説明

電力変換装置

【課題】 発生損失を低減して、サージ電圧を抑制することのできる電力変換装置を提供することにある。
【解決手段】 直流電力を交流電力に変換する3レベルインバータ装置10であって、出力された交流電力の電流値IU,IVの実効値が、閾値よりも大きい場合、小さい抵抗値r1を選択し、閾値よりも小さい場合、大きい抵抗値r1+r2を選択し、選択された抵抗値のゲート抵抗R1,R2により、電力変換用半導体素子21A〜21Dを駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、3レベルインバータは、直流電源とインバータとの間に、直流電圧の変動を抑制するためのコンデンサが接続されている。このような構成においては、コンデンサとインバータとの間に、浮遊インピーダンスがある。この浮遊インピーダンスが大きい場合、サージ電圧が大きくなる。サージ電圧は、過負荷などにより定格電流を超過する過電流が電力変換回路を流れているときに、電力変換用半導体素子をスイッチングすると発生する。
【0003】
このサージ電圧を抑制するために、スナバ回路を設けたり、又は電力変換用半導体素子を駆動する駆動回路のゲート抵抗の値を大きい値に選定したりすることが考えられる。
【0004】
しかし、スナバ回路を構成すると、電力変換用半導体素子のスイッチングを行うたびに、スナバ回路によって損失が発生する。よって、電力変換装置の発生損失は、スイッチング回数に比例し、増大することになる。また、スナバ回路を設けると、電力変換装置を構成する部品数が増えるため、電力変換装置を小型化できない。一方、ゲート抵抗の値を大きい値で選定した場合、通常電流(定格電流など)でのスイッチングにおいても、電力変換用半導体素子により発生する損失が増大することになる。
【0005】
そこで、発生損失を低減して、サージ電圧を抑制する構成として、構造を最適化することにより浮遊インピーダンスを低減する電力変換装置(例えば、特許文献1参照)、及び電力変換用半導体素子に流れる過電流を検出して電力変換用半導体素子のゲートを遮断し、過電流保護を行う電力変換装置(例えば、特許文献2参照)が開示されている。
【特許文献1】特開2007−6584号公報
【特許文献2】特開2007−312504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の電力変換装置には、次のような問題がある。
【0007】
構造の最適化により浮遊インピーダンスを低減するような方式では、電力変換装置は、構造上の制約を受けることになる。また、電力変換用半導体素子に流れる過電流を検出してゲートを遮断するには、過電流状態の間に、電力変換用半導体素子の短いスイッチング時間内に、かつスイッチングをする度に、様々な制御を必要とする。このため、現実的には、電力変換装置の制御が非常に困難である。
【0008】
そこで、本発明の目的は、発生損失を低減して、サージ電圧を抑制することのできる電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の観点に従った3レベルインバータ装置は、電力変換用半導体素子を駆動し、直流電力を交流電力に変換する3レベルインバータ装置であって、前記交流電力の電流の実効値を測定する電流測定手段と、前記電流測定手段により測定された電流の実効値が第1の電流の閾値よりも大きい場合、第1の抵抗値を選択し、前記電流測定手段により測定された電流の実効値が前記第1の電流の閾値以下である第2の電流の閾値よりも小さい場合、前記第1の抵抗値より小さい第2の抵抗値を選択する抵抗値選択手段と、前記抵抗値選択手段により選択された抵抗値としたゲート抵抗により、前記電力変換用半導体素子を駆動する駆動手段とを備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発生損失を低減して、サージ電圧を抑制することのできる電力変換装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電力変換装置10の構成を示す構成図である。なお、以降の図における同一部分には、同一符号を付してその詳しい説明を省略し、異なる部分について主に述べる。以降の実施形態も同様にして重複する説明を省略する。
【0013】
