説明

電動圧縮機

【課題】生産性に優れた安価な電動圧縮機を提供する。
【解決手段】一端に開口部6を持つ円筒形状のシェル1と、シェル1に内蔵され流体の吸入、圧縮および吐出を行う圧縮部2と、同じくシェル1に内蔵され圧縮部2を駆動する電動機3と、開口部6を閉塞するケーシングカバー7とを備え、開口部6がOリング9を備えた軸シール構造で閉塞されているもので、シェル1の内周面とケーシングカバー7の外周面との間で構成した軸シール構造で、シェル1とケーシングカバー7間は閉塞されるので、シェル1の深さ寸法とシェル1に内蔵される積層部品の寸法差があって、シェル1の端部10とケーシングカバー7のシェル側の面11が接触していなくても、シェル1とケーシングカバー7間は閉塞し、安価で、生産性に優れた電動圧縮機を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空気調和装置等の冷媒圧縮用に用いられる電動圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動圧縮機として、例えば、特許文献1に記載されているように、円筒状に形成され、吸入側ハウジング、中間ハウジング及び吐出側ハウジングに分割された圧縮機本体と、圧縮機本体に吸入された流体を圧縮する圧縮部と、圧縮部を駆動するモータと、モータを駆動するインバータ装置を備えていて、吸入側ハウジングと中間ハウジングは、モータと固定部材を軸方向から挟み込み、ボルトによって固定かつ閉塞されていて、中間ハウジングと吐出側ハウジングも、圧縮部と回転阻止機構を軸方向から挟み込み、ボルトによって固定かつ閉塞されているものが知られている。
【0003】
また、例えば、特許文献2に記載されているように、本体ケーシング(圧縮機本体)内に圧縮機構部と、圧縮機構部を駆動する電動機を内蔵し、本体ケーシング(圧縮機本体)の開口部に仕切り部と吸入管とを有するサブケーシングを機密的に備えていて、電動機と圧縮機構部が一つの開口から、順番に挿入されている電動圧縮機も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−343438号公報
【特許文献2】特開2007−224809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の電動圧縮機の構成上の課題として、圧縮機本体が軸方向に積層された部品が挟み込み固定し閉塞されるには、分割された各ハウジング間が接触した状態でボルトにより固定される必要があるため、圧縮機本体(シェル)の深さ寸法と圧縮機本体(シェル)に内蔵される積層部品の寸法管理が難しく、モータを構成している厚み公差の大きい積層鋼板固定子の公差吸収も難しいという課題を有していた。
【0006】
更に、圧縮機本体(シェル)に内蔵される部材を挿入する開口が、一つしかない圧縮機本体(シェル)では、手前側に内蔵する部品の軸方向奥側の挟み込み用停止部を、圧縮機本体(シェル)内側に突出させる必要があるので、奥側に内蔵される部品は、手前側に内蔵される部品より、径方向寸法を小径にする必要があった。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、圧縮機本体(シェル)の深さ寸法管理や圧縮機本体(シェル)に内蔵される積層部品の寸法管理が容易で、モータの固定子厚み公差吸収も容易で、高性能で、生産性に優れた安価な電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電動圧縮機は、一端に開口部を持つ円筒形状のシェルと、前記シェルに内蔵され流体の吸入、圧縮および吐出を行う圧縮部と、同じく前記シェルに内蔵され前記圧縮部を駆動する電動機と、前記開口部を閉塞するケーシングカバーとを備え、前記開口部がOリングを備えた軸シール構造で閉塞されているもので、シェル内周面とケーシングカバーの外周面との間で構成した軸シール構造で、シェルと
ケーシングカバー間は閉塞する。従って、シェル深さ寸法とシェルに内蔵される積層部品の寸法差があって、シェルの端部とケーシングカバーのシェル側の面が接触していなくても、シェルとケーシングカバー間は閉塞し、生産性に優れた安価な電動圧縮機とすることができる。
【0009】
