説明

電動機用ファンカバー

【課題】取り外しが容易な電動機用ファンカバーを提供する。
【解決手段】電動機10は、略円筒状のハウジング1とファン3を備える。ハウジング1は、固定子及び出力軸2aを有する回転子を収容している。ファン3は、ハウジング1の一端面から突出した出力軸2aと反対側に配置され、ハウジング1の他端面から突出する回転軸2bに取り付けられる。ファンカバー4は、ファン3を防護している。ファンカバー4は、一対の分割ファンカバー41・41と二組の連結金具42・42を備える。分割ファンカバー41は、背面板41aと帯状の円弧片41bを有する。一対の分割ファンカバー41・41の連結を連結金具42で解除すると、一対の分割ファンカバー41・41を遠心方向に移動できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機用ファンカバーに関する。特に、電動機の軸で回されるファンを覆うファンカバーの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電動機の代表例である誘導電動機は、固定子の作る回転磁界により、電気伝導体の回転子に誘導電流が発生し、滑りによる回転トルクを発生できる。三相交流を用いた三相誘導電動機は、特別な工夫をすることなく、回転磁場を得ることができるので、広く利用されている。
【0003】
このような誘導電動機は、多数の巻線により磁界を発生させることから、連続して使用すると発熱してくる。したがって、略円筒状のハウジング(モータケース)に波状の襞(フィン)を形成して、放熱面積を多くすることにより、許容温度を超えないように誘導電動機を自然冷却している。更に、出力軸と反対側にハウジングから突出する支持軸(回転軸)にファンを取り付け、空気の移動量を増やすことで、許容温度を超えないように誘導電動機を強制冷却している。
【0004】
一般に、誘導電動機に取り付けられたファンは、背面に多数の通風孔を有する円筒状のファンカバーで防護されている。そして、ファンに設けた複数の羽根が回転して外周方向に発生した冷却風は、ファンカバーの内周に当たり、軸方向に風向きを変えながらハウジングの外周に当てて冷却していた。
【0005】
しかし、上記の構成では、ファンによって発生した冷却風は、ファンカバーの内周に直角方向に当たるため、軸方向に風向きを変えるには効率が悪く、スムーズに軸方向に流れる冷却風を送ることが困難であった。このような不具合を解消するため、ファンの両回転方向に冷却性能を確保できる誘導電動機が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1による誘導電動機は、放射線状に延びた複数枚の羽根と反出力軸側に固定するボスを兼ねたベースでファンが構成されている。更に、羽根は、個別のヒンジでベースに結合されている。したがって、羽根は、ヒンジで設定する任意の角度に傾倒でき、ファンから発生する冷却風は、両回転方向とも軸方向の風向きとなり、ファンカバーの内周に沿ってスムーズに電動機の外周面に当たるので、冷却性能を向上できる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−50574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されたような誘導電動機は、定期的又は不定期にファンを保守することがある。この場合、誘導電動機のハウジングの端部に嵌合した円筒状のファンカバーを軸方向に移動することで、ファンカバーをハウジングから取り外していた。
【0009】
しかし、誘導電動機の背面側(ファンカバーの取り付け側)に配管などが設置されていると、ファンカバーの取り外しが困難になることがあった。一般に、このような誘導電動機は、背面側に所定の空間を設けるように設置されるが、誘導電動機の背面側に配管などが設置されていても、冷却性能に大きく影響しない。したがって、ファンカバーを取り外す段階まで、取り外しが困難になることに気が付かないのである。
【0010】
このため、誘導電動機を固定ベースから外して、一旦、別の場所に誘導電動機を移動し、ファンカバーを取り外し、ファンを保守後に、再び、誘導電動機を元の場所に設置していた。
【0011】
電動機の背面側に配置したファンカバーを軸方向に移動することなく、ファンカバーを取り外すことができたら、電動機を移動することなく、ファンを保守できるので、便利である。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、電動機の背面側に配置したファンカバーを軸方向に移動することなく、取り外しが容易な電動機用ファンカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、電動機の背面側に配置したファンカバーを遠心方向に移動できるように、二つ以上に均等分割することによって、ファンカバーを軸方向に移動することなく、ファンカバーを電動機から容易に取り外すことができることを見出し、これに基づいて、以下のような新たな電動機用ファンカバーを発明するに至った。
