説明

電力変換装置及びその製造方法

【課題】小型化が容易であるとともに、加圧部材の組みつけが容易な電力変換装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】複数の半導体モジュール30と冷却管310とを積層してなる積層体3と積層体3を収容するフレーム2とを有する電力変換装置1である。積層体3における積層方向の一端には積層体3を積層方向に加圧する加圧部材4が配置されている。加圧部材4は、積層体3に当接する押圧プレート40と、フレーム2の内側面201に当接する支持プレート41と、両者の間に設けられた弾性体42とからなる。加圧部材4は、弾性体42が積層方向に圧縮された圧縮状態で積層体3とフレーム2の内側面201との間に配設されている。加圧部材4は、弾性体42が圧縮状態よりも更に圧縮された状態を維持しつつ押圧プレート40と支持プレート41とを互いに係合可能に構成された係合手段(係合部412及び被係合部401)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュールと冷却管とを積層してなる積層体を有する電力変換装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車等には、モータを駆動させるため、バッテリからの直流電力を交流電力に変換する電力変換装置が搭載されている。電力変換装置はスイッチング素子を内蔵した半導体モジュールを複数個有しており、スイッチング素子に流れる被制御電流によって半導体モジュールが発熱する。
【0003】
この問題に対し、特許文献1や特許文献2に開示される電力変換装置が提案されている。これらの電力変換装置は、半導体モジュールと冷却管とを交互に積層した積層体を、その積層方向の一端から加圧部材によって押圧している。これにより、半導体モジュールと冷却管とを密着させ、冷却効率を向上させようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−245472号公報
【特許文献2】特開2011−211771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2の電力変換装置は、加圧部材の組み付け工程に以下のような問題がある。つまり、上記電力変換装置において加圧部材を組み付けようとすると、積層体の一端に配した加圧部材を積層方向に圧縮しつつフレームに固定しなければならない。この加圧部材は、積層体を積層方向に加圧するためのものであるため、その弾性力は極めて高い。そのため、加圧部材を圧縮しつつフレームに配置するためには、大きな押圧把持治具が必要になる。
【0006】
また、特許文献1に開示された電力変換装置では、加圧部材が圧縮された状態を維持しつつ固定ピンを挿入し、フレームに固定する作業が必要となる。そのため、上記押圧把持治具のためのスペースがフレーム内に必要となり、電力変換装置が大型化してしまうという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に開示された電力変換装置では、小型化は見込めるものの、加圧部材を圧縮しながら加圧部材をフレームに締結する必要があるため、組み付け工程の作業性が低くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の背景に鑑みてなされたもので、小型化が容易であるとともに、加圧部材の組み付けが容易な電力変換装置及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、複数の半導体モジュールと該半導体モジュールを冷却する冷却管とを積層してなる積層体と、該積層体を収容するフレームとを有する電力変換装置において、
上記積層体における積層方向の一端には、上記積層体を上記積層方向に加圧する加圧部材が配置されており、
該加圧部材は、上記積層体に当接する押圧プレートと、上記フレームの内側面に当接する支持プレートと、上記押圧プレートと上記支持プレートとの間に設けられた弾性体とからなり、
上記加圧部材は、上記弾性体が上記積層方向に圧縮された圧縮状態で上記積層体と上記フレームの内側面との間に配設されており、
上記加圧部材は、上記弾性体が上記圧縮状態よりも更に大きく圧縮された状態を維持しつつ上記押圧プレートと上記支持プレートとを互いに係合することができるよう構成された係合手段を備えていることを特徴とする電力変換装置にある(請求項1)。
【0010】
