説明

電力用半導体装置および電力用半導体装置の製造方法

【課題】小型で、信頼性の高い電力用半導体装置を得ることを目的としている。
【解決手段】電力用半導体素子21、22を接合するダイパッド11dと、ダイパッド11dに対して段差を付けられた制御素子23を接合するダイパッド12dが、並列する複数の端子11、12を形成するリードパターンとともに、端子の延在方向におけるそれぞれ一端側の領域と他端側の領域で連なり、かつ、一端側の領域から他端側の領域にかけて延在する延在パターン13、15が形成された1枚のリードフレーム10を用い、リードフレーム10の面を保ったまま、延在パターン13、15の所定部分Rbに屈曲部13b、15bを形成することにより、制御素子23が、電力用半導体素子21、22にオーバーラップするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードフレームを用いた電力用半導体装置の構成およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の中でも電力用半導体装置は、産業用機器から家電・情報端末まで幅広い機器の主電力(パワー)の制御に用いられ、とくに輸送機器等においては高い信頼性が求められている。また、近年、シリコン(Si)に代わる半導体材料として大電流を流すことができ、高効率が期待できるワイドバンドギャップ半導体材料である炭化珪素(SiC)が注目されている。一方、ワイドバンドギャップ半導体素子では、シリコンよりも高い150℃〜300℃の動作温度が想定され、大電流および高温に適したパッケージ形態も同時に求められている。
【0003】
半導体装置に用いるリードフレームは、通常、1枚の板状部材からプレスでの打ち抜きや、エッチング等により、余分な分を除去することで平面上にパターン形成される。そして、機器の出力を制御するために用いられるパワーモジュール(電力用半導体装置)では、主電力を操作するパワー素子(電力用半導体素子)と、電力用半導体素子の動作を制御するための制御素子が、上述したリードフレームの所定位置(ダイパッド)に接合されている。発熱が大きな電力用半導体素子は、ヒートシンクを接続して外部に放熱をする必要があるが、制御素子にはその必要はない。しかし、上記のようなリードフレームに電力用半導体素子と制御素子が平面配置された場合、冷却の必要のない制御素子の部分まで面積を広げる必要があり、小型化の妨げとなっていた。
【0004】
そこで、電力用半導体素子と制御素子をそれぞれ別のリードフレーム内に配置し、電力用半導体素子と制御素子とが面内でオーバーラップするように階層化した半導体装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−22601号公報(段落0024〜0028、図1〜図3、および段落0043〜45、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、リードフレームを用いる半導体装置では、封止の際にリードフレームの両端を上下の金型で挟んで締めこむことによって、封止体内での部材の位置を固定する。そこで、上記のような2枚のリードフレームを用いた半導体装置を封止しようとすると、2枚のリードフレームを重ね合わせた部分が上下の金型に挟み込まれることになる。リードフレームの金型で締めこまれる部分には、平行する多数の切込みが形成されているので、重ね合わせによって金型内部から外部に連通する隙間が生じ、樹脂が漏れ出して十分な封止ができなくなる可能性があった。また、上記特許文献の別の実施の形態に示されているように、電力用半導体素子部分のリードフレームを一端側、制御素子のリードフレームを他端側で挟み込むようにした場合、隙間の発生は抑えられるが、部材を金型内でしっかりと固定することができず、製品にばらつきが生じる可能性があった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、小型で、信頼性の高い電力用半導体装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
また、本発明の電力用半導体装置の製造方法は、略矩形板状をなし、主電力を制御する電力用半導体素子と前記電力用半導体素子を制御する制御信号を出力する制御素子とが厚み方向において段違いに配置されるとともに、前記矩形板状の対向する側面のそれぞれから並列する複数の端子が突出配置された電力用半導体装置を一枚のリードフレームを用いて製造する方法であって、前記1枚のリードフレームには、前記電力用半導体素子が接合される第1のダイパッドと、前記制御素子が接合される第2のダイパッドが、前記並列する複数の端子となるリードパターンとともに、前記リードパターンの延在方向におけるそれぞれ一端側の領域と他端側の領域で連なるように形成されているとともに、前記一端側の領域から前記他端側の領域にかけて延在する延在パターンが形成され、かつ、前記リードフレームの面に垂直な方向において前記第1のダイパッドに対して前記第2のダイパッドが上方に位置するように段差がつけられており、前記第1のダイパッドの一面に前記電力用半導体素子を接合するとともに、前記第2のダイパッドに前記制御素子を接合する工程と、前記リードフレームの面を保ったまま、前記延在パターンの所定部分を屈曲させ、前記リードフレームの面に垂直な方向から見たときに、前記制御素子を、前記電力用半導体素子にオーバーラップさせる工程と、前記第1のダイパッドの裏面に、放熱部材を接合する工程と、前記リードフレームを少なくとも外枠部分が露出した状態で上下の金型ではさみ、前記金型内に樹脂を流し込んで、前記放熱部材の放熱面を除いて当該電力用半導体装置を略矩形形状に封止する工程と、を含むようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電力用半導体装置の製造方法によれば、1枚のリードフレームを用いて電力回路と制御回路が段違いに形成された電力用半導体装置を構成するようにしたので、小型で、信頼性の高い電力用半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる電力用半導体装置の構成を説明するための、リードフレーム上に半導体素子を実装した状態の斜視図および上面図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる電力用半導体装置の構成を説明するための、半導体素子を実装したリードフレームの封止直前の状態の斜視図および上面図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる電力用半導体装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態1にかかる電力用半導体装置の構成を説明するための上面図および断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1の変形例にかかる電力用半導体装置の構成を説明するための、リードフレーム上に半導体素子を実装した状態、および半導体素子を実装したリードフレームの封止直前の状態の斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態2にかかる電力用半導体装置の構成を説明するための、リードフレーム上に半導体素子を実装した状態、および半導体素子を実装したリードフレームの封止直前の状態の斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態3にかかる電力用半導体装置の構成を説明するための、リードフレーム上に半導体素子を実装した状態、および半導体素子を実装したリードフレームの封止直前の状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1〜図4は、本発明の実施の形態1にかかる電力用半導体装置の製造方法および電力用半導体装置の構成を説明するためのもので、図1は電力用半導体装置を構成するためのリードフレームに半導体素子を接合し、配線部材を接続した状態の斜視図(図1(a))と上面図(図1(b))、図2はリードフレームに半導体素子が実装され、さらに、オーバーラップのための曲げ加工を施したトランスファモールドによる封止工程直前の状態の斜視図(図2(a))と上面図(図2(b))、図3は電力用半導体装置の製造方法を説明するためのフローチャート、図4は電力用半導体装置の構成を説明するための上面図(図4(a))と、上面図におけるB−B線による断面のうち、封止部材を除いて説明対象部分を抜き出した部分を示す断面図(図4(b))と、上面図におけるC−C線による断面のうち、封止部材を除いて説明対象部分を抜き出した部分を示す断面図(図4(c))である。また、図5は、本実施の形態の変形例にかかる電力用半導体装置を説明するためのもので、図5(a)は電力用半導体装置を構成するためのリードフレームに半導体素子を接合し、配線部材を接続した状態の斜視図、図5(b)は電力用半導体装置を構成するためのリードフレームに半導体素子が実装され、さらに、オーバーラップのための曲げ加工を施したトランスファモールドによる封止工程直前の状態の斜視図である。
【0012】
本実施の形態にかかる電力用半導体装置の構成と製造方法について図に基づいて説明する。
