説明

電動パワーステアリング装置

【課題】減速比の設計自由度を向上させると共に、高出力化、且つ小型化が可能なラックアシスト式電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】ラックアシスト式電動パワーステアリング装置は、電動モータ34と、ボールねじ機構33との間に配置されて、ラック軸31、電動モータ34、およびボールねじ機構33と同軸上に組み込まれる減速機32を有する。減速機32は、二対のトロコイド系波形状溝によって構成され、電動モータ34を収容するモータハウジング30B内に組みつけられるボール減速機である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラックアシスト式電動パワーステアリング装置に関し、より詳細には、自動車等の車両の操舵力を電動モータで助力するラックアシスト式電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の操舵系では、電動モータを動力源として操舵アシストを行なう電動パワーステアリング装置(Electric Power Steering、以下EPSとも記す)が広く採用されている。EPSは、電動モータの電源に車載バッテリを用いるために、直接的なエンジンの駆動損失が無く、また電動モータが操舵アシスト時にのみに起動されるため走行燃費の低下も抑えられる他、電子制御が極めて容易に行える等の特長がある。
【0003】
一方、乗用車用のステアリングギヤとしては、高剛性かつ軽量であること等から、現在ではラック&ピニオン式が主流となっている。そして、ラック&ピニオン式ステアリングギヤ用のEPSとしては、ステアリングシャフトやピニオン自体を駆動するべくコラム側部に電動モータを配置したコラムアシスト式等の他、電動式のボールねじ機構によりラック軸を駆動するラックアシスト式も用いられている。ラックアシスト式EPSでは、アシスト力がピニオンとラックとの噛合面に作用しないため、摩耗や変形の要因となる両部材間の接触面圧が比較的小さくなる。
【0004】
ラックアシスト式EPSでは、ラック軸に形成されたボールねじ軸の雄ねじ溝と、ボールナットに形成された雌ねじ溝とが、多数個の循環ボール(鋼球)を介して係合しており、ラック軸と同軸あるいは別軸に配置された電動モータによってボールナットが回転駆動され、これにより、ラック軸が軸方向に移動する。また、別軸式のラックアシスト式EPSにおける電動モータとボールナットとの間の動力伝達方法としては、ギヤ式、タイミングベルト式等が一般的である。
【0005】
電動モータがラック軸と同軸に配置されたラックアシスト式EPSでは、減速機を設けずに電動モータが直接ボールナットを駆動する場合、モータを高トルク型にする必要があり、ベルト減速等を用いる別軸式のラックアシスト式EPSと比べ、電動モータが大型化してコスト高になるという課題がある。
【0006】
このため、同軸式のラックアシスト式EPSとしては、ラック軸と、操舵補助用の電動モータと、ボールナットの回転運動を直線運動に変換してラック軸に伝達するボールねじ機構と、電動モータの回転力をボールナットに伝達する転動ボール形差動減速機とを同軸上に配置して、電動モータの突き出しを小さくすると共に、伝達トルクを高めるようにしたものが考案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
特許文献1に記載のEPS100は、図9および図10に示すように、ラック歯101が形成されたラック軸102と、ラック軸102の周りに同軸上に配置された電動モータ103と、ラック軸102の周りに同軸上に配置されて電動モータ103の回転力をラック軸102の軸方向への移動力に変換する動力変換機構104と、電動モータ103および動力変換機構104間においてラック軸102の周りに同軸上に配置された転動ボール形差動減速機105とを備える。
【0008】
動力変換機構104は、ラック軸102の外周面に設けられた螺旋溝106と、螺旋溝106に係合する複数のボール107と、回転可能且つ軸方向移動が拘束されて、ボール107を保持する保持環108を備えるボールねじ機構である。また、転動ボール形差動減速機105は、電動モータ103のロータ109に形成された偏心筒111に公転可能に支持される入力環112と、入力環112の一方の側面に対向配置されてボールねじ機構の保持環108に連結される出力部材113と、入力環112の他方の側面に対向配置される静止部材114とを備える。
【0009】
入力環112および出力部材113の互いに対向する面には、それぞれハイポサイクロイド曲線の案内溝115、エピサイクロイド曲線の案内溝116が形成されており、両案内溝115、116間に複数の転動ボール117が保持される。また、入力環112および静止部材114の互いに対向する面には、それぞれ環状の凹部(図示せず)と複数の凹部118が形成されており、複数の転動ボール119が凹部118に係合して転動ボール形差動減速機105が構成されている。
【0010】
