説明

電力変換装置

【課題】複数のインバータINVa,INVb,INVcのそれぞれを操作する変換用マイコン46a,46b,46cのそれぞれにECU30からの指令値情報を出力する場合、通信手段の数が増加し、ひいては装置の大型化やコストアップを招くおそれがあること。
【解決手段】ECU30は、インバータINVa,INVb,INVcのそれぞれに関する指令値を、外部通信線Lc1およびフォトカプラ42を介して通信用マイコン44に出力する。この際の通信プロトコルは、LINである。通信用マイコン44では、受信されたデータのフォーマットをI2Cに変更し、これを変換用マイコン46a,46b,46cに出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電力変換回路を備える電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば下記特許文献1に見られるように、複数のモータのそれぞれに接続される電力変換回路(インバータ)を備える電力変換装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−345252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記装置の場合、複数のインバータのそれぞれを操作するマイコン等の操作手段のそれぞれに、モータの制御量の指令値等を伝達する必要がある。そしてこれにより、操作手段との通信を行なうトランシーバ等の通信手段の数が増加し、ひいては、装置の大型化やコストアップを招くおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決する過程でなされたものであり、その目的は、複数の電力変換回路を備える新たな電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
【0007】
請求項1記載の発明は、複数の車載補機のそれぞれに電力を供給する各別の電力変換回路と、前記電力変換回路のそれぞれを操作対象とする各別の操作手段と、前記各別の操作手段のそれぞれに関する指令値情報を外部通信線を介して受信する単一の通信手段とを備え、前記通信手段は、前記指令値情報を内部通信線を介して前記操作手段のそれぞれに送信する機能を有することを特徴とする。
【0008】
上記発明では、外部から入力される指令値情報を受信して操作手段に送信する通信手段を操作手段同士で共有することで、部品点数を低減することができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記操作手段は、前記電力変換回路に接続される車載補機の制御量、前記電力変換回路の消費電力、および前記車載補機の制御量の制御の異常の有無の診断結果の少なくとも1つに関する情報である操作側情報を前記通信手段に出力する機能を有し、前記通信手段は、前記操作側情報を受信し、これを外部に出力する機能を有することを特徴とする。
【0010】
上記発明では、外部に操作側情報を出力するための通信手段を操作手段同士で共有することで、部品点数を低減することができる。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記通信手段は、前記指令値情報を受信する際の第1のデータフォーマットを、前記操作手段に前記指令値情報を送信する際のデータフォーマットであって且つ前記第1のデータフォーマットとは相違する第2のデータフォーマットに変換する変換処理を行なう手段を備えることを特徴とする。
【0012】
上記発明では、通信手段が変換処理を行なえるため、外部通信線を介した通信のデータフォーマットが様々であったとしても操作手段が受信するデータフォーマットを固定することも可能となる。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記通信手段は、トランシーバと通信用マイコンとを備え、前記操作対象毎の各別の操作手段のそれぞれは、前記通信用マイコンとは別の変換用マイコンを備えることを特徴とする。
【0014】
上記発明では、通信用マイコンを備えることで、外部との通信に関するデータフォーマットが様々に変更されたり、外部との授受情報に変更がなされたりしても、ソフトウェアの変更で対処することができる。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記通信手段は、前記複数の電力変換回路の合計消費電力の上限値情報を受信し、各電力変換回路の消費電力の上限値を設定する上限値設定手段を備えることを特徴とする。
