説明

電力変換装置

【課題】電力変換装置の大容量化にともなって、整流ダイオードの直流耐電圧仕様を変更することなく、電力変換装置のサイズおよびコストの増大量を抑制する技術を提供する。
【解決手段】電力変換装置100は、電力変換素子を備え交流/直流変換を実行する第1・第2変換器80,81と、正側直流電源の母線Pと中性点電源の母線COMとの間、および母線COMと負側直流電源の母線Nとの間に、直流電圧の脈流を平滑化する各平滑コンデンサCp,Cnを備えている。さらに、電力変換装置100は、その平滑コンデンサCp,Cnの初期充電する初充電回路40を備えている。初充電回路40は、各単相全波整流ブリッジ回路P1,P2に、電圧低減用整流ダイオードDU1,DU2および電圧バランス抵抗R1を導入することによって、各整流ダイオードD1〜D8の直流耐電圧仕様を変更することなく、そのサイズとコストの増大量を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置の電力変換直流主回路に設置されるキャパシタを初期充電する初充電回路を備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置は、交流電動機を任意の回転速度で回転させるために用いられている。一般的に、電力変換装置は、交流を直流に変換するときに、正側直流電源と中間点である中間点電源との間、および負側直流電源と中間点電源との間に、整流電圧を平滑化する平滑コンデンサを備えている。この平滑コンデンサを予め所定の電圧にまで充電しておかないと、電力変換装置を起動した時に、過剰に充電電流が流れてしまう。そこで、初充電回路によって、予め平滑コンデンサを初期充電しておき、充電電流が過剰に流れてしまうことを防止している。
【0003】
初充電回路は、整流ダイオードと整流ダイオード電圧バランス用抵抗(以降、電圧バランス用抵抗という)との組み合わせによって構成されている(例えば、非特許文献1参照)。具体的には、整流ダイオードと電圧バランス用抵抗とを並列に接続して、初期充電を終了した後に、整流ダイオードに印加される直流電圧を、電圧バランス用抵抗によって調整している。すなわち、整流ダイオードへの印加電圧が、整流ダイオードの直流耐電圧仕様以下になるようにしている。通常は、整流ダイオードの直流耐電圧仕様は、正側直流電源と中間点電源との間の電圧、および負側直流電源と中間点電源との間の電圧に対して、7割程度のものが選ばれている
【0004】
しかし、鉄鋼圧延プラントに用いられる電力変換装置は、数kWから数千kW程度であり、大きな電力容量を必要としている。そのような大きな電力容量の電力変換装置に備えられる初充電回路には、高電圧に対応させたものが用いられる。その際、電圧バランス用抵抗に印加される電圧が高電圧化される。つまり、電圧バランス用抵抗の絶縁能力が高耐電圧化される必要がある。そして、高耐電圧化のために、電圧バランス用抵抗は、絶縁距離を大きく確保して、そのサイズが大幅に大きくなると共に、コストも大幅に増大する。すなわち、初充電回路のサイズが大きくなり、またコストも高くなるという問題がある。
【非特許文献1】平山勝乙、「はじめて学ぶ サイリスタとパワーエレクトロニクス」、技術評論社出版、平成7年11月25日(初版第12刷発行)、p.105-106
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電力変換装置の大容量化にともなって、初充電回路のサイズおよびコストが大幅に増大するという問題を解決するために、電圧バランス用抵抗のサイズおよびコストの増大量を抑制するという課題がある。また、同時に、電圧バランス用抵抗に並列に接続されている整流ダイオードの直流耐電圧性能を変更しないで済むようにするという課題もある。
そこで、本発明は、整流ダイオードに印加される電圧を低減させるために、電圧低減用整流ダイオードを新たに追加し、電圧バランス用抵抗の数の削減を図った初充電回路を備える電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の電力変換装置は、交流電圧を直流電圧に順変換する変換器と直流電圧を逆変換する変換器との間の3本の母線において、正側直流電源の母線と中性点電源の母線との間に設置され整流電圧を平滑化する第1のキャパシタと、中性点電源の母線と負側直流電源の母線との間に設置され整流電圧を平滑化する第2のキャパシタとを設置し、前記第1のキャパシタと前記第2のキャパシタとを初期充電する初充電回路を備え、前記初充電回路が、4つの整流ダイオードによって構成される第1の単相全波整流ブリッジ回路および第2の単相全波整流ブリッジ回路と、前記正側直流電源の母線と負側直流電源の母線間の直流電圧を分圧し、前記第1の単相全波整流ブリッジ回路に印加される直流電圧をバランスさせる第1の抵抗と、前記第2の単相全波整流ブリッジ回路に印加される直流電圧をバランスさせる第2の抵抗と、第1の整流ダイオードと、第2の整流ダイオードと、第3の抵抗とにより構成され、前記第1の整流ダイオードのアノードと前記第2の整流ダイオードのカソードとが接続されて、その直列接続された両端に並列に前記第3の抵抗が接続され、前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との間に、前記第3の抵抗が直列に接続され、前記第1の単相全波整流ブリッジ回路を構成する前記整流ダイオードのカソード同士が接続されている側の第1の抵抗の一端が前記正側直流電源の母線に接続され、前記第1の整流ダイオードのアノードと前記第2の整流ダイオードのカソードとが前記中性点電源の母線に接続され、前記第2の単相全波整流ブリッジ回路を構成する前記整流ダイオードのアノード同士が接続されている側の第2の抵抗の一端が前記負側直流電源の母線に接続され、前記初充電回路が、前記第1の単相全波整流ブリッジ回路の直列に接続されている前記整流ダイオードのアノードとカソードとの接続点および前記第2の単相全波整流ブリッジ回路の直列に接続されている前記整流ダイオードのアノードとカソードとの接続点のそれぞれに互いに絶縁された単相交流電圧が印加されること、を特徴とする。
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の電力変換装置は、交流電圧を順変換する変換器と直流電圧を逆変換する変換器との間の3本の母線において、正側直流電源の母線と中性点電源の母線との間に設置され整流電圧を平滑化する第1のキャパシタと、中性点電源の母線と負側直流電源の母線との間に設置され整流電圧を平滑化する第2のキャパシタとを設置し、前記第1のキャパシタと前記第2のキャパシタとを初期充電する初充電回路を備え、前記初充電回路が、4つの整流ダイオードによって構成される第1の単相全波整流ブリッジ回路および第2の単相全波整流ブリッジ回路と、前記正側直流電源の母線と負側直流電源の母線間の直流電圧を分圧し、前記第1の単相全波整流ブリッジ回路に印加される直流電圧をバランスさせる第1の抵抗と、前記第2の単相全波整流ブリッジ回路に印加される直流電圧をバランスさせる第2の抵抗と、第1の整流ダイオードと、第2の整流ダイオードと、第4の抵抗と、第5の抵抗とにより構成され、前記第1の抵抗と前記第4の抵抗とが直列接続され、前記第1の単相全波整流ブリッジ回路を構成する前記整流ダイオードのカソードが前記正側直流電源の母線に接続されるときは、前記第1の整流ダイオードのアノードが前記中性点電源の母線に接続され、前記第1の整流ダイオードのカソードが前記正側直流電源の母線に接続されるときは、前記第1の単相全波整流ブリッジ回路を構成する前記整流ダイオードのアノードが前記中性点電源の母線に接続され、前記第2の抵抗と前記第5の抵抗とが直列接続され、前記第2の単相全波整流ブリッジ回路を構成する前記整流ダイオードのカソードが前記中性点電源の母線に接続されるときは、前記第2の整流ダイオードのアノードが前記負側直流電源の母線に接続され、前記第2の整流ダイオードのカソードが前記中性点電源の母線に接続されるときは、前記第2の単相全波整流ブリッジ回路を構成する前記整流ダイオードのアノードが前記負側直流電源の母線に接続され、前記初充電回路が、前記第1の単相全波整流ブリッジ回路の直列に接続されている前記整流ダイオードのアノードとカソードとの接続点および前記第2の単相全波整流ブリッジ回路の直列に接続されている前記整流ダイオードのアノードとカソードとの接続点のそれぞれに互いに絶縁された単相交流電圧が印加されること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、初充電回路において、整流ダイオードに印加される電圧を低減させ、電圧バランス用抵抗の数の削減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための最良の形態(以降、「実施形態」という)について、適宜図面を用いながら詳細に説明する。
