説明

電力変換装置

【課題】ベース電力制御時と負荷追従制御時の電力変換器の制御応答を自動的に調整する機能を有する電力変換装置を提供する。
【解決手段】交流側が電力系統2に接続され、直流側に二次電池6を接続した電力変換器5と、電力変換器5の交流側の電力を検出する電力検出手段13と、電力指令値に一致するように電力検出手段13によって検出された電力変換器5の充放電電力を制御する制御手段20とで構成する。制御手段20は、電力指令値の変化量に応じて、制御手段20の出力応答特性を変更する応答特性変更手段211、212を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば上下水道処理場や学校等の公共設備、工場や変電所等で使用される二次電池を電源とした系統連系用の電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池を電源とした系統連系用の電力変換装置においては、電力系統側の要求によって電力を二次電池に充電する制御、また電力を二次電池から放電する制御が行われる。具体的には受電電力制御器から与えられる電力指令値と二次電池の充放電電力の差分が小さくなるように電力制御器が二次電池と電力系統の間に設けられた電力変換器の充放電電力量を制御する。
【0003】
受電電力制御器は、通常日々及び時間毎の電力需要の状況により予め決定される電力量に基づき電力制御器へ充放電電力指令値を与える。これは、予め決定された充放電電力指令値(ベース電力指令値)に追従するように充放電電力量を制御するベース電力制御と呼称することができる。これに対して、電力系統が事故などの影響で不安定になったときには高速に系統動揺を抑制する負荷追従制御が必要となる。この場合には、例えば予定外の電力変動に備えた強制充放電出力又は充放電電力出力抑制等の出力電力補正機能を備える必要があり、ベース電力指令量に負荷追従制御のための出力電力補正を加減算することによって全体の制御を達成することができる。
【0004】
このような出力電力補正を行なう場合の出力電力の全体の変動幅に着目し、電力系統と二次電池の充放電の状態に応じて充放電電力量の指令値に上限または下限を設けて効率的に制御を行う提案が為されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平9−65588号公報(第4−7頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示された手法は、通常のベース電力制御に加え、予定外の電力変動に備えた強制充放電出力又は充放電電力出力抑制等の負荷追従制御を行う場合の制御幅の大きさに着目して制御をスムースに行おうとするものであるが、制御をスムースに行うためには、ベース電力制御と負荷追従制御における制御応答の差にも着目する必要がある。
【0006】
二次電池を適用したシステムが接続される電力系統は、配電系統等の電力系統の末端部が多く、電力系統の電圧変動や安定度は融通される電力量の瞬時変動に対し大きく影響されることは周知である。そのため、二次電池から電力変換器を介して充放電される電力の制御応答を速くすると、電圧低下や振動等が発生して電力系統の電圧や安定性に影響を与え、電力系統に接続される機器に弊害が生じる恐れがある。
【0007】
一方、電力系統の電力量を一定に調整する負荷平準のための負荷追従制御においては、電力変動に対し瞬時に応答して電力系統の電力量の変動を抑制することが必要である。従って従来は電力系統の電力量の変動を抑制するための制御応答を決定するのに困難を生じていた。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するために為されたもので、例えばベース電力制御時と負荷追従制御時の電力変換器の制御応答を自動的に調整する機能を有する電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の電力変換装置は、交流側が電力系統に接続され、直流側に二次電池を接続した電力変換器と、前記電力変換器の交流側の電力を検出する電力検出手段と、電力指令値に一致するように前記電力検出手段によって検出された前記電力変換器の充放電電力を制御する制御手段とを具備し、前記制御手段は、前記電力指令の変化量に応じて、当該制御手段の出力応答特性を変更する応答特性変更手段を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えばベース電力制御時と負荷追従制御時の電力変換器の制御応答を自動的に調整する機能を有する電力変換装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0012】
図1に本発明の実施例1に係る電力変換装置の回路構成図を示す。
【0013】