また、本発明の他の態様は、上記係合手段を係合した状態にある上記加圧部材を上記積層体における積層方向の一端に配置するように、上記積層体と上記加圧部材とを上記フレームの内側に収容配置する配置工程と、
その後、上記係合手段の係合状態を解除して、上記支持プレートを上記フレームの内側面に当接させるとともに、上記押圧プレートを上記積層体に当接させる解除工程とを有することを特徴とする電力変換装置の製造方法にある(請求項4)。
【発明の効果】
【0011】
上記電力変換装置は、弾性体が積層方向に圧縮された圧縮状態の上記加圧部材が、積層体とフレームの内側面との間に配設されている。そのため、フレーム内において上記積層体を積層方向に押圧し、半導体モジュールと冷却管とを密着させることができる。
【0012】
また、上記加圧部材は、弾性体が上記圧縮状態よりも更に大きく圧縮された状態を維持しつつ押圧プレートと支持プレートとを互いに係合することができるよう構成された係合手段を備えている。つまり、上記加圧部材は、上記係合手段が係合された状態を維持しつつ積層体とフレームの内側面との間に配置することができるよう構成されている。そのため、上記加圧部材の配置を容易に行うことができ、配置工程の作業性を向上させることができる。また、上記加圧部材を圧縮しつつ積層体とフレームの内側面との間に配置するための大きな押圧把持治具を用いる必要がない。そのため、フレーム内に上記押圧把持治具のためのスペースを設ける必要がなくなり、上記電力変換装置を容易に小型化することができる。
【0013】
また、上記電力変換装置の製造方法においては、上記係合手段を係合した状態、すなわち上記加圧部材を上記電力変換装置に組み付けた後における弾性体の圧縮状態よりも更に弾性体が圧縮された状態で、上記加圧部材をフレーム内の所定の場所に配置する。これにより、上記加圧部材を積層体とフレームの内側面との間に容易に配置することができる。そして、積層体と加圧部材とを所定の位置に配置した状態で、解除工程において上記係合手段の係合状態を解除することができる。そのため、配置工程及び解除工程の作業性を向上させることができる。
【0014】
以上のごとく、上記電力変換装置及びその製造方法によれば、小型化が容易であるとともに、加圧部材の組みつけが容易な電力変換装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1における、電力変換装置の平面図。
【図2】実施例1における、加圧部材の斜視図。
【図3】実施例1における、フレーム内に積層体及び加圧部材を配置した状態の平面図(配置工程後における平面図)。
【図4】実施例1において、係合手段が係合された状態における加圧部材の断面図。
【図5】実施例1において、解除治具の先端が圧入された状態における加圧部材の断面図。
【図6】実施例1において、係合状態を解除された状態における加圧部材の断面図(図1のA−A線矢視断面相当の図)。
【図7】実施例2における、フレームに開口部を設けない電力変換装置の平面図。
【図8】実施例2において、電力変換装置を積層方向の加圧部材が配置された側から見た側面図。
【図9】実施例2における、板ばねを用いた加圧部材の断面図(図7のB−B線矢視断面相当の図)。
【図10】実施例3における、係合手段が係合状態にある加圧部材及び解除治具の断面図。
【図11】実施例3において、解除治具の先端が圧入された状態における加圧部材の断面図。
【図12】実施例3において、係合状態を解除された状態における加圧部材の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記電力変換装置において、上記係合手段は、上記押圧プレートから上記積層方向に突出した被係合部と、上記支持プレートから上記積層方向に突出した係合部とからなり、上記被係合部と上記係合部とは、互いに積層方向に直交する方向に相対的に変位することにより係合し、あるいは係合解除できるよう構成されていてもよい(請求項2)。
この場合には、上記係合手段を簡素な構成とすることができるため、上記加圧部材を容易に製造することができるとともに、上記電力変換装置をより小型化することができる。また、上記加圧部材は、容易に上記係合手段を係合させ、または係合を解除させることが可能なものとなる。
【0017】
また、上記フレームは、上記支持プレートと当接する側壁に、上記加圧部材に向かって開口した開口部を有していてもよい(請求項3)。
この場合には、上記係合部及び上記被係合部の係合を解除するための解除治具を上記開口部より挿入することができる。そのため、上記加圧部材の組み付けをより容易に行うことができる。