【0010】
《比較例》
初めに、比較例における電力変換装置を含む電力変換システムの構成について、図6を用いて説明する。図6は、比較例における電力変換装置を含む電力変換システムの構成を示す図である。
図6に示す電力変換システム310は、初充電回路200を備える電力変換装置300、主商用電源50、交流遮断器60、変圧器70、および交流電動機(ACM)90により構成される。
【0011】
まず、電力変換装置300について説明する。電力変換装置300は、直流を交流に変換する、または、交流を直流に変換する第1変換器80および第2変換器81と初充電回路200とを備えている。第1変換器80と第2変換器81との間には、正側直流電源の母線Pと中性点電源の母線COMとの間および負側直流電源の母線Nと中性点電源の母線COMとの間のそれぞれの整流電圧を平滑化する各平滑コンデンサCp,Cnが設けられている。
第1・第2変換器80,81は、スイッチング素子を備えていて、そのスイッチング素子が、第1・第2変換器80,81に印加されてくる交流電圧を導通、遮断することによって、直流電圧に変換する。また、第1・第2変換器80,81は、入力されてくる直流電圧(電力)を、任意の周波数、振幅の交流電圧(電力)に変換する。
【0012】
そして、主商用電源50から出力される3相交流電力は、主商用電源50と変圧器70との間を接続状態または遮断状態に切り替える交流遮断器60を介して変圧器70に伝達され、電力変換装置300に入力される。次に、電力変換装置300は、入力してきた交流電力を第1変換器80と各平滑コンデンサCp,Cnとによって一旦直流電力に変換し、第2変換器81によって、直流・交流変換を行って、ACM(90)へ交流電力を供給する。ACM(90)は、供給された交流電力によって、駆動される。
【0013】
また、出力電力を低減するときには、前記とは逆の経路を辿って、ACM(90)から入力された交流電力が、変換器81と各平滑コンデンサCp,Cnとによって直流電力に変換される。そして、その直流電力が変換器80によって商用周波数の交流電力に変換されて、変圧器70、交流遮断器60を介して、主商用電源50へ回生される。
【0014】
初充電回路200は、各平滑コンデンサCp,Cnを初期充電するための単相全波整流ブリッジ回路によって構成される。各平滑コンデンサCp,Cnが初充電回路200によって所定の電圧にまで初期充電されると、電力変換装置300の起動時において、主商用電源50から変換器80を介して、各平滑コンデンサCp,Cnへ流れる初期充電電流を抑制することが可能となる。
【0015】
なお、各平滑コンデンサCp,Cnの初期充電が行われるときには、主商用電源50は、交流遮断器60によって、変圧器70から遮断されている。そして、初充電用商用電源10から出力される交流電圧が、初充電用スイッチ20および初充電用変圧器30を介して、初充電回路200に印加され、各平滑コンデンサCp,Cnを初期充電する。初期充電の電圧値は、前記した変換器80を介する初期充電電流が過大とならない程度でよい。
なお、初充電用変圧器30は、出力端子(U1,V1)と出力端子(U2,V2)とを有し、それぞれの出力端子から単相の交流電圧を出力し、初充電用商用電源10に接続される一次側と二次側の2つの出力端子との間は全て絶縁されている。
【0016】
各平滑コンデンサCp,Cnの初期充電の電圧値が所定の電圧になったとき、交流遮断器60が通電状態に切り替えられ、その後、初充電用スイッチ20が遮断状態に切り替えられて、初充電用商用電源10は、初充電用変圧器30から遮断される。
【0017】
次に、初充電回路200の構成について説明する。図6に示すように、初充電回路200は、第1単相全波整流ブリッジ回路P210、第2単相全波整流ブリッジ回路P220、および各電圧バランス用抵抗r1〜r8によって構成されている。
なお、正側直流電源の母線Pと中性点電源の母線COMと間の電圧を、以降、P−COM間電圧Epということにする。また、中性点電源の母線COMと負側直流電源の母線Nとの間の電圧を、以降、COM−N間電圧Enということにする。ただし、通常は、Ep=Enとなっている。
【0018】
第1単相全波整流ブリッジ回路P210は、初充電用変圧器30の出力端子(U1,V1)の交流電圧を整流するための各整流ダイオードD1〜D4によって構成されている。整流ダイオードD1のアノードに整流ダイオードD2のカソードが接続され、整流ダイオードD3のアノードに整流ダイオードD4のカソードが接続され、各整流ダイオードD1,D3のカソードが接続され、各整流ダイオードD2,D4のアノードが接続されている。そして、初充電用変圧器30の出力端子(U1,V1)が、各整流ダイオードD1,D2の接続点、および、各整流ダイオードD3,D4の接続点に接続されている。
また、第1単相全波整流ブリッジ回路P210は、正側直流電源の母線Pと中性点電源の母線COMとに接続されている。すなわち、第1単相全波整流ブリッジ回路P210では、各整流ダイオードD1,D3のカソードが正側直流電源の母線Pに接続され、各整流ダイオードD1,D3のアノードがそれぞれ各整流ダイオードD2,D4のカソードに接続され、各整流ダイオードD2,D4のアノードが中性点電源の母線COMに接続されている。
【0019】
また、第2単相全波整流ブリッジ回路P220は、初充電用変圧器30の出力端子(U2,V2)の交流電圧を整流するための各整流ダイオードD5〜D8によって構成されている。整流ダイオードD5のアノードに整流ダイオードD6のカソードが接続され、整流ダイオードD7のアノードに整流ダイオードD8のカソードが接続され、各整流ダイオードD5,D7のカソードが接続され、各整流ダイオードD6,D8のアノードが接続されている。そして、初充電用変圧器30の出力端子(U2,V2)が、各整流ダイオードD5,D6の接続点、および、各整流ダイオードD7,D8の接続点に接続されている。
また、第2単相全波整流ブリッジ回路P220は、中性点電源の母線COMと負側直流電源の母線Nとに接続されている。すなわち、第2単相全波整流ブリッジ回路P220では、各整流ダイオードD5,D7のカソードが中性点電源の母線COMに接続され、各整流ダイオードD5,D7のアノードがそれぞれ各整流ダイオードD6,D8のカソードに接続され、各整流ダイオードD6,D8のアノードが負側直流電源の母線Nに接続されている。
【0020】
各電圧バランス用抵抗r1〜r8は、それぞれ各整流ダイオードD1〜D8に並列に接続されている。そして、各電圧バランス用抵抗r1〜r8は、初充電用スイッチ20の遮断後に、各整流ダイオードD1〜D8へ印加される直流電圧(Ep+En)を分圧する。ただし、図6では、各電圧バランス用抵抗r1〜r8は、全て同じ抵抗値であるものとする。したがって、図6に示す初充電回路200では、各整流ダイオードD1〜D4に印加される直流電圧は、P−COM電圧間Epの半分となる。また、各整流ダイオードD5〜D8に印加される直流電圧は、COM−N間電圧Enの半分となる。
なお、一般的に、各整流ダイオードD1〜D8の直流耐電圧仕様は、P−COM電圧間EpまたはCOM−N間電圧Enの7割程度のものが選ばれる。そのため、図6に示す初充電回路200は、各整流ダイオードD1〜D8の直流耐電圧仕様を満足していると言える。
【0021】
次に、初充電回路200の動作について説明する。まず、初充電用商用電源10の交流電圧は、初充電用変圧器30の出力端子(U1,V1)と別の出力端子(U2,V2)を介して、それぞれ第1単相全波整流ブリッジ回路P210と第2単相全波整流ブリッジ回路P220とに印加される。
【0022】
いま、第1単相全波整流ブリッジ回路P210において、出力端子U1の電位が出力端子V1の電位よりも大きい場合、平滑コンデンサCpへの初期充電電流は、出力端子U1→整流ダイオードD1→母線P→平滑コンデンサCp→母線COM→整流ダイオードD4→出力端子V1という経路を流れる。このとき、各整流ダイオードD2,D3に印加される電圧の振幅は、[出力端子U1の電位−出力端子V1の電位](所定の電圧)となる。また、電流が通流している各整流ダイオードD1,D4に発生する電圧の振幅は、各整流ダイオードD1,D4の順方向降下電圧となる。
【0023】
また、第1単相全波整流ブリッジ回路P210において、出力端子U1の電位が出力端子V1の電位よりも小さい場合、平滑コンデンサCpへの初期充電電流は、出力端子V1→整流ダイオードD3→母線P→平滑コンデンサCp→母線COM→整流ダイオードD2→出力端子U1という経路を流れる。このとき、各整流ダイオードD1,D4に印加される電圧の振幅は、[出力端子V1の電位−出力端子U1の電位](所定の電圧)となる。また、電流が通流している各整流ダイオードD2,D3に発生する電圧の振幅は、各整流ダイオードD1,D4の順方向降下電圧となる。
【0024】
