説明

電動圧縮機

【課題】振動及び騒音が外部に伝達し難いとともに、ヒートポンプとして用いた場合に十分な暖房能力を発揮可能な電動圧縮機を提供する。
【解決手段】電動圧縮機1は、冷媒を圧縮する圧縮機構3と、圧縮機構3を作動させるモータ機構5とを備える。また、電動圧縮機1は、圧縮機構3及びモータ機構5を密閉状態で収容する内側ハウジング10と、内側ハウジング10を収容し、外部への取付部29が形成された外側ハウジング20とを備える。内側ハウジング10と外側ハウジング20との間には、防振性及び断熱性を有する第1中間材31、32が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の電動圧縮機が開示されている。この電動圧縮機は、冷媒を圧縮する圧縮機構と、圧縮機構を作動させるモータ機構とを備えている。また、この電動圧縮機は、圧縮機構及びモータ機構を密閉状態で収容する内側ハウジングと、内側ハウジングを収容する外側ハウジングとを備えている。
【0003】
さらに、この電動圧縮機は、外側ハウジング内で内側ハウジングを支持するスプリングと、外側ハウジングと内側ハウジングとの間に区画された空間に注入されたチキソトロピ性流体とを備えている。外側ハウジングには、外部への取付部が形成されている。
【0004】
この電動圧縮機は、スプリングとチキソトロピ性流体とにより、圧縮機構及びモータ機構からの振動及び騒音が外部に伝達することを抑制可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−294365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の電動圧縮機では、圧縮機構により圧縮されて高温高圧となった冷媒の熱が内側ハウジング及びスプリングを経由して外側ハウジングから放熱されるとともに、内側ハウジングを経由してチキソトロピ性流体に奪われ易い。このため、この電動圧縮機では、冷媒の熱量が低下し易く、例えばヒートポンプとして用いた場合、暖房用の熱交換器において、十分な暖房能力を発揮し難い。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、振動及び騒音が外部に伝達し難いとともに、ヒートポンプとして用いた場合に十分な暖房能力を発揮可能な電動圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電動圧縮機は、冷媒を圧縮する圧縮機構と、前記圧縮機構を作動させるモータ機構とを備えた電動圧縮機において、
前記圧縮機構及び前記モータ機構を密閉状態で収容する内側ハウジングと、前記内側ハウジングを収容し、外部への取付部が形成された外側ハウジングとを備え、
前記内側ハウジングと前記外側ハウジングとの間には、防振性及び断熱性を有する第1中間材が設けられていることを特徴とする(請求項1)。
【0009】
本発明の電動圧縮機では、圧縮機構及びモータ機構を密閉状態で内部に収容する内側ハウジングと、内側ハウジングを収容し、外部への取付部が形成された外側ハウジングとの間に、防振性及び断熱性を有する第1中間材が設けられている。このため、この電動圧縮機は、第1中間材が防振性を有することにより、圧縮機構及びモータ機構からの振動及び騒音が内側ハウジングから外側ハウジング及びその外部に伝達することを抑制できる。また、この電動圧縮機は、第1中間材が断熱性を有して熱を移動し難いものであるため、圧縮機構により圧縮されて高温高圧となった冷媒の熱が内側ハウジングから第1中間材及び外側ハウジングに奪われ難い。このため、この電動圧縮機は、冷媒の熱量が低下し難く、例えばヒートポンプとして用いた場合でも、暖房用の熱交換器において、十分な暖房能力を発揮することができる。
【0010】
したがって、本発明の電動圧縮機は、振動及び騒音が外部に伝達し難いとともに、ヒートポンプとして用いた場合に十分な暖房能力を発揮することができる。
【0011】
また、この電動圧縮機では、圧縮機構及びモータ機構の密封状態での収容は、内側ハウジングによって行っているため、外部ハウジングを簡易な形状とすることができる。さらに、内側ハウジングと外側ハウジングとを二重構造にし、双方の間に第1中間材を設けたので、圧縮機構及びモータ機構の内側ハウジングに対する固定構造、及び外側ハウジングに形成された外部への取付部に防振性を持たせる必要がなく、それらの構造を簡素化できる。
【0012】
上記の場合において、内側ハウジングには、圧縮機構に冷媒が吸入される吸入口及び圧縮機構から冷媒が吐出される吐出口が形成されていることが好ましい。また、吸入口及び吐出口にそれぞれ接続される外部配管は、外側ハウジングと非接触状態で内側ハウジングに固定されていることが好ましい(請求項2)。この場合、圧縮機構及びモータ機構からの振動及び騒音は、外部配管を介して外側ハウジング及びその外部に伝達しない。また、冷媒の熱も、外部配管を介して外側ハウジングに奪われない。その結果、この電動圧縮機は、本発明の作用効果を確実に奏することができる。