【0014】
(1)本発明による電動機用ファンカバーは、固定子及び出力軸を有する回転子を収容し、前記出力軸が一端面から突出する略円筒状のハウジング、及びこのハウジングの他端面から突出する回転軸に取り付けられたファンを備える電動機において、前記ファンを防護する電動機用ファンカバーであって、前記ファンの軸中心を中心として点対称になるように分割された分割ファンカバーであって、前記ファンを軸方向から覆うと共に、前記ファンの軸中心から所定の中心角を有して開角した背面板、及びこの背面板の端縁が屈曲されて前記ファンを外周方向から覆う帯状の円弧片を有する複数の分割ファンカバーと、これらの分割ファンカバーが有底円筒を形成するように、複数の前記分割ファンカバーを相互に着脱自在に連結する連結金具と、を備え、複数の前記分割ファンカバーは、回転又は遠心方向に離反できるように一体化されて前記ハウジングの端部に取り付けられている。
【0015】
(2)複数の前記分割ファンカバーは、前記ファンの軸中心を通る仮想の線分を軸に線対称に半分割された一対の分割ファンカバーで構成されていることが好ましい。
【0016】
(3)前記背面板は、複数の通風孔を開口していることが好ましい。
【0017】
(4)前記連結金具は、前記円弧片の端部に取り付けられた鉤状のフックと、隣接する前記円弧片の端部に取り付けられた傾倒自在なレバーと、一方の端部が前記レバーと回動自在に連結し、他方の端部が前記フックと係合するループと、を有することが好ましい。
【0018】
(5)前記円弧片は、前記ハウジングの端部に弾性をもって当接する波状板を内壁に取り付けていることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明による電動機用ファンカバーは、電動機の背面側に配置したファンカバーを遠心方向に移動できるように、二つ以上に分割できるので、従来のようにファンカバーを軸方向に移動することなく、ファンカバーを電動機から容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態による電動機用ファンカバーの構成を示す斜視図であり、一対の分割ファンカバーが電動機から取り外された状態図である。
【図2】前記実施形態による電動機用ファンカバーの構成を示す斜視図であり、一対の分割ファンカバーを電動機に取り付けた状態図である。
【図3】前記実施形態による電動機用ファンカバーの背面図であり、中心線から右半分は電動機の背面を示している。
【図4】前記実施形態による電動機用ファンカバーの右側面図である。
【図5】前記実施形態による電動機用ファンカバーに備わる連結金具の構成を示す斜視図である。
【図6】前記実施形態による電動機用ファンカバーの構成を示す斜視図であり、図1と異なる方向から一対の分割ファンカバーを観ている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
[電動機用ファンカバーの構成]
最初に、本発明の一実施形態による電動機用ファンカバーの構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態による電動機用ファンカバーの構成を示す斜視図であり、一対の分割ファンカバーが電動機から取り外された状態図である。図2は、前記実施形態による電動機用ファンカバーの構成を示す斜視図であり、一対の分割ファンカバーを電動機に取り付けた状態図である。
【0022】
図3は、前記実施形態による電動機用ファンカバーの背面図であり、中心線から右半分は電動機の背面を示している。図4は、前記実施形態による電動機用ファンカバーの右側面図である。
【0023】
(電動機の構成)
図1から図4を参照すると、本発明に係る電動機10は、略円筒状のハウジング1とファン3を備えている。ハウジング1は、図示しない固定子及び出力軸2aを有する回転子を収容している。ファン3は、ハウジング1の一端面から突出した出力軸2aと反対側に配置されている。ファン3は、ハウジング1の他端面から突出する回転軸2bに取り付けられている。電動機10を駆動すると、ファン3を回転できる。
【0024】