したがって、初充電用スイッチ20が接続状態になっている間、各整流ダイオードD1〜D4へ印加される電圧の振幅は、式(1)で示される。
順方向降下電圧≦各整流ダイオードD1〜D4の電圧振幅≦所定の電圧 ・・式(1)
【0025】
次に、第2単相全波整流ブリッジ回路P220において、出力端子U2の電位が出力端子V2の電位よりも大きい場合、平滑コンデンサCnへの初期充電電流は、出力端子U2→整流ダイオードD5→母線COM→平滑コンデンサCn→母線N→整流ダイオードD8→出力端子V2という経路を流れる。このとき、各整流ダイオードD6,D7に印加される電圧の振幅は、[出力端子U2の電位−出力端子V2の電位](所定の電圧)となる。また、電流が通流している各整流ダイオードD5,D8に発生する電圧の振幅は、各整流ダイオードD5,D8の順方向降下電圧となる。
【0026】
また、第2単相全波整流ブリッジ回路P220において、出力端子U2の電位が出力端子V2の電位よりも小さい場合、平滑コンデンサCnへの初期充電電流は、出力端子V2→整流ダイオードD7→母線COM→平滑コンデンサCn→母線N→整流ダイオードD6→出力端子U2という経路を流れる。このとき、各整流ダイオードD5,D8に印加される電圧の振幅は、[出力端子V2の電位−出力端子U2の電位](所定の電圧)となる。また、電流が通流している各整流ダイオードD6,D7に発生する電圧の振幅は、各整流ダイオードD5,D8の順方向降下電圧となる。
【0027】
したがって、初充電用スイッチ20が接続状態になっている間、各整流ダイオードD5〜D8へ印加される電圧の振幅は、式(2)で示される。
順方向降下電圧≦各整流ダイオードD5〜D8の電圧振幅≦所定の電圧 ・・式(2)
【0028】
前記したようにして、各平滑コンデンサCp,Cnは、初充電回路200によって充電され、P−COM間電圧EpおよびCOM−N間電圧Enは所定の電圧まで昇圧される。ただし、所定の電圧は、各整流ダイオードD1〜D8の電圧振幅が直流耐電圧仕様を満足する範囲に設定されるものとする。
【0029】
次に、各平滑コンデンサCp,Cnが所定の電圧まで昇圧されたとき、交流遮断器60が接続状態に切り替えられ、主商用電源50の電力が変圧器70に供給される。また、交流遮断器60が接続状態に切り替えられた後、初充電用スイッチ20は遮断状態に切り替えられ、初充電回路200への電力の供給が止められる。
【0030】
そして、初充電用スイッチ20が遮断状態に切り替えられた後、各整流ダイオードD1〜D4に印加される直流電圧は、電圧バランス用抵抗による分圧電圧で決まるため、式(3)のように表される。
各整流ダイオードD1〜D4の電圧=Ep/2 ・・・式(3)
【0031】
また、初充電用スイッチ20が遮断状態に切り替えられた後、各整流ダイオードD5〜D8に印加される直流電圧は、電圧バランス用抵抗による分圧電圧で決まるため、式(4)のように表される。
各整流ダイオードD5〜D8の電圧=En/2 ・・・式(4)
【0032】
すなわち、各整流ダイオードD1〜D8の直流耐電圧は、P−COM間電圧EpおよびCOM−N間電圧Enの7割以下となっており、通常の直流耐電圧仕様を満たしている。
そして、前記したように、電力変換装置300の高電圧化を行うと、各電圧バランス用抵抗r1〜r8に印加される電圧も高くなる。したがって、各電圧バランス用抵抗r1〜r8の絶縁性能および抵抗値を増大させる必要がある。そのため、初充電回路200のサイズが大きくなり、コストも増加する。
【0033】
《第1実施形態》
第1実施形態における電力変換装置を含む電力変換システムの構成について、図1を用いて説明する。図1は、第1実施形態における電力変換装置を含む電力変換システムの構成を示す図である。
なお、図6に示した比較例における電力変換システム310と同様の機能を有する各部については、同じ符号を付している。
【0034】
まず、電力変換装置100について説明する。電力変換装置100は、直流を交流に変換する、または、交流を直流に変換する第1変換器80および第2変換器81と初充電回路40とを備えている。第1変換器80と第2変換器81との間には、正側直流電源の母線Pと中性点電源の母線COMとの間および負側直流電源の母線Nと中性点電源の母線COMとの間のそれぞれの整流電圧を平滑化する各平滑コンデンサCp,Cnが設けられている。
第1・第2変換器80,81は、スイッチング素子を備えていて、そのスイッチング素子が、第1・第2変換器80,81に印加されてくる交流電圧を導通、遮断することによって、直流電圧に変換する。また、第1・第2変換器80,81は、入力されてくる直流電圧(電力)を、任意の周波数、振幅の交流電圧(電力)に変換する。
【0035】
そして、主商用電源50から出力される3相交流電力は、主商用電源50と変圧器70との間を接続状態または遮断状態に切り替える交流遮断器60を介して変圧器70に伝達され、電力変換装置100に入力される。次に、電力変換装置100は、入力してきた交流電力を第1変換器80と各平滑コンデンサCp,Cnとによって一旦直流電力に変換し、第2変換器81によって、直流・交流変換を行って、ACM(90)へ交流電力を供給する。ACM(90)は、供給された交流電力によって、駆動される。
【0036】
また、出力電力を低減するときには、前記とは逆の経路を辿って、ACM(90)から入力された交流電力が、変換器81と各平滑コンデンサCp,Cnとによって直流電力に変換される。そして、その直流電力が変換器80によって商用周波数の交流電力に変換されて、変圧器70、交流遮断器60を介して、主商用電源50へ回生される。
【0037】
初充電回路40は、各平滑コンデンサCp,Cnを初期充電するための単相全波整流ブリッジ回路によって構成される。各平滑コンデンサCp,Cnが初充電回路40によって所定の電圧にまで初期充電されると、電力変換装置100の起動時において、主商用電源50から変換器80を介して、各平滑コンデンサCp,Cnへ流れる初期充電電流を抑制することが可能となる。
【0038】
なお、各平滑コンデンサCp,Cnの初期充電が行われるときには、主商用電源50は、交流遮断器60によって、変圧器70から遮断されている。そして、初充電用商用電源10から出力される交流電圧が、初充電用スイッチ20および初充電用変圧器30を介して、初充電回路40に印加され、各平滑コンデンサCp,Cnを初期充電する。初期充電の電圧値は、前記した変換器80を介する初期充電電流が過大とならない程度でよい。
なお、初充電用変圧器30は、出力端子(U1,V1)と出力端子(U2,V2)とを有し、それぞれの出力端子から単相の交流電圧を出力し、初充電用商用電源10に接続される側と双方の出力端子との間は全て絶縁されている。
【0039】
各平滑コンデンサCp,Cnの初期充電の電圧値が所定の電圧になったとき、交流遮断器60が通電状態に切り替えられ、その後、初充電用スイッチ20が遮断状態に切り替えられて、初充電用商用電源10は、初充電用変圧器30から遮断される。
【0040】
次に、初充電回路40の構成について説明する。図1に示すように、初充電回路40は、第1単相全波整流ブリッジ回路P1、第2単相全波整流ブリッジ回路P2、各電圧低減用整流ダイオードDU1,DU2および各電圧バランス用抵抗R1〜R3によって構成されている。
【0041】
第1単相全波整流ブリッジ回路P1(第1の単相全波整流ブリッジ回路)は、図6に示す比較例における第1単相全波整流ブリッジ回路P210と同様に、初充電用変圧器30の出力端子(U1,V1)の交流電圧を整流するための各整流ダイオードD1〜D4によって構成されている。そして、第1単相全波整流ブリッジ回路P1は、各整流ダイオードD1,D3のカソード同士を正側直流電源の母線Pに接続し、各整流ダイオードD2,D4のアノード同士に電圧低減用整流ダイオードDU1(第1の整流ダイオード)のカソードを接続し、その電圧低減用整流ダイオードDU1のアノードを介して、中性点電源の母線COMに接続している。
【0042】
また、第2単相全波整流ブリッジ回路P2(第2の単相全波整流ブリッジ回路)は、図6に示す比較例における第2単相全波整流ブリッジ回路P220と同様に、初充電用変圧器30の出力端子(U2,V2)の交流電圧を整流するための各整流ダイオードD5〜D8によって構成されている。第2単相全波整流ブリッジ回路Pは、各整流ダイオードD5,D7のカソード同士を電圧低減用整流ダイオードDU2(第2の整流ダイオード)のアノードに接続し、その電圧低減用整流ダイオードDU2のカソードを介して、中性点電源の母線COMに接続し、各整流ダイオードD6,D8のアノード同士を負側直流電源の母線Nに接続している。
【0043】
電圧低減用整流ダイオードDU1のアノードと電圧低減用整流ダイオードDU2のカソードとが接続されていて、電圧バランス用抵抗R1(第3の抵抗)は、各電圧低減用整流ダイオードDU1,DU2の直列接続に対して並列に接続される。電圧バランス用抵抗R2(第1の抵抗)は、第1単相全波整流ブリッジ回路P1の各整流ダイオードD1,D3のカソード同士と各整流ダイオードD2,D4のアノード同士とに接続されている。また、電圧バランス用抵抗R3(第2の抵抗)は、第2単相全波整流ブリッジ回路P2の各整流ダイオードD5,D7のカソード同士と各整流ダイオードD6,D8のアノード同士とに接続されている。