【0016】
上記発明では、上限値設定手段を備えることで、操作手段のそれぞれが、合計消費電力の上限値情報に従った制御をするに際し、互いの消費電力を参照しあったり、それに基づき互いの消費電力の上限値を設定する処理を行ったりする必要が生じないため、合計消費電力情報に従った制御を簡易に行なうことができる。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記指令値情報を前記通信手段に出力する出力手段の基準電位は、前記操作手段の基準電位と相違し、前記通信手段は、前記出力手段側を1次側として且つ前記複数の操作手段で共有される絶縁通信手段を備えることを特徴とする。
【0018】
上記発明では、絶縁通信手段を操作手段同士で共有することで、絶縁通信手段の数を低減することができる。
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記操作手段は、前記操作対象毎に各別の変換用基板に搭載され、前記通信手段は、前記変換用基板とは別の基板に搭載されていることを特徴とする。
【0020】
上記発明では、特定の補機が追加、削除される場合、追加、削除の前後で用いられる補機に対応する変換用基板については変更する必要が生じないため、補機の変更に対処しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】一実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかる通信態様を示す図。
【図3】同実施形態にかかる通信用マイコンと変換用マイコンとの時分割通信を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる電力変換装置をハイブリッド車に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。
【0024】
図示される高電圧バッテリ10は、端子電圧がたとえば百V以上となるリチウムイオン2次電池やニッケル水素2次電池等の2次電池である。高電圧バッテリ10は、車体の電位とは相違する電位を基準電位(負極電位)とするものである。詳しくは、たとえば高電圧バッテリ10の両端に一対のコンデンサを接続し、それらの接続点を車体に接続するなどすることで、高電圧バッテリ10の正極電位および負極電位間の中央値が車体電位と等しくなるような設定がなされている。
【0025】
上記高電圧バッテリ10は車載主機としてのモータジェネレータ12用の電源であり、インバータ16を介してモータジェネレータ12に接続されている。モータジェネレータ12の回転軸は、駆動輪14に機械的に連結されている。
【0026】
高電圧バッテリ10は、一対の電源ラインLp,Lnに接続されており、電源ラインLp,Lnは、電源装置PSCに接続されている。電源装置PSCは、電源ラインLp,Lnのそれぞれに接続されるノーマルモードチョークコイル18と平滑コンデンサ20とを備えて構成されている。
【0027】
電源装置PSCには、インバータINVa,INVb,INVcが並列接続されている。ここで、インバータINVaは、車載空調装置に搭載されるブロアファンの電動機22に、3相交流電圧を印加するためのものである。また、インバータINVbは、車載内燃機関のシリンダブロック内の冷却水を循環させるウォータポンプに搭載される電動機24に、3相交流電圧を印加するためのものである。さらに、インバータINVcは、車載空調装置に搭載されるヒータ26に3相交流を印加するためのものである。上記電動機22,24は、表面磁石同期電動機(SPMSM)である。
【0028】
ここで、インバータINVa,INVb,INVcは、図中インバータINVaについて示したように、それらの入力端子(電源装置PSCの出力端子)の正極および負極のそれぞれをそれらの出力端子に接続するためのスイッチング素子S¥p,S¥n(¥=u,v,w)の直列接続体を3組備える直流交流変換回路である。そして、インバータINVaのスイッチング素子S¥#(¥=u,v,w;#=p,n)は、マイクロコンピュータ(変換用マイコン46a)からの操作信号g¥#によって操作される。同様に、インバータINVb,INVcのそれぞれは、変換用マイコン46b,46cのそれぞれによって操作される。なお、インバータINVa,INVb,INVcの操作に際してのスイッチング周波数は、互いに相違する周波数に設定されている。これは、たとえば、三角波PWM処理を行なって且つキャリア周波数を互いに相違させることで実現することができる。この設定は、各インバータINVa,INVb,INVcのそれぞれに起因した平滑コンデンサ20のリップル電流の和の実効値を各リップル電流の実効値の和よりも小さくするための設定であり、これにより電源装置PSCをインバータINVa,INVb,INVcによって共有化することで、電源装置PSCの小型化を狙っている。