入力環112および出力部材113に形成された一対のサイクロイド系波形状の案内溝115、116によって、公転する入力環112に自転力を発生させると共に、転動ボール117によって入力環112の公転によるラジアル方向への変位を吸収し、入力環112の自転力を出力部材113に伝達している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−261048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に開示されているEPS100の転動ボール形差動減速機105によると、減速比が制約されるので設計自由度が得難いという問題点がある。例えば、減速比を小さく設定するには,波形状溝間に入れる転動ボールの数を減らす必要があり、このためには、係合する転動ボールのピッチ円直径を小さくするか、転動ボールの間隔を離間させる必要がある。しかし、転動ボール形差動減速機がラックアシスト式EPSに用いられる場合、ラック軸が転動ボール形差動減速機中心を貫通するため、係合する転動ボールのピッチ円直径を小さくすることは困難である。また、転動ボールの間隔を確保するためには、保持器が必要になり、コスト的に不利となる。更に、転動ボールの球数を減らすことによって、面圧が増大し、それに伴って耐久性が低下する虞がある。
【0013】
逆に、減速比を大きく設定するには、転動ボールの数を増やす必要があるため、係合する転動ボールのピッチ円直径が大きくなる。従って、ラックアシスト式EPSの外形も大きくなって、車両搭載性が低下する問題があり、改善の余地があった。
【0014】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、減速比の設計自由度を向上させると共に、高出力化、且つ小型化が可能なラックアシスト式電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1)雄ねじ溝が設けられているラック軸と、雌ねじ溝が設けられ前記ラック軸に同軸上に配置されているボールナットと、前記雄ねじ溝と前記雌ねじ溝間に設けられているボールとによって構成されるボールねじ機構と、前記ラック軸に同軸に配置された電動モータと、前記電動モータと前記ラック軸に同軸上に配置された減速機と、を備え、前記モータの駆動力を前記減速機を介して伝達し、前記ボールねじ機構を構成する前記ボールナットを回転駆動することで前記ラック軸を軸線方向に移動させるラックアシスト式電動パワーステアリング装置において、
前記減速機は、二対のトロコイド系波形状溝を備えたボール減速機であり、
前記ボール減速機は、前記電動モータを収容するモータハウジング内に組みつけられることを特徴とするラックアシスト式電動パワーステアリング装置。
(2)前記ボール減速機が、前記モータハウジングに嵌合固定された静止部材と、前記電動モータのロータに設けられた偏心円筒部に自転可能に支持された入力回転部材と、前記モータハウジングに自転可能に支持された出力回転部材と、を備え、
前記静止部材の内径が、前記ロータを支持する第1の軸受の外径よりも小さいことを特徴とする(1)に記載のラックアシスト式電動パワーステアリング装置。
(3)前記モータハウジングの内周面に設けられた雌ねじ部に螺合する予圧ナットによって、前記出力回転部材を前記モータハウジングに対し自転可能に支持する第2の軸受を介して前記ボール減速機に予圧を付与することを特徴とする(2)に記載のラックアシスト式電動パワーステアリング装置。
(4)前記モータハウジングは、鋼製の円筒状ハウジングを内嵌しており、
前記円筒状ハウジングの内周面に予圧ナット螺合用雌ねじが設けられていることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載のラックアシスト式電動パワーステアリング装置。
(5)雄ねじ溝が設けられているラック軸と、雌ねじ溝が設けられ前記ラック軸に同軸上に配置されているボールナットと、前記雄ねじ溝と前記雌ねじ溝間に設けられているボールとによって構成されるボールねじ機構と、前記ラック軸に同軸に配置された電動モータと、前記電動モータと前記ラック軸に同軸上に配置された減速機と、を備え、前記モータの駆動力を前記減速機を介して伝達し、前記ボールねじ機構を構成する前記ボールナットを回転駆動することで前記ラック軸を軸線方向に移動させるラックアシスト式電動パワーステアリング装置において、
前記ボール減速機の出力部とボールナットがトルク伝達可能、且つ、軸方向に相対変位可能に接続されていることを特徴とするラックアシスト式電動パワーステアリング装置。
(6)前記ボール減速機の出力部とボールナットがトルク伝達可能、且つ、軸方向に相対変位可能に接続されていることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載のラックアシスト式電動パワーステアリング装置。
(7)前記ボールナットには、トルク伝達部が一体又は別体に設けられ、
前記出力回転部材の内周面と前記トルク伝達部の外周面にてトルク伝達がなされ、
前記出力回転部材の内周面のトルク伝達領域と外周面の軸受嵌合領域とが軸方向でオーバーラップしていることを特徴とする(5)又は(6)に記載のラックアシスト式電動パワーステアリング装置。
(8)前記ボール減速機の出力部と前記ボールナットの接続部には弾性体が介装されていることを特徴とする(5)乃至(7)のいずれかに記載のラックアシスト式電動パワーステアリング装置。
