説明

電動作業機

【課題】駆動等の準備が整う前にキースイッチがON状態にされた場合でも誤作動を防止できる電動作業機を提供する。
【解決手段】バッテリ31を駆動源とする芝刈作業機1において、旋回レバー21・22の操作位置を検知するレバーセンサ23・24を設け、旋回レバー21・22の中立位置を検出した後にバッテリ31と走行部用モータ15・16との電気経路32bを通電する制御装置50を設けた。また、芝刈作業機1は、電動乗用機であり、座席シート5の着座を検知する着座センサ33を設け、バッテリ31と走行部用モータ15・16及び作業部用モータ28・29との電気経路32bを通電する条件に座席シート5の着座の検出を付加した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右の車輪をそれぞれ独立してモータにより駆動可能とした電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行部若しくは作業部のどちらか一方若しくは両方が電動である作業機が公知となっている。例えば、それぞれ独立に走行駆動される主駆動輪となる左右車輪と、左右車輪とは独立に走行駆動される操向輪となるキャスタ輪と、作業部としての芝刈機とを備え、旋回操作子の旋回指示入力に応じ、左右車輪の各走行駆動とキャスタ輪の走行駆動とを制御して旋回可能に構成した作業機は公知となっている(特許文献1参照)。また、走行部若しくは作業部のどちらか一方若しくは両方が電動である作業機において、スタートスイッチがOFF状態のときはバッテリと走行部との間を遮断する技術が公知となっている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−168869号公報
【特許文献2】特開2010−284064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献2における制御の場合、スタートスイッチがON状態となった場合であって、オペレータが作業しようとする意思が無い場合、例えば、駆動操作具が誤って前進若しくは後進の位置に入っていた場合や、作業機が乗用機であってオペレータが乗車していないような場合に、バッテリと走行部とが通電状態となってしまい、誤って走行部が駆動してしまう可能性があった。
また、バッテリと走行部との間のリレー回路で溶着が発生していた場合、スタートスイッチがOFF状態であってもバッテリと走行部との間が通電状態となり続け、バッテリの電力を消費し続けることがあった。
また、バッテリの充電中においては、走行部及び作業部に誤って電力が供給されて予期せぬ駆動が発生するのを防止する必要があった。
【0005】
そこで、本発明は以上の如き状況に鑑み、駆動等の準備が整う前にキースイッチがON状態にされた場合でも誤作動を防止できる電動作業機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、バッテリを電源とする電動作業機において、駆動操作具の操作位置を検知するセンサを設け、前記駆動操作具の中立位置を検出した後に前記バッテリと走行系の電動機器駆動部との電気経路を通電する手段を設けたものである。
【0008】
請求項2においては、前記電動作業機は、電動乗用機であり、操縦席の着座を検知するセンサを設け、前記バッテリと前記電動機器駆動部との電気経路を通電する条件に前記操縦席の着座の検出を付加したものである。
【0009】
請求項3においては、キースイッチがON状態で前記電動機器駆動部への電気経路を非通電にしている時に、電動機器への電圧を監視する手段を設けたものである。
【0010】
請求項4においては、前記バッテリを脱着可能なパックとし、バッテリパックの脱着を検知するセンサを設け、前記バッテリと前記電動機器駆動部との電気経路を通電する条件としてバッテリの装着を付加したものである。
【0011】
請求項5においては、前記バッテリを脱着可能なパックとし、前記バッテリの脱着を検知するセンサを設け、走行系の電動機器駆動部に非通電時に機能する電磁ブレーキを設け、前記バッテリの離脱を検知したときに走行系の電動機器駆動部とバッテリとの電気経路を非通電とする手段を設けたものである。
【0012】
請求項6においては、充電コネクタを設け、充電コネクタで受電を検知したときにバッテリと電動機器駆動部との電気経路を非通電とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