【0029】
上記変換用マイコン46a,46b,46cは、中央処理装置(CPU)やメモリを備え、メモリに格納されたプログラムをCPUにて実行するソフトウェア処理手段である。変換用マイコン46a,46b,46cは、車載補機の制御量を制御すべくインバータINVa,INVb,INVcを操作する処理に加えて、制御量の制御の異常の有無の診断処理や、消費電力の算出処理等を行なう。
【0030】
一方、インバータINVa,INVbの各レッグには、図1にインバータINVaについて記載されるように、シャント抵抗Rsが設けられている。このシャント抵抗Rsの電圧降下量は、線間電流の極性や線間電流の変化量の極性を検出するためのものである。これら線間電流の極性や線間電流の変化量の極性は、電動機22,24の回転角度を検出する手段を備えることなくそれらの制御量を制御するためのパラメータである。すなわち、たとえば最大トルク最小電流制御を行なう上では、変換用マイコン46a,46bによって、線間電流のゼロクロスタイミングと線間電流の変化量のゼロクロスタイミングとを一致させるように電動機22,24に印加する指令電圧の位相を操作すればよい。こうした手法については、たとえば特開2008−278736号公報に記載されている。
【0031】
ちなみに、上記ヒータ26は、電熱器であるが、本実施形態では、上記インバータINVa,INVbと同様の3相インバータによって駆動可能に設計されている。
【0032】
変換用マイコン46a,46b,46cのそれぞれには、車体を基準電位とする電子制御装置(ECU30)から電動機22,24およびヒータ26のそれぞれの制御量の指令値が出力される。詳しくは、ECU30は、送信用の外部通信線Lc1に指令値情報を載せたデータを出力する。このデータは、トランシーバ40によって受信され、フォトカプラ42を介して通信用マイコン44に入力される。通信用マイコン44は、送信用の内部通信線Lc3を介して指令値に関する情報が含まれるデータを変換用マイコン46a,46b,46cに出力する。これに対し、変換用マイコン46a,46b,46cは、受信用の通信線Lc4を介して所定の情報が含まれるデータを通信用マイコン44に出力する。通信用マイコン44は、変換用マイコン46a,46b,46cからの情報を載せたデータを、フォトカプラ48、トランシーバ40および受信用の外部通信線Lc2を介してECU30に出力する。これら通信用マイコン44や変換用マイコン46a,46b,46cは、高電圧バッテリ10の電圧を降圧して出力するDCDCコンバータ49を電源とするものであり、ともに車体とは相違する基準電位(高電圧バッテリ10の負極電位)にて動作する。
【0033】
上記通信用マイコン44は、中央処理装置(CPU)やメモリを備え、メモリに格納されたプログラムをCPUにて実行するソフトウェア処理手段である。また、フォトカプラ42,48は、通信用マイコン44とECU30との基準電位が相違することに鑑み、通信用マイコン44を備える車載高電圧システムとECU30を備える車載低電圧システムとを絶縁しつつ信号の伝達を司る絶縁通信手段である。
【0034】
上記通信用マイコン44、フォトカプラ42,48、トランシーバ40、電源装置PSC、およびDCDCコンバータ49は、電源用基板50pに搭載されている。また、インバータINVaと変換用マイコン46aとは変換用基板50aに搭載されており、インバータINVbと変換用マイコン46bとは変換用基板50bに搭載されており、インバータINVcと変換用マイコン46cとは変換用基板50cに搭載されている。
【0035】
これら電源用基板50pや変換用基板50a,50b,50cは、単一のケースCAに収容され、車載補機(電動機22,24やヒータ26)は、ケースCAに対して外付けされている。これは、ケースCAを小型化し、車両衝突時等においても損傷を受けにくいところに配置することを1つの目的としてなされた設定である。
【0036】
ちなみに、従来、補機用アクチュエータとその制御システム(電動機22と変換用マイコン46aおよびインバータINVaや、電動機24と変換用マイコン46bおよびインバータINVb等)は、同一のケース内に収容される傾向があった。これは、補機電動機の回転角度を検出する手段としてはホール素子等の廉価なものを用いることが一般的であり、その場合、制御システム(変換用マイコンやインバータ)を電動機に近接配置することが望まれたためである。本実施形態では、上述したセンサレス制御によってこうした要求が生じる事態を回避している。