(9)前記ボールナットは複列アンギュラ玉軸受により自転可能に支持され、
前記複列アンギュラ玉軸受の内輪又は外輪の軸方向両端面には、弾性体が介装されていることを特徴とする(5)乃至(8)のいずれかに記載のラックアシスト式電動パワーステアリング装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明の(1)に記載のラックアシスト式電動パワーステアリング装置によれば、電動モータおよびラック軸に同軸上に配置された減速機が、二対のトロコイド系波形状溝の組み合わせで構成されるボール減速機であるので、減速比の設定自由度が向上し、EPSの高出力化、小型化が可能となる。例えば,ボール減速機の減速比を大きく設定することで、電動モータを高回転低トルク型として電動モータの小型化が可能となる。
【0017】
また、従来のラックアシスト式EPSでは、電動モータとボールねじ機構の間に減速機を用いないため、ユニットとして減速比をかせぐために、ボールねじのリードを5〜7mm程度に設定するのが一般的である。これに対し、本発明のEPSでは、ボール減速機の減速比を任意に設定可能であるので、ボールねじのリードを大きくすることが可能となる。これにより、任意の転舵速度におけるボールナットの回転数を抑えることができ、静音化が図れる。また、ボール減速機の寸法を大きく変更することなく減速比を変更することが可能なため、電動モータ、ボールねじの諸元を変更することなく、ラックアシスト式EPSの諸元を変更することができ、多くの部品の共通化が図れ、コスト低減が可能となる。
【0018】
また、ボール減速機は、電動モータを収容するモータハウジング内に組みつけられるので、電動パワーステアリング装置の組立工程において、モータハウジングにボール減速機を組みつけたサブユニットの状態で、電動モータを所定の回転速度で駆動するのに必要な電力を測定することで、最適な減速機予圧量の調整が可能となる。また、ボール減速機の出力部にトルクメータのついた負荷装置を接続することで、減速機性能を確認することが可能となる。
【0019】
本発明の(2)に記載のラックアシスト式電動パワーステアリング装置によれば、ボール減速機が、ハウジングに嵌合固定された静止部材、電動モータのロータに設けられた偏心円筒部に公転可能に支持された入力回転部材、およびモータハウジングに自転可能に支持された出力回転部材を備えて構成されるので、ボール減速機をコンパクトにラック軸と同軸上に配置することができ、EPSの小型化が可能となり車両搭載性が向上する。
【0020】
また、静止部材の内径が、ロータを支持する第1の軸受の外径よりも小さいので、静止部材で第1の軸受を押さえることができ、これにより第1の軸受の脱落を防止できる。
【0021】
本発明の(3)に記載のラックアシスト式電動パワーステアリング装置によれば、モータハウジングの内周面に設けられた雌ねじ部に嵌合する予圧ナットの締込み量によりボール減速機の予圧量の調整がなされるが、第2の軸受の外輪を介して予圧を付与することで予圧ナット締込みにより出力回転部材が連れ回ることがなく、容易且つ確実に予圧の調整が可能となる。
【0022】
本発明の(4)に記載のラックアシスト式電動パワーステアリング装置によれば、モータハウジングは、鋼製の円筒状ハウジングを内嵌しており、円筒状ハウジングの内周面に予圧ナット螺合用雌ねじが設けられているので、モータハウジングとボール減速機との線膨張係数の差によるボール減速機の予圧変化を抑え、性能を安定させることができる。
【0023】
本発明の(5)に記載のラックアシスト式電動パワーステアリング装置によれば、電動モータおよびラック軸に同軸上に配置された減速機が、二対のトロコイド系波形状溝の組み合わせで構成されるボール減速機であるので、減速比の設定自由度が向上し、EPSの高出力化、小型化が可能となる。例えば,ボール減速機の減速比を大きく設定することで、電動モータを高回転低トルク型として電動モータの小型化が可能となる。
【0024】
また、従来のラックアシスト式EPSでは、電動モータとボールねじ機構の間に減速機を用いないため、ユニットとして減速比をかせぐために、ボールねじのリードを5〜7mm程度に設定するのが一般的である。これに対し、本発明のEPSでは、ボール減速機の減速比を任意に設定可能であるので、ボールねじのリードを大きくすることが可能となる。これにより、任意の転舵速度におけるボールナットの回転数を抑えることができ、静音化が図れる。また、ボール減速機の寸法を大きく変更することなく減速比を変更することが可能なため、電動モータ、ボールねじの諸元を変更することなく、ラックアシスト式EPSの諸元を変更することができ、多くの部品の共通化が図れ、コスト低減が可能となる。
【0025】
また、ボール減速機の出力部とボールナットがトルク伝達可能、且つ、軸方向に相対変位可能に接続されているので、電動パワーステアリング装置による推力アシストに伴いボールナットに生じる微小変位がボール減速機の出力部に伝わることがなく、ボール減速機の予圧が安定し、所定の性能を確保することができる。
【0026】
本発明の(6)に記載のラックアシスト式電動パワーステアリング装置によっても、電動パワーステアリング装置による推力アシストに伴いボールナットに生じる微小変位がボール減速機の出力部に伝わることがなく、ボール減速機の予圧が安定し、所定の性能を確保することができる。