請求項1においては、駆動等の準備が整う前にキースイッチがON状態にされた場合でも誤作動を防止することができる。
【0015】
請求項2においては、駆動等の準備が整う前にキースイッチがON状態にされた場合でも誤作動を防止することができる。
【0016】
請求項3においては、リレー回路の溶着や電気経路の短絡を検知することができる。
【0017】
請求項4においては、バッテリの装着が不十分な状態での電源供給を防止できる。
【0018】
請求項5においては、バッテリの離脱時に電動機器を確実に停止できる。
【0019】
請求項6においては、充電中に電動作業機を駆動できなくすることにより、誤って駆動するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態にかかる電動作業機の平面図。
【図2】走行部用モータ及び走行駆動輪を示す斜視図。
【図3】制御装置の接続を示すブロック図。
【図4】走行部用モータ及び作業部用モータの駆動・停止制御を示すフローチャート図。
【図5】走行部用モータ及び作業部用モータの駆動・停止制御を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の電動作業機を芝刈作業機1とした実施形態を、図1、図2及び図3を用いて全体構成から説明する。なお、以下において、矢印F方向を前方向とし、矢印R方向を右方向とし、矢印L方向を左方向と規定して説明する。
【0022】
芝刈作業機1は、図1に示すように、機体フレーム2の後部左右両側に走行部としての左右の走行駆動輪11・12が配置され、機体フレーム2の前部左右両側に補助輪となるキャスタ輪13・14が配置される。前記走行駆動輪11・12とキャスタ輪13・14の間の機体フレーム2の下方に作業部として芝刈機3が配置される。機体フレーム2の上部が運転操作部4とされ、前後略中央にオペレータが着座する操縦席としての座席シート5が配置され、該座席シート5の左右両側に旋回操作及び変速操作を可能とする駆動操作具となる旋回レバー21・22や、パーキングスイッチ25(図3参照)や、キースイッチ35や、作業部スイッチ36や、図示しない作業レバーや操作スイッチ等が配置される。また、機体フレーム2の後部には、バッテリ31が設けられている。
また、座席シート5には着座センサ33が設けられている。着座センサ33は、例えば操縦者の体重を感知する歪み感知センサで構成されており、図3に示すように、制御装置50に接続されている。但し、着座センサ33は座席シート5上に操縦者が存在することを検知できればよく歪み感知センサに限定するものではない。
【0023】
また、機体フレーム2の任意位置に制御装置50が配置される。本実施形態においては、図1に示すように、制御装置50は座席シート5の下方の空間に設けられている。
【0024】
前記走行駆動輪11・12は電動機器であり、図1及び図2に示すように、それぞれ左右の走行部用モータ15・16の出力軸とギヤケース41内部の図示せぬ動力伝達機構を介して連結され、それぞれ独立して駆動可能としている。走行系の電動機器駆動部としての走行部用モータ15・16は、正逆転可能な電動モータであり、図3に示すように、制御装置50と接続され、正逆転駆動、及び、回転数を制御可能に構成されている。つまり、変速制御可能に構成している。なお、走行部用モータ15・16はホイルと一体的に構成したホイルインモータとすることも、走行部用モータ15・16の出力軸と走行駆動輪11・12の車軸との間に減速機構を配設して、走行部用モータ15・16を機体フレーム2に設ける構成とすることも可能である。
【0025】
また、走行部用モータ15・16は、通常は駆動力として用いていられているが、下り坂などでは発電機として作動させ、運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収することで制動をかける回生ブレーキとして使用することも可能である。この場合、走行部用モータ15・16によって発電された回生電力はバッテリ31に回収される。言い換えれば、回生エネルギーによってバッテリ31の充電が行われる。
【0026】
図2及び図3に示すように、前記走行部用モータ15・16の出力軸近傍、または、走行駆動輪11・12、または、減速機構には、走行駆動輪11・12の回転速度(回転数)を検知する回転速度検出手段となる回転速度センサ17・18が設けられている。該回転速度センサ17・18は制御装置50と接続されている。
【0027】