【0013】
吸入口及び/又は吐出口と外部配管との間には、防振性及び/又は断熱性を有する第2中間材が設けられていることが好ましい(請求項3)。第2中間材が少なくとも防振性を有する場合には、圧縮機構及びモータ機構からの振動及び騒音が内側ハウジングから外部配管に伝達することを抑制できる。また、第2中間材が少なくとも断熱性を有する場合には、冷媒の熱が内側ハウジングから外部配管及び外部に放熱され難い。その結果、この電動圧縮機は、本発明の作用効果を一層確実に奏することができる。
【0014】
第1中間材は、第2中間材と一体であることが好ましい(請求項4)。この場合、この電動圧縮機は、外側ハウジングに覆われていない内側ハウジングの露出部分を、第1中間材と一体となった第2中間材によって保護することができる。また、第2中間材が断熱性を有している場合、内側ハウジングを覆う領域が増えるので、断熱効果をさらに奏することができる。その結果、冷媒の熱が内側ハウジングから外部により一層奪われ難い。
【0015】
第1中間材は、防振性を有する防振材と、断熱性を有する断熱材とからなることが好ましい(請求項5)。防振性及び断熱性を有する単一の部材により第1中間材を構成する場合、第1中間材を構成する材料の選択肢が限定されるとともに、材料コストの低減が難しい。この点、上記構成の場合、この電動圧縮機は、第1中間材を構成する材料の選択肢が増えるとともに、材料コストの低減が容易になる。
【0016】
上記の場合において、断熱材は、内側ハウジングと外側ハウジングとの間における内側に配設され、防振材は、内側ハウジングと外側ハウジングとの間における外側に配設されていることが好ましい(請求項6)。この場合、内側ハウジングと外側ハウジングとの間において、外側の防振材が内側の断熱材を覆って保護し、内側の断熱材は外部に露出しない。このため、断熱材の風雨等による劣化や、欠落を防止できる。
【0017】
外側ハウジングは筒状であることがことが好ましい(請求項7)。この場合、この電動圧縮機は、外側ハウジングを簡素化できるので、製造コストの低廉化を実現できる。また、内側ハウジングを外側ハウジングに容易に収容させることができるので、組み付け作業の簡素化も実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1の電動圧縮機が適用される空調装置の模式図である。
【図2】実施例1の電動圧縮機の模式断面図である。
【図3】実施例2の電動圧縮機の模式断面図である。
【図4】変形例の電動圧縮機の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【0020】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の電動圧縮機1は、車両に搭載されて車室内の温度調整を行う空調装置に適用されている。この空調装置は、電動圧縮機1と、方向切替弁91と、外気用熱交換器92と、膨張弁93と、車室用熱交換器94とにより構成されている。
【0021】
図2に示すように、電動圧縮機1は、圧縮機構3と、モータ機構5と、圧縮機構3及びモータ機構5を密閉状態で収容する内側ハウジング10と、内側ハウジング10を収容する外側ハウジング20とを備えている。内側ハウジング10及び外側ハウジング20の具体的構成については、後で詳しく説明する。
【0022】
圧縮機構3は、内側ハウジング10を構成する第1ハウジング11の内周面11Bに固定された固定スクロール3Aと、固定スクロール3Aに対向配置された可動スクロール3Bとで構成されている。固定スクロール3Aと可動スクロール3Bとは、噛合して両者間に圧縮室3Cを形成している。第1ハウジング11内には、駆動軸5Aが収容されている。駆動軸5Aは、その先端部(図2の紙面右側)が先端側軸受装置5Bに回転可能に支持され、その後端部(図2の紙面左側)が後端側軸受装置5Cに回転可能に支持されている。
【0023】
モータ機構5は、圧縮機構3よりも第1ハウジング11の内底面11D側に配置されている。第1ハウジング11の内周面11Bにはステータ5Dが固定されている。ステータ5Dには、図示しない駆動回路から三相電流が供給されるようになっている。ステータ5Dの内側には駆動軸5Aに固定されたロータ5Eが設けられている。ロータ5Eは、ステータ5D内でステータ5Dに供給される電流によって回転駆動されるようになっている。駆動軸5A、ステータ5D及びロータ5Eによってモータ機構5が構成されている。
【0024】