【0027】
本発明の(7)に記載のラックアシスト式電動パワーステアリング装置によれば、出力回転部材の内周面のトルク伝達領域と外周面の軸受嵌合領域とが軸方向でオーバーラップしているので、電動パワーステアリング装置による推力アシストに伴うボールナットの揺動を抑え、ボール減速機の噛合いを良好に保つことができる。
【0028】
本発明の(8)に記載のラックアシスト式電動パワーステアリング装置によれば、ボール減速機の出力部とボールナットの接続部には弾性体が介装されているので、ボールナットの傾きを吸収し、ボール減速機の出力部の姿勢を安定させることができる。
また、ストロークエンドに突き当てた際にボールナットに入力される衝撃トルクを吸収しボールねじ機構の破損を防止するとともに、反転時や振動の入力による打音を抑制することができる。
【0029】
本発明の(9)に記載のラックアシスト式電動パワーステアリング装置によれば、ボールナットを支持する複列アンギュラ玉軸受の内輪又は外輪の軸方向両端面には弾性体が介装されているので、ボール減速機の予圧に影響を与えることなく、反転時などにボールねじから発生するラトル音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態のラックアシスト式EPSの縦断面図である。
【図2】図1に示すラックアシスト式EPSの要部拡大図である。
【図3】接続部の構成を示す部分斜視図である。
【図4】図3に示す接続部に弾性体を介装させた状態を示す部分斜視図である。
【図5】図1に示すボール減速機の分解斜視図である。
【図6】第2ハウジングにボール減速機を組みつけたサブユニットを示す断面図である。
【図7】変形例に係るラックアシスト式EPSの要部拡大図である。
【図8】変形例に係るラックアシスト式EPSの要部拡大図である。
【図9】従来のEPSの要部断面図である。
【図10】図9に示す転動ボール形差動減速機の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係るラックアシスト式電動パワーステアリング装置(ラックアシスト式EPS)の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0032】
図1に示すように、ラックアシスト式EPS10は、ハウジング30、ラック軸31、ボール減速機32、ボールねじ機構33、電動モータ34、およびピニオン部35を備える。ハウジング30は、ボールねじ機構33を収容する第1ハウジング30Aと、電動モータ34とボール減速機32を収容する第2ハウジング(モータハウジング)30Bとからなり、ラック軸31を軸方向に移動可能、且つ回転を阻止した状態で支持する。ラック軸31には、ボール減速機32、ボールねじ機構33、および電動モータ34が同軸上に配置されており、ハウジング30の両側から突出する両端には、タイロッド(図示せず)が連結される。
【0033】
ラック軸31には、ピニオン部35に内蔵されるラック&ピニオン機構を構成するラック歯38と、ボールねじ機構33を構成する雄ねじ部39が設けられている。ピニオン部35は、ステアリングホイール(図示せず)からの操舵力が入力される入力軸36、ピニオン(図示せず)、およびトルク検出装置37を備えており、トルク検出装置37のトーションバー(図示せず)を介して入力軸36とピニオンとが結合されている。このピニオンはラック軸31設けられたラック歯38と噛合する。
【0034】
図2に示すように、ボールねじ機構33は、ラック軸31の外周面に形成された雄ねじ部39、ラック軸31の周囲に配置され、複列アンギュラ玉軸受(以下、単に軸受と記す)40を介して回動自在、且つ軸方向移動が拘束されて第1ハウジング30Aに保持されるボールナット41、および雄ねじ部39とボールナット41の内周面に形成された雌ねじ部42との間に介装される複数のボール43とを備え、ラック軸31と同軸上に配置されている。ボールナット41の右側端部には別体のトルク伝達部80が嵌合、溶接などにより固設され、トルク伝達部80の左側端部はエンドデフレクタタイプのボール43の抜け止めを兼ねている。なお、トルク伝達部80はボールナット41と一体成形されていてもよい。軸受40の内輪44は、ボールナット41に螺合するナット45によってボールナット41に固定され、また、軸受40の外輪46は、第1ハウジング30Aに螺合するナット47によって第1ハウジング30Aに固定されている。
【0035】
電動モータ34は、第2ハウジング30B内に固定されるステータ50と、該ステータ50の内周面およびラック軸31の外周面間に回転可能に支持されるロータ51と、を備え、ラック軸31と同軸上に配置されたブラシレスモータである。ステータ50から軸方向に突出するロータ51の両端は、軸受52、53(図1参照)によって第2ハウジング30Bに回転自在に支持されている。
【0036】
ボール減速機32は、電動モータ34とボールねじ機構33との間に、ラック軸31および電動モータ34と同軸上に配置されている。ボール減速機32は、ロータ51の一端に、ロータ51の軸心に対して偏心して形成された偏心円筒部61と、該偏心円筒部61に軸受62を介して自転可能に支持された入力回転部材63と、ボールナット41とトルク伝達可能に、入力回転部材63の一側面に対向配置された環状の出力回転部材64と、第2ハウジング30Bに固定されて入力回転部材63の他側面に対向配置された環状の静止部材65とを備える。