ここでは、U相の構成について主に説明する。また、V相及びW相のそれぞれの構成については、同様に構成されているものとして、詳しい説明を省略する。以降の実施形態も同様にして重複する説明を省略する。
【0014】
電力変換装置10は、直流側に直流電源を、交流側に交流負荷を接続する。電力変換装置10は、直流電源から供給された直流電力を三相交流電力に変換し、交流負荷に供給する。
【0015】
電力変換装置10は、電力変換部1と、制御基盤部9とを備えている。
【0016】
電力変換部1は、U相アーム2Uと、V相アーム2Vと、W相アーム2Wと、2つのコンデンサ群3と、U相電流センサ6Uと、V相電流センサ6Vとを備えている。
【0017】
2つのコンデンサ群3は、直流電圧の正極Pと負極Nとの間に、直列に接続されている。2つのコンデンサ群3を互いに接続する接続点は、直流電圧の中性点Cとなる。
【0018】
U相アーム2Uは、4つの電力変換用半導体素子21A,21B,21C,21Dと、電力変換用半導体素子21A,21B,21C,21Dのそれぞれに逆並列に接続された4つの逆並列ダイオード23A,23B,23C,23Dと、2つのクランプダイオード22A,22Bとを備えている。U相アーム2Uは、直流電源と接続されている。U相アーム2Uは、直流電源から供給された直流電力を変換し、三相交流電力のU相として出力する。
【0019】
同様にして、V相アーム2Vは、直流電力を変換し、三相交流電力のV相として出力する。W相アーム2Wは、直流電力を変換し、三相交流電力のW相として出力する。
【0020】
4つの電力変換用半導体素子21A,21B,21C,21Dは、直流電圧の正極Pと負極Nとの間に、直列に接続されている。各電力変換用半導体素子21A,21B,21C,21Dは、コレクタを正極側に、エミッタを負極側に接続している。直列に接続された4つの電力変換用半導体素子21A,21B,21C,21Dのうち内側に接続された2つの電力変換用半導体素子21B,21Cを互いに接続する接続点が電力変換装置10から出力される三相交流電力のU相の出力となる。
【0021】
2つのクランプダイオード22A,22Bは、正極P側から近い順に位置する2つの電力変換用半導体素子21A,21Bを互いに接続する接続点と、負極N側から近い順に位置する2つの電力変換用半導体素子21C,21Dを互いに接続する接続点とを接続するように、直列に接続されている。各クランプダイオード22A,22Bは、カソードを正極側に、アノードを負極側に接続している。2つのクランプダイオード22A,22Bを互いに接続する接続点は、直流電圧の中性点C(2つのコンデンサ群3を互いに接続する接続点)と短絡されている。
【0022】
U相電流センサ6Uは、電力変換装置10から出力されるU相電流IUを検出する。検出されたU相電流IUは、制御基盤部9に入力される。
【0023】
V相電流センサ6Vは、電力変換装置10から出力されるV相電流IVを検出する。検出されたV相電流IVは、制御基盤部9に入力される。
【0024】
なお、W相電流は、制御基盤部9により、U相電流IU及びV相電流IVに基づいて、算出される。
【0025】
制御基盤部9は、各電力変換用半導体素子21A,21B,21C,21Dのゲート端子と接続されている。制御基盤部9は、各電力変換用半導体素子21A,21B,21C,21Dのそれぞれにゲート信号SGを出力する。これにより、制御基盤部9は、各電力変換用半導体素子21A,21B,21C,21Dをそれぞれスイッチング制御する。
【0026】
制御基盤部9は、U相電流センサ6Uにより検出されたU相電流IU及びV相電流センサ6Vにより検出されたV相電流IVに基づいて、各電力変換用半導体素子21A,21B,21C,21Dのゲート抵抗の抵抗値を切り換える。
【0027】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る制御基盤部9の構成を示す構成図である。図2は、U相アーム2Uの電力変換用半導体素子21Aに関する構成を示している。なお、他の電力変換用半導体素子21B,21C,21Dについても同様の構成である。また、V相アーム2V及びW相アーム2Wについても同様である。
【0028】
制御基盤部9は、出力電流検出部91と、ゲート切換制御部92と、ゲート駆動制御回路93とを備えている。
【0029】