【0044】
次に、初充電回路40の動作について説明する。まず、初充電用商用電源10の交流電圧は、初充電用変圧器30の出力端子(U1,V1)と別の出力端子(U2,V2)を介して、それぞれ第1単相全波整流ブリッジ回路P1と第2単相全波整流ブリッジ回路P2とに印加される。
【0045】
いま、第1単相全波整流ブリッジ回路P1において、出力端子U1の電位が出力端子V1の電位よりも大きい場合、平滑コンデンサCpへの初期充電電流は、出力端子U1→整流ダイオードD1→母線P→平滑コンデンサCp→母線COM→電圧低減用整流ダイオードDU1→整流ダイオードD4→出力端子V1という経路を流れる。このとき、各整流ダイオードD2,D3に印加される電圧の振幅は、[出力端子U1の電位−出力端子V1の電位](所定の電圧)となる。また、電流が通流している各整流ダイオードD1,D4および電圧低減用整流ダイオードDU1に発生する電圧の振幅は、各整流ダイオードD1,D4の順方向降下電圧となる。
【0046】
また、第1単相全波整流ブリッジ回路P1において、出力端子U1の電位が出力端子V1の電位よりも小さい場合、平滑コンデンサCpへの初期充電電流は、出力端子V1→整流ダイオードD3→母線P→平滑コンデンサCp→母線COM→電圧低減用整流ダイオードDU1→整流ダイオードD2→出力端子U1という経路を流れる。このとき、各整流ダイオードD1,D4に印加される電圧の振幅は、[出力端子V1の電位−出力端子U1の電位](所定の電圧)となる。また、電流が通流している各整流ダイオードD2,D3および電圧低減用整流ダイオードDU1に発生する電圧の振幅は、各整流ダイオードD2,D3の順方向降下電圧となる。
【0047】
したがって、初充電用スイッチ20が接続状態になっている間、各整流ダイオードD1〜D4へ印加される電圧の振幅は、式(5)で示される。
順方向降下電圧≦各整流ダイオードD1〜D4の電圧振幅≦所定の電圧 ・・式(5)
【0048】
次に、第2単相全波整流ブリッジ回路P2において、出力端子U2の電位が出力端子V2の電位よりも大きい場合、平滑コンデンサCnへの初期充電電流は、出力端子U2→整流ダイオードD5→電圧低減用整流ダイオードDU2→母線COM→平滑コンデンサCn→母線N→整流ダイオードD8→出力端子V2という経路を流れる。このとき、各整流ダイオードD6,D7に印加される電圧の振幅は、[出力端子U2の電位−出力端子V2の電位](所定の電圧)となる。また、電流が通流している各整流ダイオードD5,D8および電圧低減用整流ダイオードDU2に発生する電圧の振幅は、各整流ダイオードD5,D8の順方向降下電圧となる。
【0049】
また、第2単相全波整流ブリッジ回路P2において、出力端子U2の電位が出力端子V2の電位よりも小さい場合、平滑コンデンサCnへの初期充電電流は、出力端子V2→整流ダイオードD7→電圧低減用整流ダイオードDU2→母線COM→平滑コンデンサCn→母線N→整流ダイオードD6→出力端子U2という経路を流れる。このとき、各整流ダイオードD5,D8に印加される電圧の振幅は、[出力端子V2の電位−出力端子U2の電位](所定の電圧)となる。また、電流が通流している各整流ダイオードD6,D7および電圧低減用整流ダイオードDU2に発生する電圧の振幅は、各整流ダイオードD6,D7の順方向降下電圧となる。
【0050】
したがって、初充電用スイッチ20が接続状態になっている間、各整流ダイオードD5〜D8へ印加される電圧の振幅は、式(6)で示される。
順方向降下電圧≦各整流ダイオードD5〜D8の電圧振幅≦所定の電圧 ・・式(6)
【0051】
前記したようにして、各平滑コンデンサCp,Cnは初充電回路40によって充電され、P−COM間電圧EpおよびCOM−N間電圧Enは所定の電圧まで昇圧される。ただし、所定の電圧は、各整流ダイオードD1〜D8の電圧振幅が直流耐電圧仕様を満足する範囲に設定されるものとする。
【0052】
次に、各平滑コンデンサCp,Cnが所定の電圧まで昇圧されたとき、交流遮断器60が接続状態に切り替えられ、主商用電源50の電力が変圧器70に供給される。また、交流遮断器60が接続状態に切り替えられた後、初充電用スイッチ20は遮断状態に切り替えられ、初充電回路40への電力の供給が止められる。
【0053】
そして、初充電用スイッチ20が遮断状態に切り替えられた後、各整流ダイオードD1〜D4に印加される直流電圧は、各電圧バランス用抵抗R1〜R3による分圧電圧で決まるため、式(7)のように表される。ただし、各電圧バランス用抵抗R1〜R3の抵抗値は、全て等しいものとする。なお、P−COM間電圧EpとCOM−N間電圧Enとは、通常、Ep=Enとなっている。
各整流ダイオードD1〜D4の電圧=(Ep+En)/3=2Ep/3 ・・式(7)
(ただし、Ep=En)
【0054】
また、初充電用スイッチ20が遮断状態に切り替えられた後、各整流ダイオードD5〜D8に印加される直流電圧は、各電圧バランス用抵抗R1〜R3による分圧電圧で決まるため、式(8)のように表される。
各整流ダイオードD5〜D8の電圧=(Ep+En)/3=2En/3 ・・式(8)
(ただし、Ep=En)
【0055】
また、初充電用スイッチ20が遮断状態に切り替えられた後、各電圧低減用整流ダイオードDU1,Du2に印加される直流電圧は、各電圧バランス用抵抗R1〜R3による分圧電圧で決まるため、式(9)のように表される。
各電圧低減用整流ダイオードDU1,DU2の電圧=
(Ep+En)/3=2En/3 ・・式(9)
(ただし、Ep=En)
【0056】
以上、第1実施形態において説明した初充電回路40は、比較例における初充電回路200と比較して、式(5)および式(6)が式(1)および式(2)と同様になる。また、第1実施形態における初充電回路40は、各電圧低減用整流ダイオードDU1,DU2を新たに追加することによって、各整流ダイオードD1〜D8の直流耐電圧および各電圧低減用整流ダイオードDU1,DU2の直流耐電圧が、P−COM間電圧EpまたはCOM−N間電圧Enの7割以下となっていて(式(7)および式(8)参照)、通常の直流耐電圧仕様を満たしている。これらのことから、第1実施形態において説明した初充電回路40は、比較例における初充電回路200の代替が可能である。
【0057】
そして、第1単相全波整流ブリッジ回路P1および第2単相全波整流ブリッジ回路P2における各整流ダイオードD1〜D8の直流耐電圧仕様を変更することなしに、電圧バランス用抵抗の数が減少し、電圧低減用整流ダイオードは増加した。
ここで、電圧バランス用抵抗の数の減少による効果と、電圧低減用整流ダイオードの増加による効果を総合すると、電圧バランス用抵抗の数の減少の方が、電圧低減用整流ダイオードの数の増加よりも、初充電回路40の小型化およびコスト低減への効果が大きいと言える。この理由は、高耐電圧用の電圧バランス用抵抗のサイズが電圧低減用整流ダイオードのサイズより大きく、また、電圧バランス用抵抗のコストが電圧低減用整流ダイオードのコストより大きいためである。
【0058】
《第2実施形態》
次に、第2実施形態における電力変換装置を含む電力変換システムの構成について、図2を用いて説明する。図2は、第2実施形態における電力変換装置を含む電力変換システムの構成を示す図である。
なお、図2において、図1に示した第1実施形態における電力変換システム110と同様の機能を有する各部については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0059】
まず、初充電回路40aの構成について、第1実施形態における初充電回路40と異なる点について以下に説明する。
図2に示すように、初充電回路40aでは、図1に示す電圧バランス用抵抗R1がなくなり、電圧バランス用抵抗R4(第4の抵抗)が電圧低減用整流ダイオードDU1と並列に接続され,電圧バランス用抵抗R5(第5の抵抗)が電圧低減用整流ダイオードDU2と並列に接続されている。その他の回路構成は、第1実施形態における回路構成と同様である。
【0060】
次に、初充電回路40aの動作について説明する。
いま、第1単相全波整流ブリッジ回路P1において、平滑コンデンサCpへの初期充電電流の経路は、第1実施形態における平滑コンデンサCpへの初期充電電流の経路と同様である。
したがって、初充電用スイッチ20が接続状態になっている間、各整流ダイオードD1〜D4へ印加される電圧の振幅は、式(10)で示される。
順方向降下電圧≦各整流ダイオードD1〜D4の電圧振幅≦所定の電圧・・式(10)
【0061】