前記キャスタ輪13・14は、車輪を回転自在に支持する車軸がブラケット19・20に水平方向に支持され、該ブラケット19・20の上部から上方に支持軸が立設され、該支持軸が機体フレーム2に対して左右回転自在に支持される構成としている。よって、キャスタ輪13・14は左右方向に回転自在となっている。なお、補助輪となるキャスタ輪13・14は1輪とすることも可能であり、また、3輪以上に構成することも可能である。また、補助輪となるキャスタ輪13・14は前輪としているが、後輪とすることも可能である。つまり、走行駆動輪11・12を前輪、キャスタ輪13・14を後輪とすることもできる(図1参照)。
【0028】
前記芝刈機3は、電動機器であり、図1に示す昇降リンク機構30を介して機体フレーム2に対して昇降可能に連結されている。芝刈機3は、モアデッキ内に刈刃26・27を回転可能に配置し、該刈刃26・27を作業系の電動機器駆動部としての作業部用モータ28・29(図3参照)により回転駆動可能に構成している。図3に示すように、作業部用モータ28・29は制御装置50と接続されている。なお、芝刈機3は機体フレーム2の下方に配置しているが、機体フレーム2の前方に配置することも、機体フレーム2の後方に配置することも、機体フレーム2の側方に配置することも可能であり限定するものではない。また、刈刃はブレード式やバリカン式やリール式等限定するものではない。
【0029】
運転操作部4に設けた旋回レバー21・22は、それぞれ中立位置から前後方向に回動することにより左右対応する走行駆動輪11・12の回転方向及び回転速度を設定して、進行方向及び走行速度を変更するための手段である。具体的には、旋回レバー21・22を中立位置から前方への回動する回動角度が大きいほど、走行駆動輪11・12の前進回転速度が速くなり、芝刈作業機1の前進走行速度が速くなる。また、旋回レバー21・22を中立位置から後方へ回動する回動角度が大きくなるほど、走行駆動輪11・12の後進回転速度が速くなり、芝刈作業機1の後進走行速度が速くなる。
また、運転操作部4には、パーキングスイッチ25が設けられている(図3参照)。本実施形態においては、旋回レバー21・22を中立位置とすることにより、パーキングスイッチ25がON状態となるように構成されている。なお、パーキングスイッチ25を独立して設けることも可能である。
【0030】
前記旋回レバー21・22の回動基部にはそれぞれ旋回レバー21・22の回動角度を検知するセンサとしてのレバーセンサ23・24が設けられている。レバーセンサ23・24は、図3に示すように、制御装置50と接続されている。こうして、旋回レバー21・22の回動がレバーセンサ23・24により検知されて、その検知信号が制御装置50に入力され、該制御装置50により左右の走行部用モータ15・16が前記旋回レバー21・22の回動角度に応じて駆動され、芝刈作業機1を走行させることができる。
【0031】
また、運転操作部4に設けられた作業部スイッチ36をON状態とすることにより、芝刈機3の刈刃26・27を作業部用モータ28・29により回転駆動させる。作業部スイッチ36は、図3に示すように、制御装置50に接続されている。
【0032】
バッテリ31は機体フレーム2後部に設けられている。バッテリ31は、脱着可能なパックとして構成されており、図3に示すように、接続端子31aが設けられている。車体側にも接続端子31bが設けられており、車体側の接続端子31bは、図3に示すように、制御装置50に接続されている。また、バッテリ31の内部には、バッテリ制御装置34や充電用リレー回路37が設けられている。バッテリ制御装置34は、充電時に過充電とならないように制御したり、温度が異常に高くならないように制御したり、後述する充電コネクタ31dに設ける検知部31eにより充電器101と接続されたかを判断するとともに、充電用リレー回路37を切り替えて後述の制御装置50に充電中であること送信する。
また、バッテリ31は、図3に示すように、N個のセル31C・31C・・・31Cを有している。
また、バッテリ31は、図3に示すように、高圧の直流電圧を低圧の直流電圧に変換するDC−DCコンバータ38を有している。
【0033】
また、バッテリ31には充電コネクタ31dが設けられている。充電コネクタ31dは外部の充電器101と接続可能であり、充電コネクタ31dを外部の充電器101と接続することにより、バッテリ31の充電を行う。充電コネクタ31dに充電器101が接続されたどうかは、充電コネクタ31dに設けた検知部31eにより検知され、検知部31eは制御装置50と接続されている。
【0034】
