説明

電力制御装置の保護装置

【課題】車両衝突時に、電力制御装置に設けられたコネクタ部が他の車両機器に衝突してしまうことを防ぎ、コネクタ部の損傷及び電力制御装置からのコネクタ部の離脱を抑制することが可能な電力制御装置の保護装置を提供する。
【解決手段】電力制御装置10は車両のエンジンコンパートメント内に配置され、バッテリからの電力により駆動される駆動装置への電力を制御する。コネクタ部12は、電力制御装置10のケース11の側面11aから突出して設けられている。電力制御装置10は、所定方向からの車両衝突時の衝撃によってエンジンコンパートメント内で移動する。プロテクタ20は、電力制御装置10の移動によりコネクタ部12の側面12aが衝突し得る車両機器と、コネクタ部12の側面12aとの間に設けられている。プロテクタ20は、電力制御装置10の移動方向に対して傾斜した衝突面21aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンコンパートメントに搭載され、バッテリからの電力により駆動される駆動装置への電力を制御する電力制御装置の保護装置に関し、特に車両衝突時における電力制御装置の保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車、電気自動車、及び燃料電池自動車などのように、モータの出力により走行する車両が知られている。このような車両には、モータに接続される電源として充放電可能なバッテリとともに、モータとバッテリとの間で授受される電力を制御する電力制御装置(パワーコントロールユニット(PCU))が搭載されている。この電力制御装置は、例えばインバータとコンバータとを有する。
【0003】
この電力制御装置は、例えばハイブリッド自動車においては、エンジンとモータとが収容されるエンジンコンパートメントに搭載される。エンジンコンパートメントは、車室よりも前方に位置し、車室とは隔壁により仕切られた区画である。
【0004】
この電力制御装置には、バッテリに接続されるコネクタ部が電力制御装置のケースの一面から突出したものがある。例えば特許文献1には、ハイブリッド自動車に搭載される電力制御装置において、バッテリに接続される端子がケースから突出した電力制御装置が開示されている。
【0005】
図10を参照して、従来技術に係る電力制御装置について説明する。図10は、エンジンコンパートメントに収容された従来技術に係る電力制御装置を上面から見た図である。図10に示す車両50においては、車室51の前方に位置して車室51とは隔壁52により仕切られた区画であるエンジンコンパートメント53に、電力制御装置10が収容されている。エンジンコンパートメント53には、電力制御装置10以外の車両機器も収容されている。この車両機器としては、例えばエンジン54やモータなどの駆動装置や、バッテリなどが該当する。電力制御装置10は、例えばインバータとコンバータとをケース11内に有する。また、電力制御装置10には、ケース11の側面11aから外側に向かって突出したコネクタ部12が設けられている。このコネクタ部12にはバッテリが接続されて、コネクタ部12を経由してバッテリから電力制御装置10に高電圧が供給される。図10に示す車両50においては、電力制御装置10は、コネクタ部12を車両50の右側方側に向けた状態で、エンジンコンパートメント53内の左側方側に配置されている。エンジン54は、電力制御装置10よりも後方側であって、電力制御装置10よりも右側方側に配置されている。
【0006】
ところで、車両衝突時に車両機器を保護する技術が知られている。例えば下記に示す特許文献2には、車両衝突時に乗員を保護する乗員保護装置の制御を行う制御回路基板を保護する筐体が開示されている。制御回路基板が筐体の厚肉面側に搭載されており、車両衝突時に筐体にひびが発生しても、ひびが厚肉面まで到達する可能性が低いため、制御回路基板を保護することができる。
【0007】
また、下記に示す特許文献3には、パワーコントロールユニットと電池部とが上下方向に並んで固定された車両において、パワーコントロールユニットの底面に、塑性変形によって外部からの衝撃を吸収する複数の凹凸が設けられた構成が開示されている。車両衝突時に上記凹凸が押し潰されて変形し、衝撃エネルギーの一部を吸収することにより、電池部の破損を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−99121号公報