【0037】
静止部材65は、入力回転部材63と対向する側面と反対側の側面がロータ51を支持する軸受(第1の軸受)52と対向し、静止部材65の内径が、ロータ51を支持する軸受52の外径よりも小さくなるように設定されている。そして、静止部材65は、軸受52の外輪52aと当接し、内輪52bの外径より大きな位置から内側に向けて切り欠き65aが形成されて内輪52bと接触しないように配設され、軸受52の脱落を防止している。
【0038】
出力回転部材64は、左側端部に円筒状の出力部82を有し、出力部82の外周面には出力回転部材64を第2ハウジング30Bに自転可能に支持する軸受83(第2の軸受)が嵌合配置され、出力部82の内周面にはボールナット41のトルク伝達部80が係合している。出力部82の外周面の軸受嵌合領域と内周面のトルク伝達領域は軸方向でオーバーラップしている。出力回転部材64の出力部82とボールナット41のトルク伝達部80との接続部85は、インボリュートスプライン又はインボリュートセレーション結合され、トルク伝達可能であり、且つ、トルク伝達中においても軸方向の摺動(相対変位)が可能な摩擦係数に設定されている。図3(a)は、出力回転部材64の出力部82とボールナット41のトルク伝達部80の接続部85がインボリュートスプライン結合した場合を例示したものである。
【0039】
接続部85において、出力回転部材64の出力部82とボールナット41のトルク伝達部80間に樹脂コート層を設けてもよい。これにより、金属同士の接触を回避して反転時や振動の入力による打音を抑制することができる。また、接続部85において、図3(b)に示すように、出力回転部材64の出力部82に溝86を形成し、ボールナット41のトルク伝達部80に形成した突起部87を係合させてもよい。溝86の側面と突起部87は線接触のため、トルク伝達面積が小さく、摺動力が軽微となる。さらに、軸方向の嵌合長さが短く、ボールナット41の傾きを出力回転部材64に伝達しにくくすることができる。また、図3(c)に示すように、ボールナット41のトルク伝達部80と出力回転部材64の出力部82間に溝88を形成しボール89を介在させてもよい。摺動ではなく転がりにて軸方向変位を許容するため、より円滑な軸方向変位が可能となる。他にも、凹凸嵌合やキーなどにより接続してもよい。
【0040】
また、図4(a)〜(c)に示すように、出力回転部材64の出力部82とボールナット41のトルク伝達部80間に弾性体81を介装させてもよい。弾性体81によりボールナット41の傾きを吸収し、出力回転部材64の姿勢を安定させることができる。微小な相対変位であれば弾性体81の弾性変形で軸方向変位を許容することができる。さらに、ストロークエンドに突き当てた際にボールナット41に入力される衝撃トルクを吸収し、ボールねじ機構33の破損を防止するとともに、反転時や振動の入力による打音を抑制することができる。なお、図4(a)は図3(a)の接続部85に対応し、図4(b)は図3(b)の接続部85に対応し、図4(c)は図3(c)の接続部85に対応している。
【0041】
図2に戻って、軸受83は、玉軸受又はアンギュラ玉軸受であり、内輪83aが出力回転部材64の外周面に嵌合固定され、外輪83bが第2ハウジング30Bに軸方向に変位可能に隙間ばめされている。そして、軸受83の左側端面には第2ハウジング30Bの内周面に設けられた雌ねじ部に螺合する予圧ナット90が配設され、予圧ナット90の締込みにより外輪83bに対して予圧が付与されるとともに、ボール減速機32に予圧が付与される。なお、予圧付与方法はこれに限らず、定位置予圧又は定圧予圧が付与されていればよい。
【0042】
図2及び図5に示すように、入力回転部材63の一側面(出力回転部材64側)には、エピトロコイド曲線の波形状溝67(図2参照。)が形成され、出力回転部材64の入力回転部材63側の側面には、ハイポトロコイド曲線の波形状溝68が形成されている。これら両波形状溝67、68は、係合する転動ボール71のピッチ円直径D1に対応して互いに等しい径方向位置に配置される。
【0043】
エピトロコイドの波形状溝67の波数は、ハイポトロコイド曲線の波形状溝68の波数よりも2個だけ少ない。本実施例の場合には、ハイポトロコイド形状である出力回転部材64の波形状溝68の波数をNとし、エピトロコイド形状である入力回転部材63の一側面の波形状溝67の波数を「N−2」としている。そして、入力回転部材63の波形状溝67と、出力回転部材64の波形状溝68との間には、「N−1」個の転動ボール71が配置されている。
【0044】
また、入力回転部材63の他側面(静止部材65側)には、ハイポトロコイド曲線の波形状溝69が形成され、静止部材65の入力回転部材63側の側面には、エピトロコイド曲線の波形状溝70が形成されている。両波形状溝69、70は、係合する転動ボール72のピッチ円直径D2に対応して互いに等しい径方向位置に配置される。
【0045】