【0037】
次に、ECU30と変換用マイコン46a,46b,46cとの間の通信処理について、図2を用いて説明する。
【0038】
本実施形態では、ECU30および通信用マイコン44間の通信プロトコルとしてLIN(Local Interconnect Network)を採用し、変換用マイコン46a,46b,46cおよび通信用マイコン44間の通信プロトコルとしてI2C(Inter-Integrated Circuit)を採用する。この場合、ECU30からの送信データと、変換用マイコン46a,46b,46cの受信データとでデータフォーマットが相違する。このため、図示されるように、通信用マイコン44が、上記送信データのデータフォーマットを受信データのデータフォーマットに変換する変換処理を行なう。
【0039】
すなわち、ECU30から通信用マイコン44に電動機22の制御量の指令値(回転速度指令値ωa*)に関するデータを出力する場合、変換用マイコン46aに関するデータであることを示すIDデータIDaに続いて、回転速度指令値ωa*に関するデジタルデータ、チェックサムの順にデータを出力する。同様に、ECU30から通信用マイコン44に電動機24の回転速度指令値ωb*に関するデータを出力する場合、変換用マイコン46bに関するデータであることを示すIDデータIDbに続いて、回転速度指令値ωb*に関するデジタルデータ、チェックサムの順にデータを出力する。また、ECU30から通信用マイコン44に、インバータINVa,INVb,INVcの合計消費電力の上限値Pthに関するデータを出力する場合、その旨を指定するIDデータIDtに続いて、上限値Pthに関するデジタルデータ、チェックサムの順にデータを出力する。ここで、チェックサムは、誤り検出符号である。
【0040】
なお、IDデータIDa,IDb等は、実際には、ブレーク、同期、ID等のデータからなるものとしてもよい。
【0041】
これに対し、通信用マイコン44では、合計消費電力の上限値Pthに基づき、各インバータINVa,INVb,INVcのそれぞれの消費電力の上限値Path,Pbth,Pcthを算出する。これは、「Path+Rbth+Rcth≦Pth」の関係を満たすように行われる。具体的には、上限値の設定によって指令値への制御性が低下する事態が生じる場合、たとえば車両の走行性能に寄与する補機(ウォータポンプ)に関する消費電力の上限値Pbthについては、極力こうした事態が生じないようにし、車室内の温度調整に関する補機(ブロアファンやヒータ)に関する上限値Path,Pcthを優先的に低下させる。
【0042】
こうして上限値Path,Pbth,Pcthを算出すると、通信用マイコン44では、変換用マイコン46a,46b,46cのいずれであるかを指定するためのIDデータIDa,IDb,IDcを、I2Cのデータフォーマットに従って生成する。そして、たとえば、変換用マイコン46aに関するデータであることを示すIDデータIDaに続いて、回転速度指令値ωa*、上限値Pathのデータを出力する。
【0043】
これに対し、変換用マイコン46a,46b,46cでは、シリアルライン(内部通信線Lc3)を介して伝播するデータ内のIDデータによって、自身に関するデータであるのか否かを識別し、自身に関するデータである場合にこれをデコードする。そして、制御の異常診断の結果情報や、実際の制御量情報、実際の消費電力情報を、I2Cのデータフォーマットにて受信用の内部通信線Lc4を介して通信用マイコン44に出力する。たとえば、変換用マイコン46aは、インバータINVaに関するものであることを示すIDデータIDaに続いて、診断結果データ(図中、Diag)と、実際の制御量(回転速度ωa)のデータと、実際の消費電力Paに関するデータを出力する。
【0044】
なお、通信用マイコン44から変換用マイコン46a,46b,46cに送信するデータや、変換用マイコン46a,46b,46cから通信用マイコン44に送信するデータについても、誤り検出符号等を付してもよい。
【0045】
これら通信用マイコン44と変換用マイコン46a,46b,46cとの間の通信は、図3に示すように、時分割で行われる。図3(a)は、通信用マイコン44がデータを出力する期間を示し、図3(b)は、変換用マイコン46aがデータを出力する期間を示し、図3(c)は、変換用マイコン46bがデータを出力する期間を示し、図3(d)は、変換用マイコン46cがデータを出力する期間を示す。すなわち、通信用マイコン44が変換用マイコン46aに関するデータを出力すると、これに応じて変換用マイコン46aは、上述したデータを通信用マイコン44に出力する。通信用マイコン44は、変換用マイコン46aからのデータの受信期間の経過後、変換用マイコン46bに関するデータを出力する。