また、第2単相全波整流ブリッジ回路P2において、平滑コンデンサCnへの初期充電電流の経路は、第1実施形態における平滑コンデンサCnへの初期充電電流の経路と同様である。
したがって、初充電用スイッチ20が接続状態になっている間、各整流ダイオードD5〜D8へ印加される電圧の振幅は、式(11)で示される。
順方向降下電圧≦各整流ダイオードD5〜D8の電圧振幅≦所定の電圧・・式(11)
【0062】
前記したようにして、各平滑コンデンサCp,Cnは初充電回路40aによって充電され、P−COM間電圧EpおよびCOM−N間電圧Enは所定の電圧まで昇圧される。ただし、所定の電圧は、各整流ダイオードD1〜D8の電圧振幅が直流耐電圧仕様を満足する範囲に設定されるものとする。
【0063】
次に、各平滑コンデンサCp,Cnが所定の電圧まで昇圧されたとき、交流遮断器60が接続状態に切り替えられ、主商用電源50の電力が変圧器70に供給される。また、交流遮断器60が接続状態に切り替えられた後、初充電用スイッチ20は遮断状態に切り替えられ、初充電回路40aへの電力の供給が止められる。
【0064】
そして、初充電用スイッチ20が遮断状態に切り替えられた後、各整流ダイオードD1〜D4に印加される直流電圧は、各電圧バランス用抵抗R2〜R5による分圧電圧で決まるため、式(12)のように表される。ただし、各電圧バランス用抵抗R2〜R5の抵抗値は、全て等しいものとする。
各整流ダイオードD1〜D4の電圧=(Ep+En)/4=Ep/2 ・・式(12)
(ただし、Ep=En)
【0065】
また、初充電用スイッチ20が遮断状態に切り替えられた後、各整流ダイオードD5〜D8に印加される直流電圧は、各電圧バランス用抵抗R2〜R5による分圧電圧で決まるため、式(13)のように表される。
各整流ダイオードD5〜D8の電圧=(Ep+En)/4=En/2 ・・式(13)
(ただし、Ep=En)
【0066】
また、初充電用スイッチ20が遮断状態に切り替えられた後、各電圧低減用整流ダイオードDU1,Du2に印加される直流電圧は、各電圧バランス用抵抗R4,R5による分圧電圧で決まるため、式(14)のように表される。
各電圧低減用整流ダイオードDU1,DU2の電圧=
(Ep+En)/4=En/2 ・・式(14)
(ただし、Ep=En)
【0067】
以上、第2実施形態において説明した初充電回路40aは、比較例における初充電回路200と比較して、式(10)および式(11)が式(1)および式(2)と同様になる。また、第2実施形態における初充電回路40aは、各整流ダイオードD1〜D8の直流耐電圧および各電圧低減用整流ダイオードDU1,DU2の直流耐電圧が、P−COM間電圧EpまたはCOM−N間電圧Enの半分となっていて(式(12)〜式(14)参照)、通常の直流耐電圧仕様を満たしている。これらのことから、第2実施形態において説明した初充電回路40aは、比較例における初充電回路200の代替が可能である。
【0068】
そして、第1単相全波整流ブリッジ回路P1および第2単相全波整流ブリッジ回路P2における各整流ダイオードD1〜D8の直流耐電圧仕様を変更することなしに、電圧バランス用抵抗の数が減少し、電圧低減用整流ダイオードの数は増加した。
ここで、電圧バランス用抵抗の数の減少による効果と、電圧低減用整流ダイオードの数の増加による効果を総合的に判断すると、電圧バランス用抵抗の数の減少の方が、電圧低減用整流ダイオードの数の増加よりも、初充電回路40aの小型化およびコスト低減への効果が大きいと言える。この理由は、高耐電圧用の電圧バランス用抵抗のサイズが電圧低減用整流ダイオードのサイズより大きく、また、電圧バランス用抵抗のコストが電圧低減用整流ダイオードのコストより大きいためである。
【0069】
《第3実施形態》
次に、第3実施形態における電力変換装置を含む電力変換システムの構成について、図3を用いて説明する。図3は、第3実施形態における電力変換装置を含む電力変換システムの構成を示す図である。
なお、図3において、図2に示した第2実施形態における電力変換システム110aと同様の機能を有する各部については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0070】
まず、初充電回路40bの構成について、第2実施形態における初充電回路40aと異なる点について以下に説明する。
電圧低減用整流ダイオードDU1のアノードと電圧バランス用抵抗R4が、第1単相全波整流ブリッジ回路P1を構成する各整流ダイオードD1,D3のカソード同士に接続され、電圧低減用整流ダイオードDU1のカソードと電圧バランス用抵抗R4の他端が、母線Pに接続される。そして、電圧低減用整流ダイオードDU2のアノードと電圧バランス用抵抗R5が、第1単相全波整流ブリッジ回路P1を構成する各整流ダイオードD2,D4のアノード同士に接続され、各整流ダイオードD2,D4のアノードが、母線COMに接続される。
【0071】
なお、第2単相全波整流ブリッジ回路P2、電圧低減用整流ダイオードDU2、電圧バランス用抵抗R5、および各母線COM,Nの接続構成は、図2に示す第2実施形態における初充電回路40aの構成と同じである。
【0072】
次に、初充電回路40bの動作について説明する。
まず、初充電用商用電源10の交流電圧は、初充電用変圧器30の出力端子(U1,V1)と別の出力端子(U2,V2)を介して、それぞれ第1単相全波整流ブリッジ回路P1と第2単相全波整流ブリッジ回路P2とに印加される。
【0073】
いま、第1単相全波整流ブリッジ回路P1において、出力端子U1の電位が出力端子V1の電位よりも大きい場合、平滑コンデンサCpへの初期充電電流は、出力端子U1→整流ダイオードD1→電圧低減用整流ダイオードDU1→母線P→平滑コンデンサCp→母線COM→整流ダイオードD4→出力端子V1という経路を流れる。このとき、各整流ダイオードD2,D3に印加される電圧の振幅は、[出力端子U1の電位−出力端子V1の電位](所定の電圧)となる。また、電流が通流している各整流ダイオードD1,D4および電圧低減用整流ダイオードDU1に発生する電圧の振幅は、各整流ダイオードD1,D4の順方向降下電圧となる。
【0074】
また、第1単相全波整流ブリッジ回路P1において、出力端子U1の電位が出力端子V1の電位よりも小さい場合、平滑コンデンサCpへの初期充電電流は、出力端子V1→整流ダイオードD3→電圧低減用整流ダイオードDU1→母線P→平滑コンデンサCp→母線COM→整流ダイオードD2→出力端子U1という経路を流れる。このとき、各整流ダイオードD1,D4に印加される電圧の振幅は、[出力端子V1の電位−出力端子U1の電位](所定の電圧)となる。また、電流が通流している各整流ダイオードD2,D3および電圧低減用整流ダイオードDU1に発生する電圧の振幅は、各整流ダイオードD2,D3の順方向降下電圧となる。
【0075】
したがって、初充電用スイッチ20が接続状態になっている間、各整流ダイオードD1〜D4へ印加される電圧の振幅は、式(15)で示される。
順方向降下電圧≦各整流ダイオードD1〜D4の電圧振幅≦所定の電圧・・式(15)
【0076】
次に、第2単相全波整流ブリッジ回路P2において、平滑コンデンサCnへの初期充電電流の経路は、第2実施形態における平滑コンデンサCnへの初期充電電流の経路と同じなので、説明を省略する。
【0077】
このとき、初充電用スイッチ20が接続状態になっている間、各整流ダイオードD5〜D8へ印加される電圧の振幅は、式(16)で示される。
順方向降下電圧≦各整流ダイオードD5〜D8の電圧振幅≦所定の電圧・・式(16)
【0078】
前記したように、各平滑コンデンサCp,Cnは、初充電回路40bによって充電され、P−COM間電圧EpおよびCOM−N間電圧Enは所定の電圧まで昇圧される。ただし、所定の電圧は、各整流ダイオードD1〜D8の電圧振幅が直流耐電圧仕様を満足する範囲に設定されるものとする。
【0079】
次に、各平滑コンデンサCp,Cnが所定の電圧まで昇圧されたとき、交流遮断器60が接続状態に切り替えられ、主商用電源50の電力が変圧器70に供給される。また、交流遮断器60が接続状態に切り替えられた後、初充電用スイッチ20は遮断状態に切り替えられ、初充電回路40bへの電力の供給が止められる。
【0080】
そして、初充電用スイッチ20が遮断状態に切り替えられた後、各整流ダイオードD1〜D8および各電圧低減用整流ダイオードDU1,Du2に印加される直流電圧は、各電圧バランス用抵抗R2〜R5による分圧電圧で決まるため、式(17),式(18)および式(19)のように表される。ただし、各電圧バランス用抵抗R2〜R5の抵抗値は、全て等しいものとする。
各整流ダイオードD1〜D4の電圧=(Ep+En)/4=Ep/2 ・・式(17)
各整流ダイオードD5〜D8の電圧=(Ep+En)/4=En/2 ・・式(18)
各電圧低減用整流ダイオードDU1,DU2の電圧=
(Ep+En)/4=En/2 ・・式(19)
(ただし、Ep=En)
【0081】