エピトロコイドの波形状溝70の波数は、ハイポトロコイド曲線の波形状溝69の波数よりも2個だけ少ない。本実施例の場合には、ハイポトロコイド形状である入力回転部材63の他側面の波形状溝69の波数をMとし、エピトロコイド形状である静止部材65の波形状溝70の波数を「M−2」としている。そして、入力回転部材63の波形状溝69と、静止部材65の波形状溝70との間には、「M−1」個の転動ボール72が配置されている。
【0046】
なお、エピトロコイド曲線とは、所定の径寸法の大径円に、小径円を外接させた状態で転動させたときに小径円の一点が描く曲線である。また、ハイポトロコイド曲線とは、所定の径寸法の大径円に、小径円を内接させた状態で転動させたときに小径円の一点が描く曲線である。
【0047】
尚、二対の波形状溝67、68、および69、70の断面形状を、それぞれゴシックアーチ状として、波形状溝67、68と転動ボール71との接触部、および波形状溝69、70と転動ボール72との接触部の滑りの要素を大きく設定するようにしてもよい。
【0048】
静止部材65、入力回転部材63、および出力回転部材64間には、上述したように、予圧ナット90によって、軸受83を介して予圧が付与されている。これによって、波形状溝67、68と転動ボール71との転がり接触部、および波形状溝69、70と転動ボール72の転がり接触部が、がたつくことはない。
【0049】
このように構成されたボール減速機32においては、入力回転部材63の公転に伴って波形状溝67、68と転動ボール71、および波形状溝69、70と転動ボール72との係合位置が変化することにより、出力回転部材64が減速された自転運動を行う。このときの減速比は、波形状溝67と68、および波形状溝69と70の波数によって決まるので、減速比を任意に設定可能である。
【0050】
尚、入力回転部材63の一側面と出力回転部材64、および入力回転部材63の他側面と静止部材65にそれぞれ形成される波形状溝67、68、69、70の形状(エピトロコイド、ハイポトロコイド)は、上記した形状と互いに逆であってもよい。
【0051】
入力回転部材63の波形状溝67の波数Nおよび波形状溝69の波数Mは、N<Mに設定されており、これにより波形状溝67、68に係合する転動ボール71のピッチ円直径D1<波形状溝69、70に係合する転動ボール72のピッチ円直径D2となっている。このように、二対の波形状溝67、68、および69、70に係合する転動ボール71,72のピッチ円直径D1、D2を異ならせて(N≠M)、任意の減速比を得ることができる。
【0052】
図6は、第2ハウジング30Bに電動モータ34とボール減速機32を組みつけたサブユニット20を示す断面図である。このサブユニット20は、第2ハウジング30Bの一方側端面から出力回転部材64の出力部82がアクセス可能となっている。従って、ラックアシスト式EPS10の組立工程において、電動モータ34を所定の回転速度で駆動するのに必要な電力を測定することで、最適な減速機予圧量を調整することができる。また、出力回転部材64の出力部82に、トルクメータのついた負荷装置を接続することで、減速機性能を確認することができる。
本実施形態の作用を説明する。図1に示すように、不図示のステアリングホイールが操作されると、入力軸36にその回転が伝達され、トーションバーをねじりながらこれを介してピニオンを回転させる。ピニオンの回転はラック歯38が噛合するラック軸31に伝達されてラック軸31を軸方向に移動させる。
【0053】
一方、トーションバーのねじり量は、トルク検出装置37によって検出され、ねじり量に対応する出力信号が不図示の制御装置に入力され、電動モータ34が制御装置からの回転指令に基づいて回転する。電動モータ34(ロータ51)の回転は、ボール減速機32の偏心円筒部61に自転可能に支持された入力回転部材63を公転させ、この入力回転部材63の公転及び自転に伴って波形状溝67、68と転動ボール71、および波形状溝69、70と転動ボール72との係合位置が変化することにより、出力回転部材64が減速された自転運動を行う。
【0054】
出力回転部材64の回転は、出力回転部材64の出力部82とボールナット41のトルク伝達部80の結合によりボールナット41を回転させるので、ボールねじ機構33の作用によりラック軸31が軸方向に移動する。ラック軸31の移動方向は、ピニオンによって駆動される方向と同一方向であり、これによってピニオンがラック軸31を動かそうとする力を補助する。
【0055】
上記したように、本実施形態のラックアシスト式EPS10によれば、電動モータ34およびラック軸31に同軸上に配置された減速機が、二対のトロコイド系波形状溝67、68、および69、70の組み合わせで構成されるボール減速機32であるので、減速比の設定自由度が向上し、EPS10の高出力化や、小型化が可能となる。また、ボール減速機32の減速比を任意に設定可能であるので、ボールねじ機構33のリードを大きくしてボールナット41の回転数を抑え、これによって静音化が図れる。また、ボール減速機32の外形寸法を大きく変更することなく、減速比を変更することが可能なため、電動モータ34、ボールねじの機構33の諸元を変更することなく、ラックアシスト式EPSの諸元を変更することが可能となって多くの部品の共通化が可能となり、コストを削減することができる。
【0056】