出力電流検出部91は、U相電流センサ6Uにより検出されたU相電流IU及びV相電流センサ6Vにより検出されたV相電流IVが入力される。出力電流検出部91は、U相電流IU及びV相電流IVのそれぞれの相電流の実効値を演算する。出力電流検出部91は、U相電流IU及びV相電流IVに基づいて、W相電流の実効値を演算する。出力電流検出部91は、演算した各相電流の実効値に基づいて、ゲート抵抗の抵抗値を切り換えるための測定量となる電圧値VSを演算する。電圧値VSは、演算された相電流の実効値に比例する値である。電圧値VSは、例えば、各相電流の実効値の平均又は総和などに相当する電圧値である。出力電流検出部91は、変換した電圧値VSをゲート切換制御部92に出力する。
【0030】
ゲート切換制御部92は、出力電流検出部91から電圧値VSが入力される。ゲート切換制御部92には、閾値となる電圧値VH,VLがそれぞれ設定されている。電圧値VHは、ゲート抵抗を大きい抵抗値に切り換える場合に、比較する基準となる閾値である。電圧値VLは、ゲート抵抗を小さい抵抗値に切り換える場合に、比較する基準となる閾値である。
【0031】
ゲート切換制御部92は、電圧値VSと電圧値VHを比較する。電圧値VSが電圧値VHよりも高い場合、ゲート切換制御部92は、Lレベルの検出信号SCを生成する。ゲート切換制御部92は、生成した検出信号SCをゲート駆動制御回路93に出力する。
【0032】
電圧値VSが電圧値VHよりも高くない場合、ゲート切換制御部92は、電圧値VSと電圧値VLを比較する。電圧値VSが電圧値VLよりも低い場合、ゲート切換制御部92は、Hレベルの検出信号SCを生成する。ゲート切換制御部92は、生成した検出信号SCをゲート駆動制御回路93に出力する。
【0033】
ゲート切換制御部92は、U相アーム2U、V相アーム2V及びW相アーム2Wのそれぞれの電力変換用半導体素子21Aに対して、同一の検出信号SCを出力する。従って、各相アーム2U,2V,2Wのそれぞれの電力変換用半導体素子21Aは、ゲート抵抗値が同一となるように切り換わる。同様にして、ゲート切換制御部92は、U相アーム2U、V相アーム2V及びW相アーム2Wの電力変換用半導体素子21B,21C,21Dに対しても、それぞれに他の相アームと同一の検出信号SCを出力する。
【0034】
ゲート駆動制御回路93は、ゲート切換用半導体GCと、ゲート抵抗R1,R2とを備えている。ゲート抵抗R1は、U相アーム2Uの電力変換用半導体素子21Aのゲート端子GTとゲート抵抗R2との間に接続されている。ゲート抵抗R2は、ゲート切換用半導体GCのドレイン・ソース間に接続されている。ゲート抵抗R2は、ゲート抵抗R1に接続されていない側の端子を負極NAに接続している。
【0035】
ゲート切換用半導体GCは、ゲート切換制御部92から入力される検出信号SCに応じて、オンとオフを切り換える。
【0036】
検出信号SCがLレベルの場合、ゲート切換用半導体GCは、オンからオフに切り換わる。これにより、ゲート駆動制御回路93により構成されたゲート抵抗の抵抗値は、大きくなる。具体的には、Lレベルの検出信号SCの受信により、ゲート切換用半導体GCがオフされる。これにより、ゲート抵抗R1の抵抗値をr1とし、ゲート抵抗R2の抵抗値をr2とすると、電力変換用半導体素子21Uのゲート抵抗の抵抗値は、ゲート抵抗R1の抵抗値であるr1とゲート抵抗R2の抵抗値であるr2との和になる。
【0037】
検出信号SCがHレベルの場合、ゲート切換用半導体GCは、オフからオンに切り換わる。これにより、ゲート駆動制御回路93により構成されたゲート抵抗の抵抗値は、小さくなる。具体的には、Hレベルの検出信号SCの受信により、ゲート切換用半導体GCがオンされる。これにより、ゲート抵抗R2の両端の端子は、短絡された状態となる。よって、電力変換用半導体素子21Uのゲート抵抗の抵抗値は、ゲート抵抗R1の抵抗値であるr1となる。
【0038】
本実施形態によれば、電力変換装置10の出力電流の実効値が、所定の閾値電流を超えると、ゲート抵抗の抵抗値が大きくなる。これにより、スイッチングによるサージ電圧を抑制することができる。また、電力変換装置10の出力電流の実効値が、所定の閾値電流を下回ると、ゲート抵抗の抵抗値が小さくなる。これにより、電力変換用半導体素子21A,21B,21C,21Dの発生損失を低減することができる。
【0039】
