説明

電力変換装置

【課題】冷却媒体の循環システムのコスト低減及びコンパクト化を容易にする電力変換装置を提供すること。
【解決手段】スイッチング素子を内蔵した半導体モジュール2と、半導体モジュール2を冷却するための冷却器3と、スイッチング素子を駆動制御するスイッチング駆動回路41とを備えた電力変換装置1。電力変換装置1は、冷却器3と外部の熱交換器との間で冷却媒体wを循環させるための循環ポンプ5を一体的に有している。循環ポンプ5を駆動制御するポンプ駆動回路42とスイッチング駆動回路41とは、一つの共有回路部4に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子を内蔵した半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却するための冷却器と、上記スイッチング素子を駆動制御するスイッチング駆動回路とを備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載され、直流電源と交流負荷との間で電力の変換を行う電力変換装置がある。かかる電力変換装置は、スイッチング素子を内蔵した半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却するための冷却器と、上記スイッチング素子を駆動制御するスイッチング駆動回路とを備えている。そして、冷却器には水等の冷却媒体が流通し、冷却媒体と半導体モジュールとの間で熱交換を行うことによって、半導体モジュールの温度上昇を防いでいる。
【0003】
図7に示すごとく、冷却器93において半導体モジュールから受熱して高温となった冷却媒体wは、電力変換装置9の外部に配置された熱交換器94において冷却される(特許文献1参照)。この熱交換器94において空冷等によって冷却媒体wが冷却され、再び冷却器93へ戻されて半導体モジュールを冷却する。このように、冷却媒体wは、冷却器93と外部の熱交換器94との間を循環しながら、半導体モジュールを冷却している。
そして、上記のような冷却媒体wの循環は、その循環経路に設けられた循環ポンプ95によって行われる。つまり、電力変換装置9における冷却器93と、循環ポンプ95と、熱交換器94とは、互いの間を冷媒配管96によって連結されており、循環ポンプ95は電力変換装置9の外部に別体として設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−119275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、循環ポンプ95が電力変換装置9と別体として配置されている構成においては、以下のような課題がある。
すなわち、循環ポンプ95には、該循環ポンプ95を駆動制御するためのポンプ駆動回路951が接続される。一方、電力変換装置9は、スイッチング素子を駆動制御するスイッチング駆動回路91を備えている。そこで、これらの駆動回路を一つの回路基板等に集約してコストの低減等を図ることが考えられるが、上記のように循環ポンプ95が電力変換装置9と別体となっていると、これらの駆動回路を一体化することはできない。その結果、電力変換装置9とこれを冷却する冷却システム90のコスト低減を図ることが困難となる。
【0006】
また、循環ポンプ95が電力変換装置9と別体として配置されている構成においては、上記のごとく、冷却器93と循環ポンプ95との間に冷媒配管96を設ける必要がある。そうすると、冷却器93と循環ポンプ95との間における冷却媒体wの圧力損失が大きくなる。それゆえ、冷却媒体wの循環効率が低下すると共に、圧力損失を考慮して循環ポンプ95の能力を大きくする必要が生じる。その結果、循環ポンプ95の小型化が困難となり、コスト低減および循環システム90のコンパクト化が困難となる。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、冷却媒体の循環システムのコスト低減及びコンパクト化を容易にする電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、スイッチング素子を内蔵した半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却するための冷却器と、上記スイッチング素子を駆動制御するスイッチング駆動回路とを備えた電力変換装置であって、
該電力変換装置は、上記冷却器と外部の熱交換器との間で冷却媒体を循環させるための循環ポンプを一体的に有しており、
