
27 平坦面
28 第一のユニット
29 第二のユニット
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】特開2008−198509号公報
【特許文献2】特開2001−353780号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが導電材製である、第一の接続端子と、第二の接続端子と、接続筒と、ロックナットと、それぞれが軸方向に弾性的に圧縮可能である1対の弾性環状部材とから成り、
このうちの第一の接続端子は、基半部に設けられた、互いに接続すべき1対の電力ケーブルのうちの一方の電力ケーブルの端部を接続固定する為の第一の接続部と、先半部に設けられた接続杆部とを備え、この接続杆部は、少なくとも軸方向中間部に設けられた雄ねじ部と、この雄ねじ部から連続する状態で軸方向先端部に設けられた、この雄ねじ部よりも小径の先端側円柱部とを備えたものであり、
前記第二の接続端子は、基端部に設けられた、互いに接続すべき1対の電力ケーブルのうちの他方の電力ケーブルの端部を接続固定する為の第二の接続部と、中間部乃至先半部に設けられたねじ杆部と、このねじ杆部の先端部に、このねじ杆部の先端面中央部に開口する状態で設けられた、前記先端側円柱部を挿入可能な位置決め用凹孔とを備えたものであり、
前記接続筒は、中心部に軸方向に貫通する状態で設けられた、前記雄ねじ部及び前記ねじ杆部を螺合させる為のねじ孔を備えたものであり、
前記ロックナットは、前記ねじ杆部に螺着されており、
前記両弾性環状部材のうちの一方の弾性環状部材は、前記基端側円柱部の周囲部分に、他方の弾性環状部材は、前記ねじ杆部のうちで前記ロックナットよりも先端寄り部分に、それぞれ外嵌されており、
前記位置決め用凹孔に前記先端側円柱部を挿入した状態で、前記雄ねじ部を前記ねじ孔に螺合し更に締め付ける事により、前記第一の接続部の先端面と前記接続筒の一端面との間で前記一方の弾性環状部材を圧縮しており、
前記ねじ杆部を前記ねじ孔に螺合させた状態で、前記ロックナットを前記接続筒の他端面に向けて締め付ける事により、これらロックナットと接続筒の他端面との間で前記他方の弾性環状部材を圧縮している電力ケーブル用接続装置。
【請求項2】
請求項1に記載した電力ケーブル用接続装置の組立方法であって、
予め前記第一の接続端子の基端部分に前記一方の弾性環状部材を外嵌しておき、且つ、予め前記第二の接続端子のねじ杆部の基端部にロックナットを、中間部乃至先端部に接続筒を、それぞれ螺着すると共に、これらロックナットと接続筒との間に他方の弾性環状部材を挟持しておき、
前記ねじ杆部の先端面と前記接続筒の軸方向端面との軸方向距離を、前記先端側円柱部の軸方向高さよりも小さくした状態で、この先端側円柱部を前記位置決め用凹孔に挿入する事により、前記第一の接続端子の中心軸と、前記第二の接続端子及び前記接続筒の中心軸とを一致させてから、
前記接続筒を回転させ、この接続筒を前記雄ねじ部に向けて移動させる事により、この接続筒の内周面のねじ孔とこの雄ねじ部とを螺合させ更に締め付けて、この接続筒の一端面と第一の接続部の先端面との間で前記一方の弾性環状部材を圧縮し、
次いで、前記ロックナットを回転させつつ前記接続筒に向け移動させ更に締め付けて、このロックナットとこの接続筒の他端面との間で他方の弾性環状部材を圧縮する電力ケーブル用接続装置の組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−100475(P2012−100475A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247514(P2010−247514)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】