また、ボール減速機32は、電動モータ34を収容する第2ハウジング30B内に組みつけられるので、ラックアシスト式EPS10の組立工程において、第2ハウジング30Bにボール減速機32を組みつけたサブユニット20の状態で、電動モータ34を所定の回転速度で駆動するのに必要な電力を測定することで、最適な減速機予圧量の調整が可能となる。また、ボール減速機32の出力部82にトルクメータのついた負荷装置を接続することで、減速機性能を確認することが可能となる。
【0057】
また、ボール減速機32が、第2ハウジング30Bに嵌合固定された静止部材65、電動モータ34のロータ51に設けられた偏心円筒部61に公転可能に支持された入力回転部材63、および第2ハウジング30Bに自転可能に支持された出力回転部材64を備えて構成されるので、ボール減速機32をコンパクトにラック軸31と同軸に配置することができ、EPSの小型化が可能となり車両搭載性が向上する。
【0058】
また、静止部材65の内径が、ロータ51を支持する軸受52の外径よりも小さいので、静止部材65で軸受52を押さえることができ、これにより軸受52の脱落を防止できる。
【0059】
また、第2ハウジング30Bの内周面に設けられた雌ねじ部に嵌合する予圧ナット90の締込み量によりボール減速機32の予圧量の調整がなされるが、軸受83の外輪83bを介して予圧を付与することで予圧ナット90の締込みにより出力回転部材64が連れ回ることがなく、容易且つ確実に予圧の調整が可能となる。
【0060】
また、ボール減速機32の出力部82とボールナット41がトルク伝達可能、且つ、軸方向に相対変位可能に接続されているので、ラックアシスト式EPS10による推力アシストに伴いボールナット41に生じる微小変位がボール減速機32の出力部82に伝わることがなく、ボール減速機32の予圧が安定し、所定の性能を確保することができる。
【0061】
また、出力回転部材64の内周面のトルク伝達領域と外周面の軸受嵌合領域とが軸方向でオーバーラップしているので、ラックアシスト式EPS10による推力アシストに伴うボールナット41の揺動を抑え、ボール減速機32の噛合いを良好に保つことができる。
【0062】
また、ボール減速機32の出力部82とボールナット41の接続部85には弾性体81が介装されているので、ボールナット41の傾きを吸収し、ボール減速機32の出力部82の姿勢を安定させることができる。また、さらに、電動モータ34と同軸上にボール減速機32を接続すると、イナーシャ(慣性)が大きくなり、ストロークエンドに突き当てた際にボールナット41に入力される衝撃トルクが大きくなる傾向があるが、弾性体81により衝撃トルクを吸収しボールねじ機構33の破損を防止するとともに、反転時や振動の入力による打音を抑制することができる。
【0063】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、図7に示すように、第2ハウジング30B内にさらに鋼製の円筒状ハウジング91を設け、その内周にボール減速機32を組み付けてもよい。これにより、静止部材65は円筒状ハウジング91に嵌合固定され、出力回転部材64は円筒状ハウジング91に自転可能に支持され、予圧ナット90が円筒状ハウジング91の内周面に設けられた雌ねじ部に螺合することにより、外輪83bに対して予圧が付与されるとともに、ボール減速機32に予圧が付与される。通常、ハウジング30はアルミニウム材から構成し、波形状溝の表面に硬さが必要となるボール減速機32は鋼材から構成されるが、ラックアシスト式EPS10の使用温度域は広いため線膨張係数の差により、ボール減速機32内の予圧量が変化するおそれがあるが、鋼製の円筒状ハウジング91を鋼製とすることで、ボール減速機32の予圧変化を抑え、ラックアシスト式EPS10の性能を安定させることができる。
【0064】
また、図8に示すように、ボールナット41を支持する軸受40の外輪46の軸方向両端面に、環状の弾性体92を介装してもよい。これにより、ボールナット41が一定距離だけ軸方向に変位可能となるので、ボール減速機32の予圧に影響を与えることなく、路面からの振動の入力時などにボールねじ機構33から発生するラトル音を低減することができる。なお、本変形例では、軸受40の外輪46に弾性体92を設けたが、これに限らず軸受40の内輪44の軸方向両端面に弾性体92を設けてもよい。
【0065】
また、本実施形態においては、入力回転部材63の波形状溝67の波数Nおよび波形状溝69の波数Mは、N<Mとして説明したが、波数N、Mはこれに限定されず、任意(N≧M)に設定することができ、これによって減速比も任意に設定することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 ラックアシスト式電動パワーステアリング装置(ラックアシスト式EPS)
30 ハウジング
30A 第1ハウジング
30B 第2ハウジング(モータハウジング)
31 ラック軸
32 ボール減速機
33 ボールねじ機構
34 電動モータ
39 雄ねじ部
40 軸受(複列アンギュラ玉軸受)
41 ボールナット
42 雌ねじ部
43 ボール
52 軸受(第1の軸受)
61 偏心円筒部
63 入力回転部材
64 出力回転部材
65 静止部材
67,68,69,70 トロコイド系波形状溝
80 トルク伝達部
81 弾性体
82 出力部