【0046】
このように、通信用マイコン44から変換用マイコン46a,46b,46cへのデータの出力期間や変換用マイコン46a,46b,46cから通信用マイコン44へのデータの出力期間以外の期間において、上記データフォーマットの変換処理等がなされる。また、通信用マイコン44では、変換用マイコン46a,46b,46cから出力されたデータのフォーマットを変換し、ECU30に出力する。
【0047】
このように、ECU30と変換用マイコン46a,46b,46cとの間に通信用マイコン44を介在させることで、ECU30との通信のプロトコルや通信データの内容が変更された場合であっても先の図2に2点鎖線にて示す部分を変更しなくてもよいというメリットがある。
【0048】
すなわち、たとえば図2に「変更1」として示すように、ECU30の通信プロトコルがCAN(Controller Area Network)に変更された場合について考えてみる。この場合、通信用マイコン44がこのデータフォーマットを、I2Cのデータフォーマットに変更するなら、変換用マイコン46a,46b,46cの処理内容に変更は生じない。また、たとえば図2に「変更2」として示すように、ECU30が、インバータINVa,INVb,INVcのそれぞれの消費電力の上限値Path,Pbth,Pcthを出力するものに変更された場合について考えてみる。この場合、通信用マイコン44が上限値Path,Pbth,Pcthを変換用マイコン46a,46b,46cに直接送信するようにすることで、変換用マイコン46a,46b,46cの処理内容に変更は生じない。
【0049】
このように、通信用マイコン44を用いることで、様々な仕様の車載システムに対し、変換用マイコン46a,46b,46cの処理内容を変更することなく対処することができるため、様々な仕様の車載システムに適応させやすい。特に、通信用マイコン44がソフトウェア処理手段であるため、そのプログラムの変更によって様々な仕様に対処することも可能となる。もっとも、たとえば上限値の処理に関して、変更2の前後のいずれにも対処できるような汎用性のあるプログラムを搭載しておいてもよい。
【0050】
さらに、通信用マイコン44と変換用マイコン46a,46b,46cとの間の通信プロトコルを自由に定めることができるため、変換用マイコン46a,46b,46cの演算負荷の小さいプロトコルを選択することもでき、ひいては、変換用マイコン46a,46b,46cの演算負荷を低減することもできる。
【0051】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0052】
(1)ECU30との通信に際して、変換用マイコン46a,46b,46c同士でトランシーバ40を共有した。これにより、部品点数を低減することができる。
【0053】
(2)ECU30と変換用マイコン46a,46b,46cとの間に通信用マイコン44を介在させた。これにより、ECU30との通信プロトコルや通信データの内容が変更された場合であっても変換用マイコン46a,46b,46cの処理内容を変更することなく対処することができる。
【0054】
(3)通信用マイコン44において、データフォーマットを変換する変換処理を行った。これにより、変換用マイコン46a,46b,46cとの通信プロトコルとして変換用マイコン46a,46b,46cの演算負荷を低減するものを選択することができる。
【0055】
(4)ECU30から変換用マイコン46a,46b,46cへのデータの送信に際して、変換用マイコン46a,46b,46c同士でフォトカプラ42を共有し、変換用マイコン46a,46b,46cからECU30へのデータの送信に際して、変換用マイコン46a,46b,46c同士でフォトカプラ48を共有した。これにより、部品点数を低減することができる。
【0056】
(5)インバータINVa,INVb,INVcのそれぞれを、各別の変換用基板50a,50b,50cのそれぞれに搭載した。これにより、車載システムの要求仕様に応じて補機が追加、削除される場合であっても、追加、削除の前後とも用いられる変換用基板についてはこれを変更する必要が生じないことから、様々な仕様の車載システムへの適用が容易となる。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0057】