また、制御基盤部9は、電力変換部1から出力された交流電流の実効値を測定する。この測定結果に基づいて、電力変換用半導体素子21A,21B,21C,21Dの駆動をする。このため、電力変換装置10は、ゲート抵抗の抵抗値の変更を不必要に増加させずに動作することができる。これに対して、瞬時値に基づいて制御した場合、ゲート抵抗の抵抗値の変更が頻繁になる。従って、制御基盤部9は、実効値に基づいて制御することで、電力変換装置10は、安定した動作をすることができる。
【0040】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係る電力変換装置10Aの構成を示す構成図である。
【0041】
電力変換装置10Aは、電力変換部1Aと制御基盤部9Aとを備えている。
【0042】
電力変換部1Aは、図1に示す第1の実施形態に係る電力変換部1において、各相アーム2U,2V,2Wの代わりに、各相アーム2UA,2VA,2WAを設けている。
【0043】
U相アーム2UAは、U相アーム2Uの各電力変換用半導体素子21A,21B,21C,21Dに、それぞれ温度センサTA,TB,TC,TDを設けた構成である。その他の構成は、電力変換部1と同様の構成である。V相アーム2VA及びW相アーム2WAについても同様である。
【0044】
温度センサTA,TB,TC,TDは、自己が設けられている電力変換用半導体素子21A,21B,21C,21Dの温度を測定する。温度センサTA,TB,TC,TDは、測定した温度を温度信号STとして、制御基盤部9Aに出力する。
【0045】
制御基盤部9Aは、図2に示す第1の実施形態に係る制御基盤部9において、温度センサTA,TB,TC,TDから出力された温度信号STを追加して入力している。
【0046】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る制御基盤部9Aの構成を示す構成図である。
【0047】
制御基盤部9Aは、図2に示す第1の実施形態に係る制御基盤部9において、ゲート切換制御部92の代わりに、ゲート切換制御部92Aを設けている。制御基盤部9Aは、電力変換用半導体素子21A,21B,21C,21Dのゲート抵抗の抵抗値を切り換える条件として、温度センサTA,TB,TC,TDにより検出された温度信号STを要素に加えている。その他の構成は、制御基盤部9と同様の構成である。
【0048】
ゲート切換制御部92Aは、出力電流検出部91から電圧値VSが入力される。ゲート切換制御部92は、閾値となる電圧値VH,VL,VM及び閾値となる温度TMがそれぞれ設定されている。
【0049】
電圧値VM及び温度TMは、ゲート抵抗の抵抗値を切り換える閾値である。電圧値VMは、電圧値VHと電圧値VLとの中間にある値である。
【0050】
ゲート切換制御部92Aは、電圧値VSと電圧値VHを比較する。電圧値VSが電圧値VHよりも高い場合、ゲート切換制御部92Aは、Lレベルの検出信号SCを生成する。ゲート切換制御部92Aは、生成した検出信号SCをゲート駆動制御回路93に出力する。
【0051】
電圧値VSが電圧値VHよりも高くない場合、ゲート切換制御部92Aは、電圧値VSと電圧値VLを比較する。電圧値VSが電圧値VLよりも低い場合、ゲート切換制御部92Aは、Hレベルの検出信号SCを生成する。ゲート切換制御部92Aは、生成した検出信号SCをゲート駆動制御回路93に出力する。
【0052】
電圧値VSが電圧値VHと電圧値VLとの間の値である場合、ゲート切換制御部92Aは、電圧値VSと電圧値VMを比較する。一方、ゲート切換制御部92Aは、温度信号STの示す温度と温度TMを比較する。
【0053】
上述の2つの比較結果が、温度信号STの示す温度が温度TMよりも高く、かつ電圧値VSが電圧値VMよりも低い場合、ゲート切換制御部92Aは、Lレベルの検出信号SCを生成する。ゲート切換制御部92Aは、生成した検出信号SCをゲート駆動制御回路93に出力する。
【0054】
上述の2つの比較結果が、温度信号STの示す温度が温度TMよりも低く、かつ電圧値VSが電圧値VMよりも高い場合、ゲート切換制御部92Aは、Hレベルの検出信号SCを生成する。ゲート切換制御部92Aは、生成した検出信号SCをゲート駆動制御回路93に出力する。
【0055】
本実施形態によれば、第1の実施形態による作用効果に加え、以下の作用効果を得ることができる。
【0056】
電力変換装置10Aは、全ての電力変換用半導体素子21A,21B,21C,21Dを、温度センサTA,TB,TC,TDにより温度を個別に測定し、ゲート抵抗の抵抗値を切り換える条件に用いる。これにより、電力変換装置10Aは、ゲート抵抗の抵抗値を切り換えることにより、発熱を抑制することができる。