また、本発明の電動圧縮機は、両端が開口した円筒形状のシェルと、前記シェルに内蔵され流体の吸入、圧縮および吐出を行う圧縮部と、同じく前記シェルに内蔵され前記圧縮部を駆動する電動機と、前記シェルの両端の開口部をそれぞれ閉塞するケーシングカバーとを備え、前記両端の開口部の少なくとも一方がOリングを備えた軸シール構造で閉塞されているもので、第1の発明と同じく、シェル内周面とケーシングカバーの外周面との間で構成した軸シール構造で、シェルとケーシングカバー間が閉塞されるので、Oリングを備えた軸シール構造を持つ開口部は、シェル深さ寸法とシェルに内蔵される積層部品の寸法差があって、シェルの端部とケーシングカバーのシェル側の面が接触していなくても、またモータの固定子厚み公差が大きく公差吸収ができず、シェルの端部とケーシングカバーのシェル側の面が接触していなくても、シェルとケーシングカバー間は閉塞し、生産性に優れた安価な電動圧縮機とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電動圧縮機は、シェル深さ寸法とシェルに内蔵される積層部品の寸法差があって、またモータの固定子厚み公差が大きく公差吸収ができず、シェルの端部とケーシングカバーのシェル側の面が接触していなくても、シェルとケーシングカバー間は確実に閉塞されるので、安価な構成で、高性能で、生産性に優れた電動圧縮機とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における電動圧縮機の軸方向断面図
【図2】本発明の実施の形態2における電動圧縮機の軸方向断面図
【図3】本発明の実施の形態3における電動圧縮機の軸方向断面図
【図4】本発明の実施の形態4における電動圧縮機の軸方向断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、一端に開口部を持つ円筒形状のシェルと、前記シェルに内蔵され流体の吸入、圧縮および吐出を行う圧縮部と、同じく前記シェルに内蔵され前記圧縮部を駆動する電動機と、前記開口部を閉塞するケーシングカバーとを備え、前記開口部がOリングを備えた軸シール構造で閉塞されているもので、シェル内周面とケーシングカバーの外周面との間で構成した軸シール構造で、シェルとケーシングカバー間は閉塞する。従って、シェル深さ寸法とシェルに内蔵される積層部品の寸法差があって、シェルの端部とケーシングカバーのシェル側の面が接触していなくても、シェルとケーシングカバー間は閉塞し、生産性に優れた安価な電動圧縮機とすることができる。
【0013】
第2の発明は、両端が開口した円筒形状のシェルと、前記シェルに内蔵され流体の吸入、圧縮および吐出を行う圧縮部と、同じく前記シェルに内蔵され前記圧縮部を駆動する電動機と、前記シェルの両端の開口部をそれぞれ閉塞するケーシングカバーとを備え、前記両端の開口部の少なくとも一方がOリングを備えた軸シール構造で閉塞されているもので、第1の発明と同じく、シェル内周面とケーシングカバーの外周面との間で構成した軸シール構造で、シェルとケーシングカバー間が閉塞されるので、Oリングを備えた軸シール構造を持つ開口部は、シェル深さ寸法とシェルに内蔵される積層部品の寸法差があって、シェルの端部とケーシングカバーのシェル側の面が接触していなくても、またモータの固定子厚み公差が大きく公差吸収ができず、シェルの端部とケーシングカバーのシェル側の面が接触していなくても、シェルとケーシングカバー間は閉塞し、生産性に優れた安価な電動圧縮機とすることができる。
【0014】
第3の発明は、特に、第2の発明のシェルの一方の開口部から圧縮部を、他方の開口部から電動機をそれぞれ挿入し、それぞれの開口部が、Oリングを備えた軸シール構造で閉塞されているもので、シェル内周面とケーシングカバーの外周面との間で構成した軸シール構造で、シェルとケーシングカバー間が閉塞され、シェル深さ寸法とシェルに内蔵される積層部品の寸法差があって、シェルの端部とケーシングカバーのシェル側の面が接触していなくても、またモータの固定子厚み公差が大きく公差吸収ができず、シェルの端部とケーシングカバーのシェル側の面が接触していなくても、シェルとケーシングカバー間は閉塞し、生産性に優れた安価な電動圧縮機となるばかりでなく、圧縮部と電動機が別々の開口部からシェル内に挿入されるので、他方に内蔵される部品に左右されず径方向の寸法が選択でき、設計の自由度が増え、高性能な電動圧縮機とすることができる。
【0015】
第4の発明は、特に、第3の発明の圧縮部が内蔵されている領域と電動機が内蔵されている領域の間に、厚肉部を備えたもので、圧縮部が内蔵されている領域や電動機が内蔵されている領域と同様に、シェルの中央部も剛性が上がり、シェルの共振周波数が上がるので騒音を低減することができる。また、シェル中央部に厚肉部があることにより、流体が電動機に衝突せずに直接、吐出口に流れ込むことがなくなり、流体に混入しているオイルの分離が促進される。
【0016】