該循環ポンプを駆動制御するポンプ駆動回路と上記スイッチング駆動回路とは、一つの共有回路部に形成されていることを特徴とする電力変換装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0009】
上記電力変換装置は、上記循環ポンプを一体的に有しており、該循環ポンプを駆動制御するポンプ駆動回路と上記スイッチング駆動回路とが一つの共有回路部に形成されている。すなわち、ポンプ駆動回路とスイッチング駆動回路とが一体化され、一つの共有回路部に集約されるため、コストの低減を図ることできる。その結果、電力変換装置とこれを冷却する冷却システムのコスト低減を図ることができる。
【0010】
また、上記電力変換装置が上記循環ポンプを一体的に有していることにより、循環ポンプが電力変換装置と別体として配置されている構成において必要であった両者間の冷媒配管を設ける必要がない。なお、電力変換装置内において冷却器と循環ポンプとの間に冷媒配管を設ける必要がある場合もあるが、その冷媒配管は極めて短くすることができる。そのため、冷却器と循環ポンプとの間における冷却媒体の圧力損失を小さくすることができる。それゆえ、冷却媒体の循環効率を向上させることができる。また、これに伴い、循環ポンプの能力を大きくする必要がなくなり、循環ポンプの小型化が可能となり、コスト低減および循環システムのコンパクト化が容易となる。
【0011】
以上のごとく、本発明によれば、冷却媒体の循環システムのコスト低減及びコンパクト化を容易にする電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1における、電力変換装置を含めた冷却媒体の循環システムの概念図。
【図2】実施例1における、電力変換装置の説明図。
【図3】図2のA−A線矢視断面説明図。
【図4】実施例2における、循環ポンプを含めた電力変換装置の簡易回路図。
【図5】直流電源とポンプ用の電力変換回路との間に電圧変換器を介在させた場合の、循環ポンプを含めた電力変換装置の簡易回路図。
【図6】実施例2における、直流モータを用いた循環ポンプを含めた電力変換装置の簡易回路図。
【図7】背景技術における、電力変換装置を含めた冷却媒体の循環システムの概念図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記電力変換装置は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載されたインバータ、コンバータとすることができ、直流電源と交流負荷との間の電力変換を行うよう構成されたものとすることができる。
【0014】
上記電力変換装置において、上記共有回路部は、上記ポンプ駆動回路と上記スイッチング駆動回路とが形成された共有回路基板を備えていることが好ましい(請求項2)。この場合には、上記ポンプ駆動回路と上記スイッチング駆動回路とを一枚の共有回路基板に集約することができるため、上記2つの駆動回路をより安価に形成することができると共に、一層のコンパクト化を図ることができる。
【0015】
また、上記共有回路部は、上記ポンプ駆動回路と上記スイッチング駆動回路とに共通する一つのマイコンを備えていることが好ましい(請求項3)。この場合には、電力変換装置のコスト低減を一層図ることができる。
【0016】
また、上記半導体モジュールは、該半導体モジュールの温度を検出するモジュール温度センサを備え、上記共有回路部における上記ポンプ駆動回路は、上記モジュール温度センサの検出信号を利用して上記循環ポンプの駆動制御を行うよう構成してあることが好ましい(請求項4)。この場合には、上記半導体モジュールの温度情報に基づいて上記冷却媒体の温度を間接的に把握して、循環ポンプの駆動制御を行うことができる。そして、上記共有回路部において、上記スイッチング駆動回路と上記ポンプ駆動回路との間で電気信号を授受して、半導体モジュールの温度情報をポンプ駆動回路における駆動制御に利用することができる。それゆえ、冷却媒体の温度を推測した循環ポンプの効率的な駆動制御を、容易に行うことができる。
【0017】
また、上記ポンプ駆動回路は、上記スイッチング駆動回路におけるスイッチング制御信号を利用して、上記循環ポンプの駆動制御を行うよう構成してあることが好ましい(請求項5)。この場合には、半導体モジュールの駆動状況に応じて、すなわち、半導体モジュールの発熱状態に応じて、循環ポンプを駆動制御することができる。例えば、被制御電流が半導体モジュールに流れるタイミングや時間に応じて、循環ポンプの出力を調整することができる。
【0018】