制御装置50は、図3に示すように、走行部用モータ15・16、回転速度センサ17・18、レバーセンサ23・24、作業部用モータ28・29、着座センサ33、作業部スイッチ36、と接続されている。また、制御装置50は、走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67と接続されている。
【0035】
制御装置50は、CPUや記憶手段からなり、CPUは中央演算処理装置であり、記憶手段は制御プログラムやマップ等を記憶したROMや入力したデータ等を記憶するRAMである。
【0036】
走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67はインバータ回路で構成されており、走行部用モータ15・16及び作業部用モータ28・29の出力を制御する装置である。また、走行部用モータ15・16及び作業部用モータ28・29に印加される電圧(または電流)を検知し、制御装置50に送信している。走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67は、それぞれ、座席シート5の下方の空間に設けられている。
走行部用モータドライバ65・66と作業部用モータドライバ67はバッテリ31と電気経路32bを介して接続されており、電気経路32bから供給される直流電力を交流電力に変換して走行部用モータ15・16及び作業部用モータ28・29に供給する。
電気経路32bの中途部にはバッテリ31と走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67との間の電気経路32bを通電又は非通電状態に切り替える手段としてのリレー回路71・72・73が設けられている。リレー回路71・72・73は制御装置50と接続されて、制御装置50からの制御信号によりリレー回路71・72・73の通電又は非通電状態が切り替えられる構成としている。
【0037】
芝刈作業機1には補助電源(バックアップ電源)50aが搭載されている。補助電源50aは制御装置50と接続され、バッテリ31が外された状態や充電時等でも制御装置50やセンサ等に電力を供給して、芝刈作業機1や操縦者の安全性を担保している。
即ち、補助電源50aは電気経路を介して走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67と接続しており、走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67とバッテリ31とが非接続の場合であっても、補助電源50aから走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67へ制御用の電力が供給されている。走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67は、常時、走行部用モータ15・16及び作業部用モータ28・29にバッテリ31から電力が供給されているかを検出し、制御装置50に送信するようにしている。
【0038】
また、制御装置50は、バッテリ31と電気経路32aを介して接続されている。電気経路32aの中途部にはキースイッチ35が設けられており、キースイッチ35を操作することにより電源リレー回路42の接点42aのON・OFFが切り替えられる。つまり、キースイッチ35の操作により電気経路32aの接続・非接続を切り替えることができる。
【0039】
キースイッチ35がON状態となった場合、電源リレー回路42がON状態に切り替わり、電力が供給されたことを制御装置50に送信し、制御装置50より接続制御信号がリレー回路71・72・73に送信されて切り替え、電気経路32bが接続されて、バッテリ31から走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67へ電力が供給可能とされる。
【0040】
また、制御装置50とバッテリ31との間には接続確認用電気経路32cが設けられており、バッテリ31側の接続端子31aと車体側の接続端子31bとの間に脱着を検知する脱着検知センサ74が設けられ、接続確認用電気経路32cを介して制御装置50と接続している。
【0041】
制御装置50は、前記各センサからの信号により、左右の走行部用モータ15・16の出力を制御する。つまり、左右の旋回レバー21・22の操作量に応じて進行方向の指令値を算出して、それぞれの指令値に応じて走行部用モータドライバ65・66に指令値を送信し、走行部用モータドライバ65・66から走行部用モータ15・16に駆動信号(モータ駆動電力)を出力する。