「操作手段について」
回転角度推定手段を、変換用マイコン46a,46b,46cとは別のハードウェア処理手段によって構成してもよい。
【0058】
レゾルバ等の回転角度検出手段の出力信号に基づき制御量の制御を行なってもよい。
【0059】
CPUやメモリを備えて構成されるマイコン(変換用マイコン46a,46b,46c)に限らない。たとえば、専用のハードウェア処理手段であってもよい。
【0060】
「外部通信線について」
送信用の外部通信線Lc1や受信用の外部通信線Lc2を各別のシリアルラインとするものに限らず、たとえば、送信用の外部通信線を複線化したり、送信用の外部通信線と受信用の外部通信線とを共有化したりしてもよい。
【0061】
「内部通信線について」
送信用の内部通信線Lc3や受信用の内部通信線Lc4を各別のシリアルラインとするものに限らず、たとえば、受信用の内部通信線を複線化したり、送信用の内部通信線と受信用の内部通信線とを共有化したりしてもよい。
【0062】
送信用の内部通信線と受信用の内部通信線とを、複数の変換用マイコン46a,46b,46cで共有するものにも限らない。たとえば、送信用の内部通信線と受信用の内部通信線とを、複数の変換用マイコン46a,46b,46c毎に各別に設けてもよい。これにより、変換用マイコン46a,46b,46cが通信に関する処理に要する演算負荷をいっそう低減することができる。
【0063】
「送受信される情報について」
複数の変換用マイコン46a,46b,46cのそれぞれから、診断結果情報、消費電力情報、実際の制御量に関する情報の全てを通信用マイコン44に出力するものに限らない。たとえば、これらのうちの1つまたは2つであってもよい。
【0064】
「通信のプロトコル等」
ECU30および通信用マイコン44間の通信プロトコルとしては、LINやCANに限らない。また、通信用マイコン44および変換用マイコン46a,46b,46c間としても、I2Cに限らず、たとえばSPI(Serial Peripheral Interface)等であってもよい。なお、ECU30および通信用マイコン44間の通信プロトコルと、通信用マイコン44および変換用マイコン46a,46b,46c間の通信プロトコルとが一致することがあってもよい。
【0065】
「絶縁通信手段について」
フォトカプラ等の光絶縁素子に限らず、たとえばトランス等の磁気絶縁素子であってもよい。
【0066】
「通信手段について」
フォーマットの相違するデータに変換する変換処理を行なう変換手段や、インバータINVa,INVb,INVcのそれぞれの消費電力の上限値を設定する上限値設定手段としては、通信用マイコン44に限らず、専用のハードウェア手段であってもよい。
【0067】
トランシーバ40とフォトカプラ42,48との配置を逆としてもよい。
【0068】
また、トランシーバ40とフォトカプラ42,48のみによって通信手段を構成してもよい。この場合であっても、変換用マイコン46a,46b,46cのそれぞれがECU30の送信データを扱えるようにするなら、データ通信が可能となり、しかも、フォトカプラ42,48を変換用マイコン46a,46b,46c同士で共有するなら、絶縁通信手段の数を低減することができる。
【0069】
「基準電位について」
高電圧システムと低電圧システムとの基準電位を同一としてもよい。この場合、通信用マイコン44や変換用マイコン46a,46b,46cの電源として、ECU30の電源と同様、端子電圧が通常12Vとなる車載補機バッテリを用いてもよい。
【0070】
「ケースについて」
ケースとしては、単一のケースからなるものに限らず、たとえば電源用基板50pを収容するケース、変換用基板50aを収容するケース、変換用基板50bを収容するケース、および変換用基板50cを収容するケースのそれぞれを各別のケースとして且つ、これらのケースの側面にこれらケース同士を互いに連結可能とする手段を備えるものであってもよい。
【0071】
「電源用基板について」
電源用基板としては、通信用マイコン44のみを備えるものに限らず、変換用マイコン46a,46b,46cについても備えるものであってもよい。
【0072】
「補機と電力変換回路との配置について」
上記実施形態では、補機をケースの外部に設けたが、これに限らない。たとえば複数の車載補機のいずれか1つと、上記実施形態の電源用基板50p、変換用基板50a,50b,50cとを1つのケースに収容してもよい。
【0073】
「変換用基板について」