図1及び図2に示すように、モータ機構5が回転して圧縮機構3を作動させると、圧縮機構3は、吸入配管95を介して内側ハウジング10の外部から冷媒を吸入し、圧縮する。そして、圧縮機構3は、圧縮した冷媒を吐出配管96を介して内側ハウジング10の外部に吐出する。
【0025】
図1に示すように、方向切替弁91は、吸入配管95及び吐出配管96を介して、電動圧縮機1に接続されている。また、方向切替弁91は、配管97を介して外気用熱交換器92と接続されている。さらに、方向切替弁91は、配管99を介して車室用熱交換器94と接続されている。膨張弁93は、配管98Aを介して外気用熱交換器92と接続されている。また、膨張弁93は、配管98Bを介して車室用熱交換器94と接続されている。
【0026】
車両に搭載された図示しない制御部に制御されて、方向切替弁91が吐出配管96と配管97とを連通させ、吸入配管95と配管99とを連通させると、電動圧縮機1から吐出配管96を介して吐出される冷媒は、図1に示す方向D1に沿って流れる。その一方、方向切替弁91が吐出配管96と配管99とを連通させ、吸入配管95と配管97とを連通させると、電動圧縮機1から吐出配管96を介して吐出される冷媒は、図1に示す方向D2に沿って流れる。
【0027】
外気用熱交換器92、車室用熱交換器94及び膨張弁93は周知の構成であるので、図示及び説明は簡略する。外気用熱交換器92は、外気に対する放熱又は吸熱を行うものである。車室用熱交換器94は、車室内の空気に対する放熱又は吸熱を行うものである。
【0028】
次に、電動圧縮機1の内側ハウジング10及び外側ハウジング20について詳しく説明する。内側ハウジング10と外側ハウジング20との間には、第1中間材31、32が設けられている。
【0029】
図2に示すように、内側ハウジング10は、圧縮機構3及びモータ機構5を密閉状態で収容する密閉空間10Aを有している。内側ハウジング10は、一つの部材からなっていてもよいし、互いに組み合わされて密閉空間10Aを区画する複数の部材からなっていてもよい。本実施例では、内側ハウジング10は、後端側(図2の紙面左側)が開口する第1ハウジング11と、第1ハウジング11の後端側を閉塞する第2ハウジング12とからなり、圧縮機構3及びモータ機構5が並ぶ方向に長い略筒形状とされている。なお、内側ハウジング10は、圧縮機構3及びモータ機構5から発生する振動及び熱や、高温高圧となる冷媒等に対する耐久性を確保するため、鉄材やアルミ材等の金属材料製とすることが好ましい。
【0030】
圧縮機構3及びモータ機構5は、焼き嵌め、圧入、ボルト締結と言った周知の固定構造で密閉空間10A内に固定されている。このような固定構造は、高い剛性で圧縮機構3及びモータ機構5を固定する半面、圧縮機構3及びモータ機構5の振動及び騒音を減衰し難くなっている。その結果、圧縮機構3及びモータ機構5の振動及び騒音は、内側ハウジング10に伝達され易くなっている。また、圧縮機構3及びモータ機構5から伝達される熱も、内側ハウジング10に伝達し易くなっている。
【0031】
第1ハウジング11の内底面11Dには、吸入口15が貫設されている。そして、吸入口15には、外部配管としての吸入部材50が固定されている。密閉空間10A内において、吸入口15と圧縮機構3との間には、図示しない冷媒供給経路が設けられている。
【0032】
第1ハウジング11と第2ハウジング12との間には、吐出室3Dが区画形成されている。第2ハウジング12の内底面12Dには、吐出口16が貫設されている。そして、吐出口16には、外部配管としての吐出部材60が固定されている。
【0033】
吸入部材50及び吐出部材60は、周知の管継ぎ手である。吸入部材50には、吸入配管95が接続されている。吐出部材60には、吐出配管96が接続されている。
【0034】
外側ハウジング20は、圧縮機構3及びモータ機構5が並ぶ方向に長い略筒形状とされており、その内部に内側ハウジング10を収容している。外側ハウジング20の長手方向の両端は開放されており、その両端から、吸入部材50及び吐出部材60をそれぞれ外部に突出させている。吸入部材50及び吐出部材60は、外側ハウジング20と非接触状態とされている。
【0035】
外側ハウジング20の外壁面20Cには、径外方向にブロック状に突出する外部への取付部29が複数形成されている。取付部29には、外側ハウジング20の長手方向と平行な貫通穴29Aが貫設されている。取付部29が取り付けられる車両のフレームやエンジン等の対象物9には、取付部29と係合する複数の係合部8が凸設されている。取付部29が係合部8と係合した状態でボルト9Aが螺入されることにより、電動圧縮機1が対象物9に固定される。取付部29、係合部8及びボルト9Aによる締結構造は、高い剛性で外側ハウジング20を対象物9に固定する半面、外側ハウジング20から対象物9に伝達される振動及び騒音を減衰し難くなっている。なお、外側ハウジング20は、鉄材やアルミ材等の金属材料製であってもよいし、樹脂材料製又は繊維強化樹脂材料製であってもよい。