電力用半導体装置の電力回路を構成するためのリードフレーム10は、1枚の銅板を打ち抜いて平面状のパターンを形成したもので、図1に示すように、枠体15の内側の領域のうち、屈曲予定領域Rbより図中右側の領域が制御回路を形成するためのパターン、屈曲予定領域Rbよりも左側の領域が電力回路を形成するためのパターンである。制御回路を形成するパターンには、制御回路と電力回路を結ぶ方向(給電方向と称す)において延在するように、複数のリードパターン12tと、複数のリードパターン12iとが、タイバー16cを介して連なるとともに、それぞれ並行に形成されている。後の工程でタイバー16c部分を切り離し、枠体15を除去することにより、外部端子となるリードパターン12tのそれぞれと、内部配線部材となるリードパターン12iのそれぞれとが、それぞれ一連の制御リード12として機能する。そして、リードパターン12iのうち、ひとつのリードパターン12iの先端には、制御素子23である半導体の集積回路23を接合するためのダイパッド12dが形成されている。
【0013】
電力回路を形成するパターンにも、制御回路と同様に、後に外部端子となる複数のリードパターン11tと、内部配線部材となる複数のリードパターン11iとが給電方向において延在し、タイバー16pを介して連なるとともに、それぞれ並行に形成されている。リードパターン11iと11tのそれぞれも、後の工程でタイバー16p部分を切り離し、枠体15を除去することにより、それぞれ一連のパワーリード11として機能する。そして、リードパターン11iのうち、ひとつのリードパターン11iの先端には、電力用半導体素子として使用する整流素子であるダイオード21、スイッチング素子であるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)22を接合するためのダイパッド11dが段差部11uを介して形成されている。
【0014】
さらに、枠体15の内側のうち、リードパターン11tおよびリードパターン12tが並ぶ方向(面方向における給電方向に垂直な方向:並列方向と称する)の最外側には、電力回路側から制御回路にわたって延在する共通リード13が形成されている。この共通リード13は、2つのタイバー16c、16p間を給電方向に延在するように形成されており、屈曲予定領域Rbよりも制御回路側の部分には、並列方向の内側に向かって分岐するように突き出た分岐部11eが形成されている。
【0015】
つぎに、リードフレーム10に半導体素子を実装する方法について図1〜図3を用いて説明する。
はじめに、平板状のリードフレーム10をプレス加工し、図1に示すようにダイパッド11dが段差部11uにより、リードフレーム10平面より所定の段差分低くなるようにする(図3:ステップS10)。そして、リードフレーム10の面より低くなったダイパッド11d上に、電力回路を形成するための電力用半導体素子であるダイオード21とIGBT22を2組、ダイパッド12d上に制御素子23をはんだ(SnAgCu:融点219℃)を用いて接合(ダイボンド)する(ステップS20)。
【0016】
つぎに、主電力の電流値に対応した線径の太いパワー用ボンディングワイヤ31(Al線:太さ300μm)を用いて、IGBT22(のエミッタ電極)とダイオード21とリードパターン11iとが連通するように、ワイヤボンディングにより電気的に接続する。そして、パワー用ボンディングワイヤ31より線径の細い制御用ボンディングワイヤ32(Au線:太さ25μm)を用いて、制御素子23とリードパターン12iとをワイヤボンディングにより電気的に接続する。また、制御用ボンディングワイヤ32と同じ信号用ボンディングワイヤ34(Au線:太さ25μm)を用いて、共通リード13の屈曲予定領域Rbより電力回路側の部分とIGBT22のゲート電極とをワイヤボンディングにより電気的に接続する。さらに、信号用ボンディングワイヤ33を用いて、共通リード13の屈曲予定領域Rbより制御回路側の部分にある分岐部13eと、制御素子23の制御信号出力電極とをワイヤボンディングにより電気的に接続する(ステップS30)。これにより、屈曲予定領域Rbの右側には制御素子23を備えた制御回路が、左側にはダイオード21とIGBT22からなる電力スイッチを2組備えた電力回路が形成された回路基板1P1ができあがる。
【0017】
ボンディングワイヤ31、32、33を用いてボンディングを行う際、リードフレーム10の面内でオーバーラップしている部材がなく、ボンディング部分より上に位置して作業の障害となる部材はない。つまり、ボンディング位置が空間的に開放されているので、スムーズにボンディングすることができる。また、ボンディングワイヤ等の変形しやすい配線部材がボンディング部分の下側に位置することもなく、ボンディングによる超音波振動や加圧によりダメージを受けることもない。
【0018】
次に、屈曲予定領域Rbにおいて、枠15と共通リード13を折り曲げることにより、制御回路を給電方向の電力回路に向かってスライドさせる(ステップS40)。これにより、図2に示すように、制御素子23(ダイパッド12d)が、IGBT22の上方で、IGBT22(ダイパッド11d)にオーバーラップする。これにより、制御回路の少なくとも制御素子23を実装したダイパッド12d部分が、電力用半導体素子の上にオーバーラップした回路基板1P2ができあがる。そして、図4に示すように、ダイパッド11dの電力用半導体素子が接合された面の裏側の面(裏面)に絶縁被膜51を介してヒートシンク50を接続(ステップS50)し、電力用半導体装置の基本構成が形成される。
【0019】
このとき、パワー用ボンディングワイヤ31と制御用ボンディングワイヤ32は、それぞれ、電力回路内、制御回路内で位置が固定されているので、屈曲行程中(ステップS40)において、応力がかかることはない。さらに、信号用ボンディングワイヤ33も、それぞれ屈曲予定領域Rbを境に、IGBT22と共通リード13の電力回路側の部分との位置、制御素子23と共通リード13の制御回路側の部分との位置が固定されているので、屈曲行程中(ステップS40)において、応力がかかることはない。つまり、一枚のリードフレーム10を用いても、回路部材に余分な応力をかけることなく、電力用半導体素子21、22と制御素子23とが面内でオーバーラップするように階層化することができる。
【0020】
こうして形成した回路基板1P2をトランスファモールド用の金型内に設置する。そして、基本構成の封止領域Rs部分をトランスファモールドによって封止樹脂で封止する(ステップS60)。最後に封止体40からはみ出たリードフレーム10から枠体15を切除するとともに、タイバー16c、16pを切り離す。このようにして、バラバラになった外部端子(それぞれ11t、12t部分に対応)を所定の形状に折り曲げると(ステップS70)パワーリード11、制御リード11となり、電力用半導体装置1が完成する。
【0021】
このとき、リードフレーム10の給電方向の両端に位置するタイバー16c、16pの近傍部分を含め上下の金型で挟まれる部分は、同一平面内に位置し、重なる部分もない。そのため、金型内での回路基板1P2の位置を容易に固定でき、樹脂の漏れの原因となる連通路を形成することもない。つまり、電力用半導体素子21、22と制御素子23とが面内でオーバーラップして階層化された回路基板1P2を、図4に示すように、封止樹脂40によって確実に封止できる電力用半導体装置1を得ることができる。
【0022】
つぎに動作について説明する。
パワーリード11、制御リード12を外部回路に接続して電力用半導体装置1を起動させると、制御素子23からIGBT22に制御信号(ゲート信号)が出力され、IGBT22がONになる。すると、ダイオード21、IGBT22をはじめとする電力用半導体素子に電流が流れ、パワーリード11を介して、制御された主電力が出力される。その際、電気抵抗分の電力ロスが熱へと変換され、発熱が生ずるが、主な発熱源は電力用半導体素子21、22に偏るので、電力用半導体装置1内で温度差が生じる。しかも、半導体素子21、22、23とリードフレーム10、および封止樹脂40は、それぞれ線膨張係数が異なっているので、電力用半導体装置1内の部材間で、熱による変位に伴う応力(熱応力)が発生する。
【0023】
しかし、本実施の形態にかかる電力用半導体装置1では、製造工程中に電気接続部に余計な応力が加わっていないので、接続部の耐久性が高い。さらに、回路基板1P2を正確に位置決めして、確実に封止しているので、回路内の部材が封止体40内で確実に保持され、湿気や有害なガスからも保護されるので、ますます信頼性が高くなる。
【0024】
つまり、従来のように、単に2枚のリードフレームで階層化しただけならば、回路内の部材の位置関係あるいは、封止にばらつきが生じて、信頼性が低下することがある。しかし、本実施の形態のように1枚のリードフレーム10の給電方向(リードパターン11i、11t、12i、12tの延在方向)の両端が一つの面内に収まるように、レベルを合わせて使用することで、確実に封止して、小型で信頼性の高い電力用半導体装置1を得ることができる。とくに、オーバーラップの際に折り曲げる屈曲予定領域Rbを挟んで電力回路側、制御回路側に分かれて配線部材33、32、33をボンディングするようにしたので、電気接合部の信頼性も高い。
【0025】
実施の形態1の変形例.