第5の発明は、特に、第2〜4のいずれか一つの発明の電動機が内蔵されている側の開口部が、Oリングを備えた軸シール構造で閉塞されており、前記電動機が嵌合構造でシェル内に固定されているもので、電動機の固定に、ボルトなどの締結部品を必要とせず、組立て易く、生産性に優れた安価な電動圧縮機とすることができる。
【0017】
第6の発明は、特に、第1〜5のいずれか一つの発明の開口部を閉塞するケーシングカバーに、電動機を駆動するインバータ装置を内蔵し、前記インバータ装置が内蔵されている領域を、Oリングを備えた軸シール構造を持つインバータカバーで閉塞したもので、インバータ装置のパワー素子と冷却面を確実に接触させることができ、パワー素子が効率良く冷却されると共に、生産性に優れた安価な電動圧縮機とすることができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における電動圧縮機の軸方向断面図を示すものである。
【0020】
図1において、本実施の形態における電動圧縮機の流体の吸入、圧縮、吐出を行う圧縮部2は、シェル1に内蔵されている。圧縮部2は、スクロール式の構造であり、固定スクロール2aに対し、旋回スクロール2bが旋回運動を行い、冷媒ガスを外周から中央部に向け圧縮する。前記旋回スクロール2bは、圧縮部2と同様にシェル1に内蔵された電動機3の回転子4に圧入されたシャフト5により駆動されている。また、電動機3の固定子13は、ボルト24でシェル1に固定されている。
【0021】
そして、シェル1の開口部6は、ケーシングカバー7の外周面に設けた凹形状の溝8に、Oリング9を備え、シェル1の内周面との間で軸シール構造を構成し、閉塞されている。
【0022】
以上のように構成された本実施の形態における電動圧縮機について、以下その動作、作用を説明する。
【0023】
まず、圧縮部2は、固定スクロール2a、旋回スクロール2b、回転阻止機構、軸受などの部品(詳細は図示せず)が、電動圧縮機の軸方向に積層されて構成されている。そして、積層された部品で構成された圧縮部2は、シェル1とケーシングカバー7で挟み込まれて固定されている。
【0024】
この時、一般に、積層される個々の部品のもっている寸法バラツキを積み上げると、シェル1の圧縮部2が内蔵される部分の軸方向寸法と一致しなくなるが、本実施の形態では、圧縮部2をシェル1内にケーシングカバー7で挟み込んだ時に、シェル1の端部10とケーシングカバー7のシェル1側の面11が、圧縮部2を挟み込む前に先当たりしない限り、接触していなくても、ケーシングカバー7の外周面に設けた凹形状の溝8に挿入したOリング9と、シェル1の内周面との間で構成される軸シール構造で閉塞される。
【0025】
従って、圧縮部2を構成する個々の部品の寸法管理が容易になり、シェル1および圧縮部2を構成する各部品は、生産性に優れた安価なものとすることができる。
【0026】
以上のように、本実施の形態における電動圧縮機においては、シェル1の内周面とケーシングカバー7の外周面との間で構成した軸シール構造で、シェル1とケーシングカバー7間が閉塞されるので、シェル1の深さ寸法とシェル1に内蔵される積層部品の寸法差があって、シェル1の端部とケーシングカバー7のシェル1側の面が接触していなくても、シェル1とケーシングカバー7間は閉塞し、生産性に優れた安価な電動圧縮機を提供することができる。
【0027】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態1における電動圧縮機の軸方向断面図である。なお、上記実施の形態1における電動圧縮機と同一部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0028】
図2において、本実施の形態における電動圧縮機のシェル1の両端は、開口しており、一方の開口部6aは、ケーシングカバー7aで、他方の開口部6bはケーシングカバー7bで、それぞれ閉塞されるようになっている。
【0029】
流体の吸入、圧縮、吐出を行う圧縮部2は、シェル1内のケーシングカバー7a側に内蔵されており、圧縮部2を駆動する電動機3も、シェル1内のケーシングカバー7b側に内蔵され、ボルト25でシェル1に固定されている。
【0030】
そして、ケーシングカバー7a、7bの外周面に設けた凹形状の溝8に、Oリング9を備え、シェル1の内周面との間で、軸シール構造を構成し、シェル1の両端の開口部6a、6bは閉塞されている。
【0031】
シェル1は、圧縮部2が内蔵されている領域と、電動機3が内蔵されている領域の間に、厚肉部12を備えており、この厚肉部12とケーシングカバー7aで、圧縮部2が、厚肉部12とケーシングカバー7bで、電動機3の固定子13が、夫々挟み込み固定されている。