【0057】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態に係る電力変換装置10Bの構成を示す構成図である。
【0058】
電力変換装置10Bは、電力変換部1Bと制御基盤部9Bとを備えている。
【0059】
電力変換部1Bは、図1に示す第1の実施形態に係る電力変換部1において、U相電流センサ6U及びV相電流センサ6Vの代わりに、直流電圧センサDPを設けている。
【0060】
制御基盤部9Bは、図1に示す第1の実施形態に係る制御基盤部9の構成において、三相交流電流の電流センサ6U,6Vにより検出された三相交流電流IU,IVを入力する代わりに、直流電圧センサDPにより検出された直流電圧VDを入力する。
【0061】
直流電圧センサDPは、電力変換部1Bの入力側に印加される直流電圧VDを検出する。具体的には、直流電圧センサDPが検出する直流電圧VDは、電力変換部1Bの正極Pと負極Nとの間に印加される電圧である。直流電圧センサDPは、検出した直流電圧VDを制御基盤部9Bに出力する。
【0062】
図6は、本発明の第3の実施形態に係る制御基盤部9Bの構成を示す構成図である。
【0063】
制御基盤部9Bは、図2に示す第1の実施形態に係る制御基盤部9において、出力電流検出部91の代わりに、出力電圧検出部91Bを設けている。制御基盤部9Bは、各電力変換用半導体素子21A,21B,21C,21Dのゲート抵抗の抵抗値を切り換える条件として、直流電圧センサDPにより検出された直流電圧VDを要素に用いる。その他の構成は、制御基盤部9と同様の構成である。
【0064】
出力電圧検出部91Bは、直流電圧センサDPにより検出された直流電圧VDが入力される。出力電圧検出部91Bは、入力された直流電圧VDを、ゲート抵抗の抵抗値を切り換えるための測定量となる電圧値VSに変換するための演算をする。電圧値VSは、入力された直流電圧に比例する値である。出力電圧検出部91Bは、変換された電圧値VSをゲート切換制御部92に出力する。
【0065】
ゲート切換制御部92は、入力された電圧値VSに基づいて、ゲート抵抗の抵抗値を切り換える。
【0066】
本実施形態によれば、電力変換部1Bに供給される直流電圧VDが、所定の閾値電圧を超えると、ゲート抵抗の抵抗値が大きくなる。これにより、スイッチングによるサージ電圧を抑制することができる。また、直流電圧VDが、所定の閾値電圧を下回ると、ゲート抵抗の抵抗値が小さくなる。これにより、電力変換用半導体素子21A,21B,21C,21Dの発生損失を低減することができる。
【0067】
従って、電力変換装置10Bは、電力変換部1Bに供給される直流電圧VDを測定し、この測定結果に基づいて、ゲート抵抗の抵抗値を変えている。これにより、電力変換装置10Bは、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0068】
(第4の実施形態)
図7は、本発明の第4の実施形態に係る電力変換装置10Cの構成を示す構成図である。
【0069】
電力変換装置10Cは、電力変換部1Cと制御基盤部9Cとを備えている。
【0070】
電力変換部1Cは、図3に示す第2の実施形態に係る電力変換部1Aにおいて、U相電流センサ6U及びV相電流センサ6Vの代わりに、直流電圧センサDPを設けている。
【0071】
制御基盤部9Bは、図3に示す第2の実施形態に係る制御基盤部9Aの構成において、三相交流電流の電流センサ6U,6Vにより検出された三相交流電流IU,IVを入力する代わりに、直流電圧センサDPにより検出された直流電圧VDを入力する。
【0072】
直流電圧センサDPは、電力変換部1Cの入力側に印加される直流電圧VDを検出する。具体的には、直流電圧センサDPが検出する直流電圧VDは、電力変換部1Cの正極Pと負極Nとの間に印加される電圧である。直流電圧センサDPは、検出した直流電圧VDを制御基盤部9Cに出力する。
【0073】
図8は、本発明の第4の実施形態に係る制御基盤部9Cの構成を示す構成図である。
【0074】
