説明

電動台車

【課題】台車にはほとんど改造を要せず簡単に駆動装置を取り付けることができる電動台車であって、ばねを利用しない簡単な構造で充分な駆動輪の接地圧を確保することができるとともに駆動装置により台車を操舵することができ、整備作業も容易な電動台車を提供する。
【解決手段】本発明に係る電動台車は、複数の走行輪を有し自立可能な台車と、連結部材を介して前記台車を駆動させる駆動装置とを有する電動台車であって、前記連結部材は、一端が前記台車と水平軸回りに揺動自在に軸着され、他端が前記駆動装置と一体に結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の走行輪を有し自立可能な台車に駆動装置を連結して物品の運搬に供される電動台車に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の走行輪を有し自立可能な台車は、工場内の部品や製品を搬送するのに便利であり、広く使用されている。このような台車は、多くは人手で運転操作されているが、搬送重量が増大すると人の力で運転操作するのが困難になる。このような問題に対し、台車に駆動装置を取り付けた電動台車が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に、手押し枠体と4つの非駆動輪と荷台面と1つの駆動輪を有し、手押し枠体を前方に押せば台車の前進を電動アシストし、引けば後退を電動アシストし、押しも引きもしない時は停止する機構を有しながら、操作は通常の手動L型台車相当とするため駆動輪を非駆動の2つの後輪又は前輪間近傍に配置したアシスト手押し台車が提案されている。そして、駆動輪がバネで常に走行地面に押し付けられるようにすることによって、駆動輪が安定した駆動力でアシストできることが開示されている。
【0004】
特許文献2に、台車の底部に設けられた駆動輪と、該駆動輪を駆動するモータと、操作力を付与される操作部と、該操作部に加えられた操作力の大きさに応じて前記モータを制御する制御部とを有する搬送装置において、前記駆動輪を支持する支持部材を前記台車の下面に回動可能に設け、前記駆動輪が路面に押圧されるように前記支持部材又は前記駆動輪を押圧する押圧手段を設け搬送装置が提案されている。
【0005】
また、特許文献3に、駆動輪、前記駆動輪を推進させるためのモータ、前記モータの推進力を増幅させるための減速機から構成される駆動ユニットと、前記モータの回転数を制御するためのコントローラと、前記モータを動かすためのバッテリとから構成されるバッテリボックスを備えた電動台車において、前記駆動ユニットと前記バッテリボックスの双方を連結して一体化し、台車の荷台を上下から挟み込むためのコの字形の金具を前記バッテリボックスに備えたことで、手押し台車にも取付けられるようにした手押し台車の電動走行ユニットが提案されている。
【0006】
特許文献4には、走行駆動輪と補助輪を有し、それ自体立ち姿勢に維持されるとともに前方に直進性能を有する台車用補助車両であって、台車にL字形状の爪部材を係合連結し、オペレータが台車の左右何れかに立って台車の前方側を押す又は引くことによって搬送方向の修正を行う台車用補助車両が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開2006-290319号公報
【特許文献2】特開2000-43731号公報
【特許文献3】特開平9-238404号公報
【特許文献4】特開2005-178506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1または特許文献2に係る台車においては、台車に駆動装置を取り付けるために特別の改造をしなければならないばかりか、地面が平坦でない場合に駆動輪が浮いてしまうことを防止するため、駆動輪を地面に押圧するサスペンション(ばね)を設けないとならない。そして、このサスペンションによっては、台車へ積載した荷重量の変化により、サスペンションが伸縮して台車が傾いてしまうおそれがある。さらに、装置全体の構造が複雑になりサスペンションの装脱着が容易でないという問題がある。
【0009】
特許文献3の提案に係る電動走行ユニットは、コの字形の金具に内蔵されたばねにより駆動輪が地面に接地されるようになっており、特許文献1又は2に係る台車と同様な問題がある。
【0010】
特許文献4に係る台車用補助車両は、それ自体で台車を操舵することができず、オペレータが台車の左右何れかに立って台車の前方側を押す又は引くことによって台車を操舵しなければならないという問題がある。
【0011】
本発明はかかる問題に鑑み、台車にはほとんど改造を要せず簡単に駆動装置を取り付けることができる電動台車であって、ばねを利用しない簡単な構造で充分な駆動輪の接地圧を確保することができるとともに駆動装置により台車を操舵することができ、整備作業も容易な電動台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、複数の走行輪を有し自立可能な台車と、連結部材を介して前記台車を駆動させる駆動装置とを有する電動台車であって、前記連結部材は、一端が前記台車と水平軸回りに揺動自在に軸着され、他端が前記駆動装置と一体に結合されていることを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記駆動装置は、垂直軸回りに旋回可能な駆動輪を駆動させる駆動部、操舵部および前記駆動部を制御する制御部を有し、前記駆動輪の所要の接地圧が前記駆動装置の重量により満たされてなることを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記駆動装置の重心位置は、前記駆動輪の接地点に対し前記台車と反対側にあることを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3において、前記連結部材は、前記駆動装置に駆動用電気を供給する蓄電器または/および重りが取付可能であり、前記駆動輪の所要の接地圧が前記蓄電器または/および重りの重量により満たされてなることを特徴としている。