説明

電動アクチュエータ

【課題】 装置の大型化を来すことなく高荷重に耐えることができる滑り案内機構を備えた電動アクチュエータを提供すること。
【解決手段】 金属製又はセラミックス製であって機械的特性が高い素材から構成されたベースと、上記ベースに対して滑り案内機構を介して移動可能に設置され金属製又はセラミックス製であって機械的特性が高い素材から構成された移動体と、上記移動体を移動させる駆動手段と、を具備してなる電動アクチュエータにおいて、上記滑り案内機構は、上記ベースとスライダの何れか一方に設けられた案内凹部と、上記ベースとスライダの何れか他方に設けられた上記案内凹部に摺動接触する案内凸部と、から構成されているもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑り案内機構を備えた電動アクチュエータに係り、特に、滑り案内機構の構成を改良することにより、簡単な構成で高荷重に耐えることができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
滑り案内機構を備えた電動アクチュエータの構成を開示するものとして、例えば、特許文献1等がある。
【特許文献1】特開平09−273550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の構成によると次のような問題があった。特許文献1に開示されている滑り案内機構においては、ベースとスライダとの間に樹脂製のガイドピースが使用されている構成になっている。しかしながら、樹脂製のガイドピースの場合には、機械的特性が決して高いわけではないので、高荷重に耐えることができないという問題があった。
仮に、高荷重に対応しようとすると、荷重を広い面積で受けて面圧を小さくする必要があるため、ガイドピースが大きくなってしまい、その結果、滑り案内機構ひいては電動アクチュエータが大型化してしまうという問題があった。
【0004】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、装置の大型化を来すことなく高荷重に耐えることができる滑り案内機構を備えた電動アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するべく本願発明の請求項1による電動アクチュエータは、金属製又はセラミックス製であって機械的特性が高い素材から構成されたベースと、上記ベースに対して滑り案内機構を介して移動可能に設置され金属製又はセラミックス製であって機械的特性が高い素材から構成された移動体と、上記移動体を移動させる駆動手段と、を具備してなる電動アクチュエータにおいて、上記滑り案内機構は、上記ベースとスライダの何れか一方に設けられた案内凹部と、上記ベースとスライダの何れか他方に設けられた上記案内凹部に摺動接触する案内凸部と、から構成されていることを特徴とするものである。
又、請求項2による電動アクチュエータは、請求項1記載の電動アクチュエータにおいて、上記ベースと移動体が同等の線膨張係数を持つ素材から構成されていることを特徴とするものである。
又、請求項3による電動アクチュエータは、請求項2記載の電動アクチュエータにおいて、上記案内凹部と案内凸部の少なくとも何れか一方には潤滑性を高める処理が施されていることを特徴とするものである。
又、請求項4による電動アクチュエータは、請求項3記載の電動アクチュエータにおいて、上記潤滑性を高める処理は、潤滑性を高めるコーティング処理、潤滑性を高める鍍金処理、潤滑性を高める表面改質処理の何れかであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
以上述べたように本願発明の請求項1による電動アクチュエータは、金属製又はセラミックス製であって機械的特性が高い素材から構成されたベースと、上記ベースに対して滑り案内機構を介して移動可能に設置され金属製又はセラミックス製であって機械的特性が高い素材から構成された移動体と、上記移動体を移動させる駆動手段と、を具備してなる電動アクチュエータにおいて、上記滑り案内機構は、上記ベースとスライダの何れか一方に設けられた案内凹部と、上記ベースとスライダの何れか他方に設けられた上記案内凹部に摺動接触する案内凸部と、から構成されているので、従来の樹脂製のガイドピースを使用したものに比べて、高荷重に有効に対応することができ、その際、装置が大型化することもない。
又、請求項2による電動アクチュエータは、請求項1記載の電動アクチュエータにおいて、上記ベースと移動体が同等の線膨張係数を持つ素材から構成されているので、摩擦熱の影響、雰囲気温度の変動等によって、滑り案内機構の隙間量が変動してしまうことを抑制することができ、高いガイド機能を維持することができる。
又、請求項3による電動アクチュエータは、請求項2記載の電動アクチュエータにおいて、上記案内凹部と案内凸部の少なくとも何れか一方には潤滑性を高める処理が施されているので、円滑な動作を提供することができる。
又、請求項4による電動アクチュエータは、請求項3記載の電動アクチュエータにおいて、上記潤滑性を高める処理は、潤滑性を高めるコーティング処理、潤滑性を高める鍍金処理、潤滑性を高める表面改質処理の何れかであるので、所望の潤滑性能を確実に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図1乃至図4を参照して本発明の第1の実施の形態を説明する。この第1の実施の形態は、本願発明をロッドタイプの電動アクチュエータに適用した例を示すものである。以下、詳細に説明する。
まず、ベース1があり、このベース1はその横断面形状がU字形状をなしている。又、上記ベース1は二分割されていて、図4に示すように、第1ベース要素3と第2ベース要素5とから構成されている。上記第1ベース要素3は、図4に示すように、その横断面形状がL字状をなしていて、一方、上記第2ベース要素5は、図4に示すように、I字状をなしている。そして、これら第1ベース要素3と第2ベース要素5とを組立・固定することにより、U字形状のベース1を構成しているものである。
【0008】