【0036】
第1中間材31、32は、外側ハウジング20の内壁面20Bと、内側ハウジング10を構成する第1ハウジング11の外壁面11Cとの隙間に配設されている。
【0037】
第1中間材31と第1中間材32とは異なる材料からなっている。すなわち、第1中間材31は、防振性を有する材料、例えば、ゴム、エラストマー、樹脂、繊維強化樹脂、シリコンゲル等からなる防振材である。本実施例では、第1中間材31はゴム製の環状体、いわゆるOリングである。第1中間材31は、内側ハウジング10及び外側ハウジング20における長手方向の一端側と他端側とに配設されている。第1中間材31は、外側ハウジング20の内壁面20Bと、第1ハウジング11の外壁面11Cとの隙間に圧縮変形した状態で装着されている。これにより、第1中間材31は、外側ハウジング20内で内側ハウジング10を支持している。
【0038】
その一方、第1中間材32は、断熱性を有する材料、例えば、グラスウール等の繊維集合体、発泡材、セルロースファイバー、真空断熱材等からなる断熱材である。本実施例では、第1中間材32はグラスウール製の肉厚シート状体である。第1中間材32は、内側ハウジング10を構成する第1ハウジング11の外壁面11Cに巻き付けられて、外側ハウジング20の内壁面20Bと、第1ハウジング11の外壁面11Cとの隙間に充填されている。これにより、第1中間材32は、外側ハウジング20内で内側ハウジング10を補助的に支持している。また、第1中間材32は、内側ハウジング10及び外側ハウジング20における長手方向の両端側から第1中間材31に挟まれて、外部に露出しないようになっている。
【0039】
このような構成である実施例1の電動圧縮機1が適用された空調装置は、以下のように、車室内の温度調整を行う。
【0040】
図1に示すように、車室内の冷房を行う場合、方向切替弁91は、吐出配管96と配管97とを連通させ、吸入配管95と配管99とを連通させる。そうすると、圧縮機構3により圧縮されて高温高圧となった冷媒は、方向D1に沿って流れて、外気用熱交換器92において外気に対して放熱して液化する。そして、冷媒は、膨張弁93において圧力が下げられる。その後、冷媒は、車室用熱交換器94において車室内の空気に対して吸熱して蒸発する。その結果、車室内の空気が冷却される。そして、冷媒は、配管99、方向切替弁91及び吸入配管95を介して、電動圧縮機1に戻される。
【0041】
その一方、車室内の暖房を行う場合、方向切替弁91は、吐出配管96と配管99とを連通させ、吸入配管95と配管97とを連通させる。そうすると、圧縮機構3により圧縮されて高温高圧となった冷媒は、方向D2に沿って流れて、車室用熱交換器94において車室内の空気に対して放熱して液化する。その結果、車室内の空気が加熱される。その後、冷媒は、膨張弁93において圧力が下げられる。そして、冷媒は、車外気用熱交換器92において外気に対して吸熱して蒸発する。その後、冷媒は、配管97、方向切替弁91及び吸入配管95を介して、電動圧縮機1に戻される。
【0042】
ここで、実施例1の電動圧縮機1において、圧縮機構3及びモータ機構5は、内側ハウジング10に対して高い剛性で固定されている。また、取付部29、係合部8及びボルト9Aは、外側ハウジング20を対象物9に対して高い剛性で固定している。このため、仮に、内側ハウジング10と外側ハウジング20との間で振動及び騒音の伝達を抑制することができない場合、圧縮機構3及びモータ機構5からの振動及び騒音が内側ハウジング10及び外側ハウジング20を介して、対象物9まであまり減衰することなく伝達され、ひいては車室内環境の快適性が阻害され易くなる。また、仮に、内側ハウジング10と外側ハウジング20との間で熱の伝達を抑制することができない場合、圧縮機構3により圧縮されて高温高圧となった冷媒の熱が外側ハウジング20に奪われてしまう。
【0043】
この点、実施例1の電動圧縮機1では、内側ハウジング10と外側ハウジング20との間に、防振性及び断熱性を有する第1中間材31、32が設けられている。このため、この電動圧縮機1は、第1中間材31が防振性を有することにより、圧縮機構3及びモータ機構5からの振動及び騒音が内側ハウジング10から外側ハウジング20及び対象物9に伝達することを抑制できる。この際、グラスウール製である第1中間材32も、内側ハウジング10から外側ハウジング20に振動及び騒音を伝達し難い。
【0044】