また、図5に示すように、本変形例では、共通リード113として、上述した共通リード13から分岐した部分13eを制御回路側だけではなく、電力回路側にも形成するようにしてもよい。この場合、電力回路側の分岐部13eが、IGBT22のゲート電極の近傍にまで伸びるので、信号用ボンディングワイヤ33をより短くすることが可能となる。この場合でも、屈曲行程(ステップS40)中に、IGBT22と分岐部13eとの相対位置が保持されるので、応力がかかることはない。
【0026】
なお、共通リード13や113には必ずしも分岐部13eを設ける必要はない。もちろん、分岐部13eが制御素子23やIGBT22に近づいていた分、信号用ボンディングワイヤ33を長くする必要が生じるが、上述したように。製造工程中に位置関係が変化しないので、工程中にダメージを受けることはない。
【0027】
なお、本実施の形態および変形例においては、IGBT22のゲート電極と共通リード13とをワイヤボンディングで接合する例について説明したが、これに限ることはない。例えば、共通リード13を屈曲予定領域Rbよりも制御回路側の部分が、屈曲行程中(ステップS40)に電力回路側にスライドした時点で、ゲート電極に近接するように設計し、ゲート電極とゲート電極に近接した部分を、導電性接着剤などで電気的接続するようにしてもよい。
【0028】
また、本実施の形態および変形例においては、リードフレーム10、110の屈曲予定領域Rb部分も、通常の厚さのままプレス加工により、屈曲部13b、15bを形成したが、あらかじめ屈曲予定領域Rb部分をコイニング処理やハーフエッチングによって肉厚を薄くしておくことで曲げを容易にし、周辺部への歪を小さくすることが可能である。
【0029】
また、電力用半導体素子としてIGBT22とダイオード21の組み合わせを用い、図中の電力用半導体素子の数は合計4個で、並列接続であったが、これに限定するものではなく、いわゆる6 in 1やインテリジェントパワーモジュールにおいても同様の効果が得られる。
【0030】
また、ダイボンド材料25としてSnAgCuはんだを用いたが、これに限定するものではなく、SnSbはんだや導電性接着剤などを用いても同様の効果が得られる。また、ワイヤボンド用の金属線として、所定の太さのAu線やAl線を用いたが、Cu線など他の金属や、リボンボンドなど他の形状の接合材料を用いても同様の効果が得られる。
【0031】
また、本実施の形態1にかかる電力用半導体装置1の製造方法によれば、略矩形板状をなし、主電力を制御する電力用半導体素子21、22と電力用半導体素子21、22を制御する制御信号を出力する制御素子23とが厚み方向において段違いに配置されるとともに、矩形形状の両側面のそれぞれから並列する複数の端子11、12が突出配置された電力用半導体装置1を1枚のリードフレームを用いて製造する方法であって、1枚のリードフレーム10には、電力用半導体素子21、22が接合される第1のダイパッド11dと、制御素子23が接合される第2のダイパッド12dが、並列する複数の端子11、12となるリードパターン11i、11t、および12i、12tとともに、リードパターンの延在方向におけるそれぞれ一端側の領域と他端側の領域で連なるように形成されているとともに、一端側の領域から他端側の領域にかけて延在する延在パターンである共通リード13、枠体15が形成され、かつ、リードフレーム10の面に垂直な方向において第1のダイパッド11dに対して第2のダイパッド12dが上方に位置するように段差がつけられており、第1のダイパッド11dに電力用半導体素子21、22を接合するとともに、第2のダイパッド12dに制御素子23を接合する工程(ステップS20)と、リードフレーム10の面を保ったまま、屈曲予定領域Rbを屈曲させ、リードフレーム10の面に垂直な方向から見たときに、制御素子23を、電力用半導体素子21、22にオーバーラップさせる工程(ステップS40)と、第1のダイパッド11dの電力用半導体素子21、22が接合された面の反対側の面に、放熱部材50を接合する工程(ステップS50)と、リードフレーム10を少なくとも外枠15部分が露出した状態で図示しない上下の金型ではさみ、金型内に樹脂を流し込んで、放熱部材50の放熱面を除いて電力用半導体装置1を略矩形形状に封止する工程(ステップS60)と、を含むように構成した。
【0032】
そのため、配線部材33に応力をかけることがなく、屈曲部13bを形成できるので、回路基板1P2の信頼性が向上する。しかも、電力用半導体素子21、22と制御素子23が段違いに配置されているにもかかわらず、1枚のリードフレーム10を上下の金型でしっかりと挟み込むことができる。そのため、樹脂の漏れる隙間を生じさせることなく、リードフレーム10を金型内で固定して封止ができるので、封止信頼性も向上する。したがって、電力用半導体素子21、22の冷却に必要な面積を確保し、小型化できるとともに、封止体40を構成する封止樹脂を漏らすことなく回路基板1P2(リードフレーム10)を金型内で固定することにより、ばらつきなくしっかりと封止ができる。つまり、小型で、信頼性の高い電力用半導体装置1を得ることができる。
【0033】
なお、換言すれば、本実施の形態1にかかる電力用半導体装置は、上記製造方法によって、略矩形板状をなし、主電力を制御する電力用半導体素子21、22と電力用半導体素子21、22を制御する制御信号を出力する制御素子23とが厚み方向において段違いに配置されるとともに、矩形板状の対向する側面のそれぞれから並列する複数の端子11、12が突出配置された電力用半導体装置1であって、一面に電力用半導体素子21、22が接合された第1のダイパッド11dと、第1のダイパッド11dの裏面に接合された放熱部材50と、電力用半導体素子21、22の上方に位置するとともに、制御素子23が接合された第2のダイパッド12dと、放熱部材50の放熱面を除いて当該電力用半導体装置1を略矩形形状に封止するように形成された封止体40と、を備え、少なくとも封止体40が形成されるまでは、第1のダイパッド11dと第2のダイパッド12dは、並列する複数の端子11、12となるリードパターン11i、11t、および12i、12tとともに、1枚のリードフレーム10、110(まとめて10)の面内で、リードパターン11i、11t、および12i、12tの延在方向におけるそれぞれ一端側の領域と他端側の領域で連なるように形成されているとともに、リードフレーム10内には、一端側の領域から他端側の領域にかけて延在する延在パターンとなる共通リード13、または枠体15が形成されており、リードフレーム10の面を保ったまま、延在パターンとなる枠体15または共通リード13の所定部分である屈曲予定領域Rbに屈曲部15bまたは13bを形成することにより、当該リードフレーム10の面に垂直な方向から見たときに、制御素子23が、電力用半導体素子21、22にオーバーラップするように構成したことになる。
【0034】
とくに、延在パターンとして形成した共通リード13における屈曲部13bまたは屈曲予定領域Rbよりも一端側の部分と電力用半導体素子22の制御電極とが配線部材33で電気接続されるとともに、共通リード13における屈曲部13bまたは屈曲予定領域Rbよりも他端側の部分と制御素子23の制御信号を出力する電極とが配線部材33で電気接続されているように構成したので、階層化するための屈曲行程中(ステップS40)において、配線部材33に応力がかかることがない。つまり、一枚のリードフレーム10を用いて、階層化するようにしても、配線部材33に余分な応力がかからないので、より一層信頼性の高い電力用半導体素子を得ることができる。
【0035】
また、本実施の形態1にかかる電力用半導体装置1の製造方法では、延在パターン13の屈曲予定領域Rbまたは屈曲部13bよりも一端側の部分と電力用半導体素子22の制御電極とを配線部材33により電気接続するとともに、延在パターン13の屈曲予定領域Rbまたは屈曲部13bよりも他端側の部分と制御素子23の制御信号を出力する電極とを配線部材33により電気接続する工程(ステップS30)を有するようにしたので、特に、電力用半導体素子22と段差のある制御素子23間の電気接続部に応力がかからず、信頼性が向上する。
【0036】
実施の形態2.
