説明

電動アクチュエータ駆動装置

【課題】電動アクチュエータの加速時に発生する過渡的な大きな瞬時電流に適応できるとともに、小型,軽量化を図ることができるようにする。
【解決手段】本発明は、電動アクチュエータ10と、この電動アクチュエータ10を駆動するための発電用モータ50を有する電動アクチュエータ駆動装置であって、電動アクチュエータ10の加減速時に生じる大きな瞬時電流を送給する回転数となるように、上記発電用モータ50を回転駆動する発電用モータ駆動手段C8を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば宇宙機に搭載して使用される電動アクチュエータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電動アクチュエータ駆動装置として、電動アクチュエータとした名称において特許文献1に開示された構成のものがある。図9は、その特許文献1に記載された電動アクチュエータの構成を示す図である。
【0003】
特許文献1に開示された従来の電動アクチュエータは、第1モータ1と、第2モータ2を備え、その第1モータ1側(又は第2モータ2側)には、ボールスクリュー3のリード4をモータ回転軸1a(あるいはモータ回転軸2a)と同軸に設けるとともに、第2モータ2側(又は第1モータ1側)には、ボールスクリュー3のナット5をモータ回転軸2a(又はモータ回転軸1a)と同軸に設けて、ボールスクリュー3を介して第1モータ1及び第2モータ2を連結した構成のものである。
なお、図中6,7で示すものはハウジング、8で示すものはナットブレーキ、9で示すものはリードブレーキ、Rで示すものは機体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003‐41158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1に開示されている電動アクチュエータによれば、動力の伝達効率及び信頼性を低下させることなく、構造を簡略化して製造コストの低減化を実現することができるものの、高減速比の電動アクチュエータでは、慣性負荷が大きくなるとともに、加速時の消費電流と停止時の回生電流が大きくなる。
【0006】
すなわち、上記従来の電動アクチュエータでは、電源装置から電流を直接送給していたために、電源装置としては、加速時に発生する過渡的な大きな瞬時電流に適応できる必要があり、そのために、電源装置の大型化とともに宇宙機の電源電圧の変動を生じさせやすいという未解決の課題がある。
【0007】
そこで本発明は、電動アクチュエータの加減速時に発生する過渡的な大きな瞬時電流に適応できるとともに、小型,軽量化を図ることができる電動アクチュエータ駆動装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、電動アクチュエータと、この電動アクチュエータを駆動するための発電用モータを有する電動アクチュエータ駆動装置であって、電動アクチュエータの加減速時に生じる大きな瞬時電流を送給する回転数となるように、上記発電用モータを回転駆動する発電用モータ駆動手段を有することを特徴としている。
この構成では、電動アクチュエータの加減速時に生じる大きな瞬時電流を送給する回転数となるように、上記発電用モータを回転駆動する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電動アクチュエータの加速時に発生する過渡的な大きな瞬時電流に適応できるとともに、小型,軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る電動アクチュエータ駆動装置の回路構成を示すブロック図である。
【図2】同上の電動アクチュエータ駆動装置の一部をなす発電用モータ制御系の動作を示すフローチャートである。
【図3】同上の電動アクチュエータ駆動装置の一部をなす充電用モータ制御系の動作を示すフローチャートである。
【図4】(A)は、電動アクチュエータのストロークと時間との関係、(B)は、ノズル反力による負荷及び電動アクチュエータ内の慣性力による加速負荷と時間との関係、(C)は、電動アクチュエータの電源消費電流と時間との関係、(D)は、発電用モータの充放電電流と時間との関係をそれぞれ示すグラフである。
【図5】本発明の第二の実施形態に係る電動アクチュエータ駆動装置の回路構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係る電動アクチュエータ駆動装置の一部をなす発電用モータ制御系の動作を示すフローチャートである。