【特許文献2】特開2010−167816号公報
【特許文献3】特開2004−175301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
車両衝突時に、車両衝突の衝撃によって電力制御装置10がエンジンコンパートメント53内を移動することがある。電力制御装置10のケース11の側面11aからコネクタ部12が突出しているため、コネクタ部12の側面12aがエンジン54などの他の車両機器に衝突して、コネクタ部12が他の車両機器に引っ掛かることがある。この場合、コネクタ部12が破損又は電力制御装置10から離脱することがある。例えば図10において、車両50の前方方向からの衝突が発生した場合について説明する。この場合、図10の破線で示すように、電力制御装置10は実線で示す初期位置から矢印X、Yの方向に向かって車両50の後方側に移動し、ケース11の側面11aから突出したコネクタ部12の側面12aが、エンジン54に衝突することがある。エンジン54が大型の場合や、電力制御装置10とエンジン54との左右方向の隙間が狭い場合には、コネクタ部12の側面12aがエンジン54に衝突しやすくなる。コネクタ部12とエンジン54などの車両機器との衝突により、コネクタ部12が破損又は電力制御装置10から離脱し、電力制御装置10内にある高電圧用の内部電極が露出してしまうことがある。
【0010】
上述した特許文献2及び特許文献3に記載された従来技術においては、車両衝突時に制御回路基板又は電池部を保護する構造が採用されている。しかしながら、特許文献2及び特許文献3に記載された従来技術は、電力制御装置10のケース11から突出したコネクタ部12と他の車両機器との衝突を前提としていないため、車両衝突時に、コネクタ部12と他の車両機器との衝突を防ぐことは困難である。
【0011】
本発明の目的は、車両衝突時に、電力制御装置に設けられたコネクタ部が他の車両機器に衝突してしまうことを防ぎ、コネクタ部の損傷及び電力制御装置からのコネクタ部の離脱を抑制することが可能な電力制御装置の保護装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、車両のエンジンコンパートメント内に配置され、バッテリからの電力により駆動される駆動装置への前記電力を制御する電力制御装置の保護装置において、前記電力制御装置は、前記電力制御装置のケースの一面から突出して前記バッテリに接続されるコネクタ部を有し、所定方向からの車両衝突時の衝撃による前記電力制御装置の移動により前記コネクタ部の側面が衝突し得る車両機器と、前記コネクタ部の側面との間に配置され、前記電力制御装置の移動の方向に対して傾斜した傾斜面を有するプロテクタを有する、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る電力制御装置の保護装置において、前記所定方向は、前記車両の前方方向又は後方方向であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る電力制御装置の保護装置によると、車両衝突時の衝撃による電力制御装置の移動によりコネクタ部の側面が衝突し得る車両機器と、コネクタ部の側面との間に、電力制御装置の移動方向に対して傾斜した傾斜面を有するプロテクタが設けられているため、コネクタ部が車両機器に衝突してしまうことを防ぎ、コネクタ部の損傷又は電力制御装置からのコネクタ部の離脱を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】電力制御装置の概略の外観を示す斜視図である。
【図2】本実施形態のプロテクタを示す斜視図である。
【図3】図2の矢印Aの方向から見た図である。
【図4】図2の矢印Bの方向から見た図である。
【図5】図2の矢印Cの方向から見た図である。
【図6】電力制御装置にプロテクタを取り付ける様子を示す斜視図である。
【図7】プロテクタが取り付けられた電力制御装置の概略の外観を示す斜視図である。
【図8】プロテクタが取り付けられた電力制御装置を上面から見たときの概略の外観を示す図である。
【図9】エンジンコンパートメントに収容された本実施形態の電力制御装置を上面から見た図である。