制御基盤部9Cは、図4に示す第2の実施形態に係る制御基盤部9Aにおいて、出力電流検出部91の代わりに、図6に示す第3の実施形態に係る出力電圧検出部91Bを設けている。制御基盤部9Cは、各電力変換用半導体素子21A,21B,21C,21Dのゲート抵抗の抵抗値を切り換える条件として、直流電圧センサDPにより検出された直流電圧VDを要素に用いる。その他の構成は、制御基盤部9Aと同様の構成である。
【0075】
本実施形態によれば、第2の実施形態による作用効果に加え、以下の作用効果を得ることができる。
【0076】
電力変換装置10Cは、全ての電力変換用半導体素子21A,21B,21C,21Dを、温度センサTA,TB,TC,TDにより温度を個別に測定し、ゲート抵抗の抵抗値を切り換える条件に用いる。これにより、電力変換装置10Cは、ゲート抵抗の抵抗値を切り換えることにより、発熱を抑制することができる。
【0077】
従って、電力変換装置10Cは、電力変換部1Cに供給される直流電圧VDに基づいて、ゲート抵抗の抵抗値を変えることで、第3の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、全ての電力変換用半導体素子21A,21B,21C,21Dを測定した温度に基づいて、ゲート抵抗の抵抗値を変えることで、さらに第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0078】
なお、各実施形態は、以下のように変形して、実施することができる。
【0079】
各実施形態において、ゲート駆動制御回路93は、1つのゲート切換用半導体GCと、2つのゲート抵抗R1,R2により構成したが、この構成に限らない。ゲート駆動制御回路93は、2つ以上のゲート切換用半導体を備えていてもよいし、3つ以上のゲート抵抗を備えていてもよい。また、ゲート駆動制御回路93は、3つ以上のゲート抵抗値を選択できるように構成してもよい。
【0080】
第2の実施形態において、閾値となる温度TMを1つとしたが、2つ以上に細分化して制御してもよい。例えば、ゲート抵抗の抵抗値を小さくする切り換えをするための閾値と、ゲート抵抗の抵抗値を大きくする切り換えをするための閾値とを異なる温度としてもよい。同様に、電圧値VMも、ゲート抵抗の抵抗値を大きくする場合と、ゲート抵抗の抵抗値を小さくする場合とで、2つの異なる閾値に分けてもよい。
【0081】
第3の実施形態及び第4の実施形態において、制御基盤部9B,9Cで測定する直流電圧VDを電力変換部1Bの正極Pと負極Nとの間に印加される電圧としたが、これに限らない。例えば、直流電圧VDは、電力変換部1Bの中性点Cと正極P(又は、負極N)との間に印加される直流電圧としてもよい。
【0082】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電力変換装置の構成を示す構成図。
【図2】第1の実施形態に係る制御基盤部の構成を示す構成図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る電力変換装置の構成を示す構成図。
【図4】第2の実施形態に係る制御基盤部の構成を示す構成図。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る電力変換装置の構成を示す構成図。
【図6】第3の実施形態に係る制御基盤部の構成を示す構成図。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る電力変換装置の構成を示す構成図。
【図8】第4の実施形態に係る制御基盤部の構成を示す構成図。
【符号の説明】
【0084】
1…電力変換部、2U…U相アーム、2V…V相アーム、2W…W相アーム、3…コンデンサ群、6U…U相電流センサ、6V…V相電流センサ、9…制御基盤部、10…電力変換装置、21A,21B,21C,21D…電力変換用半導体素子、22A,22B…クランプダイオード、23A,23B,23C,23D…逆並列ダイオード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換用半導体素子を駆動し、直流電力を交流電力に変換する3レベルインバータ装置であって、
前記交流電力の電流の実効値を測定する電流測定手段と、
前記電流測定手段により測定された電流の実効値が第1の電流の閾値よりも大きい場合、第1の抵抗値を選択し、前記電流測定手段により測定された電流の実効値が前記第1の電流の閾値以下である第2の電流の閾値よりも小さい場合、前記第1の抵抗値より小さい第2の抵抗値を選択する抵抗値選択手段と、