また、制御装置50は、作業部用モータ28・29の出力を制御する。つまり、制御装置50は、作業部用モータ28・29のトルクが一定となるように指令値を算出して、それぞれの指令値に応じて作業部用モータドライバ67に指令値を送信し、作業部用モータドライバ67から作業部用モータ28・29に駆動信号(モータ駆動電力)を出力する。
【0042】
次に、走行部用モータ15・16を電気的に停止させるための前記リレー回路71・72と、物理的に停止させるための電磁ブレーキ39・40について説明する。
【0043】
図3に示すように、バッテリ31と走行部用モータドライバ65・66との間には、電力の供給と遮断を切り替える手段としてのリレー回路71・72が設けられている。リレー回路71・72は制御装置50と接続されて、制御装置50からの制御信号によりリレー回路71・72が切り替えられる構成としている。なお、リレー回路71とリレー回路72とは同様の構成であるので、走行部用モータ15に対応するリレー回路71について説明する。
リレー回路71は、正常の走行時や作業時に、バッテリ31と走行部用モータドライバ65とを接続する。電圧が異常に高くなった場合やバッテリ31が離脱した場合などの異常時には、制御装置50よりリレー回路71に遮断信号が送信されて、リレー回路71によりバッテリ31と走行部用モータドライバ65との接続が遮断され、走行部用モータ15に電力が供給されなくなる。これにより、走行部用モータ15が停止する。
【0044】
また、図2、図3に示すように、走行部用モータ15・16と走行駆動輪11・12との間には電磁ブレーキ39・40が設けられている。電磁ブレーキ39・40は制御装置50と接続されて、制御装置50からの制御信号により制動と非制動が切り替えられる。電磁ブレーキ39と40は同様の構成であるので走行部用モータ15に対応する電磁ブレーキ39について説明する。
図2に示すように、走行部用モータ15と走行駆動輪11との間には図示せぬ動力伝達機構を格納するギヤケース41が設けられている。電磁ブレーキ39は、ギヤケース41の内部であって走行部用モータ15の駆動軸に設けられている。電磁ブレーキ39は通電している状態では開放されており、電力が遮断された状態では摩擦板を圧接させることで走行駆動輪11を制動する。但し、作業部用モータ28・29にも前記同様に電磁ブレーキを取り付け、制御することも可能である。
【0045】
バッテリ制御装置34には電池監視回路43が接続され、電池監視回路43は各セル31C・31C・・・・と接続されている。電池監視回路43は、各セル31C・31C・・・・の電圧や放電電流を演算し、バッテリ制御装置34に送信している。
【0046】
次に、走行部用モータ15・16及び作業部用モータ28・29の駆動・停止制御について図4及び図5を用いて説明する。
【0047】
まず、キースイッチ35をON状態か否かについて判断する(ステップS10)。キースイッチ35がOFF状態であればステップS10に戻る。キースイッチ35がON状態になると、通信状態などが正常か否かを確認する(ステップS15)。ステップS15において通信状態などが正常でなければ、再びステップS15を行う。ステップS15において、通信状態などが正常であれば、リレー回路71・72・73が駆動し走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67に電源が入った状態となる。但し、このときは待機状態となっており、電磁ブレーキ39・40は作動し、走行部用モータ15・16及び作業部用モータ28・29は停止状態となる(ステップS20)。
次に、エラーが検出されたか否かについて判断する(ステップS30)。ここで、エラーとは、接続端子31aと接続端子31bとの接続が不良で脱着検知センサ74がON状態であるにもかかわらずリレー回路71・72・73のいずれかがON状態またはOFF状態である場合や、リレー回路71・72・73が遮断されているにも関わらず、走行部用モータドライバ65・66や作業部用モータドライバ67から電力が供給されていることを検知した場合などである。なお、前記エラーの原因は、リレー回路71・72・73の接点が溶着したため等が考えられる。
【0048】
