説明

電動パワーステアリング装置、故障検出装置および故障検出方法

【課題】センサの検出信号が正常値より上昇または低下する故障が生じた場合においても、複数あるセンサの中から故障しているセンサを特定する技術を提供する。
【解決手段】第1の回転軸と第2の回転軸とを連結するトーションバーと、電動モータと、トーションバーの捩れ量に応じた値の電気信号を出力する第1のセンサおよび第2のセンサを有し、第1の回転軸と第2の回転軸との相対回転角度を検出するトルク検出装置と、トルク検出装置の故障を検出する故障検出手段と、電動モータに供給する目標電流を設定し、設定した目標電流を当該電動モータに供給するように制御するモータ制御手段と、を備え、故障検出手段は、モータ制御手段が電動モータに予め定められた規定の目標電流を供給するよう制御した場合の第1のセンサおよび第2のセンサの出力値に基づいて当該第1のセンサおよび当該第2のセンサの内、故障が生じているセンサを特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パワーステアリング装置、故障検出装置および故障検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動モータの動力にてドライバの操舵力をアシストする電動パワーステアリング装置において、操舵トルクを検出するトルクセンサを備え、このトルクセンサが検出する操舵トルクに基づいて電動モータによるアシスト力を制御する装置が知られている。
また、複数の検出信号を発生するトルクセンサを使用し、トルクセンサの故障によって1つの検出信号に異常が発生したときには、異常が発生していない他の検出信号に基づいて操舵のアシストを継続する技術が開示されている。例えば、特許文献1に記載のパワーステアリング制御装置は、以下のように構成されている。すなわち、ステアリングに印加された操舵トルクに応じて複数のトルク信号を出力可能なトルクセンサと、複数のトルク信号の各々の異常を判定する故障判定部と、複数のトルク信号のうち、故障判定部により異常と判定されなかったトルク信号を選択する切換部と、切換部により選択されたトルク信号に基づき操舵補助トルクを演算する演算部と、補助トルクに応じた駆動電流を操舵補助モータに供給する電流制御部とを有する。そして、故障判定部はトルク信号の変化量を算出し、変化量が所定値を越える場合にトルク信号の異常を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−248354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トルクセンサの故障には、トルクセンサの検出信号が一定のレベルに固定される故障と、トルクセンサの検出信号が正常値より上昇または低下する故障とがある。
特許文献1には、トルクセンサの検出信号が一定のレベルに固定される故障の場合に、故障しているトルクセンサを特定する技術が記載されている。
トルクセンサの検出信号が正常値より上昇または低下する故障が生じた場合においても、複数あるトルクセンサの中から故障しているトルクセンサを特定する技術を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本発明は、第1の回転軸と第2の回転軸とを連結するトーションバーと、前記第1の回転軸または前記第2の回転軸に駆動力を付与する電動モータと、前記トーションバーの捩れ量に応じた値の電気信号を出力する第1のセンサおよび第2のセンサを有し、前記第1の回転軸と前記第2の回転軸との相対回転角度を検出する相対角度検出手段と、前記相対角度検出手段の故障を検出する故障検出手段と、前記電動モータに供給する目標電流を設定し、設定した目標電流を当該電動モータに供給するように制御するモータ制御手段と、を備え、前記故障検出手段は、前記モータ制御手段が前記電動モータに予め定められた規定の目標電流を供給するよう制御した場合の前記第1のセンサおよび前記第2のセンサの出力値に基づいて当該第1のセンサおよび当該第2のセンサの内、故障が生じているセンサを特定することを特徴とする電動パワーステアリング装置である。
【0006】
ここで、前記故障検出手段は、予め定められた所定期間における前記第1のセンサの出力値の変化量の積算値と前記第2のセンサの出力値の変化量の積算値とを比較することにより故障が生じているセンサを特定するとよい。
また、前記相対角度検出手段の前記第1のセンサの出力値と前記第2のセンサの出力値とは負の相関関係を示し、前記故障検出手段は、前記第1のセンサの出力値の変化量の絶対値の積算値と前記第2のセンサの出力値の変化量の絶対値の積算値とを比較することにより故障が生じているセンサを特定するとよい。
【0007】
また、前記故障検出手段は、前記相対角度検出手段の前記第1のセンサの出力値と前記第2のセンサの出力値との合計値が予め定められた第1の所定値以上である場合であって、当該第1のセンサの出力値の変化量の絶対値の積算値である第1の積算値が当該第2のセンサの出力値の変化量の絶対値の積算値である第2の積算値よりも大きい場合には当該第1のセンサに故障が生じていると判定し、当該第2の積算値が当該第1の積算値よりも大きい場合には当該第2のセンサに故障が生じていると判定するとよい。
【0008】
また、前記故障検出手段は、前記相対角度検出手段の前記第1のセンサの出力値と前記第2のセンサの出力値との合計値が予め定められた第2の所定値以下である場合であって、当該第1のセンサの出力値の変化量の絶対値の積算値である第1の積算値が当該第2のセンサの出力値の変化量の絶対値の積算値である第2の積算値よりも小さい場合には当該第1のセンサに故障が生じていると判定し、当該第2の積算値が当該第1の積算値よりも小さい場合には当該第2のセンサに故障が生じていると判定するとよい。
【0009】
他の観点から捉えると、本発明は、第1の回転軸と第2の回転軸とを連結するトーションバーと、当該第1の回転軸または当該第2の回転軸に駆動力を付与する電動モータと、当該トーションバーの捩れ量に応じた値の電気信号を出力する第1のセンサおよび第2のセンサを有して当該第1の回転軸と当該第2の回転軸との相対回転角度を検出する相対角度検出手段と、当該電動モータに供給する目標電流を設定し、設定した目標電流を当該電動モータに供給するように制御するモータ制御手段と、を備えた電動パワーステアリング装置における当該相対角度検出手段の故障を検出する故障検出装置であって、前記モータ制御手段が前記電動モータに予め定められた規定の目標電流を供給するよう制御した場合の前記第1のセンサおよび前記第2のセンサの出力値に基づいて当該第1のセンサおよび当該第2のセンサの内、故障が生じているセンサを特定することを特徴とする故障検出装置である。
【0010】
他の観点から捉えると、本発明は、第1の回転軸と第2の回転軸とを連結するトーションバーと、当該第1の回転軸または当該第2の回転軸に駆動力を付与する電動モータと、当該トーションバーの捩れ量に応じた値の電気信号を出力する第1のセンサおよび第2のセンサを有して当該第1の回転軸と当該第2の回転軸との相対回転角度を検出する相対角度検出手段と、当該電動モータに供給する目標電流を設定し、設定した目標電流を当該電動モータに供給するように制御するモータ制御手段と、を備えた電動パワーステアリング装置における当該相対角度検出手段の故障を検出する故障検出方法であって、前記モータ制御手段が前記電動モータに予め定められた規定の目標電流を供給するよう制御した場合の前記第1のセンサおよび前記第2のセンサの出力値に基づいて当該第1のセンサおよび当該第2のセンサの内、故障が生じているセンサを特定することを特徴とする故障検出方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、センサの検出信号が正常値より上昇または低下する故障が生じた場合においても、複数あるセンサの中から故障しているセンサを特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成を示す図である。
【図2】ステアリングギアボックス内を示す断面図である。
【図3】電動パワーステアリング装置の制御装置の概略構成図である。
【図4】目標電流算出部の概略構成図である。
【図5】制御部の概略構成図である。
【図6】図2におけるX部の拡大図である。
【図7】トルク検出装置の主要部品の概略構成図である。
【図8】トルク検出装置を、図2におけるY方向から見た図である。
【図9】下部連結シャフトとピニオンシャフトとが相対変位する前のトルク検出装置の状態を示す図である。
【図10】図8で見た場合に、磁石がヨークに対して時計回転方向に回転した状態を示す図である。
【図11】図8で見た場合に、磁石がヨークに対して反時計回転方向に回転した状態を示す図である。
【図12】磁石とヨークとの相対角度と第1の磁気センサおよび第2の磁気センサが検出する磁束密度との関係を示す図である。
【図13】操舵トルクと、第1の電圧信号および第2の電圧信号との関係を示す図である。
【図14】トルク値設定部の概略構成図である。
【図15】磁気センサに信号異常故障が発生した場合の磁気センサからの信号の変化を示す図である。
【図16】磁気センサに信号異常故障が発生した場合の磁気センサからの信号の変化を示す図である。
【図17】センサ故障診断部が行う故障診断処理の手順を示すフローチャートである。
【図18】電動モータに供給する目標電流と磁気センサからの出力値との関係を示す図である。
【図19】故障センサ特定部が行う故障センサ特定処理の手順を示すフローチャートである。
【図20】出力部が行う出力処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係る電動パワーステアリング装置100の概略構成を示す図である。図2は、ステアリングギアボックス107内を示す断面図である。
電動パワーステアリング装置100(以下、単に「ステアリング装置100」と称する場合もある。)は、乗り物の進行方向を任意に変えるためのかじ取り装置であり、本実施の形態においては自動車に適用した構成を例示している。
【0014】