また、上記循環ポンプの内部もしくは出入口に、上記冷却媒体の温度を検出するための冷媒温度センサが配設されており、該冷媒温度センサの検出信号を利用して、上記ポンプ駆動回路が上記循環ポンプを駆動制御するよう構成してあることが好ましい(請求項6)。この場合には、冷却媒体の温度に応じて循環ポンプの駆動制御を行うことができる。また、上記冷媒温度センサが上記循環ポンプの内部もしくは出入口に配設されていることにより、冷媒温度センサとポンプ駆動回路との距離を短くすることができ、両者間の配線を短くすることができる。
【0019】
また、上記循環ポンプは、上記冷却器における冷媒出口に連結されていることが好ましい(請求項7)。この場合には、上記循環ポンプにおいて冷却媒体に空気が混入しても、再び冷却媒体が冷却器に導入されるまでの循環経路において冷却媒体から空気を抜くことが可能となる。それゆえ、冷却器への空気の混入を抑制し、冷却器による半導体モジュールの冷却性能を向上することができる。
【0020】
また、上記循環ポンプのモータは、上記冷却媒体が流通する冷媒流路に接触していることが好ましい(請求項8)。この場合には、上記冷却媒体によって上記循環ポンプのモータを冷却することができる。これにより、循環ポンプの耐久性を容易に向上させることができる。
【0021】
また、上記電力変換装置によって制御される被制御電力と、上記循環ポンプを駆動するポンプ駆動電力とは、同一の電圧であることが好ましい(請求項9)。この場合には、上記被制御電力をそのままの電圧でポンプ駆動電力として利用することができる。そのため、電圧変換器等を設ける必要がなくなり、電力変換装置および冷却媒体の循環システムのコスト低減及びコンパクト化を容易にすることができる。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる電力変換装置につき、図1〜図3を用いて説明する。
本例の電力変換装置1は、図2、図3に示すごとく、スイッチング素子を内蔵した半導体モジュール2と、該半導体モジュール2を冷却するための冷却器3と、スイッチング素子を駆動制御するスイッチング駆動回路41とを備えている。
電力変換装置1は、図1に示すごとく、冷却器3と外部の熱交換器14との間で冷却媒体wを循環させるための循環ポンプ5を一体的に有している。
【0023】
図3に示すごとく、循環ポンプ5を駆動制御するポンプ駆動回路42とスイッチング駆動回路41とは、一つの共有回路部4に形成されている。
共有回路部4は、ポンプ駆動回路42とスイッチング駆動回路41とが形成された共有回路基板40からなる。また、共有回路部4は、ポンプ駆動回路42とスイッチング駆動回路41とに共通する一つのマイコン(マイクロコンピュータ)を備えている。つまり、ポンプ駆動回路42とスイッチング駆動回路41とが一つの共有回路基板40に形成されており、該共有回路基板40にマイコンが搭載され、上記二つの駆動回路の制御を行っている。
【0024】
冷却器3は、内部に冷却媒体wを流通させる複数の冷却管31を有する。そして、複数の半導体モジュール2と複数の冷却管31とが交互に積層されて、半導体積層ユニット10が構成されている。
図2に示すごとく、冷却管31は、冷却媒体wの流通方向に長い長尺形状を有し、その両端部付近において積層方向に隣り合う冷却管31と、連結管32によって連結されている。また、積層方向の一端に配された冷却管31には、冷却媒体wを冷却器3に導入する冷媒導入管331と、冷却媒体wを冷却器3から排出する冷媒排出管332とが取り付けられている。
【0025】
図3に示すごとく、半導体モジュール2は、積層方向及び冷却管31の長手方向の双方に直交する方向に突出した制御端子21を備える。制御端子21は、共有回路基板40に接続され、スイッチング駆動回路41に接続されている。
また、図2、図3に示すごとく、循環ポンプ5は、冷却器3における冷媒出口、すなわち冷媒排出管332に連結されている。循環ポンプ5の電極端子51も共有回路基板40に接続され、ポンプ駆動回路42に接続されている。
【0026】
半導体積層ユニット10、循環ポンプ5、及び共有回路基板40は、アルミニウム等からなるケース12内に収容され、電力変換装置1を構成している。循環ポンプ5の吐出側の吐出配管52及び冷却器3の冷媒導入管331は、ケース12の外へ突出している。
そして、図1に示すごとく、吐出配管52及び冷媒導入管331は、冷媒配管131、132によって、電力変換装置1の外部に設けられた熱交換器(ラジエータ)14に接続されている。熱交換器14は、例えば車両における電力変換装置1から離れた位置に配置され、空冷等によって冷却媒体wを冷却できるよう構成されている。
【0027】
