説明

電力供給制御システム

【課題】インフラ設備に安定的に電力を供給することができるシステムを提供する。
【解決手段】配電線からの電力をインフラ設備に供給するための引き込み線が取り付けられている電柱に蓄電装置を設置し、この蓄電装置の充放電を親局装置から遠隔制御するようにした。さらに、配電線の停電を検知した場合には親局装置からの制御によらずに蓄電装置を放電させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車交通信号機等のインフラ設備への電力供給を制御するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業や生活の基盤となるインフラ設備の中には、自動車交通信号機のように、近くの電柱から引き込み線を通じて電力供給を受けて動作しているものがある。このようなインフラ設備には安定して電力が供給される必要があり、負荷が集中して電力供給が不安定になったり、停電により電力供給がストップしたりという状況は避けなければならない。
【特許文献1】特開2004−86458号公報
【特許文献2】特開2003−281691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、インフラ設備に安定的に電力を供給することができるシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明による電力供給制御システムは、配電線からの電力をインフラ設備に供給するための引き込み線が取り付けられている電柱に設置され、前記配電線からの電力供給により充電され、放電時には前記引き込み線を通じて前記インフラ設備に電力を供給する蓄電装置と、前記電柱に設置された子局装置と、電力会社の営業所等に設置され、通信線を通じて前記子局装置と種々の監視制御情報のやりとりを行う親局装置とを備え、前記親局装置は、前記蓄電装置の充電/放電の制御量を前記子局装置に送信し、前記子局装置は、前記親局装置からの制御量に応じて前記蓄電装置の充電/放電を制御する、ことを特徴とする。
【0005】
上記電力供給制御システムにおいて、前記子局装置は、前記配電線の停電を検知すると前記蓄電装置を放電させる、ことが好ましい。
【0006】
上記電力供給制御システムにおいて、前記親局装置は、前記配電線のフィーダ電流の過去の負荷曲線から負荷を予測し、予測したフィーダ電流に基づいて前記蓄電装置の充電/放電の制御量を決定する、ことが好ましい。
【0007】
上記電力供給制御システムにおいて、前記親局装置は、前記蓄電装置の充電/放電の1日分の制御量を計算しその制御量を1日1回送信する、ことが好ましい。
【0008】
上記電力供給制御システムにおいて、前記親局装置は、前記蓄電装置の充電/放電の制御量を随時計算しその制御量を随時送信する、ことが好ましい。
【0009】
上記電力供給制御システムにおいて、前記子局装置は、前記蓄電装置の動作状態を前記親局に送信する、ことが好ましい。
【0010】
上記電力供給制御システムにおいて、前記電柱は、配電線事故が発生したときに逆送により救済できない箇所に設置されているものである、ことが好ましい。
【0011】
上記電力供給制御システムにおいて、前記インフラ設備は自動車交通信号機である、
ことが好ましい。
【0012】
上記電力供給制御システムにおいて、前記電柱は幹線道路に配置されているものである、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電力供給制御システムでは、配電線からの電力をインフラ設備に供給するための引き込み線が取り付けられている電柱に蓄電装置を設置し、この蓄電装置の充放電を親局装置から遠隔制御するようにした。このようにすることにより、配電線の負荷が小さいとき(たとえば深夜)に蓄電装置を充電しておき、配電線の負荷が大きいとき(たとえば昼間)に蓄電装置を放電させてインフラ設備へ電力を供給するというように負荷平準化を実現できる。
【0014】
さらに、配電線の停電を検知した場合には親局装置からの制御によらずに蓄電装置を放電させるようにしたので停電時にも安定的にインフラ設備へ電力を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態による電力供給制御システムの概略構成を図1に示す。
【0016】
このシステムは、配電線遠方監視制御システム(遠制システム)をベースにして実現されている。遠制システムでは、配電線経路上の電柱に設けられた子局装置と電力会社の営業所等に設けられた親局装置との間で通信線(遠制伝送路)を通じて種々の監視制御情報のやりとりが行われている。これにより配電線経路上の開閉器の監視・制御はもとより、電圧・電流を監視したり、最近では電力量の自動検針なども行われはじめている。遠制システムの子局装置が設置されている電柱の中には、引き込み線を通じて近くのインフラ設備に電力を供給しているものがある。本実施形態による電力供給制御システムは、このようなインフラ設備への電力供給を遠制システムを利用して遠隔制御するものである。なお、ここではインフラ設備の一例として自動車交通信号機を取り上げている。