また、この電動圧縮機1は、第1中間材32が断熱性を有して熱を移動し難いものであるため、圧縮機構3により圧縮されて高温高圧となった冷媒の熱が内側ハウジング10から第1中間材32及び外側ハウジング20に奪われ難い。この際、ゴム製である第1中間材31も、冷媒の熱を奪い難い。このため、この電動圧縮機1は、吸入される冷媒及び吐出される冷媒の熱量が低下し難い。このため、この電動圧縮機1は、図1に示すように、冷媒を方向D2に沿って流すことにより、ヒートポンプとして車室内の暖房に用いた場合でも、車室用熱交換器94に流れる冷媒の温度を高くすることができる。その結果、車室用熱交換器94において車室内の空気に対してより効果的に放熱することができ、十分な暖房能力を発揮することができる。
【0045】
したがって、実施例1の電動圧縮機1は、振動及び騒音が外部に伝達し難いとともに、ヒートポンプとして用いた場合に十分な暖房能力を発揮することができる。
【0046】
また、この電動圧縮機1では、圧縮機構3及びモータ機構5の密封状態での収容は、内側ハウジング10によって行っているため、外部ハウジング20を簡易な形状とすることができる。さらに、内側ハウジング10と外側ハウジング20とを二重構造にし、双方の間に第1中間材31、32を設けたので、圧縮機構3及びモータ機構5の内側ハウジング10に対する固定構造、及び外側ハウジング20に形成された外部への取付部29に防振性を持たせる必要がなく、それらの構造を簡素化できる。
【0047】
さらに、この電動圧縮機1では、吸入口15及び吐出口16にそれぞれ接続される吸入部材50及び吐出部材60は、外側ハウジング20と非接触状態で内側ハウジング10に固定されている。このため、圧縮機構3及びモータ機構5からの振動及び騒音は、吸入部材50及び吐出部材60を介して外側ハウジング20及びその外部に伝達しない。また、冷媒の熱も、吸入部材50及び吐出部材60を介して外側ハウジング20に奪われない。その結果、この電動圧縮機1は、本発明の作用効果を確実に奏することができる。
【0048】
また、この電動圧縮機1では、第1中間材31は防振性を有し、第1中間材32は断熱性を有するので、防振性及び断熱性を有する単一の部材により第1中間材を構成する場合と比較して、第1中間材31、32を構成する材料の選択肢が増えるとともに、材料コストの低減が容易になる。
【0049】
さらに、この電動圧縮機1では、断熱材である第1中間材32は、内側ハウジング10と外側ハウジング20との間における内側に配設され、防振材である第1中間材31は、内側ハウジング10と外側ハウジング20との間における外側に配設されて、第1中間材32を挟んでいる。このため、内側ハウジング10と外側ハウジング20との間において、第1中間材31が第1中間材32を覆って保護し、第1中間材32は外部に露出しない。このため、第1中間材32の構成材料(例えば、グラスウール等)の風雨等による劣化や、欠落を防止できる。
【0050】
さらに、この電動圧縮機1は、外側ハウジング20が簡素な筒状であるので、製造コストの低廉化を実現できる。また、内側ハウジング10を外側ハウジング20に容易に収容させることができるので、組み付け作業の簡素化も実現できる。
【0051】
(実施例2)
実施例2の電動圧縮機2では、実施例1における第1中間材31、32の代わりに、第1中間材33を採用しているとともに、内側ハウジング10と吸入部材50及び吐出部材60との間に、第2中間材34を設けている。その他の構成は、実施例1の電動圧縮機1と同様である。このため、実施例1の電動圧縮機1と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0052】
第1中間材33は、防振性及び断熱性を有する材料、例えば、グラスウール等からなる。本実施例では、第1中間材33はグラスウール製の肉厚の筒状体である。第1中間材33は、外側ハウジング20の内壁面20Bと、内側ハウジング10を構成する第1ハウジング11の外壁面11Cとの隙間に充填されている。
【0053】
第2中間材34は、防振性及び/又は断熱性を有する材料からなる。本実施例では、第2中間材34は、防振性を有するゴム製の環状体である。
【0054】
上記構成である実施例2の電動圧縮機2は、実施例1の電動圧縮機1と同様の作用効果を奏することができる。
【0055】
また、この電動圧縮機2では、第1中間材33が防振性及び断熱性を有する単一部材により構成されているので、実施例1の第1中間材31、32を採用する場合と比較して、部品点数の削減及び組み付け作業の簡略化を実現できる。
【0056】
さらに、この電動圧縮機2は、防振性を有する第2中間材34により、内側ハウジング10と、吸入部材50及び吐出部材60との間においても、圧縮機構3及びモータ機構5からの振動及び騒音が伝達することを抑制できる。この際、ゴム製である第2中間材34は、冷媒の熱を奪い難いため、吸入部材50及び吐出部材60が内側ハウジング10に直接固定されている場合と比較して、冷媒の熱が内側ハウジング10から吸入部材50及び吐出部材60を介して外部に放熱され難い。その結果、この電動圧縮機2は、本発明の作用効果を確実に奏することができる。