【0018】
また、上記電力変換装置の製造方法において、上記係合手段は、上記押圧プレートから上記積層方向に突出した被係合部と、上記支持プレートから上記積層方向に突出した係合部とからなり、上記被係合部と上記係合部とは互いに積層方向に直交する方向に相対的に変位することにより係合し、あるいは係合解除できるよう構成されており、上記解除工程において、上記係合手段を係合した状態にある上記加圧部材に対して、上記積層方向から上記被係合部と上記係合部との間に解除治具を挿入することにより上記係合手段の係合状態を解除することができる(請求項5)。
この場合には、上記解除工程において、上記係合手段の係合状態を容易に解除することができる。そのため、上記解除工程の作業性をより向上させることができる。
【0019】
また、上記フレームは、上記支持プレートと当接する側壁に、上記加圧部材に向かって開口した開口部を有しており、上記解除工程において、上記解除治具を上記開口部より挿入することができる(請求項6)。
この場合には、上記解除工程において、上記解除治具を上記開口部より上記加圧部材に向けて容易に挿入することができる。そのため、上記解除工程の作業性をより向上させることができる。
【実施例】
【0020】
(実施例1)
上記電力変換装置及びその製造方法の実施例について、図1〜図6を用いて説明する。本例の電力変換装置1は、図1に示すごとく、複数の半導体モジュール30と該半導体モジュール30を冷却する冷却管310とを積層してなる積層体3と、該積層体3を収容するフレーム2とを有する。また、積層体3における積層方向(以下、この方向を「積層方向X」という。)の一端には、積層体3を積層方向Xに加圧する加圧部材4が配置されている。加圧部材4は、図1及び図2に示すごとく、積層体3に当接する押圧プレート40と、フレーム2の内側面201に当接する支持プレート41と、押圧プレート40と支持プレート41との間に設けられた弾性体42とからなる。また、加圧部材4は、弾性体42が積層方向Xに圧縮された圧縮状態で積層体3とフレーム2の内側面201との間に配設されている。そして、加圧部材4は、図3及び図4に示すごとく、弾性体42が上記圧縮状態(図1参照)よりも更に大きく圧縮された状態を維持しつつ押圧プレート40と支持プレート41とを互いに係合することができるよう構成された係合手段(後述する係合部412及び被係合部401)を備えている。
【0021】
積層体3は、図1に示すごとく、電力変換回路の一部を構成する複数の半導体モジュール30と複数の冷却管310とを交互に積層することにより形成されている。また、この複数の冷却管310は、冷媒導入管311、冷媒排出管312及び連結管313とともに、半導体モジュール30を冷却する冷却器31を構成している。
【0022】
冷却管310は、積層方向Xと直交する方向(以下、この方向を「横方向Y」という。)に長尺な形状である。冷却器31は、図1に示すごとく、この冷却管310を積層方向Xに複数並べてなるとともに、その長手方向(横方向Y)の両端部付近において、積層方向Xに隣り合う冷却管310同士を連結管313によって連結してなる。そして、冷却器31は、隣り合う冷却管310の間に半導体モジュール30を両主面から狭持することができるよう構成されている。これにより、半導体モジュール30は、積層方向Xに配列されている。
【0023】
また、積層方向Xの一端に配された冷却管310には、その横方向Yにおける両端に、図1に示すごとく、冷媒導入管311及び冷媒排出管312が配設されている。冷媒導入管311と冷媒排出管312とは、積層体3における積層方向Xの一端を基端として延伸され、フレーム2の積層方向Xにおける一対の側壁20(20a、20b)のうち一方の側壁20aから突出している。
【0024】
これにより、冷媒導入管311から導入された冷却媒体は、連結管313を適宜通り、各冷却管310に分配されると共にその長手方向(横方向Y)に流通可能となる。そして、各冷却管310を流れる間に、冷却媒体は半導体モジュール30との間で熱交換を行うことができる。熱交換により温度上昇した冷却媒体は、下流側の連結管313を適宜通り、冷媒排出管312に導かれ、冷却器31より排出される。
【0025】
冷却器31に狭持される半導体モジュール30は、IGBT素子等のスイッチング素子を樹脂モールドしてなるモールド部300と、該モールド部300から互いに反対方向に突出した主電極端子及び制御端子301とから構成される。主電極端子と制御端子301とは、積層体3に対して積層方向X及び横方向Yの双方と直交する方向(以下、この方向を「高さ方向Z」という。)に突出している。