上記のように構成された冷却媒体の循環システム140においては、以下のように冷却媒体wが循環する。つまり、冷媒導入管331から冷却器3に導入された冷却媒体wは、複数の冷却管31に分岐してそれぞれの冷却管31内を流通する。このとき、冷却媒体wは、半導体モジュール2を冷却し、この熱交換によって温度上昇する。温度上昇した冷却媒体wは、冷却器3の冷媒排出管332から排出され、循環ポンプ5に導かれる。循環ポンプ5によって冷却媒体wは、吐出配管52、冷媒配管131を通り、熱交換器14へ導かれる。そして、熱交換器14において冷却媒体wは冷却され、低温となった冷却媒体wは、冷媒配管132、冷媒導入管331を通じて、再び冷却器3へ導入され、半導体モジュール2の冷却を行う。
【0028】
上記のような冷却媒体wの流れが繰返されることによって、電力変換装置1の温度上昇を防ぎ、正常な運転を可能にしている。
また、冷却媒体wとしては、例えば、水やアンモニア等の自然冷媒、エチレングリコール系の不凍液を混入した水、フロリナート等のフッ化炭素系冷媒、HCFC123、HFC134a等のフロン系冷媒、メタノール、アルコール等のアルコール系冷媒、アセトン等のケトン系冷媒等を用いることができる。
【0029】
次に、本例の作用効果につき説明する。
電力変換装置1は、循環ポンプ5を一体的に有しており、該循環ポンプ5を駆動制御するポンプ駆動回路42とスイッチング駆動回路41とが一つの共有回路部4に形成されている。すなわち、ポンプ駆動回路42とスイッチング駆動回路41とが一体化され、一つの共有回路部4に集約されるため、コストの低減を図ることできる。その結果、電力変換装置1とこれを冷却する冷却システム140のコスト低減を図ることができる。
【0030】
また、電力変換装置1が循環ポンプ5を一体的に有していることにより、循環ポンプ5が電力変換装置1と別体として配置されている構成(図7参照)において必要であった両者間の冷媒配管を設ける必要がない。そのため、冷却器3と循環ポンプ5との間における冷却媒体wの圧力損失を小さくすることができる。それゆえ、冷却媒体wの循環効率を向上させることができる。また、これに伴い、循環ポンプ5の能力を大きくする必要がなくなり、循環ポンプ5の小型化が可能となり、コスト低減および循環システム140のコンパクト化が容易となる。
【0031】
また、共有回路部4は、ポンプ駆動回路42とスイッチング駆動回路41とが形成された共有回路基板40を備えている。それゆえ、ポンプ駆動回路42とスイッチング駆動回路41とを一枚の共有回路基板40に集約することができるため、上記2つの駆動回路をより安価に形成することができると共に、一層のコンパクト化を図ることができる。
【0032】
また、共有回路部4は、ポンプ駆動回路42とスイッチング駆動回路41とに共通する一つのマイコンを備えている。そのため、電力変換装置1のコスト低減を一層図ることができる。
【0033】
また、循環ポンプ5は、冷却器3における冷媒出口(冷媒排出管332)に連結されている。そのため、循環ポンプ5において冷却媒体wに空気が混入しても、再び冷却媒体wが冷却器3に導入されるまでの循環経路において冷却媒体wから空気を抜くことが可能となる。それゆえ、冷却器3への空気の混入を抑制し、冷却器3による半導体モジュール2の冷却性能を向上することができる。
【0034】
また、本例の構成をとることにより、例えば、さらに以下の構成を採用しやすくなる。
すなわち、半導体モジュール2は、半導体モジュール2の温度を検出するモジュール温度センサを備え、共有回路部4におけるポンプ駆動回路42は、モジュール温度センサの検出信号を利用して循環ポンプ5の駆動制御を行うよう構成することができる。
【0035】
この場合には、半導体モジュール2の温度情報に基づいて冷却媒体wの温度を間接的に把握して、循環ポンプ5の駆動制御を行うことができる。そして、共有回路部4において、スイッチング駆動回路41とポンプ駆動回路42との間で電気信号を授受して、半導体モジュール2の温度情報をポンプ駆動回路42における駆動制御に利用することができる。それゆえ、冷却媒体wの温度を推測した循環ポンプ5の効率的な駆動制御を、容易に行うことができる。
【0036】
具体的には、例えば、モジュール温度センサによって計測された温度が高いときには、循環ポンプ5の出力を高くして冷却媒体wの循環速度を高め、逆に、計測された温度が低いときには、循環ポンプ5の出力を低くして冷却媒体wの循環速度を低下させるといった制御が可能となる。これにより、循環ポンプ5の効率的な駆動制御を、容易に行うことができる。
【0037】
また、ポンプ駆動回路42は、スイッチング駆動回路41におけるスイッチング制御信号を利用して、循環ポンプ5の駆動制御を行うよう構成することもできる。