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記連結部材は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記駆動装置と脱着可能に結合されていることを特徴としている。
【0017】
さらに、請求項6に記載の発明は、前記連結部材は、請求項1〜5のいずれかにおいて、前記台車に軸着された状態で前記駆動装置を取り外したとき、その重力方向の回転が阻止されるストッパーを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、容易に駆動装置を台車に連結して台車を走行させることができる。また、簡単な構造で駆動輪の適切な接地圧を確保することで、台車の重量や地面の平坦度にかかわらず安定した台車の運搬が可能になる。さらに、駆動装置と台車との脱着が容易で整備作業も容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る電動台車の実施の形態について図面を基に説明する。図1は、本発明に係る電動台車のレイアウト図を示す。図2は図1の一部拡大図である。本電動台車100は、図1に示すように、台車10と、その台車10を駆動させる駆動装置50と、台車10と駆動装置50を連結する連結部材30を有している。
【0020】
台車10は、前走行輪13および後走行輪14が車台11の左右に設けられ自立可能になっている。本例の場合は、4輪式で、前走行輪13が固定式、後走行輪14がキャスター式になっている。なお、台車10が自立可能であれば3輪式とすることもできる。また、前走行輪13をキャスター式にすることもできる。ただし、前走行輪13が固定式である方が直進性に優れる。
【0021】
また、台車10は、図1に示すように、子台車20を出し入れするレール12が設けられている。本例の子台車20は、たとえば液物食材が入れられた容器25を収納し、台車10からたとえば蒸気調理装置のような食品機械(図示省略)の処理槽(図示省略)内にレール12を介して水平に搬送することが可能である。
【0022】
連結部材30は、図2または図3に示すように、一端が台車10と水平軸回りに揺動自在に軸着され、他端が駆動装置50と一体に結合されている。すなわち、連結部材30は、台車10の車台11に固定されたU型ブラケット38(38A、38B)およびピン39(39A、39B)を介して台車10に連結されており、連結部材30は、ピン39の回りに自在に揺動することができるようになっている。これにより、後述する駆動装置50の駆動輪58の上下動に対しても車台11の水平性を確保することができる。なお、U型ブラケット38は、車台11にねじ結合され、容易に脱着することができるようになっている。また、台車10と連結部材50を連結するにあたって、台車10にはこのU型ブラケット38の取付穴の加工を行うだけですみ、他に特別の加工を要しない。
【0023】
一方、連結部材30の他端は駆動装置50と一体に結合されている。すなわち、連結部材30の後面プレート36が駆動装置50の連結部ブラット56と一体に結合されている。これにより、連結部材30と駆動装置50は一体になり、ピン39の回りに揺動することができる。なお、後面プレート36と連結部ブラット56とは、図3に示すように、ねじ結合されており、脱着を容易に行うことができるようになっている。
【0024】
また、連結部材30は、図3に示すように、その基本構成がアーム33(33A、33B)およびそれらを連結する連結アーム34からなる。アーム33の長さは、電動台車の旋回半径、あるいは操舵性に関係し、連結アーム34の長さは操舵性、操舵力に関係する。このため、アーム33および連結アーム34の長さは適切な長さが選ばれる。また、アーム33および連結アーム34の長さが所要の長さのものを数種類準備しておくことにより多様な仕様の電動台車を構成することができる。
【0025】
駆動装置50は、図2に示すように、垂直軸回りに旋回可能な駆動輪58を駆動させる駆動部53、駆動部53に駆動用電気を供給する蓄電器66(66Aまたは66B)、駆動部53を制御する制御部63および操舵部61を有している。蓄電器66は、フレーム51内に収納する形式のもの(66A)、連結部材30に取付可能なケース71を設けてその内部に収容する形式のもの(66B)、あるいは両方の形式を有するもの等電動台車100、駆動装置50の仕様に応じて決められる。蓄電器66をフレーム51内に収納する形式のものは小型の電動台車に好ましい。蓄電器66をフレーム51内に収納せず、ケース71内に収納する形式のものは、フレーム51および駆動装置50をコンパクトにできる利点がある。蓄電器66をフレーム51内およびケース71内に収納する形式のものは、大型の電動台車に好ましい。
【0026】