【0026】
積層体3と加圧部材4とを収容するフレーム2は、図1に示すごとく、高さ方向Zから見て略長方形状を呈しており、高さ方向Zの両側が開放されている。また、積層方向Xに垂直な一対の側壁20のうち一方の側壁20aからは冷却器31の冷媒導入管311及び冷媒排出管312が突出している。また、他方の側壁20bには開口部200が形成されている。
【0027】
開口部200が形成された他方の側壁20bと積層体3との間には、図1に示すごとく、加圧部材4が係合手段(後述する係合部412及び被係合部401)の係合状態を解除した状態で配置されている。つまり、加圧部材4は、押圧プレート40が積層体3と、支持プレート41が他方の側壁20bにおけるフレーム2の内側面201と各々当接している。また、コイルばねよりなる弾性体42は、圧縮状態、つまりコイルばねの長さが自然長より短くなるよう積層方向Xに圧縮された状態で押圧プレート40と支持プレート41との間に配設されている。
【0028】
押圧プレート40は、図2に示すごとく、略長方形状の当接板部400と、当接板部400における高さ方向Zの両端からそれぞれ支持プレート41側に向かって突出形成された一対の被係合部401とを有する。当接板部400は図1に示すごとく積層方向Xと直交する向きに配置され、積層体3における積層方向Xの一端に配された冷却管310と面接触している。また、当接板部400における支持プレート41側の面の中央部には、弾性体42の一端が当接している。
【0029】
また、一対の被係合部401は、図2に示すごとく、横方向Yの略中央部に形成されている。一対の被係合部401の突出端部には、後述する支持プレート41に設けた係止爪413と係合可能に構成された係止穴402が配設されている。
【0030】
支持プレート41は、図2に示すごとく、長方形状の背面板部410と、該背面板部410の横方向Yにおける両端から押圧プレート40側へ突出するとともにその突出端から横方向Yの互いに反対側へ伸びる一対の翼部411と、背面板部410の高さ方向Zにおける両端から押圧プレート40側へ突出した一対の係合部412とを有する。背面板部410は、図1に示すごとく、横方向Yにおいてフレーム2の開口部200内に配置されている。また、一対の翼部411は、図1に示すごとくフレーム2の他方の側壁20bの内側面201と当接している。
【0031】
また、一対の係合部412は、支持プレート41における横方向Yの略中央部に形成されている。一対の係合部412の突出端部には、係止穴402と係合可能に構成された係止爪413が、高さ方向Zに向けて互いに反対方向に突出形成されている。
【0032】
このように形成された、押圧プレート40における被係合部401と、支持プレート41における係合部412とから、上記係合手段が構成されている。つまり、係合手段が係合された状態にあるときには、図4に示すごとく、係合部412に形成された係止爪413が被係合部401に形成された係止穴402に係合されている。他方、係合手段が係合を解除された状態にあるときには、図6に示すごとく係止爪413が係止穴402から外れている。また、係合部412と被係合部401とは、各々積層方向Xに垂直な方向(高さ方向Z)に変位可能に構成されている。これにより、係合部412または被係合部401の少なくとも一方を高さ方向Zに変位させることで、係止爪413と係止穴402とを係合させ、または図2に示すごとく係合を解除させることが可能となる。
【0033】
次に、電力変換装置1の製造方法を説明する。電力変換装置1を製造するに当たっては、図3に示すごとく係合手段(係合部412及び被係合部401)を係合した状態にある加圧部材4を積層体3における積層方向Xの一端に配置するように、積層体3と加圧部材4とをフレーム2の内側に収容配置する配置工程を行う。その後、図4から図6に示すごとく係合手段の係合状態を解除し、図1に示すごとく支持プレート41をフレーム2の内側面201に当接させるとともに、押圧プレート40を積層体3に当接させる解除工程を行う。
【0034】