ステップS30において、エラーが検出されなかった場合には、着座センサ33及びパーキングスイッチ25がON状態であるか否かについて判断する(ステップS40)。こうして、駆動の準備が整う前にキースイッチ35をON状態にしたときに、いきなり駆動してしまわないようにエラーが発生しているかが判断される。なお、作業部スイッチ36に対しても同様の処理が可能である。
ステップS40において、操縦者が着座して着座センサ33及びパーキングスイッチ25がON状態になっていた場合には、操縦者が作業部スイッチ36を操作してON状態であるか否かについて判断する(ステップS50)。ステップS40において操縦者が着座せず着座センサ33及びパーキングスイッチ25がOFF、あるいは、キースイッチ35をONしたときに、作業部スイッチ36がONになっていた場合には、ステップS120に移行する。
ステップS50において作業部スイッチ36がON状態になっていた場合には、作業部用モータ28・29を駆動させ刈刃26・27を回転させる(ステップS60)。そして、パーキングスイッチ25がON状態であるか否かについて判断する(ステップS70)。ここで、パーキングスイッチ25がON状態であるときには、旋回レバー21・22が中立位置にある状態である。言い換えれば、旋回レバー21・22が中立位置に操作されるとパーキングスイッチ25がON状態となり、中立位置以外ではパーキングスイッチ25はOFF状態となっている。つまり、ステップS70は、旋回レバー21・22が中立位置にあるか否かについて判断するステップである。
ステップS70において、パーキングスイッチ25がON状態であった場合、言い換えれば、旋回レバー21・22が中立位置にある場合には走行部用モータ15・16を停止して、作業部用モータ28・29を駆動させて刈刃26・27を回転させ(ステップS80)、ステップS30に移行する。
ステップS70において、パーキングスイッチ25がOFF状態であった場合、言い換えれば、旋回レバー21・22が中立位置に無い場合には、電磁ブレーキ39・40の制動が解除され、走行部用モータ15・16を駆動する。このとき、作業部用モータ28・29は駆動されているので、走行しながら刈取作業が行える(ステップS90)。そして、ステップS30に移行する。
【0049】
ステップS50において作業部スイッチ36がOFF状態になっていた場合には、パーキングスイッチ25がON状態であるか否かについて判断する(ステップS100)。ステップS100において、パーキングスイッチ25がON状態であった場合、言い換えれば、旋回レバー21・22が中立位置にある場合には、ステップS10に移行する。ステップS100において、パーキングスイッチ25がOFF状態であった場合、言い換えれば、旋回レバー21・22が中立位置に無い場合には、走行部用モータ15・16を駆動する。このとき、作業部用モータ28・29は停止されており、単なる走行となる(ステップS110)。そして、ステップS30へ移行する。
【0050】
ステップS30においてエラーが検出された場合には、図5に示すように、エラー表示を行い(ステップS120)、走行部用モータ15・16及び作業部用モータ28・29の停止を維持する(ステップS130)。ステップS120において、エラー表示を行う手段は、例えば、運転操作部4に表示灯を設けて表示灯を点灯させることにより通知する。表示する方法は、これに限定するものでなく、例えば、液晶表示部を設けて、液晶表示部にメッセージを表示することも可能であるし、音響手段を設けて、音によって通知することも可能である。
【0051】
ステップS130を行った後、走行部用モータ15・16が停止したか否かについて判断する(ステップS140)。ステップS140において、走行部用モータ15・16が停止した場合には、走行部用モータ15・16を停止したまま維持し、作業部用モータ28・29を停止する(ステップS150)。ステップS140において、走行部用モータ15・16が停止していない状態の場合には、何らかの異常があると判断し、緊急停止を行う(ステップS160)。緊急停止は、リレー回路71・72・73をOFF状態とするかキースイッチ35をOFF状態とすることにより行う。
そして、キースイッチ35がOFF状態となり、正常な状態に復帰しているか否かを判断し(ステップS170)、ステップS170において、キースイッチ35がOFF状態となり、かつ、正常な状態に復帰していればエラーを解除する(ステップS180)。ステップS170において、キースイッチ35がOFF状態となっていない、若しくは、正常な状態に復帰していなければ、再びステップS170に移行する。
【0052】