本実施の形態2にかかる電力用半導体装置では、実施の形態1にかかる電力用半導体装置で用いた共通リードに代えて、制御回路側と電力回路側に、それぞれ中継リードを設けて中継リード間をワイヤボンディングで接合したものである。さらに、制御回路を電力回路にオーバーラップする際のリードフレームの曲げ構造を変更したものである。図6は、本発明の実施の形態2にかかる電力用半導体装置を説明するためのもので、図6(a)は電力用半導体装置電を構成するためのリードフレームに半導体素子を接合し、配線部材を接続した状態の斜視図、図6(b)はリードフレームに半導体素子が実装され、さらに、オーバーラップのための曲げ加工を施したトランスファモールドによる封止工程直前状態の斜視図である。図において、実施の形態1における電力用半導体装置と同様の構成の部分には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0037】
本実施の形態2にかかる電力用半導体装置の構成と製造方法について図に基づいて説明する。
電力用半導体装置の回路を構成するためのリードフレーム210は、1枚の銅板を打ち抜いて平面状のパターンを形成したもので、図6に示すように、枠体215の内側の領域のうち、屈曲予定領域Rbより図中右側の領域が制御回路を形成するためのパターン、屈曲予定領域Rbよりも左側の領域が電力回路を形成するためのパターンである。制御回路を形成するパターンには、給電方向において延在するように形成された複数のリードパターン12tと、複数のリードパターン12iとが、タイバー16cを介して連なるとともにそれぞれ並行に形成されている。電力回路を形成するパターンにも、給電方向において延在するように形成された複数のリードパターン11tと、複数のリードパターン11iとが、タイバー16pを介して連なるとともに、それぞれ並行に形成されている。
【0038】
これらも、実施の形態1と同様に、後の工程でタイバー16c、16p部分を切り離し、枠体215を除去することにより、一連の制御リード12と、パワーリード11として機能する。リードパターン12iのうち、ひとつのリードパターン12iの先端には、制御素子23である半導体の集積回路を接合するためのダイパッド12dが形成されている。そして、リードパターン11iのうち、ひとつのリードパターン11iの先端には、段差部11uを介して、ダイパッド11dが形成されている。
【0039】
一方、本実施の形態2においては、枠体215の内側の領域のうち、並列方向における最外側に、電力回路側、制御回路側それぞれに、電力用半導体素子用中継リード14p、制御素子用中継リード14c(まとめて中継リード14と称する)が形成されている。このとき、中継リード14は、それぞれ少なくとも一部が、並列方向においてダイパッド11dおよびダイパッド11dよりも外側に位置するようにしている。また、枠体215の屈曲予定領域Rb部分には、開口部15hを中心として給電方向の両側に、それぞれ並列方向において向きが異なる切欠きとなる外側に開いた切欠き15noと内側に開いた切欠き15ni(まとめて切欠き部15と称する)が給電方向において距離を開けて形成されている。
【0040】
つぎに、リードフレーム210に半導体素子を実装する方法について説明する。
なお、実施の形態1の図3で説明した工程のうち、ステップS10からS20まで、およびステップS50以降については、本実施の形態2においても同様であるので、説明を省略し、ステップS30〜S40に対応するステップS230〜S245(フローチャートとしては図示せず)について説明する。
【0041】
図6(a)に示すように、パワー用ボンディングワイヤ31を用いて、IGBT22(のエミッタ電極)とダイオード21とリードパターン11iとが連通するように、ワイヤボンディングにより電気的に接続する。そして、制御用ボンディングワイヤ32(Au線:太さ25μm)を用いて、制御素子23とリードパターン12iとをワイヤボンディングにより電気的に接続する。ここまでは、実施の形態1と同様である。そして、本実施の形態2においては、実施の形態1における信号用ボンディングワイヤ33と同様の信号用ボンディングワイヤ34(Au線:太さ25μm)を用いて、中継リード14pとIGBT22のゲート電極とをワイヤボンディングにより電気的に接続する(図中34pと表示)。さらに、信号用ボンディングワイヤ34を用いて、中継リード14cと、制御素子23の制御信号出力電極とをワイヤボンディングにより電気的に接続する(ステップS230)。これにより、屈曲予定領域Rbの右側には制御回路が、左側には電力スイッチを2組備えた電力回路が形成された回路基板201P1ができあがるが、この段階では制御素子23と、電力用半導体素子22間の給電経路が形成されていない。
【0042】
このときも、実施の形態1と同様、ボンディングワイヤ31、32、34を用いてボンディングを行う際、リードフレーム210の面内でオーバーラップしている部材がないので、ボンディング部分より上に位置して作業の障害となる部材はなく、スムーズにボンディングすることができる。また、ボンディングワイヤ等の変形しやすい配線部材がボンディング部分の下側に位置することもなく、ボンディングによる超音波振動や加圧によりダメージを受けることもない。
【0043】
次に、図6(b)に示すように、リードフレーム210の枠体215の開口部15hに図示しない変形用ピンを差し込んみ、並列方向に引っ張り広げる。これにより、切欠き部15において枠体215は、リードフレーム210の面に平行な面内(水平方向)で折り曲げられて屈曲部215bとなり、制御回路が電力回路に向かってスライドし、制御素子23が電力用半導体素子21、22(ダイパッド11d)の上にオーバーラップする(ステップS240)。さらに、このスライドにより近接した中継リード14cと14p間をボンディングワイヤ34bを用いてワイヤボンドにて電気的に接合する(ステップS245)。これにより、制御素子23が、電力用半導体素子21、22(ダイパッド11d)上にオーバーラップした回路基板201P2ができあがる。あとは、実施の形態1で説明したステップS50の工程を行うことで、電力用半導体装置202の基本構成となる回路基板201P2が形成される。
【0044】