ステアリング装置100は、ドライバが操作する車輪(ホイール)状のステアリングホイール(ハンドル)101と、ステアリングホイール101に一体的に設けられたステアリングシャフト102とを備えている。また、ステアリング装置100は、ステアリングシャフト102と自在継手103aを介して連結された上部連結シャフト103と、この上部連結シャフト103と自在継手103bを介して連結された下部連結シャフト108とを備えている。下部連結シャフト108は、ステアリングホイール101の回転に連動して回転する。
【0015】
また、ステアリング装置100は、転動輪としての左右の前輪150のそれぞれに連結されたタイロッド104と、タイロッド104に連結されたラック軸105とを備えている。また、ステアリング装置100は、ラック軸105に形成されたラック歯105aとともにラック・ピニオン機構を構成するピニオン106aを備えている。ピニオン106aは、ピニオンシャフト106の下端部に形成されている
また、ステアリング装置100は、ピニオンシャフト106を収納するステアリングギアボックス107を有している。ピニオンシャフト106は、ステアリングギアボックス107にてトーションバー140(図2参照)を介して上述した下部連結シャフト108と連結されている。
【0016】
図2に示すように、ピニオンシャフト106および下部連結シャフト108は、ハウジング120に回転可能に支持されている。ハウジング120は、例えば自動車などの乗り物の本体フレーム(以下、「車体」と称する場合もある。)に固定される部材であり、第1ハウジング121と第2ハウジング122とが、例えばボルトなどにより結合されて構成される。下部連結シャフト108は、軸受を介して第1ハウジング121に回転可能に支持され、ピニオンシャフト106は、トーションバー140を介して下部連結シャフト108に同軸的に結合されるとともに軸受を介して第2ハウジング122に回転可能に支持されている。
【0017】
また、ステアリング装置100は、ステアリングギアボックス107に固定された電動モータ110と、ピニオンシャフト106に固定されたウォームホイール130と、を備えている。電動モータ110の出力軸に連結されたウォームギヤ111とウォームホイール130とは噛み合っており、電動モータ110の回転力がウォームホイール130により減速されてピニオンシャフト106に伝達される。電動モータ110は、3相ブラシレスモータであることを例示することができる。
また、ステアリングギアボックス107の内部には、下部連結シャフト108とピニオンシャフト106との相対角度に基づいて、言い換えればトーションバー140の捩れ量に基づいてステアリングホイール101の操舵トルクTを検出する相対角度検出手段の一例としてのトルク検出装置20が設けられている。このトルク検出装置20については後で詳述する。
また、ステアリング装置100は、電動モータ110の作動を制御する制御装置10を備えている。制御装置10には、上述したトルク検出装置20の出力値、自動車の移動速度である車速Vcを検出する車速センサ170の出力値が入力される。
【0018】
以上のように構成されたステアリング装置100は、ステアリングホイール101に加えられた操舵トルクTをトルク検出装置20にて検出し、検出した操舵トルクTに応じて制御装置10が電動モータ110を駆動制御し、電動モータ110の発生トルクをピニオンシャフト106に伝達する。これにより、電動モータ110の発生トルクが、ステアリングホイール101に加える運転者の操舵力をアシストする。つまり、ピニオンシャフト106は、ステアリングホイール101の回転によって発生する操舵トルクTと電動モータ110から付与される補助トルクとで回転する。
【0019】
次に、制御装置10について説明する。
制御装置10は、電動モータ110の制御を行う際の演算処理を行うCPU11と、CPU11にて実行されるプログラムや各種データ等が記憶されたROM12と、CPU11の作業用メモリ等として用いられるRAM13と、EEPROM(Electrically Erasable & Programmable Read Only Memory)14と、を備えている。
制御装置10には、上述したトルク検出装置20からの出力値、車速センサ170にて検出された車速Vcが出力信号に変換された車速信号vなどが入力される。
【0020】
図3は、ステアリング装置100の制御装置10の概略構成図である。
制御装置10は、操舵トルクTに基づいて目標補助トルクを算出し、この目標補助トルクを電動モータ110が供給するのに必要となる目標電流を算出する目標電流算出部220と、目標電流算出部220が算出した目標電流に基づいてフィードバック制御などを行う制御部230とを有している。これら目標電流算出部220および制御部230は、モータ制御手段の一例である。また、制御装置10は、トルク検出装置20から入力される信号に基づいて目標電流算出部220へ向けてトルク信号Tdを出力するトルク値設定部250を有している。このトルク値設定部250については後で詳述する。
【0021】
次に、目標電流算出部220について詳述する。
図4は、目標電流算出部220の概略構成図である。
目標電流算出部220は、目標電流を設定する上で基準となるベース電流を算出するベース電流算出部221と、電動モータ110の慣性モーメントを打ち消すための電流を算出するイナーシャ補償電流算出部222と、モータの回転を制限する電流を算出するダンパー補償電流算出部223とを備えている。また、目標電流算出部220は、ベース電流算出部221、イナーシャ補償電流算出部222、ダンパー補償電流算出部223などからの出力に基づいて目標電流を決定する目標電流決定部225を備えている。さらに、目標電流算出部220は、トルク信号Tdの位相補償を行う位相補償部226を備えている。
【0022】
なお、目標電流算出部220には、トルク信号Tdと、車速信号vと、電動モータ110の回転速度Nmが出力信号に変換された回転速度信号Nmsとが入力される。回転速度信号Nmsは、例えば3相ブラシレスモータである電動モータ110の回転子(ロータ)の回転位置を検出するセンサ(例えば、回転子の回転位置を検出するレゾルバ、ロータリエンコーダ等で構成されるロータ位置検出回路)の出力信号が微分されることにより得られるものであることを例示することができる。
なお、制御装置10には、車速センサ170などからの信号がアナログ信号として入力されるので、図示しないA/D変換部によりアナログ信号をデジタル信号に変換し、目標電流算出部220に取り込んでいる。
【0023】
ベース電流算出部221は、位相補償部226にてトルク信号Tdが位相補償されたトルク信号Tsと、車速センサ170からの車速信号vとに基づいてベース電流を算出し、このベース電流の情報を含むベース電流信号Imbを出力する。なお、ベース電流算出部221は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROM12に記憶しておいた、トルク信号Tsおよび車速信号vとベース電流との対応を示すマップに、検出されたトルク信号Tsおよび車速信号vを代入することによりベース電流を算出する。
【0024】
イナーシャ補償電流算出部222は、トルク信号Tdと車速信号vとに基づいて電動モータ110およびシステムの慣性モーメントを打ち消すためのイナーシャ補償電流を算出し、この電流の情報を含むイナーシャ補償電流信号Isを出力する。なお、イナーシャ補償電流算出部222は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROM12に記憶しておいた、トルク信号Tdおよび車速信号vとイナーシャ補償電流との対応を示すマップに、トルク信号Tdおよび車速信号vを代入することによりイナーシャ補償電流を算出する。
【0025】
ダンパー補償電流算出部223は、トルク信号Tdと、車速信号vと、モータ角速度ωとに基づいて、電動モータ110の回転を制限するダンパー補償電流を算出し、この電流の情報を含むダンパー補償電流信号Idを出力する。なお、ダンパー補償電流算出部223は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROM12に記憶しておいた、トルク信号Td、車速信号vおよびモータ角速度ωと、ダンパー補償電流との対応を示すマップに、トルク信号Tdと車速信号vとモータ角速度ωとを代入することによりダンパー補償電流を算出する。
【0026】
目標電流決定部225は、ベース電流算出部221から出力されたベース電流信号Imb、イナーシャ補償電流算出部222から出力されたイナーシャ補償電流信号Isおよびダンパー補償電流算出部223から出力されたダンパー補償電流信号Idに基づいて最終的な目標電流を決定し、この電流の情報を含む目標電流信号ITを出力する。目標電流決定部225は、例えば、ベース電流に、イナーシャ補償電流を加算するとともにダンパー補償電流を減算して得た補償電流を、予め経験則に基づいて作成しROM12に記憶しておいた、補償電流と最終的な目標電流との対応を示すマップに代入することにより最終的な目標電流を算出する。また、目標電流決定部225は、トルク値設定部250の後述する出力部253から目標電流を零に決定するべき旨のコマンドを取得した場合には、目標電流を零に決定する。
【0027】
次に、制御部230について詳述する。
図5は、制御部230の概略構成図である。
制御部230は、電動モータ110の作動を制御するモータ駆動制御部231と、電動モータ110を駆動させるモータ駆動部232と、電動モータ110に実際に流れる実電流Imを検出するモータ電流検出部233とを有している。
モータ駆動制御部231は、目標電流算出部220にて最終的に決定された目標電流と、モータ電流検出部233にて検出された電動モータ110へ供給される実電流Imとの偏差に基づいてフィードバック制御を行うフィードバック(F/B)制御部240と、電動モータ110をPWM駆動するためのPWM(パルス幅変調)信号を生成するPWM信号生成部260とを有している。
【0028】
フィードバック制御部240は、目標電流算出部220にて最終的に決定された目標電流とモータ電流検出部233にて検出された実電流Imとの偏差を求める偏差演算部241と、その偏差が零となるようにフィードバック処理を行うフィードバック(F/B)処理部242とを有している。
偏差演算部241は、目標電流算出部220からの出力値である目標電流信号ITとモータ電流検出部233からの出力値であるモータ電流信号Imsとの偏差の値を偏差信号241aとして出力する。