【図10】エンジンコンパートメントに収容された従来技術に係る電力制御装置を上面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る電力制御装置の保護装置について、図を用いて説明する。一例として、モータとエンジンとの出力により走行するハイブリッド車両を挙げ、このハイブリッド車両に搭載された電力制御装置の保護装置について説明する。なお、本発明は、ハイブリッド車両に搭載された電力制御装置に限らず、モータの出力のみにより走行する電気自動車又は燃料電池自動車に搭載された電力制御装置に適用してもよい。
【0017】
図1を参照して電力制御装置について説明する。図1は、電力制御装置の概略の外観を示す斜視図である。電力制御装置10は、例えばインバータとコンバータとをケース11内に有する。この電力制御装置10は、エンジンとモータとが収容されるエンジンコンパートメントに搭載され、モータとバッテリとの間で授受される電力を制御する。なお、電力制御装置10は、エアコンとバッテリとの間で授受される電力を制御してもよい。また、電力制御装置10とは別体でコンバータを車両に搭載してもよい。ケース11の側面11aには開口部15が形成されている。ケース11の上面11bには、開口部15の位置に対応して作業窓16が形成されている。コネクタ部12には、ねじ穴13aが先端に形成された電極端子13が設けられている。また、コネクタ部12には、ねじ穴14aが形成された固定部14が設けられている。コネクタ部12の電極端子13を開口部15からケース11内に挿入し、ボルト19を作業窓16からケース11内に通して電極端子13のねじ穴13aに貫通させて締め付けることにより、ケース11内に設けられた図示しない内部電極に電極端子13が固定される。また、ケース11の側面11aには、コネクタ部12を電力制御装置10に固定するためのねじ穴17が形成されている。固定部14のねじ穴14aとケース11のねじ穴17とにボルト18を貫通させて締め付けることにより、ケース11の側面11aにコネクタ部12が固定される。コネクタ部12には図示しないバッテリが接続されて、コネクタ部12を経由してバッテリから電力制御装置10に高電圧が供給される。また、ケース11の上面11bには、後述するプロテクタをケース11に固定するためのねじ穴31が形成されている。
【0018】
このようにコネクタ部12を電力制御装置10に取り付けると、コネクタ部12はケース11の側面11aから外側に突出するため、コネクタ部12が設けられた箇所は凸形状となる。そこで、コネクタ部12の側面を覆うプロテクタを、電力制御装置10に取り付ける。
【0019】
図2から図5を参照して、電力制御装置10に取り付けられるプロテクタについて説明する。図2は、本実施形態のプロテクタを示す斜視図である。図3は、図2の矢印Aの方向から見た図である。図4は、図2の矢印Bの方向から見た図である。図5は、図2の矢印Cの方向から見た図である。
【0020】
本実施形態に係るプロテクタ20は、平坦な衝突面21aを有する板状の本体部21と、本体部21の上部から衝突面21aとは反対方向に直角に折れ曲がった取付部22と、本体部21の側方から衝突面21aとは反対方向に斜めに折れ曲がった当接部23、24とによって構成されている。取付部22には、プロテクタ20を電力制御装置10に取り付けるためのねじ穴25が形成されている。プロテクタ20の材料には、例えば鉄やアルミニウムなどの金属や合金を用いてもよいし、機械的な強度が得られる樹脂を用いてもよい。
【0021】
図4及び図5に示すように、本体部21において衝突面21aとは反対側の面21bに、本体部21から突出したブラケット26が設けられている。なお、図5においては、本体部21及びブラケット26以外の構成を省略して図示している。ブラケット26は、例えばL字状又はコの字状に折れ曲がった形状を有する。ブラケット26の先端は、平坦な当接面26aとなっている。ブラケット26の材料には、鉄やアルミニウムなどの金属や合金を用いてもよいし、機械的な強度が得られる樹脂を用いてもよい。ブラケット26の材料に金属や合金を用いた場合には、例えば溶接やリベットによってブラケット26を本体部21に取り付けることができる。ブラケット26の材料に樹脂を用いた場合には、例えば接着剤やスピン溶着などによってブラケット26を本体部21に取り付けることができる。