【0032】
以上のように構成された本実施の形態における電動圧縮機について、以下その動作、作用を説明する。
【0033】
圧縮部2は、実施の形態1における電動圧縮機と同じく、固定スクロール2a、旋回スクロール2b、回転阻止機構、軸受などの部品(詳細は図示せず)が、電動圧縮機の軸方向に積層されて構成されていて、シェル1とケーシングカバー7aで挟み込まれて固定さ
れている。
【0034】
この時、積層される個々の部品のもっている寸法バラツキを積み上げると、シェル1の圧縮部2が内蔵される部分の軸方向寸法と一致しなくなるが、圧縮部2を、シェル1内にケーシングカバー7aで挟み込んだ時に、シェル1の端部10aとケーシングカバー7aのシェル1側の面11aが、圧縮部2を挟み込む前に先当たりしない限り、接触していなくても、ケーシングカバー7aの外周面に設けた凹形状の溝8に挿入したOリング9と、シェル1の内周面との間で構成される軸シール構造で閉塞され、圧縮部2を構成する個々の部品の寸法管理が容易になり、シェル1および圧縮部2を構成する各部品は、生産性に優れた安価なものとすることができるというのも、第1の実施の形態と同じである。
【0035】
一方、圧縮部2と軸方向反対側に内蔵されている電動機3の回転子4、固定子13は鉄系珪素鋼板を積層して構成されるのが一般的であり、その積層方向の厚みは何枚もの鋼板を積み重ねているので、寸法バラツキが大きいが、こちらも電動機3の固定子13をシェル1内にケーシングカバー7bで挟み込んだ時に、シェル1の端部10bとケーシングカバー7bのシェル1側の面11bが、固定子13を挟み込む前に先当たりしない限り、接触していなくても、ケーシングカバー7bの外周面に設けた凹形状の溝8に挿入したOリング9と、シェル1の内周面との間で構成される軸シール構造で閉塞される。従って、固定子13の積層方向厚みのバラツキは大きくても良く、電動機3は生産性に優れた安価なものとすることができる。
【0036】
また、圧縮部2が、シェル1の端部10a側から挿入された後、シェル1の開口部6aはOリング9を備えた軸シール構造で閉塞されており、電動機3がシェル1の端部10aの軸方向反対側の端部10b側から挿入された後、シェル1の開口部6bも軸シール構造で閉塞されている。すなわち、圧縮部2と電動機3は別々の方向からシェル1内に挿入されるので、圧縮部2と電動機3の各々が他方に左右されず、径方向の寸法が選択できるので、設計の自由度が増え、高性能とすることができる。
【0037】
更に、圧縮部2と電動機3を、シェル1の両端部10a、10bから、すなわち別々の方向から挿入できる構造のため、圧縮部2が内蔵される領域と、電動機3が内蔵される領域の間のシェル1の中央部分に厚肉部12を備えることができる。すると、圧縮部2が内蔵されている領域や、電動機3が内蔵されている領域に比べ、剛性が弱かったシェル1の中央部分が、厚肉部12を備えることにより剛性が上がり、シェル1の共振周波数が上がるので騒音が低減する。
【0038】
ここで、本実施の形態における電動圧縮機内での流体の動きを説明すると、外部から吸入された流体は、吸入室14を経由して圧縮部2に入る。圧縮部2で圧縮された流体は吐出室15を経由した後、電動機3が収納されているシェル1内で電動機3を冷却しながら、また電動機3と衝突することにより流体に混入しているオイルを分離しながらケーシングカバー7b側に流れ、吐出口16から外部に出ていく。
【0039】
また、電動機3の固定子13が、シェル1内に突出している厚肉部12とケーシングカバー7bで挟み込まれているので、流体がシェル1内をケーシングカバー7b側に流れる時、電動機3に衝突せずに直接、吐出口16に流れ込むことがなくなり、流体に混入しているオイルの分離が促進される。
【0040】
以上のように、本実施の形態における電動圧縮機では、両端が開口した円筒形状のシェル1と、前記シェル1の両端の開口部6a、6bをそれぞれ閉塞するケーシングカバー7a、7bを備え、一方の開口部6aがOリング9を備えた軸シール構造で閉塞されているので、上記実施の形態1と同じく、シェル1内周面とケーシングカバー7aの外周面との
間で構成した軸シール構造で、シェル1とケーシングカバー7a間が閉塞されるので、Oリング9を備えた軸シール構造を持つ開口部6aは、シェル1の深さ寸法とシェル1に内蔵される積層部品の寸法差があって、シェル1の端部10aとケーシングカバー7aのシェル1側の面11aが接触していなくても、シェル1とケーシングカバー7a間は閉塞し、生産性に優れた安価な電動圧縮機とすることができる。
【0041】