前記抵抗値選択手段により選択された抵抗値としたゲート抵抗により、前記電力変換用半導体素子を駆動する駆動手段と
を備えたことを特徴とする3レベルインバータ装置。
【請求項2】
前記電力変換用半導体素子の温度を測定する温度測定手段を備え、
前記抵抗値選択手段は、前記電流測定手段により測定された電流の実効値が前記第1の電流の閾値と前記第2の電流の閾値との間にある第3の電流の閾値よりも大きく、かつ前記温度測定手段により測定された温度が第1の温度の閾値よりも低い場合、前記第1の抵抗値を選択し、前記電流測定手段により測定された電流の実効値が前記第1の電流の閾値と前記第2の電流の閾値との間にある第4の電流の閾値よりも小さく、かつ前記温度測定手段により測定された温度が第1の温度の閾値以上の第2の温度の閾値よりも高い場合、前記第2の抵抗値を選択すること
を特徴とする請求項1に記載の3レベルインバータ装置。
【請求項3】
電力変換用半導体素子を駆動し、直流電力を交流電力に変換する3レベルインバータ装置であって、
前記直流電力の電圧を測定する電圧測定手段と、
前記電圧測定手段により測定された電圧が第1の電圧の閾値よりも高い場合、第1の抵抗値を選択し、前記電圧測定手段により測定された電圧が前記第1の電圧の閾値以下である第2の電圧の閾値よりも低い場合、前記第1の抵抗値より小さい第2の抵抗値を選択する抵抗値選択手段と、
前記抵抗値選択手段により選択された抵抗値としたゲート抵抗により、前記電力変換用半導体素子を駆動する駆動手段と
を備えたことを特徴とする3レベルインバータ装置。
【請求項4】
前記電力変換用半導体素子の温度を測定する温度測定手段を備え、
前記抵抗値選択手段は、前記電圧測定手段により測定された電圧が前記第1の電圧の閾値と前記第2の電圧の閾値との間にある第3の電圧の閾値よりも高く、かつ前記温度測定手段により測定された温度が第1の温度の閾値よりも低い場合、前記第1の抵抗値を選択し、前記電圧測定手段により測定された電圧が前記第1の電圧の閾値と前記第2の電圧の閾値との間にある第4の電圧の閾値よりも低く、かつ前記温度測定手段により測定された温度が前記第1の温度の閾値以上の第2の温度の閾値よりも高い場合、前記第2の抵抗値を選択すること
を特徴とする請求項3に記載の3レベルインバータ装置。
【請求項5】
前記電圧測定手段は、前記直流電力の正極と負極との間の電圧を測定すること
を特徴とする請求項3又は請求項4に記載の3レベルインバータ装置。
【請求項6】
前記電圧測定手段は、前記直流電力の正極と負極との間にある中性点の電圧を測定すること
を特徴とする請求項3又は請求項4に記載の3レベルインバータ装置。
【請求項7】
電力変換用半導体素子を駆動し、直流電力を交流電力に変換する3レベルインバータ装置を制御する制御方法であって、
前記交流電力の電流の実効値を測定するステップと、
測定された前記交流電力の電流の実効値が第1の電流の閾値よりも大きい場合、第1の抵抗値を選択し、測定された前記交流電力の電流の実効値が前記第1の電流の閾値以下である第2の電流の閾値よりも小さい場合、前記第1の抵抗値より小さい第2の抵抗値を選択するステップと、
選択された抵抗値としたゲート抵抗により、前記電力変換用半導体素子を駆動するステップと
を含むことを特徴とする3レベルインバータ装置の制御方法。
【請求項8】
電力変換用半導体素子を駆動し、直流電力を交流電力に変換する3レベルインバータ装置を制御する制御方法であって、
前記直流電力の電圧を測定するステップと、
測定された前記直流電力の電圧が第1の電圧の閾値よりも高い場合、第1の抵抗値を選択し、測定された前記直流電力の電圧が前記第1の電圧の閾値以下である第2の電圧の閾値よりも低い場合、前記ゲート抵抗の抵抗値として、前記第1の抵抗値より小さい第2の抵抗値を選択するステップと、
選択された抵抗値としたゲート抵抗により、前記電力変換用半導体素子を駆動するステップと
を含むことを特徴とする3レベルインバータ装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−98820(P2010−98820A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266513(P2008−266513)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】