図1から図4を参照すると、ハウジング1は、略円筒状のハウジング本体1aと一対の円板状のエンドプレート1b・1bを有している。ハウジング本体1aは、図示しない固定子などを保持している。一対のエンドプレート1b・1bは、ハウジング本体1aを軸方向から密閉すると共に、図示しない回転子を両端支持している。
【0025】
図1から図4を参照すると、ハウジング本体1aは、固定子及び回転子を通電するための端子箱1cを側面に設けている。又、ハウジング本体1aは、電動機10を設置するための脚部1dを底部に形成している。更に、ハウジング本体1aは、波状のフィン11aを外面に形成しており、ファン3の送風をフィン11aに当てて強制冷却している。
【0026】
図1又は図3を参照すると、ファン3は、ボス3aと複数の羽根3bで構成している。ボス3aは、回転軸2bに固定されている。複数の羽根3bは、ボス3aから放射状に延びている。図示されたファン3は、軸方向から空気を吸い込み、軸方向に送風する軸流送風機となっている。羽根3bに整流板(図示せず)を設けて、ファン3を斜流送風機に構成してもよい。
【0027】
(電動機用ファンカバーの構成)
引き続き、実施形態による電動機用ファンカバーの構成を説明する。図5は、前記実施形態による電動機用ファンカバーに備わる連結金具の構成を示す斜視図である。図6は、前記実施形態による電動機用ファンカバーの構成を示す斜視図であり、図1と異なる方向から一対の分割ファンカバーを観ている。
【0028】
図1から図4を参照すると、本発明に一実施形態による電動機用ファンカバー(以下、ファンカバーと略称する)4は、ファン3の周囲及び背面側を覆って、ファン3を防護している。
【0029】
図1から図6を参照すると、ファンカバー4は、一対の分割ファンカバー41・41と二組の連結金具42・42を備えている。一対の分割ファンカバー41・41は、ファン3の軸中心を通る仮想の線分を軸に線対称に半分割されている。
【0030】
図1から図6を参照すると、分割ファンカバー41は、背面板41aと帯状の円弧片41bを有している。背面板41aは、ファン3を軸方向から覆っている。又、背面板41aは、ファン3の軸中心から180度の中心角を有して開角している。円弧片41bは、背面板41aの端縁が屈曲されて、ファン3を外周方向から覆っている。
【0031】
図1から図6を参照すると、連結金具42は、一対の分割ファンカバー41・41が有底円筒を形成するように、一対の分割ファンカバー41・41を相互に着脱自在に連結できる。そして、一対の分割ファンカバー41・41は、回転又は遠心方向に離反できるように一体化されて、ハウジング1の端部に取り付けられている(図2又は図4参照)。
【0032】
図5を参照すると、連結金具42は、鉤状のフック42a、傾倒自在なレバー42b、及びループ42cを有している。フック42aは、円弧片41bの端部に取り付けられている。レバー42bは、隣接する円弧片41bの端部に取り付けられている。
【0033】
図5を参照すると、ループ42cは、その一方の端部がレバー42bと回動自在に連結している。ループ42cは、その他方の端部をフック42aに係合できる。レバー42bを一方の方向に傾倒すると、ループ42cがフック42aを引き寄せて、一対の分割ファンカバー41・41を連結できる。レバー42bを他方の方向に傾倒すると、ループ42cとフック42aの係合を解除でき、一対の分割ファンカバー41・41を遠心方向に向けて、分離できる。
【0034】
[電動機用ファンカバーの作用]
次に、実施形態によるファンカバー4の構成を補足しながら、ファンカバー4の作用及び効果を説明する。
【0035】
図2又は図4を参照すると、電動機10の背面側(ファンカバー4の取り付け側)には、例えば、図示しない配管などが設置されている。従来のファンカバーは、円筒状に形成されていたので、このファンカバーを背面側に移動すると、配管に当接して、ファンカバーを電動機10から取り外すことが困難であった。
【0036】
一方、実施形態によるファンカバー4は、半分割された一対の分割ファンカバー41・41で構成されている。したがって、図2に示されるように、一対の分割ファンカバー41・41を一体化した状態から、連結金具42による連結を解除すると、一対の分割ファンカバー41・41を遠心方向に移動でき(図1参照)、ファンカバー4をハウジング1から容易に取り外すことがきる。
【0037】
図1を参照すると、離間した一対の分割ファンカバー41・41を相互に近づけて、ハウジング1の端部(実体としてエンドプレート1b)を囲った後に、これらの分割ファンカバー41・41を90度程度に回転することが好ましい。図2に示されるように、連結金具42が左右(水平状態)に移動でき、連結金具42の操作が容易になるからである。
【0038】