配置工程において、積層体3と加圧部材4とは、高さ方向Zからフレーム2に挿入配置される。このとき、係合手段を係合した状態にある加圧部材4の弾性体42は、図3に示すごとく、完成品の状態にある電力変換装置1における弾性体42の圧縮状態(図1に示す状態)よりもさらに積層方向Xに圧縮されている。これにより、積層体3と加圧部材4とを互いに並べたときの積層方向Xにおける寸法を、フレーム2の内寸よりも小さくすることができる。つまり、積層体3と加圧部材4とを積層方向Xに互いに並べた状態でフレーム2内に配置したとき、これらとフレーム2との間に積層方向Xの遊びが存在する状態となる。これにより、フレーム2内に積層体3と加圧部材4とをスムーズに挿入配置できるよう構成されている。
【0035】
解除工程では、フレーム2内に配置した加圧部材4に対し、押圧プレート40に形成された一対の被係合部401に向けてフレーム2の開口部200より解除治具5を挿入する。解除治具5は、図4に示すごとく、板棒状の金属板の両端を直角に屈曲して形成されており、一対の先端部50がテーパー形状に加工されている。解除工程において、解除治具5の一対の先端部50を係合部412に沿わせながら被係合部401に向けて開口部200より挿入すると、一対の先端部50が一対の被係合部401と各々当接する。
【0036】
この状態から解除治具5を更に積層方向Xに押し込むと、図5に示すごとく、テーパー形状を付与された一対の先端部50が被係合部401と係合部412との間に圧入され、これに伴って一対の被係合部401が高さ方向Zに向けて互いに反対方向に変位する。これにより、係止爪413が係止穴402から外れ、図6に示すごとく係合部412と被係合部401との係合状態が解除される。そして、係合状態が解除されるとともに、図1に示すごとく、圧縮された弾性体42の復元力によって、押圧プレート40と支持プレート41とが互いに積層方向Xの反対側へ相対的に変位する。そして、押圧プレート40と支持プレート41とが各々積層体3とフレーム2の内側面201とに当接し、積層体3が積層方向Xに押圧される。
【0037】
次に、本例の作用効果を説明する。電力変換装置1は、図1に示すごとく、弾性体42が積層方向Xに圧縮された圧縮状態の加圧部材4が、積層体3とフレーム2の内側面201との間に配設されている。そのため、フレーム2内において積層体3を積層方向Xに押圧し、半導体モジュール30と冷却管310とを密着させることができる。
【0038】
また、加圧部材4は、図3に示すごとく、係合手段が係合された状態を維持しつつ積層体3とフレーム2の内側面201との間に配置することができるよう構成されている。これにより、加圧部材4の配置を容易に行うことができ、配置工程の作業性を向上させることができる。また、加圧部材4を圧縮しつつ積層体3とフレーム2の内側面201との間に配置するための大きな押圧把持治具を用いる必要がない。そのため、フレーム2内に押圧把持治具のためのスペースを設ける必要がなくなり、電力変換装置1を容易に小型化することができる。
【0039】
また、係合手段は、図2に示すごとく、押圧プレート40から積層方向Xに突出した被係合部401と、支持プレート41から積層方向Xに突出した係合部412とから構成されている。そして、被係合部401と係合部412とは、図5に示すごとく、互いに積層方向Xに直交する方向、つまり高さ方向Zに相対的に変位することにより係合し、あるいは係合解除できるよう構成されている。これにより、係合手段を簡素な構成とすることができる。その結果、加圧部材4を容易に製造することができるとともに、電力変換装置1をより小型化することができる。また、加圧部材4は、容易に係合手段を係合させ、または係合を解除させることが可能なものとなる。
【0040】
また、フレーム2は、図1に示すごとく、支持プレート41と当接する側壁20bに、加圧部材4に向かって開口した開口部200を有している。これにより、係合部412及び被係合部401の係合を解除するための解除治具5を開口部200より挿入することができる。そのため、加圧部材4の組み付けをより容易に行うことができる。
【0041】
また、電力変換装置1の製造方法においては、図4に示すごとく、係合手段を係合した状態、すなわち加圧部材4を電力変換装置1に組み付けた後における弾性体42の圧縮状態よりも更に弾性体42が圧縮された状態で、加圧部材4を図3に示すフレーム2内の所定の場所に配置する。これにより、加圧部材4を積層体3とフレーム2の内側面201との間に容易に配置することができる。そして、積層体3と加圧部材4とを所定の位置に配置した状態で、解除工程において係合手段の係合状態を解除することができる。そのため、配置工程及び解除工程の作業性を向上させることができる。
【0042】