上記ベース1の図1、図2中右側には、ベアハウジング7が連結・固定されていると共に、このベアハウジング7の図1、図2中右側にはモーターカバ9が連結・固定されている。上記モーターカバ9内には駆動モータ11が収容・配置されていて、この駆動モータ11の回転軸11aには、カップリング13を介して滑りねじ部材15が連結・固定されている。上記滑りねじ部材15は、その一端(図中右端)を軸受部材17、19によって軸支されている。又、上記ベース1の図中左端には端部材21が連結・固定されている。
【0009】
上記滑りねじ部材15はベース1内において延長・配置されていて、そこにはナット部材23がその回転を規制された状態で螺合・配置されている。上記ナット部材23の外周にはスライダ25が設置されていて、連結・固定ピン27によって一体化されている。上記駆動モータ11を正転・逆転させることにより、滑りねじ部材が同方向に回転し、それによって、ナット部材23とスライダ25が、図1、図2中左右何れかの方向に移動することになる。
【0010】
上記ベース1とスライダ25であるが、何れも機械的特性が高い素材、具体的には、金属製であって、機械加工、金型成型、押出加工、引抜加工等によって形成されている。又、上記ベース1とスライダ25は同等の線膨張係数を備えた素材から構成されているものである。
尚、金属製以外ではセラミックス製が考えられる。
【0011】
上記スライダ25とベース1との間には、図4に示すように、滑り案内機構29が設置されている。以下、この滑り案内機構29の構成を説明する。まず、ベース1側をみてみると、左右内側面に2個ずつのV字状のベース側溝31、31が形成されている。一方、スライダ25の左右外側面には2個ずつのV字状のスライダ側突起33、33が形成されている。そして、上記ベース側溝31、31に対してスライダ側突起33、33が摺動接触する構成になっている。
【0012】
上記ベース側溝31、31の案内面には潤滑性を高める処理が施されている。具体的には、潤滑性を高めるためのコーティング処理、鍍金処理、表面改質処理等である。同様に、上記スライダ側突起33、33の案内面にも、同様の潤滑性を高める処理が施されている。
【0013】
既に説明した駆動モータ11にはエンコーダ37が取り付けられていると共に、モーターカバ9の端にはケーブル押え部材39を介して、アクチュエータケーブル束41が設置されている。又、スライダ25には中空状のロッド43が連結されている。このロッド43はベース1内を延長されていて、前記端部材21を貫通して、ベース1の外側に向かって出没可能に設置されている。上記端部材21とロッド43との間には軸受部材45が設置されている。
又、各構成部品の材質であるが、ベース1はアルミニウム製、ベアハウジング7はアルミニウム製、モーターカバ9はステンレス製、ナット部材23とガイドピース35は樹脂製、滑りねじ部材15は鋼製、ロッド43はアルミニウム製である。
尚、各構成部品の材質にいてはこれを特に限定するものではない。
【0014】
以上の構成を基にその作用を説明する。駆動モータ11を正転・逆転させることにより、滑りねじ部材15が同方向に回転する。この滑りねじ部材15の回転によって、ナット部材23とスライダ25が、図1、図2中左右何れかの方向に移動する。上記スライダ25の移動によって、そこに連結・固定されているロッド43がベース1に対して出没することになる。そして、例えば、ロッド43に任意の機器等を搭載しておくことにより、該機器を往復動させることができるものである。
【0015】
次に、滑り案内機構29における隙間の調整・設定について説明する。例えば、隙間を10μmに設定したい場合には、ベース側溝31、31とスライダ側突起33、33との間に、その外径が5μmの図示しないシムを介装し、その状態で、第1ベース要素3と第2ベース要素5とを連結・固定する。次に、スライダ25を移動させて上記シムを撤去することにより、隙間量を10μmに設定することが可能になる。
【0016】
以上本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。
まず、装置の大型化を来すことなく、高荷重に対応可能な滑り案内機構29を備えた電動アクチュエータを得ることができる。これは、従来の樹脂製のガイドピースを使用した滑り案内機構ではなく、ベース1に一体のベース側溝31、31と、スライダ25の一体のスライダ側突起33、33とから、滑り案内機構29を構成するようにしたからである。
又、上記ベース1とスライダ25は、何れも機械的特性が高い素材、具体的には、金属製であって、機械加工、金型成型、押出加工、引抜加工等によって形成されており、よって、高い機械的特性を確実に得ることができ、高荷重に対しても効果的に対応することができる。
又、上記ベース1とスライダ25は同等の線膨張係数を備えた素材から構成されているので、摩擦熱の影響、雰囲気温度の変動等によって、滑り案内機構29の隙間量が変動してしまうことを抑制することができ、高いガイド機能を長期にわたって維持することができる。
又、上記ベース側溝31、31の案内面、上記スライダ側突起33、33の案内面には、潤滑性を高める処理が施されているので、摺動抵抗を軽減させて円滑な動作を提供することができる。
【0017】
次に、図5及び図6を参照して本発明の第2の実施の形態を説明する。前記第1の実施の形態の場合には、滑り案内機構29に関して、左右に二箇所ずつのベース側溝31、31とスライダ側突起33、33を設けたが、この第2の実施の形態の場合にはそれを一箇所ずつとした例を示すものである。
すなわち、図5及び図6に示すように、まず、ベース1側をみてみると、左右内側面に1個ずつのベース側溝31が形成されている。一方、スライダ25の左右外側面にも1個ずつのスライダ側突起33が形成されている。
その他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同じである。
【0018】
電動アクチュエータとしての作用に関しては、前記第1の実施の形態の場合と同じである。
このような構成でも、前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができるものである。
【0019】