本駆動装置50は、図2に示すように、駆動部53、操舵部61および制御部63の重量が駆動輪58に有効に付加される構造になっている。このため、駆動部53、操舵部61および制御部63の重量により駆動輪58に所要の接地圧を付加することができる。この接地圧の確保と、上述の駆動装置50のピン39の回りに自在に揺動することができる構造の採用により、本電動台車100は、ばねを利用しなくても台車10の重量や路面80の平坦度にかかわらず、円滑な走行を行うことができる。なお、駆動輪58の接地圧を高めるには、駆動装置50全体の重心位置は、駆動輪58の路面80との接地点Eに対し、ピン39(台車10)と反対側(遠方側)にあるのが好ましい。
【0027】
駆動輪58の所要の接地圧は、電動台車100の仕様(搬送最大重量、駆動装置50の駆動力等)により異なり、所要の接地圧を確保するため蓄電器や重りを利用することができる。本発明においては、上述のように連結部材30に蓄電器66Bを収容することができるケース71を取り付けることができるので、図2に示すように、駆動輪58の所要の接地圧を確保するために必要な所要重量の蓄電器66Bや重り73を取り付けることができる。
【0028】
以上本発明に係る電動台車100について説明した。本発明の電動台車100は、台車10にほとんど加工をしないで駆動装置50を連結することができ、連結部材30や駆動輪58や走行輪13、14にばねを取り付けることなく台車10の水平性、安定性を確保することができる。また、本発明の電動台車100は、子台車20を食品機械(図示省略)の処理槽(図示省略)内にレール12を介して搬送する際に、路面80が平坦でない場合であっても台車10を傾けることなく確実に子台車20を水平に搬送することが可能になる。そして、連結部材30および駆動装置50を台車10に容易に脱着することができ、大きさの異なる数種の連結部材30、駆動力の異なる数種の駆動装置50を準備することにより多様な仕様の電動台車100を容易に構成することができる。
【0029】
本電動台車100においては、駆動装置50の脱着に際し、ストッパーを設けるのがよい。すなわち、図2に示すように、台車10の車台11から長さを調整することができるボルト43を連結部材30のアーム33Aの端部に垂下する前面アーム35に当接させることによって、駆動装置50を連結部材30から取り外したとき、連結部材30が重力方向に回転するのを防止するストッパーを設けるのがよい。これにより、連結部材30を台車10に取り付けたままで、駆動装置50の脱着を容易に行うことができる。
【0030】
また、連結部材30および駆動装置50は台車10の左右いずれかに偏って取り付けられるようにするのがよい。例えば本例の場合は、連結部材30および駆動装置50が台車10の左側に偏って取り付けられるようになっており、駆動装置50を操作する作業者は台車の左前方を確認しながら電動台車100を走行させることができる(図3)。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る電動台車のレイアウト図である。
【図2】図1の一部拡大図である。
【図3】図1の連結部材部分の細部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
10 台車
11 車台
12 レール
13 前走行輪
14 後走行輪
20 子台車
25 容器
30 連結部材
33、33A、33B アーム
34 連結アーム
35 前面アーム
36 後面プレート
38、(38A、38B) U型ブラケット
39、(39A、39B) ピン
43 ボルト
50 駆動装置
51 フレーム
53 駆動部
56 連結ブラケット
58 駆動輪
61 操舵部
63 制御部
66、66A、66B 蓄電器
71 ケース
73 重り
80 路面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走行輪を有し自立可能な台車と、連結部材を介して前記台車を駆動させる駆動装置とを有する電動台車であって、
前記連結部材は、一端が前記台車と水平軸回りに揺動自在に軸着され、他端が前記駆動装置と一体に結合されていることを特徴とする電動台車。
【請求項2】
前記駆動装置は、垂直軸回りに旋回可能な駆動輪を駆動させる駆動部、操舵部および前記駆動部を制御する制御部を有し、前記駆動輪の所要の接地圧が前記駆動装置の重量により満たされてなることを特徴とする請求項1に記載の電動台車。
【請求項3】
前記駆動装置の重心位置は、前記駆動輪の接地点に対し前記台車と反対側にあることを特徴とする請求項2に記載の電動台車。
【請求項4】
前記連結部材は、前記駆動装置に駆動用電気を供給する蓄電器または/および重りが取付可能であり、前記駆動輪の所要の接地圧が前記蓄電器または/および重りの重量により満たされてなることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電動台車。
【請求項5】
前記連結部材は、前記駆動装置と脱着可能に結合されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電動台車。
【請求項6】
前記連結部材は、前記台車に軸着された状態で前記駆動装置を取り外したとき、その重力方向の回転が阻止されるストッパーを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電動台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−126900(P2008−126900A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315975(P2006−315975)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】