【図7】同上の第二の実施形態に係る電動アクチュエータ駆動装置の一部をなす発電用モータ制御系の動作を示すフローチャートである。
【図8】同上の第二の実施形態に係る電動アクチュエータ駆動装置の一部をなす充電用モータ制御系の動作を示すフローチャートである。
【図9】特許文献1に開示された従来の電動アクチュエータの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の第一の実施形態に係る電動アクチュエータ駆動装置の回路構成を示すブロック図である。
【0012】
本発明の第一の実施形態に係る電動アクチュエータ駆動装置A1は、電動アクチュエータ10と、この電動アクチュエータ10を駆動するための駆動制御回路B1とを有して構成されており、例えば宇宙機に搭載されて使用されるものである。
具体的には、例えば宇宙機に搭載されているロケットモータの可動ノズル等を偏向させるためのものである。
【0013】
本実施形態において示す電動アクチュエータ10は、電動リニアアクチュエータの一例である電動シリンダであり、これには、三相交流サーボモータを用いたアクチュエータ駆動モータ20、位置検出器30及び回転角検出器40が配設されている。以下、電動アクチュエータを電動シリンダ10として説明する。
【0014】
電動シリンダ10は、シリンダ本体11、駆動ネジ軸12及び伸縮ロッド13を有している。
シリンダ本体11は円筒形に形成されており、これの基端部11aに軸受け14が配設固定され、また、先端部11bを開口したものである。
駆動ネジ軸12は、上記したシリンダ本体11の全長よりもやや短く形成され、その基端部12a近傍を上記軸受け14に回転自在に軸支しているとともに、その基端部12aにはギヤ15が固定されている。
【0015】
伸縮ロッド13は、上記駆動ネジ軸12に螺合する円柱形の螺合ブロック16と、この螺合ブロック16を基端部開口13aに固定した円筒形に形成されている。
【0016】
位置検出器30は、上記伸縮ロッド13の伸縮領域において、その伸縮ロッド13の伸縮位置を検出するためのものであり、シリンダ本体11に沿設されている。
回転角検出器40は、上記したアクチュエータ駆動モータ20の回転角度を検出するものである。
なお、上記した位置検出器30と回転角検出器40は、それぞれ後述するコントローラCの入力ポートに接続されている。
【0017】
アクチュエータ駆動モータ20は、これの本体21がシリンダ本体11の基端側半部に配設固定されており、そのシリンダ本体11から突出させた出力軸22に、上記ギヤ15と噛合するギヤ23が固定されている。
上記の構成では、アクチュエータ駆動モータ20を駆動することにより、ギヤ15,23、駆動ネジ軸12を介して伸縮ロッド13を伸縮させている。
【0018】
駆動制御回路B1は、発電用モータ制御系Baと充電用モータ制御系Bbとから構成されている。
発電用モータ制御系Baは、上記した回転角検出器40とともに、発電用モータ50、回転角検出器60、電力半導体モジュール70、ゲート回路80、電力半導体モジュール90及びゲート回路100からなる。なお、図1においては、発電用モータ50を発電機50と表記している。
【0019】
充電用モータ制御系Bbは、電力半導体モジュール110、ゲート回路120、駆動用電源130、電源回路140、制御用電源150、充電用モータ160、回転角検出器170からなり、それら各制御系をなす回路は、コントローラCの入出力ポートに適宜接続されている。
なお、コントローラCの入力ポートには、宇宙機側から出力されるストローク指令も入力されるようになっている。
【0020】
まず、発電用モータ制御系Baについて説明する。
電力半導体モジュール70は、上記したアクチュエータ駆動モータ20をインバータ駆動するためのものであり、これに接続されたゲート回路80によってスイッチングされるようになっている。なお、ゲート回路80は、コントローラCの出力ポートに接続されている。
【0021】
上記の電力半導体モジュール70の出力ラインUVWのうちのU相とV相には、電流センサS1,S2が設けられており、それら電流センサS1,S2はコントローラCの入力ポートにそれぞれ接続されている。
【0022】
電力半導体モジュール90は、発電用モータ50をインバータ駆動するものであり、これに接続されたゲート回路100によってスイッチングされるようになっている。