このとき、パワー用ボンディングワイヤ31と制御用ボンディングワイヤ32は、それぞれ、電力回路内、制御回路内で位置が固定されているので、屈曲行程中(ステップS40)において、応力がかかることはない。さらに、オーバーラップした後に行われる信号用ボンディングワイヤ34bの接合(ステップS245)は、並列方向において、ダイパッド11d、12dよりも外側に位置する部分で行われる。そのため、ボンディング位置が空間的に開放されているので、スムーズにボンディングすることができるとともに、ボンディングワイヤ等の変形しやすい配線部材がボンディング部分の下側に位置することもなく、ボンディングによる超音波振動や加圧によりダメージを受けることもない。つまり、一枚のリードフレーム210を用いても、回路部材に余分な応力をかけることなく、電力用半導体素子21、22と制御素子23とが面内でオーバーラップするように階層化することができる。
【0045】
また、本実施の形態2においても、リードフレーム210の給電方向の両端に位置するタイバー16c、16pの近傍部分を含め上下の金型で挟まれる部分は、同一平面内に位置し、重なる部分もない。そのため、金型内での回路基板201P2の位置を容易に固定でき、樹脂の漏れの原因となる連通路を形成することもない。つまり、電力用半導体素子21、22と制御素子23とが面内でオーバーラップして階層化された回路基板201P2を、確実に封止できる電力用半導体装置2を得ることができる。
【0046】
なお、ここでは、中継リード14c、14pとをワイヤボンディングで接合する例について説明したが、これに限ることはない。例えば、制御回路側の部分が、屈曲行程中(ステップS240)に電力回路側にスライドした時点で、中継リード14cの一部が中継リード14pにオーバーラップするように設計し、オーバーラップ部分を、導電性接着剤やはんだ、または超音波圧接などで電気的接続を形成するようにしてもよい。
【0047】
また、本実施の形態においては、リードフレーム210の屈曲予定領域Rb部分も、通常の厚さのままプレス加工により、屈曲部215bを形成したが、あらかじめ屈曲予定領域Rb部分をコイニング処理やハーフエッチングによって肉厚を薄くしておくことで曲げを容易にし、周辺部への歪を小さくすることが可能である。
【0048】
また、電力用半導体素子としてIGBT22とダイオード21の組み合わせを用い、図中の電力用半導体素子の数は合計4個で、並列接続であったが、これに限定するものではなく、いわゆる6 in 1やインテリジェントパワーモジュールにおいても同様の効果が得られる。また、ボンディングワイヤ34用の金属線として、所定の太さのAu線を用いたが、Al線やCu線など他の金属や、ボンディングリボン(テープ)など他の形状の接合材料を用いても同様の効果が得られる。
【0049】
以上のように、本実施の形態2にかかる電力用半導体装置201によれば、略矩形板状をなし、略矩形板状をなし、主電力を制御する電力用半導体素子21、22と電力用半導体素子21、22を制御する制御信号を出力する制御素子23とが厚み方向において段違いに配置されるとともに、矩形板状の対向する側面のそれぞれから並列する複数の端子11、12が突出配置された電力用半導体装置201であって、一面に電力用半導体素子21、22が接合された第1のダイパッド11dと、第1のダイパッド11dの裏面に接合された放熱部材50と、電力用半導体素子21、22の上方に位置するとともに、制御素子23が接合された第2のダイパッド12dと、放熱部材50の放熱面を除いて当該電力用半導体装置201を略矩形形状に封止するように形成された封止体40と、を備え、少なくとも封止体40が形成されるまでは、第1のダイパッド11dと第2のダイパッド12dは、並列する複数の端子11、12となるリードパターン11i、11t、および12i、12tとともに、1枚のリードフレーム210の面内で、リードパターン11i、11t、および12i、12tの延在方向におけるそれぞれ一端側の領域と他端側の領域で連なるように形成されているとともに、リードフレーム210内には、一端側の領域から他端側の領域にかけて延在する延在パターンとなる枠体215が形成されており、リードフレーム210の面を保ったまま、延在パターンとなる枠体215の所定部分である屈曲予定領域Rbに屈曲部215bを形成することにより、当該リードフレーム210の面に垂直な方向から見たときに、制御素子23が、電力用半導体素子21、22にオーバーラップするように構成したことになる。
【0050】
そのため、電力用半導体素子21、22と制御素子23が段違いに配置されているにもかかわらず、リードフレーム210を上下の金型でしっかりと挟み込むことができる。そのため、電力用半導体素子21、22の冷却に必要な面積を確保し、小型化できるとともに、封止体40を構成する封止樹脂を漏らすことなく回路基板201P2(リードフレーム210)を金型内で固定することにより、ばらつきなくしっかりと封止ができる。つまり、小型で、信頼性の高い電力用半導体装置201を得ることができる。
【0051】
とくに、リードフレーム210の一端側の領域、および他端側の領域には、リードパターン11i、11t、および12i、12tが並列する方向において、それぞれ第1のダイパッド11dおよび第2のダイパッド12dよりも外側に位置する第1の中継リード14pと第2の中継リード14cが形成されており、第1の中継リード14pと電力用半導体素子22の制御電極、および、第2の中継リード14cと制御素子23の制御信号を出力する電極とが、それぞれ配線部材34p、34cで電気接続されているとともに、屈曲部215bの形成によって接近した第1の中継リード14pと第2の中継リード14cとが、配線部材34bで電気接続されているように構成したので、配線部材34p、34c、34bのボンディング位置が空間的に開放されているので、スムーズにボンディングすることができるとともに、ボンディングワイヤ等の変形しやすい配線部材がボンディング部分の下側に位置することもなく、ボンディングによる超音波振動や加圧によりダメージを受けることもない。つまり、一枚のリードフレーム210を用いても、回路部材に余分な応力をかけることなく、電力用半導体素子21、22と制御素子23とが面内でオーバーラップするように階層化することができる。
【0052】
また、延在パターンである枠体215の屈曲予定領域Rbには、リードパターン11i、11t、および12i、12tが並列する方向において向きが異なる複数の切欠きが15no、15niが延在方向の異なる位置に設けられ、複数の切欠き15ni、15noを開くことにより、屈曲部215bをリードフレーム210の面に平行に形成するように構成したので、厚みを増大させることなく、1枚のリードフレーム210を用いて電力用半導体素子21、22と制御素子23を階層化させることができる。
【0053】
なお、延在パターンに切欠き15no、15niを設けて、面内方向に屈曲部215bを形成する構成は、上記実施の形態1や後述する実施の形態3など、他の実施の形態に応用することが可能である。
【0054】
実施の形態3.