【0017】
図1のシステムでは、配電線(Aフィーダ,Bフィーダ)からの電力を自動車交通信号機(12A,22A,32A,12B,22B,32B)に供給するための引き込み線が取り付けられている電柱に蓄電装置(11A,21A,31A,11B,21B,31B)が設置されている(図2参照)。遠制システムの子局装置が設置されている電柱のうち配電線からの電力を自動車交通信号機に供給するための引き込み線が取り付けられている電柱のすべてに蓄電装置を設置してもよいし、配電線事故が発生したときに逆送により救済できない箇所に設置されている電柱や、幹線道路に設置されている自動車交通信号機に電力を供給している電柱などの特定の電柱に分散配置してもよい。蓄電装置(11A,21A,31A,11B,21B,31B)は、配電線(Aフィーダ,Bフィーダ)からの電力供給により充電され、放電時には引き込み線を通じて自動車交通信号機(12A,22A,32A,12B,22B,32B)に電力を供給する。図1のシステムでは、子局側機能として、商用・蓄電両電源の自動切換え回路を有しており、配電線(Aフィーダ,Bフィーダ)からの電力(商用電源)または蓄電装置(11A,21A,31A,11B,21B,31B)からの電力(放電電力)が子局装置(10A,20A,30A,10B,20B,30B)からの制御に応じて自動車交通信号機(12A,22A,32A,12B,22B,32B)へ供給される。
【0018】
電力会社の営業所等に設置されている親局装置100は、遠制伝送路を通じて子局装置(10A,20A,30A,10B,20B,30B)と種々の監視制御情報のやりとりを行う。たとえば、親局装置100は、蓄電装置(11A,21A,31A,11B,21B,31B)の充電/放電の制御量を子局装置(10A,20A,30A,10B,20B,30B)に送信し、子局装置(10A,20A,30A,10B,20B,30B)は、親局装置100からの制御量に応じて蓄電装置(11A,21A,31A,11B,21B,31B)の充電/放電を制御する。
【0019】
次に、図1に示した電力供給システムにおいて行われる処理について図3を参照しつつ説明する。
【0020】
遠制システムの監視機能により、配電線の負荷の過去の実績データが親局装置100のデータベースに蓄積されている。このデータベースは、フィーダ、季節、日付、時間などの種々の条件をキーとしてデータを抽出することができるようになっており、たとえば、Aフィーダの夏の1日の負荷曲線というふうに指定すればその負荷曲線が抽出されるようになっている。
【0021】
親局装置100は、このデータベースに蓄積されている過去の実績データに基づいてフィーダごとに負荷を予測する。たとえば、季節に応じて負荷を予測する場合には、今の季節が夏(冬)であれば夏(冬)の1日の負荷曲線をフィーダごとにデータベースから抽出し、日付に応じて負荷を予測する場合には、○月×日であれば過去の○月×日の1日の負荷曲線をフィーダごとにデータベースから抽出する。
【0022】
次に親局装置100は、データベースから抽出した負荷曲線に基づいて蓄電装置(11A,21A,31A,11B,21B,31B)の充電/放電の制御量を決定する。親局装置100は、各フィーダの負荷が平準化されるように制御量を決定する。たとえば、データベースから抽出した負荷曲線の負荷が大きい時間帯に放電を行い、負荷が小さい時間帯に充電を行うように制御量を決定する。さらに、放電については負荷が大きくなるほど放電量が多くなり、充電については負荷が小さくなるほど充電量が多くなるように制御量を決定する。親局装置100は、このようにしてフィーダ(Aフィーダ,Bフィーダ)ごとに蓄電装置(11A,21A,31A,11B,21B,31B)の制御量を決定する。
【0023】
次に親局装置100は、Aフィーダについての制御量をAフィーダの子局装置(10A,20A,30A)に送信し、Bフィーダについての制御量をBフィーダの子局装置(10B,20B,30B)に送信する。
【0024】
親局装置100からの制御量を受信すると子局装置(10A,20A,30A,10B,20B,30B)は、この制御量に基づいて蓄電装置(11A,21A,31A,11B,21B,31B)の充電/放電を制御する。
【0025】
以上の制御によれば、配電線(Aフィーダ,Bフィーダ)の負荷が小さいとき(たとえば深夜時間)に蓄電装置(11A,21A,31A,11B,21B,31B)を充電しておき、配電線(Aフィーダ,Bフィーダ)の負荷が大きいとき(たとえば昼間のピーク時)に蓄電装置(11A,21A,31A,11B,21B,31B)を放電させて自動車交通信号機(12A,22A,32A,12B,22B,32B)へ電力を供給することができ、これにより負荷平準化を実現できる。