【0029】
フィードバック(F/B)処理部242は、目標電流と実電流Imとが一致するようにフィードバック制御を行うものであり、例えば、入力された偏差信号241aに対して、比例要素で比例処理した信号を出力し、積分要素で積分処理した信号を出力し、加算演算部でこれらの信号を加算してフィードバック処理信号242aを生成・出力する。
PWM信号生成部260は、フィードバック制御部240からの出力値に基づいてPWM信号260aを生成し、生成したPWM信号260aを出力する。
【0030】
モータ駆動部232は、所謂インバータであり、例えば、スイッチング素子として6個の独立したトランジスタ(FET)を備え、6個の内の3個のトランジスタは電源の正極側ラインと各相の電気コイルとの間に接続され、他の3個のトランジスタは各相の電気コイルと電源の負極側(アース)ラインと接続されている。そして、6個の中から選択した2個のトランジスタのゲートを駆動してこれらのトランジスタをスイッチング動作させることにより、電動モータ110の駆動を制御する。
モータ電流検出部233は、モータ駆動部232に接続されたシャント抵抗の両端に生じる電圧から電動モータ110に流れる実電流Imの値を検出して、検出した実電流Imをモータ電流信号Imsに変換して出力する。
【0031】
次に、トルク検出装置20について詳述する。
図6は、図2におけるX部の拡大図である。図7は、トルク検出装置20の主要部品の概略構成図である。図8は、トルク検出装置20を、図2におけるY方向から見た図である。なお、図7においては、後述するブラケット60は省略している。
【0032】
トルク検出装置20は、ハウジング120に回転可能に支持された第1の回転軸の一例としての下部連結シャフト108と、同じくハウジング120に回転可能に支持された第2の回転軸の一例としてのピニオンシャフト106との相対回転角度(トーションバー140のねじれ量)を検出する装置である。
トルク検出装置20は、下部連結シャフト108に取り付けられる磁石21と、磁石21が形成する磁界内に配置されたヨーク30と、ヨーク30に生じる磁束密度を検出する磁気センサ40とを有している。
【0033】
磁石21は、円筒状であり、図7に示すように、下部連結シャフト108の周方向にN極とS極とが交互に配置されるとともに周方向に着磁されている。この磁石21は、カラー22を介して下部連結シャフト108に取り付けられている。つまり、磁石21がカラー22に固定されており、カラー22が下部連結シャフト108に固定されている。そして、磁石21は下部連結シャフト108とともに回転する。なお、磁石21の下部連結シャフト108の軸方向の長さは、ヨーク30の長さよりも長い。
【0034】
ヨーク30は、第1のヨーク31と、第2のヨーク32と、下部連結シャフト108の軸方向に第1のヨーク31と第2のヨーク32との間に設けられた、第3のヨーク33とから構成されている。これら第1のヨーク31、第2のヨーク32および第3のヨーク33は、ピニオンシャフト106に取り付けられる。
【0035】
第1のヨーク31は、磁石21の外径よりも大きな径の孔が内側に形成された円板状の第1の円環部31aと、この第1の円環部31aから下部連結シャフト108の軸方向に伸びるように形成された複数の第1の突起部31bとを有している。
第1の突起部31bは、磁石21のN極およびS極と同数形成されている。つまり、磁石21のN極およびS極がそれぞれ例えば12個である場合には、第1の突起部31bも12個形成されている。そして、この第1の突起部31bは、下部連結シャフト108の回転半径方向においては、図6,図8に示すように、磁石21の外周面と対向するようにこの外周面よりもやや外側に配置されており、その第1の突起部31bの磁石21と対向する面は、下部連結シャフト108の回転軸に直交する方向に見ると長方形である。
【0036】
第2のヨーク32は、磁石21の外径よりも大きな径の孔が内側に形成された円板状の第2の円環部32aと、この第2の円環部32aから下部連結シャフト108の軸方向に伸びるように形成された複数の第2の突起部32bとを有している。
第2の突起部32bは、磁石21のN極およびS極と同数形成されている。そして、この第2の突起部32bは、下部連結シャフト108の回転半径方向においては、図6,図8に示すように、磁石21の外周面と対向するようにこの外周面よりもやや外側に配置されており、その第2の突起部32bの磁石21と対向する面は、下部連結シャフト108の回転軸に直交する方向に見ると長方形である。
【0037】
第3のヨーク33は、磁石21の外径よりも大きな径の孔が内側に形成された円板状の第3の円環部33aと、この第3の円環部33aから下部連結シャフト108の軸方向に、第1のヨーク31側へ伸びるように形成された複数の第3の突起部33bと、第2のヨーク32側へ伸びるように形成された複数の第4の突起部34bとを有している。
第3の突起部33bおよび第4の突起部34bは、磁石21のN極およびS極と同数形成されている。そして、この第3の突起部33bおよび第4の突起部34bは、下部連結シャフト108の回転半径方向においては、図6,図8に示すように、磁石21の外周面と対向するようにこの外周面よりもやや外側に配置されており、その第3の突起部33bおよび第4の突起部34bの磁石21と対向する面は、下部連結シャフト108の回転軸に直交する方向に見ると長方形である。
【0038】
また、第1のヨーク31の第1の突起部31bと第3のヨーク33の第3の突起部33bとは、下部連結シャフト108の周方向に交互に配置されている。第2のヨーク32の第2の突起部32bと第3のヨーク33の第4の突起部34bとは、下部連結シャフト108の周方向に交互に配置されている。
なお、本実施の形態に係る第3のヨーク33においては、第3の突起部33bおよび第4の突起部34bは、下部連結シャフト108の軸方向に一体的に連続して形成されている。
【0039】
そして、本実施の形態に係るトルク検出装置20においては、トーションバー140に操舵トルクTが加わっていない状態、つまりトーションバー140に捩れが生じていない初期状態のときに、図8に示すように、下部連結シャフト108の周方向において、時計回転方向に見た場合に磁石21のN極とS極との境界線と第1のヨーク31の第1の突起部31bの周方向の中心が一致するように配置されている。
【0040】
第2のヨーク32の第2の突起部32bは、下部連結シャフト108の周方向には、第1のヨーク31の第1の突起部31bと同じ位置となるように配置されている。つまり、トーションバー140に操舵トルクTが加わっていない初期状態のときに、第1の突起部31bが対向する磁石21のN極とS極との境界線と、第2の突起部32bの周方向の中心が一致するように配置されている。すなわち、図8に示すように、時計回転方向に見た場合に磁石21のN極とS極との境界線と第2の突起部32bの周方向の中心が一致するように配置されている。そして、トーションバー140に操舵トルクTが加わってトーションバー140に捩れが生じ、第1の突起部31bが磁石21のN極あるいはS極と対向する場合に、第2の突起部32bは、第1の突起部31bが対向する極性と同じ極性の磁極に対向する。
【0041】
第3のヨーク33の第3の突起部33bおよび第4の突起部34bは、初期状態のときに、下部連結シャフト108の周方向において、図8に示すように、時計回転方向に見た場合に磁石21のS極とN極との境界線と第3の突起部33bおよび第4の突起部34bの周方向の中心が一致するように配置されている。そして、トーションバー140に操舵トルクTが加わってトーションバー140に捩れが生じ、第1の突起部31bが磁石21のN極あるいはS極と対向する場合に、第3の突起部33bおよび第4の突起部34bは、第1の突起部31bが対向する極性とは異なる極性の磁極に対向する。
【0042】
また、本実施の形態に係るヨーク30においては、図6に示すように、第1のヨーク31、第2のヨーク32および第3のヨーク33は、インサートモールド成形により一体化されている。そして、インサートモールド成形する際にブラケット60をも一体成形している。ブラケット60は、ピニオンシャフト106の軸方向に伸びる薄肉円筒状の軸方向部位61と、軸方向部位61からピニオンシャフト106の回転半径方向に伸びる円板状の半径方向部位62とを有する。そして、ブラケット60の軸方向部位61がピニオンシャフト106に圧入、溶接あるいはねじ止めされることにより、軸方向部位61がピニオンシャフト106に固定されている。これにより、ヨーク30は、ピニオンシャフト106に固定される。
【0043】
第1のセンサの一例としての第1の磁気センサ41は、ハウジング120に固定されており、下部連結シャフト108の軸方向において、第1のヨーク31の第1の円環部31aと第3のヨーク33の第3の円環部33aとの間に配置されている。第1の磁気センサ41は、制御装置10から電源電圧VDDが供給されることにより作動して、第1のヨーク31と第3のヨーク33との間の磁束密度を検出し、検出した磁束密度を電気信号(例えば電圧信号)に変換して出力するセンサであり、磁気抵抗素子、ホールIC、ホール素子などを例示することができる。
【0044】
また、第2のセンサの一例としての第2の磁気センサ42は、ハウジング120に固定されており、下部連結シャフト108の軸方向において、第2のヨーク32の第2の円環部32aと第3のヨーク33の第3の円環部33aとの間に配置されている。第2の磁気センサ42は、制御装置10から電源電圧VDDが供給されることにより作動して、第2のヨーク32と第3のヨーク33との間の磁束密度を検出し、検出した磁束密度を電気信号(例えば電圧信号)に変換して出力するセンサであり、磁気抵抗素子、ホールIC、ホール素子などを例示することができる。
そして、第1の磁気センサ41と第2の磁気センサ42とは、例えば下部連結シャフト108の軸方向に同じ向きの磁界が生じている場合には、同じ符号の磁束密度を検出するように配置されている。
【0045】
以上のように構成されたトルク検出装置20においては、以下に示すように作用する。
図9は、下部連結シャフト108とピニオンシャフト106とが相対変位する前のトルク検出装置20の状態を示す図である。図9(a)は、磁石21とヨーク30との関係を、図2におけるY方向に見た図である。図9(b)は、磁石21およびヨーク30を、(a)におけるZ方向に見た図である。