本実施の形態3にかかる電力用半導体装置では、実施の形態1にかかる電力用半導体装置で用いた共通リードを設けることなく、制御素子と電力用半導体素子とを直接ボンディングワイヤで接合したものである。さらに、パワー用ボンディングワイヤではなく、内部リードの先端に設けたバス部を用いて、ダイオードとIGBTの出力電極を覆うように接合したものである。さらに、電力回路においてダイオードとIGBTの位置を逆に配置している。図7は、本発明の実施の形態3にかかる電力用半導体装置を説明するためのもので、図7(a)は電力用半導体装置を構成するためのリードフレームに半導体素子を接合し、配線部材を接続した状態の斜視図、図7(b)はリードフレームに半導体素子が実装され、さらに、オーバーラップのための曲げ加工を施したトランスファモールドによる封止工程直前状態の斜視図である。図において、実施の形態1における電力用半導体装置と同様の構成の部分には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0055】
本実施の形態3にかかる電力用半導体装置の構成と製造方法について図に基づいて説明する。
電力用半導体装置の電力回路を構成するためのリードフレーム310は、1枚の銅板を打ち抜いて平面状のパターンを形成したもので、図7に示すように、枠体15の内側の領域のうち、屈曲予定領域Rbより図中右側の領域が制御回路を形成するためのパターン、屈曲予定領域Rbよりも左側の領域が電力回路を形成するためのパターンである。制御回路を形成するパターンには、給電方向において延在するように形成された複数のリードパターン12tと、複数のリードパターン12iとが、タイバー16cを介して連なるとともに、それぞれ並行に形成されている。電力回路を形成するパターンにも、給電方向において延在するように形成された複数のリードパターン11tと、複数のリードパターン11iとが、タイバー16pを介して連なるとともに、それぞれ並行に形成されている。
【0056】
これらも、実施の形態1と同様に、後の工程でタイバー16c、16p部分を切り離し、枠体15を除去することにより、一連の制御リード12と、パワーリード11として機能する。リードパターン12iのうち、ひとつのリードパターン12iの先端には、制御素子23である半導体の集積回路を接合するためのダイパッド12dが形成されている。そして、リードパターン11iのうち、ひとつのリードパターン11iの先端には、段差部11uを介して、ダイパッド11d形成されている。
【0057】
一方、本実施の形態3においては、電力回路側の内部リードとなるリードパターン11iのうち、ダイパッド11dが形成されたリードパターン11iの並列方向における両外側には、リードパターン11iの延在方向において屈曲予定領域Rbを超えて制御回路のダイパッド12d部分にまで延在しているバスパターン311iが形成されており、さらに、バスパターン311iの制御回路側の端部には、並列方向においてダイパッド12dに一部がかかるバス部11jが形成されている。
【0058】
つぎに、リードフレーム310に半導体素子を実装する方法について説明する。
なお、実施の形態1の図3で説明した工程のうち、ステップS50以降については、本実施の形態3においても同様であるので、説明を省略し、ステップS10〜ステップS40に対応するステップS310〜ステップS345(フローチャートとしては図示せず)について説明する。
【0059】
はじめに、平板状のリードフレーム310をプレス加工し、図7(a)に示すようにダイパッド11dが段差部11uにより、リードフレーム310平面より所定の段差分低くなるようにする。さらに、バス部11jがリードフレーム310平面より低く、かつ、ダイパッド11dの上面(表面)に対して、バス部11jの下面(裏面)の位置が、電力用半導体素子の厚みに接合部材の厚みを足した分高くなるように段差を付ける(図3:ステップS310)。
【0060】
そして、段差加工したリードフレーム310に、IGBT22のゲート電極をタイバー16p側に向け、ダイオード21を内側になるように配置して、ステップS20と同様の手法ではあるが、半導体素子を実装する(ステップS340)。そして、制御用ボンディングワイヤ32(Au線:太さ25μm)を用いて、制御素子23とリードパターン12iとをワイヤボンディングにより電気的に接続する(ステップS330)。
【0061】
このときも、実施の形態1と同様、ボンディングワイヤ32を用いてボンディングを行う際、リードフレーム310の面内でオーバーラップしている部材がない。そのため、ボンディング部分より上に位置して作業の障害となる部材がなく、空間的に開放されているのでスムーズにボンディングすることができる。また、ボンディングワイヤ等の変形しやすい配線部材がボンディング部分の下側に位置することもなく、ボンディングによる超音波振動や加圧によりダメージを受けることもない。
【0062】
次に、枠体15、およびリードパターン311iの屈曲予定領域Rb部分を実施の形態1と同様の要領で屈曲加工する。これにより、制御回路が電力回路に向かってスライドし、ダイパッド12dがダイパッド11dに接合されたIGBT22の上にオーバーラップすると同時に、バス部11jの裏面が、ダイオード21とIGBT22の上方にまたがるように位置する(ステップS340)。なお、ダイオード21とIGBT22の表面には、屈曲工程(ステップS340)の前に導電性接着剤(例えば、焼結性Agペースト)が塗布(供給)されている。そのため、屈曲工程(ステップS340)後に、150℃で1hキュアすることによって、バス部11jがダイオード21とIGBT22を電気的に接続するとともに、リードパターン311iにも接続されることになる。さらに、スライドによって近づくとともに、リードフレーム310の面方向で並んだIGBT22のゲート電極と制御素子23とを信号用ボンディングワイヤ33と同様の信号用ボンディングワイヤ35(Au線:太さ25μm)を用いてボンディングにより電気的に接合する(ステップS345)。
【0063】
これにより、制御回路の少なくとも制御素子23を実装したダイパッド12d部分が、電力回路の上にオーバーラップした回路基板301P2ができあがる。あとは、実施の形態1で説明したステップS50の工程を行うことで、電力用半導体装置の基本構成が形成される。なお、バスパターン311jを折り曲げる工程は、枠体15に屈曲部15bを形成する工程とは別に行うようにしてもよい。
【0064】
このとき、制御用ボンディングワイヤ32は、制御回路内で位置が固定されているので、屈曲行程中(ステップS340)において、応力がかかることはない。さらに、オーバーラップした後に行われる信号用ボンディングワイヤ35の接合(ステップS345)位置は空間的に開放されているので、スムーズにボンディングすることができるとともに、ボンディングワイヤ等の変形しやすい配線部材がボンディング部分の下側に位置することもなく、ボンディングによる超音波振動や加圧によりダメージを受けることもない。つまり、一枚のリードフレームを用いても、回路部材に余分な応力をかけることなく、電力用半導体素子21、22と制御素子23とが面内でオーバーラップするように階層化することができる。
【0065】
このとき、リードフレーム310の給電方向の両端に位置するタイバー16c、16pの近傍部分を含め上下の金型で挟まれる部分は、同一平面内に位置し、重なる部分もない。そのため、金型内での基本構成の位置を容易に固定でき、樹脂の漏れの原因となる連通口を形成することもない。つまり、電力用半導体素子21、22と制御素子23とが面内でオーバーラップして階層化された回路基板301P2を、確実に封止できる電力用半導体装置301を得ることができる。
【0066】
なお、ここでは、リードフレーム310の屈曲予定領域Rb部分も、通常の厚さのままプレス加工により、屈曲部15b、11bを形成したが、あらかじめ屈曲予定領域Rb部分をコイニング処理やハーフエッチングによって肉厚を薄くしておくことで曲げを容易にし、周辺部への歪を小さくすることが可能である。
【0067】
また、バス部11jはプレス加工(ステップS310)により基準面よりやや低くなるように段差付けしており、バス部11jの裏面が電力用半導体素子であるIGBT22、ダイオード21の表面の高さにほぼ等しくなるように形成されているが、厚み調整ができる接合材料で接続できる場合にはこれにこだわる必要はない。さらに、バス部11jと電力用半導体素子21、22との電気的接続に導電性接着剤を用いたが、はんだ接合や超音波圧接など、他の方法を用いても同様の効果が得られる。