【0022】
また、図4に示すように、当接部23は、本体部21の面21bと同じ側に平坦な当接面23aを有する。当接部24は、本体部21の面21bと同じ側に平坦な当接面24aを有する。このようにプロテクタ20は、衝突面21aとは反対側に当接面23a、24a、26aを有する。なお、本体部21の面21bの位置を基準にしたときに、当接面23a、24a、26aは、それぞれ同じ高さの位置にあってもよいし、異なる高さの位置にあってもよい。
【0023】
図6から図8を参照して、プロテクタ20が取り付けられた電力制御装置10について説明する。図6は、電力制御装置にプロテクタを取り付ける様子を示す斜視図である。図7は、プロテクタが取り付けられた電力制御装置の概略の外観を示す斜視図である。図8は、プロテクタが取り付けられた電力制御装置を上面から見たときの概略の外観を示す図である。
【0024】
本実施形態においては、プロテクタ20の面21b(衝突面21aとは反対側の面)を電力制御装置10に対向させて、コネクタ部12の側面12aを覆うように、ケース11の側面11aからコネクタ部12の前面12bに架けて、プロテクタ20をケース11に取り付ける。このようにプロテクタ20をケース11に取り付けると、プロテクタ20の本体部21がコネクタ部12の側面12aを覆い、本体部21から折れ曲がった当接部23がコネクタ部12の前面12bの一部を覆う。また、当接部23の当接面23a、当接部24の当接面24a、及びブラケット26の当接面26aが、ケース11に対向することになる。
【0025】
プロテクタ20をケース11に取り付けたときに、当接部23の当接面23aがコネクタ部12の前面12bに接触していてもよいし、コネクタ部12から離れていてもよい。同様に、当接部24の当接面24a及びブラケット26の当接面26aが、ケース11に接触していてもよいし、ケース11から離れていてもよい。図8に示す例においては、プロテクタ20をケース11に取り付けた段階では、当接部23の当接面23aはコネクタ部12に接触せずに、コネクタ部12の前面12bの一部を覆っている。
【0026】
例えば図6に示すように、電力制御装置10のケース11の上面11bには、プロテクタ20をケース11に固定するためのねじ穴31が形成されている。プロテクタ20のねじ穴25とケース11のねじ穴31とにボルト32を貫通させて締め付けることにより、プロテクタ20はケース11に固定される。
【0027】
プロテクタ20のねじ穴25は、長穴、又は、ボルト32の径よりも若干大きい丸穴であることが好ましい。これにより、ボルト32による取付公差を吸収することができ、電力制御装置10へのプロテクタ20の取り付けが容易となる。また、プロテクタ20は、長穴の長手方向、又は、若干大きい丸穴の任意の方向に摺動可能となる。
【0028】
なお、図6から図8においては、蓋40によって作業窓16が塞がれた状態が示されている。
【0029】
以上のようにプロテクタ20が取り付けられた電力制御装置10は、車両のエンジンコンパートメントに収容される。図9を参照して、電力制御装置10、プロテクタ20、及び他の車両機器の位置関係について説明する。図9は、エンジンコンパートメントに収容された本実施形態に係る電力制御装置を上面から見た図である。
【0030】
車両50においては、車室51の前方に位置して車室51とは隔壁52により仕切られた区画であるエンジンコンパートメント53に、電力制御装置10が収容されている。エンジンコンパートメント53には、電力制御装置10以外の車両機器も収容されている。この車両機器としては、例えばエンジン54やモータなどの駆動装置や、バッテリなどが該当する。
【0031】