図1(a)において、電力会社等から与えられる電力系統1は、図示しない受電設備を介して需要家の電力系統2に接続されている。そして電力系統2には遮断器3、変圧器4を介して電力変換器5が接続されている。電力変換器5は例えばスイッチング素子をブリッジ接続して構成される交直変換器であり、その直流出力には電力の充放電が可能な二次電池6が接続されている。従って電力変換器5は、二次電池6を充電するときはコンバータとして動作し、二次電池6の電力を放電するときはインバータとして動作する。この電力変換器5の充放電制御は、その詳細を後述する制御部20から与えられるゲートパルスによって電力変換器5を構成するスイッチング素子を適切にオンオフ制御することによって行われる。
【0014】
電力系統1から与えられる受電電力は、電流検出器7によって検出される電流信号及び電圧検出器8によって検出される電圧信号を電力検出器9に与えることによって検出される。そしてこの検出された受電電力信号は受電電力制御器10に与えられる。受電電力制御器10は、電力系統1から与えられる受電電力が所望の値となるように制御部20に対して電力指令を与える。
【0015】
電力変換器5が制御する充放電電力は、遮断器3の入力側に設けられた電流検出器11及び電圧検出器12の検出信号を電力検出器13に与えることによって検出される。そして電力検出器13はこの充放電電力信号を制御部20に与える。
【0016】
以下、制御部20の内部構成について説明する。
【0017】
電力検出器13によって検出された充放電電力信号は、受電電力制御器10から与えられる電力指令値に後述する前処理を施して補正した電力指令と電力制御器1内で比較され、その差分が小さくなるように電力制御器1は電流基準を出力して電流制御器22に与える。そして、電流制御器においては、図示しない電力変換器5の電流検出信号と上記電流基準を比較し、その差分が小さくなるように電圧基準を出力し、PWM制御器23に与える。PWM制御器23は電力変換器5の出力電圧が与えられた電圧基準となるように電力変換器5を構成するスイッチング素子にゲートパルスを与える。
【0018】
図1(b)は電力制御器21の一例を示す内部構成図である。図1(b)において、受電電力制御器10から与えられる電力指令は一次遅れ制御器211及び変化量検出器213に与えられる。一次遅れ制御器211の出力は切替器212に与えられる。
【0019】
変化量検出器213は単位時間あたりの電力指令の変化量を求める。デジタル制御の場合であれば、電力指令の変化量ΔPは、ΔP=(今回の電力指令値)−(前回の電力指令値)と定義することができる。変化量検出器213の出力は絶対値演算器214を介して比較器215に与えられる。そして比較器215において電力指令の変化量ΔPは切替設定器216で設定された変化量閾値と比較され、電力指令の変化量ΔPが変化量閾値を超えたとき、切替器212は一次遅れ制御器211の出力を選択する。電力指令の変化量ΔPが変化量閾値以下であれば切替器212は一次遅れ制御器211の入力を選択し、一次遅れ制御器21はバイパスされる。従って一次遅れ制御器211及び切替器212は、必要に応じて電力指令値の応答を変更する応答特性変更手段と言うことができる。
【0020】
切替器212の出力、すなわち応答特性変更手段によって補正された電力指令は減算器217に与えられる。減算器217において切替器212の出力から電力検出器13によって検出された充放電電力信号が減算され、その差分が比例積分制御器218に与えられる。比例積分制御器218においては入力された差分が小さくなるように比例積分制御を行い電流基準を出力する。
【0021】
以上の構成における作用効果について以下に説明する。
【0022】
前述したように、受電電力制御器10は、通常はベース電力指令値を用いて電力変換器5の充放電制御を行うが、この場合電力系統2の容量に対して比較的大きな割合の電力指令値で運転することが一般的である。従って電力系統2の容量に対して大きな割合の電力変動が瞬間的に発生した場合は、電力系統に電圧変動や振動を与える恐れがある。そのため、受電電力制御器10からの電力指令値に対する時間変化量を、変化量検出器213によって検出し、絶対値演算器214によって増減の絶対値を演算し、比較器215により設定された変化量閾値を超える変化量が発生した場合は、切替器212が一次遅れ制御器211の出力を選択し、一次遅れ制御器211の特性によって電力指令値の応答を滑らかに遅らせる。このようにすれば、電力変換器5が出力する充放電電力量は一次遅れ制御器211が持つ一次遅れ時定数に従って徐々に変化することになるので、電力系統2への影響を軽減することが可能となる。
【0023】
一方、電力系統2の電力を一定に保つ負荷平準のための負荷追従制御においては、常時変動する電力量を補償すればよく、その補償電力量は電力系統2の容量に対し比較的小さい量である。そのため電力を一定に保つためには、高速かつ少量の電力を制御すればよい。よって、図1に示す、変化量検出器21が微小な変化である場合は、比較器23及び切替器24は動作しないため、受電電力制御器10の指令に基づき、電力変換器5が高速に充放電電力を制御することによって、電力系統3の電力を一定に保つことが可能となる。