【0046】
トーションバー140に操舵トルクTが加わっていない状態、つまりトーションバー140に捩れが生じていない初期状態のときは、図8、図9(a)に示すように、下部連結シャフト108の周方向において、ヨーク30の全ての突起部である第1の突起部31b〜第4の突起部34bの周方向の中心と、磁石21のN極とS極との境界線とが一致する。かかる場合、第1の突起部31b〜第4の突起部34bの各突起部には、磁石21のN極とS極とから同数の磁力線が出入りする。そのため、第1のヨーク31の第1の円環部31aと第3のヨーク33の第3の円環部33aとの間、および第2のヨーク32の第2の円環部32aと第3のヨーク33の第3の円環部33aとの間には磁束密度差が生じないので、第1の磁気センサ41および第2の磁気センサ42の出力は零となる。
【0047】
ステアリングホイールに操舵トルクTが入力されてトーションバー140に捩れが生じると、磁石21とヨーク30との周方向の相対位置が変化する。
図10は、図8で見た場合に、磁石21(下部連結シャフト108)がヨーク30(ピニオンシャフト106)に対して時計回転方向に回転した状態を示す図である。図11は、図8で見た場合に、磁石21がヨーク30に対して反時計回転方向に回転した状態を示す図である。それぞれの図において、(a)は磁石21とヨーク30との関係を、図2におけるY方向から見た図である。(b)は磁石21およびヨーク30を、(a)におけるZ方向に見た図である。
また、図12は、磁石21(下部連結シャフト108)とヨーク30(ピニオンシャフト106)との相対角度(トーションバー140の捩れ角θ)と第1の磁気センサ41および第2の磁気センサ42が検出する磁束密度との関係を示す図である。
【0048】
図10および図11に示すように、トーションバー140が捩れると、下部連結シャフト108の周方向において、ヨーク30の第1の突起部31b〜第4の突起部34bの周方向の中心と、磁石21のN極とS極との境界線とが一致しなくなる。つまり、初期状態に比べて、磁石21のいずれかの磁極がヨーク30の第1の突起部31b〜第4の突起部34bと対向する領域が増加する。
【0049】
より具体的には、図10の状態においては、第1のヨーク31の第1の突起部31bおよび第2のヨーク32の第2の突起部32bは、磁石21のN極と対向する領域が増加し、第3のヨーク33の第3の突起部33bおよび第4の突起部34bは、磁石21のS極と対向する領域が増加する。そのため、磁石21のN極から第1の突起部31bおよび第2の突起部32bに向かう磁力線が、第1の突起部31bおよび第2の突起部32bから磁石21のS極に向かう磁力線よりも増加する。また、第3の突起部33bおよび第4の突起部34bから磁石21のS極に向かう磁力線が、磁石21のN極から第3の突起部33bおよび第4の突起部34bに向かう磁力線よりも増加する。これにより、第1のヨーク31の第1の円環部31aから第3のヨーク33の第3の円環部33aへ向かう磁束密度が増加するとともに第2のヨーク32の第2の円環部32aから第3のヨーク33の第3の円環部33aへ向かう磁束密度が増加する。
【0050】
そして、第1のヨーク31の第1の円環部31aから第3のヨーク33の第3の円環部33aへ向かう方向をプラスの方向とすると、初期状態から、図8で見た場合に、磁石21(下部連結シャフト108)がヨーク30(ピニオンシャフト106)に対して時計回転方向に回転するにしたがって、第1の磁気センサ41が検出する磁束密度B1がプラスの方向へ大きくなる。他方、第2の磁気センサ42が検出する磁束密度B2がマイナスの方向へ大きくなる。以下、図8で見た場合に、初期状態から、磁石21(下部連結シャフト108)がヨーク30(ピニオンシャフト106)に対して時計回転方向に回転するときに、「右方向」の操舵トルクTが発生しているものとする。
【0051】
また、図11の状態においては、第1のヨーク31の第1の突起部31bおよび第2のヨーク32の第2の突起部32bは、磁石21のS極と対向する領域が増加し、第3のヨーク33の第3の突起部33bおよび第4の突起部34bは、磁石21のN極と対向する領域が増加する。そのため、第1の突起部31bおよび第2の突起部32bから磁石21のS極に向かう磁力線が、磁石21のN極から第1の突起部31bおよび第2の突起部32bに向かう磁力線よりも増加する。また、磁石21のN極から第3の突起部33bおよび第4の突起部34bに向かう磁力線が、第3の突起部33bおよび第4の突起部34bから磁石21のS極に向かう磁力線よりも増加する。これにより、第3のヨーク33の第3の円環部33aから第1のヨーク31の第1の円環部31aへ向かう磁束密度が増加するとともに第3のヨーク33の第3の円環部33aから第2のヨーク32の第2の円環部32aへ向かう磁束密度が増加する。それゆえ、初期状態から、図8で見た場合に、磁石21(下部連結シャフト108)がヨーク30(ピニオンシャフト106)に対して反時計回転方向に回転するにしたがって、第1の磁気センサ41が検出する磁束密度B1がマイナスの方向へ大きくなる。他方、第2の磁気センサ42が検出する磁束密度B2がプラスの方向へ大きくなる。以下、図8で見た場合に、初期状態から、磁石21(下部連結シャフト108)がヨーク30(ピニオンシャフト106)に対して反時計回転方向に回転するときに、「左方向」の操舵トルクTが発生しているものとする。
【0052】
図12においては、下部連結シャフト108とピニオンシャフト106とを、両方向に磁極1個(α度)分相対的に回転させた場合の磁束密度の変化を示している。そして、トーションバー140が両方向に1/3×α度捩れることを許容する仕様にすることで、第1の磁気センサ41および第2の磁気センサ42は、トーションバー140の捩れ量(下部連結シャフト108とピニオンシャフト106との相対回転角度)に比例する磁束密度の変化を検出することが可能となる。
【0053】
そして、第1の磁気センサ41は、検出した磁束密度B1を、この磁束密度B1に応じた電圧値を示す第1の電圧信号V1sに変換して出力し、第2の磁気センサ42は、検出した磁束密度B2を、この磁束密度B2に応じた電圧値を示す第2の電圧信号V2sに変換して出力する。トーションバー140の捩れ量(下部連結シャフト108とピニオンシャフト106の相対回転角度)とステアリングホイール101の操舵トルクTとは比例関係にある。つまり、第1の磁気センサ41および第2の磁気センサ42は、操舵トルクTに応じた電圧値を示す第1の電圧信号V1sおよび第2の電圧信号V2sを出力する。
【0054】
図13は、操舵トルクTと、第1の電圧信号V1sおよび第2の電圧信号V2sとの関係を示す図である。
図13においては、横軸に操舵トルクT、縦軸に第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1および第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2を示している。横軸は、操舵トルクTが零の状態、つまり、ステアリングホイール101が操舵されていない状態を中点にし、右方向の操舵トルクTをプラス、左方向の操舵トルクTをマイナスとしている。
そして、本実施の形態に係る第1の磁気センサ41および第2の磁気センサ42は、図13に示すように、第1の電圧信号V1sが示す第1の電圧V1および第2の電圧信号V2sが示す第2の電圧V2が、最大電圧VHiと最小電圧VLoとの間で変化するように構成されている。なお、最大電圧VHiは、第1の磁気センサ41,第2の磁気センサ42が第1の電圧信号V1s,第2の電圧信号V2sとして出力可能な出力上限値よりわずかに低く、最小電圧VLoは、出力可能な出力下限値よりわずかに高く設定される。これは、第1の磁気センサ41,第2の磁気センサ42の出力上限値や出力下限値の近傍では、第1の電圧信号V1s,第2の電圧信号V2sとして出力する電圧が不安定になって操舵トルクTの検出精度が低下するおそれがあるためである。
【0055】
そして、図13の実線で示すように、第1の磁気センサ41が出力する第1の電圧信号V1sは、操舵トルクTの右方向への大きさが増加(トーションバー140の右方向への回転量が増加)するのに伴って電圧が上昇する特性を有する。すなわち、ステアリングホイール101が右方向に回転すると第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1が上昇する。また、図13の破線で示すように、第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2は、第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1と同じ最大電圧VHiと最小電圧VLoの間で変化するとともに第1の電圧信号V1sと逆の特性(負の相関関係)を有し、操舵トルクTの右方向への大きさが増加するのに伴って第2の電圧信号V2sが低下する特性を有する。すなわち、ステアリングホイール101が右方向に回転すると第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2が低下する。
【0056】
そして、中点では第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1と第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2とが等しい電圧(以下、「中点電圧Vc」と称する場合がある)となるように構成されている。中点電圧Vcは、例えば、最大電圧VHiと最小電圧VLoの中間の電圧(Vc=(VHi+VLo)/2)となる。
さらに、操舵トルクTの変化に対する第1の電圧信号V1sの変化の割合と第2の電圧信号V2sの変化の割合(絶対値)は等しく、同じ操舵トルクTを示す第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1と第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2を合計した合計電圧Vt(以下、単に「合計電圧Vt」と称する場合がある)が常に予め定められた所定電圧となる特性を有する。本実施の形態において、合計電圧Vtは、一定電圧(VHi+VLo)となるように構成されており、「VHi+VLo」が所定電圧となる。