次に、リレー回路71・72・73が溶着したか否かの判断について説明する。
リレー回路71・72・73のいずれかが溶着した場合には、キースイッチ35をOFF状態にした場合でも、バッテリ31と走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67との間が通電状態となるため、バッテリ31の電力が消費されつづけることになる。
そこで、溶着したか否かについて、走行部用モータ15・16及び作業部用モータ28・29に印加される電圧を常時、走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67によって計測することにより判断する。
キースイッチ35がOFF状態からON状態と移行する前に、走行部用モータ15・16及び作業部用モータ28・29に印加される電圧が0で無かった場合には、対応するリレー回路71・72・73の溶着が発生したと判断する。
また、前記駆動・停止制御によって、走行部用モータ15・16及び作業部用モータ28・29のいずれか一方、若しくは両方を停止させたときに、走行部用モータ15・16及び作業部用モータ28・29に印加される電圧が0で無かった場合には、対応するリレー回路71・72・73の溶着が発生したと判断する。
【0053】
次にバッテリ31の脱着に基づく走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67の駆動・停止制御について説明する。
バッテリ31が装着され、接続端子31aと接続端子31bが接続されると、脱着検知センサ74から制御装置50へ制御信号が送信される。制御装置50は、前記電気信号を受信した場合、リレー回路71・72・73に対しON状態となるように電気信号を送信する。これにより、バッテリ31から走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67に電力が供給可能となる。これにより、走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67が駆動可能となる。
【0054】
バッテリ31が取り外されたとき、脱着検知センサ74がOFF状態となる。脱着検知センサ74がOFF状態となった際、制御装置50は、リレー回路71・72・73に対しOFF状態となるように制御信号を送信する。これにより、バッテリ31を取り外したときに走行部用モータ15・16、及び作業部用モータ28・29に電力が供給されず、確実に停止することができる。
【0055】
次に、バッテリ31の脱着に基づく走行部用モータ15・16の停止制御について説明する。
バッテリ31が取り外されたとき、脱着検知センサ74がOFF状態となる。脱着検知センサ74がOFF状態となった際、制御装置50は、電磁ブレーキ39・40への電力を遮断し、電磁ブレーキ39・40を制動する。
【0056】
次に、充電コネクタ31dの接続に基づく走行部用モータ15・16及び作業部用モータ28・29の停止制御について説明する。
充電コネクタ31dが外部の充電器101と接続された場合、検知部31eにより充電コネクタ31dが外部の充電器101と接続されていると判断され、バッテリ31内部のバッテリ制御装置34から充電中であることを示す信号が制御装置50へ送信される。制御装置50は、前記充電中の信号を受信すると、リレー回路71・72・73をOFF状態とする。
【0057】
以上のように、バッテリ31を駆動源とする芝刈作業機1において、旋回レバー21・22の操作位置を検知するレバーセンサ23・24を設け、旋回レバー21・22の中立位置を検出した後にバッテリ31と走行部用モータ15・16との電気経路32bを通電する制御装置50を設けたものである。
このように構成することにより、駆動等の準備が整う前にキースイッチ35がON状態にされた場合でも誤作動を防止することができる。
【0058】
また、芝刈作業機1は、電動乗用機であり、座席シート5の着座を検知する着座センサ33を設け、バッテリ31と走行部用モータ15・16及び作業部用モータ28・29との電気経路32bを通電する条件に座席シート5の着座の検出を付加したものである。
このように構成することにより、駆動等の準備が整う前にキースイッチ35がON状態にされた場合でも誤作動を防止することができる。
【0059】
また、走行部用モータ15・16及び作業部用モータ28・29への電気経路32bを非通電にしている時に、走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67は走行部用モータ15・16及び作業部用モータ28・29への電圧を監視するものである。