回転角検出器60は、発電用モータ50の回転角度を検出するためのものであり、コントローラCの入力ポートに接続されている。
【0023】
電力半導体モジュール90と発電用モータ50との間の出力ラインUVWのうちのU相とV相には、電流センサS3,S4が設けられており、それら電流センサS3,S4はコントローラCの入力ポートにそれぞれ接続されている。
【0024】
次に、充電用モータ制御系Bbについて説明する。
充電用モータ160は、電力半導体モジュール110によって回転駆動されるようになっており、発電用モータ50と機械的に直結されている。
【0025】
電力半導体モジュール110は、上記した充電用モータ160をインバータ駆動するものであり、これに接続されたゲート回路120によってスイッチングされるようになっている。
駆動用電源130は、数百ボルトの直流電源である。
上記のゲート回路120には、制御用電源150が電源回路140を介して接続され、また、コントローラCの出力ポートに接続されている。
回転角検出器170は、充電用モータ160の回転角度を検出するためのものであり、コントローラCの入力ポートに接続されている。
【0026】
電力半導体モジュール110と充電用モータ160との間の出力ラインUVWのうちのU相とV相には、電流センサS5,S6が設けられており、それら電流センサS5,S6はコントローラCの入力ポートにそれぞれ接続されている。
【0027】
コントローラCは、本システムの制御主体となるものであり、プロセッサ、信号変換器、メモリ、アンプ(いずれも図示しない)等から構成されており、また、本装置を搭載した宇宙機側から出力されるストローク指令が入力されるようになっている。
【0028】
本実施形態において示すコントローラCは、次の機能を有している。
(1)宇宙機側からのストローク指令に対する電動シリンダ10の伸縮ロッド13の位置誤差を算出する機能。この機能を「位置誤差算出手段C1」という。
本実施形態においては、位置検出器30からの位置フィードバックに基づいて、当該位置誤差を算出している。
(2)算出された位置誤差に基づいて、電動シリンダ10の伸縮ロッド13の伸縮速度(指令速度)を算出する機能。この機能を「伸縮速度算出手段C2」という。
【0029】
(3)伸縮ロッド13の伸縮速度の誤差を算出する機能。この機能を「第一の伸縮速度誤差算出手段C3」という。
本実施形態においては、回転角検出器40から出力される速度フィードバックと、算出された指令速度とに基づき、伸縮ロッド13の伸縮速度の誤差を算出している。
(4)算出された伸縮ロッド13の速度誤差に基づいて、電動シリンダ10に供給する指令電流を算出する機能。この機能を「指令電流算出手段C4」という。
【0030】
(5)算出された指令電流と、電流センサS1、S2により検出した電流値とに基づいて、電流誤差を算出する機能。この機能を「第一の電流誤差算出手段C5」という。
(6)算出された指令電流と、電流センサS3、S4により検出した電流値とに基づいて、電流誤差を算出する機能。この機能を「第二の電流誤差算出手段C6」という。
【0031】
(7)第一の電流誤差算出手段C5により算出した電流誤差に基づいて、電動シリンダ10の伸縮ロッド13を伸縮駆動する機能。この機能を「電動シリンダ駆動手段C7」という。
(8)第二の電流誤差算出手段C6により算出した電流誤差に基づいて、上記発電用モータ50を回転駆動する機能。この機能を「発電用モータ駆動手段C8」という。
すなわち、電動シリンダ10の伸縮ロッド13の加減速時に生じる大きな瞬時電流を送給する回転数となるように、上記発電用モータ50を回転駆動する。
「瞬時電流」は、電動シリンダ10の伸縮ロッド13を加減速させるときに生じる電源消費電流と回生電流である。
【0032】
(9)発電用モータ50が所要の回転数となるような充電用モータ160に与える指令速度を算出する機能。この機能を「指令速度算出手段C9」という。
(10)充電用モータ160の回転速度の誤差を算出する機能。この機能を「回転速度誤差算出手段C10」という。
本実施形態においては、回転角検出器170から出力される速度フィードバックと、算出された指令速度とに基づき、充電用モータ160の回転速度の誤差を算出している。
【0033】
(11)回転速度誤差算出手段C10により算出した充電用モータ160の回転速度誤差に基づいて、電動シリンダ10に供給する指令電流を算出する機能。この機能を「指令電流算出手段C11」という。
【0034】