【0057】
例えば、第1の磁気センサ41,第2の磁気センサ42が、0〜5〔V〕の間の電圧値を第1の電圧信号V1s,第2の電圧信号V2sとして出力可能な性能を有する場合、すなわち、出力下限値が0〔V〕で出力上限値が5〔V〕の場合に、第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1および第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2の最大電圧VHiを4.5〔V〕、最小電圧VLoを0.5〔V〕に設定すると、中点電圧Vcは2.5〔V〕、所定電圧は5〔V〕になる。
したがって、操舵トルクTが零の中点では、第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1および第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2は共に2.5〔V〕となり、第1の電圧V1と第2の電圧V2との合計電圧Vtは常に5〔V〕となる。そして、操舵トルクTが右方向に増加すると、第1の電圧V1は2.5〔V〕から上昇し、第2の電圧V2は2.5〔V〕から低下する。他方、操舵トルクTが左方向に増加すると、第1の電圧V1は2.5〔V〕から低下し、第2の電圧V2は2.5〔V〕から上昇する。
【0058】
次に、制御装置10のトルク値設定部250について説明する。
図14は、トルク値設定部250の概略構成図である。
トルク値設定部250には、トルク検出装置20の第1の磁気センサ41,第2の磁気センサ42からの出力信号である第1の電圧信号V1s,第2の電圧信号V2sが入力される。なお、磁気センサ40からの信号がアナログ信号として入力されるので、図示しないA/D変換部によりアナログ信号をデジタル信号に変換し、トルク値設定部250に取り込んでいる。
そして、トルク値設定部250は、第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1と第2の電圧信号V2sの第2電圧V2とに基づいて磁気センサ40に故障が生じているか否かを診断するセンサ故障診断部251と、故障が生じているセンサを特定する故障センサ特定部252と、目標電流算出部220へトルク信号Tdを出力する出力部253とを備えている。このように、トルク値設定部250は、故障検出手段の一例である。
【0059】
先ずは、センサ故障診断部251について説明する。
センサ故障診断部251は、以下に述べる手法を用いて磁気センサ40に故障が生じているか否かを診断する。
ここで、磁気センサ40の故障には、第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1または第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2の一方が一定のレベルに固定される故障(以下、「固着故障」と称する場合がある)と、第1の電圧信号V1sまたは第2の電圧信号V2sが異常な値で変化する故障(以下、「信号異常故障」と称する場合がある)と、がある。
【0060】
磁気センサ40に固着故障が発生すると、第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1または第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2が、出力上限値や出力下限値に固着する場合がある。この場合、第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1または第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2が最大電圧VHiより高くなった場合や最小電圧VLoより低くなった場合に、第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1または第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2が固着し、磁気センサ40に固着故障が発生したと判定することができる。あるいは、第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1または第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2の一方が変化し他方が変化しない場合、変化しない方の電圧信号が固着し、磁気センサ40に固着故障が発生したと判定することができる。
【0061】
図15および図16は、磁気センサ40に信号異常故障が発生した場合の磁気センサ40からの信号の変化を示す図である。
磁気センサ40に発生する信号異常故障には、第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1が正常値より高い電圧で変化する故障(以下、「第1上昇故障」と称する場合がある)と、第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1が正常値より低い電圧で変化する故障(以下、「第1低下故障」と称する場合がある)とがある。第1上昇故障時の第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1の変化を示したのが図15の1点鎖線であり、第1低下故障時の第1の電圧V1の変化を示したのが図15の2点鎖線である。また、信号異常故障には、第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2が正常値より高い電圧で変化する故障(以下、「第2上昇故障」と称する場合がある)と、第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2が正常値より低い電圧で変化する故障(以下、「第2低下故障」と称する場合がある)とがある。第2上昇故障時の第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2の変化を示したのが図15の1点鎖線であり、第2低下故障時の第2の電圧V2の変化を示したのが図15の2点鎖線である。
【0062】
また、磁気センサ40が正常に作動している場合、第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1と第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2とを合計した合計電圧Vtは、常に所定電圧(VHi+VLo)になる(図16の実線参照)。
これに対して、磁気センサ40のいずれか一方に上昇故障が発生すると、合計電圧Vtは所定電圧よりも高くなり、磁気センサ40のいずれか一方に低下故障が発生すると、合計電圧Vtは所定電圧よりも低くなる。図16の1点鎖線は、磁気センサ40の少なくとも一方に上昇故障が発生している場合の合計電圧Vt、2点鎖線は、磁気センサ40の少なくとも一方に低下故障が発生している場合の合計電圧Vtをそれぞれ示す線である。
【0063】
それゆえ、第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1と第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2とを合計した合計電圧Vtが、予め定められた所定範囲から外れた場合に磁気センサ40に信号異常故障が発生したと判断することができる。具体的には、磁気センサ40に生じる誤差や脈動等による合計電圧Vtの変動を考慮して、図16に示すように、所定電圧(VHi+VLo)より高い上限基準値VH以上の領域を上昇故障領域とし、所定電圧(VHi+VLo)より低い下限基準値VL以下の領域を低下故障領域とし、上限基準値VHより低く下限基準値VLより高い領域を所定範囲とする。そして、合計電圧Vtが、所定範囲から外れた場合、言い換えれば、合計電圧Vtが上昇故障領域又は低下故障領域にある場合に、磁気センサ40に信号異常故障が発生したと判断することができる。
【0064】
なお、磁気センサ40に固着故障が発生し、第1の電圧信号V1sまたは第2の電圧信号V2sが出力上限値に固着した場合、合計電圧Vtは上昇故障領域にあり、第1の電圧信号V1sまたは第2の電圧信号V2sが出力下限値に固着した場合、合計電圧Vtは低下故障領域にある。したがって、合計電圧Vtが上昇故障領域又は低下故障領域にあることによって、固着故障が磁気センサ40に発生したことも判定できる。
【0065】
また、上限基準値VHおよび下限基準値VLは、例えば、故障していない磁気センサ40が出力する電圧信号の電圧値の誤差や不規則な変動(脈動)に伴って発生する合計電圧Vtの脈動の変動幅を考慮し、誤差や脈動によって磁気センサ40が故障していないときの合計電圧Vtが上昇故障領域及び低下故障領域に入らないように適宜設定すればよい。このように上限基準値VHおよび下限基準値VLを設定すると、合計電圧Vtの誤差や脈動によって合計電圧Vtが上昇故障領域および低下故障領域に入ることがないため、信号異常故障の誤判定を抑制できる。
【0066】
これらの事項に鑑み、本実施の形態に係るセンサ故障診断部251は、先ず、第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1および第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2の少なくともいずれかが最大電圧VHiより高いか否か、あるいは第1の電圧V1および第2の電圧V2の少なくともいずれかが最小電圧VLoより低いか否かを判別する。そして、センサ故障診断部251は、第1の電圧V1および第2の電圧V2の少なくともいずれかが最大電圧VHiより高い場合、あるいは第1の電圧V1および第2の電圧V2の少なくともいずれかが最小電圧VLoより低い場合に、磁気センサ40に固着故障が発生していると判定する。
【0067】