このように構成することにより、リレー回路71・72・73の溶着や電気経路32bの短絡を検知することができる。
【0060】
また、バッテリ31を脱着可能なパックとし、バッテリ31の脱着を検知する脱着検知センサ74を設け、バッテリ31と走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67との電気経路32bを通電する条件としてバッテリ31の装着を付加したものである。
このように構成することにより、バッテリの装着が不十分な状態での電源供給を防止できる。
【0061】
また、バッテリ31を脱着可能なパックとし、バッテリ31の脱着を検知する脱着検知センサ74を設け、走行部用モータ15・16に非通電時に機能する電磁ブレーキ39・40を設け、バッテリ31の離脱を検知したときに走行部用モータ15・16とバッテリ31との電気経路32bを非通電とし、電磁ブレーキ39.40を作動させる手段を設けた。
このように構成することにより、バッテリ31の離脱時に走行部用モータ15・16を確実に停止できる。
【0062】
また、充電コネクタ31dを設け、充電コネクタ31dで受電を検知したときにバッテリ31と走行部用モータ15・16及び作業部用モータ28・29との電気経路32bを非通電とする。
このように構成することにより、充電中に芝刈作業機1を駆動できなくすることにより、誤って駆動するのを防止することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 芝刈作業機(電動作業機)
2 機体フレーム
3 芝刈機(作業部)
4 運転操作部
5 座席シート(操縦席)
11・12 走行駆動輪
13・14 キャスタ輪
15・16 走行部用モータ(走行系の電動機器駆動部)
21・22 旋回レバー(駆動操作具)
23・24 レバーセンサ
25 パーキングスイッチ
28・29 作業部用モータ
31 バッテリ
31d 充電コネクタ
32b 電気経路
33 着座センサ
35 キースイッチ
39・40 電磁ブレーキ
50 制御装置
65・66 走行部用モータドライバ
67 作業部用モータドライバ
74 脱着検知センサ(センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリを電源とする電動作業機において、
駆動操作具の操作位置を検知するセンサを設け、前記駆動操作具の中立位置を検出した後に前記バッテリと走行系の電動機器駆動部との電気経路を通電する手段を設けたことを特徴とする電動作業機。
【請求項2】
前記電動作業機は、電動乗用機であり、操縦席の着座を検知するセンサを設け、前記バッテリと前記電動機器駆動部との電気経路を通電する条件に前記操縦席の着座の検出を付加したことを特徴とする請求項1に記載の電動作業機。
【請求項3】
キースイッチがON状態で前記電動機器駆動部への電気経路を非通電にしている時に、電動機器への電圧を監視する手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の電動作業機。
【請求項4】
前記バッテリを脱着可能なパックとし、バッテリパックの脱着を検知するセンサを設け、前記バッテリと前記電動機器駆動部との電気経路を通電する条件としてバッテリの装着を付加したことを特徴とする請求項1記載の電動作業機。
【請求項5】
前記バッテリを脱着可能なパックとし、前記バッテリの脱着を検知するセンサを設け、走行系の電動機器駆動部に非通電時に機能する電磁ブレーキを設け、前記バッテリの離脱を検知したときに走行系の電動機器駆動部とバッテリとの電気経路を非通電とする手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の電動作業機。
【請求項6】
充電コネクタを設け、充電コネクタで受電を検知したときにバッテリと電動機器駆動部との電気経路を非通電とすることを特徴とする請求項1に記載の電動作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−21987(P2013−21987A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161114(P2011−161114)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】