(12)発電用モータ50が所要の回転数となるように、充電用モータ160を回転駆動する機能。この機能を「充電用モータ駆動手段C12」という。
本実施形態においては、ゲート回路120と電力半導体モジュール120を介して充電用モータ160を回転駆動している。
具体的には、数回の瞬時電流を吸収する回転数となるように充電用モータ160を回転駆動する。換言すると、上記発電用モータ50が所要の回転数となるように、充電用モータ160を回転駆動している。
【0035】
図2は、発電用モータ制御系Baの動作を示すフローチャート、図3は、充電用モータ制御系Bbの動作を示すフローチャートである。また、図4(A)は、電動アクチュエータのストロークと時間との関係、(B)は、ノズル反力による負荷及び電動アクチュエータ内の慣性力による加速負荷と時間との関係、(C)は、電動アクチュエータの電源消費電流と時間との関係、(D)は、発電用モータの充放電電流と時間との関係をそれぞれ示すグラフである。
【0036】
まず、図2に示すフローチャートに沿い、発電用モータ制御系Baの動作について説明する。
ステップ1(図2においては、S1と略記する。以下同様。):位置検出器30から出力される伸縮ロッド13の伸縮位置と宇宙機側から出力されるストローク指令とに基づいて、その伸縮ロッド13の位置誤差を算出する。
【0037】
ステップ2:算出された位置誤差に基づいて、電動シリンダ10の伸縮ロッド13の伸縮速度を算出する。
ステップ3:回転角検出器40から出力される回転角度に基づいて得られた伸縮ロッド13の伸縮速度と、算出された伸縮ロッド13の指令速度とに基づいて、伸縮ロッド13の伸縮速度の誤差を算出する。
【0038】
ステップ4:算出された速度誤差に基づいて、アクチュエータ駆動モータ20に給電すべき指令電流値を算出する。なお、図2には、アクチュエータ駆動モータを「アクチュエータモータ」と表記している。
ステップ5:上記した回転角検出器40から出力された回転角度と、算出された指令電流とに基づいて、三相正弦波変換を行なう。
【0039】
ステップ6:アクチュエータ駆動モータ20の電流センサS1、S2からのモータ電流のフィードバックと、ステップ5において変換された三相正弦波とに基づいて、電流の誤差を算出する。
ステップ7:ステップ6において算出された電流誤差に基づいてゲート回路80に指令を出力する。
【0040】
ステップ8:発電用モータ50の回転角検出器60により検出した回転角度と、ステップ4において算出された指令電流とに基づいて、三相正弦波変換を行なう。
ステップ9:発電用モータ50の電流センサS3、S4で検出したモータ電流のフィードバックと、ステップ8において変換された三相正弦波とに基づいて、電流の誤差を算出する。
【0041】
ステップ10:ステップ9において算出された電流誤差に基づいてゲート回路100に指令を出力する。
【0042】
次に、図3を参照して充電用モータ制御系Bbの動作について説明する。
ステップ1(図3においては、Sa1と略記する。以下同様。):発電用モータ50が所要の回転数となるような充電用モータ160に与える指令速度を算出する。
【0043】
ステップ2:充電用モータ160の回転角検出器170で検出された速度フィードバックと、算出された指令速度とに基づいて、充電用モータ160の速度誤差を算出する。
ステップ3:算出された速度誤差に基づいて、充電用モータ160に供給する指令電流を算出する。
【0044】
ステップ4:充電用モータ160の回転角検出器170により検出した回転角度と、算出され指令電流とに基づいて、三相正弦波変換を行なう。
ステップ5:充電用モータ160の電流センサS5、S6で検出した電流をフィードパック値と、算出された指令速度とに基づいて、電流誤差を算出する。
ステップ6:ステップ5において算出された電流誤差に基づいてゲート回路120に指令を出力する。
【0045】
以上の構成からなる電動アクチュエータ駆動装置A1によれば、次の効果を得ることができる。
・発電用モータ50を回転させておくことによって電気的エネルギを機械的エネルギに変換して蓄えておき、図4(A)〜(D)に示すようにして、電動シリンダ10を駆動するときに生じる過渡的な大きな瞬時電流に対応して、コントローラCによって発電用モータを減速回転制御することによって、発電用モータの回転運動エネルギーを電力に変換することにより、駆動用電源130から供給される電流を大幅に低減することができる。
【0046】
すなわち、その瞬時電流に対応する大きな容量の駆動用電源を必要としないために、システム全体の小型,軽量化を図ることができる。