【0024】
尚、一次遅れ制御器211は、sを微分演算子、Tを一次遅れ時定数としたとき、1/(1+Ts)の一次遅れ応答特性を有する演算器であるが、入力の変動に対して滑らかに追従する演算器であれば良く、例えばランプ関数等の制御演算器であってもよい。
【0025】
また、一次遅れ制御器211を用いずに比例積分制御器218の積分時定数を切替えるようにしても良い。但しこの場合は、制御定数を変化させることによる安定性の維持を十分配慮する必要がある。
【実施例2】
【0026】
図2は本発明の実施例2に係る電力変換装置に使用される電力制御器の内部構成図である。この実施例2の各部について、図1(b)の本発明の実施例1に係る電力変換装置に使用される電力制御器の内部構成図の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明は省略する。この実施例2が実施例1と異なる点は、電力制御器21Aにおいて、切替器212、絶対値演算器214、比較器215及び切替設定器216を省くと共に参照テーブル219を設け、変化量検出器213の出力に応じて参照テーブル219から一時遅れ時定数Tの値を求め、一次遅れ制御器211の一時遅れ時定数を、参照テーブル219から求めた値に変更するように構成した点である。
【0027】
この実施例2の手法によれば、予め変化量に対応する一時遅れ定数をテーブル化することによって変化量検出器213の値に応じて一次遅れ制御器211の時定数を切替えることができるので、きめ細かい制御を行うことが可能となる。
【0028】
尚、変化量検出器213の出力の絶対値が同一のとき、同一の時定数を選択すれば良い場合は、実施例1と同様に変化量検出器213の出力側に絶対値演算器214を設け、その出力に応じて参照テーブル219から時定数を選択するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例1に係る電力変換装置の回路構成図。
【図2】本発明の実施例1に係る電力変換装置に使用される電力制御器の内部構成図。
【符号の説明】
【0030】
1 電力系統(電力会社)
2 電力系統(需要家)
3 遮断器
4 変圧器
5 電力変換器
6 蓄電池
7 電流検出器
8 電圧検出器
9 電力検出器
10 受電電力制御器
11 電流検出器
12 電圧検出器
13 電力検出器
20 制御部
21 電力制御器
22 電流制御器
23 PWM制御器
211 一次遅れ制御器
212 切替器
213 変化量検出器
214 絶対値演算器
215 比較器
216 切替設定器
217 減算器
218 比例積分制御器
219 参照テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流側が電力系統に接続され、直流側に二次電池を接続した電力変換器と、
前記電力変換器の交流側の電力を検出する電力検出手段と、
電力指令値に一致するように前記電力検出手段によって検出された前記電力変換器の充放電電力を制御する制御手段と
を具備し、
前記制御手段は、
前記電力指令値の変化量に応じて、当該制御手段の出力応答特性を変更する応答特性変更手段を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記電力指令値を前記応答特性変更手段を介して補正した電力指令と、前記電力検出手段との差分が小さくなるように電流基準を出力する電力制御手段と、
前記電流基準と前記電力変換器の電流との差分が小さくなるように電圧基準を出力する電流制御器と、
前記電力変換器の交流側電圧が前記電圧基準に一致するように前記電力変換器を構成するスイッチング素子にゲートパルスを供給するPWM制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記応答特性変更手段は、
前記電力指令値の変化量の絶対値が所定の閾値を超えたとき、前記電力指令値の応答を滑らかにするようにしたことを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記応答特性変更手段は、
前記電力指令値の変化量の絶対値が所定の閾値を超えたとき、前記電力指令値の応答を一次遅れ応答とするようにしたことを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記電力指令の変化量に応じて一次遅れ時定数を選択する参照テーブルを設け、
前記応答特性変更手段は、
前記電力指令値の応答を、前記参照テーブルで選択した一次遅れ時定数を有する一次遅れ応答とするようにしたことを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−11677(P2010−11677A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170031(P2008−170031)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】