以上、第3実施形態において説明した初充電回路40bは、比較例における初充電回路200と比較して、式(15)および式(16)が式(1)および式(2)と同様になる。また、第3実施形態における初充電回路40bは、各整流ダイオードD1〜D8の直流耐電圧および各電圧低減用整流ダイオードDU1,DU2の直流耐電圧が、P−COM間電圧EpまたはCOM−N間電圧Enの半分となっていて(式(17)〜式(19)参照)、通常の直流耐電圧仕様を満たしている。これらのことから、第3実施形態において説明した初充電回路40bは、比較例における初充電回路200の代替が可能である。
【0082】
そして、第1単相全波整流ブリッジ回路P1および第2単相全波整流ブリッジ回路P2における各整流ダイオードD1〜D8の直流耐電圧仕様を変更することなしに、電圧バランス用抵抗の数が減少し、電圧低減用整流ダイオードの数は増加した。
ここで、電圧バランス用抵抗の数の減少による効果と、電圧低減用整流ダイオードの数の増加による効果を総合的に判断すると、電圧バランス用抵抗の数の減少の方が、電圧低減用整流ダイオードの数の増加よりも、初充電回路40bの小型化およびコスト低減への効果が大きいと言える。この理由は、高耐電圧用の電圧バランス用抵抗のサイズが電圧低減用整流ダイオードのサイズより大きく、また、電圧バランス用抵抗のコストが電圧低減用整流ダイオードのコストより大きいためである。
【0083】
《第4実施形態》
第4実施形態における電力変換装置を含む電力変換システムの構成について、図4を用いて説明する。図4は、第4実施形態における電力変換装置を含む電力変換システムの構成を示す図である。
なお、図4において、図2に示したのと同様の機能を有する各部については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0084】
まず、初充電回路40cの構成について、第2実施形態における初充電回路40aと異なる点について以下に説明する。
電圧低減用整流ダイオードDU2のカソードと電圧バランス用抵抗R5が、第2単相全波整流ブリッジ回路P2を構成する各整流ダイオードD6,D8のアノード同士に接続され、電圧低減用整流ダイオードDU2のアノードと電圧バランス用抵抗R4の他端が、母線Nに接続される。そして、電圧低減用整流ダイオードDU1のアノードと電圧バランス用抵抗R4が、第2単相全波整流ブリッジ回路P2を構成する各整流ダイオードD5,D7のカソード同士に接続され、各整流ダイオードD5,D7のカソード同士が、母線COMに接続される。
【0085】
なお、第1単相全波整流ブリッジ回路P1、電圧低減用整流ダイオードDU1、電圧バランス用抵抗R4、および各母線P,COMの接続構成は、図2に示す第2実施形態における初充電回路40aの構成と同じである。
【0086】
次に、初充電回路40cの動作について説明する。
初充電用商用電源10の交流電圧は、初充電用変圧器30の出力端子(U1,V1)と別の出力端子(U2,V2)を介して、それぞれ第1単相全波整流ブリッジ回路P1と第2単相全波整流ブリッジ回路P2とに入力される。
【0087】
第1単相全波整流ブリッジ回路P1において、平滑コンデンサCpへの初期充電電流の経路は、第2実施形態における平滑コンデンサCpへの初期充電電流の経路と同様であるので説明を省略する。
なお、初充電用スイッチ20が接続状態になっている間、各整流ダイオードD1〜D4へ印加される電圧の振幅は、式(20)で示される。
順方向降下電圧≦各整流ダイオードD1〜D4の電圧振幅≦所定の電圧・・式(20)
【0088】
次に、第2単相全波整流ブリッジ回路P2において、出力端子U2の電位が出力端子V2の電位よりも大きい場合、平滑コンデンサCnへの初期充電電流は、出力端子U2→整流ダイオードD5→母線COM→平滑コンデンサCn→母線N→電圧低減用整流ダイオードDU2→整流ダイオードD8→出力端子V2という経路を流れる。このとき、各整流ダイオードD6,D7に印加される電圧の振幅は、[出力端子U2の電位−出力端子V2の電位](所定の電圧)となる。また、電流が通流している各整流ダイオードD5,D8および電圧低減用整流ダイオードDU2に発生する電圧の振幅は、各整流ダイオードD5,D8の順方向降下電圧となる。
【0089】
また、第2単相全波整流ブリッジ回路P2において、出力端子U2の電位が出力端子V2の電位よりも小さい場合、平滑コンデンサCnへの初期充電電流は、出力端子V2→整流ダイオードD7→母線COM→平滑コンデンサCn→母線N→電圧低減用整流ダイオードDU2→整流ダイオードD6→出力端子U2という経路を流れる。このとき、各整流ダイオードD5,D8に印加される電圧の振幅は、[出力端子V2の電位−出力端子U2の電位](所定の電圧)となる。また、電流が通流している各整流ダイオードD6,D7および電圧低減用整流ダイオードDU2に発生する電圧の振幅は、各整流ダイオードD6,D7の順方向降下電圧となる。
【0090】
したがって、初充電用スイッチ20が接続状態になっている間、各整流ダイオードD5〜D8へ印加される電圧の振幅は、式(21)で示される。
順方向降下電圧≦各整流ダイオードD5〜D8の電圧振幅≦所定の電圧・・式(21)
【0091】
前記したように、各平滑コンデンサCp,Cnは、初充電回路40cによって充電され、P−COM間電圧EpおよびCOM−N間電圧Enは所定の電圧まで昇圧される。ただし、所定の電圧は、各整流ダイオードD1〜D8の電圧振幅が直流耐電圧仕様を満足する範囲に設定されるものとする。
【0092】
次に、各平滑コンデンサCp,Cnが所定の電圧まで昇圧されたとき、交流遮断器60が接続状態に切り替えられ、主商用電源50の電力が変圧器70に供給される。また、交流遮断器60が接続状態に切り替えられた後、初充電用スイッチ20は遮断状態に切り替えられ、初充電回路40への電力の供給が止められる。
【0093】
そして、初充電用スイッチ20が遮断状態に切り替えられた後、各整流ダイオードD1〜D8および各電圧低減用整流ダイオードDU1,Du2に印加される直流電圧は、各電圧バランス用抵抗R2〜R5による分圧電圧で決まるため、式(22),式(23)および式(24)のように表される。ただし、各電圧バランス用抵抗R2〜R5の抵抗値は、全て等しいものとする。
各整流ダイオードD1〜D4の電圧=(Ep+En)/4=Ep/2 ・・式(22)
各整流ダイオードD5〜D8の電圧=(Ep+En)/4=En/2 ・・式(23)
各電圧低減用整流ダイオードDU1,DU2の電圧=
(Ep+En)/4=En/2 ・・式(24)
(ただし、Ep=En)
【0094】
以上、第4実施形態において説明した初充電回路40cは、比較例における初充電回路200と比較して、式(20)および式(21)が式(1)および式(2)と同様になる。また、第4実施形態における初充電回路40cは、各整流ダイオードD1〜D8の直流耐電圧および各電圧低減用整流ダイオードDU1,DU2の直流耐電圧が、P−COM間電圧EpまたはCOM−N間電圧Enの半分となっていて(式(22)〜式(24)参照)、通常の直流耐電圧仕様を満たしている。これらのことから、第4実施形態において説明した初充電回路40cは、比較例における初充電回路200の代替が可能である。
【0095】
そして、第1単相全波整流ブリッジ回路P1および第2単相全波整流ブリッジ回路P2における各整流ダイオードD1〜D8の直流耐電圧仕様を変更することなしに、電圧バランス用抵抗の数が減少し、電圧低減用整流ダイオードの数は増加した。
ここで、電圧バランス用抵抗の数の減少による効果と、電圧低減用整流ダイオードの数の増加による効果を総合的に判断すると、電圧バランス用抵抗の数の減少の方が、電圧低減用整流ダイオードの数の増加よりも、初充電回路40cの小型化およびコスト低減への効果が大きいと言える。この理由は、高耐電圧用の電圧バランス用抵抗のサイズが電圧低減用整流ダイオードのサイズより大きく、また、電圧バランス用抵抗のコストが電圧低減用整流ダイオードのコストより大きいためである。
【0096】
《第5実施形態》
第5実施形態における電力変換装置を含む電力変換システムの構成について、図5を用いて説明する。図5は、第5実施形態における電力変換装置を含む電力変換システムの構成を示す図である。
なお、図5において、図3,図4に示したのと同様の機能を有する各部については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0097】
まず、初充電回路40dの構成について、以下に説明する。
第1単相全波整流ブリッジ回路P1、低減用整流ダイオードDU1、および各電圧バランス用抵抗R2,R4を含む構成は、第3実施形態における構成と同様であり、詳細な説明を省略する。
また、第2単相全波整流ブリッジ回路P2、低減用整流ダイオードDU2、および各電圧バランス用抵抗R3,R5を含む構成は、第4実施形態における構成と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0098】