他方、センサ故障診断部251は、第1の電圧V1および第2の電圧V2が最大電圧VHi以下であり、かつ第1の電圧V1および第2の電圧V2が最小電圧VLo以上である場合には、磁気センサ40に固着故障が発生しているとは判定しない。かかる場合、第1の電圧V1と第2の電圧V2との合計電圧Vtが所定範囲から外れているか否かを判別する。合計電圧Vtが所定範囲内から外れているか否かを判別するにあたっては、センサ故障診断部251は、合計電圧Vtが上限基準値VH以上であるか否か、あるいは合計電圧Vtが下限基準値VL以下であるか否かを判別する。そして、センサ故障診断部251は、合計電圧Vtが上限基準値VH以上である場合、あるいは合計電圧Vtが下限基準値VL以下である場合に所定範囲内から外れていると判定し、磁気センサ40に信号異常故障が発生していると判定する。
【0068】
このようにして、センサ故障診断部251は、第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1および第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2に基づいて磁気センサ40に故障が発生していると判定する。そして、センサ故障診断部251は、磁気センサ40に故障が発生していると判定した場合には、自動車に備えられて使用者に磁気センサ40に故障が生じていることを報知するためにウォーニングランプ(WLP)を点灯させると共に、EEPROM14においてセットされるフラグ設定においてアシストOFFのフラグをONに設定する。
【0069】
以下、フローチャートを用いて、センサ故障診断部251が行う故障診断処理の手順について説明する。
図17は、センサ故障診断部251が行う故障診断処理の手順を示すフローチャートである。センサ故障診断部251は、定期的に、例えば10ms毎にこの故障診断処理を実行する。
センサ故障診断部251は、先ず、EEPROM14にセットされるフラグ設定においてアシストOFFフラグがONであるか否かを判別する(ステップ(以下、単に、「S」と記す。)601)。このアシストOFFフラグは、以下に述べるS604によりONに設定されるフラグである。
そして、アシストOFFフラグがONではない場合(S601でNo)、センサ故障診断部251は、第1の電圧V1および第2の電圧V2の少なくともいずれかが最大電圧VHiより高いか否か、あるいは第1の電圧V1および第2の電圧V2の少なくともいずれかが最小電圧VLoより低いか否かを判別する(S602)。そして、最大電圧VHiより高くなく、かつ最小電圧VLoより低くない場合(S602でNo)、センサ故障診断部251は、合計電圧Vtが所定範囲外か否かを判別する(S603)。
そして、センサ故障診断部251は、最大電圧VHiより高いか、あるいは最小電圧VLoより低い場合(S602でYes)、および合計電圧Vtが所定範囲外である場合(S603でYes)、ウォーニングランプ(WLP)を点灯させると共に、アシストOFFフラグをONに設定する(S604)。その後、センサ故障診断部251は、故障センサ特定部252に対して、後述する故障センサ特定処理の実行を指示するコマンドを送る(S605)。
【0070】
次に、故障センサ特定部252について説明する。
センサ故障診断部251が行う故障診断方法では、磁気センサ40に信号異常故障が発生した場合、センサ故障診断部251は、第1の磁気センサ41および第2の磁気センサ42の内、いずれのセンサに故障が発生しているかを特定することができない。
そこで、本実施の形態においては、センサ故障診断部251が磁気センサ40に故障が生じていると判定した場合には、故障センサ特定部252が、どのセンサに故障が生じているかを特定する。以下、詳細に説明する。
【0071】
本実施の形態に係る故障センサ特定部252は、電動モータ110を強制的に駆動させ、そのときの磁気センサ40からの出力値に基づいて、どのセンサに故障が生じているかを特定する。より具体的には、故障センサ特定部252は、センサ故障診断部251が磁気センサ40に故障が生じていると判定した場合に、電動モータ110を強制的に駆動させるべく、予め定められた規定の目標電流を電動モータ110に供給するモータ強制駆動処理を行う。そして、電動モータ110が強制的に駆動させられて捩れたトーションバー140の変化に起因して出力された第1の磁気センサ41からの第1の電圧信号V1sおよび第2の磁気センサ42からの第2の電圧信号V2sを基に、故障した磁気センサを特定する。
【0072】
図18は、電動モータ110に供給する目標電流と磁気センサ40からの出力値との関係を示す図である。
図18には、電動モータ110に供給する目標電流を2点鎖線で示し、そのときの第1の磁気センサ41からの第1の電圧信号V1sを実線で、第2の磁気センサ42からの第2の電圧信号V2sを破線で示している。また、第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1の変化量の絶対値を積算した変化量積算値VS1を太い実線で、第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2の変化量の絶対値を積算した変化量積算値VS2を太い破線で示している。そして、図18(a)は、磁気センサ40に故障が生じていない場合の変化を示し、図18(b)は、第1の磁気センサ41に故障が生じている場合の変化を示している。
【0073】
上述したように、第1の磁気センサ41からの第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1と、第2の磁気センサ42からの第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2とは負の相関関係があり、トーションバー140の変化に対する第1の電圧信号V1sの変化の割合と第2の電圧信号V2sの変化の割合は等しい。それゆえ、第1の磁気センサ41と第2の磁気センサ42とが共に正常である場合には、図18(a)に示すように、第1の電圧V1の変化量の絶対値を積算した変化量積算値VS1と、第2の電圧V2の変化量の絶対値を積算した変化量積算値VS2とは等しくなる。
【0074】
これに対して、第1の磁気センサ41に上述した第1上昇故障が生じた場合には第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1が正常値より高い電圧で変化することから(図15参照)、変化量積算値VS1は正常である第2の磁気センサ42の変化量積算値VS2よりも大きくなる。また、第1の磁気センサ41に上述した第1低下故障が生じた場合には第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1が正常値より低い電圧で変化することから(図15参照)、変化量積算値VS1は正常である第2の磁気センサ42の変化量積算値VS2よりも低くなる。他方、第2の磁気センサ42に上述した第2上昇故障が生じた場合には第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2が正常値より高い電圧で変化することから(図15参照)、変化量積算値VS2は正常である第1の磁気センサ41の変化量積算値VS1よりも大きくなる。また、第2の磁気センサ42に上述した第2低下故障が生じた場合には第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2が正常値より低い電圧で変化することから(図15参照)、変化量積算値VS2は正常である第1の磁気センサ41の変化量積算値VS1よりも低くなる。図18(b)は、第1の磁気センサ41に第1低下故障が生じている場合の変化を示した図である。
【0075】
かかる事項に鑑み、故障センサ特定部252は、第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1と第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2との合計電圧Vtが上限基準値VH以上であるか否かを判別し、合計電圧Vtが上限基準値VH以上であると判定した場合には以下のようにしてどの磁気センサに故障が生じているかを特定する。すなわち、合計電圧Vtが上限基準値VH以上である場合には、いずれかの磁気センサに上昇故障が生じていることから、故障センサ特定部252は、モータ強制駆動処理時の第1の磁気センサ41の変化量積算値VS1と第2の磁気センサ42の変化量積算値VS2とを比較し、大きい方の積算値を出力したセンサに上昇故障が生じていると特定する。つまり、変化量積算値VS1が変化量積算値VS2より大きい場合には、第1の磁気センサ41に故障が生じていると特定し、他方変化量積算値VS2が変化量積算値VS1より大きい場合には、第2の磁気センサ42に故障が生じていると特定する。一方、合計電圧Vtが下限基準値VL以下である場合には、いずれかの磁気センサに低下故障が生じていることから、故障センサ特定部252は、モータ強制駆動処理時の第1の磁気センサ41の変化量積算値VS1と第2の磁気センサ42の変化量積算値VS2とを比較し、小さい方の積算値を出力したセンサに低下故障が生じていると特定する。つまり、変化量積算値VS1が変化量積算値VS2より小さい場合には、第1の磁気センサ41に故障が生じていると特定し、他方変化量積算値VS2が変化量積算値VS1より小さい場合には、第2の磁気センサ42に故障が生じていると特定する。
【0076】
以下、フローチャートを用いて、故障センサ特定部252が行う故障センサ特定処理の手順について説明する。
図19は、故障センサ特定部252が行う故障センサ特定処理の手順を示すフローチャートである。故障センサ特定部252は、センサ故障診断部251が磁気センサ40に故障が生じていると判定した場合にこの故障センサ特定処理を実行する。