【0068】
また、IGBT22のゲート電極と制御素子23に信号用ボンディングワイヤ35をボンディングする場合、ダイパッド11dに図示しない開口部を形成し、開口部からピンを突き上げて、制御素子23のダイパッド12dを保持するようにしてもよい。それにより、よりワイヤボンドを容易にすることが可能となる。また、制御素子23用のダイパッド12dを廃し、バス部11jの上に絶縁性ダイボンドシート接着剤などを用いて制御素子23を搭載するようにすれば、さらなる小型化が可能となる。
【0069】
また、電力用半導体素子としてIGBT22とダイオード21の組み合わせを用い、図中の電力用半導体素子の数は合計4個で、並列接続であったが、これに限定するものではなく、いわゆる6 in 1やインテリジェントパワーモジュールにおいても同様の効果が得られる。また、ボンディングワイヤ35用の金属線として、所定の太さのAu線を用いたが、Al線やCu線など他の金属や、リボンボンドなど他の形状の接合材料を用いても同様の効果が得られる。
【0070】
以上のように、本実施の形態3にかかる電力用半導体装置301によれば、略矩形板状をなし、略矩形板状をなし、主電力を制御する電力用半導体素子21、22と電力用半導体素子21、22を制御する制御信号を出力する制御素子23とが厚み方向において段違いに配置されるとともに、矩形板状の対向する側面のそれぞれから並列する複数の端子11、12が突出配置された電力用半導体装置301であって、一面に電力用半導体素子21、22が接合された第1のダイパッド11dと、第1のダイパッド11dの裏面に接合された放熱部材50と、電力用半導体素子21、22の上方に位置するとともに、制御素子23が接合された第2のダイパッド12dと、放熱部材50の放熱面を除いて当該電力用半導体装置301を略矩形形状に封止するように形成された封止体40と、を備え、少なくとも封止体40が形成されるまでは、第1のダイパッド11dと第2のダイパッド12dは、並列する複数の端子11、12となるリードパターン11i、11t、および12i、12tとともに、1枚のリードフレーム310の面内で、リードパターン11i、11t、および12i、12tの延在方向におけるそれぞれ一端側の領域と他端側の領域で連なるように形成されているとともに、リードフレーム310内には、一端側の領域から他端側の領域にかけて延在する延在パターンとなる枠体15が形成されており、リードフレーム310の面を保ったまま、延在パターンとなる枠体15所定部分である屈曲予定領域Rbに屈曲部15bを形成することにより、当該リードフレーム310の面に垂直な方向から見たときに、制御素子23が、電力用半導体素子21、22にオーバーラップするように構成したことになる。
【0071】
そのため、電力用半導体素子21、22と制御素子23が段違いに配置されているにもかかわらず、リードフレーム310を上下の金型でしっかりと挟み込むことができる。そのため、電力用半導体素子21、22の冷却に必要な面積を確保し、小型化できるとともに、封止体40を構成する封止樹脂を漏らすことなく回路基板301P2(リードフレーム310)を金型内で固定することにより、ばらつきなくしっかりと封止ができる。つまり、小型で、信頼性の高い電力用半導体装置301を得ることができる。
【0072】
とくに、電力用半導体素子は、整流素子21とスイッチング素子22からなる2つの半導体素子を並べたものであり、リードフレーム310には、一端側の領域から他端側の領域に達するとともに、他端側の端部に所定の大きさのバス部11jを有するバスパターン311iが形成されており、バスパターン311iのバス部11j以外の部分の折り曲げによって、バス部11jを2つの半導体素子21、22にオーバーラップさせて、2つの半導体素子21、22間が電気接続されているとともに、屈曲部15bの形成によって接近した電力用半導体素子22の制御電極と制御素子23の制御信号を出力する電極とが配線部材35で電気接続されているように構成した。そのため、オーバーラップした後に行われる信号用ボンディングワイヤ35の接合位置は空間的に開放されているので、スムーズにボンディングすることができるとともに、ボンディングワイヤ等の変形しやすい配線部材がボンディング部分の下側に位置することもなく、ボンディングによる超音波振動や加圧によりダメージを受けることもない。つまり、一枚のリードフレーム310を用いても、回路部材に余分な応力をかけることなく、信頼性の高い電力用半導体装置301を得ることができる。
【0073】
以上のように上記各実施の形態1〜3にかかる電力用半導体装置の製造方法によれば、略矩形板状をなし、主電力を制御する電力用半導体素子21、22と電力用半導体素子21、22を制御する制御信号を出力する制御素子23とが厚み方向において段違いに配置されるとともに、矩形形状の両側面のそれぞれから並列する複数の端子11、12が突出配置された電力用半導体装置1、201、301(代表して1)を1枚のリードフレーム10、210、310(代表して10)を用いて製造する方法であって、1枚のリードフレーム10には、電力用半導体素子21、22が接合される第1のダイパッド11dと、制御素子23が接合される第2のダイパッド12dが、並列する複数の端子11、12となるリードパターン11i、11t、および12i、12tとともに、リードパターンの延在方向におけるそれぞれ一端側の領域と他端側の領域で連なるように形成されているとともに、一端側の領域から他端側の領域にかけて延在する延在パターンである共通リード13、枠体15が形成され、かつ、リードフレーム10の面に垂直な方向において第1のダイパッド11dに対して第2のダイパッド12dが上方に位置するように段差がつけられており、第1のダイパッド11dに電力用半導体素子21、22を接合するとともに、第2のダイパッド12dに制御素子23を接合する工程(ステップS20)と、リードフレーム10の面を保ったまま、屈曲予定領域Rbを屈曲させ、リードフレーム10の面に垂直な方向から見たときに、制御素子23を、電力用半導体素子21、22にオーバーラップさせる工程(ステップS40)と、第1のダイパッド11dの電力用半導体素子21、22が接合された面の反対側の面に、放熱部材50を接合する工程(ステップS50)と、リードフレーム10を少なくとも外枠15部分が露出した状態で図示しない上下の金型ではさみ、金型内に樹脂を流し込んで、放熱部材50の放熱面を除いて電力用半導体装置1を略矩形形状に封止する工程(ステップS60)と、を含むように構成した。
【0074】
そのため、配線部材33に応力をかけることがなく、屈曲部13bを形成できるので、回路基板1P2の信頼性が向上する。しかも、電力用半導体素子21、22と制御素子23が段違いに配置されているにもかかわらず、1枚のリードフレーム10を上下の金型でしっかりと挟み込むことができる。そのため、樹脂の漏れる隙間を生じさせることなく、リードフレーム10を金型内で固定して封止ができるので、封止信頼性も向上する。したがって、電力用半導体素子21、22の冷却に必要な面積を確保し、小型化できるとともに、封止体40を構成する封止樹脂を漏らすことなく回路基板1P2(リードフレーム10)を金型内で固定することにより、ばらつきなくしっかりと封止ができる。つまり、小型で、信頼性の高い電力用半導体装置1を得ることができる。
【0075】
上記各実施の形態において、ダイパッド11dをリードフレーム10、210、310の主面より低くする例について説明したが、これに限ることはない。例えば、ダイパッド12dを主面より高くするようにしてもよく、11dを低くするとともに、12dを高くするようにしてもよい。つまり、ダイパッド11dが12dより所定量低くなるようにすればよい。そして、ダイパッド11d、12dやバス部11jを段差加工工程(ステップS10、S310)で段差付けする例について記載したが、リードフレームを打ち抜く時に同時に行うようにしてもよい。
【0076】