1つのケースに収容される変換用基板の数としては、3つに限らず、2つであってもよく、また4つ以上であってもよい。また、互いに相違する複数の車載補機のそれぞれに対応するインバータを1つの変換用基板に形成してもよい。
【0074】
「電力変換回路について」
3相インバータに限らない。たとえばヒータ26については、1相のインバータであってもよい。またたとえば、ブロアファンの電動機22として5相電動機を用いるなら、インバータとしては5相インバータとなる。
【0075】
なお、直流電圧源の正極および負極のそれぞれと補機の端子とを選択的に接続するスイッチング素子を備える直流交流変換回路にも限らない。
【0076】
「そのほか」
ハイブリッド車に限らず、たとえば車載主機に供給されるエネルギの貯蔵手段として、電気エネルギを出力する手段(2次電池、燃料電池)のみを備えるものであってもよい。また、補機用の電力変換回路の電源としては、車載主機用の電源に限らない。
また、上記実施形態のように高電圧システムと低電圧システムとの基準電位が相違する設定において、通信用マイコン44や変換用マイコン46a,46b,46cの電源として、ECU30の電源と同様、端子電圧が通常12Vとなる車載補機バッテリを用いてもよい。これは、補機バッテリの電力を絶縁型コンバータを介して通信用マイコン44や変換用マイコン46a,46b,46cに出力することで実現することができる。
【符号の説明】
【0077】
30…ECU(出力手段の一実施形態)、40…トランシーバ、42…フォトカプラ(絶縁通信手段の一実施形態)、44…通信用マイコン、46a,46b,46c…変換用マイコン、Lc1,Lc2…外部通信線、Lc3,Lc4…内部通信線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車載補機のそれぞれに電力を供給する各別の電力変換回路と、
前記電力変換回路のそれぞれを操作対象とする各別の操作手段と、
前記各別の操作手段のそれぞれに関する指令値情報を外部通信線を介して受信する単一の通信手段とを備え、
前記通信手段は、前記指令値情報を内部通信線を介して前記操作手段のそれぞれに送信する機能を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記操作手段は、前記電力変換回路に接続される車載補機の制御量、前記電力変換回路の消費電力、および前記車載補機の制御量の制御の異常の有無の診断結果の少なくとも1つに関する情報である操作側情報を前記通信手段に出力する機能を有し、
前記通信手段は、前記操作側情報を受信し、これを外部に出力する機能を有することを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記通信手段は、前記指令値情報を受信する際の第1のデータフォーマットを、前記操作手段に前記指令値情報を送信する際のデータフォーマットであって且つ前記第1のデータフォーマットとは相違する第2のデータフォーマットに変換する変換処理を行なう変換手段を備えることを特徴とする請求項1または2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記通信手段は、トランシーバと通信用マイコンとを備え、
前記操作対象毎の各別の操作手段のそれぞれは、前記通信用マイコンとは別の変換用マイコンを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記通信手段は、前記複数の電力変換回路の合計消費電力の上限値情報を受信し、各電力変換回路の消費電力の上限値を設定する上限値設定手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記指令値情報を前記通信手段に出力する出力手段の基準電位は、前記操作手段の基準電位と相違し、
前記通信手段は、前記出力手段側を1次側として且つ前記複数の操作手段で共有される絶縁通信手段を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記操作手段は、前記操作対象毎に各別の変換用基板に搭載され、
前記通信手段は、前記変換用基板とは別の基板に搭載されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−51745(P2013−51745A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186762(P2011−186762)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】