図2を参照すると、一対の分割ファンカバー41・41を連結金具42で連結した後は、円弧片41bに開口した一対の止めねじ用の穴411・411を利用して、止めねじ(図示せず)でファンカバー4をハウジング1の端部に固定できる。
【0039】
図1から図5を参照すると、前述の手順と逆の手順を実行することにより、ファンカバー4をハウジング1から容易に取り外すことができる。最初に、止めねじ(図示せず)を外して、ファンカバー4の固定を解除する。次に、一対の分割ファンカバー41・41の連結を解除する。次に、一対の分割ファンカバー41・41を略90度に回転すれば、一対の分割ファンカバー41・41をハウジング1から容易に取り外すことができる。
【0040】
図6を参照すると、円弧片41bは、ハウジング1の端部に弾性をもって当接する波状板41cを内壁に取り付けている。このような波状板41cを円弧片41bの内壁に設けることにより、止めねじ(図示せず)でファンカバー4を固定することなく、ファンカバー4をハウジング1の端部に挟着できる。
【0041】
図1から図6を参照すると、背面板41aは、複数の通風孔412を開口している。一対の分割ファンカバー41・41を一体化した状態では、これらの通風孔412を従来のファンカバーと同じ領域に開口している。したがって、従来と同じ冷却性能を維持することができる。
【0042】
分割ファンカバー41は、硬質の合成樹脂を成形してもよく、金属板を成形してもよい。又、一対の分割ファンカバー41・41は、有底筒状の成形品を半分割に裁断してもよい。連結金具42は、例えば、市販のパッチン錠を利用することができる。
【0043】
図1から図6を参照すると、実施形態によるファンカバー4は、ファン3の軸中心を通る仮想の線分を軸に線対称に半分割された一対の分割ファンカバー41・41で構成しているが、本発明によるファンカバーは、半分割された一対の分割ファンカバー41・41に限定されない。
【0044】
本発明によるファンカバーは、ファン3の軸中心を中心として点対称になるように分割された複数の分割ファンカバーで構成してもよい。つまり、本発明によるファンカバーは、三つに分割してもよく、四つに分割してもよく、電動機の外径に対応して適宜な分割数を選択できる。
【符号の説明】
【0045】
1 ハウジング
2a 出力軸
2b 回転軸
3 ファン
4 ファンカバー(電動機用ファンカバー)
10 電動機
41 分割ファンカバー
41a 背面板
41b 円弧片
42 連結金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子及び出力軸を有する回転子を収容し、前記出力軸が一端面から突出する略円筒状のハウジング、及びこのハウジングの他端面から突出する回転軸に取り付けられたファンを備える電動機において、前記ファンを防護する電動機用ファンカバーであって、
前記ファンの軸中心を中心として点対称になるように分割された分割ファンカバーであって、前記ファンを軸方向から覆うと共に、前記ファンの軸中心から所定の中心角を有して開角した背面板、及びこの背面板の端縁が屈曲されて前記ファンを外周方向から覆う帯状の円弧片を有する複数の分割ファンカバーと、
これらの分割ファンカバーが有底円筒を形成するように、複数の前記分割ファンカバーを相互に着脱自在に連結する連結金具と、を備え、
複数の前記分割ファンカバーは、回転又は遠心方向に離反できるように一体化されて前記ハウジングの端部に取り付けられている電動機用ファンカバー。
【請求項2】
複数の前記分割ファンカバーは、前記ファンの軸中心を通る仮想の線分を軸に線対称に半分割された一対の分割ファンカバーで構成されている請求項1記載の電動機用ファンカバー。
【請求項3】
前記背面板は、複数の通風孔を開口している請求項1又は2記載の電動機用ファンカバー。
【請求項4】
前記連結金具は、前記円弧片の端部に取り付けられた鉤状のフックと、隣接する前記円弧片の端部に取り付けられた傾倒自在なレバーと、一方の端部が前記レバーと回動自在に連結し、他方の端部が前記フックと係合するループと、を有する請求項1から3のいずれかに記載の電動機用ファンカバー。
【請求項5】
前記円弧片は、前記ハウジングの端部に弾性をもって当接する波状板を内壁に取り付けている請求項1から4のいずれかに記載の電動機用ファンカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−19617(P2012−19617A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155595(P2010−155595)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】