また、解除工程においては、図5に示すごとく、係合手段を係合した状態にある加圧部材4に対して、積層方向Xから被係合部401と係合部412との間に解除治具5を挿入することにより係合手段の係合状態を解除する。また、解除治具5は開口部200より挿入される。これにより、解除工程において、係合手段の係合状態を容易に解除することができるとともに、解除治具5を開口部200より加圧部材4に向けて容易に挿入することができる。そのため、解除工程の作業性をより向上させることができる。
【0043】
以上のごとく、本例によれば、小型化が容易であるとともに、加圧部材の組みつけが容易な電力変換装置及びその製造方法を提供することができる。
【0044】
(実施例2)
本例は、図7〜図9に示すごとく、フレーム2に開口部200を形成しない例である。本例では、図7に示すごとく、フレーム2の積層方向Xに垂直な側壁20bに開口部200が形成されていない。また、加圧部材4がフレーム2に対して高さ方向Zにおける両側に突出している。つまり、図8に示すごとく、一対の係合部412と一対の被係合部401とが、フレーム2を挟んで高さ方向Zの両側に各々配設されている。
【0045】
また、図7に示すごとく、加圧部材4の支持プレート41が、押圧プレート40と同様の形状に形成されている。つまり、支持プレート41は、略長方形状の背面板部410と、背面板部410における高さ方向Zの両端からそれぞれ押圧プレート40側に向かって突出形成された一対の係合部412とを有する。背面板部410は図7に示すごとく積層方向Xと直交する向きに配置され、フレーム2の内側面201と面接触している。なお、本例においては、弾性体42として、横方向Yに長尺な板棒状の金属板よりなる板ばねを使用している。弾性体42は、横方向Yの中央部と両端部とがそれぞれ積層方向Xの互いに反対方向へ突出するように屈曲されている。そして、弾性体42の中央部は当接板部400の横方向Yにおける中央部に当接し、弾性体42の両端部は背面板部410の横方向Yにおける両端部に当接している。
【0046】
一対の係合部412は、背面板部410の高さ方向Zにおける一対の端面を基端として、図9に示すごとく、横方向Yの略中央部において積層方向Xに突出形成されている。そして、図9に示すごとく、一対の係合部412の突出端部には、係止穴402と係合可能に構成された係止爪413が配設されている。
【0047】
また、本例の製造方法における解除工程では、図9に示すごとく、解除治具5の一対の先端部50がフレーム2を挟んで高さ方向Zの両側に配置されるようにして解除治具5を挿入し、一対の被係合部401と係合部412との間に一対の先端部50を圧入させる。その他は実施例1と同様である。
【0048】
本例のごとくフレーム2に開口部200を形成しない場合には、フレーム2の強度を向上させることができる。これにより、弾性体42の復元力を充分に大きくすることができ、半導体モジュール30と冷却管310とを充分に密着させることができる。その結果、半導体モジュール30の冷却効率をより向上させることができる。
【0049】
また、係合手段(被係合部401と係合部412)がフレーム2に対して高さ方向Zの両側に配設されている。これにより、フレーム2に開口部200を形成する場合と同様に、解除治具5を積層方向Xから挿入することができ、加圧部材4の組み付けをより容易に行うことができる。その他、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0050】
(実施例3)
本例は、図10〜12に示すごとく、解除工程において、被係合部401に替えて係合部412を高さ方向Zに変位させることにより係合手段の係合状態を解除する例である。本例で用いる解除治具5は、実施例2と同様に、板棒状の金属板の両端を直角に屈曲して形成されている。そして、図10に示すごとく、解除治具5における一対の屈曲部51に、互いに向かい合う方向に突出した一対の突起部52を設けている。
【0051】
解除工程では、この解除治具5を加圧部材4に向けて挿入することにより、図11に示すごとく係合部412が突起部52に押されて高さ方向Zに変位する。これにより、図12に示すごとく係合部412と被係合部401との係合状態が解除される。その他は、実施例2と同様である。
【0052】
本例のごとく、係合手段における係合状態は、係合部412または被係合部401の少なくとも一方を他方に対して高さ方向Zに変位させることにより解除することができる。その他、実施例2と同様の作用効果を奏すことができる。
【0053】