また、本実施の形態では、開口部6bがOリング9を備えた軸シール構造で閉塞されているので、上記同様、シェル1の内周面とケーシングカバー7bの外周面との間で構成した軸シール構造で、シェル1とケーシングカバー7b間が閉塞されるので、Oリング9を備えた軸シール構造を持つ開口部6bは、電動機3の固定子厚み公差が大きく公差吸収ができず、シェル1の端部10bとケーシングカバー7bのシェル1側の面11bが接触していなくても、シェル1とケーシングカバー7b間は閉塞し、生産性に優れた安価な電動圧縮機とすることができる。
【0042】
また、本実施の形態では、両端が開口した円筒形状のシェル1と、前記シェルの両端の開口部6a、6bをそれぞれ閉塞するケーシングカバー7a、7bを備え、シェル1内に、片側の開口部6aから圧縮部2を、反対側の開口部6bから前記電動機3を夫々挿入し、それぞれの開口部6a、6bがOリング9を備えた軸シール構造で閉塞されているので、シェル1の内周面とケーシングカバー7a、7bの外周面との間で構成した軸シール構造で、シェル1とケーシングカバー7a、シェル1とケーシングカバー7b間がそれぞれ閉塞され、シェル1の深さ寸法とシェル1に内蔵される積層部品の寸法差があって、シェル1の端部10aとケーシングカバー7aのシェル1側の面11aが接触していなくても、また電動機3の固定子13の厚み公差が大きく公差吸収ができず、シェル1の端部10bとケーシングカバー7bのシェル1側の面11bが接触していなくても、シェル1とケーシングカバー7a、7b間はそれぞれ閉塞し、生産性に優れた安価な電動圧縮機となるばかりでなく、圧縮部2と電動機3が別々の開口部6a、6bからシェル1内に挿入されるので、他方に内蔵される部品に左右されず径方向の寸法が選択でき、設計の自由度が増え、高性能な電動圧縮機とすることができる。
【0043】
また、圧縮部2が内蔵されている領域と、電動機3の内蔵されている領域の間に厚肉部12を備えているので、圧縮部2が内蔵されている領域や、電動機3が内蔵されている領域と同様に、シェル1の中央部も剛性が上がり、シェル1の共振周波数が上がるので騒音を低減することができる。また、シェル1の中央部に厚肉部12があることにより、流体が電動機3に衝突せずに直接、吐出口16に流れ込むことがなくなり、流体に混入しているオイルの分離が促進される。
【0044】
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3における電動圧縮機の軸方向断面図である。なお、上記実施の形態における電動圧縮機と同一部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0045】
本実施の形態における電動圧縮機では、図3に示すように、電動機3の固定子13にはピン17が貫通しており、そのピン17の片側の端部17aは、シェル1の中央部分に設けられた厚肉部12に、ピン17の軸方向反対側の端部17bはケーシングカバー7bにそれぞれ挿し込まれている。
【0046】
ピン17が、シェル1の厚肉部12とケーシングカバー7bに挿し込まれていることにより、固定子13が、円周方向に移動(ズレ)するのを防止することができる。一方、固定子13の軸方向は、シェル1とケーシングカバー7aで挟み込まれ、軸方向には移動(ズレ)しないようになっているので、固定子13は、ボルトなどの締結部品を用いて移動(ズレ)防止する必要がなくなり、組立て易く生産性に優れた安価な、固定子13の固定
構造とすることができる。
【0047】
尚、本実施の形態では、ピン17が固定子13を貫通したものを示したが、ピン17は固定子13の軸方向両側から挿入するようにして、固定子13を貫通していなくても良いし、固定子13が、円周方向に移動(ズレ)さえしなければ、固定子13の軸方向片側にのみ挿入しても良い。さらには、固定子13の軸方向の側面に凸部(図示せず)を設け、シェル1の厚肉部12やケーシングカバー7bに凹部(図示せず)を設けるなど、前記凸部と前記凹部を嵌合させて、固定子13の円周方向の移動(ズレ)を防止しても良い。
【0048】
以上のように、本実施の形態における電動圧縮機によれば、電動機3の固定に、ボルトなどの締結部品を必要としないので、組立て易く、生産性に優れた安価な電動圧縮機を提供することができる。
【0049】
(実施の形態4)
図4は、本発明の第4の実施の形態における電動圧縮機の軸方向断面図である。なお、上記実施の形態における電動圧縮機と同一部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0050】