次に、初充電回路40の動作について説明する。
初充電用商用電源10の交流電圧は、初充電用変圧器30の出力端子(U1,V1)と別の出力端子(U2,V2)を介して、それぞれ第1単相全波整流ブリッジ回路P1と第2単相全波整流ブリッジ回路P2とに入力される。
【0099】
第1単相全波整流ブリッジ回路P1において、平滑コンデンサCpへの初期充電電流の経路は、第3実施形態における平滑コンデンサCpへの初期充電電流の経路と同様であるので詳細な説明を省略する。
なお、初充電用スイッチ20が接続状態になっている間、各整流ダイオードD1〜D4へ印加される電圧の振幅は、式(20)で示される。
順方向降下電圧≦各整流ダイオードD1〜D4の電圧振幅≦所定の電圧・・式(25)
【0100】
第2単相全波整流ブリッジ回路P2において、平滑コンデンサCnへの初期充電電流の経路は、第4実施形態における平滑コンデンサCnへの初期充電電流の経路と同様であるので詳細な説明を省略する。
なお、初充電用スイッチ20が接続状態になっている間、各整流ダイオードD5〜D8へ印加される電圧の振幅は、式(26)で示される。
順方向降下電圧≦各整流ダイオードD5〜D8の電圧振幅≦所定の電圧・・式(26)
【0101】
前記したようにして、各平滑コンデンサCp,Cnは初充電回路40dによって充電され、P−COM間電圧EpおよびCOM−N間電圧Enは所定の電圧まで昇圧される。ただし、所定の電圧は、各整流ダイオードD1〜D8の電圧振幅が直流耐電圧仕様を満足する範囲に設定されるものとする。
【0102】
次に、各平滑コンデンサCp,Cnが所定の電圧まで昇圧されたとき、交流遮断器60が接続状態に切り替えられ、主商用電源50の電力が変圧器70に供給される。また、交流遮断器60が接続状態に切り替えられた後、初充電用スイッチ20は遮断状態に切り替えられ、初充電回路40dへの電力の供給が止められる。
【0103】
そして、初充電用スイッチ20が遮断状態に切り替えられた後、各整流ダイオードD1〜D8および各電圧低減用整流ダイオードDU1,Du2に印加される直流電圧は、各電圧バランス用抵抗R2〜R5による分圧電圧で決まるため、式(27),式(28)および式(29)のように表される。ただし、各電圧バランス用抵抗R2〜R5の抵抗値は、全て等しいものとする。
各整流ダイオードD1〜D4の電圧=(Ep+En)/4=Ep/2 ・・式(27)
各整流ダイオードD5〜D8の電圧=(Ep+En)/4=En/2 ・・式(28)
各電圧低減用整流ダイオードDU1,DU2の電圧=
(Ep+En)/4=En/2 ・・式(29)
(ただし、Ep=En)
【0104】
以上、第5実施形態において説明した初充電回路40dは、比較例における初充電回路200と比較して、式(25)および式(26)が式(1)および式(2)と同様になる。また、第5実施形態における初充電回路40dは、各整流ダイオードD1〜D8の直流耐電圧および各電圧低減用整流ダイオードDU1,DU2の直流耐電圧が、P−COM間電圧EpまたはCOM−N間電圧Enの半分となっていて(式(27)〜式(29)参照)、通常の直流耐電圧仕様を満たしている。これらのことから、第5実施形態において説明した初充電回路40dは、比較例における初充電回路200の代替が可能である。
【0105】
そして、第1単相全波整流ブリッジ回路P1および第2単相全波整流ブリッジ回路P2における各整流ダイオードD1〜D8の直流耐電圧仕様を変更することなしに、電圧バランス用抵抗の数が減少し、電圧低減用整流ダイオードの数は増加した。
ここで、電圧バランス用抵抗の数の減少による効果と、電圧低減用整流ダイオードの数の増加による効果を総合的に判断すると、電圧バランス用抵抗の数の減少の方が、電圧低減用整流ダイオードの数の増加よりも、初充電回路40dの小型化およびコスト低減への効果が大きいと言える。この理由は、高耐電圧用の電圧バランス用抵抗のサイズが電圧低減用整流ダイオードのサイズより大きく、また、電圧バランス用抵抗のコストが電圧低減用整流ダイオードのコストより大きいためである。
【0106】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、その趣旨を変えない範囲で実施することができる。
例えば、平滑コンデンサとして、スーパキャパシタ等の電気二重層コンデンサを用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】第1実施形態における電力変換装置を含む電力変換システムの構成を示す図である。
【図2】第2実施形態における電力変換装置を含む電力変換システムの構成を示す図である。
【図3】第3実施形態における電力変換装置を含む電力変換システムの構成を示す図である。
【図4】第4実施形態における電力変換装置を含む電力変換システムの構成を示す図である。
【図5】第5実施形態における電力変換装置を含む電力変換システムの構成を示す図である。
【図6】比較例における電力変換装置を含む電力変換システムの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0108】
10 初充電用商用電源
30 初充電用変圧器
40 初充電回路
40a 初充電回路
40b 初充電回路
40c 初充電回路
40d 初充電回路
P 正側直流電源の母線
COM 中性点電源の母線
N 負側直流電源の母線
Cp 平滑コンデンサ(第1のキャパシタ)
Cn 平滑コンデンサ(第2のキャパシタ)
P1 第1単相全波整流ブリッジ回路(第1の単相全波整流ブリッジ回路)
P2 第2単相全波整流ブリッジ回路(第2の単相全波整流ブリッジ回路)
D1〜D8 整流ダイオード
DU1,DU2 電圧低減用整流ダイオード
R1〜R5 整流ダイオード電圧バランス用抵抗




【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧を直流電圧に順変換する変換器と直流電圧を交流電圧に逆変換する変換器との間の3本の母線において、正側直流電源の母線と中性点電源の母線との間に設置される第1のキャパシタと、中性点電源の母線と負側直流電源の母線との間に設置される第2のキャパシタとを設置し、前記第1のキャパシタと前記第2のキャパシタとを初期充電する初充電回路を備える電力変換装置であって、
前記初充電回路は、
4つの整流ダイオードによって構成される第1の単相全波整流ブリッジ回路および第2の単相全波整流ブリッジ回路と、前記正側直流電源の母線と前記負側直流電源の母線間の直流電圧を分圧し、前記第1の単相全波整流ブリッジ回路に印加される直流電圧をバランスさせる第1の抵抗と、前記第2の単相全波整流ブリッジ回路に印加される直流電圧をバランスさせる第2の抵抗と、第1の整流ダイオードと、第2の整流ダイオードと、第3の抵抗とにより構成され、
前記第1の整流ダイオードのアノードと前記第2の整流ダイオードのカソードとが接続されて、その直列接続された両端に並列に前記第3の抵抗が接続され、
前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との間に、前記第3の抵抗が直列に接続され、
前記第1の単相全波整流ブリッジ回路を構成する前記整流ダイオードのカソード同士が接続されている側の第1の抵抗の一端が前記正側直流電源の母線に接続され、前記第1の整流ダイオードのアノードと前記第2の整流ダイオードのカソードとが前記中性点電源の母線に接続され、前記第2の単相全波整流ブリッジ回路を構成する前記整流ダイオードのアノード同士が接続されている側の第2の抵抗の一端が前記負側直流電源の母線に接続され、
前記初充電回路は、前記第1の単相全波整流ブリッジ回路の直列に接続されている前記整流ダイオードのアノードとカソードとの接続点および前記第2の単相全波整流ブリッジ回路の直列に接続されている前記整流ダイオードのアノードとカソードとの接続点のそれぞれに互いに絶縁された単相交流電圧が印加されること、
を特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
交流電圧を直流電圧に順変換する変換器と直流電圧を交流電圧に逆変換する変換器との間の3本の母線において、正側直流電源の母線と中性点電源の母線との間に設置される第1のキャパシタと、中性点電源の母線と負側直流電源の母線との間に設置される第2のキャパシタとを設置し、前記第1のキャパシタと前記第2のキャパシタとを初期充電する初充電回路を備える電力変換装置であって、
前記初充電回路は、
4つの整流ダイオードによって構成される第1の単相全波整流ブリッジ回路および第2の単相全波整流ブリッジ回路と、前記正側直流電源の母線と負側直流電源の母線間の直流電圧を分圧し、前記第1の単相全波整流ブリッジ回路に印加される直流電圧をバランスさせる第1の抵抗と、前記第2の単相全波整流ブリッジ回路に印加される直流電圧をバランスさせる第2の抵抗と、第1の整流ダイオードと、第2の整流ダイオードと、第4の抵抗と、第5の抵抗とにより構成され、