【0057】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0058】
例えば、外側ハウジング20は両端が開放された筒状に限られず、内側ハウジング10全体を覆う形状とされていてもよく、また、一方端のみが開放された形状であってもよい。
【0059】
また、取付部29、係合部8及びボルト9Aによる締結構造及び形状は、これに限定されない。電動圧縮機1が外側ハウジング20に形成された取付部29によって対象物9に固定できればよい。
【0060】
実施例1において、吸入口15と吸入部材50との間、及び吐出口16と吐出部材60との間の少なくとも一方に実施例2の第2中間材34を設けてもよい。また、図4に示すように、実施例1における第1中間材31と、実施例2における第2中間材34とを一体にした中間材35を設けてもよい。この場合、外側ハウジング20に覆われていない内側ハウジング10の露出部分を、中間材35によって保護することができる。また、ゴム製である中間材35により内側ハウジング10を覆う領域が増えるので、断熱効果をさらに奏することができる。その結果、冷媒の熱が内側ハウジング10から外部により一層奪われ難い。
【0061】
また、実施例2において、第2中間材34は、吸入口15と吸入部材50との間、及び吐出口16と吐出部材60との間のどちらか一方にのみ設けてもよい。さらに、第1中間材33と第2中間材34とを一体にしてもよい。
【0062】
圧縮機構3は、スクロール式に限らず、往復式、ベーン式その他の周知の圧縮方式を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は例えば車両等の空調に利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1、2…電動圧縮機
3…圧縮機構
5…モータ機構
10…内側ハウジング
29…取付部
20…外側ハウジング
31、32、33、35…第1中間材(31…防振材、32…断熱材)
34、35…第2中間材
15…吸入口
16…吐出口
50、60…外部配管(50…吸入部材、60…吐出部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機構と、前記圧縮機構を作動させるモータ機構とを備えた電動圧縮機において、
前記圧縮機構及び前記モータ機構を密閉状態で収容する内側ハウジングと、前記内側ハウジングを収容し、外部への取付部が形成された外側ハウジングとを備え、
前記内側ハウジングと前記外側ハウジングとの間には、防振性及び断熱性を有する第1中間材が設けられていることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記内側ハウジングには、前記圧縮機構に前記冷媒が吸入される吸入口及び前記圧縮機構から前記冷媒が吐出される吐出口が形成され、
前記吸入口及び前記吐出口にそれぞれ接続される外部配管は、前記外側ハウジングと非接触状態で前記内側ハウジングに固定されている請求項1記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記吸入口及び/又は前記吐出口と前記外部配管との間には、防振性及び/又は断熱性を有する第2中間材が設けられている請求項2記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記第1中間材は、前記第2中間材と一体である請求項3記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記第1中間材は、防振性を有する防振材と、断熱性を有する断熱材とからなる請求項1乃至4のいずれか1項記載の電動圧縮機。
【請求項6】
前記断熱材は、前記内側ハウジングと前記外側ハウジングとの間における内側に配設され、
前記防振材は、前記内側ハウジングと前記外側ハウジングとの間における外側に配設されている請求項5記載の電動圧縮機。
【請求項7】
前記外側ハウジングは筒状である請求項1乃至6のいずれか1項記載の電動圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−211530(P2012−211530A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76998(P2011−76998)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】