故障センサ特定部252は、先ず、第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1と第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2との合計電圧Vtが上限基準値VH以上であるか否かを判別する(S701)。この故障センサ特定処理を実行するのは、センサ故障診断部251が磁気センサ40に故障が生じていると判定した場合であることから、合計電圧Vtは上記所定範囲外であり、合計電圧Vtは上限基準値VH以上であるか、あるいは下限基準値VL以下である。このS701は、言い換えれば、合計電圧Vtが、上限基準値VH以上であるか、下限基準値VL以下であるかを特定する処理である。そして、合計電圧Vtが上限基準値VH以上ではない場合(S701でNo)、合計電圧Vtは下限基準値VL以下であり、いずれかの磁気センサに低下故障が生じていると考えられるため、いずれの磁気センサに低下故障が生じているかを特定するべく、以下の処理を行う。すなわち、故障センサ特定部252は、上述したモータ強制駆動処理を実行する(S702)。これは、故障センサ特定部252が、目標電流算出部220が予め定められた期間に亘って予め定められた規定の目標電流に相当する目標電流信号ITを出力するように、目標電流算出部220を制御する処理である。その後、故障センサ特定部252は、モータ強制駆動処理時の第1の磁気センサ41および第2の磁気センサ42の出力から変化量積算値VS1および変化量積算値VS2を算出する(S703)。
その後、故障センサ特定部252は、変化量積算値VS1が変化量積算値VS2より大きいか否かを判別する(S704)。そして、変化量積算値VS1が変化量積算値VS2より大きくない場合(S704でNo)、小さいのは変化量積算値VS1であることから、第1の磁気センサ41に低下故障が生じていると判定し、RAM13においてセットされるフラグ設定において第1の磁気センサ41に故障が生じている旨を示す第1センサ故障フラグをONに設定する(S705)。他方、変化量積算値VS1が変化量積算値VS2より大きい場合(S704でYes)、小さいのは変化量積算値VS2であることから、第2の磁気センサ42に低下故障が生じていると判定し、RAM13においてセットされるフラグ設定において第2の磁気センサ42に故障が生じている旨を示す第2センサ故障フラグをONに設定する(S706)。
【0077】
一方、合計電圧Vtが上限基準値VH以上である場合(S701でYes)、いずれかの磁気センサに上昇故障が生じていると考えられるため、いずれの磁気センサに上昇故障が生じているかを特定するべく、以下の処理を行う。すなわち、故障センサ特定部252は、上述したモータ強制駆動処理を実行し(S707)、モータ強制駆動処理時の変化量積算値VS1および変化量積算値VS2を算出する(S708)。これらの処理は、上述したS702およびS703の処理と同じであるのでその詳細な説明は省略する。その後、故障センサ特定部252は、変化量積算値VS1が変化量積算値VS2より大きいか否かを判別する(S709)。そして、変化量積算値VS1が変化量積算値VS2より大きくない場合(S709でNo)、大きいのは変化量積算値VS2であることから、第2の磁気センサ42に上昇故障が生じていると判定し、RAM13においてセットされるフラグ設定において第2の磁気センサ42に故障が生じている旨を示す第2センサ故障フラグをONに設定する(S710)。他方、変化量積算値VS1が変化量積算値VS2より大きい場合(S709でYes)、第1の磁気センサ41に上昇故障が生じていると判定し、RAM13においてセットされるフラグ設定において第1の磁気センサ41に故障が生じている旨を示す第1センサ故障フラグをONに設定する(S711)。
そして、故障センサ特定部252は、S705、S706、S710またはS711の処理にて第1センサ故障フラグまたは第2センサ故障フラグをONに設定した後、RAM13においてセットされるフラグ設定において後述する補助制御処理を実行する旨を示す補助制御フラグをONに設定する(S712)。
【0078】
故障センサ特定部252がこの故障センサ特定処理を実行することにより、故障センサ特定部252は、故障が生じた磁気センサ40を特定することができる。そして、その特定方法は、電動モータ110を強制的に駆動させ、そのときの磁気センサ40からの出力値に基づいてどのセンサに故障が生じているかを特定することから、この特定方法を用いずに特定する場合と比べて、より精度高く特定することができる。
【0079】
次に、出力部253について説明する。
出力部253は、センサ故障診断部251の診断結果や、故障センサ特定部252の特定結果に応じて目標電流算出部220へ出力するトルク信号Tdを変更する。より具体的には、出力部253は、センサ故障診断部251が磁気センサ40に故障が生じていると判定しない場合、つまり磁気センサ40が正常である場合には、第1の磁気センサ41からの第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1から操舵トルクTを算出し、算出した操舵トルクTを電気信号に変換したトルク信号Tdを目標電流算出部220へ出力する。以下では、出力部253が行う、この磁気センサ40が正常である場合の処理を、「通常時の処理」と称する。
第1の電圧V1から操舵トルクTを算出する手法としては以下を例示することができる。すなわち、第1の電圧V1と操舵トルクTとの関係を示すマップをROM12に記憶しておき、出力部253は、このマップに、第1の電圧V1を代入することにより操舵トルクTを算出する。あるいは、第1の電圧V1と操舵トルクTとの関係を示す関数を組み込んでおき、出力部253は、この関数に第1の電圧V1を代入して操舵トルクTを算出してもよい。
【0080】
出力部253は、センサ故障診断部251が磁気センサ40に故障が生じていると判定した場合であって、故障センサ特定部252が第2の磁気センサ42に故障が生じていると判定した場合には、第1の磁気センサ41は正常であることから、第1の磁気センサ41からの出力値に応じたトルク信号Tdを目標電流算出部220へ出力する。ただし、第2の磁気センサ42に故障が生じているというイレギュラーな状態であることから、出力部253は、電動モータ110によるアシスト力を弱めるべく上記通常時の処理で出力するトルク信号Tdの値よりも小さな値を出力する。より具体的には、出力部253は、通常時の処理と同様に第1の磁気センサ41からの第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1から操舵トルクTを算出し、算出した操舵トルクTに予め定められた1より小さい値の補正係数α(α<1)を乗算する。そして、補正係数αを乗算することにより得られた補正後の操舵トルクTを電気信号に変換したトルク信号Tdを目標電流算出部220へ出力する。
【0081】
出力部253は、センサ故障診断部251が磁気センサ40に故障が生じていると判定した場合であって、故障センサ特定部252が第1の磁気センサ41に故障が生じていると判定した場合には、第2の磁気センサ42は正常であることから、第2の磁気センサ42からの出力値に応じたトルク信号Tdを目標電流算出部220へ出力する。より具体的には、出力部253は、先ず、通常時の処理において第1の磁気センサ41からの出力値に基づいて操舵トルクTを算出する手法と同様の手法で、第2の磁気センサ42からの第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2から操舵トルクTを算出する。つまり、出力部253は、予めROM12に記憶しておいた、第2の電圧V2と操舵トルクTとの関係を示すマップに、第2の電圧V2を代入することにより操舵トルクTを算出する。あるいは、第2の電圧V2と操舵トルクTとの関係を示す関数を組み込んでおき、出力部253は、この関数に第2の電圧V2を代入して操舵トルクTを算出してもよい。そして、出力部253は、第1の磁気センサ41に故障が生じているというイレギュラーな状態であることから、算出した操舵トルクTに上記補正係数αを乗算し、補正係数αを乗算することにより得られた補正後の操舵トルクTを電気信号に変換したトルク信号Tdを目標電流算出部220へ出力する。
このように、出力部253は、磁気センサ40のいずれかが故障している場合には、電動モータ110によるアシスト力を上記通常時の処理よりも弱める補助制御処理を行う。
【0082】
以下、フローチャートを用いて、出力部253が行う出力処理の手順について説明する。
図20は、出力部253が行う出力処理の手順を示すフローチャートである。出力部253は、定期的に、例えば10ms毎にこの出力処理を実行する。
出力部253は、先ず、RAM13にセットされるフラグ設定において補助制御フラグがONであるか否かを判別する(S801)。そして、補助制御フラグがONではない場合(S801でNo)、EEPROM14にセットされるフラグ設定においてアシストOFFフラグがONであるか否かを判別する(S802)。そして、アシストOFFフラグがONである場合(S802でYes)、アシストを禁止するべく、目標電流決定部225に対して、最終的な目標電流を零に決定することを指示するコマンドを送る(S803)。他方、アシストOFFフラグがONではない場合(S802でNo)、上記通常時の処理を行う(S804)。
【0083】
一方、補助制御フラグがONである場合(S801でYes)、RAM13にセットされるフラグ設定において第1センサ故障フラグがONであるか否かを判別する(S805)。そして、第1センサ故障フラグがONではない場合(S805でNo)、第1の磁気センサ41からの第1の電圧信号V1sに基づいた補助制御処理を行う(S806)。すなわち、出力部253は、第1の磁気センサ41からの第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1から操舵トルクTを算出し、算出した操舵トルクTに補正係数αを乗算することにより得られた補正後の操舵トルクTを電気信号に変換したトルク信号Tdを目標電流算出部220へ出力する。他方、第1センサ故障フラグがONである場合(S805でYes)、第2の磁気センサ42からの第2の電圧信号V2sに基づいた補助制御処理を行う(S807)。すなわち、出力部253は、第2の磁気センサ42からの第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2から操舵トルクTを算出し、算出した操舵トルクTに補正係数αを乗算することにより得られた補正後の操舵トルクTを電気信号に変換したトルク信号Tdを目標電流算出部220へ出力する。
【0084】
以上のように構成されたステアリング装置100は以下のように作用する。
すなわち、磁気センサ40に故障が生じていない場合には、出力部253は、通常時の処理を行うので(S804)、第1の磁気センサ41からの出力値に基づいて算出された操舵トルクTに応じた目標電流が設定される。