なお、上記各実施の形態においては、スイッチング素子(トランジスタ)22や整流素子(ダイオード)21として機能する電力用半導体素子には、シリコンウエハを基材とした一般的な素子でも良いが、本発明においては炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)、またはダイヤモンドといったシリコンと較べてバンドギャップが広い、いわゆるワイドバンドギャップ半導体材料を用い、運転温度が高くなる場合に、特に顕著な効果が現れる。特に炭化ケイ素を用いた電力用半導体素子に好適に用いることができる。デバイス種類としては、スイッチング素子としてはIGBTの他に、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect-Transistor)でもよい。
【0077】
ワイドバンドギャップ半導体によって形成されたスイッチング素子や整流素子(各実施の形態における電力用半導体素子21、22)は、ケイ素で形成された素子よりも電力損失が低いため、スイッチング素子や整流素子における高効率化が可能であり、ひいては、電力用半導体装置の高効率化が可能となる。さらに、耐電圧性が高く、許容電流密度も高いため、スイッチング素子や整流素子の小型化が可能であり、これら小型化されたスイッチング素子や整流素子を用いることにより、電力用半導体装置も小型化が可能となる。また耐熱性が高いので、高温動作が可能であり、ヒートシンクの放熱フィンの小型化や、水冷部の空冷化も可能となるので、電力用半導体装置の一層の小型化が可能になる。
【0078】
一方、上記のように高温動作する場合は停止・駆動時の温度差が大きくなり、さらに、高効率・小型化によって、単位体積当たりに扱う電流量が大きくなる。そのため経時的な温度変化や空間的な温度勾配が大きくなり、電力用半導体素子と配線部材との熱応力も大きくなる可能性がある。しかし、本発明のように製造中の電気接続部の応力を防止し、リードフレームによって正確な位置で固定して、確実に封止することができる電力用半導体装置では、接合部の信頼性が高く、部材の劣化も抑制できるので、ワイドバンドギャップ半導体の特性を活かして、小型化や高効率化を進めてもパワーサイクル寿命が長く、信頼性の高い電力用半導体装置を得ることが容易となる。つまり、本発明による効果を発揮することで、ワイドバンドギャップ半導体の特性を活かすことができるようになる。
【0079】
なお、スイッチング素子及び整流素子の両方がワイドバンドギャップ半導体によって形成されていても、いずれか一方の素子がワイドバンドギャップ半導体によって形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 電力用半導体装置、
10 リードフレーム;
11 パワーリード(端子)、
11d:ダイパッド、11i:内部リード対応リードパターン、11j:バス部、11t:外部端子対応リードパターン、11u:段差部対応リードパターン)、
12 制御リード(端子)、
12d:ダイパッド、12i:内部リード対応リードパターン、12t:外部端子対応リードパターン)
13 共通リード(延在パターン(13b:屈曲部、13e:分岐部))、
14 中継リード(14c:制御回路対応部分、14p:電力回路対応部分)
15 枠体(延在パターン(15b:屈曲部、15h:開口部、15ni:内開き切欠き部、15no:外開き切欠き部))、
16 タイバー(16c:制御回路対応部分、16p:電力回路対応部分)
21 ダイオード(整流素子:電力用半導体素子)、 22 IGBT(スイッチング素子:電力用半導体素子)、 23 制御素子、 25 ダイボンド材料、
31 パワー用ボンディングワイヤ(配線部材)、 32 制御用ボンディングワイヤ(配線部材)、 33 信号用ボンディングワイヤ(配線部材)、
40 封止体、 50 放熱板、 51 絶縁層
Rb:リードフレームの屈曲予定領域、 Rs 封止予定領域、
百位の数字の違いは変形例または実施の形態による構成の相違を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形板状をなし、主電力を制御する電力用半導体素子と前記電力用半導体素子を制御する制御信号を出力する制御素子とが厚み方向において段違いに配置されるとともに、前記矩形板状の対向する側面のそれぞれから並列する複数の端子が突出配置された電力用半導体装置を一枚のリードフレームを用いて製造する方法であって、
前記1枚のリードフレームには、前記電力用半導体素子が接合される第1のダイパッドと、前記制御素子が接合される第2のダイパッドが、前記並列する複数の端子となるリードパターンとともに、前記リードパターンの延在方向におけるそれぞれ一端側の領域と他端側の領域で連なるように形成されているとともに、前記一端側の領域から前記他端側の領域にかけて延在する延在パターンが形成され、かつ、前記リードフレームの面に垂直な方向において前記第1のダイパッドに対して前記第2のダイパッドが上方に位置するように段差がつけられており、
前記第1のダイパッドの一面に前記電力用半導体素子を接合するとともに、前記第2のダイパッドに前記制御素子を接合する工程と、
前記リードフレームの面を保ったまま、前記延在パターンの所定部分を屈曲させ、前記リードフレームの面に垂直な方向から見たときに、前記制御素子を、前記電力用半導体素子にオーバーラップさせる工程と、
前記第1のダイパッドの裏面に、放熱部材を接合する工程と、
前記リードフレームを少なくとも外枠部分が露出した状態で上下の金型ではさみ、前記金型内に樹脂を流し込んで、前記放熱部材の放熱面を除いて当該電力用半導体装置を略矩形形状に封止する工程と、
を含む電力用半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電力用半導体装置の製造方法により製造した電力用半導体装置。
【請求項3】
前記延在パターンにおける前記所定部分よりも前記一端側の部分と前記電力用半導体素子の制御電極とが配線部材で電気接続されるとともに、前記延在パターンにおける前記所定部分よりも前記他端側の部分と前記制御素子の制御信号を出力する電極とが配線部材で電気接続されていることを特徴とする請求項2に記載の電力用半導体装置。
【請求項4】
前記リードフレームの前記一端側の領域、および前記他端側の領域には、前記リードパターンが並列する方向において、それぞれ前記第1のダイパッドおよび前記第2のダイパッドよりも外側に位置する第1の中継リードと第2の中継リードが形成されており、
前記第1の中継リードと前記電力用半導体素子の制御電極、および、前記第2の中継リードと前記制御素子の制御信号を出力する電極とが、それぞれ配線部材で電気接続されているとともに、
前記屈曲によって接近した前記第1の中継リードと前記第2の中継リードとが、配線部材で電気接続されていることを特徴とする請求項2に記載の電力用半導体装置。
【請求項5】
前記電力用半導体素子は、整流素子とスイッチング素子からなる2つの半導体素子を並列配置したものであり、
前記リードフレームには、前記一端側の領域から前記他端側の領域に達するとともに、前記他端側の端部に所定の大きさのバス部を有するバスパターンが形成されており、
前記バスパターンの前記バス部以外の部分の折り曲げによって、前記バス部を前記2つの半導体素子にオーバーラップさせて、前記2つの半導体素子間が電気接続されているとともに、
前記屈曲によって接近した前記電力用半導体素子の制御電極と前記制御素子の制御信号を出力する電極とが配線部材で電気接続されていることを特徴とする請求項2に記載の電力用半導体装置。
【請求項6】
前記延在パターンの所定部分には、前記リードパターンが並列する方向において向きが異なる複数の切欠きが前記延在方向の異なる位置に設けられ、
前記複数の切欠きを開くことにより、前記所定部分が前記リードパターンの面に平行な方向で屈曲していることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載の電力用半導体装置。
【請求項7】
前記電力用半導体素子がワイドバンドギャップ半導体材料により形成されていることを特徴とする請求項2ないし6のいずれか1項に記載の電力用半導体装置。
【請求項8】
前記ワイドバンドギャップ半導体材料は、炭化ケイ素、窒化ガリウム、およびダイヤモンド、のうちのいずれかであることを特徴とする請求項7に記載の電力用半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−98199(P2013−98199A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236784(P2011−236784)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】