この場合には、半導体モジュール2の駆動状況に応じて、すなわち、半導体モジュール2の発熱状態に応じて、循環ポンプ5を駆動制御することができる。
例えば、被制御電流が半導体モジュール2に流れるタイミングや時間に応じて、循環ポンプ5の出力を調整することができる。すなわち、半導体モジュール2に大きな被制御電流が流れるタイミングと同期して、或いはそのタイミングに先立って、冷却器3に冷却媒体wを多く供給するように制御することが可能となる。これによって、適切なタイミングで適切な量の冷却媒体wを冷却器3に供給することができ、効率的な電力変換装置1の冷却が可能となる。
【0038】
また、循環ポンプ5の内部もしくは出入口に、冷却媒体wの温度を検出するための冷媒温度センサを配設し、冷媒温度センサの検出信号を利用して、ポンプ駆動回路42が循環ポンプ5を駆動制御するよう構成してもよい。
この場合には、冷却媒体wの温度に応じて循環ポンプ5の駆動制御を行うことができる。また、冷媒温度センサが循環ポンプ5の内部もしくは出入口に配設されていることにより、冷媒温度センサとポンプ駆動回路42との距離を短くすることができ、両者間の配線を短くすることができる。
【0039】
なお、本例において、冷媒温度センサは循環ポンプ5の入口部分、すなわち冷却器3の冷媒排出口332付近に配置されていることが好ましい。これにより、半導体モジュール2と熱交換した直後の冷却媒体wの温度を正確に測定することができる。そのため、この部分の温度を制御することが可能となり、電力変換装置の温度上昇を効率的に防ぐことができる。
【0040】
以上のごとく、本例によれば、冷却媒体の循環システムのコスト低減及びコンパクト化を容易にする電力変換装置を提供することができる。
【0041】
(実施例2)
本例は、図4に示すごとく、電力変換装置1によって制御される被制御電力と、循環ポンプ5を駆動するポンプ駆動電力とを、同一の電圧となるように構成した例である。
電力変換装置1は、直流電源61から供給される直流電力を三相交流電力に変換して、三相交流の回転電機62へ供給するよう構成されている。すなわち、電力変換装置1の電力変換回路63は、直流電源61の正極に接続された高電位ライン631と、直流電源61の負極に接続された低電位ライン632との間に、2つの半導体モジュール(スイッチング素子)2を直列接続してなるアームを少なくとも3つ並列接続してなる。そして、各アームにおける一対の半導体モジュール2の間に、それぞれ出力ライン633が接続され、各接続ライン633は回転電機62に接続されている。
【0042】
これにより、各半導体モジュール2をスイッチング駆動制御することにより、直流電源61の直流電力を三相交流電力に変換して、回転電機62を駆動することができる。
本例においては、直流電源61は車両に搭載された車載バッテリであり、回転電機62は車両駆動用のモータである。
【0043】
このように構成された電力変換回路63と直流電源61との間に、循環ポンプ5の三相交流のモータ620を駆動するための電力変換回路630が並列接続されている。この電力変換回路630の回路構成は、上記車両駆動用の回転電機62を駆動するための電力変換回路63と同様に、複数のスイッチング素子20によって構成されている。
これにより、直流電源61を用いて、車両駆動用のモータのみならず、循環ポンプ5のモータ620をも駆動することができる。
その他は、実施例1と同様である。
【0044】
本例の場合には、被制御電力をそのままの電圧でポンプ駆動電力として利用することができる。そのため、電圧変換器等を設ける必要がなくなり、電力変換装置1および冷却媒体の循環システム14のコスト低減及びコンパクト化を容易にすることができる。
すなわち、被制御電力の電圧とポンプ駆動電力の電圧とが異なる場合、図5に示すごとく、循環ポンプ5のモータ620を駆動するための電力変換回路630と直流電源61との間にDC−DCコンバータ等の電圧変換器64を設ける必要がある。そうすると、電圧変換器64を設ける分、電力変換装置1および冷却媒体の循環システム14のコスト低減及びコンパクト化が困難となる。それゆえ、電力変換装置1の被制御電力と循環ポンプ5のポンプ駆動電力とを同一の電圧とすることにより、電力変換装置1および冷却媒体の循環システム14のコスト低減及びコンパクト化を容易にすることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0045】