一方、磁気センサ40に故障が生じた場合には、ウォーニングランプ(WLP)を点灯させてユーザに故障を認識させる(S604)と共に、故障センサ特定部252により故障が生じたセンサが特定され(S704およびS709)、出力部253は、正常なセンサからの出力値に基づいて補助制御処理を実行する(S806あるいはS807)。これにより、本実施の形態に係るステアリング装置100においては、磁気センサ40に故障が生じた場合には磁気センサ40いずれかが正常であったとしても電動モータ110によるアシストを禁止する装置と比べると、磁気センサ40の故障時の車輌挙動への影響が抑制される。その結果、磁気センサ40に故障が生じた場合の操舵フィーリングの低下を抑制することができる。
また、磁気センサ40のいずれか一方が正常である場合であっても、他方が故障している場合には、アシストOFFフラグがONに設定され(S604)、自動車のイグニッション(IG)がOFFにされてエンジンがストップした後には補助制御フラグもOFFとなるので、磁気センサ40が故障後に再度IGがONにされてエンジンが起動されたとしても、出力部253は、アシストを禁止する(S803)。これにより、磁気センサ40が故障している状態での走行の抑制を、ユーザに対して促すことができる。
【0085】
なお、上述の実施の形態に係るトルク値設定部250の故障センサ特定部252においては、故障したセンサを特定するにあたって、電動モータ110を強制的に駆動させたときの磁気センサ40からの出力値に基づいている。その際、電動モータ110を強制的に駆動させるべく、故障センサ特定部252は、目標電流算出部220が予め定められた所定期間に亘って図18に示すような予め定められた規定の目標電流に相当する目標電流信号ITを出力するように、目標電流算出部220を制御する。この電動モータ110を所定期間に亘って強制的に駆動する規定の目標電流としては、この所定期間における第1の磁気センサ41の変化量積算値VS1と第2の磁気センサ42の変化量積算値VS2との大小を見極めることができれば十分である。図18においては、第1の磁気センサ41の第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1が、中点電圧Vcから上昇し、その後中点電圧Vcより低い電圧まで下降し、その後中点電圧Vcまで上昇するように変化するように、電動モータ110に供給する規定の目標電流、および所定期間を定めているが、特にかかる態様に限定されない。例えば、所定期間における第1の磁気センサ41の変化量積算値VS1と第2の磁気センサ42の変化量積算値VS2との大小を精度高く見極めることができるのであれば、第1の電圧V1が、中点電圧Vcから上昇し、その後中点電圧Vcまで下降するように変化するように、規定の目標電流、および所定期間を定めてもよい。
【0086】
なお、上述の実施の形態に係るステアリング装置100においては、トルク値設定部250の出力部253は、磁気センサ40が正常である場合には、第1の磁気センサ41からの出力値に基づいて操舵トルクTを算出し、算出した操舵トルクTを電気信号に変換したトルク信号Tdを目標電流算出部220へ出力しているが特にかかる態様には限定されない。出力部253は、磁気センサ40が正常である場合には、第1の磁気センサ41と第2の磁気センサ42の両方のセンサからの出力値に基づいて操舵トルクTを算出し、算出した操舵トルクTを電気信号に変換したトルク信号Tdを目標電流算出部220へ出力してもよい。例えば、第1の磁気センサ41からの第1の電圧信号V1sの第1の電圧V1から第2の磁気センサ42からの第2の電圧信号V2sの第2の電圧V2を減算した値(V1−V2)と、操舵トルクTとの関係を示すマップをROM12に記憶しておき、出力部253は、このマップに、第1の電圧V1から第2の電圧V2を減算した値(V1−V2)を代入することにより操舵トルクTを算出する。あるいは、第1の電圧V1から第2の電圧V2を減算した値(V1−V2)と操舵トルクTとの関係を示す関数を組み込んでおき、出力部253は、この関数に第1の電圧V1から第2の電圧V2を減算した値(V1−V2)を代入して操舵トルクTを算出する。そして、出力部253は、算出した操舵トルクTを電気信号に変換したトルク信号Tdを目標電流算出部220へ出力してもよい。
かかる場合においても、出力部253は、磁気センサ40のいずれか一方のセンサに故障が生じている場合には、故障が生じていないセンサからの出力値に基づいて上記補助制御処理を行うとよい。
【符号の説明】
【0087】
10…制御装置、20…トルク検出装置、21…磁石、30…ヨーク、40…磁気センサ、41…第1の磁気センサ、42…第2の磁気センサ、100…電動パワーステアリング装置、101…ステアリングホイール(ハンドル)、110…電動モータ、220…目標電流算出部、230…制御部、250…トルク値設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回転軸と第2の回転軸とを連結するトーションバーと、
前記第1の回転軸または前記第2の回転軸に駆動力を付与する電動モータと、
前記トーションバーの捩れ量に応じた値の電気信号を出力する第1のセンサおよび第2のセンサを有し、前記第1の回転軸と前記第2の回転軸との相対回転角度を検出する相対角度検出手段と、
前記相対角度検出手段の故障を検出する故障検出手段と、
前記電動モータに供給する目標電流を設定し、設定した目標電流を当該電動モータに供給するように制御するモータ制御手段と、
を備え、
前記故障検出手段は、前記モータ制御手段が前記電動モータに予め定められた規定の目標電流を供給するよう制御した場合の前記第1のセンサおよび前記第2のセンサの出力値に基づいて当該第1のセンサおよび当該第2のセンサの内、故障が生じているセンサを特定することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記故障検出手段は、予め定められた所定期間における前記第1のセンサの出力値の変化量の積算値と前記第2のセンサの出力値の変化量の積算値とを比較することにより故障が生じているセンサを特定することを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記相対角度検出手段の前記第1のセンサの出力値と前記第2のセンサの出力値とは負の相関関係を示し、
前記故障検出手段は、前記第1のセンサの出力値の変化量の絶対値の積算値と前記第2のセンサの出力値の変化量の絶対値の積算値とを比較することにより故障が生じているセンサを特定することを特徴とする請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記故障検出手段は、前記相対角度検出手段の前記第1のセンサの出力値と前記第2のセンサの出力値との合計値が予め定められた第1の所定値以上である場合であって、当該第1のセンサの出力値の変化量の絶対値の積算値である第1の積算値が当該第2のセンサの出力値の変化量の絶対値の積算値である第2の積算値よりも大きい場合には当該第1のセンサに故障が生じていると判定し、当該第2の積算値が当該第1の積算値よりも大きい場合には当該第2のセンサに故障が生じていると判定することを特徴とする請求項3に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記故障検出手段は、前記相対角度検出手段の前記第1のセンサの出力値と前記第2のセンサの出力値との合計値が予め定められた第2の所定値以下である場合であって、当該第1のセンサの出力値の変化量の絶対値の積算値である第1の積算値が当該第2のセンサの出力値の変化量の絶対値の積算値である第2の積算値よりも小さい場合には当該第1のセンサに故障が生じていると判定し、当該第2の積算値が当該第1の積算値よりも小さい場合には当該第2のセンサに故障が生じていると判定することを特徴とする請求項3に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
第1の回転軸と第2の回転軸とを連結するトーションバーと、当該第1の回転軸または当該第2の回転軸に駆動力を付与する電動モータと、当該トーションバーの捩れ量に応じた値の電気信号を出力する第1のセンサおよび第2のセンサを有して当該第1の回転軸と当該第2の回転軸との相対回転角度を検出する相対角度検出手段と、当該電動モータに供給する目標電流を設定し、設定した目標電流を当該電動モータに供給するように制御するモータ制御手段と、を備えた電動パワーステアリング装置における当該相対角度検出手段の故障を検出する故障検出装置であって、
前記モータ制御手段が前記電動モータに予め定められた規定の目標電流を供給するよう制御した場合の前記第1のセンサおよび前記第2のセンサの出力値に基づいて当該第1のセンサおよび当該第2のセンサの内、故障が生じているセンサを特定することを特徴とする故障検出装置。
【請求項7】
第1の回転軸と第2の回転軸とを連結するトーションバーと、当該第1の回転軸または当該第2の回転軸に駆動力を付与する電動モータと、当該トーションバーの捩れ量に応じた値の電気信号を出力する第1のセンサおよび第2のセンサを有して当該第1の回転軸と当該第2の回転軸との相対回転角度を検出する相対角度検出手段と、当該電動モータに供給する目標電流を設定し、設定した目標電流を当該電動モータに供給するように制御するモータ制御手段と、を備えた電動パワーステアリング装置における当該相対角度検出手段の故障を検出する故障検出方法であって、
前記モータ制御手段が前記電動モータに予め定められた規定の目標電流を供給するよう制御した場合の前記第1のセンサおよび前記第2のセンサの出力値に基づいて当該第1のセンサおよび当該第2のセンサの内、故障が生じているセンサを特定することを特徴とする故障検出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2012−111335(P2012−111335A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261497(P2010−261497)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【Fターム(参考)】