電力制御装置10を車両50のエンジンコンパートメント53に収容した場合に、所定方向からの車両衝突が発生すると、車両衝突時の衝撃により電力制御装置10がエンジンコンパートメント53内で移動する。所定方向としては、例えば車両50の前方方向又は後方方向が該当する。例えば車両50の前方方向からの車両衝突が発生すると、電力制御装置10は車両50の後方側に向かってエンジンコンパートメント53内を移動する。プロテクタ20は、電力制御装置10の移動によりコネクタ部12の側面12aが衝突し得る車両機器と、コネクタ部12の側面12aとの間に設けられている。また、プロテクタ20の本体部21の衝突面21aが、電力制御装置10の移動方向に対して傾斜するように、プロテクタ20が設けられている。なお、衝突面21aが、電力制御装置10の移動の方向に対して傾斜した傾斜面の一例に相当する。例えばコネクタ部12の側面12aの位置を基準にして、電力制御装置10の移動方向の延長線上にある車両機器が、コネクタ部12の側面12aが衝突し得る車両機器に該当する。さらに換言すると、電力制御装置10の位置を基準にして、ケース11の側面11aからコネクタ部12が突出している方向にある領域のうち、コネクタ部12の側面12aが向かう領域に配置された車両機器が、コネクタ部12の側面12aが衝突し得る車両機器に該当する。
【0032】
具体的には、コネクタ部12を車両50の右側方側に向けた状態で、電力制御装置10がエンジンコンパートメント53の左側方側に配置されている場合には、電力制御装置10よりも後方側であって、電力制御装置10よりも右側方側に配置されている車両機器が、コネクタ部12の側面12aが衝突し得る車両機器に該当する。また、コネクタ部12を車両50の左側方側に向けた状態で、電力制御装置10がエンジンコンパートメント53の右側方側に配置されている場合には、電力制御装置10よりも後方側であって、電力制御装置10よりも左側方側に配置されている車両機器が、コネクタ部12の側面12aが衝突し得る車両機器に該当する。
【0033】
図9に示す例では、コネクタ部12を車両50の右側方側に向けた状態で、電力制御装置10がエンジンコンパートメント53の左側方側に配置されている。エンジン54は、電力制御装置10よりも後方側であって、電力制御装置10よりも右側方側に配置されている。例えば車両50の前方方向からの車両衝突が発生すると、図9の破線で示すように、電力制御装置10は実線で示す初期位置から矢印Zの方向に向かって車両50の後方側に移動する。電力制御装置10が車両50の後方側に移動すると、その移動方向の延長線上にはエンジン54が配置されているため、エンジン54が、コネクタ部12の側面12aに衝突する可能性がある。
【0034】
また、車両50の後方方向から車両衝突が発生すると、エンジン54は矢印Zとは反対の方向に向かって車両50の前方側に移動する。この場合には、電力制御装置10がエンジン54に向かって相対的に移動することになるため、その移動方向の延長線上にあるエンジン54が、コネクタ部12の側面12aに衝突する可能性がある。
【0035】
本実施形態では、コネクタ部12の側面12aとエンジン54との間に、電力制御装置10の移動方向に対して傾斜した衝突面21a(傾斜面)を有するプロテクタ20が設けられている。これにより、車両50の前方方向又は後方方向からの車両衝突が発生して、電力制御装置10が相対的にエンジン54に向かって移動したとしても、図9の破線で示すように、プロテクタ20の衝突面21aがエンジン54に接触する。そのことにより、コネクタ部12の側面12aがエンジン54に直接衝突することを回避して、コネクタ部12の破損を抑制することが可能となる。
【0036】
また、電力制御装置10の移動方向(矢印Zの方向)に対して、プロテクタ20の衝突面21aが斜めに配置されているため、エンジン54とプロテクタ20との衝突によって電力制御装置10に加わる荷重を、プロテクタ20によって斜めの方向に分散させることが可能となる。これにより、電力制御装置10に加わる衝撃を緩和することが可能となり、その結果、コネクタ部12及び電力制御装置10の破損を抑制することが可能となる。すなわち、エンジン54に接触した衝突面21aがガイドとして機能して、電力制御装置10を滑らせて電力制御装置10に加わる衝撃を緩和することが可能となる。
【0037】
また、コネクタ部12の側面12aはプロテクタ20によって覆われているため、コネクタ部12が側面12aからエンジン54に引っ掛かって電力制御装置10から離脱することを抑制することが可能となる。そのことにより、電力制御装置10内の内部電極の露出を防ぐことが可能となる。
【0038】