・電池やコンデンサを用いていないために、耐環境性にも優れている。
【0047】
次に、本発明の第二の実施形態に係る電動アクチュエータ駆動装置について、図5〜7を参照して説明する。図5は、本発明の第二の実施形態に係る電動アクチュエータ駆動装置の回路構成を示すブロック図、図6は、発電用モータ制御系の動作を示すフローチャート、図7は、充電用モータ制御系の動作を示すフローチャートである。なお、上述した実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
【0048】
本発明の第二の実施形態に係る電動アクチュエータ駆動装置A2は、上述した電動アクチュエータ駆動装置A1の構成において、半導体モジュール70と半導体モジュール90との間の送電路に電圧検知器S7を配設したものである。
電圧検知器S7は、負荷経路の出力電圧を検知するためのものであり、コントローラCの入力ポートに接続されている。
【0049】
本実施形態において示すコントローラCは、上述した機能の他、次の機能を有している。
(1)電圧検出器S7によって検出した電力半導体モジュール90の出力電圧に基づいて、発電用モータ50が所要の回転数となるような指令速度(指令速度)を算出する機能。この機能を「速度算出手段C13」という。
【0050】
(2)発電用モータ50の速度の誤差を算出する機能。この機能を「速度誤差算出手段C14」という。
本実施形態においては、回転角検出器60から出力される速度フィードバックと、算出された指令速度とに基づき、発電用モータ50の速度の誤差を算出している。
【0051】
(3)算出された発電用モータ50の速度誤差に基づいて、電動シリンダ10に供給する指令電流を算出する機能。この機能を「指令電流算出手段C15」という。
【0052】
(4)算出された指令電流と、電流センサS3、S4により検出した電流値とに基づいて、電流誤差を算出する機能。この機能を「第三の電流誤差算出手段C16」という。
【0053】
本実施形態において示す発電用モータ制御系Bbの動作について、図6,7を参照して説明する。
ステップ1(図6においては、Sb1と略記する。以下同様。):位置検出器30から出力される伸縮ロッド13の伸縮位置と宇宙機側から出力されるストローク指令とに基づいて、その伸縮ロッド13の位置誤差を算出する。
【0054】
ステップ2:算出された位置誤差に基づいて、電動シリンダ10の伸縮ロッド13の伸縮速度を算出する。
ステップ3:回転角検出器40から出力される回転角度に基づいて得られた伸縮ロッド13の伸縮速度と、算出された伸縮ロッド13の指令速度とに基づいて、伸縮ロッド13の伸縮速度の誤差を算出する。
【0055】
ステップ4:算出された速度誤差に基づいて、アクチュエータ駆動モータ20に給電すべき電流値を算出する。
ステップ5:回転角検出器40からの回転角度と、算出された電流指令とに基づいて、三相正弦波変換を行なう。
【0056】
ステップ6:アクチュエータ駆動モータ20の電流センサS1、S2からのモータ電流のフィードバックと、ステップ5において変換された三相正弦波とに基づいて、電流の誤差を算出する。
ステップ7:ステップ6において算出された電流誤差に基づいてゲート回路80に指令を出力する。
【0057】
次に、電圧検出器S7、回転角検出器60及び電流センサS3に基づく制御について、図7を参照して説明する。
ステップ1(図7においては、Sc1と略記する。以下同様。):電圧検出器S7により検出した電圧値に基づいて、発電用モータ50が所要の回転数となるような指令速度を算出する。
【0058】
ステップ2:発電用モータ50の回転角検出器60からの回転角度に基づいて得られた発電用モータ50の回転速度と、算出された発電用モータ50の指令速度とに基づいて、速度誤差を算出する。
【0059】
ステップ3:算出された速度誤差に基づいて、アクチュエータ駆動モータ50に給電すべき電流値を算出する。
ステップ4:回転角検出器60からの回転角度と、算出された電流指令とに基づいて、三相正弦波変換を行なう。
【0060】
ステップ5:発電用モータ50の電流センサS3、S4からのモータ電流のフィードバックと、ステップ5において変換された三相正弦波とに基づいて、電流の誤差を算出する。
ステップ6:ステップ5において算出された電流誤差に基づいてゲート回路100に指令を出力する。
【0061】
次に、図8を参照して充電用モータ制御系Bbの動作について説明する。