次に、図7及び図8を参照して本発明の第3の実施の形態を説明する。前記第1、第2の実施の形態の場合には、ロッドタイプの電動アクチュエータを例に挙げて説明したが、この第3の実施の形態の場合には、スライダタイプの電動アクチュエータを例に挙げて示すものである。
【0020】
前記第1、第2の実施の形態の場合には、スライダ25にロッド43が連結・固定されていたが、この第3の実施の形態の場合には、スライダ25の上面側にスライダプレート61が取付・固定されている。
その他の構成は前記第1、第2の実施の形態の場合と同様であり、同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。
【0021】
以上の構成を基にその作用を説明する。
まず、電動アクチュエータとしての通常の作用を説明する。駆動モータ11を正転・逆転させることにより、滑りねじ部材15が同方向に回転する。この滑りねじ部材15の回転によって、ナット部材23とスライダ25が、図9、図10中左右何れかの方向に移動する。上記スライダ25の移動によって、そこに連結・固定されているスライダプレート61も同方向に移動することになる。そして、例えば、スライダプレート61に任意の機器等を搭載しておくことにより、該機器を往復動させることができるものである。
【0022】
このような構成でも、前記第1、第2の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができるものである。
【0023】
尚、本発明は前記第1〜第3の実施の形態に限定されるものではない。
例えば、前記第1〜第3の実施の形態では、上記ベース側溝31、31の案内面とスライダ側突起33、33の案内面の両方に対して、潤滑性を高める処理を施したが、それに限定されるものではなく、少なくとも何れか一方に施す構成も想定される。
又、前記第1〜第3の実施の形態の場合には、ベース側に案内凹部を設けスライダ側に案内凸部を設けたが、その逆の構成も想定される。
又、前記第1〜第3の実施の形態では、案内凹部と案内凸部を左右に二個ずつ設けた構成、一個ずつ設けた構成を示したが、三個以上儲ける構成も想定される。
その他、図示した構成はあくまで一例である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、滑り案内機構を備えた電動アクチュエータに係り、特に、滑り案内機構の構成を改良することにより、簡単な構成で高荷重に耐えることができるように工夫したものに関し、例えば、重量物を移動させるための電動アクチュエータに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、ロッドタイプの電動アクチュエータの全体の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、ロッドタイプの電動アクチュエータの全体の構成を示す縦断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を示す図で、ロッドタイプの電動アクチュエータのベースとスライダの部分のみを示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図3のIV−IV断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態を示す図で、ロッドタイプの電動アクチュエータのベースとスライダの部分のみを示す斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示す図で、図5のVI−VI断面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態を示す図で、スライダタイプの電動アクチュエータの全体の構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態を示す図で、スライダタイプの電動アクチュエータの全体の構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ベース
3 第1ベース要素
5 第2ベース要素
11 駆動モータ
15 滑りネジ部材
23 ナット部材
25 スライダ
29 滑り案内機構
31 ベース側溝
33 スライダ側突起
43 ロッド



【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製又はセラミックス製であって機械的特性が高い素材から構成されたベースと、上記ベースに対して滑り案内機構を介して移動可能に設置され金属製又はセラミックス製であって機械的特性が高い素材から構成された移動体と、上記移動体を移動させる駆動手段と、を具備してなる電動アクチュエータにおいて、
上記滑り案内機構は、上記ベースと移動体の何れか一方に設けられた案内凹部と、上記ベースと移動体の何れか他方に設けられた上記案内凹部に摺動接触する案内凸部と、から構成されていることを特徴とする電動アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1記載の電動アクチュエータにおいて、
上記ベースと移動体が同等の線膨張係数を持つ素材から構成されていることを特徴とする電動アクチュエータ。
【請求項3】
請求項2記載の電動アクチュエータにおいて、
上記案内凹部と案内凸部の少なくとも何れか一方には潤滑性を高める処理が施されていることを特徴とする電動アクチュエータ。
【請求項4】
請求項3記載の電動アクチュエータにおいて、
上記潤滑性を高める処理は、潤滑性を高めるコーティング処理、潤滑性を高める鍍金処理、潤滑性を高める表面改質処理の何れかであることを特徴とする電動アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−133431(P2010−133431A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306938(P2008−306938)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(391008515)株式会社アイエイアイ (107)
【Fターム(参考)】