【0026】
なお、上述の制御量の決定および送信については、1日分の制御量を計算しその制御量を1日1回送信するようにしてもよいし、制御量を随時計算し随時送信するようにしてもよい。
【0027】
また、遠制システムの監視機能の1つとして子局装置(10A,20A,30A,10B,20B,30B)は、配電線(Aフィーダ,Bフィーダ)の停電を検知する機能を有している。本実施形態では、これを利用して、子局装置(10A,20A,30A,10B,20B,30B)は、配電線(Aフィーダ,Bフィーダ)の停電を検知すると、親局装置100の制御によらずに蓄電装置(11A,21A,31A,11B,21B,31B)を放電させるようにしている。これにより、停電時にも安定的に自動車交通信号機(12A,22A,32A,12B,22B,32B)に電力を供給することができる。
【0028】
さらに、子局装置(10A,20A,30A,10B,20B,30B)は、蓄電装置(11A,21A,31A,11B,21B,31B)の動作状態を監視し親局装置100へ送信するようにしている。これにより、親局装置100において自動車交通信号機(12A,22A,32A,12B,22B,32B)の稼働状況を把握することができ、必要であればこの情報を警察署等へ提供することができる。
【0029】
なお、本実施形態ではインフラ設備の例として自動車交通信号機を取り上げて説明したが、近くの電柱から引き込み線を通じて電力供給を受けて動作している他のインフラ設備(たとえば、街路灯、国・電力会社・電話会社の設備、水道局のポンプなど)についても同様に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、インフラ設備への安定的な電力供給を実現するために有用である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態による電力供給制御システムの概略構成を示す図
【図2】配電線からの電力を自動車交通信号機に供給するための引き込み線が取り付けられている電柱への蓄電装置の設置状況を示す図
【図3】図1のシステムの動作を説明するための図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線からの電力をインフラ設備に供給するための引き込み線が取り付けられている電柱に設置され、前記配電線からの電力供給により充電され、放電時には前記引き込み線を通じて前記インフラ設備に電力を供給する蓄電装置と、
前記電柱に設置された子局装置と、
電力会社の営業所等に設置され、通信線を通じて前記子局装置と種々の監視制御情報のやりとりを行う親局装置とを備え、
前記親局装置は、前記蓄電装置の充電/放電の制御量を前記子局装置に送信し、
前記子局装置は、前記親局装置からの制御量に応じて前記蓄電装置の充電/放電を制御する、
ことを特徴とする電力供給制御システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記子局装置は、前記配電線の停電を検知すると前記蓄電装置を放電させる、
ことを特徴とする電力供給制御システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記親局装置は、前記配電線のフィーダ電流の過去の負荷曲線から負荷を予測し、予測したフィーダ電流に基づいて前記蓄電装置の充電/放電の制御量を決定する、
ことを特徴とする電力供給制御システム。
【請求項4】
請求項3において、
前記親局装置は、前記蓄電装置の充電/放電の1日分の制御量を計算しその制御量を1日1回送信する、
ことを特徴とする電力供給制御システム。
【請求項5】
請求項3において、
前記親局装置は、前記蓄電装置の充電/放電の制御量を随時計算しその制御量を随時送信する、
ことを特徴とする電力供給制御システム。
【請求項6】
請求項1において、
前記子局装置は、前記蓄電装置の動作状態を前記親局に送信する、
ことを特徴とする電力供給制御システム。
【請求項7】
請求項1において、
前記電柱は、配電線事故が発生したときに逆送により救済できない箇所に設置されているものである、
ことを特徴とする電力供給制御システム。
【請求項8】
請求項1において、
前記インフラ設備は自動車交通信号機である、
ことを特徴とする電力供給制御システム。
【請求項9】
請求項8において、
前記電柱は幹線道路に配置されているものである、
ことを特徴とする電力供給制御システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−159363(P2007−159363A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354961(P2005−354961)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】