また、循環ポンプ5のモータ620としては、交流モータに限らず、直流モータを用いてもよい。この場合、図6に示すごとく、循環ポンプ5のモータ620と直流電源61との間に電力変換回路(図4における符号630参照)を設ける必要はない。そして、モータ620の電圧を回転電機62の駆動電圧(直流電源61の電圧)と同一とすることにより、直流電源61とモータ620との間に電圧変換器(図5における符号64)を設ける必要もない。
【0046】
上記実施例以外にも、本発明は種々の態様を採り得る。
例えば、循環ポンプ5のモータを、冷却媒体wが流通する冷媒流路に接触させるよう構成してもよい。この場合には、冷却媒体wによって循環ポンプ5のモータを冷却することができる。これにより、循環ポンプ5の耐久性を容易に向上させることができる。
【0047】
また、実施例1、2においては、スイッチング駆動回路41とポンプ駆動回路42とが1枚の共有回路基板40に集約された例を示したが、スイッチング駆動回路41とポンプ駆動回路42との構成は、これに限定されるものではない。例えば、スイッチング駆動回路41が複数の回路基板にわたって形成された構成を採用することもできる。この場合、スイッチング駆動回路41の一部が、ポンプ駆動回路42の少なくとも一部と、一つの共有回路基板40を共有した構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0048】
1 電力変換装置
14 熱交換器
2 半導体モジュール
3 冷却器
4 共有回路部
41 スイッチング駆動回路
42 ポンプ駆動回路
5 循環ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子を内蔵した半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却するための冷却器と、上記スイッチング素子を駆動制御するスイッチング駆動回路とを備えた電力変換装置であって、
該電力変換装置は、上記冷却器と外部の熱交換器との間で冷却媒体を循環させるための循環ポンプを一体的に有しており、
該循環ポンプを駆動制御するポンプ駆動回路と上記スイッチング駆動回路とは、一つの共有回路部に形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、上記共有回路部は、上記ポンプ駆動回路と上記スイッチング駆動回路とが形成された共有回路基板を備えていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電力変換装置において、上記共有回路部は、上記ポンプ駆動回路と上記スイッチング駆動回路とに共通する一つのマイコンを備えていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記半導体モジュールは、該半導体モジュールの温度を検出するモジュール温度センサを備え、上記共有回路部における上記ポンプ駆動回路は、上記モジュール温度センサの検出信号を利用して上記循環ポンプの駆動制御を行うよう構成してあることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記ポンプ駆動回路は、上記スイッチング駆動回路におけるスイッチング制御信号を利用して、上記循環ポンプの駆動制御を行うよう構成してあることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記循環ポンプの内部もしくは出入口に、上記冷却媒体の温度を検出するための冷媒温度センサが配設されており、該冷媒温度センサの検出信号を利用して、上記ポンプ駆動回路が上記循環ポンプを駆動制御するよう構成してあることを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記循環ポンプは、上記冷却器における冷媒出口に連結されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記循環ポンプのモータは、上記冷却媒体が流通する冷媒流路に接触していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の電力変換装置において、該電力変換装置によって制御される被制御電力と、上記循環ポンプを駆動するポンプ駆動電力とは、同一の電圧であることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−239337(P2012−239337A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107917(P2011−107917)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】