前記第1の整流ダイオードと前記第4の抵抗とが並列に接続され、前記第2の整流ダイオードと前記第5の抵抗とが並列に接続され、前記第1の整流ダイオードのアノードと前記第2の整流ダイオードのカソードとが接続され、
前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との間に、前記第4の抵抗と前記第5の抵抗とが直列に接続され、
前記第1の単相全波整流ブリッジ回路を構成する前記整流ダイオードのカソード同士が接続されている側の第1の抵抗の一端が前記正側直流電源の母線に接続され、前記第1の整流ダイオードのアノードと前記第2の整流ダイオードのカソードとが前記中性点電源の母線に接続され、前記第2の単相全波整流ブリッジ回路を構成する前記整流ダイオードのアノード同士が接続されている側の第2の抵抗の一端が前記負側直流電源の母線に接続され、
前記初充電回路は、前記第1の単相全波整流ブリッジ回路の直列に接続されている前記整流ダイオードのアノードとカソードとの接続点および前記第2の単相全波整流ブリッジ回路の直列に接続されている前記整流ダイオードのアノードとカソードとの接続点のそれぞれに互いに絶縁された単相交流電圧が印加されること、
を特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
交流電圧を直流電圧に順変換する変換器と直流電圧を交流電圧に逆変換する変換器との間の3本の母線において、正側直流電源の母線と中性点電源の母線との間に設置され整流電圧を平滑化する第1のキャパシタと、中性点電源の母線と負側直流電源の母線との間に設置され整流電圧を平滑化する第2のキャパシタとを設置し、前記第1のキャパシタと前記第2のキャパシタとを初期充電する初充電回路を備える電力変換装置であって、
前記初充電回路は、
4つの整流ダイオードによって構成される第1の単相全波整流ブリッジ回路および第2の単相全波整流ブリッジ回路と、前記正側直流電源の母線と負側直流電源の母線間の直流電圧を分圧し、前記第1の単相全波整流ブリッジ回路に印加される直流電圧をバランスさせる第1の抵抗と、前記第2の単相全波整流ブリッジ回路に印加される直流電圧をバランスさせる第2の抵抗と、第1の整流ダイオードと、第2の整流ダイオードと、第4の抵抗と、第5の抵抗とにより構成され、
前記第1の整流ダイオードと前記第4の抵抗とが並列に接続され、前記第2の整流ダイオードと前記第5の抵抗とが並列に接続され、
前記第1の単相全波整流ブリッジ回路を構成する前記整流ダイオードのカソード同士が接続されている側の第1の抵抗の一端に前記第1の整流ダイオードのアノードが接続され、前記第1の整流ダイオードのカソードが前記正側直流電源の母線に接続され、
前記第2の単相全波整流ブリッジ回路を構成する前記整流ダイオードのカソード同士が接続されている側の第2の抵抗の一端に前記第2の整流ダイオードのアノードが接続され、前記第2の整流ダイオードのカソードが前記中性点電源の母線と前記第1の単相全波整流ブリッジ回路を構成する前記整流ダイオードのアノードが接続されている側の前記第1の抵抗の一端に接続され、
前記第2の単相全波整流ブリッジ回路を構成する前記整流ダイオードのアノード同士が接続されている側の第2の抵抗の一端が前記負側直流電源の母線に接続され、
前記初充電回路は、前記第1の単相全波整流ブリッジ回路の直列に接続されている前記整流ダイオードのアノードとカソードとの接続点および前記第2の単相全波整流ブリッジ回路の直列に接続されている前記整流ダイオードのアノードとカソードとの接続点のそれぞれに互いに絶縁された単相交流電圧が印加されること、
を特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
交流電圧を直流電圧に順変換する変換器と直流電圧を交流電圧に逆変換する変換器との間の3本の母線において、正側直流電源の母線と中性点電源の母線との間に設置され整流電圧を平滑化する第1のキャパシタと、中性点電源の母線と負側直流電源の母線との間に設置され整流電圧を平滑化する第2のキャパシタとを設置し、前記第1のキャパシタと前記第2のキャパシタとを初期充電する初充電回路を備える電力変換装置であって、
前記初充電回路は、
4つの整流ダイオードによって構成される第1の単相全波整流ブリッジ回路および第2の単相全波整流ブリッジ回路と、前記正側直流電源の母線と負側直流電源の母線間の直流電圧を分圧し、前記第1の単相全波整流ブリッジ回路に印加される直流電圧をバランスさせる第1の抵抗と、前記第2の単相全波整流ブリッジ回路に印加される直流電圧をバランスさせる第2の抵抗と、第1の整流ダイオードと、第2の整流ダイオードと、第4の抵抗と、第5の抵抗とにより構成され、
前記第1の整流ダイオードと前記第4の抵抗とが並列に接続され、前記第2の整流ダイオードと前記第5の抵抗とが並列に接続され、
前記第1の単相全波整流ブリッジ回路を構成する前記整流ダイオードのカソード同士が接続されている側の第1の抵抗の一端が前記正側直流電源の母線に接続され、
前記正側直流電源の母線に接続されていない側の第1の抵抗の一端に前記第1の整流ダイオードのカソードが接続され、その第1の整流ダイオードのアノードに中性点電源の母線が接続され、
前記第1の整流ダイオードのアノードに前記第2の単相全波整流ブリッジ回路を構成する前記整流ダイオードのカソードが接続されている側の第2の抵抗の一端が接続され、
前記第2の単相全波整流ブリッジ回路を構成する前記整流ダイオードのアノード同士が接続されている側の第2の抵抗の一端に前記第2の整流ダイオードのカソードが接続され、
前記第2の整流ダイオードのアノードが前記負側直流電源の母線に接続され、
前記初充電回路は、前記第1の単相全波整流ブリッジ回路の直列に接続されている前記整流ダイオードのアノードとカソードとの接続点および前記第2の単相全波整流ブリッジ回路の直列に接続されている前記整流ダイオードのアノードとカソードとの接続点のそれぞれに互いに絶縁された単相交流電圧が印加されること、
を特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
交流電圧を直流電圧に順変換する変換器と直流電圧を交流電圧に逆変換する変換器との間の3本の母線において、正側直流電源の母線と中性点電源の母線との間に設置され整流電圧を平滑化する第1のキャパシタと、中性点電源の母線と負側直流電源の母線との間に設置され整流電圧を平滑化する第2のキャパシタとを設置し、前記第1のキャパシタと前記第2のキャパシタとを初期充電する初充電回路を備える電力変換装置であって、
前記初充電回路は、
4つの整流ダイオードによって構成される第1の単相全波整流ブリッジ回路および第2の単相全波整流ブリッジ回路と、前記正側直流電源の母線と負側直流電源の母線間の直流電圧を分圧し、前記第1の単相全波整流ブリッジ回路に印加される直流電圧をバランスさせる第1の抵抗と、前記第2の単相全波整流ブリッジ回路に印加される直流電圧をバランスさせる第2の抵抗と、第1の整流ダイオードと、第2の整流ダイオードと、第4の抵抗と、第5の抵抗とにより構成され、
前記第1の整流ダイオードと前記第4の抵抗とが並列に接続され、前記第2の整流ダイオードと前記第5の抵抗とが並列に接続され、
前記第1の単相全波整流ブリッジ回路を構成する前記整流ダイオードのカソード同士が接続されている側の第1の抵抗の一端に前記第1の整流ダイオードのアノードが接続され、その第1の整流ダイオードのカソードが前記正側直流電源の母線に接続され、
前記第1の抵抗と前記第2の抵抗とが直列に接続され、前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との間に前記中性点電源の母線が接続され、
前記第2の単相全波整流ブリッジ回路を構成する前記整流ダイオードのアノード同士が接続されている側の第2の抵抗の一端に前記第2の整流ダイオードのカソードが接続され、その第2の整流ダイオードのアノードが前記負側直流電源の母線に接続され、
前記初充電回路は、前記第1の単相全波整流ブリッジ回路の直列に接続されている前記整流ダイオードのアノードとカソードとの接続点および前記第2の単相全波整流ブリッジ回路の直列に接続されている前記整流ダイオードのアノードとカソードとの接続点のそれぞれに互いに絶縁された単相交流電圧が印加されること、
を特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−41815(P2010−41815A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201498(P2008−201498)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】