なお、実施例1〜3は、係止穴402が被係合部401に設けられ、係止爪413が係合部412に設けられた例を示しているが、係止穴402を係合部412に、係止爪413を被係合部401に各々設けることも可能である。また、実施例1のようにフレーム2に開口部200を設けた構成において、加圧部材4の弾性体42として板ばねを用いてもよいし、実施例2のようにフレーム2に開口部200を設けない構成において、加圧部材4の弾性体42としてコイルばねを用いることもできる。また、加圧部材4を、冷媒導入管311及び冷媒排出管312が突出している側に配置することも可能である。この場合、加圧部材4は冷媒導入管311と冷媒排出管312との間に配置される。
【符号の説明】
【0054】
1 電力変換装置
2 フレーム
20 側壁
201 内側面
3 積層体
30 半導体モジュール
310 冷却管
4 加圧部材
40 押圧プレート
401 被係合部
41 支持プレート
412 係合部
42 弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体モジュールと該半導体モジュールを冷却する冷却管とを積層してなる積層体と、該積層体を収容するフレームとを有する電力変換装置において、
上記積層体における積層方向の一端には、上記積層体を上記積層方向に加圧する加圧部材が配置されており、
該加圧部材は、上記積層体に当接する押圧プレートと、上記フレームの内側面に当接する支持プレートと、上記押圧プレートと上記支持プレートとの間に設けられた弾性体とからなり、
上記加圧部材は、上記弾性体が上記積層方向に圧縮された圧縮状態で上記積層体と上記フレームの内側面との間に配設されており、
上記加圧部材は、上記弾性体が上記圧縮状態よりも更に大きく圧縮された状態を維持しつつ上記押圧プレートと上記支持プレートとを互いに係合することができるよう構成された係合手段を備えていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、上記係合手段は、上記押圧プレートから上記積層方向に突出した被係合部と、上記支持プレートから上記積層方向に突出した係合部とからなり、上記被係合部と上記係合部とは、互いに積層方向に直交する方向に相対的に変位することにより係合し、あるいは係合解除できるよう構成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置において、上記フレームは、上記支持プレートと当接する側壁に、上記加圧部材に向かって開口した開口部を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力変換装置を製造する方法であって、上記係合手段を係合した状態にある上記加圧部材を上記積層体における積層方向の一端に配置するように、上記積層体と上記加圧部材とを上記フレームの内側に収容配置する配置工程と、
その後、上記係合手段の係合状態を解除して、上記支持プレートを上記フレームの内側面に当接させるとともに、上記押圧プレートを上記積層体に当接させる解除工程とを有することを特徴とする電力変換装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の電力変換装置の製造方法において、上記係合手段は、上記押圧プレートから上記積層方向に突出した被係合部と、上記支持プレートから上記積層方向に突出した係合部とからなり、上記被係合部と上記係合部とは互いに積層方向に直交する方向に相対的に変位することにより係合し、あるいは係合解除できるよう構成されており、上記解除工程において、上記係合手段を係合した状態にある上記加圧部材に対して、上記積層方向から上記被係合部と上記係合部との間に解除治具を挿入することにより上記係合手段の係合状態を解除することを特徴とする電力変換装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電力変換装置の製造方法において、上記フレームは、上記支持プレートと当接する側壁に、上記加圧部材に向かって開口した開口部を有しており、上記解除工程において、上記解除治具を上記開口部より挿入することを特徴とする電力変換装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−105827(P2013−105827A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247406(P2011−247406)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】