また、プロテクタ20のねじ穴25を、長穴、又はボルト32の径よりも若干大きい丸穴とすることにより、プロテクタ20は、長穴の長手方向、又は丸穴の任意の方向に摺動可能となる。この場合、プロテクタ20がエンジン54に衝突すると、プロテクタ20は衝突時の荷重を受けて滑りながら移動するため、ボルト32に負荷されるせん断応力を緩和することが可能となる。また、プロテクタ20がエンジン54に接触して、電力制御装置10のケース11に向かって(図8に示す矢印Dの方向に)プロテクタ20が滑りながら移動すると、当接面23a、24a、26aとケース11との接触が促される。これにより、プロテクタ20に負荷された荷重をケース11に分散して伝達することができるため、より大きな荷重から電力制御装置10を保護することが可能となる。
【0039】
また、プロテクタ20にブラケット26を設けることにより、当接部23、24に集中する荷重をブラケット26にも分散して電力制御装置10に伝達することが可能となる。これにより、当接部23、24に集中する力を緩和することが可能となる。
【0040】
なお、上述した実施形態では、車両50の前方方向又は後方方向からの車両衝突を想定したが、例えば、車両50の左斜め前方方向からの車両衝突が発生した場合であっても、プロテクタ20によって、コネクタ部12の破損、及び、電力制御装置10からのコネクタ部12の離脱を抑制することが可能となる。
【0041】
上述した実施形態では、プロテクタ20は電力制御装置10のケース11に設置されているが、ケース11以外の場所に設置されていてもよい。電力制御装置10の移動によりコネクタ部12の側面12aが衝突し得る車両機器と、コネクタ部12の側面12aとの間であれば、電力制御装置10以外の図示しないフレームなどに設置されていてもよい。
【0042】
また、車両機器の一例としてエンジン54を挙げて説明したが、コネクタ部12の側面12aが衝突し得る車両機器は、モータやバッテリであってもよい。
【0043】
上述した電力制御装置10の配置例は一例であり、電力制御装置10は、エンジンコンパートメント53内において別の場所に設置されていてもよい。例えば、コネクタ部12を車両50の左側方側、後方側、又は前方側に向けて、電力制御装置10を配置してもよい。これらの場合においても、車両衝突時の衝撃による電力制御装置10の移動によりコネクタ部12の側面12aが衝突し得る車両機器と、コネクタ部12の側面12aとの間に、電力制御装置10の移動方向に対して傾斜した衝突面21aを有するプロテクタ20を設けることにより、コネクタ部12の破損、及び、電力制御装置10からのコネクタ部12の離脱を抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0044】
10 電力制御装置、11 ケース、12 コネクタ部、11a,12a 側面、13 電極端子、14 固定部、15 開口部、16 作業窓、20 プロテクタ、21 本体部、21a 衝突面、22取付部、23,24 当接部、23a,24a,26a 当接面、26 ブラケット、50 車両、51 車室、52 隔壁、53 エンジンコンパートメント、54 エンジン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンコンパートメント内に配置され、バッテリからの電力により駆動される駆動装置への前記電力を制御する電力制御装置の保護装置において、
前記電力制御装置は、前記電力制御装置のケースの一面から突出して前記バッテリに接続されるコネクタ部を有し、
所定方向からの車両衝突時の衝撃による前記電力制御装置の移動により前記コネクタ部の側面が衝突し得る車両機器と、前記コネクタ部の側面との間に配置され、前記電力制御装置の移動の方向に対して傾斜した傾斜面を有するプロテクタを有する、
ことを特徴とする電力制御装置の保護装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力制御装置の保護装置において、
前記所定方向は、前記車両の前方方向又は後方方向であることを特徴とする電力制御装置の保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−126152(P2012−126152A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276667(P2010−276667)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】