83 軸受(第2の軸受)
85 接続部
90 予圧ナット
91 円筒状ハウジング
92 弾性体
D1 トロコイド系波形状溝に係合する転動ボールのピッチ円直径
D2 トロコイド系波形状溝に係合する転動ボールのピッチ円直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄ねじ溝が設けられているラック軸と、雌ねじ溝が設けられ前記ラック軸に同軸上に配置されているボールナットと、前記雄ねじ溝と前記雌ねじ溝間に設けられているボールとによって構成されるボールねじ機構と、前記ラック軸に同軸に配置された電動モータと、前記電動モータと前記ラック軸に同軸上に配置された減速機と、を備え、前記モータの駆動力を前記減速機を介して伝達し、前記ボールねじ機構を構成する前記ボールナットを回転駆動することで前記ラック軸を軸線方向に移動させるラックアシスト式電動パワーステアリング装置において、
前記減速機は、二対のトロコイド系波形状溝を備えたボール減速機であり、
前記ボール減速機は、前記電動モータを収容するモータハウジング内に組みつけられることを特徴とするラックアシスト式電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記ボール減速機が、前記モータハウジングに嵌合固定された静止部材と、前記電動モータのロータに設けられた偏心円筒部に自転可能に支持された入力回転部材と、前記モータハウジングに自転可能に支持された出力回転部材と、を備え、
前記静止部材の内径が、前記ロータを支持する第1の軸受の外径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のラックアシスト式電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記モータハウジングの内周面に設けられた雌ねじ部に螺合する予圧ナットによって、前記出力回転部材を前記モータハウジングに対し自転可能に支持する第2の軸受を介して前記ボール減速機に予圧を付与することを特徴とする請求項2に記載のラックアシスト式電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記モータハウジングは、鋼製の円筒状ハウジングを内嵌しており、
前記円筒状ハウジングの内周面に予圧ナット螺合用雌ねじが設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のラックアシスト式電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
雄ねじ溝が設けられているラック軸と、雌ねじ溝が設けられ前記ラック軸に同軸上に配置されているボールナットと、前記雄ねじ溝と前記雌ねじ溝間に設けられているボールとによって構成されるボールねじ機構と、前記ラック軸に同軸に配置された電動モータと、前記電動モータと前記ラック軸に同軸上に配置された減速機と、を備え、前記モータの駆動力を前記減速機を介して伝達し、前記ボールねじ機構を構成する前記ボールナットを回転駆動することで前記ラック軸を軸線方向に移動させるラックアシスト式電動パワーステアリング装置において、
前記ボール減速機の出力部とボールナットがトルク伝達可能、且つ、軸方向に相対変位可能に接続されていることを特徴とするラックアシスト式電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
前記ボール減速機の出力部とボールナットがトルク伝達可能、且つ、軸方向に相対変位可能に接続されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のラックアシスト式電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
前記ボールナットには、トルク伝達部が一体又は別体に設けられ、
前記出力回転部材の内周面と前記トルク伝達部の外周面にてトルク伝達がなされ、
前記出力回転部材の内周面のトルク伝達領域と外周面の軸受嵌合領域とが軸方向でオーバーラップしていることを特徴とする請求項5又は6に記載のラックアシスト式電動パワーステアリング装置。
【請求項8】
前記ボール減速機の出力部と前記ボールナットの接続部には弾性体が介装されていることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載のラックアシスト式電動パワーステアリング装置。
【請求項9】
前記ボールナットは複列アンギュラ玉軸受により自転可能に支持され、
前記複列アンギュラ玉軸受の内輪又は外輪の軸方向両端面には、弾性体が介装されていることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載のラックアシスト式電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−285000(P2010−285000A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138304(P2009−138304)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】