ステップ1(図8においては、Sd1と略記する。以下同様。):宇宙機側から出力されるストローク指令に基づいて、発電用モータ50が所要の回転数となるような指令速度を算出する。
【0062】
ステップ2:充電用モータ160の回転角検出器170で検出された速度フィードバックと、算出された指令速度とに基づいて、伸縮ロッド13の位置誤差を算出する。
ステップ3:算出された速度誤差に基づいて、充電用モータ160に供給する指令電流を算出する。
【0063】
ステップ4:充電用モータ160の回転角検出器170からの回転角度と、算出され指令電流とに基づいて、三相正弦波変換を行なう。
ステップ5:充電用モータ160の電流センサS5,S6で検出した電流をフィードバック値と、算出された指令速度とに基づいて、伸縮ロッド13の電流誤差を算出する。
ステップ6:ステップ5において算出された電流誤差に基づいて、ゲート回路120に指令を出力する。
【0064】
上述した各実施形態に係る電動アクチュエータ駆動装置A1,A2によれば、次の効果を得ることができる。
・電動アクチュエータの加速時に発生する過渡的な大きな瞬時電流に適応できるとともに、小型,軽量化を図ることができる。
・電源から電動アクチュエータまでを直列に結合するとともに、機械的結合を介在させているので、電気的に絶縁することができる。これにより、電流値を監視しながら直接制御を行なうことができるとともに、電源側の電流制御も容易に行なえるために、電圧変動を少なくすることができる。
・電源電圧の昇圧を容易に行なうことができる。
・回転検出器の数を少なくすることができるとともに、システム構成を簡素化できる。さらには、軸受け等を少なくできるために小型化を図ることができる。
【0065】
なお、本発明は上述した実施形態に限るものではなく、次のような変形実施が可能である。
・上述した各実施形態においては、電動アクチュエータとして電動リニアアクチュエータを例として説明したが、電動ロータリアクチュエータを採用することもできる。
・ 上述した各実施形態においては、可動ノズルを駆動させて推力方向を偏向する例につ いて説明したが、これに限定されるものではない。
・ また、発電用モータと充電用モータを1つのモータで構成することが可能であり、1 つのモータの巻線を2分割して、発電用と充電用とすれば同様の効果を得ることがで きる。さらに、この構成では前述の回転検出器160と120のいずれか1つを省略 することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 電動アクチュエータ
50 発電用モータ
160 充電用モータ
A1,A2 電動アクチュエータ駆動装置
C8 発電用モータ駆動手段
C12 充電用モータ駆動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動アクチュエータと、この電動アクチュエータを駆動するための発電用モータを有する電動アクチュエータ駆動装置であって、
電動アクチュエータの加減速時に生じる大きな瞬時電流を送給する回転数となるように、上記発電用モータを回転駆動する発電用モータ駆動手段を有することを特徴とする電動アクチュエータ駆動装置。
【請求項2】
発電用モータに、これを回転駆動するための充電用モータが連結されており、
上記発電用モータが所要の回転数となるように、充電用モータを回転駆動する充電用モータ駆動手段を有することを特徴とする請求項1に記載の電動アクチュエータ駆動装置。
【請求項3】
充電用モータ駆動手段は、数回の瞬時電流を吸収する回転数となるように充電用モータを回転駆動することを特徴とする請求項1又は2に記載の電動アクチュエータ駆動装置。
【請求項4】
上記発電用モータが所要の回転数となるように、充電用モータを回転駆動する充電用モータ駆動手段を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の電動アクチュエータ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−253928(P2012−253928A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125192(P2011−125192)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(500302552)株式会社IHIエアロスペース (298)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】