本実施の形態における電動圧縮機では、図4に示すように、電動機3を駆動するインバータ回路を組み込んだインバータ装置18を、ケーシングカバー7aに内蔵すると共に、インバータカバー19で閉塞したものである。インバータ装置18上には、パワー素子20が搭載されており、パワー素子20が、流体の吸入室14との仕切り壁21に接触するよう、インバータカバー19と共にボルト22で、仕切り壁21に固定されている。インバータカバー19は、Oリング23を備え、ケーシングカバー7aの内周面との間で軸シール構造を構成し、インバータ装置18が内蔵されている領域に水などが入らないよう閉塞されている。
【0051】
以上のように、インバータカバー19とケーシングカバー7aは、軸シール構造で閉塞されているので、第2の実施の形態のシェル1に、圧縮部2、電動機3の固定子13をケーシングカバー7a、7bで挟み込んだ状態と同じように、パワー素子20、インバータ装置18、インバータカバー19、ケーシングカバー7aなどのもつ軸方向の寸法公差を吸収し、発熱を伴うパワー素子20を、外部から吸入する流体が経由する吸入室14を構成して、吸入する流体で冷却されている仕切り壁21に、確実に接触するように組み付けることができる。そのため、パワー素子20が効率良く冷却されるし、ケーシングカバー7aとインバータ装置18を、生産性に優れた安価なものとすることができる。
【0052】
以上のように、本実施の形態における電動圧縮機においては、円筒形状のシェル1の開口部6aを閉塞するケーシングカバー7aに、電動機3を駆動するインバータ装置18を内蔵し、そのインバータ装置18が内蔵されている領域を、Oリング23を備えた軸シール構造を持つインバータカバー19で閉塞しているので、パワー素子20と冷却面を確実に接触させることができ、パワー素子20が効率良く冷却されると共に、生産性に優れた安価な電動圧縮機を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明にかかる電動圧縮機は、安価な構成で、生産性に優れ、しかも高性能なので、車両用空気調和装置のみならず、高生産性、低コスト、そして高性能が求められる、ルームエアコンや給湯器用などの家電分野等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 シェル
2 圧縮部
3 電動機
6、6a、6b 開口部
7、7a、7b ケーシングカバー
9、23 Oリング
10、10a、10b 端部
11、11a、11b 面
12 厚肉部
18 インバータ装置
19 インバータカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口部を持つ円筒形状のシェルと、前記シェルに内蔵され流体の吸入、圧縮および吐出を行う圧縮部と、同じく前記シェルに内蔵され前記圧縮部を駆動する電動機と、前記開口部を閉塞するケーシングカバーとを備え、前記開口部がOリングを備えた軸シール構造で閉塞されている電動圧縮機。
【請求項2】
両端が開口した円筒形状のシェルと、前記シェルに内蔵され流体の吸入、圧縮および吐出を行う圧縮部と、同じく前記シェルに内蔵され前記圧縮部を駆動する電動機と、前記シェルの両端の開口部をそれぞれ閉塞するケーシングカバーとを備え、前記両端の開口部の少なくとも一方がOリングを備えた軸シール構造で閉塞されている電動圧縮機。
【請求項3】
シェルの一方の開口部から圧縮部を、他方の開口部から電動機をそれぞれ挿入し、それぞれの開口部が、Oリングを備えた軸シール構造で閉塞されている請求項2に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
圧縮部が内蔵されている領域と電動機が内蔵されている領域の間に、厚肉部を備えた請求項3に記載の電動圧縮機。
【請求項5】
電動機が内蔵されている側の開口部が、Oリングを備えた軸シール構造で閉塞されており、前記電動機が嵌合構造でシェル内に固定されている請求項2〜4のいずれか1項に記載の電動圧縮機。
【請求項6】
開口部を閉塞するケーシングカバーに、電動機を駆動するインバータ装置を内蔵し、前記インバータ装置が内蔵されている領域を、Oリングを備えた軸シール構造を持つインバータカバーで閉塞した請求項1〜5のいずれか1項に記載の電動圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−60816(P2013−60816A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197963(P2011−197963)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】